JP2540341B2 - 可逆熱変色性インキ内蔵の筆記具 - Google Patents

可逆熱変色性インキ内蔵の筆記具

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JP2540341B2 JP21072187A JP21072187A JP2540341B2 JP 2540341 B2 JP2540341 B2 JP 2540341B2 JP 21072187 A JP21072187 A JP 21072187A JP 21072187 A JP21072187 A JP 21072187A JP 2540341 B2 JP2540341 B2 JP 2540341B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は水性インキを内蔵する筆記具に関し、詳細に
は前記インキは可逆熱変色性組成物を内包する微小カプ
セルを着色剤として含有する水性インキであり、温度変
化により可逆的に変色する筆跡を与える筆記具に関す
る。
従来の技術 可逆的熱変色性を呈する筆跡を与える筆記具用インキ
及びそれを含有する筆記具については特公昭51-48085号
公報の記載があげられるが、この記載は可逆熱変色性組
成物をワックスで固めたクレヨンや前記組成物を有機溶
剤に溶解してなるインキを適用した筆記具に関するもの
である。
また特公昭52-7764号公報には前記組成物を内蔵する
微小カプセルを水性ビヒクルに分散してなる印刷インキ
について開示されている。
発明が解決しようとする問題点 前記従来技術の筆記具による筆跡は紙に浸透する間に
前記組成物の構成成分である必須3成分が分離されて、
筆跡の発色濃度や変色温度が組成物自体が有していた発
色濃度より薄くなったり、変色温度がずれしまうと言う
現象がしばしば起こる傾向があった。また前記可逆熱変
色性組成物は概ね疎水性で水には不溶であり、比重が1
より小であるものがほとんどで、水中への均一分散も難
しく、それを着色剤とする筆記具用水性インキを調製す
ることは困難であった。
また前記印刷インキは前記組成物を内蔵する微小カプ
セルを水性ビヒクル中に分散してなるものであるが、一
般に印刷インキのビヒクルは筆記具用のそれに比較して
粘度が高く、それ故に前記微小カプセルはビヒクル中に
安定な分散状態に保たれるが、そのような粘性のインキ
を毛管サイズのインキ路を有するペン体を備えた筆記具
へ適用してもスムーズなインキ出は得られない。また前
記印刷インキを低粘性化するため、単に水などの媒体に
よる希釈では前記微小カプセルの比重が1より小である
ことに起因して安定な分散状態がえられず、筆記具の軸
胴内で微小カプセルのビヒクルからの分離が生起して、
筆記時にはペン体からビヒクルのみが優先して流出し
て、ごく薄い発色濃度の筆跡しか得られない。
一般に前記可逆熱変色性組成物の粒子を被覆して得ら
れる微小カプセルの粒子径は約3〜20μmの範囲であ
る。毛管サイズのインキ路からなっているペン体、場合
によっては毛管路を有するインキ吸蔵体をも備えている
筆記具へ適用するインキの着色剤としてはより小径で且
つ狭い粒度分布を示す微小カプセルであることが必要で
ある。
また一般の顔料のようにμm未満のオーダーの微細粒
子の場合と異なり、前記のとおりμmオーダーの粒子径
の微小カプセルを低粘度のビヒクル中に長期間安定な分
散状態に保つことは難しい問題である。
本発明は前記問題点を解決し、通常の水性顔料インキ
と変わらぬ程度にペン体からインキが流出し、温度変化
により可逆的に変色する筆跡を与える水性インキを内蔵
する筆記具を提供しようとするものである。
問題点を解決するための手段 本発明の筆記具は、電子供与呈色性有機化合物、電子
受容性化合物及び変色温度を決める有機化合物からなる
可逆熱変色性組成物を内蔵する微小カプセルが水性ビヒ
クルに分散されてなる水性インキを内蔵する筆記具であ
る。
このような水性インキを内蔵する筆記具は、軸方向に
