JP2000168291A - インキ追従体及びそれを用いたボールペン - Google Patents

インキ追従体及びそれを用いたボールペン

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JP2000168291A
JP2000168291A JP10349224A JP34922498A JP2000168291A JP 2000168291 A JP2000168291 A JP 2000168291A JP 10349224 A JP10349224 A JP 10349224A JP 34922498 A JP34922498 A JP 34922498A JP 2000168291 A JP2000168291 A JP 2000168291A
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viscosity
ink follower
thickener
pen
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Katsuhiko Shiraishi
克彦 白石
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Mitsubishi Pencil Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 製造ロット間の性能バラツキを極小に押さ
え、特殊な添加物や基油を用いなくても安定した品質の
インキ追従体を供給する。 【解決手段】 1sec-1〜200sec-1の剪断速度域の任
意の2点、又はそれ以上の測定点での粘度測定結果を、
以下の粘性式 S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュー
トン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数) で表す場合のnの値が、0.3〜0.8であるように調
製した。またこの追従体は、油性ボールペンなら100
mあたり40mg以上、水性ボールペンなら100mあた
り100mg以上の流出量があるボールペンに用いると顕
著に優れた性能を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインキ追従体及びそ
れを用いたボールペン、更に詳しくはインキ収容管内に
直接インキを収容する筆記具、たとえばボールペンにお
いて、インキの尾端部に使用し、インキ消費に伴って、
インキに追従しながら蓋としての機能を有するインキ追
従体及び、このインキ追従体を用いたボールペンに関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】水性ボールペンのインキの粘度は、類似
の形態を持つ油性ボールペンの粘度が3Pa・sec〜20Pa
・secであるのに対し、50mPa・sec〜3Pa・secと低いた
め、ペンを上向き又は横向きに放置した場合にはインキ
が漏出してしまう。また、軽度な衝撃でもインキが飛散
し、手や服を汚してしまう恐れがあるため、これを防止
するべくインキ追従体が具備されている。また、近年は
油性ボールペンでも、堅牢な筆記描線が得られる顔料を
使用する為、又は軽い書き味を実現する為などの理由
で、従来より粘度の低いインキを供給する傾向にある。
また、基油として揮発性の高い有機溶剤を用いる場合も
あり、水性ボールペンと同じように、インキ追従体の具
備が必要とされる場合が生じてきた。。
【0003】特開昭48−40510、特開昭57−1
53070、特開昭57−200472、特開昭58−
1772、特開昭61−57673、特開昭61−14
5269、特開昭61−151289、特開昭61−2
00187、特開昭61−268786、特開昭62−
50379、特開昭62−148581、特開昭62−
199492、特開昭63−6077、特開平02−2
48487、特開平04−202281、特開平05−
270192、特開平05−270193、特開平06
−200235、特開平06−220418、特開平0
6−247094、特開平06−264048、特開平
06−328890、特開平06−336584、特開
平07−61187、特開平07−173426、特開
平07−214974、特開平07−214975、特
開平07−242093、特開平07−266780、
特開平08−2171、特開平08−11481、特開
平08−58282、特開平08−72465、特開平
08−90982、特開平08−108679、特開平
08−142570、特開平08−183286、特開
平08−300873、特開平08−300874、特
開平09−11683、特開平09−76687などに
は、インキ収容管に直接インキを収容せしめる水性ボー
ルペンにゲル状物もしくはゲル状物と固形物を併用する
インキ追従体を具備する事が開示されている。これら
は、インキに追従しやすくする、落下時の衝撃に耐え
る、逆流防止効果を高める、見栄えを良くするなど、多
様な目的と着眼の発明である。
【0004】多種多様の発明がなされ、インキへの追従
性や落下衝撃、インキ追従体組成物の成分がインキ中に
溶出してしまうなどのインキへの干渉、逆流防止効果、
インキ追従体自体の経時安定性など、かなりの部分で改
良が進んできたが、未だに改良されていない問題があ
る。それは、インキ追従体の製造ロット毎の性能ばらつ
きである。これらの先発明のインキ追従体の実施例は再
現する場合もあるが、出来次第では全く性能が劣ってし
まう場合もある。具体的には、インキ追従体の粘度に最
もバラツキが大きく、これに伴ってインキへの追従性能
がばらつき、同じインキ、同じペン先部を用いても、イ
ンキ消費量が一定しないこととなっていた。また、離油
のしやすさ、ペン体中での気泡の発生しやすさなど、ペ
ン全体を考えた場合にも、必ずしも一定して良い結果が
得られていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的はインキ
追従体の製造ロット毎の性能バラツキを未然に防ぐこと
にある。また、当然のこととして、インキ中の配合物に
関わらず(インキへの干渉が無く)常に初期の性能を維
持する(経時安定性の良い)インキ追従体であり、同時
に、インキと外気を遮断してインキの揮発を防止するこ
と(揮発防止性)、上向き筆記した後のインキ収容管後
端からのインキの漏出を防ぐ性能(漏出防止性)、イン
キ収容管内壁に付着する量を極小に押さえ最後までイン
キ追従体の機能を維持する性能(クリアドレイン性)、
インキ追従体の追従能力が劣る為にペン先からのインキ
の流出を妨げない性能(インキ追従性)などを兼ね備え
たインキ追従体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記の課
題を鋭意研究の結果、先ず、最も大切なことは粘性管理
であり、それも2点以上を計測してそのインキ追従体の
非ニュートン指数を管理することが、先発明や新しい添
加剤を発見することより重要であることを見いだし、本
発明を完成するに至った。
【0007】非ニュートン指数nは疑塑性など、ニュー
トン流体とかけ離れた挙動を示す値であり、nの値が1
の時は剪断速度に関わらず粘度は一定(ニュートン流
体)であるが、nの値が1から離れるほど、剪断速度に
よって粘度値が変わるものである。nの値が1を超える
物が一般にダイラタント流体といわれ、nが1未満の場
合を疑塑性流体という。またこれらに「降伏値」の概念
を持ち込んだ物が「プラスチック流体」とよばれ、降伏
値以外の部分が直線的(ニュートン流体的)なものをビ
ンガム流体、それ以外を非ビンガム流体という。また、
剪断を加えた時間と粘度との関係を考慮すると、チクソ
トロピー性、レオペキシー性などの言葉上での評価は出
来る。これらは見地の違いであり、例えば同じ物質であ
っても、降伏値を適当に定義すれば「プラスチック流体
としてn値が小さい非ビンガム流体であり、チクソトロ
ピー性が強くレオペキシーではない」とも言えるし、降
伏値を無視すれば「疑塑性流体である。」といった言い
方も出来る。単に時間依存性のみ着目して、「チクソト
ロピー性の強い流体」といった言い方も出来る。また、
これらを全て損失弾性率、貯蔵弾性率などの粘弾性体と
して評価した場合には、インキ追従体も「粘弾性体」で
あるし、ニュートン流体、例えば水のような物でも「粘
弾性体」として評価される。本発明者等は、インキ追従
体の粘性が最も重要な要素と判断し、2点以上の計測点
で粘度を測り、これを「疑塑性流体」として位置付け
て、その粘性指数をゲル状物の粘性挙動の指標とした。
ちなみに非ニュートン粘性係数もその大きさで全体の粘
度が高いか低いかを傾向としてみる材料にはなる。他に
も損失弾性率、貯蔵弾性率、tanδ、プラスチック流
体としての評価、時間依存性の評価などでもインキ追従
体の粘性を評価できるが、これらは「物差しの違い」に
すぎず、本発明者等の判断では粘性指数の方が尺度とし
て分かり易いと判断したにすぎない。
【0008】本発明の最も大きな特徴はインキ追従体の
粘度を複数の剪断速度で計測し、 S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュー
