JP4841127B2 - 水性インキ組成物 - Google Patents
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例えば、従来から知られている無機顔料及び有機顔料を分散するために、スチレン−無水マレイン酸共重合物のアンモニウム塩を用いることが知られており(例えば、特許文献1参照)、また、エマルジョン粒子の分散剤にポリカルボン酸ナトリウム水溶液を用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
消去性インキ組成物では、スチレン−ブタジエン共重合体及び水に不溶な顔料を含む、ハイライター、その他の筆記具用に好適な、粘度が10mPa・s〜30mPa・sからなる水性の消去可能なインキ組成物及びそれを使用するためのマーカー(例えば、特許文献3参照)や、0℃以下の造膜温度若しくは0℃以下のガラス転移温度を有する樹脂、顔料及び水を含有する消去性インキ組成物、また、0℃以下の造膜温度若しくは0℃以下のガラス転移温度を有する樹脂、粒子径1〜20μmの着色球状微粒子及び水を含有し、インキ粘度を5〜35mPa・sとしてなる消去性インキ、並びに、少なくとも結晶セルロースと、顔料と、水とを含有してなることを特徴とする消しゴム消去性インキ組成物(例えば、本願出願人による特許文献4〜6参照)、または、ガラス転移温度が0℃以下の造膜性樹脂粒子と、染料で着色された着色樹脂粒子と、造膜抑制剤と、水とを少なくとも含む筆記用消しゴム消去性水性インキ組成物(例えば、特許文献7参照)などが知られている。
また、布用インキ組成物では、特定物性の官能基を含有するモノマーを共重合等してなる樹脂粒子からなる非着色エマルジョンと、着色エマルジョンを含有する布用インキ組成物(例えば、特許文献8〜9参照)などが知られている。
この分離を解決する手段としては、インキ粘度を上げる、構造粘性を持たせて安定化を図るなどの方法を採ることができるが、サインペン用のインキのように、低粘度範囲で使用する場合などは、これらの手段ではインキの流出性が損なわれるため採用することができず、上記ペン先部において分離して(色分かれが起きて)しまうという課題を解決できる手段はないのが現状である。
(1) 少なくとも、着色樹脂エマルジョンと、造膜性の非着色樹脂エマルジョンと、結晶セルロースと、スチレン・マレイン酸共重合物のナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物のナトリウム塩から選ばれる少なくとも1種であるポリカルボン酸塩と、水と、を含有し、インキの粘度が80mPa・s以下であることを特徴とする水性インキ組成物。
(2) 前記着色樹脂エマルジョンを、固形分にして0.5〜10重量%含有することを特徴とする上記(1)記載の水性インキ組成物。
(3) 前記造膜性の非着色樹脂エマルジョンを、固形分にして10〜45重量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の水性インキ組成物。
(4) 前記ポリカルボン酸塩を0.5〜5重量%含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の水性インキ組成物。
(5) 前記結晶セルロースを0.1〜10重量%含有することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の水性インキ組成物。
(6) 上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の水性インキ組成物を充填してなることを特徴とする消去性サインペン。
(7) 上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の水性インキ組成物を充填してなることを特徴とする布用サインペン。
本発明の水性インキ組成物は、少なくとも、着色樹脂エマルジョンと、造膜性の非着色樹脂エマルジョンと、ポリカルボン酸塩と、水とを含有し、インキの粘度が80mPa・s以下であることを特徴とするものである。
好ましくは、インキへの分散性の点、インキ粘度の調整のし易さの点から、例えば、シンロイヒカラー、Keiko−color、RyuDye−wカラーなどが挙げられる。
具体的に用いることができる着色樹脂エマルジョンとしては、市販のSW−10シリーズ(シンロイヒ社製、平均粒径1μm)、NKW−2100Eシリーズ(日本蛍光社製、平均粒径0.4μm)、NKW−6200Eシリーズ(日本蛍光社製、平均粒径0.4μm)、Ryudye−LUMINOUSシリーズ(大日本インキ社製、平均粒径0.5〜1μm)などが挙げられる。