集束された繊維束の各繊維間を部分的に融着させるか、
樹脂で結着させて得られる繊維ペン体または軸方向に透
孔を有するプラスチック成形ペン体等の軸方向に毛管サ
イズのインキ路を有するペン体が、金属またはプラスチ
ック材から成形された軸胴の一端に適宜のペン体保持体
を介するかまたは直接に固着された構造である。ペン体
が径約3mm以上の繊維ペン体の場合には軸胴の一端に直
接固着される場合もあるが、一般には金属またはプラス
チック材から成形されたペン体保持部材に嵌着されたペ
ン体加工体が軸胴の一端に固着される。前記軸胴は一端
がペン体またはペン体加工体が圧入または嵌合されて固
定される形状であり、他端は閉塞された中空の筒状体で
ある。軸胴内にはインキがフリーの状態または繊維束や
フェルトのような吸収材に吸蔵されて収容されている。
インキがフリーの状態で収容されている場合にはペン
体はペン体保持部材内に軸方向に摺動自在に保持されて
いて、ペン体とインキ貯蔵部との間の軸胴内にはペン体
の軸方向の摺動により開閉される弁機構が設けられる。
またインキ吸蔵体が用いられる場合にはペン体後端はイ
ンキ吸蔵体の一端に接触または没入している構造であ
り、吸蔵体内のインキはペン体の毛管作用によりペン体
先端に導出される。
前記インキに用いられる可逆熱変色性組成物は電子供
与呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び前記2者の
呈色反応の生起温度を決める有機媒質化合物からなる組
成物であるが、前記電子受容性化合物が変色温度調節機
能を兼ねる場合は前記有機媒質化合物を含まない2成分
系でもよい。これら可逆熱変色性組成物としては例えば
特公昭51-44706、44707、44709号及び特開昭57-167380
号等公報に開示されている組成物が用いられる。
前記可逆熱変色性組成物を内蔵する微小カプセルは公
知の微小カプセル化法により調製される。このような微
小カプセル化法は例えば特公昭51-28589、35216、35414
号、同52-7764号及び同53-7396号等公報に開示されてい
る処方が適用される。
微小カプセル化された可逆熱変色性微粒子は、インキ
中での分散安定性及びペン体の毛管インキ路からの流出
性の面から粒子径がより小さく、粒子径分布が狭いもの
が望ましい。具体的には粒子径は10μm以下であればよ
く、好ましくは5μm以下、最も好ましくは3μm以下
である。
可逆熱変色性インキは前記微粒子を水性ビヒクル中に
分散して得られるが、分散液における微粒子と水性ビヒ
クルの比重差を0.05以下に調節することにより、長期間
安定な分散性を示すインキが得られる。
一般に可逆熱変色性組成物は、前記有機媒質化合物と
して比重が1より小さい、長鎖アルキル基を含む化合物
を相対的に多量に含有するため、比重が0.80〜1.05の範
囲内のものが多く、変色温度の低いもの程、比重は小さ
くなる傾向がある。このため、前記組成物を内蔵する微
小カプセルも当然比重が小であり、このような微粒子を
水性ビヒクル中に分散しても経時により微粒子が浮上し
て、微粒子間の凝集、ケーキ化を起こし再分散の困難な
ものとなる。こうした分離現象は筆記具中でも当然生起
し、前記凝集物はペン体の毛管インキ路を塞いでペン先
からのインキ流出を不可能にする。本発明者らは鋭意研
究の結果、水性ビヒクルと前記微粒子の比重差が0.05以
内であれば、この種の分散液は経時しても極めて安定な
分散性を保つという知見を得た。
ここに用いる水性ビヒクルの比重は通常1.0〜1.1(20
℃)である。このようなビヒクル中に例えば比重約0.8
の微粒子を分散してインキを調製しても、経時により微
粒子は浮上、凝集して固いケーキ状となってしまう。
本発明者らは次の方法によって、微粒子の比重を調節
してビヒクルの比重値に近似させることにより前記問題
点を解決した。
前記微粒子の比重を大きくするには二方法があり、一
つは熱変色性組成物にその変色機能に影響を及ぼさず、
且つ比重の大きい化合物を変色機能を低下させない範囲