トン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数) に示す粘性式に当てはめて評価することにある。難揮発
性の油類を増粘させる場合は、同一配合であっても必ず
しも同じ粘性とはならない。むしろ近似した粘性になる
ことは稀であり、偶然の産物でしかないとまで言える。
本発明では、これを一定させる及び/又は制御する手段
として、目に見えない微小気泡に至るまで十分な脱泡を
行うこと、十分な混練環境で均一に増粘剤を分散又は溶
解させること、増粘剤の能力を常に十分引き出すこと、
増粘補助剤を用いること、逆に減粘補助剤を用いるこ
と、を挙げている。本発明では剪断速度の違う2点以上
の粘度を指標としているが、目的はインキ追従体のばら
つき抑制である。十分な混練処理と十分な脱泡処理はそ
の為の手段である。このため、指標は2点以上の粘性管
理のみであっても、チクソトロピー性や粘弾性的解析、
ボールペンに用いた場合の諸性能など、他の諸々の見地
から見た場合のばらつきも抑制する事が出来るものであ
る。さらに本発明では、この粘度管理によるインキ追従
体を用いることによって、より安定した性能を得られる
ペンとして、現行の油性ボールペンよりインキ消費量の
多いボールペン、この中にはもちろん水性ボールペンも
含まれるが、水性ボールペンの中でも特にインキ流出量
の多いペンには更に効果的である事を開示する。また、
当然のこととして、サインペン、万年筆やパイプペンな
ど、違った形式のペン先部を持つ物であっても、インキ
収容管に直接インキを収容し、これに追従させる蓋体を
持つ筆記具用のインキ追従体として優れた性能を発揮す
ることは自明である。
【0009】本発明のインキ追従体の基油として用いら
れる溶剤は、分子量500〜3000のポリブテン、流
動パラフィンやスピンドル油等の鉱油類、シリコーンオ
イル等が挙げられる。これらは水性インキに溶出するこ
となく揮発減量も小さい。また一般的に水性インキよ
り、インキ収容管に用いられるポリプロピレンやポリエ
チレンなどの樹脂類との濡れが良く、インキの消費量が
視認しやすくなる利点も有する。
【0010】ポリブテンやシリコーンオイルには揮発性
の強いものもあるが、JIS C−2320に準じて9
8℃・5時間の揮発減量値を測り、この結果が概ね0.
2重量%以下のものであれば常温では2〜3年以上問題
はない。ポリブテンの揮発性は分子量と大きく相関す
る。前出の揮発減量値を満足させる目安を分子量で表す
と、平均分子量が概ね500以上のものが該当する。ジ
メチルシリコーン油やメチルフェニルシリコーン油は分
子量との相関が小さいが、25℃に於ける粘度が50mP
a・secを超える物ならば概ね問題ない。アルキル変性な
どの変性シリコーン油は構造も重要な要素なので一概に
分子量だけでは判断できないので、前出の方法で実測し
て目安とすると良いであろう。
【0011】本発明に用いる増粘剤は、疎水性もしく非
水溶性のものが好ましい。親水性の増粘剤はインキとの
界面からインキ中に移行してインキ追従体の粘度が失わ
れてしまったり、インキに悪影響を与えて筆記不能にな
るなどの不都合が生じる場合がある。しかし増粘剤やイ
ンキ追従体そのものに撥水処理を施す、又は影響を受け
にくいインキ設計とするなどの対策があれば親水性増粘
剤であっても差し支えない。増粘剤としては、アエロジ
ルR−972,R−974D,R−976D、RY−2
00(日本アエロジル(株)商品名)のような表面をメ
チル化処理した微粒子シリカ、レオパールKE(千葉製
粉(株)商品名)などの有機増粘剤、もしくはジメチル
ジオクタデシルアンモニウムベントナイトなど表面をオ
ニウム処理などで疎水化した有機処理粘土増粘剤、もし
くはステアリン酸リチウム,ステアリン酸アルミニウ
ム,ステアリン酸ナトリウムなどの非水溶性金属石鹸を
用いることが望ましい。これらは単独でも併用しても構
わないが、その総添加量はインキ追従体全量に対して1
〜10重量%である。アエロジル#200、380、3
00、100、OX50(日本アエロジル(株)商品
名)、微粒子アルミナ、超微粒子酸化チタン、超微粒子
ケイ酸アルミニウムなどの親水性の増粘剤はHLBが4
以下、なるべくなら2以下の界面活性剤や、シランカッ
プリング剤、フルオロカーボン、メチルハイドロジェン
シリコーンなどを添加すればインキへの干渉を押さえる
ことが出来る。シリコーンオイルを基油とする場合には
それだけでもインキへの干渉を押さえることが出来るこ
とが多い。
【0012】本発明の水性ボールペン用インキ追従体の
追従性を向上するために界面活性剤などの添加剤を用い
るのも有効な手段である。界面活性剤の種別は全く問わ
ないが、経時保存中にインキへ溶出するものは好ましく
なく、HLB(親水疎水バランス)値が4以下の非イオ
ン系界面活性剤が好ましい。さらに言えば一般にフッ素
系界面活性剤、シリコン系界面活性剤と呼ばれているも
のが、基油の表面張力を著しく下げるため、脱泡で微視
的気泡を排除するなどの工程で好ましい性能が発揮され
る。また、発明の主旨からも、増粘剤の分散安定化、均
一化や系の疎水化に効果のある前述のシランカップリン
グ剤、フルオロカーボン・メチルハイドロジェンシリコ
ーンなどを添加しても良い。添加剤は経時的な安定性や
インキへの悪影響などさえなければ積極的に用いられる
べきである。一般的に、これらの添加量は、効力が発揮
される最少の添加量である0.01重量%から最大でも
5重量%程度である。5重量%を超えて用いても性能上
問題とはならないが、添加効果としては全く無意味であ
る。
【0013】添加剤にはもう一つ重要な効果がある。特
開昭61−57673、特開昭61−145269、特
開昭61−151289、特開昭61−200187、
特開昭61−268786、特開昭62−50379、
特開昭62−148581、特開昭63−6077、特
開平02−248487、特開平04−202281、
特開平05−270192、特開平05−270193
などでは、インキ追従体中に界面活性剤、特に非イオン
性界面活性剤の添加が開示されている。これは、無機微
粒子増粘剤を用いるときにエチレンオキサイドやプロピ
レンオキサイドなどのアルキレンオキサイドやグリセリ
ン、糖類、還元糖類などのように水酸基を持つような親
水基を分子中に持つ化合物を添加すると、粘度、特に低
剪断速度域での粘度を高める効果があるからである。本
発明者等はこれを増粘補助剤と呼んでいる。親水基を持
つもので有れば、水、アルコール類やグリコール類など
の水溶性有機溶剤、ジエチレングリコール以上の分子量
の1,2エポキシドポリマーなど、界面活性剤でなくて
も無機微粒子増粘剤の増粘補助効果がある。増粘補助剤
の効果は全ての油類と微粒子増粘剤との間に起こる現象
と位置付けて良いが、疎水性微粒子シリカをシリコーン
油中に分散する場合は顕著に効果が現れる。これは、疎
水性微粒子シリカの表面が化学的にシリコーン油、特に
ジメチルシリコーン油と似ているため、この両者を併せ
ただけで、良好な分散が得られてしまい、粘度が得られ
難くなっているためで、増粘補助剤は疎水性シリカ同士
を弱く架橋して構造粘性を付与するためであると推測さ
れる。
【0014】また、無機材料と有機材料、もしくは異種
の有機材料複合系に於いて、化学的に両者を結びつけ
る、或いは化学反応を伴って親和性を改善し、複合系材
料の機能を高める試剤、即ち一般にカップリング剤と呼
ばれる物は無機微粒子を油中により安定に分散させる効
果がある為、粘度を下げる傾向にあり、本発明者等は減
粘補助剤と呼んでいる。カップリング剤は、インキ追従
体とインキとの界面に両者にとって親和性のある膜を形
成し、インキ追従体とインキとを物理的に分離しつつも
親和性を高める効果を有する物もある。
【0015】材料の保管に関しては、インキやグリース
の材料の保管の常識の範囲を逸脱しなければ問題はな
い。1ヶ月以上保管する場合は高温による変質や低温時
の結露を避けるために概ね0℃から40℃以内の場所に
保管するべきである。油類や親油性の物質でも吸湿はす
る。極端な高湿度、例えば90%を超えるような場所に
1ヶ月以上保管しないように心掛けるべきである。
【0016】製造時に於ける秤量では、秤の形態は天秤
式、バネ式、電子式など、あらゆる方式の物でかまわな
いが、質量による秤量が好ましい。体積による秤量では
気温やロットバラツキによる見かけ比重の違いなどの影
響を受けやすい。液状物のみで有れば体積による秤量で
も大きな誤差が生じない場合がある。この場合は工程の
簡便性を優先させる場合もある。ただし本発明の主旨
は、インキ追従体を疑塑性流体としてとらえたときの粘
性を重要視することであり、秤量の方法を指示するもの
ではなく、体積や目見当の秤量でも粘性特性が一致する
限り本発明の主旨を逸脱するわけではない。使用する秤
の正確さは良いに越したことはないが、秤量範囲の上下
限や有効数字に問題がなければ、なるべく同じ秤を使用
するなど、秤量精度を大切にするべきである。これは正
確さの上で、例えば5%軽く表示される秤でも被秤量物
が全て−5%と秤量されれば最終の出来高が狂うだけ
で、配合比は設計通りになるからである。秤量精度は±
3%以内が適当である。これも正確であることに越した
ことはないが、2.00重量部を秤量したいときに1.
