JP3544960B2 - インキ追従体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインキ追従体の製造方法、更に詳しくはインキ収容管内に直接インキを収容する筆記具、たとえばボールペンにおいて、インキの尾端部に使用し、インキ消費に伴って、インキに追従しながら蓋としての機能を有するインキ追従体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水性ボールペンのインキの粘度は、類似の形態を持つ油性ボールペンの粘度が3Pa・sec〜20Pa・secであるのに対し、50mPa・sec〜3Pa・secと低いため、ペンを上向き又は横向きに放置した場合にはインキが漏出してしまう。また、軽度な衝撃でもインキが飛散し、手や服を汚してしまう恐れがあるため、これを防止するべくインキ追従体が具備されている。
また、近年は油性ボールペンでも、堅牢な筆記描線が得られる顔料を使用する為、又は軽い書き味を実現する為などの理由で、従来より粘度の低いインキを供給する傾向にある。
また、基油として揮発性の高い有機溶剤を用いる場合もあり、水性ボールペンと同じように、インキ追従体の具備が必要とされる場合が生じてきた。。
【0003】
特開昭48−40510、特開昭57−153070、特開昭57−200472、特開昭58−1772、特開昭61−57673、特開昭61−145269、特開昭61−151289、特開昭61−200187、特開昭61−268786、特開昭62−50379、特開昭62−148581、特開昭62−199492、特開昭63−6077、特開平02−248487、特開平04−202281、特開平05−270192、特開平05−270193、特開平06−200235、特開平06−220418、特開平06−247094、特開平06−264048、特開平06−328890、特開平06−336584、特開平07−61187、特開平07−173426、特開平07−214974、特開平07−214975、特開平07−242093、特開平07−266780、特開平08−2171、特開平08−11481、特開平08−58282、特開平08−72465、特開平08−90982、特開平08−108679、特開平08−142570、特開平08−183286、特開平08−300873、特開平08−300874、特開平09−11683、特開平09−76687などには、インキ収容管に直接インキを収容せしめる水性ボールペンにゲル状物もしくはゲル状物と固形物を併用するインキ追従体を具備する事が開示されている。
これらは、インキに追従しやすくする、落下時の衝撃に耐える、逆流防止効果を高める、見栄えを良くするなど、多様な目的と着眼の発明である。
【0004】
多種多様の発明がなされ、インキへの追従性や落下衝撃、インキ追従体組成物の成分がインキ中に溶出してしまうなどのインキへの干渉、逆流防止効果、インキ追従体自体の経時安定性など、かなりの部分で改良が進んできたが、未だに改良されていない問題がある。
それは、インキ追従体の製造ロット毎の性能ばらつきである。
これらの先発明のインキ追従体の実施例は再現する場合もあるが、出来次第では全く性能が劣ってしまう場合もある。
具体的には、インキ追従体の粘度に最もバラツキが大きく、これに伴ってインキへの追従性能がばらつき、同じインキ、同じペン先部を用いても、インキ消費量が一定しないこととなっていた。また、離油のしやすさ、ペン体中での気泡の発生しやすさなど、ペン全体を考えた場合にも、必ずしも一定して良い結果が得られていないのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は製造ロット毎の性能バラツキを未然に防ぐための製造方法の提供にある。
また、当然のこととして、インキ中の配合物に関わらず(インキへの干渉が無く)常に初期の性能を維持する(経時安定性の良い)インキ追従体であり、同時に、インキと外気を遮断してインキの揮発を防止すること(揮発防止性)、上向き筆記した後のインキ収容管後端からのインキの漏出を防ぐ性能(漏出防止性)、インキ収容管内壁に付着する量を極小に押さえ最後までインキ追従体の機能を維持する性能(クリアドレイン性)、インキ追従体の追従能力が劣る為にペン先からのインキの流出を妨げない性能(インキ追従性)などを兼ね備えたインキ追従体の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を鋭意研究の結果、先ず、最も大切なことは粘性管理であり、それも2点以上を計測してそのインキ追従体の非ニュートン指数を管理することが、先発明や新しい添加剤を発見することより重要であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
非ニュートン指数nは擬塑性など、ニュートン流体とかけ離れた挙動を示す値であり、nの値が1の時は剪断速度に関わらず粘度は一定(ニュートン流体)であるが、nの値が1から離れるほど、剪断速度によって粘度値が変わるものである。
nの値が1を超える物が一般にダイラタント流体といわれ、nが1未満の場合を擬塑性流体という。またこれらに「降伏値」の概念を持ち込んだ物が「プラスチック流体」とよばれ、降伏値以外の部分が直線的(ニュートン流体的)なものをビンガム流体、それ以外を非ビンガム流体という。
また、剪断を加えた時間と粘度との関係を考慮すると、チクソトロピー性、レオペキシー性などの言葉上での評価は出来る。
これらは見地の違いであり、例えば同じ物質であっても、降伏値を適当に定義すれば「プラスチック流体としてn値が小さい非ビンガム流体であり、チクソトロピー性が強くレオペキシーではない」とも言えるし、降伏値を無視すれば「擬塑性流体である。」といった言い方も出来る。単に時間依存性のみ着目して、「チクソトロピー性の強い流体」といった言い方も出来る。
また、これらを全て損失弾性率、貯蔵弾性率などの粘弾性体として評価した場合には、インキ追従体も「粘弾性体」であるし、ニュートン流体、例えば水のような物でも「粘弾性体」として評価される。