で添加する方法であり、もう一つの方法は微小カプセル
化の際に使用する膜剤として、比重の大きい膜剤を用い
る方法である。これらの方法は微粒子の比重が1より小
で、水性ビヒクルとの比重差が0.1以上の場合にその差
を0.05以下にまで縮小するのに有効であり、前記比重差
が0.05より大きく0.1未満の程度の場合には通常の膜剤
での微小カプセル化によっても調節可能である。
前記比重の大きい化合物を用いる方法では、前記化合
物は少量の添加で効果が得られるものが好ましく、その
例として有機ハロゲン化物があげられる。有機ハロゲン
化物の添加量は可逆熱変色性組成物100重量部に対し、
5〜50重量部が適当である。50部を越えて添加した場
合、熱変色性組成物の発色濃度がかなり低下して実用性
がなく、5部未満の添加では実質的な比重調節効果は認
められない。この方法を適用する場合には、後工程の微
小カプセル化による若干の比重変動を考慮して、その添
加量を調整しておく必要がある。
前記有機ハロゲン化物の例を下に示す。ハロゲン原子
としては塩素、臭素、沃素があげられるが、好ましくは
比重増大効果が大きく、且つ多種類の化合物が存在する
臭素があげられる。
ヘキサブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、臭素
化フェニルメタクリル酸エステル、臭素化フェニルアク
リル酸エステル、テトラクロロビスフェノールA、デカ
ブロモビフェニルエーテル、ジブロモステアリン酸エス
テル、塩化パラフィン、トリス(2,3−ジブロモプロピ
ル)ホスフェート、ジブロムフェノール、2,3−ジブロ
モプロパノール、テトラクロロ無水フタル酸、パークロ
ルペンタシクロデカン、テトラブロムブタン、塩素化ポ
リフェニル等の比重1.2以上のハロゲン置換された芳香
族及び脂肪族化合物があげられる。
一方、微小カプセルの膜材で比重調節する場合には公
知の微小カプセル化法で実施できるが、得られる微小カ
プセル粒子の比重と水性ビヒクルの比重差が0.05以内と
なる様に膜材の種類及び量を調整する。
適用される微小カプセル化法としては界面重合法、イ
ンサイチュー重合法、液中硬化被覆法、水溶液系からの
相分離法、有機溶液系からの相分離法、液中乾燥法及び
融解分散冷却法等があげられが、ペン体の毛管サイズの
インキ路内をインキが流動するためには粒子径が10μm
以下、好ましくは5μm、更に好ましくは3μm以下の
できるだけ均一な分布の微小カプセル粒子であることを
必要とするという点から界面重合法かインサイチュー重
合法によるのが好ましい。
更に微小カプセルの壁膜を補強するために前記微小カ
プセル化法を組み合わせて多重膜としても良い。
比重調節に用いられる膜材は熱変色性組成物の変色機
能を阻害することなく壁膜を形成し、且つ比重増大効果
を有する主剤及び硬化剤または触媒が用いられる。
熱変色性組成物と水性ビヒクルの比重差が比較的大き
く(比重差>0.1)、通常の膜材では比重調節が難しい
場合には次のような比重のきわめて大きい膜材の適用が
有効である。このような膜材としてはハロゲン原子で置
換された樹脂が好ましく、例えば臭素化エポキシ樹脂、
塩素化エポキシ樹脂、臭素化不飽和ポリエステル樹脂、
臭素化アクリル樹脂、臭素化ウレタン樹脂、臭素化スチ
レン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの含ハロゲン樹
脂で、通常難燃性樹脂として用いられているものがあげ
られる。これらの樹脂は1種または2種以上が適宜硬化
剤または触媒と組み合わされて微小カプセルの膜材とさ
れる。
熱変色性組成物の比重がほぼ1で水性ビヒクルの比重
に近似している場合は前記の含ハロゲン化合物または含
ハロゲン樹脂の添加は必ずしも必要でなく、通常の膜材
による微調節でよい。
何れの場合も必要とすることは生成される微小カプセ
ルと水性ビヒクルの比重差を0.05未満とすることであ
る。
前記比重の大きい化合物及び膜材(以下、両方を含め
て比重調節剤という)は単独でも2種以上併用してもよ