94重量部〜2.06重量部程度の誤差で有れば、その
後の工程誤差や材料のロットバラツキの中に吸収されて
しまって、最終的に出来上がったインキ追従体のバラツ
キ公差に収まってしまう場合が多いためである。前述し
たように本発明のごとき油中に増粘剤を添加して成る系
では、その後の工程によって大きく粘性やペンに組んだ
ときの性能に差異が生じる。これを粘性特性を把握して
いくことで、ペンとして組んだときの性能バラツキを少
なくすることが本発明の主旨であり、本発明上では、配
合物や配合比へのこだわりは優先されない。
【0017】製造方法は、工程上簡便で効率の良い方法
で良いが、増粘剤の能力を引き出す事に細心を払うべき
である。無機微粒子増粘剤は十分に分散せしめることが
肝要である。本発明者等が微粒子シリカを用いる場合に
は、なるべく3本ロールミルを用いて強い剪断を加えて
いる。しかもその前後には予備混練と後混練で系全体が
十分に均一になるよう心掛けている。更に丁寧に作る場
合は、基油の一部を添加せずに控えておき、予備混練中
には120℃〜130℃の温度をかけて撹拌する。温度
を100℃以上に設定するのは、水の沸点が常圧では1
00℃前後であるためで、これによって保管中に微量吸
湿した水分を揮発させてしまうためである。その後3本
ロールミルで混練した後、50℃〜80℃で予め控えて
いた基油を加える。この際にも控えていた基油を50℃
程度に温め、数回に分けて希釈するように混合してい
く。ここで温度が常温でないのも、数回に分けて希釈す
るのも理由は同じで、既に増粘剤が分散されて極端に高
粘度となっているものをより均一に混合するためであ
る。更にこの上で、60℃以下に冷却した後に減圧脱泡
している。これにより一次粒子の集合体である二次・三
次粒子の隙間に入り込んだ気泡まで十分に抜き去ること
が出来、微粒子増粘剤の増粘能力を十分に引き出すこと
が出来るため、粘性を制御しやすくなるのである。
【0018】本発明者等は3本ロールミルを用いるが、
三本ロールミルを用いなくても、二本ロールミルでも十
分な剪断がかかる。また、プラネタリーミキサーなどの
万能混練機と呼ばれるものでも、微粒子増粘剤の能力を
十分に発揮させることは出来る。3本ロールミルを用い
ることは単なる1つの例であり、用いなくても、より均
一に増粘剤を分散させ、微小気泡を除去することで、本
発明を達成することは可能である。
【0019】本発明者等が粘土増粘剤を用いるときに
は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト
を好んで用いる。有機処理粘土の違いによる増粘効果に
はあまり大きな差異はない。これは粘土層間が十分に膨
潤してしまえば、適度な粘性を与えるためで、ほとんど
の有機処理粘土増粘剤の原料となっている天然もしくは
合成のスメクタイト類にその能力の差異は確認できな
い。このため、使い易いものを用いることに越したこと
はないという発想である。有機処理粘土増粘剤を油中に
混入し、十分な剪断を加えただけでは増粘剤として十分
に能力を発揮しない。本発明のように増粘剤の持つ能力
を常に十分発揮させることで粘性を制御するためには粘
土層間を十分に膨潤させる補助剤が必要である。本発明
者等はこれを増粘開始剤と呼んでいる。ジメチルジオク
タデシルアンモニウムベントナイトは、増粘開始剤がア
ルコール類でよい。他の有機処理粘土ではトルエンなど
の芳香族や酢酸エチルなどエステル類を用いるものがあ
り、人体に安全なエタノールで十分に能力を発揮するジ
メチルジオクタデシルアンモニウムベントナイトは工業
的に扱いやすい。増粘開始剤の添加量は粘土増粘剤の重
量比10%程度でよいが、本発明者等がジメチルジオク
タデシルアンモニウムベントナイトを用いるときには、
粘土増粘剤がインキ追従体全量に対して5重量部以下な
ら1重量部、5〜10重量部なら2重量部と、過剰気味
に添加して粘土増粘剤を十分機能させることを心掛けて
いる。これをプラネタリーミキサーなどで十分に均一に
混練した後、三本ロールミルで混練する。増粘開始剤は
粘土増粘剤の細部にまで行き渡り、十分な増粘を示す。
この時点で増粘開始剤は不要になるため、もう一度プラ
ネタリーミキサーに戻し、減圧脱泡する。粘土増粘剤も
層間などに微小の気泡が有る場合があるが、減圧脱泡に
よって十分に気泡を除去し、増粘剤の能力を発揮させる
ことが出来る。それと同時にインキに悪い影響をもたら
す可能性のある増粘開始剤もほぼ完全に除去される。ま
た、三本ロールミルを用いずにプラネタリーミキサーを
用いたまま、常温で2時間撹拌した後、100℃で1時
間撹拌したものは3本ロールミルを用いたものと同じ結
果となった。
【0020】金属石鹸を用いる場合は、鍋のような容器
に基油と金属石鹸を入れて撹拌しながら直火で加熱し
た。実験室規模では電熱加温も可能であるが、工業生産
では専用の設備がないと電気加熱は難しい。このため加
熱のしすぎには十分に注意しながら200℃〜250℃
に加温する。理論的には十分な撹拌がなされればこれを
冷やすのみで十分に増粘剤の能力が発揮されるが、本発
明者は、熱いままロールミルを通した方がより均一で増
粘効果が高いと考える。ロールミルにかけるかけないは
別問題として、その後、60℃以下に冷却して脱泡を行
う。油中に金属石鹸を溶解させるだけであるが、その工
程中にも微細気泡が混入し、インキ追従体の粘度バラツ
キの原因となってしまっているからである。
【0021】その他の有機増粘剤は各増粘剤メーカーの
指示に従った方法でその能力を十分に発揮させることが
肝要である。また、十分に増粘剤が均一になった時点で
は必ず微小気泡の除去が必要である。
【0022】脱泡の方法は、加温処理、撹拌処理、減圧
処理、加圧処理、振動処理、超音波照射、遠心処理、細
孔通過処理、自然放置など多様にあるが、この中でも減
圧しながら撹拌する方法が最も簡便で効果が高く、遠心
脱泡、超音波照射、細孔通過処理なども簡便で効果が高
い。
【0023】保管は20l以下の容器に小分けすること
が望ましい。本発明のごとき基油中に増粘剤を混練して
疑塑性を得るゲル状物は、保存時に油分が分離してくる
場合が多い。これを防ぐ一つの手段として、保存単位を
小さく保つことが挙げられる。大きな容器に多量に保管
すると、容器上部には多大な重力がかかり、油分が分離
しやすくなる。これも粘性によって、更に本発明ではあ
まり重要視していないが、降伏値や、チクソトロピー
性、粘弾性特性などで違いがあるし、基油粘度や増粘剤
種・増粘剤量などの配合物によっても差異がある。本発
明者等の経験では20l程度で深さ30cm程度の容器で
ある俗に「一斗缶」と呼ばれる容器や「ペール缶」と呼
ばれる容器で常温で3ヶ月間保存しても油浮きしないも
のは、ペン体中でも3年間油分離が確認されなかった
が、直径30cm深さ約35cmのステンレス容器では僅か
に油分の分離が見られた。このときのインキ追従体は、
KF96−1000(ジメチルシリコーン油;信越化学
(株)商品名)95重量部、アエロジルR−974(疎
水性微粒子シリカ;日本アエロジル(株)商品名)4重
量部、KF−945(ポリエーテル変性シリコーン;信
越化学(株)商品名)1重量部を3本ロールミルを用い
て分散し、減圧脱泡して得られた S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュー
トン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数) のn値が0.35のインキ追従体であり、後述の実施例
と同様の試験に於いても全て良好な結果を示すものであ
った。。これは20lの保存容器と25lの保存容器の
差異が顕著に現れた例である。肝要なのはペン体での安
定性と性能であり、それらが保存時の安定性より優先さ
れるべきである。したがって、前述の例のインキ追従体
が悪いのではなく、25l容器の方が保存方法として適
当でなかったと言わざるを得ない。
【0024】容器に保存中は、表面を重力方向に対して
垂直且つ平坦に保つ事が肝要である。容器中のインキ追
従体にピンポン玉程度の穴をあけて1ヶ月ほど放置して
観察すると、透明で、疑塑性のない油分が滲み出してい
ることが確認される。また、波紋状の凹凸があっても凹
