JP2008119841A - 香り付きペン - Google Patents

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Abstract

【課題】擦過等せずとも長期間芳香を楽しむことが可能で、詰まりを防止し、香りの出るインクを簡便に手動にて塗布可能な香り付きペンを提供する。
【解決手段】本体に備えられた液収納部に、香料をカプセル化したマイクロカプセルが分散した分散液が収納され、先端部により分散液が塗布可能な香り付きペンであって、マイクロカプセルが徐放性マイクロカプセルであり、分散液が湿潤剤を含み、液収納部と先端部とを連通させるための開閉可能な流路を有し、先端部が弾性体により本体から突出状態に保持され、塗布時の押圧により先端部が本体内部に向かって移動することにより流路が開とされて液収納部に収納されている液体が先端部に伝えられることを特徴とする香り付きペン。
【選択図】図1

Description

本発明は、香りを発するインクを手動にて塗布可能な香り付きペンに関する。
香りの出るインクを利用した香り付きペンが知られている。特許文献1には、香料入りの感圧性カプセルを混入させてなるインクを用いるペンが開示されている。この文献によれば、香料を加えたインクを用いた香り付きペンのように芳香がすぐに失われることなく、用紙上でインクとともに固まった感圧性カプセルを破壊すれば、いつでもその芳香を楽しめるとされている。
また、香料入りマイクロカプセル、水溶性高分子凝集剤、及び水を必須成分とするインクを用いた筆記又は塗布具が、特許文献2に開示されている。
特開平7−186587号公報 特開平2003−128971号公報
しかしながら、香料を加えたインクを用いた香り付きペンでは芳香がすぐに失われる一方、香料を内包する感圧カプセルを含むインクを用いた香り付きペンでは香りを出すために擦過等によりマイクロカプセルを破壊しなければならない。
また、特許文献2記載の筆記又は塗布具では、繊維収束体にインキを吸蔵させている。このためインキの液成分は繊維収束体を良好に伝わるが、マイクロカプセルは繊維材料の中に詰まりやすく、改善の余地があった。
本発明の目的は、擦過等しなくとも長期にわたって芳香を楽しむことを可能とし、さらに、マイクロカプセルの詰まりを防止し、香りの出るインク(マイクロカプセル分散液)を簡便に手動にて塗布可能な香り付きペンを提供することである。
本発明により、本体に備えられた液収納部に、香料をカプセル化したマイクロカプセルが分散した分散液が収納され、先端部により該分散液が塗布可能な香り付きペンであって、
該マイクロカプセルが徐放性マイクロカプセルであり、
該分散液が湿潤剤を含み、
該液収納部と先端部とを連通させるための開閉可能な流路を有し、
該先端部が弾性体により該本体から突出状態に保持され、
塗布時の押圧により該先端部が本体内部に向かって移動することにより該流路が開とされて該液収納部に収納されている液体が先端部に伝えられる
ことを特徴とする香り付きペンが提供される。
前記液収納部に粒状物を含む上記香り付きペンが好ましい。
本発明により、擦過等しなくとも長期にわたって芳香を楽しむことを可能とし、さらに、マイクロカプセルの詰まりを防止し、香りの出るインク(マイクロカプセル分散液)を簡便に手動にて塗布可能な香り付きペンが提供される。
本発明の香り付きペンにおいては、香料をカプセル化したマイクロカプセルが分散した分散液を、インクとして用いる。インクは有色に限らず、無色であってもよい。
マイクロカプセルの内包物に用いる香料としては、マクロカプセルに内包させることのできる公知の香料から適宜選んで用いることができる。例えば、レモン油、ラベンダー油等の天然香料を用いることができ、また各種合成香料を用いることができる。香料は、単独でまたは必要に応じて二種以上をブレンドして、また必要に応じて希釈して、マイクロカプセルに内包させることができる。
マイクロカプセル化できる香料としては、水に溶けないもしくは難溶な液体を用いることができる。またカプセルの製法上、沸点の高い物質(沸点が100℃以上)の物質が好ましい。水に可溶な香料は、水に溶解しない溶媒で希釈することでカプセル化が可能である。L−メントールのような固体は、溶媒に溶解して使用できる。