い。熱変色性組成物への比重調節剤の添加量は重量比で
100部に対し5〜50部、好ましくは10〜40部である。過
剰量を用いると希釈効果により熱変色性組成物の濃度が
低下し、5部未満では実質上効果がでない。
水性ビヒクルは樹脂エマルション、アルカリ可溶型樹
脂、水溶性樹脂、湿潤剤、界面活性剤、水溶性溶剤及び
その他の添加剤から選ばれる1種または2種以上と水か
らなる。
樹脂エマルションとしてはポリアクリル酸エステル
系、アクリル酸エステル−スチレン共重合体系、ポリ酢
酸ビニル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレ
ン−塩化ビニル共重合体系、メタクリル酸−マレイン酸
共重合体系、α−オレフィン−マレイン酸共重合体系、
エチレン−メタクリル酸共重合体系、ポリウレタン樹脂
系等の樹脂エマルションがあげられる。一般に熱変色性
組成物の微粒子は樹脂エマルション中に含まれる界面活
性剤または乳化剤の影響を受けやすく、例えば40〜50℃
位の温度における長期の経時により熱変色機能の低下ま
たは喪失をきたすものが少なくない。従って好ましい樹
脂エマルションとしては界面活性剤を含まない、いわゆ
る自己乳化型の樹脂エマルションまたはディスパージョ
ンがあげられる。自己乳化型樹脂エマルションまたはデ
ィスパージョンとは酸価を有するモノマー成分、例えば
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等と疎水性のモ
ノマー成分、例えばエチレン、プロピレン、α−オレフ
ィン等との共重合樹脂のカルボキシル基の全部または一
部を中和してディスパージョンタイプとしたものであ
る。この種の自己乳化型樹脂エマルションまたはディス
パージョンは熱変色性微粒子の熱変色機能に影響を及ぼ
すことなく、且つ一般に比重にきわめて近いので、熱変
色性微粒子との比重差調節についても有利に作用する
他、前記微粒子の分散安定化にも良効果をもたらす。
アルカリ可溶性樹脂としては、スチレン−マレイン酸
共重合樹脂、エチレン−マレイン酸共重合樹脂、スチレ
ン−アクリル酸共重合樹脂等があげられる。これら樹脂
を溶解するのに水酸化ナトリウム、アンモニア、トリエ
タノールアミン、モノエタノールアミンなどが通常用い
られる。このような樹脂のアルカリ性溶液は筆記具のペ
ン先で乾燥しても内部から供給されるインキに再溶解し
て再筆記可能となる利点がある。
その上に樹脂エマルションまたはアルカリ可溶性樹脂
の使用はインキによる筆跡に耐水性を付与するものであ
る。
水溶性樹脂としてはカルボキシメチルセルロース、メ
チルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビ
ニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナ
トリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、アラビアガ
ム等があげられる。
これら樹脂は熱変色性微粒子の保護コロイド効果によ
り分散安定に寄与し、且つインキ自体の粘度を調節する
ものである。
湿潤剤としてはエチレングリコール、プロピレングリ
コール、グリセリン、ピロリドン二量体等の液状の親水
性有機化合物及びブドウ糖、蔗糖、ソルビトール、デキ
ストリン、マルチトール、コンドロイチン硫酸ナトリウ
ム、シクロデキストリン、還元澱粉の加水分解物、ポリ
グリセリルメタクリレート、尿素等があげられるが、熱
変色性組成物の熱変色機能へ悪影響を及ぼさない点で後
者の化合物群が好ましい。
界面活性剤としてはノニオン、カチオン、アニオン型
いずれのタイプの活性剤も使用できるが、ノニオン又は
アニオン型が好ましい。しかし、前述のとおり界面活性
剤は一般に熱変色性組成物との長期の接触によりその熱
変色機能を低下または喪失させることがあるので、添加
量は制限される。熱変色性微粒子のビヒクル中での分散
安定性への寄与と前記阻害作用を考慮するとインキ組成