部に油分の滲み出しが確認されることがある。また容器
に入っているインキ追従体をペン体に充填する場合も同
様である。容器下部からインキ追従体を吸い出してペン
体に順次充填していく工程でも、ペン体に充填されるイ
ンキ追従体は1本あたり0.1ml程度であり、容器が一
時に空になるわけではない。極端な凹凸が出来ると、そ
の日の内に油分が滲み出してくる場合があるので、1時
間から3時間に一度はヘラのようなもので表面を平らに
保つ必要がある。この例を示す。インキ追従体は、KF
96−3000(ジメチルシリコーン油;信越化学
(株)商品名)97重量部、アエロジル200(微粒子
シリカ;日本アエロジル(株)商品名)2.5重量部、
ユニルーブ75DE−2620(ポリ(オキシエチレン
・オキシプロピレン)ポリオール;日本油脂(株)商品
名)0.5重量部である。このインキ追従体も3本ロー
ルミルを用いて分散し、減圧脱泡して得られた S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュー
トン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数) のn値が0.50のインキ追従体であった。これをペー
ル缶に約15kg充填し、その底に近い部分から毎時36
0ml汲み上げて、自動ペン組立て機で図1のボールペン
リフィールに組み立てた。1缶で、約13万本組み立て
たが、1時間〜3時間に一度容器中のインキ追従体表面
をヘラを用いて平らにしたものと、ペンを組み立てる間
に何もしなかったものを横向きに放置し、インキ追従体
が尾端から流れ出す不良の本数を数え、不良率を計算し
たところ、ヘラを用いた時の工程からは1本も不良が出
ず、不良率0%であったのに対し、何もしなかった工程
では0.21%の不良が確認された。
【0025】インキ追従体を重力に逆らって変形させた
場合、増粘剤は液中での構造を維持しようとして、与え
られた形状を保とうとするが、液体である基油は重力に
逆らおうとはしない。基油のみを粘弾性的に評価した場
合には貯蔵弾性率はほとんど現れない。一方、増粘剤を
添加した後には、より高い貯蔵弾性率が観察できる。こ
のことは、重力という応力に基油と増粘剤が別々に対応
しようとするためで、この理由から、重力に逆らった形
状や重力をまともに受ける形態での保存は離油しやすい
事が説明される。
【0026】インキ追従体の保存場所は高温でないこと
が望ましい。温度は結露しない程度に低いことが好まし
いが、一般に油類は高温では粘度が下がる。温度の影響
が少ないシリコーン油でも例外ではない。粘度が下がる
と、増粘剤の構造中の基油が動きやすくなり、重力に対
してより敏感に対応してしまうために離油がおこりやす
くなるのである。
【0027】
【実施例】次に実施例を持って本発明を説明する。
【0028】実施例及び比較例の評価のために、水性ボ
ールペン用インキを次に示すように調製した。 プリンテックス 25(カーボンブラック;デグサ社商品名) 6 重量部 ジョンクリル61J(スチレンアクリル酸共重合体エマルション: 31%アンモニア中和水溶液:ジョンソン(株)商品名) 10 〃 アクロナールYJ−1120D(スチレンメタクリル酸共重合体: 50%エマルション:三菱化学BASF(株)商品名) 10 〃 グリセリン 10 〃 リシノール酸カリウム 0.5〃 トリエタノールアミン 1 〃 1,2−ベンズイソチアゾリン3−オン 0.2〃 ベンゾトリアゾール 0.2〃 SILWET L7001(シリコーン系界面活性剤; 日本ユニカー(株)商品名) 0.2〃 水 11.5〃 以上をビーズミルで混練した後、カーボンブラックの粗大粒子を取り除き、そ の後、 プロピレングリコール 20 重量部 カ−ボポール 940(架橋型ホ゜リアクリル酸;B.F.ク゛ット゛リッチ社商品名) 0.4〃 水 30 〃 を加えて、40sec-1の時の粘度が450mPa・secの水性ボールペン用インキを 得た。
【0029】実施例及び比較例の評価のために、油性ボ
ールペン用インキを次に示すように調製した。 バリファーストバイオレット1701(染料; オリエント化学工業(株)商品名) 15重量部 バリファーストイエロー1105(染料; オリエント化学工業(株)商品名) 5 〃 スピロンブラックGMH(染料;保土ヶ谷化学工業(株)商品名) 13 〃 ルビスコールK30(ポリビニルピロリドン;BASF社商品名)8.7 〃 ルビスコールK90(ポリビニルピロリドン;BASF社商品名)0.3 〃 オレイン酸(和光純薬(株)製試薬) 3 〃 2−フェノキシエタノール 44 〃 ベンジルアルコール 11 〃 以上を60℃で攪拌し、19.2sec-1の粘度が4Pa・se
cの油性ボールペン用インキを調製した。
【0030】粘度測定 実施例および比較例のインキ追従体を調製し、25℃に
於いて回転粘度計(東機産業製E型粘度計)で約1sec
-1から200sec-1の剪断速度下の2点以上の粘度を測
定し、n値を求めた。
【0031】試験1 離油試験−1 実施例及び比較例のインキ追従体200gをガラスビン
にとり、常温で3ヶ月放置し、油分が滲み出ているか否
かを目視で観察した。全く油分が滲み出していないもの
を○、滲み出した油分が概ね1ml以内のものを△、それ
以上のものを×と評価した。
【0032】試験2 離油試験−2 実施例及び比較例を10本ずつ、図1に示すボールペン
に組み立てた。内径4.0mmで半透明のポリプロピレン
チューブをインキ収容管10とし、所定のインキ20に
は本実施例用に調製した水性ボールペンインキを用い、
各実施例及び比較例のインキ追従体30を充填した。ペ
ン先部とインキ収容間の継ぎ手40には、図1と同様の
形態を持つ市販のボールペン(UM−100;三菱鉛筆
(株)商品名)のものと同じペン先部(ボールペンチッ
プ)を装着した。ペン先部41の材質は快削ステンレ
ス、ボール42は直径0.5mmのタングステンカーバイ
トである。インキ追従体は正確に0.19ml測り取り、
インキ追従体がインキ収容管中でで長さ方向に15mmに
なるように留意した。また、インキ追従体及びインキ中
にペン組立時に混入した気泡を除去するために、インキ
及びインキ追従体を充填した直後に、国産遠心機(株)
製H103N型遠心機を用いて2800rpmで10分
間、ペン先が外側になるようにして遠心処理した。この
ペンを、ペン先が上になるようにして、50℃雰囲気中
で1ヶ月間放置し、インキ追従体の油分がインキ中に浮
き出すか、或いはインキ収容管後端から漏れだした本数
を調べた。
【0033】試験3 泡咬み試験 試験2と同様のペンを20本組み、ペン先が下になるよ
うにして、25℃・相対湿度65%の環境下に1ヶ月間
放置し、インキとインキ追従体界面、もしくはインキ追
従体中に泡が発生する本数を目視にて観察し、泡が発生
した本数を調べた。
【0034】試験4 インキ追従性試験 試験2と同様のペンにインキ追従対30を充填しないも
のを同様の手順で10本組み立て、毎分4.5mの速度
で100m筆記し、その時の筆記流出量を測定し、この
10本の平均値を標準流出量Aとした。実施例及び比較
例をインキ追従体として用いたペンを同様に200m螺
旋筆記した。このときの100mあたりの平均インキ流
出量を標準流出量Aと比較した。筆記描線は標準流出量
Aと比較して80%以上で有れば目視で描線濃度の差異
を確認することは出来ないので○と判定した。標準流出
量Aの60%未満だと、著しく描線濃度が薄くなるの
で、×と判定した。その中間の60%以上80%未満の
場合を△とした。平均流出量が100%以上であったペ
ンはなかった。
【0035】試験5 クリアドレイン性試験 試験4で200m筆記し終わったサンプルのインキ追従
体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。10本
の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm以
上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評価
した。