マイクロカプセルの壁物質としては、マイクロカプセルの壁物質として公知の物質から適宜選ぶことができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム、天然樹脂などを挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂を挙げることができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂などを例示することができる。天然樹脂としてはゼラチン、アラビアゴムア、アルギン酸などを例示することができる。
マイクロカプセル分散液(インク)の分散媒としては、マイクロカプセルを分散させることのできる水性溶媒等の公知の分散媒を用いることができる。代表的には、分散媒として水を用いることができる。また、分散媒として、塗布される紙のセルロースによく馴染み拡散するグリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、などの高級アルコールが好ましい。
マイクロカプセルを形成するために、界面重合法、コアセルベーション法、in−si
tu法、相分離法など公知のマイクロカプセル化方法を適宜利用することができる。
これらの方法でマイクロカプセルが分散した液が得られる場合には、それをそのままでもしくは適宜添加剤等を添加して香り付きペンの液収納部に収納することができる。乾燥したマイクロカプセルが得られる場合は、マイクロカプセルを適宜分散媒に分散させ、適宜添加剤等を添加して香り付きペンの液収納部に収納することができる。
本発明において、インクに含ませるマイクロカプセルとして、徐放性マイクロカプセルを用いる。徐放性マイクロカプセルは、破壊されずとも内包物を例えば数週間にわたって放出可能なマイクロカプセルである。
原料(香料)の揮発・拡散を遅延させる目的で香料を徐放性マイクロカプセル化する。徐放性マイクロカプセルは、トイレタリーの芳香剤の拡散を調節するスポンジや素焼きの容器の役割をカプセル膜にもたせたものである。徐放性の範囲(持続期間)は対象薬品によって異なり、例えば防虫剤カプセルの場合は数年であるが、香料の場合はインクが乾燥した時点をスタートとして1ヶ月程度を目安にすることができる。
徐放性マイクロカプセルとして、例えば特開昭63−178840号公報に記載されるような、芯物質が揮発性をもつ疎水性液状物質から成り、壁膜がメラミン、尿素及びそれらの誘導体の中から選ばれた少なくとも1種のアミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合生成物から成る徐放性マイクロカプセルを利用することができる。この徐放性マイクロカプセルにおいて、例えば壁膜がメラミンとホルムアルデヒドとのモル比を1:2.5〜1:6(メラミンのモル数:ホルムアルデヒドのモル数)とすることができ、また、壁膜の芯物質に対する割合を3〜15質量%とすることができる。
また、特許第2649796号公報に記載されるような、水性媒体中に疎水性芯物質を分散させたのち、この芯物質の周囲に壁膜を形成させてマイクロカプセルを製造するに当り、あらかじめ該疎水性芯物質中に、水性媒体及び疎水性芯物質の両方に対して相溶性を示す液状物質を含有させ、その含有量を疎水性芯物質100質量部に対して0.5〜20質量部の範囲で変えるとともに、その疎水性芯物質に対する分配率及び壁膜形成のための反応条件を変えることにより壁膜のち密性を調節する生成マイクロカプセルの芯物質放出量制御方法を利用して、徐放性を制御することができる。
本発明において、マイクロカプセルの平均粒径が大きいと、カプセル1粒当たりの内包物の量を多くし内包物が有する機能やその持続性を強くすることが容易である。また、マイクロカプセルの平均粒径が小さいと、香り付きペンからのインクの吐出性に優れ、吐出詰まりを優れて防止でき、インク中でのカプセルの分散安定性に優れる。そのため、内包物の機能の持続性と香り付きペンの吐出流動性を考慮し、好ましくは0.5μm以上6μm以下、より好ましくは2μm以上3μm以下の範囲の体積平均粒子径を有するマイクロカプセルを用いる。