本発明者等は、インキ追従体の粘性が最も重要な要素と判断し、2点以上の計測点で粘度を測り、これを「擬塑性流体」として位置付けて、その粘性指数をゲル状物の粘性挙動の指標とした。
ちなみに非ニュートン粘性係数もその大きさで全体の粘度が高いか低いかを傾向としてみる材料にはなる。他にも損失弾性率、貯蔵弾性率、tanδ、プラスチック流体としての評価、時間依存性の評価などでもインキ追従体の粘性を評価できるが、これらは「物差しの違い」にすぎず、本発明者等の判断では粘性指数の方が尺度として分かり易いと判断したにすぎない。
【0008】
本発明の最も大きな特徴は製造されるインキ追従体の粘度を複数の剪断速度で計測し、
S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュートン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数)
に示す粘性式に当てはめて評価することにある。
難揮発性の油類を増粘させる場合は、同一配合であっても必ずしも同じ粘性とはならない。むしろ近似した粘性になることは稀であり、偶然の産物でしかないとまで言える。
本発明では、これを一定させる及び/又は制御する手段として、目に見えない微小気泡に至るまで十分な脱泡を行うこと、十分な混練環境で均一に増粘剤を分散又は溶解させること、増粘剤の能力を常に十分引き出すこと、増粘補助剤を用いること、逆に減粘補助剤を用いること、を挙げている。
本発明では剪断速度の違う2点以上の粘度を指標としているが、目的はインキ追従体のばらつき抑制である。十分な混練処理と十分な脱泡処理はその為の手段である。このため、指標は2点以上の粘性管理のみであっても、チクソトロピー性や粘弾性的解析、ボールペンに用いた場合の諸性能など、他の諸々の見地から見た場合のばらつきも抑制する事が出来るものである。
さらに本発明では、この粘度管理によるインキ追従体を用いることによって、より安定した性能を得られるペンとして、現行の油性ボールペンよりインキ消費量の多いボールペン、この中にはもちろん水性ボールペンも含まれるが、水性ボールペンの中でも特にインキ流出量の多いペンには更に効果的である事を開示する。
また、当然のこととして、サインペン、万年筆やパイプペンなど、違った形式のペン先部を持つ物であっても、インキ収容管に直接インキを収容し、これに追従させる蓋体を持つ筆記具用のインキ追従体として優れた性能を発揮することは自明である。
【0009】
本発明により製造したインキ追従体の基油として用いられる溶剤は、分子量500〜3000のポリブテン、流動パラフィンやスピンドル油等の鉱油類、シリコーンオイル等が挙げられる。これらは水性インキに溶出することなく揮発減量も小さい。また一般的に水性インキより、インキ収容管に用いられるポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂類との濡れが良く、インキの消費量が視認しやすくなる利点も有する。
【0010】
ポリブテンやシリコーンオイルには揮発性の強いものもあるが、JIS C−2320に準じて98℃・5時間の揮発減量値を測り、この結果が概ね0.2重量%以下のものであれば常温では2〜3年以上問題はない。
ポリブテンの揮発性は分子量と大きく相関する。前出の揮発減量値を満足させる目安を分子量で表すと、平均分子量が概ね500以上のものが該当する。
ジメチルシリコーン油やメチルフェニルシリコーン油は分子量との相関が小さいが、25℃に於ける粘度が50mPa・secを超える物ならば概ね問題ない。アルキル変性などの変性シリコーン油は構造も重要な要素なので一概に分子量だけでは判断できないので、前出の方法で実測して目安とすると良いであろう。
【0011】
本発明に用いる増粘剤は、疎水性もしく非水溶性のものが好ましい。親水性の増粘剤はインキとの界面からインキ中に移行してインキ追従体の粘度が失われてしまったり、インキに悪影響を与えて筆記不能になるなどの不都合が生じる場合がある。しかし増粘剤やインキ追従体そのものに撥水処理を施す、又は影響を受けにくいインキ設計とするなどの対策があれば親水性増粘剤であっても差し支えない。
増粘剤としては、アエロジルR−972,R−974D,R−976D、RY−200(日本アエロジル(株)商品名)のような表面をメチル化処理した微粒子シリカ、レオパールKE(千葉製粉(株)商品名)などの有機増粘剤、もしくはジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイトなど表面をオニウム処理などで疎水化した有機処理粘土増粘剤、もしくはステアリン酸リチウム,ステアリン酸アルミニウム,ステアリン酸ナトリウムなどの非水溶性金属石鹸を用いることが望ましい。これらは単独でも併用しても構わないが、その総添加量はインキ追従体全量に対して1〜10重量%である。
アエロジル#200、380、300、100、OX50(日本アエロジル(株)商品名)、微粒子アルミナ、超微粒子酸化チタン、超微粒子ケイ酸アルミニウムなどの親水性の増粘剤はHLBが4以下、なるべくなら2以下の界面活性剤や、シランカップリング剤、フルオロカーボン、メチルハイドロジェンシリコーンなどを添加すればインキへの干渉を押さえることが出来る。シリコーンオイルを基油とする場合にはそれだけでもインキへの干渉を押さえることが出来ることが多い。
【0012】
本発明により製造した水性ボールペン用インキ追従体の追従性を向上するために界面活性剤などの添加剤を用いるのも有効な手段である。界面活性剤の種別は全く問わないが、経時保存中にインキへ溶出するものは好ましくなく、HLB(親水疎水バランス)値が4以下の非イオン系界面活性剤が好ましい。
さらに言えば一般にフッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤と呼ばれているものが、基油の表面張力を著しく下げるため、脱泡で微視的気泡を排除するなどの工程で好ましい性能が発揮される。
また、発明の主旨からも、増粘剤の分散安定化、均一化や系の疎水化に効果のある前述のシランカップリング剤、フルオロカーボン・メチルハイドロジェンシリコーンなどを添加しても良い。添加剤は経時的な安定性やインキへの悪影響などさえなければ積極的に用いられるべきである。