【0036】試験6 インキ追従性試験−2 ペン先部を市販の太字用ボールペン(UM−153;三
菱鉛筆(株)商品名)のものと変えたペンを、試験2に
準じて10本組み立てた。ペン先部41の材質は快削ス
テンレス、ボール42は直径1.0mmのタングステンカ
ーバイトである。更にこのペンにインキ追従対30を充
填しないものを同様の手順で10本組み立て、毎分4.
5mの速度で100m筆記し、その時の筆記流出量を測
定し、この10本の平均値を標準流出量Bとした。実施
例及び比較例をインキ追従体として用いたペンを同様に
200m螺旋筆記した。このときの100mあたりの平
均インキ流出量を標準流出量Bと比較した。筆記描線は
標準流出量Bと比較して80%以上で有れば目視で描線
濃度の差異を確認することは出来ないので○と判定し
た。標準流出量Bの60%未満だと、著しく描線濃度が
薄くなるので、×と判定した。その中間の60%以上8
0%未満の場合を△とした。平均流出量が100%以上
であったペンはなかった。
【0037】試験7 クリアドレイン性試験−2 試験6で200m筆記し終わったサンプルのインキ追従
体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。10本
の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm以
上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評価
した。
【0038】試験8 インキ追従性試験−3 実施例及び比較例を10本ずつ、図2に示すボールペン
に組み立てた。内径1.7mmで半透明のポリプロピレン
チューブをインキ収容管10とし、所定のインキ20に
は本実施例用に調製した油性ボールペンインキを用い、
各実施例及び比較例のインキ追従体30を充填した。ペ
ン先部には市販のボールペン(UM−100;三菱鉛筆
(株)商品名)のものと同じもの(ボールペンチップ)
を装着した。ペン先部41の材質は快削ステンレス、ボ
ール42は直径0.7mmのタングステンカーバイトであ
る。インキ追従体がインキ収容管中で長さ方向に約15
mmになるように留意した。このペンにインキ追従対30
を充填しないものを同様の手順で10本組み立て、毎分
4.5mの速度で100m筆記し、その時の筆記流出量
を測定し、この10本の平均値を標準流出量Cとした。
実施例及び比較例をインキ追従体として用いたペンを同
様に200m螺旋筆記した。このときの100mあたり
の平均インキ流出量を標準流出量Cと比較した。筆記描
線は標準流出量Cと比較して80%以上で有れば目視で
描線濃度の差異を確認することは出来ないので○と判定
した。標準流出量Cの60%未満だと、著しく描線濃度
が薄くなるので、×と判定した。その中間の60%以上
80%未満の場合を△とした。平均流出量が100%以
上であったペンはなかった。
【0039】試験9 クリアドレイン性試験−3 試験8で200m筆記し終わったサンプルのインキ追従
体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。10本
の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm以
上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評価
した。
【0040】試験10 インキ追従性試験−4 ペン先部のボールペンチップを市販の油性ボールペン
(SA−S;三菱鉛筆(株)商品名)のものと変えたペ
ンを、試験2に準じて10本組み立てた。ペン先部41
の材質は快削ステンレス、ボール42は直径0.7mmの
タングステンカーバイトである。更にこのペンにインキ
追従対30を充填しないものを同様の手順で10本組み
立て、毎分4.5mの速度で100m筆記し、その時の
筆記流出量を測定し、この10本の平均値を標準流出量
Dとした。実施例及び比較例をインキ追従体として用い
たペンを同様に200m螺旋筆記した。このときの10
0mあたりの平均インキ流出量を標準流出量Dと比較し
た。筆記描線は標準流出量Dと比較して80%以上で有
れば目視で描線濃度の差異を確認することは出来ないの
で○と判定した。標準流出量Dの60%未満だと、著し
く描線濃度が薄くなるので、×と判定した。その中間の
60%以上80%未満の場合を△とした。平均流出量が
100%以上であったペンはなかった。
【0041】試験11 クリアドレイン性試験−2 試験10で200m筆記し終わったサンプルのインキ追
従体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。10
本の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm
以上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評
価した。
【0042】試験12 耐落下衝撃性試験 試験2と同様のペンを10本ずつ組立て、市販のボール
ペン(UM−100;三菱鉛筆(株)商品名)軸に組み
入れた。このペンを高さ1.5mの地点から、厚さ1cm
の杉の正目板上に、ペン先部が上向きになるように落下
させた。10本ともインキ追従体とインキ界面に変化が
見られないものを○、1本でもインキ追従体とインキ界
面で乱れが生じたものは△、5本以上で乱れが確認され
るか、1本でもインキの漏れ出しがあったものは×と評
価した。
【0043】試験13 経時安定性試験 試験1で△以上と評価されたインキ追従体を用いて、試
験2から試験6の試験を行った。△と評価されたものは
浮き出た油分を取り除いてから用いた。また、×と評価
したものは評価対象外として×と判定した。初期の試験
2〜試験6と全く評価の変わらなかったものを○、1試
験のみが1ランク下がったものは△、2試験で1ランク
以上、もしくは1つの試験で2ランク以上下がったもの
は×と判定した。試験2と試験3は、1本の差なら同ラ
ンク、2本又は3本の差が出たら1ランク、4本差が出
た場合は2ランクの性能低下と判断した。
【0044】試験14 再現性試験 実施例1〜11、比較例1〜8を各5回調製し、各々同
じ測定点で粘度を測定して、n値を算出した。低剪断
側、高剪断側共に、最も粘度が低かったロットの粘度を
100として、最も粘度が高かったロットの粘度を相対
比で表現し、最高/最小比とした。 低剪断側、高剪断側ともに最高・最小比が120以内の
ものを○。 低剪断側、高剪断側ともに最高・最小比が150以内の
ものを△。 最高/最小比が片方でも150を越えたものは「再現性
稀薄」として×とした。
【0045】以下に実施例及び比較例の配合及び製造方
法を記す。調製に用いた器具として、3本ロールミルは
小平製作所(株)製の13cmロールのもの、プラネタリ
ーミキサーは特殊機化工業(株)製のTKハイビスミッ
クス2P−03型で、「高速」と明記したときは毎分1
50回転、特に断りがなければ毎分50回転で用いた。
(粉体混入直後は更に低速の運転でも用いた)
【0046】 実施例1 ポリブテン 300H(出光石油化学(株)商品名) 45重量部 アエロジル R974(疎水性微粒子シリカ; 日本アエロジル(株)商品名) 4 〃 SILWET FZ−2110(ポリエーテル変成シリコーン; 日本ユニカー(株)商品名) 1 〃 以上をプラネタリーミキサーで予備混練し、3本ロールミルで混練した。これ を再びプラネタリーミキサーに移し、混練しながら、 ダイアナフレシア MC−W90(流動パラフィン; 出光興産(株)商品名) 50重量部 を数度に分けて加え、1時間攪拌した。その後、真空ポ
ンプを用いて0.05気圧以下の環境とし、更に1時間
攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0047】 実施例2 ポリブテン 300H 45重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2110 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて120℃で予備混練し、60℃に冷却後 、3本ロールミルで混練した。これを再びプラネタリーミキサーに移し、混練し ながら、 ダイアナフレシア MC−W90 50重量部 を数度に分けて加え、1時間攪拌した。その後、真空ポ