中2重量%以下の添加量が好ましい。
水溶性溶剤はインキへ速乾性の付与、樹脂の溶解助剤
などの目的で必要に応じて添加されるが、界面活性剤と
同様に熱変色性組成物の変色機能に影響を及ぼすことも
あるので、インキ組成中5重量%以内の範囲で用いられ
る。水溶性溶剤の例としてはメタノール、エタノール、
イソプロパノール、エチレングリコールモノメチルエー
テル、アセトン等があげられる。
その他の添加剤としては一般に筆記具用水性インキに
用いられる消泡剤、分散安定剤、色別れ防止剤、ぬれ性
付与剤等があげられる。また染料や顔料をインキに添加
することにより、筆跡の色変化を多様化することもでき
る。例えば温度変化により青色から無色に変化する筆跡
を与えるインキにピング色の蛍光顔料を添加すれば、紫
色から蛍光ピンク色への色変化となるし、白顔料を添加
すればパステル調の色彩が得られる。
本発明の筆記具に適用される水性インキは水性ビヒク
ル中に、前記熱変色性組成物を内包し、水性ビヒクルと
の比重差が0.05以下に調節された微小カプセルを分散す
ることにより調製される。
作用 前記のとおり、本発明の筆記具は可逆熱変色性組成物
を着色剤とする水性インキを用いているので、その筆跡
は温度変化により可逆的に色変化を呈する。そして前記
熱変色性組成物は微小カプセルに内包された個々の微粒
子として筆跡中に存在し、熱変色性組成物が紙等の被筆
記体中に浸透してその機能を弱めることなく、筆跡は温
度変化させることにより繰り返し何度も色変化を生起さ
せることができる。
また前記微小カプセルは水性ビヒクルと比重差を0.05
以下となるよう調節してあること、及び粒子径を10μm
以下としたことにより、低粘度の筆記具用インキの水性
ビヒクル中で安定に分散状態を維持して筆記具中で凝集
することなく、筆記時にはインキはペン体の毛管サイズ
のインキ路をスムーズに通過してペン先から流出する。
実施例 まず熱変色性インキの処方例について述べる。処方例
中の部数は全て重量部を表し、比重及び粘度は20±2℃
において測定した値を示す。
処方例1 1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン1.5部、
ビスフェノールA3部、セチルアルコール15部、カプリン
酸ステアリル15部からなる熱変色性組成物とエポキシ樹
脂(ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル系、エポ
キシ当量184乃至194)6部を加温下、均質に混合したも
のを1〜1.5μmの微小滴となるようホモミキサーで、7
0℃に加温された20%アラビアガム水溶液60部中に乳化
させる。
得られた乳化液を攪拌しつつ、そこにエポキシ樹脂硬
化剤(脂肪族ポリアミン)2部を水30部中に溶解した水
溶液を1時間かけて微量づつ滴下する。次いで液温を80
℃に上げて、3時間攪拌を続けた。生成した懸濁液から
遠心分離により、熱変色性組成物内包のエポキシ樹脂壁
膜からなる微小カプセルを得た。該カプセルは平均粒子
径1.5μm、比重0.98であった。
前記微小カプセル30部を下記組成の水性ビヒクル70部
中に均一に分散させて熱変色性インキAを得た。
水性ビヒクルはカルボキシル変性ポリオレフィン系自
己乳化エマルション(固形分24〜25%、製鉄化学(株)
ザイクセンA)30部、ポリグリセリンメタクリレート系
湿潤剤(昭和電工(株)U−ゼリー)4部、トリエタノ
ールアミン1部、メチルセルロース(日本油脂(株)マ
ーポローズM-25)0.5部、防黴剤(英国ICI社プロキセル
XL-2)0.2部及び消泡剤0.4部を水34部に均質に混合して
なる組成であり、比重1.01、粘度35cpsである。
処方例2 3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)
−3−(1−エチル−2メチルインドール−3−イル)
−4−アザフタリド1.5部、ビスフェノールA3部、ミリ
スチルアルコール15部、ステアリン酸ブチル15部からな