これらの造膜性樹脂の含有量が10%未満であると、造膜性が劣り、消去性インキの場合には消去後に色材が残ることとなり、一方、45%を越えると、インキの温度(高温、低温)に対する安定性が低下することとなり、好ましくない。
用いることができるポリカルボン酸塩としては、例えば、スチレン・マレイン酸共重合物の塩、オレフィン・マレイン酸共重合物の塩から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
これらのポリカルボン酸塩の塩としては、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩などが挙げられるが、水系インキでの溶解性、添加後のインキのpHの点から、ナトリウム塩であるものが望ましい。
これらのポリカルボン酸塩の含有量が0.5%未満であると、本発明の効果が得られず着色顔料が沈降することとなり、一方、5%を越えると、エマルジョンの凝集が発生し、インキとしての安定性に劣る結果となり、好ましくない。
好ましい増粘剤としては、消去性と耐擦過性のバランス及び経時安定性を大幅に向上させる点、静置した際の顔料沈降の抑制効果が大きい点から、結晶セルロースの使用が望ましい。
用いることができる結晶セルロースは、セルロースを酸加水分解又はアルカリ酸化分解して得られる実質的に一定の重合度を有するセルロース結晶子集合物であり、従来の増粘多糖類等の水溶液と異なり、セルロース結晶体が水中で分散粒子となる特性を有するものである。
本発明において、好ましく用いる結晶セルロースの特性を十分に発揮させるためには、より剪断力のかかる分散機を使用するか、若しくは分散タイプの結晶セルロースを用いることが更に好ましい。
分散機としては、例えば、ホモミキサー、ワーリングブレンダー、ホモジナイザー等が挙げられるが、分散工程により生成するコロイド粒子の割合が多くなり安定な分散液が得られることとなる。また、分散された結晶セルロースは、水中で網目構造を形成するため、色材である着色樹脂エマルジョンをそのマトリックス中に捉えて着色樹脂エマルジョンの沈降を更に抑える効果を十分に発揮できるものとなる。
この増粘剤の含有量が0.1%未満であると、着色樹脂エマルジョンの沈降抑制の更なる効果が不十分となり、一方、10%を越えると、インキ自体の粘性が高くなり過ぎ、インキの流出が阻害されることとなり、好ましくない。
インキの粘度が80mPa・sを超えると、インキの流出量が低下し、描線濃度が薄くなったり掠れたりし、また、10mPa・sを下回ると、顔料が沈降し、好ましくない。
なお、本発明(後述する実施例を含む)において、インキの粘度は、ELD型粘度計において、25℃,1rpmにより測定された値を意味する。また、インキの粘度の調整は、結晶セルロース等の添加量と水分の添加量により行うことができる。
図1は、本発明の水性インキ組成物をコレクター構造を備えた直液式サインペンに用いた実施形態である。
この実施形態のサインペンAは、本発明の水性インキ組成物10を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部11に充填してなるものである。このインキタンク部11の前部には、インキタンク部11内の空気が温度上昇等によって膨張した場合にインキタンク部11から押し出される消去性インキ10をペン先や空気孔からボタ落ちさせないために一時的に保溜するインキ保溜体(コレクター部材)12が内蔵され、コレクター部材12の先端部には繊維芯からなるペン先13が設けられた構成となっている。
インキタンク部11からペン先13へのインキ導出は、コレクター部材12の中心孔に付設されたインキ流路12aを設けた中継芯14を介してインキタンク部11から消去性インキ10をペン先13に導出することにより行われる。
なお、図1中の15はホルダー部材であり、16はインキタンク部11の後部に固着される後部軸体であり、17はキャップである。また、中継芯14を介在させることなく、ペン先13の後部をインキタンク部11内に直接配置してインキの導出を行ってもよい。
この実施形態のサインペンBは、本発明の水性インキ組成物20を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部21に充填したものである。
このサインペンCでは、インクタンク部21内にバルブ機構部22を介在して繊維芯からなるペン先33へインキが供給される構成となっている。図2中の24は、ホルダー部材であり、25はバルブ機構部22とホルダー部材24間に介在し、ペン先23の後部を保持する保持部材であり、26はキャップであり、27は撹拌ボールである。また、本実施形態は、中継芯を介さないでインキをペン先へ供給するものであるが、中継芯を設け、インキタンク部21からバルブ機構部22、中継芯を介在して繊維芯からなるペン先23へインキを供給する構成にしてもよい。