ンプを用いて0.05気圧以下の環境とし、更に1時間
攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0048】 実施例3 ポリブテン 300H 45重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2110 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて100℃で2時間混練し、60℃に冷却 後、混練しながら、 ダイアナフレシア MC−W90 50重量部 を数度に分けて加え、1時間攪拌した。 その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境と
し、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去し
た。
【0049】 実施例4 ニッサンポリブテン 200N(ポリブテン; 日本油脂(株)商品名) 43.3重量部 ニッサンポリブテン 30N( 〃 ) 5.7 〃 ケイドール(流動パラフィン;ウィトコケミカル社商品名) 49 〃 Benton 34(ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト; ウィルバーエリス社商品名) 2 〃 エタノール(和光純薬(株)製試薬1級) 1 〃 以上をプラネタリーミキサーで予備混練し、3本ロール
ミルで混練した。これを再びプラネタリーミキサーに移
し、混練しながら、真空ポンプを用いて0.05気圧以
下の環境とし、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気
泡を除去した。3本ロールミルとその後の減圧脱泡の結
果、エタノールは揮発して無くなってしまった。
【0050】 実施例5 ニッサンポリブテン 015N(ポリブテン; 日本油脂(株)商品名) 98重量部 アルミニウムステアレート #600(ステアリン酸アルミニウム; 日本油脂(株)商品名) 2 〃 以上をステンレスビーカーに取り、マントルヒーターを
用いて、250℃に加熱しながら、ステンレス製攪拌羽
根を介してラボスターラーLR400D(ヤマト科学
(株)商品名)で2時間攪拌した。約80℃に冷却後、
3本ロールミルで混練した後、プラネタリーミキサーに
移し、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境とし
て1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0051】 実施例6 ポリブテン 300H 45重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2110 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温で2時間、高速で混練し、 ダイアナフレシア MC−W90 50重量部 を数度に分けて加え、1時間攪拌した。 その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境と
し、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去し
た。
【0052】 実施例7 KF96A−3000(ジメチルシリコーン油; 信越化学工業(株)商品名) 89重量部 アエロジル R976(疎水性微粒子シリカ; 日本アエロジル(株)商品名) 10 〃 プレンアクト AL−M(アルミニウム系カップリング剤; 味の素(株)商品名) 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0053】 実施例8 KF96A−500(ジメチルシリコーン油; 信越化学工業(株)商品名) 69重量部 KF96A−1000(〃) 20 〃 アエロジル200(微粒子シリカ;日本アエロジル(株)商品名)10 〃 KBC−1003(シラン系カップリング剤; 信越化学工業(株)商品名) 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0054】 実施例9 KF96H−6000(ジメチルシリコーン油; 信越化学工業(株)商品名) 95重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2191(ポリエーテル変成シリコーン; 日本ユニカー(株)商品名) 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0055】 実施例10 KF96A−500 95重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2191 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0056】 実施例11 KF96A−5000(ジメチルシリコーン油; 信越化学工業(株)商品名) 95重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2191 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0057】 比較例1 ポリブテン 300H 45重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2110 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて予備混練し、3本ロールミルで混練した 。これを再びプラネタリーミキサーに移し、混練しながら、 ダイアナフレシア MC−W90 50重量部 を数度に分けて加え、2時間攪拌した。
【0058】 比較例2 ポリブテン 300H 45重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2110 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温で2時間混練し、 ダイアナフレシア MC−W90 50重量部 を数度に分けて加え、1時間攪拌した。 その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境と
し、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去し
た。
【0059】 比較例3 ポリブテン 300H 45重量部 アエロジル R974 4 〃 SILWET FZ−2110 1 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて90℃で2時間混練し、60℃に冷却後 、混練しながら、 ダイアナフレシア MC−W90 50重量部 を数度に分けて加え、1時間攪拌した。 その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境と
し、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去し
た。
【0060】 比較例4 ニッサンポリブテン 200N 43.3重量 部 ニッサンポリブテン 30N 5.7 〃 ケイドール 49 〃 Benton 34 2 〃 以上をプラネタリーミキサーで予備混練し、3本ロール
ミルで混練した。これを再びプラネタリーミキサーに移
し、混練しながら、真空ポンプを用いて0.05気圧以
下の環境とし、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気
泡を除去した。
【0061】 比較例5 ニッサンポリブテン 015N 98重量部 アルミニウムステアレート #600 2 〃 以上をステンレスビーカーに取り、マントルヒーターを
用いて、250℃に加熱しながら、ステンレス製攪拌羽