一般的に、これらの添加量は、効力が発揮される最少の添加量である0.01重量%から最大でも5重量%程度である。5重量%を超えて用いても性能上問題とはならないが、添加効果としては全く無意味である。
【0013】
添加剤にはもう一つ重要な効果がある。特開昭61−57673、特開昭61−145269、特開昭61−151289、特開昭61−200187、特開昭61−268786、特開昭62−50379、特開昭62−148581、特開昭63−6077、特開平02−248487、特開平04−202281、特開平05−270192、特開平05−270193などでは、インキ追従体中に界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤の添加が開示されている。
これは、無機微粒子増粘剤を用いるときにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドやグリセリン、糖類、還元糖類などのように水酸基を持つような親水基を分子中に持つ化合物を添加すると、粘度、特に低剪断速度域での粘度を高める効果があるからである。本発明者等はこれを増粘補助剤と呼んでいる。
親水基を持つもので有れば、水、アルコール類やグリコール類などの水溶性有機溶剤、ジエチレングリコール以上の分子量の1,2エポキシドポリマーなど、界面活性剤でなくても無機微粒子増粘剤の増粘補助効果がある。
増粘補助剤の効果は全ての油類と微粒子増粘剤との間に起こる現象と位置付けて良いが、疎水性微粒子シリカをシリコーン油中に分散する場合は顕著に効果が現れる。これは、疎水性微粒子シリカの表面が化学的にシリコーン油、特にジメチルシリコーン油と似ているため、この両者を併せただけで、良好な分散が得られてしまい、粘度が得られ難くなっているためで、増粘補助剤は疎水性シリカ同士を弱く架橋して構造粘性を付与するためであると推測される。
【0014】
また、無機材料と有機材料、もしくは異種の有機材料複合系に於いて、化学的に両者を結びつける、或いは化学反応を伴って親和性を改善し、複合系材料の機能を高める試剤、即ち一般にカップリング剤と呼ばれる物は無機微粒子を油中により安定に分散させる効果がある為、粘度を下げる傾向にあり、本発明者等は減粘補助剤と呼んでいる。
カップリング剤は、インキ追従体とインキとの界面に両者にとって親和性のある膜を形成し、インキ追従体とインキとを物理的に分離しつつも親和性を高める効果を有する物もある。
【0015】
材料の保管に関しては、インキやグリースの材料の保管の常識の範囲を逸脱しなければ問題はない。1ヶ月以上保管する場合は高温による変質や低温時の結露を避けるために概ね0℃から40℃以内の場所に保管するべきである。
油類や親油性の物質でも吸湿はする。極端な高湿度、例えば90%を超えるような場所に1ヶ月以上保管しないように心掛けるべきである。
【0016】
製造時に於ける秤量では、秤の形態は天秤式、バネ式、電子式など、あらゆる方式の物でかまわないが、質量による秤量が好ましい。体積による秤量では気温やロットバラツキによる見かけ比重の違いなどの影響を受けやすい。液状物のみで有れば体積による秤量でも大きな誤差が生じない場合がある。この場合は工程の簡便性を優先させる場合もある。
ただし本発明の主旨は、インキ追従体を擬塑性流体としてとらえたときの粘性を重要視することであり、秤量の方法を指示するものではなく、体積や目見当の秤量でも粘性特性が一致する限り本発明の主旨を逸脱するわけではない。
使用する秤の正確さは良いに越したことはないが、秤量範囲の上下限や有効数字に問題がなければ、なるべく同じ秤を使用するなど、秤量精度を大切にするべきである。これは正確さの上で、例えば5%軽く表示される秤でも被秤量物が全て−5%と秤量されれば最終の出来高が狂うだけで、配合比は設計通りになるからである。
秤量精度は±3%以内が適当である。これも正確であることに越したことはないが、2.00重量部を秤量したいときに1.94重量部〜2.06重量部程度の誤差で有れば、その後の工程誤差や材料のロットバラツキの中に吸収されてしまって、最終的に出来上がったインキ追従体のバラツキ公差に収まってしまう場合が多いためである。
前述したように本発明により製造したインキ追従体のごとき油中に増粘剤を添加して成る系では、その後の工程によって大きく粘性やペンに組んだときの性能に差異が生じる。
これを粘性特性を把握していくことで、ペンとして組んだときの性能バラツキを少なくすることが本発明の主旨であり、本発明上では、配合物や配合比へのこだわりは優先されない。
【0017】
製造方法は、工程上簡便で効率の良い方法で良いが、増粘剤の能力を引き出す事に細心を払うべきである。
無機微粒子増粘剤は十分に分散せしめることが肝要である。
本発明者等が微粒子シリカを用いる場合には、なるべく3本ロールミルを用いて強い剪断を加えている。しかもその前後には予備混練と後混練で系全体が十分に均一になるよう心掛けている。
更に丁寧に作る場合は、基油の一部を添加せずに控えておき、予備混練中には120℃〜130℃の温度をかけて撹拌する。温度を100℃以上に設定するのは、水の沸点が常圧では100℃前後であるためで、これによって保管中に微量吸湿した水分を揮発させてしまうためである。その後3本ロールミルで混練した後、50℃〜80℃で予め控えていた基油を加える。この際にも控えていた基油を50℃程度に温め、数回に分けて希釈するように混合していく。ここで温度が常温でないのも、数回に分けて希釈するのも理由は同じで、既に増粘剤が分散されて極端に高粘度となっているものをより均一に混合するためである。
更にこの上で、60℃以下に冷却した後に減圧脱泡している。これにより一次粒子の集合体である二次・三次粒子の隙間に入り込んだ気泡まで十分に抜き去ることが出来、微粒子増粘剤の増粘能力を十分に引き出すことが出来るため、粘性を制御しやすくなるのである。
【0018】
本発明者等は3本ロールミルを用いるが、三本ロールミルを用いなくても、二本ロールミルでも十分な剪断がかかる。
また、プラネタリーミキサーなどの万能混練機と呼ばれるものでも、微粒子増粘剤の能力を十分に発揮させることは出来る。
3本ロールミルを用いることは単なる1つの例であり、用いなくても、より均一に増粘剤を分散させ、微小気泡を除去することで、本発明を達成することは可能である。