感圧カプセルの場合は、粒径に応じた圧力で潰れやすくしている。例えば、ノーカーボン紙(筆圧200g)の場合は3〜5μmの粒径が適当であり、2μmだとより強い圧力での破壊になる。粒径が小さくなると極端につぶれにくくなるので、圧破壊を目的とした場合は不向きである。しかし本発明では感圧カプセルではなく徐放性カプセルを用いているので、カプセル粒径を上記のように小さくするに好適である。
マイクロカプセルがインク中に安定して分散し、優れた吐出流動性を維持するためにはマイクロカプセルの量が少ない方が良いが、塗布されたマイクロカプセルの内包物の機能やその持続性を強くする観点からはマイクロカプセルの量が多い方が良い。そのためインク中のマイクロカプセルの含有量は、例えば0.5質量%以上15質量%以下とすることができる。また、香料の種類によって臭いを感じる強さが異なるため配合比(マイクロカプセルの含有量)を調整することができる。
インクには、着色剤を含有させることができる。この場合インクは着色用のインクとして用いることができ、本発明の香り付きペンを例えばマーキングペンとして用いることができる。着色剤としては、顔料や染料を適宜用いることができる。
また、インクを実質的に無色にし、香り付きペンの筆跡を目視では認識できないようにすることができる。この場合、香り付きペンにより紙や布にインクを付着させても色は付かず、香りのみつけることができる。このような無色のインクを得るために、インクに着色剤を含有させないか、あるいは、インクに白色の顔料を含有させることができる。顔料はインクの浸透・拡散などに影響する。無色のインクにおいても、顔料を入れた方が、表面積が大きくなり乾燥が良くなるため、好ましい。つまり無色のインクは、紙等の被塗布物に塗布された状態で下地が透けて見える(無色に見える)インクである。
白色の顔料としては微粉末シリカが好ましく、例えばスノーテックス−PS(商品名。日産化学(株)製)やキャボスパース2(商品名。キャボット社製)がある。
顔料として蛍光顔料を用いれば、香り付き蛍光ペンを得ることができる。蛍光顔料として水分散型蛍光顔料があり、例えばSINLOIHI PIGMENT SF−5000シリーズ(商品名。シンロイヒ(株)製。平均粒子径0.1μm、固形分30質量%)に各色の蛍光顔料分散液がある。これらの顔料は1種で又は2種以上を混合して使用することができる。
このような顔料は、インクにおいて、例えばSINLOIHI PIGMENT SF−5000シリーズ(固形分30質量%)の場合、固形分として好ましくは5〜40質量%の範囲、より好ましくは、10〜30質量%の範囲で用いられる。得られるインクの粘度が高くなって塗布時に目詰まりを起こしたりライン(筆跡)がかすれることを優れて防止する観点から、インクにおける顔料の割合が40質量%以下であることが好ましい。インクにおける割合が5質量%以上であると、実用的な濃度の筆跡を容易に得ることができる。
感圧カプセルを含むインクの場合、感圧カプセルを紙等の被塗布物に固着させる。固着していないと、マイクロカプセルを破壊するための擦過の際に、マイクロカプセルが被塗布物から剥がれてしまうからである。このため、感圧カプセルを含むインクに、バインダー成分を含ませ、インク塗膜を硬化させ、マイクロカプセルを固着させる。マイクロカプセルを固定させるために使用されるバインダーは、水性インクに混合できる材料であり、乾燥時にフィルム化される物質から選定される。例えば、樹脂エマルジョン、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂等の樹脂が用いられ、PVA(ポリビニルアルコール)、ゼラチン、澱粉、ポリビニルピロリドンが一般的である。
これに対し、本発明においては感圧カプセルではなく徐放性カプセルを用いているため、マイクロカプセルを被塗布物に固着させる必要はない。またインク中にバインダー成分が存在すると、ペン先が大気に振れて乾燥した際にインクの塗出性に影響する可能性がある。さらには徐放性が阻害される可能性もある。そのため、バインダー成分がインクに含まれないことが好ましい。
バインダー成分を含まないマイクロカプセル分散液は、いわば浸透乾燥インクとして機能する。つまり、インクに含まれる分散媒等の液体成分は紙等の繊維に浸透して乾燥し、固形分が繊維表面や繊維の間に付着する。硬化したインク塗膜は形成されない。このため、バインダー成分を含まないインクは、バインダー成分を含むインクと比較して、洗浄・洗濯によって容易に除去することができる。つまり、バインダー成分を含まないインクを衣服等に塗布したとしても、洗い落とすことが容易であり、誤って塗布した場合や香りを除去したい場合などに有効である。