根を介してラボスターラーLR400D(ヤマト科学
(株)商品名)で2時間攪拌した。約80℃に冷却後、
3本ロールミルで混練した。
【0062】 比較例6 KF96A−3000 97重量部 アエロジル R974 3 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0063】 比較例7 KF96A−3000 90重量部 アエロジル R976 10 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0064】 比較例8 KF96A−500 70重量部 KF96A−1000 20 〃 アエロジル 200 10 〃 以上をプラネタリーミキサーを用いて常温下、高速で2
時間混練し、その後、真空ポンプを用いて0.05気圧
以下の環境とし、更に1時間攪拌してゲル状物中の微細
気泡を除去した。
【0065】ここで、各実験のうちで、粘度測定の結果
を、表1に示す。
【表1】
【0066】また、試験1〜試験14の結果を、表2に
示す。
【表2】
【0067】各実施例は概ね良好な結果を得ている。こ
のうち、実施例4と実施例9はインキ追従性試験でやや
難が見られる。これは実施例4の基油が約7000mPa・
sec、実施例9の基油が約6000mPa・secと高いことが
原因である。インキ流出量をフォロワーが妨げることは
ペンの設計の自由度を狭めるもので好ましいことではな
い。しかし、試験1,試験2の離油や試験3の泡咬み、
そして試験13の経時安定性、試験14の再現性等の性
能項目とは1ランク優先度は下がる。即ち、インキ追従
体が毎回一定の仕上がりで生産できるのなら、ペン全体
の性能のバランスを最初からインキ追従体によって、流
出量が少なくなることを見越して作ればよいからであ
る。試験14の再現性試験の中で、実施例1〜11は再
現性が良く、反対に比較例1〜5はバラツキが大きかっ
た。比較例6,7,8は再現性良く作られたが、配合上
でインキ追従体としては使えないものであった。比較例
1は実施例1の脱泡されていないものである。この比較
例1では、5回作ったものの中でnの値が本発明の請求
範囲である0.3〜0.8の間に入るものもあったが、
逆に0.1以下と大きく外れるものもあった。実施例1
は粘性の再現性を良くするために脱泡処理しているか
ら、n値も再現性良く出来るのである。一方、比較例1
は3本ロールミルを使い、増粘剤が均一に分散されてい
るにも関わらず、脱泡されていないために作る度に粘性
の違うものが出来上がってしまっている。微細気泡がイ
ンキ追従体中に残ると、粘性、特に低剪断速度域での粘
度が高くなる。インキ追従体はペンの未使用時は静的環
境にあり、インキの流出に伴って摺動する。即ち、静か
ら動への移行があるわけで、低剪断速度域での粘度が高
いとこれを著しく妨げる。比較例1の結果でも、インキ
に対する追従性が、殆ど実施例1より劣っている。
【0068】比較例2と比較例3は実施例3と実施例6
と比較する。この実施例及び比較例の全4例は、脱泡処
理が施されている。違いは増粘剤の分散条件である。実
施例3は100℃に加温されている。このため、材料中
に混入している微量な水分が揮発するため、並の攪拌力
でも安定なゲルを得ることが出来る。比較例2及び比較
例3ではそれ以下の温度で、並の攪拌しかしていないた
め、出来上がりにばらつきが大きい。なお比較例3は、
90℃に加温しているものの、水分を蒸発させる100
℃に達していないために、水分を完全に除去できず、経
時安定性あるいは再現性に劣るものである。実施例6は
混入した微量水分を除去していない。しかし、激しい攪
拌によって強い剪断をかけながら作る点で、実施例1の
思想と同じである。微量水分は油中に疎水性の増粘剤を
分散する課程で邪魔になるものである。並の攪拌ではこ
の水分の有無で増粘剤の分散効率が変わってしまうので
ある。一方、これを有無を言わせない強い剪断力で一気
に分散してしまえば、微量水分は減圧脱泡の工程で揮発
してしまうので、出来上がったものは、ばらつきの少な
いものとなるのである。
【0069】実施例4はエタノールで一旦粘土増粘剤を
膨潤させ、その広がった粘度層間中に油分を行き渡らせ
てしまい、後に要らなくなったエタノールを取り除いて
しまう製法である。比較例4は有機処理粘土をただ油中
に混ぜ合わせたものである。実施例4と結果的に含まれ
る成分に変わりはない。粘土増粘剤は膨潤して粘度層間
に基油が十分に含浸されなければ、増粘効果はない。本
実施例でも比較例4は再現良く粘度がないものが得ら
れ、ペンに充填すると、ペンを上乃至横向きにした時に
ペンの尾端から漏出してしまった。
【0070】実施例5と比較例5は金属石鹸を用いてい
るが、対比としては、実施例1と比較例1と同じであ
る。即ち、微細気泡がインキ追従体に残存するために低
剪断速度域での粘度が高く、インキ追従性を悪くしてい
る。また、比較例1と共通することはペン中に泡が発生
しやすいことである。インキ追従体中の微細気泡は時間
と共に集合し、目に見える泡となって、インキ中か或い
は後端から空気中に放出されてしまうのである。この、
インキ中に放出された泡が、インキ中の易揮発成分等を
集めて成長し、目に見える大きな泡となるのである。
【0071】比較例6は表2中では○印が多く、一見優
秀なインキ追従体に見える。5回作ったものの再現性も
良い。しかし、n値が高すぎる、即ち擬塑性が弱すぎる
ために、ペンを上向きに放置したり、落下衝撃の後に横
向きになったりすると、簡単に後端からインキ追従体が
漏出してしまう。これはインキ追従体にとっては致命的
な欠陥である。
【0072】比較例7は実は調製直後は適当な粘性にあ
る。n値も程良い。しかしながら、調製してから2日も
経つと、疎水性微粒子シリカはゲル中で、強固な網目構
造を発揮し、特に低剪断速度域で粘度が異常に高くなっ
てしまう。これによって、適当なインキ追従性が得られ
ない。試験13の経時安定性試験も、調製の再現性試験
も良好な結果となっているが、これはペンを組み立てて
から1週間から3週間程度の間で追従性試験を行ってい
るために試験13で同じ様な結果が得られただけで、ペ
ン組直後と、1ヶ月後、半年後と、それぞれにペン体中
でのインキ追従体の擬塑性の強さが変化してしまうた
め、インキ追従性が変わり、ペンとして経時的に安定な
性能にならない。これを改善するのが実施例7に入って
いるカップリング剤である。カップリング剤を入れる
と、微粒子増粘剤の表面に吸着し、基油中での分散安定
性を高め、微粒子増粘剤が強固な網目構造を作ることを
阻害する。このため、同じ粘性を求める場合には、添加
しないものより多量の微粒子増粘剤を必要とするが、基
油中での微粒子の安定化という極めて基本的なところで
安定性を向上するために総合的には経時的な安定性の高
いインキ追従体を得ることが出来る。本実施例ではアル
ミ系を用いたが、シラン系でも、チタン系でも同様の効
果が得られている。
【0073】比較例8は親水性シリカを使っているた
め、調製直後から高い擬塑性が得られている。しかし、
油中に親水基で表面が覆われた微粒子が分散するのだか
ら、本来不自然な分散であることは自明である。本実施
例でも、低剪断域での粘度が高いためn値が低く、イン
キ追従性は良くない。また、経時安定性や、離油試験で
も芳しくない成績が残っている。
【0074】基油粘度は高いとインキ追従性と、クリア
ドレイン性が悪くなる。前述の通り、フォロワーによっ
てインキ追従性が悪くなっても、ペン全体の設計段階か
ら考慮して設計すれば問題ない場合もある。しかし、イ
ンキやボールペンチップの技術から考えれば、より設計
に自由度があった方が好ましいことは自明である。イン
キ追従体が基油粘度の影響によってインキの追従性を阻
害する境界線は、5Pa・secである。実施例11と実施例
9は基油粘度の違いだけであるが、実施例11が全ての
追従性試験で何とか△以上を保っているのに対し、実施
例9は試験6で×の判定となってしまった。実施例11
と実施例9の基油粘度の間に境界線があることは明らか
であるが、それが実施例11を基準として「5Pa・sec以
下」と称するか、実施例9を基準として「6Pa・sec未