【0019】
本発明者等が粘土増粘剤を用いるときには、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイトを好んで用いる。有機処理粘土の違いによる増粘効果にはあまり大きな差異はない。これは粘土層間が十分に膨潤してしまえば、適度な粘性を与えるためで、ほとんどの有機処理粘土増粘剤の原料となっている天然もしくは合成のスメクタイト類にその能力の差異は確認できない。
このため、使い易いものを用いることに越したことはないという発想である。
有機処理粘土増粘剤を油中に混入し、十分な剪断を加えただけでは増粘剤として十分に能力を発揮しない。そこで増粘剤の持つ能力を常に十分発揮させることで粘性を制御するためには粘土層間を十分に膨潤させる補助剤が必要である。本発明者等はこれを増粘開始剤と呼んでいる。
ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイトは、増粘開始剤がアルコール類でよい。他の有機処理粘土ではトルエンなどの芳香族や酢酸エチルなどエステル類を用いるものがあり、人体に安全なエタノールで十分に能力を発揮するジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイトは工業的に扱いやすい。
増粘開始剤の添加量は粘土増粘剤の重量比10%程度でよいが、本発明者等がジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイトを用いるときには、粘土増粘剤がインキ追従体全量に対して5重量部以下なら1重量部、5〜10重量部なら2重量部と、過剰気味に添加して粘土増粘剤を十分機能させることを心掛けている。
これをプラネタリーミキサーなどで十分に均一に混練した後、三本ロールミルで混練する。増粘開始剤は粘土増粘剤の細部にまで行き渡り、十分な増粘を示す。
この時点で増粘開始剤は不要になるため、もう一度プラネタリーミキサーに戻し、減圧脱泡する。粘土増粘剤も層間などに微小の気泡が有る場合があるが、減圧脱泡によって十分に気泡を除去し、増粘剤の能力を発揮させることが出来る。それと同時にインキに悪い影響をもたらす可能性のある増粘開始剤もほぼ完全に除去される。
また、三本ロールミルを用いずにプラネタリーミキサーを用いたまま、常温で2時間撹拌した後、100℃で1時間撹拌したものは3本ロールミルを用いたものと同じ結果となった。
【0020】
金属石鹸を用いる場合は、鍋のような容器に基油と金属石鹸を入れて撹拌しながら直火で熱した。実験室規模では電熱加温も可能であるが、工業生産では専用の設備がないと電気加熱は難しい。このため加熱のしすぎには十分に注意しながら200℃〜250℃に加温する。
理論的には十分な撹拌がなされればこれを冷やすのみで十分に増粘剤の能力が発揮されるが、本発明者は、熱いままロールミルを通した方がより均一で増粘効果が高いと考える。
ロールミルにかけるかけないは別問題として、その後、60℃以下に冷却して脱泡を行う。油中に金属石鹸を溶解させるだけであるが、その工程中にも微細気泡が混入し、インキ追従体の粘度バラツキの原因となってしまっているからである。
【0021】
その他の有機増粘剤は各増粘剤メーカーの指示に従った方法でその能力を十分に発揮させることが肝要である。また、十分に増粘剤が均一になった時点では必ず微小気泡の除去が必要である。
【0022】
脱泡の方法は、加温処理、撹拌処理、減圧処理、加圧処理、振動処理、超音波照射、遠心処理、細孔通過処理、自然放置など多様にあるが、この中でも減圧しながら撹拌する方法が最も簡便で効果が高く、遠心脱泡、超音波照射、細孔通過処理なども簡便で効果が高い。
【0023】
保管は20l以下の容器に小分けすることが望ましい。本発明により製造されたインキ追従体のごとき基油中に増粘剤を混練して擬塑性を得るゲル状物は、保存時に油分が分離してくる場合が多い。
これを防ぐ一つの手段として、保存単位を小さく保つことが挙げられる。
大きな容器に多量に保管すると、容器上部には多大な重力がかかり、油分が分離しやすくなる。これも粘性によって、更に本発明ではあまり重要視していないが、降伏値や、チクソトロピー性、粘弾性特性などで違いがあるし、基油粘度や増粘剤種・増粘剤量などの配合物によっても差異がある。本発明者等の経験では20l程度で深さ30cm程度の容器である俗に「一斗缶」と呼ばれる容器や「ペール缶」と呼ばれる容器で常温で3ヶ月間保存しても油浮きしないものは、ペン体中でも3年間油分離が確認されなかったが、直径30cm深さ約35cmのステンレス容器では僅かに油分の分離が見られた。
このときのインキ追従体は、KF96−1000(ジメチルシリコーン油;信越化学(株)商品名)95重量部、アエロジルR−974(疎水性微粒子シリカ;日本アエロジル(株)商品名)4重量部、KF−945(ポリエーテル変性シリコーン;信越化学(株)商品名)1重量部を3本ロールミルを用いて分散し、減圧脱泡して得られた
S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュートン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数)
のn値が0.35のインキ追従体であり、後述の実施例と同様の試験に於いても全て良好な結果を示すものであった。。
これは20lの保存容器と25lの保存容器の差異が顕著に現れた例である。
肝要なのはペン体での安定性と性能であり、それらが保存時の安定性より優先されるべきである。したがって、前述の例のインキ追従体が悪いのではなく、25l容器の方が保存方法として適当でなかったと言わざるを得ない。
【0024】
容器に保存中は、表面を重力方向に対して垂直且つ平坦に保つ事が肝要である。
容器中のインキ追従体にピンポン玉程度の穴をあけて1ヶ月ほど放置して観察すると、透明で、擬塑性のない油分が滲み出していることが確認される。
また、波紋状の凹凸があっても凹部に油分の滲み出しが確認されることがある。
また容器に入っているインキ追従体をペン体に充填する場合も同様である。