本発明において、インクは湿潤剤を含む。湿潤剤は香り付きペン先端部におけるインクの乾燥を抑制する機能を有する。湿潤剤としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール等のグリコール類やグリセリンを用いることができる。グリセリンやグリコール類等の湿潤剤は分散媒としても機能することができる。インク乾燥防止の観点から、インク中の湿潤剤含有量を10質量%以上にすることが好ましい。これら湿潤剤はインクの粘度にも影響する。このため湿潤剤含有量の好ましい上限値は、インクの粘度にも関係するが、例えば50質量%以下とすることができる。
湿潤剤は乾燥しないため、その添加量を増やすと被塗布物を重ね合わせた時にインクが転写する。固形分(顔料+カプセルの割合)を下げると乾燥が悪くなり、色と香りが薄くなる傾向がある。実用的な固形分は10質量%〜40質量%であり、乾燥し易くなることを防止するためにインクに湿潤剤を含ませる。
インクには、更に、防腐剤や分散安定剤等の各種添加剤を添加することもできる。
インクの一形態として、芳香性の蛍光水性インクを挙げることができる。この場合、例えば、香料を内包する徐放性マイクロカプセルもしくはその分散液を蛍光水性インクに混合し、適宜添加剤を添加して、ディスパー等により攪拌し、マイクロカプセル分散液として芳香性の蛍光水性インクを得ることができる。
内包物が疎水性で、水性媒体中に徐放性マイクロカプセルが分散しているインクの場合には特に、保管時には内包物の放出が抑制され、インクの長期保存性が良好である。そして、マイクロカプセルが香り付きペンから出て乾燥した時点から徐放性が開始する。
本発明の香り付きペンの一形態につき、図を用いて説明する。
図1に示すように、本体1に備えられた液収納部2に、インクが収納される。本体は概ね円筒型の外形を有し、内部に空洞が設けられて液収納部とされる。インクを収納するカートリッジが、本体内の空洞に装着されるカートリッジ式を採用することもできる。
先端部3からインクが紙等の被塗布物に塗布される。
先端部3は弁体5に固定されており、先端部3と弁体とは一体的に長手方向に移動可能である。弁体は略円筒状であり、その一端(先端部が固定される側)の径が太くなっている。この弁体の大径部と、本体の突起部1bとの間に弾性体(ここではスプリング)4が配され、その弾性力によって弁体が突起部1aに押し付けられる。これによって、液収容部から先端部3へマイクロカプセル分散液を導くための流路が閉じられている。また先端部3は弾性体4により本体1から突出状態に保持される。
インクを被塗布物に塗布する際には、図2に示すように、香り付きペンが被塗布物に押し付けられる。そのときの押圧により先端部3が弁体5とともに本体内部に向かって(図において紙面上方へ)移動し、弁体5と突起部1aとの間に隙間7が形成され、前記流路が開とされる。これにより液収納部に収納されているインクが先端部に伝えられる。
つまり突起部1aは弁体5の弁座として機能し、これらが弁機構を形成する。弁機構により流路が開閉可能とされる。また、突起部1bと弁体5との間はインクが流通可能とされ、かつ、弁体が摺動可能とされる。このために、弁体5もしくは突起部1bの摺動面にはインクを流通させるための溝を少なくとも一つ形成することができる。突起部1aと先端部3との間も同様に、インクが流通可能とされ、かつ、先端部が摺動可能とされる。このために、先端部3もしくは突起部1aの摺動面にはインクを流通させるための溝を少なくとも一つ形成することができる。
粒状物6は、香り付きペンが長期間放置され、マイクロカプセルが沈殿やブロッキングを起こした場合などにおいて、インクの分散状態を改善するためのものである。香り付きペンを振ったときに液収納部内で粒状物が移動することにより、液収納部内部のインクが攪拌される。粒状物の形状や材質は、この機能を発揮可能な範囲で適宜選ぶことができる。粒状物の材質は、例えば樹脂、アルミやステンレス等の金属、セラミック等、分散液に対し不溶性のものから適宜選ぶことができる。
粒状物の比重は、香り付きペンを振ったときに液収納部内で粒状物が移動する程度であれば、この機能を発揮可能な範囲で適宜選ぶことができる。
