JP2668422B2 - 中芯式筆記具用水性顔料インキ組成物 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、中芯式筆記具用水性顔料インキ組成物に関
し、特に、隠蔽性にすぐれる筆跡を与え、しかも、イン
キ吸蔵体から毛細管現象にてインキをペン先に流出させ
て筆記することができる中芯式筆記具用水性顔料インク
組成物に関する。

従来の技術 従来、筆記具用水性顔料インキ組成物は、筆跡に隠蔽
性又は不透明性を与えるために、隠蔽剤として、粒径が
大きく、且つ、比重が大きい白色顔料、代表的には酸化
チタン粒子を含有している。このようなインキ組成物
は、上記白色顔料が分散性に劣るために、インキ吸蔵体
から毛細管現象にてインキをペン先に流出させて筆記す
る所謂中芯式マーキングペンのためのインキ組成物とし
ては用いることができない。粒径のより小さい白色顔料
を用いれば、インキ組成物中でのその分散性にはすぐれ
るものの、目的とする隠蔽性に劣るようになり、筆跡の
不透明性を確保することができない。

そこで、例えば、特開昭63−145380号公報及び特開昭
63−145382号公報には、酸化チタンや有彩色顔料と共
に、プラスチツク・ピグメントと呼ばれる中空樹脂粒子
を配合してなる水性白色顔料インキ組成物が提案されて
いる。また、特開昭63−145381号公報には、カーボンブ
ラツクと共に、中空樹脂粒子を配合してなる水性黒色顔
料インキ組成物が提案されている。

上記中空樹脂粒子は、分散性にすぐれるが、例えば、
酸化チタンに比べれば、隠蔽性が十分でなく、他方、中
空樹脂粒子と共に酸化チタンを併用して、隠蔽性を高め
ようとすれば、酸化チタンが沈降し、筆跡に濃度差が生
じるので、中芯式筆記具には用いることができない。

発明が解決しようとする問題点 本発明者らは、従来の筆記具用顔料インキ組成物にお
ける前述した問題を解決するために鋭意研究した結果、
特定の水可溶化樹脂を分散剤として用いて、微小な中空
樹脂粒子を無機顔料と共にインキ組成物中に分散させる
ことによつて、中芯式筆記具において、顔料の沈降が起
こらず、且つ、隠蔽性にすぐれる水性顔料インキ組成物
を得ることができることを見出して、本発明に至つたも
のである。

問題点を解決するための手段 本発明による中芯式筆記具用水性顔料インキ組成物
は、 （ａ）溶剤としての水、 （ｂ）中空樹脂エマルジョン、 （ｃ）無機顔料、及び （ｄ）重量平均分子量が1000〜10000、分子量分布が0.5
〜3.3であつて、且つ、分子量500以下の成分を実質的に
含有しないα−メチルスチレン−スチレン−アクリル酸
共重合体の水可溶化物 を含有することを特徴とする。

本発明によるインキ組成物においては、溶剤として、
水が用いられる。インキ組成物における水の量は、通
常、50〜90重量％、好ましくは60〜80重量％の範囲であ
る。

本発明によるインキ組成物においては、隠蔽剤とし
て、微細な中空樹脂粒子が用いられる。このような中空
樹脂粒子は、前述したように、プラスチツク・ピグメン
トとして知られており、エマルジヨン（共）重合によつ
て得られるポリスチレン、アクリル−スチレン共重合
体、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル樹脂等の
中空粒子であつて、比重が約１以下、粒径が0.1〜1.0μ
ｍ程度、屈折率が1.4〜1.6の樹脂粒子のエマルジヨンで
ある。例えば、大日本インキ化学工業（株）製「ボンコ
ート」（アクリル−スチレン共重合体）や「グランドー
ル」、ローム・アンド・ハース社製「オペーク・ポリマ
ー」（アクリル−スチレン共重合体）、旭化成工業
（株）製「ラテツクスSBL8801」（ポリスチレン）等と
して市販されており、本発明においてはかかる市販品を
好適に用いることができる。

このように中空樹脂粒子は、本発明によるインキ組成
物において、固形分にて、通常、0.5〜40重量％、好ま
しくは１〜20重量％の範囲で配合される。インキ組成物
において、中空樹脂粒子の配合量が0.5重量％よりも少
ないときは、隠蔽性が十分でなく、他方、40重量％を越
えるときは、筆跡の筆記面への接着性に劣ると共に、筆
記具のペン先をなすチツプにて目詰まりを起こすことが
ある。

本発明において、不透明白色インキ組成物を得るとき
は、上記中空樹脂粒子と共に、好ましくは酸化チタンや
亜鉛華が白色顔料として配合される。特に、酸化チタン
が好ましく用いられる。かかる白色顔料は、本発明によ
るインキ組成物において、１〜40重量％、好ましくは１
〜30重量％の範囲で配合される。過多に配合するとき
は、インキ組成物の粘性が高すぎるようになり、筆記性
に劣るほか、保存安定性にも劣るので好ましくない。