容器下部からインキ追従体を吸い出してペン体に順次充填していく工程でも、ペン体に充填されるインキ追従体は1本あたり0.1ml程度であり、容器が一時に空になるわけではない。極端な凹凸が出来ると、その日の内に油分が滲み出してくる場合があるので、1時間から3時間に一度はヘラのようなもので表面を平らに保つ必要がある。
この例を示す。
インキ追従体は、KF96−3000(ジメチルシリコーン油;信越化学(株)商品名)97重量部、アエロジル200(微粒子シリカ;日本アエロジル(株)商品名)2.5重量部、ユニルーブ75DE−2620(ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)ポリオール;日本油脂(株)商品名)0.5重量部である。このインキ追従体も3本ロールミルを用いて分散し、減圧脱泡して得られた
S=μDn(Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュートン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数)
のn値が0.50のインキ追従体であった。
これをペール缶に約15kg充填し、その底に近い部分から毎時360ml汲み上げて、自動ペン組立て機で図1のボールペンリフィールに組み立てた。
1缶で、約13万本組み立てたが、1時間〜3時間に一度容器中のインキ追従体表面をヘラを用いて平らにしたものと、ペンを組み立てる間に何もしなかったものを横向きに放置し、インキ追従体が尾端から流れ出す不良の本数を数え、不良率を計算したところ、ヘラを用いた時の工程からは1本も不良が出ず、不良率0%であったのに対し、何もしなかった工程では0.21%の不良が確認された。
【0025】
インキ追従体を重力に逆らって変形させた場合、増粘剤は液中での構造を維持しようとして、与えられた形状を保とうとするが、液体である基油は重力に逆らおうとはしない。
基油のみを粘弾性的に評価した場合には貯蔵弾性率はほとんど現れない。一方、増粘剤を添加した後には、より高い貯蔵弾性率が観察できる。このことは、重力という応力に基油と増粘剤が別々に対応しようとするためで、この理由から、重力に逆らった形状や重力をまともに受ける形態での保存は離油しやすい事が説明される。
【0026】
インキ追従体の保存場所は高温でないことが望ましい。温度は結露しない程度に低いことが好ましいが、一般に油類は高温では粘度が下がる。温度の影響が少ないシリコーン油でも例外ではない。
粘度が下がると、増粘剤の構造中の基油が動きやすくなり、重力に対してより敏感に対応してしまうために離油がおこりやすくなるのである。
【0027】
【実施例】
次に実施例をもって本発明により製造されたインキ追従体を説明する。
【0028】
実施例及び比較例の評価のために、水性ボールペン用インキを次に示すように調製した。
プリンテックス 25(カーボンブラック;デグサ社商品名) 6 重量部
ジョンクリル61J(スチレンアクリル酸共重合体エマルション:
31%アンモニア中和水溶液:ジョンソン(株)商品名) 10 〃
アクロナールYJ−1120D(スチレンメタクリル酸共重合体:
50%エマルション:三菱化学BASF(株)商品名) 10 〃
グリセリン 10 〃
リシノール酸カリウム 0.5〃
トリエタノールアミン 1 〃
1,2−ベンズイソチアゾリン3−オン 0.2〃
ベンゾトリアゾール 0.2〃
SILWET L7001(シリコーン系界面活性剤;
日本ユニカー(株)商品名) 0.2〃
水 11.5〃
以上をビーズミルで混練した後、カーボンブラックの粗大粒子を取り除き、その後、
プロピレングリコール 20 重量部
カ−ボポール 940(架橋型ホ゜リアクリル酸;B.F.ク゛ット゛リッチ社商品名) 0.4〃
水 30 〃
を加えて、40sec-1の時の粘度が450mPa・secの水性ボールペン用インキを得た。
【0029】
実施例及び比較例の評価のために、油性ボールペン用インキを次に示すように調製した。
バリファーストバイオレット1701(染料;
オリエント化学工業(株)商品名) 15重量部
バリファーストイエロー1105(染料;
オリエント化学工業(株)商品名) 5 〃
スピロンブラックGMH(染料;保土ヶ谷化学工業(株)商品名) 13 〃
ルビスコールK30(ポリビニルピロリドン;BASF社商品名)8.7 〃
ルビスコールK90(ポリビニルピロリドン;BASF社商品名)0.3 〃
オレイン酸(和光純薬(株)製試薬) 3 〃
2−フェノキシエタノール 44 〃
ベンジルアルコール 11 〃
以上を60℃で攪拌し、19.2sec-1の粘度が4Pa・secの油性ボールペン用インキを調製した。
【0030】
粘度測定
実施例および比較例のインキ追従体を調製し、25℃に於いて回転粘度計(東機産業製E型粘度計)で約1sec-1から200sec-1の剪断速度下の2点以上の粘度を測定し、n値を求めた。
【0031】
試験1 離油試験−1
実施例及び比較例のインキ追従体200gをガラスビンにとり、常温で3ヶ月放置し、油分が滲み出ているか否かを目視で観察した。
全く油分が滲み出していないものを○、滲み出した油分が概ね1ml以内のものを△、それ以上のものを×と評価した。
【0032】
試験2 離油試験−2
実施例及び比較例を10本ずつ、図1に示すボールペンに組み立てた。内径4.0mmで半透明のポリプロピレンチューブをインキ収容管10とし、所定のインキ20には本実施例用に調製した水性ボールペンインキを用い、各実施例及び比較例のインキ追従体30を充填した。ペン先部とインキ収容間の継ぎ手40には、図1と同様の形態を持つ市販のボールペン(UM−100;三菱鉛筆(株)商品名)のものと同じペン先部(ボールペンチップ)を装着した。ペン先部41の材質は快削ステンレス、ボール42は直径0.5mmのタングステンカーバイトである。
インキ追従体は正確に0.19ml測り取り、インキ追従体がインキ収容管中でで長さ方向に15mmになるように留意した。
また、インキ追従体及びインキ中にペン組立時に混入した気泡を除去するために、インキ及びインキ追従体を充填した直後に、国産遠心機(株)製H103N型遠心機を用いて2800rpmで10分間、ペン先が外側になるようにして遠心処理した。