粒状物の大きさは、弁機構により流路が開いた際に通過しない(液収納部内にとどまる)適宜の大きさとすることができる。粒状物の数は、単数では無く、複数であってもかまわない。また、粒状の異なる2種類を組み合せてもよい。
弾性体としては、スプリングに限らず、ゴム等を用いることもできる。
先端部3はペン先であり、塗布時には先端部に隙間7からインクが供給され、先端部の外面を伝ってインクが先端部から被塗布物へ塗布可能とされる。先端部として、例えば、樹脂を含浸させた繊維収束体を用いることができる。
マイクロカプセルがペンの内部をスムーズに移動できるようにする観点から、液収納部から先端部に至る流路(液収納部を含む)には、弁等の流路開閉手段を除き、繊維等の障害物が配置されないことが好ましい。つまり、流路が開とされた状態においては、液収納部から先端部に至るまで、空隙によって連通し、ここをマイクロカプセル分散液が流通可能とされることが好ましい。液収納部はインクを収納可能な空隙であることが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
スチレン無水マレイン酸共重合体(商品名:Scripset−520。モンサント社製)のアルカリ加水分解物(アルカリとして水酸化ナトリウムを使用。スチレン無水マレイン酸部の開環率:60%)を5質量%、pH4.6に調製した水溶液300質量部中に、香料(高砂アロマ社製。商品名:レモンTIC/E−10.178)150質量部を加え、これを乳化・分散させて乳化物を得た。次に、この乳化物にメラミン−ホルムアルデヒドプレポリマー(商品名:ミルベン512、昭和高分子社製)25質量部と水15質量部を加え、さらにマイクロカプセルからの徐放性を調整するために尿素(和光純薬社製)1質量部を溶解した水10質量部を加え、80℃に加熱して2時間攪拌を続けた後、室温まで冷やした。次に10質量%水酸化ナトリウム溶液でPH7に調整したあと、150メッシュの濾布で濾過した。このようにして、香料を内包する体積平均粒径2.5μmの徐放性マイクロカプセルが水性媒体に分散したマイクロカプセル分散液を得た。体積平均粒径は、BECKMAN COULTER社製「COULTER COUNTER Multisizer 3」を用いて測定した。
これとは別に顔料分散液としてSINLOIHI PIGMENT SF−5015(LemonYellow)(商品名。シンロイヒ(株)製。固形分30質量%)を用意した。
上記マイクロカプセル分散液5質量部、上記顔料分散液40質量部、グリセリン15質量部、ジエチレングリコール10質量部および水30質量部を混合し、さらに、この混合物に、防腐防かび剤(パーマケムアジア社製。商品名:トップサイド280)を加えて攪拌し(防腐防かび剤濃度:200ppm)、香り付きペンの液収納部に収納するマイクロカプセル分散液(インク)を得た。このインクはレモンイエロー色で、レモンの香りを発する芳香性の蛍光インクであった。
図1に示した構成を有するマーキングペン(ゼブラ社製。商品名:スパーキー1)のインクタンク(内部は空隙)に、上記インクを2グラム入れた。また、粒状物として、ステンレスの球体(直径5mm)をインクタンクに入れた。このようにして、香料カプセル入りマーキングペン(香り付きペン)を作成した。
<塗布性の評価>
このペンを用い、インクを使い切るまで紙(A4コピー用紙を適宜の枚数使用)にマーキングを施した。最後までマイクロカプセルの詰まりを生じることなく、塗布を良好に行うことができた。マイクロカプセル分散インクがスムーズに出て、芳香臭があることを確認した。なお、塗布の前には、ペンを1〜2回転倒させ振った。
<官能試験>
また、嗅覚による官能試験を行った。具体的にはA4のノートに、ノートの1行分のマーキングを施した。マーキング部が乾燥した時点(すなわちマイクロカプセルが香り付きペンから出て乾燥した時点)から徐放性が開始し、その後24時間以上芳香が持続することが確認された。一方、香り付きペンからの芳香の漏れはわずかであった。
さらに、マーキングを施したノートを閉じた状態で3週間室温(約25℃)にて放置した後、ノートを開いた。その瞬間に芳香臭が確認できた。
<電子顕微鏡による観察>