この実施形態のサインペンCは、本発明の水性インキ組成物30を中綿等に吸蔵させないで直接貯溜する軸体となるインキタンク部31に充填したものである。
このサインペンCでは、インキタンク部31内にバルブ機構32を介在して繊維芯からなるペン先33へインキ30が供給される構成となっている。図3中の34はホルダー部材であり、35はインキタンク部31の後部に固着される後部部材であり、36はスプリング37にて可動するインナーキャップであり、これによりキャップ38をした際に加圧されてバルブ42が開放されるのを防止することができる。図示符号39は、キャップ38の一方の端部の凹状内に嵌合された消し具である。
(実施例1)
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
着色エマルジョン(顔料):ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 60重量%
〔Nipol LX517A(日本ゼオン社製)、固形分量40%〕
ポリカルボン酸塩:スチレン・無水マレイン酸共重合物ナトリウム塩 1重量%
〔ポリスターSMX−1H、含有量23%(水溶液)、日本油脂社製〕
増粘剤:結晶セルロース〔旭化成(株)製〕 0.5重量%
〔RC−591、ホモミキサー、10000rpm 10分〕
尿素 10重量%
グリセリン 8重量%
水(精製水) 12.5重量%
上記配合成分のうち、タンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
着色エマルジョン(顔料):黄色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔LUMIKOL NKW−C2105E(日本蛍光社製)、平均粒径0.4μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:カルボキシ変性スチレンブタジエン樹脂の水分散液 55重量%
〔0696(JSR社製)、固形分量48%〕
ポリカルボン酸塩:スチレン無水マレイン酸共重合物のナトリウム塩 1重量%
〔デモールST:含有量23%(水溶液)、花王社製〕
増粘剤:セオラスクリームFP−03 5重量%
〔旭化成社製、結晶セルロースの水分散体、固形分量10%〕
尿素 10重量%
水(精製水) 21重量%
上記配合成分のうち、タンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
着色エマルジョン(顔料):ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製)、平均粒径1μm、固形分量42%〕
樹脂エマルジョン:スチレン・ブタジエン共重合体の水分散液 40重量%
〔C4850A(日本ゼオン社製)、固形分量70%〕
ポリカルボン酸塩:オレフィン・マレイン酸共重合物部分アミド化物の塩 1.1重量%
〔チクゾールK−130B、含有量21%(メタノール/水の混合溶液)、共栄社化学社製〕
増粘剤:キサンタンガム 0.15重量%
グリセリン 10重量%
水(精製水) 40.75重量%
上記配合成分のうち、タンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
着色エマルジョン(顔料):ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製、平均粒径1μm、固形分量42%)
樹脂エマルジョン:スチレン・ブタジエン共重合樹脂の水分散液 40重量%
〔C4850A(日本ゼオン社製)、固形分量70%〕
界面活性剤:NIKKOL DDP−8〔ジポリオキシエチレン(8)アルキルエーテルリン酸(日光ケミカルズ社製) 1重量%
尿素 18重量%
水(精製水) 33重量%
上記配合成分のうち、タンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
顔料:橙色樹脂粒子 2重量%
〔シンロイヒカラー FZ−2004、平均粒径3〜4μm〕
樹脂エマルジョン:アクリロニトリル・ブタジエン共重合体の水分散液 60重量%
〔Nipol LX517A(日本ゼオン社製)、固形分量40%〕
ポリカルボン酸塩:スチレン・無水マレイン酸共重合物ナトリウム塩 1重量%
〔ポリスターSMX−1H、含有量23%(水溶液)、日本油脂社製〕
増粘剤:結晶セルロース〔旭化成(株)製〕 0.5重量%