このペンを、ペン先が上になるようにして、50℃雰囲気中で1ヶ月間放置し、インキ追従体の油分がインキ中に浮き出すか、或いはインキ収容管後端から漏れだした本数を調べた。
【0033】
試験3 泡咬み試験
試験2と同様のペンを20本組み、ペン先が下になるようにして、25℃・相対湿度65%の環境下に1ヶ月間放置し、インキとインキ追従体界面、もしくはインキ追従体中に泡が発生する本数を目視にて観察し、泡が発生した本数を調べた。
【0034】
試験4 インキ追従性試験
試験2と同様のペンにインキ追従体30を充填しないものを同様の手順で10本組み立て、毎分4.5mの速度で100m筆記し、その時の筆記流出量を測定し、この10本の平均値を標準流出量Aとした。
実施例及び比較例をインキ追従体として用いたペンを同様に200m螺旋筆記した。このときの100mあたりの平均インキ流出量を標準流出量Aと比較した。
筆記描線は標準流出量Aと比較して80%以上で有れば目視で描線濃度の差異を確認することは出来ないので○と判定した。
標準流出量Aの60%未満だと、著しく描線濃度が薄くなるので、×と判定した。その中間の60%以上80%未満の場合を△とした。平均流出量が100%以上であったペンはなかった。
【0035】
試験5 クリアドレイン性試験
試験4で200m筆記し終わったサンプルのインキ追従体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。
10本の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm以上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評価した。
【0036】
試験6 インキ追従性試験−2
ペン先部を市販の太字用ボールペン(UM−153;三菱鉛筆(株)商品名)のものと変えたペンを、試験2に準じて10本組み立てた。ペン先部41の材質は快削ステンレス、ボール42は直径1.0mmのタングステンカーバイトである。
更にこのペンにインキ追従体30を充填しないものを同様の手順で10本組み立て、毎分4.5mの速度で100m筆記し、その時の筆記流出量を測定し、この10本の平均値を標準流出量Bとした。
実施例及び比較例をインキ追従体として用いたペンを同様に200m螺旋筆記した。このときの100mあたりの平均インキ流出量を標準流出量Bと比較した。
筆記描線は標準流出量Bと比較して80%以上で有れば目視で描線濃度の差異を確認することは出来ないので○と判定した。
標準流出量Bの60%未満だと、著しく描線濃度が薄くなるので、×と判定した。その中間の60%以上80%未満の場合を△とした。平均流出量が100%以上であったペンはなかった。
【0037】
試験7 クリアドレイン性試験−2
試験6で200m筆記し終わったサンプルのインキ追従体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。
10本の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm以上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評価した。
【0038】
試験8 インキ追従性試験−3
実施例及び比較例を10本ずつ、図1に示すインキ収納体に組み立てた。
内径1.7mmで半透明のポリプロピレンチューブをインキ収容管10とし、所定のインキ20には本実施例用に調製した油性ボールペンインキを用い、各実施例及び比較例のインキ追従体30を充填した。ペン先部には市販のボールペン(UM−100;三菱鉛筆(株)商品名)のものと同じもの(ボールペンチップ)を装着した。ペン先部41の材質は快削ステンレス、ボール42は直径0.7mmのタングステンカーバイトである。
インキ追従体がインキ収容管中で長さ方向に約15mmになるように留意した。
このペンにインキ追従体30を充填しないものを同様の手順で10本組み立て、毎分4.5mの速度で100m筆記し、その時の筆記流出量を測定し、この10本の平均値を標準流出量Cとした。
実施例及び比較例をインキ追従体として用いたペンを同様に200m螺旋筆記した。このときの100mあたりの平均インキ流出量を標準流出量Cと比較した。
筆記描線は標準流出量Cと比較して80%以上で有れば目視で描線濃度の差異を確認することは出来ないので○と判定した。
標準流出量Cの60%未満だと、著しく描線濃度が薄くなるので、×と判定した。その中間の60%以上80%未満の場合を△とした。平均流出量が100%以上であったペンはなかった。
【0039】
試験9 クリアドレイン性試験−3
試験8で200m筆記し終わったサンプルのインキ追従体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。
10本の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm以上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評価した。
【0040】
試験10 インキ追従性試験−4
ペン先部のボールペンチップを市販の油性ボールペン(SA−S;三菱鉛筆(株)商品名)のものと変えたペンを、試験2に準じて10本組み立てた。ペン先部41の材質は快削ステンレス、ボール42は直径0.7mmのタングステンカーバイトである。
更にこのペンにインキ追従体30を充填しないものを同様の手順で10本組み立て、毎分4.5mの速度で100m筆記し、その時の筆記流出量を測定し、この10本の平均値を標準流出量Dとした。
実施例及び比較例をインキ追従体として用いたペンを同様に200m螺旋筆記した。このときの100mあたりの平均インキ流出量を標準流出量Dと比較した。
筆記描線は標準流出量Dと比較して80%以上で有れば目視で描線濃度の差異を確認することは出来ないので○と判定した。
標準流出量Dの60%未満だと、著しく描線濃度が薄くなるので、×と判定した。その中間の60%以上80%未満の場合を△とした。平均流出量が100%以上であったペンはなかった。
【0041】
試験11 クリアドレイン性試験−2