さらに、上記香料カプセル入りマーキングペンを用い、手書きにてアート紙を着色した。香料カプセル入りマーキングペンで着色したアート紙の表面を電子顕微鏡で調べたところ紙面にマイクロカプセルが破損しないで存在していることを確認した。この状態の電子顕微鏡写真(倍率:5000倍)を図3に示す。マイクロカプセルが細かい蛍光顔料に埋もれていることが観察される。
<熱重量分析による徐放性確認試験>
上記香料とマイクロカプセルの熱重量減少を測定した。
上記マイクロカプセル分散液(顔料等と混合する前のもの)の水分をろ紙で除去したものを測定サンプルとし、熱分析装置(エスエスアイナノテクノロジー(株)製、商品名:示差熱熱重量同時測定装置EXSTAR6000 TG/DTA)を用いて測定した。昇温速度は10℃/minとした。また、上記香料(マクロカプセル化していないもの)についても同様の測定を行った。
図4にその結果を示す。図の右側の縦軸(TG%)に質量減少を示す。0TG%のとき試料の質量減少が全く無く、−50TG%のとき試料の質量が半分になっている。図中、「レモンカプセル」と表示した線がマイクロカプセルの測定結果、「レモン」と表示した線が香料(マイクロカプセル化していないもの)の測定結果である。この図から明らかなように、香料マイクロカプセルは、香料(マイクロカプセル化なし)に比べて質量が長期にわたって緩やかに減少した。これは香料が徐々に放散されることを意味し、香りが長期にわたって持続することを意味する。
〔実施例2〕
香料(高砂アロマ社製。商品名:レモンTIC/E−10.178)の代わりに香料(小川香料社製。商品名:ラベンダーAR45641)を使ったこと以外は実施例1と同様にして、体積平均粒径2.43μmの徐放性マイクロカプセルが水性媒体に分散したマイクロカプセル分散液を得た。
これとは別に顔料分散液としてSINLOIHI PIGMENT SF−5037(Violet)(商品名。シンロイヒ(株)製。固形分30質量%)を用意した。
上記マイクロカプセル分散液5質量部、上記顔料分散液40質量部、グリセリン15質量部、ジエチレングリコール10質量部および水30質量部を混合し、さらに、この混合物に実施例1と同様に防腐防かび剤を加えて攪拌し、香り付きペンの液収納部に収納するマイクロカプセル分散液(インク)を得た。このインクはスミレ色で、ラベンダーの香りを発する芳香性の蛍光水性インクであった。
上記インクを用いた以外は実施例1と同様にして香り付きペンを作成し、塗布性の評価および官能試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果を得た。
〔実施例3〕
香料(高砂アロマ社製。商品名:レモンTIC/E−10.178)の代わりにハッカ油(東洋薄荷工業製)を使ったこと以外は実施例1と同様にして、体積平均粒径2.36μmの徐放性マイクロカプセルが水性媒体に分散したマイクロカプセル分散液を得た。
これとは別に顔料分散液としてSINLOIHI PIGMENT SF−5012(Green)(商品名。シンロイヒ(株)製。固形分30質量%)を用意した。
上記マイクロカプセル分散液5質量部、上記顔料分散液40質量部、グリセリン15質量部、ジエチレングリコール10質量部および水30質量部を混合し、さらに、この混合物に実施例1と同様に防腐防かび剤を加えて攪拌し、香り付きペンの液収納部に収納するマイクロカプセル分散液(インク)を得た。このインクは、緑色でハッカの香りを発する芳香性の蛍光水性インクであった。
上記インクを用いた以外は実施例1と同様にして香り付きペンを作成し、塗布性の評価および官能試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果を得た。
〔実施例4〕
香料(高砂アロマ社製。商品名:レモンTIC/E−10.178)の代わりにハッカ油(東洋薄荷工業製)を使ったこと以外は実施例1と同様にして、体積平均粒径2.36μmの徐放性マイクロカプセルが水性媒体に分散したマイクロカプセル分散液を得た。
これとは別に顔料分散液としてキャボスパース2(商品名。キャボット社製。固形分20質量%)を用意した。この顔料は白色である。
上記マイクロカプセル分散液5質量部、上記顔料分散液40質量部、グリセリン15質量部、ジエチレングリコール10質量部および水20質量部を混合し、さらに、この混合物に実施例1と同様に防腐防かび剤を加えて攪拌し、香り付きペンの液収納部に収納するマイクロカプセル分散液(インク)を得た。このインクは無色でハッカの香りのする芳香性のインクであった。