〔RC−591、ホモミキサー、10000rpm 10分〕
尿素 10重量%
グリセリン 8重量%
水(精製水) 18.5重量%
上記配合成分のうち、タンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
下記配合成分を下記方法により製造して消去性インキ組成物を得た。
着色エマルジョン(顔料):ピンク色樹脂粒子の水分散液 8重量%
〔SW−17(シンロイヒ社製、平均粒径1μm、固形分量42%)
樹脂エマルジョン:スチレン・ブタジエン共重合樹脂の水分散液 40重量%
〔C4850A(日本ゼオン社製)、固形分量70%〕
デモールSSL:特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩 1重量%
尿素 10重量%
グリセリン 8重量%
水(精製水) 33重量%
上記配合成分のうち、タンク内に撹拌しながら順次添加し、均一になるまで、混合撹拌した後、1μmのバグフィルターで濾過することによりインキを製造した。
また、得られた各消去性インキ組成物を用いて、下記構成のサインペンに充填し、下記評価方法にて、ペン芯顔料沈降状態、ペン芯外観の状態を評価した。
これらの結果を下記表1に示す。
ペン体:図2の実施形態Cを用いた。
ペン芯:ポリエステル製繊維束ペン芯、繊維径5デニール、気孔率約70%
上記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた消去性インキ組成物を上記構成のサインペンに充填し、筆記後、25℃で上向き放置、1週間保管後、描線を50cm筆記し、初期の描線との濃淡の差を目視にて下記評価基準で評価し、ペン芯顔料沈降性を評価した。
評価基準:
◎:初筆より初期と同じ描線濃度があり、問題ない。
○:初筆より薄い描線が、初筆より25cm以内で初期の濃度に復元する。
△:初筆より薄い描線が、初筆より25cm超過50cm以下で初期の濃度に復元する。
×:50cm筆記しても描線が薄く、初期の濃度に回復しなかった。
上記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた消去性インキ組成物を上記構成のサインペンに充填し、筆記後、25℃で上向き放置、1週間保管後のペン芯の状態を下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:ペン芯全体がインキ色であり、ムラもなく良好である。
○:ペン芯の先端部分のみが薄い色、若しくは無色になっている。
△:ペン芯の約半分が薄い色、若しくは無色になっている。
×:ペン芯全体が薄い色、若しくは無色になっている。
比較例を個別的に見ると、比較例1及び3は、ポリカルボン酸塩を含有しない場合であり、比較例2は、使用する顔料の粒子径が大きく、着色エマルジョンではないものであり、これらの場合、ペン先(ペン芯)での顔料沈降(色分かれ)を防止できず、また、ペン芯の外観状態も不良となることが判った。
また、実施例1〜3による消去性インキ組成物による筆記描線は、紙面に定着し、指による擦過でも消去できず、消し具により初めて消去できることが判った。
10 本発明の水性インキ組成物
11 インキタンク部
13 ペン先
Claims (7)
- 少なくとも、着色樹脂エマルジョンと、造膜性の非着色樹脂エマルジョンと、
結晶セルロースと、スチレン・マレイン酸共重合物のナトリウム塩、オレフィン・マレイン酸共重合物のナトリウム塩から選ばれる少なくとも1種であるポリカルボン酸塩と、水と、を含有し、インキの粘度が80mPa・s以下であることを特徴とする水性インキ組成物。 - 前記着色樹脂エマルジョンを、固形分にして0.5〜10重量%含有することを特徴とする請求項1記載の水性インキ組成物。
- 前記造膜性の非着色樹脂エマルジョンを、固形分にして10〜45重量%含有することを特徴とする請求項1又は2記載の水性インキ組成物。
- 前記ポリカルボン酸塩を0.5〜5重量%含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の水性インキ組成物。
- 前記結晶セルロースを0.1〜10重量%含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の水性インキ組成物。
- 請求項1〜5の何れか一つに記載の水性インキ組成物を充填してなることを特徴とする消去性サインペン。
- 請求項1〜5の何れか一つに記載の水性インキ組成物を充填してなることを特徴とする布用サインペン。
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