試験10で200m筆記し終わったサンプルのインキ追従体の残量を、インキ収容管中の長さで評価した。
10本の平均値で、13mm以上残っているものを○、10mm以上13mm未満のものを△、10mm未満のものを×と評価した。
【0042】
試験12 耐落下衝撃性試験
試験2と同様のペンを10本ずつ組立て、市販のボールペン(UM−100;三菱鉛筆(株)商品名)軸に組み入れた。
このペンを高さ1.5mの地点から、厚さ1cmの杉の正目板上に、ペン先部が上向きになるように落下させた。
10本ともインキ追従体とインキ界面に変化が見られないものを○、1本でもインキ追従体とインキ界面で乱れが生じたものは△、5本以上で乱れが確認されるか、1本でもインキの漏れ出しがあったものは×と評価した。
【0043】
試験13 経時安定性試験
試験1で△以上と評価されたインキ追従体を用いて、試験2から試験6の試験を行った。△と評価されたものは浮き出た油分を取り除いてから用いた。
また、×と評価したものは評価対象外として×と判定した。
初期の試験2〜試験6と全く評価の変わらなかったものを○、1試験のみが1ランク下がったものは△、2試験で1ランク以上、もしくは1つの試験で2ランク以上下がったものは×と判定した。
試験2と試験3は、1本の差なら同ランク、2本又は3本の差が出たら1ランク、4本差が出た場合は2ランクの性能低下と判断した。
【0044】
試験14 再現性試験
実施例1〜3、比較例1〜4を各5回調製し、各々同じ測定点で粘度を測定して、n値を算出した。
低剪断側、高剪断側共に、最も粘度が低かったロットの粘度を100として、最も粘度が高かったロットの粘度を相対比で表現し、最高/最小比とした。
低剪断側、高剪断側ともに最高・最小比が120以内のものを○。
低剪断側、高剪断側ともに最高・最小比が150以内のものを△。
最高/最小比が片方でも150を越えたものは「再現性稀薄」として×とした。
【0045】
以下に実施例及び比較例の配合及び製造方法を記す。
調製に用いた器具として、3本ロールミルは小平製作所(株)製の13cmロールのもの、プラネタリーミキサーは特殊機化工業(株)製のTKハイビスミックス2P−03型で、「高速」と明記したときは毎分150回転、特に断りがなければ毎分50回転で用いた。(粉体混入直後は更に低速の運転でも用いた)
【0046】
実施例1
ポリブテン 300H 45重量部
アエロジル R974 4 〃
SILWET FZ−2110 1 〃
以上をプラネタリーミキサーを用いて120℃で予備混練し、60℃に冷却後、3本ロールミルで混練した。これを再びプラネタリーミキサーに移し、混練しながら、
ダイアナフレシア MC−W90 50重量部
を数度に分けて加え、1時間攪拌した。
その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境とし、更に1時間攪拌し、
ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0047】
実施例2
ポリブテン 300H 45重量部
アエロジル R974 4 〃
SILWET FZ−2110 1 〃
以上をプラネタリーミキサーを用いて100℃で2時間混練し、60℃に冷却後、混練しながら、
ダイアナフレシア MC−W90 50重量部
を数度に分けて加え、1時間攪拌した。
その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境とし、更に1時間攪拌し、
ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0048】
実施例3
ニッサンポリブテン 015N(ポリブテン;
日本油脂(株)商品名) 98重量部
アルミニウムステアレート #600(ステアリン酸アルミニウム;
日本油脂(株)商品名) 2 〃
以上をステンレスビーカーに取り、マントルヒーターを用いて、250℃に加熱しながら、ステンレス製攪拌羽根を介してラボスターラーLR400D(ヤマト科学(株)商品名)で2時間攪拌した。約80℃に冷却後、3本ロールミルで混練した後、プラネタリーミキサーに移し、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境として1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0049】
比較例1
ポリブテン 300H 45重量部
アエロジル R974 4 〃
SILWET FZ−2110 1 〃
以上をプラネタリーミキサーを用いて予備混練し、3本ロールミルで混練した。これを再びプラネタリーミキサーに移し、混練しながら、
ダイアナフレシア MC−W90 50重量部
を数度に分けて加え、2時間攪拌した。
【0050】
比較例2
ポリブテン 300H 45重量部
アエロジル R974 4 〃
SILWET FZ−2110 1 〃
以上をプラネタリーミキサーを用いて常温で2時間混練し、
ダイアナフレシア MC−W90 50重量部
を数度に分けて加え、1時間攪拌した。
その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境とし、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0051】
比較例3
ポリブテン 300H 45重量部
アエロジル R974 4 〃
SILWET FZ−2110 1 〃
以上をプラネタリーミキサーを用いて90℃で2時間混練し、60℃に冷却後、混練しながら、
ダイアナフレシア MC−W90 50重量部
を数度に分けて加え、1時間攪拌した。
その後、真空ポンプを用いて0.05気圧以下の環境とし、更に1時間攪拌し、ゲル状物中の微細気泡を除去した。
【0052】
比較例4
ニッサンポリブテン 015N 98重量部
アルミニウムステアレート #600 2 〃
以上をステンレスビーカーに取り、マントルヒーターを用いて、250℃に加熱しながら、ステンレス製攪拌羽根を介してラボスターラーLR400D(ヤマト科学(株)商品名)で2時間攪拌した。約80℃に冷却後、3本ロールミルで混練した。
【0053】
ここで、各実験のうちで、粘度測定の結果を、表1に示す。