満」とするかは定かでない。何れにしても、ある一点を
持って正逆が反転するほど劇的な境界ではないと思われ
るので、本発明者らは実績のある「5Pa・sec以下」と判
断している。
【0075】基油粘度が低ければ、多少擬塑性が強くて
もインキ追従性は良くなる。しかし、基油の種類に関係
なく粘度が低いと耐落下衝撃性が劣ってくる。実施例8
と比較例8が約600mPa・secで、実施例10が約50
0mPa・secである。この間で、耐落下衝撃性が△から×
に変わっている。耐落下衝撃性で△と×の境界は非常に
大きい。△のものは落下衝撃後、見栄えが悪くなるのみ
で、機能的には落下前と変わらない。一方×のものはイ
ンキと外気が接触してしまうこととなる。即ちインキ追
従体はその機能を失ったことになってしまうわけであ
る。即ち、基油粘度が500mPa・secと600mPa・secで
境界線が引けると言える。(ただし、固形物とゲル状物
を併用するインキ追従体に用いる時のゲル状物として
は、固形物が落下による衝撃を緩衝する働きがあるので
この限りではない。)
【0076】インキ追従体は摺動物として考えることも
できる。インキ追従体を用いるペンではインキの消費量
とインキ追従体の追従性能との関係は、ペン性能全体に
及ぶ重要な要素である。一般に擬塑性の水性インキを用
いたボールペンは、一般的な0.5mmボールを使用した
もので、100m辺り100〜200mgのインキを消費
する。更に太字ともなれば300mg以上のインキを消費
する。油性ボールペンは一般的な0.7mmボールを使用
したもので、100mあたり20mg前後、太字などでは
30〜40mgのインキを消費し、特殊なものでは40mg
以上のインキを消費する。本実施例では試験4,5が一
般的な水性擬塑性インキボールペン、試験6,7が太字
の流出量の多い水性擬塑性インキボールペン、試験1
0,11が一般的ボールペン、試験8,9が特別にイン
キ量が多い特殊なボールペン、と言う設定で、インキ追
従体の追従性能と、インキ収容管内壁へのインキ追従体
の付着性能を評価した。
【0077】その結果、一般的な油性ボールペンでは、
全ての実施例及び比較例で追従性能に悪影響がなかっ
た。これは、旧来の一般的油性ボールペンでは、本発明
の如き細心の粘性管理が必要ないことを意味する。一方
で、流出量の多い特殊な油性ボールペンでは差異が生
じ、油性ボールペンであってもインキ追従体の粘性を管
理する必要が示差された。この基準を本実施例の試験
8,9に用いたボールペンが、100mあたり40mgで
有ったことを理由に、「100mあたり40mg以上のイ
ンキ流出量のボールペンに用いるインキ追従体には、本
発明のインキ追従体を用いることが好ましい」と結論す
る。
【0078】水性擬塑性インキを用いたボールペンは元
々インキの流出量が大きい。一般的なものでさえ、本実
施例では比較例の数例に不都合が生じている。冒頭で述
べた種々の発明がなされているのもこのためである。流
出量が少なければ、本実施例及び比較例に紹介されてい
るようなインキ追従体ならば問題ないであろう事は、油
性ボールペンでの結果、更には太字の大流出量のボール
ペンで顕著であることから、自明であると言えるが、本
実施例では一般的な流出量の水性ボールペンでも実施例
と比較例に差異が見られる。この一般的な水性ボールペ
ンのインキ流出量が100mあたり最低で100mgで有
ったことから、「100mあたり100mg以上のインキ
流出量の水性ボールペンに用いるインキ追従体には、本
発明のインキ追従体を用いることが好ましい」と結論す
る。
【0079】
【発明の効果】以上のように本発明の水性ボールペン用
インキ追従体は、初期に適度な粘性に調製しても、初期
性能を良好に保つことが出来る経時安定性に優れたイン
キ追従体である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインキ追従体を用いる水性ボールペン
のリフィールホルダーの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 インキ収容管 20 インキ 30 インキ追従体 40 ペン先部とインキ収容管の継ぎ手 41 ペン先部(ボールペンチップホルダー) 42 ボール

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1sec-1〜200sec-1の剪断速度域の任
    意の2点、又はそれ以上の測定点での粘度測定結果を、
    以下の粘性式 S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュー
    トン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数) で表す場合のnの値が、0.3〜0.8であるように調
    製されたことを特徴とするインキ追従体。
  2. 【請求項2】 無機微粒子増粘剤、及び/又は粘土増粘
    剤を添加した後、脱泡処理を意図的に施すことによって
    得られたことを特徴とする請求項1記載のインキ追従
    体。
  3. 【請求項3】 増粘剤を均一に分散、及び/又は溶解さ
    せるための処理を施したことを特徴とする請求項1又は
    2記載のインキ追従体。
  4. 【請求項4】 有機処理粘土増粘剤を基油中に分散させ
    るに際して、アルコール類、グリコール類、ケトン類、
    芳香族炭化水素の群より選ばれる揮発性溶剤を一時的な
    補助剤として添加したことを特徴とする請求項1又は3
    記載のインキ追従体。
  5. 【請求項5】 無機微粒子増粘剤を用いたインキ追従体
    に於いて、分子中にエチレンオキサイド、プロピレンオ
    キサイドなどに代表されるアルキレンオキサイドを持っ
    た親水基を有する、及び/又はグリセリン、ポリグリセ
    リン、ソルビタンなどの親水基を有する化合物を用いた
    ことを特徴とする請求項1,2又は3記載のインキ追従
    体。
  6. 【請求項6】 無機微粒子増粘剤を用いたインキ追従体
    に於いて、分子中に珪素、チタニウム、アルミニウムの
    群より選ばれる1種又は複数種の元素を含み、無機材料
    と有機材料、もしくは異種の有機材料複合系に於いて、
    化学的に両者を結びつける、或いは化学反応を伴って親
    和性を改善し、複合系材料の機能を高める試剤を用いた
    ことを特徴とする請求項1,2又は3記載のインキ追従
    体。
  7. 【請求項7】 基油の粘度が25℃において、600mP
    a・sec〜5Pa・secである請求項1,2,3,4,5又は
    6記載のインキ追従体。
  8. 【請求項8】 1sec-1〜200sec-1の剪断速度域の任
    意の2点、又はそれ以上の測定点での粘度測定結果を、
    以下の粘性式 S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュー
    トン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数) で表す場合のnの値が、0.3〜0.8であるように調
    製されたインキ追従体を用いたことを特徴とするボール
    ペン。
  9. 【請求項9】 油性のインキを用い、100m筆記する
    場合のインキ流出量が40mg以上であることを特徴とし
    た請求項8記載のボールペン。
  10. 【請求項10】 水性のインキを用い、100m筆記す
    る場合のインキ流出量が100mg以上であることを特徴
    とした請求項8記載のボールペン。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002294103A (ja) * 2001-03-30 2002-10-09 Pentel Corp 水性修正液
JP2005007774A (ja) * 2003-06-19 2005-01-13 Pilot Corporation 油性ボールペン

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