る熱変色性組成物をハロゲン化エポキシ樹脂(テトラブ
ロモビスフェノールA・ジグリシジルエーテル系、エポ
キシ当量340〜380)6部と加温下、均質に混合したもの
を、70℃に加温した20%アラビアガム水溶液60部中にホ
モミキサーで2〜3μmの微小滴となるよう乳化する。
次いで得られた乳化液を攪拌しながら、脂肪族ポリアミ
ン2部を水30部に溶解した水溶液を1時間かけて滴下
し、液温を90℃に上昇させて3時間攪拌を続けた。生成
したけん濁液から遠心分離により前記熱変色性組成物を
内包するエポキシ樹脂壁膜の微小カプセルを得た。該微
小カプセルは平均粒子径3μm、比重0.97であった。
前記微小カプセル30部を下記組成の水性ビヒクル70部
中に均一に分散させて熱変色性インキBを得た。
前記水性ビヒクルはカルボキシル変性ポリオレフィン
系自己乳化エマルション(固形分27%、三井石油化学
(株)ケミパールS120)30部、ポリグリセリンメタクリ
レート系湿潤剤4部、トリエタノーアミン1部、防黴剤
0.2部、消泡剤0.4部、カルボキシメチルセルロース(第
一工業製薬(株)セロゲン5A)0.35部を水34部に均一に
混合してなる組成であり、比重は1.01、粘度は30cpsで
あった。
処方例3 処方例1の処方において、カプセル化の乳化液微小滴
を6〜7μmとなるよう調節したことを除いては、同じ
原料及び処方により、平均粒子径7μm、比重0.98の微
小カプセルが分散された熱変色性インキCを得た。
処方例4 下記の水性ビヒクルを用いたことを除いては処方例1
と同じ処方にて熱変色性インキDを得た。
前記水性ビヒクルはカルボキシル変性ポリオレフィン
系自己乳化エマルション(固形分40%)30部、ポリグリ
セリンメタクリレート系湿潤剤4部、トリエタノールア
ミン1部、防黴剤0.2部、消泡剤0.4部を水34部に均一に
混合してなる組成であり、比重1.01、粘度22cpsであっ
た。
処方例5 下記の水性ビヒクルを用いたことを除いては処方例1
と同じ処方にて熱変色性インキEを得た。
前記水性ビヒクルはポリアクリル酸系樹脂30部、プロ
ピレングリコール2部、ポリグリセリンメタクリレート
系湿潤剤4部、トリエタノールアミン1部、防黴剤0.2
部、消泡剤0.2部を水34部中に均一に混合してなる組成
であり、比重1.05、粘度25cpsであった。
処方例6 乳化液における液滴の粒子径を15μmとしてことを除
いては処方例1と同じ処方により、熱変色性インキFを
得た。微小カプセルの平均粒子径は15μm、比重は0.98
であった。
処方例7 処方例6で得られた微小カプセル30部を下記の水性ビ
ヒクル70部中に均一に分散して熱変色性インキGを得
た。
前記水性ビヒクルはスチレン−アクリル酸エステル共
重合樹脂エマルション(固形分45%)40部、プロピレン
グリコール1部、ポリグリセリンメタクリレート系湿潤
剤4部、トリエタノールアミン1部、防黴剤0.2部、消
泡剤0.2部を水24部中に均一に混合してなる組成であ
り、比重1.04、粘度33cpsであった。
処方例8 1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン1.5部、
ビスフェノールA3部、ラウリルアルコール15部、パルミ
チン酸ブチル15部からなる熱変色性組成物を用いたこと
を除いては処方例1と同じ処方により熱変色性インキH
を得た。
前記熱変色性組成物内包の微小カプセルは平均粒子径
1.0μm、比重0.86であった。
処方例9 処方例8で用いた熱変色性組成物34.5部とハロゲン化
エポキシ樹脂18部、臭素化フェニルアクリル酸エステル
10部を加温下、均一に混合したものを、70℃に加温した
20%アラビアガム水溶液60部中に1μmの微小滴となる
ようホモミキサーで乳化した。以下、処方例1と同じ処
方にて熱変色性インキIを得た。
前記微小カプセルは平均粒子径1.0μm、比重0.96で
あった。
処方例10 1,3−ジメチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラ
ン1.5部、ビスフェノールA3部、ステアリルアルコール1
5部、ステアリン酸ステアリル15部からなる熱変色性組
成物とエポキシ樹脂6部を加温下、均一に混合したもの
を、70℃に加温した20%アラビアガム水溶液60部中に、
10〜20μmの微小滴になるようホモミキサーで乳化す
る。以下、処方例5と同じ処方で熱変色性インキJを得
た。
前記熱変色性組成物を内包する微小カプセルは平均粒
子径12μm、比重1.02であった。
処方例11 乳化液の液滴の粒子径を1〜3μmとしたことを除い
ては処方例10と同じ処方により、熱変色性インキKを得
た。
前記インキの微小カプセルは平均粒子径1.5μm、比
重1.02であった。
試験 前記熱変色性インキA〜Kの各々の所定量を下記構造
のマーキングペンに充填して試料ペンA〜Kとして試験
に供した。
ペンはアクリル繊維束からなるペン体、ペン体保持部
材、ペン体の軸方向の作動により開閉する弁機構及び円
筒状の軸胴を有し、前記軸胴内のインキが、軸胴の先端
に保持体により取りつけられたペン体に弁機構を介して
流出し、供給される構造であり、ペン体は断面における
孔径が20〜100μm(平均孔径約50μm)、気孔率66%
のもの(試料ペンA〜E,H,I,Kに適用)及び孔径30〜150
μm(平均孔径80μm)、気孔率76%のもの(試料ペン
F,G,Jに適用)の2種を用いた。
未筆記の各試料ペン及び所定用紙に筆記した後、キャ
ップした各試料ペンをそれぞれ40℃に保たれた恒温槽中
に30日間放置した。経時後、各試料ペンの筆記性につい
て調べ、結果を表1に示す。
発明の効果 前記のとおり、本発明の筆記具は温度変化により可逆
的に変色する筆跡を与え、その筆跡は、熱変色性組成物
が微小カプセルに内包されていることにより、経時して
も色及び変色性能が維持される。また筆記された用紙を
水中に浸漬しても筆跡は滲んだり、流失したりすること
はなかった。
本発明の筆記具に用いられるインキは極低い粘度(20
〜40cps程度)であるにも拘わらず、筆記具中で長期間
放置されても、微小カプセルは浮上、凝集することな
く、安定なけん濁状態に維持され、ペン先からスムーズ
に流出して当初と殆ど変わらない筆跡を与える。この場
合、熱変色性組成物内包の微小カプセルと水性ビヒクル
との比重差が小さい程、前記筆記性能は良好であり、比
重差0.05以下であれば充分であった。また微小カプセル
の粒子径も小さい程よく、約10μm以下であれば、ほぼ
満足すべき筆記性能がえられるが、より小径であるほど
より良い結果が得られた。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸方向の毛管インキ路を有するペン体が軸
    胴の一端に固着されてなり、軸胴内に収容されているイ
    ンキがペン体の後部から前記インキ路の毛管作用により
    筆記先端へ供給される機構の筆記具において、前記イン
    キは電子供与呈色性有機化合物、電子受容性化合物及び
    変色温度を決める有機化合物からなる可逆熱変色性組成
    物を内包する微小カプセルが水性ビヒクルに分散されて
    なる水性インキであることを特徴とする筆記具。
  2. 【請求項2】前記微小カプセルと水性ビヒクルとの比重
    差が0.05以下である特許請求の範囲第1項記載の筆記
    具。
  3. 【請求項3】前記微小カプセルは粒子径が10μm以下で
    ある特許請求の範囲第1項または第2項記載の筆記具。
  4. 【請求項4】前記水性ビヒクルは自己乳化型のディスパ
    ージョン樹脂を主成分とする水性ビヒクルである特許請
    求の範囲第1項記載の筆記具。
  5. 【請求項5】前記水性ビヒクルは水溶性樹脂が併用され
    てなる水性ビヒクルである特許請求の範囲第4項記載の
    筆記具。
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