上記インクを用いた以外は実施例1と同様にして香り付きペンを作成し、塗布性の評価および官能試験を行ったところ、実施例1と同様に良好な結果を得た。
また、マーキング部は無色であり、マーキング部を目視で判別することはできなかった。
〔実施例5〕
スチレン無水マレイン酸共重合体(商品名:Scripset−520。モンサント社製)のアルカリ加水分解物(アルカリとして水酸化ナトリウムを使用。スチレン無水マレイン酸部の開環率:60%)を3質量%、pH4.6に調製した水溶液300質量部中に、香料(小川香料社製。商品名:ミカンAR44994)150質量部を加え、これを乳化・分散させて乳化物を得た。次に、この乳化物にメラミン−ホルムアルデヒドプレポリマー(商品名:ミルベン512、昭和高分子社製)25質量部と水15質量部を加え、さらにマイクロカプセルからの徐放性を調整するために尿素(和光純薬社製)1質量部を溶解した水10質量部を加え、80℃に加熱して2時間攪拌を続けた後、室温まで冷やした。次に10質量%水酸化ナトリウム溶液でPH7に調整したあと、150メッシュの濾布で濾過した。このようにして、香料を内包する体積平均粒径5.5μmの徐放性マイクロカプセルが水性媒体に分散したマイクロカプセル分散液を得た。
これとは別に顔料分散液としてSINLOIHI PIGMENT SF−5014(Orange)(商品名。シンロイヒ(株)製。固形分30質量%)を用意した。
上記マイクロカプセル分散液5質量部、顔料分散液40質量部、グリセリン15質量部、ジエチレングリコール10質量部および水30質量部を混合し、さらに、この混合物100質量部に実施例1と同様に防腐防かび剤を加えて攪拌し、香り付きペンの液収納部に収納するマイクロカプセル分散液(インク)を得た。このインクはオレンジ色で、オレンジの香りを発する芳香性の蛍光水性インクであった。
上記インクを用いた以外は実施例1と同様にして香り付きペンを作成し、塗布性の評価および官能試験を行った。塗布性の評価においては、マーキング部がたまにかすれることがあり、実施例1に比べて塗布のスムーズさにやや劣ったが、最後までマイクロカプセルが出、芳香臭があることが確認された。官能試験においては、実施例1と同様に良好な結果を得た。
以上から、本発明の香り付きペンにより、マイクロカプセルの詰まりが抑制され、極めて簡便に所望の個所にマイクロカプセル分散液を塗布することができることが確認された。
しかも、徐放性マイクロカプセルを用いたことにより、芳香の持続性が良いことも確認された。
本発明の香り付きペンは、香料含有マイクロカプセルを手動により所望の個所に正確に付着させるために有用であり、香りを付与する筆記具等の塗布具として有用である。
本発明の香り付きペンの一例につき流路が閉じている状態を示す模式図である。 本発明の香り付きペンの一例につき流路が開いている状態を示す模式図である。 実施例において、香り付きペンでマーキングを施したアート紙の表面を示す電子顕微鏡写真である。 実施例において、香料および香料入りマイクロカプセルについて示差熱天秤による熱質量減少を示すグラフである。
符号の説明
1 香り付きペン本体
1a 突起部(先端部摺動部)
1b 突起部(弁体摺動部)
2 液収納部
3 先端部
4 弾性体
5 弁体
6 粒状物
7 隙間

Claims (2)

  1. 本体に備えられた液収納部に、香料をカプセル化したマイクロカプセルが分散した分散液が収納され、先端部により該分散液が塗布可能な香り付きペンであって、
    該マイクロカプセルが徐放性マイクロカプセルであり、
    該分散液が湿潤剤を含み、
    該液収納部と先端部とを連通させるための開閉可能な流路を有し、
    該先端部が弾性体により該本体から突出状態に保持され、
    塗布時の押圧により該先端部が本体内部に向かって移動することにより該流路が開とされて該液収納部に収納されている液体が先端部に伝えられる
    ことを特徴とする香り付きペン。
  2. 前記液収納部に粒状物を含む請求項1記載の香り付きペン。
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