しかし、白色以外の無彩色及び有彩色のインキ組成物
を得る場合は、着色剤として、無彩色又は有彩色無機顔
料が配合される。用いる顔料は何ら限定されるものでは
なく、例えば、カーボンブラツク、アゾ系、フタロシア
ニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサ
ジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリノン系、ペ
リレン系、イソインドレン系、アゾメチンアゾ系等、任
意のものを用いることができる。

既に、種々の顔料を水に分散させてなる分散体が市販
されており、本発明においても、かかる市販品を好まし
く用いることができる。上記顔料分散体には、顔料の分
散剤として、種々の樹脂や界面活性剤等が配合されてい
ることがあるので、本発明によるインキ組成物において
も、かかる樹脂、界面活性剤等が含有されていてもよ
い。

有彩色顔料は、インキ組成物において、必要に応じ
て、通常、0.1〜30重量％の範囲で含有され、好ましく
は、１〜15重量％の範囲で含有される。顔料を過多に含
有させるときは、インキ組成物の粘度が高すぎるため
に、筆記性に劣ることとなる。

更に、本発明によるインキ組成物においては、前記し
た顔料の分散性を高めると共に、筆記面上での筆跡のレ
ベリング性を高めるために、重量平均分子量が1000〜10
000、分子量分布が0.5〜3.3であつて、且つ、分子量500
以下の成分を実質的に含有しないα−メチルスチレン−
スチレン−アクリル酸共重合体の水可溶化物がインキ組
成物に基づいて0.1〜30重量％、好ましくは１〜10重量
％の範囲で配合される。上記分子量分布は、よく知られ
ているように、重量平均分子量（Mw）／数平均分子量
（Mn）の比として定義される。

上記のようなα−メチルスチレン−スチレン−アクリ
ル酸共重合体の水可溶化物は、例えば、ジヨンソン
（株）から「ジヨンクリル」（登録商標）Ｊ−555、Ｊ
−586、Ｊ−678、Ｊ−680、Ｊ−682、Ｊ−683等として
市販されており、これらは、α−メチルスチレン−スチ
レン−アクリル酸共重合体をアンモニウム塩化して、水
可溶性としたものであつて、本発明において、かかる市
販品を好適に用いることができる。しかし、水可溶化の
手段は、アンモニウム塩形成に限らず、ナトリウム塩や
カリウム塩形成、有機アミン塩形成による水可溶化であ
つてもよい。

本発明によれば、このような水可溶化α−メチルスチ
レン−スチレン−アクリル酸共重合体を中空樹脂粒子及
び無機顔料の分散剤として用いることによつて、得られ
るインキ組成物は、中芯式筆記具用インキ組成物に用い
ても、顔料が沈降しない。このような顔料の沈降の有無
は、例えば、筆記具を正立又は倒立状態でそれぞれ放置
した後、筆記したとき、当初に比べて、筆跡に濃度差が
生じないことによつて確認される。

本発明によるインキ組成物は、それ自体で容器中に放
置すれば、顔料が沈降する。しかし、中芯式筆記具に用
いたとき、顔料の沈降が起こらない。その理由は、必ず
しも明らかではないが、インキ組成物が上記水可溶化共
重合体によつてチキソトロピー性を有して、中芯繊維の
個々の微細な三次元的網目中では顔料が沈降しても、中
芯繊維の全体にわたつては、偏在なしに、顔料が均一に
分散されており、他方、筆記時には、その応力によつ
て、上記チキソトロピー構造が破壊され、インキ組成物
が中芯中を円滑に流動するものとみられる。

このように、本発明によれば、インキ組成物に分散剤
として、上記した水可溶化共重合体を含有させると共
に、前記中空樹脂粒子と無機顔料とを含有させることが
重要である。前述したように、本発明によるインキ組成
物も、それ自体を容器中に保存すれば、顔料が沈降す
る。中空樹脂粒子を用いることなく、無機顔料のみを前
記共重合体と共にインキ組成物中に分散させても、無機
顔料は、中芯式筆記具において容易に沈降する。また、
無機顔料を用いることなく、中空樹脂粒子のみを前記水
可溶化共重合体と共にインキ組成物中に分散させた場合
も、理由は明らかではないが、中空樹脂粒子の分散安定
性が損なわれて、中芯式筆記具において沈降する。この
ように、本発明によれば、インキ組成物に分散剤とし
て、上記した水可溶化共重合体を含有させると共に、前
記中空樹脂粒子と無機顔料とを含有させることによつ
て、中芯式筆記具に用いて、顔料が沈降せず、筆記性、
隠蔽性のみならず、筆跡に濃度変化のないインキ組成物
を得ることができるのである。