【表1】
【0054】
また、試験1〜試験14の結果を、表2に示す。
【表2】
【0055】
各実施例は概ね良好な結果を得ている。
インキ追従体が毎回一定の仕上がりで生産できるのなら、ペン全体の性能のバランスを最初からインキ追従体によって、流出量が少なくなることを見越して作ればよいからである。
試験14の再現性試験の中で、実施例1乃至3は再現性が良く、反対に比較例1乃至4はバラツキが大きかった。
比較例1は実施例1の100℃以上での混練及びその後の脱泡がされていないものである。この比較例1では、5回作ったものの中でnの値が本発明の請求範囲である0.3〜0.8の間に入るものもあったが、逆に0.1以下と大きく外れるものもあった。実施例1は粘性の再現性を良くするために脱泡処理しているから、n値も再現性良く出来るのである。一方、比較例1は3本ロールミルを使い、増粘剤が均一に分散されているにも関わらず、脱泡されていないために作る度に粘性の違うものが出来上がってしまっている。
微細気泡がインキ追従体中に残ると、粘性、特に低剪断速度域での粘度が高くなる。インキ追従体はペンの未使用時は静的環境にあり、インキの流出に伴って摺動する。即ち、静から動への移行があるわけで、低剪断速度域での粘度が高いとこれを著しく妨げる。比較例1の結果でも、インキに対する追従性が、殆ど実施例1より劣っている。
【0056】
比較例2と比較例3は実施例2と比較する。
この実施例及び比較例の全3例は、脱泡処理が施されている。違いは増粘剤の分散条件である。
実施例3は100℃に加温されている。このため、材料中に混入している微量な水分が揮発するため、並の攪拌力でも安定なゲルを得ることが出来る。比較例2及び比較例3ではそれ以下の温度で、並の攪拌しかしていないため、出来上がりにばらつきが大きい。なお比較例3は、90℃に加温しているものの、水分を蒸発させる100℃に達していないために、水分を完全に除去できず、経時安定性あるいは再現性に劣るものである。
【0057】
実施例3と比較例4は金属石鹸を用いている。比較例4の場合、微細気泡がインキ追従体に残存するために低剪断速度域での粘度が高く、インキ追従性を悪くしている。また、ペン中に泡が発生しやすくなっている。インキ追従体中の微細気泡は時間と共に集合し、目に見える泡となって、インキ中か或いは後端から空気中に放出されてしまうのである。この、インキ中に放出された泡が、インキ中の易揮発成分等を集めて成長し、目に見える大きな泡となるのである。
【0058】
インキ追従体は摺動物として考えることもできる。インキ追従体を用いるペンではインキの消費量とインキ追従体の追従性能との関係は、ペン性能全体に及ぶ重要な要素である。
一般に擬塑性の水性インキを用いたボールペンは、一般的な0.5mmボールを使用したもので、100m辺り100〜200mgのインキを消費する。更に太字ともなれば300mg以上のインキを消費する。
油性ボールペンは一般的な0.7mmボールを使用したもので、100mあたり20mg前後、太字などでは30〜40mgのインキを消費し、特殊なものでは40mg以上のインキを消費する。
本実施例では試験4,5が一般的な水性擬塑性インキボールペン、試験6,7が太字の流出量の多い水性擬塑性インキボールペン、試験10,11が一般的ボールペン、試験8,9が特別にインキ量が多い特殊なボールペン、と言う設定で、インキ追従体の追従性能と、インキ収容管内壁へのインキ追従体の付着性能を評価した。
【0059】
その結果、一般的な油性ボールペンでは、全ての実施例及び比較例で追従性能に悪影響がなかった。これは、旧来の一般的油性ボールペンでは、本発明の如き細心の粘性管理が必要ないことを意味する。
一方で、流出量の多い特殊な油性ボールペンでは差異が生じ、油性ボールペンであってもインキ追従体の粘性を管理する必要が示唆された。
この基準を本実施例の試験8,9に用いたボールペンが、100mあたり40mgで有ったことを理由に、「100mあたり40mg以上のインキ流出量のボールペンに用いるインキ追従体には、本発明のインキ追従体を用いることが好ましい」と結論する。
【0060】
水性擬塑性インキを用いたボールペンは元々インキの流出量が大きい。
一般的なものでさえ、本実施例では比較例の数例に不都合が生じている。
冒頭で述べた種々の発明がなされているのもこのためである。
流出量が少なければ、本実施例及び比較例に紹介されているようなインキ追従体ならば問題ないであろう事は、油性ボールペンでの結果、更には太字の大流出量のボールペンで顕著であることから、自明であると言えるが、本実施例では一般的な流出量の水性ボールペンでも実施例と比較例に差異が見られる。この一般的な水性ボールペンのインキ流出量が100mあたり最低で100mgで有ったことから、「100mあたり100mg以上のインキ流出量の水性ボールペンに用いるインキ追従体には、本発明のインキ追従体を用いることが好ましい」と結論する。
【0061】
【発明の効果】
以上のように本発明の水性ボールペン用インキ追従体の製造方法は、初期に適度な粘性に調製しても、初期性能を良好に保つことが出来る経時安定性に優れたインキ追従体を提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】インキ追従体を用いる水性ボールペンのインキ収納体の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
10 インキ収容管
20 インキ
30 インキ追従体
40 ペン先部とインキ収容管の継ぎ手
41 ペン先部(ボールペンチップホルダー)
42 ボール
Claims (1)
- 1 sec -1 〜200 sec -1 の剪断速度域の任意の2点、又はそれ以上の測定点での粘度測定結果を、以下の粘性式
S=μD n (Sは粘度、Dはせん断速度、μは非ニュートン粘性係数、nは非ニュートン粘性指数)
で表す場合のnの値が、0.3〜0.8であるように調製されたインキ追従体の製造方法であって、
基油に増粘剤を添加した後、100℃以上の加温状態で混練し、その後脱泡することを特徴としたインキ追従体の製造方法。
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