更に、本発明においては、顔料の分散性を高めるため
に、必要に応じて、上記以外の分散剤、例えば、水溶性
樹脂を用いてもよい。

上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポ
リビニルピロリドン等の合成樹脂や、アラビアゴム、セ
ラツク等の天然樹脂が好ましく用いられる。更に、前記
共重合体以外の水溶性アクリル樹脂や水溶性スチレン−
無水マレイン酸共重合体等のように、アンモニウム塩基
やカルボン酸ナトリウム塩のような塩形成によつて水に
可溶性化した樹脂も用いられる。これらの水溶性樹脂
は、インキ組成物において、通常、30重量％以下、好ま
しくは、20重量％以下の範囲で含有される。過多に配合
するときは、前記中空樹脂粒子及び白色顔料の隠蔽効果
を低下させる。

従来、中芯式筆記具に充填するインキ組成物は、イン
キとしての満足すべき流出性を有するには、通常、常温
における粘度が10センチポイズ以下であることが必要で
あるが、しかし、本発明のインキ組成物によれば、常温
における粘度が30センチポイズ以下であればよい。

更に、本発明によるインキ組成物においては、湿潤剤
及び／又は筆跡の乾燥促進剤として、種々の水溶性有機
溶剤を必要に応じて配合することができる。かかる水溶
性有機溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパ
ノール、ブタノール等の低級アルコールや、或いはグリ
セリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等
のグリコール類、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレング
リコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレン
グリコール等のポリアルキレングリコールを挙げること
ができる。

これら有機溶剤は、本発明によるインキ組成物におい
て、20重量％以下、好ましくは10重量％以下の範囲で含
有される。

前記したように、顔料の分散剤として界面活性剤が用
いられる場合があるが、本発明においては、例えば、非
吸収性筆記面でのレベリング性を高めるために、種々の
界面活性剤を含有してもよい。このような界面活性剤と
して、アニオン、ノニオン、カチオン、両性のいずれの
ものも用いることができる。しかし、特に、ポリオキシ
エチレン鎖を有するカルボン酸系、スルホン酸系、硫酸
エステル系、リン酸エステル系等のノニオン界面活性剤
やアニオン界面活性剤、アルキルベタイン型の両性界面
活性剤、フツ素系界面活性剤等が好ましく用いられる。

上述した界面活性剤は、インキ組成物において、10重
量％以下、好ましくは５重量％以下の範囲で含有され
る。界面活性剤の配合量が10重量％を越えるときは、却
つてインキ組成物の分散安定性を阻害する。

また、インキ組成物は、上記以外に、必要に応じて、
通常、水性インキ組成物に配合される任意のpH調整剤、
防腐剤、分散助剤等を含有していてもよい。

発明の効果 本発明によるインキ組成物は、先ず、隠蔽剤として、
分散安定性にすぐれる中空樹脂粒子と共に、隠蔽効果の
高い白色無機顔料を含みながら、これらの分散剤とし
て、前記所定の水可溶化共重合体を含むので、顔料の沈
降を起こすことなく、中芯式筆記具に用いることがで
き、筆記性及び隠蔽性にすぐれる筆跡を与える。更に、
有彩色顔料を配合することによつて、任意の有彩色イン
キ組成物を得ることができる。

実施例 以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は
これら実施例により何ら限定されるものではない。

先ず、本実施例において用いる分散剤としての共重合
体の重量平均分子量（Mw）、数平均分子量（Mn）及び分
子量分布（Mw/Mn）を第１表に示す。

次に、第１表に示す成分からなる水性顔料インキ組成
物を調製した。これらのインキ組成物を中芯式筆記具に
充填し、紙面に筆記して、その筆記性を調べた。また、
黒線を印刷したアート紙上に筆記し、筆跡の隠蔽性を目
視にて調べた。更に、筆記した後、その筆記具をそれぞ
れ正立状態又は 倒立状態にて50℃で１か月間、放置した後、筆記して、
筆記性及び筆跡の当初との濃度変化を調べた。結果を第
２表に示す。

比較例１は、分散剤として用いる水可溶化α−メチル
スチレン−スチレン−アクリル酸共重合体が本発明にて
規定する重量平均分子量及び分子量分布をもたないため
に、正倒立保存後に筆跡に濃度変化があらわれている。
比較例２〜４は、分散剤が本発明で規定する共重合体で
ないので、いずれも正倒立保存後に筆跡に濃度変化があ
らわれており、筆記性も悪い。

これに対して、本発明のインキ組成物によれば、いず
れも、正倒立保存後に筆跡に濃度変化がなく、しかも、
筆記性及び隠蔽性にもすぐれる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−243180（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−174576（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−133478（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】（ａ）溶剤としての水、 （ｂ）中空樹脂エマルジョン、 （ｃ）無機顔料、及び （ｄ）重量平均分子量が1000〜10000、分子量分布が0.5
   〜3.3であつて、且つ、分子量500以下の成分を実質的に
   含有しないα−メチルスチレン−スチレン−アクリル酸
   共重合体の水可溶化物 を含有することを特徴とする中芯式筆記具用水性顔料イ
   ンキ組成物。
2. 【請求項２】無機顔料が酸化チタンであることを特徴と
   する請求項第１項記載の中芯式筆記具用水性顔料インキ
   組成物。