JP2004139832A - ニッケル被覆アルミニウム線およびエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線 - Google Patents
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Abstract
【課題】ニッケル−アルミ複合素材の冷間塑性加工を容易とし、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、はんだ接合が可能であり、且つ軽量化に好適なコイル用線材として使用されるニッケル被覆アルミニウム線およびエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線を提供する。
【解決手段】Mg(マグネシウム)が0.5%以上含有されているAl(アルミニウム)−Mg合金で、導体のTS(引張り強度)が250N/mm2以上であるアルミニウム導体(1)の外周に、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させ、次に電解ニッケルめっきにより、ニッケル被覆率が10%以上のニッケル皮膜(3)を連続して被覆してニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)とし、更に母線に冷間塑性加工を施してニッケル被覆アルミニウム線(5)とする。
【選択図】 図1
【解決手段】Mg(マグネシウム)が0.5%以上含有されているAl(アルミニウム)−Mg合金で、導体のTS(引張り強度)が250N/mm2以上であるアルミニウム導体(1)の外周に、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させ、次に電解ニッケルめっきにより、ニッケル被覆率が10%以上のニッケル皮膜(3)を連続して被覆してニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)とし、更に母線に冷間塑性加工を施してニッケル被覆アルミニウム線(5)とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、はんだ付け可能な軽量化電線およびコイル用線材に関し、更に詳しくはニッケル被覆アルミニウム線およびエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、電子機器あるいは電子部品(以下、電子機器部品と略記する)の軽薄短小化に伴い、これらに用いられているコイル等の導体においても細径化がなされ、また導体の軽量化要求に対しては比重が銅の1/3以下であるアルミニウムまたはアルミニウム合金が採用されてきている。
しかしながら、アルミニウム導体(以下、アルミ導体と略記する)は電気化学的に卑な電位を有しており、瞬時に酸化皮膜が形成されるため、はんだ付けが非常に困難な材料である。また、アルミ導体自身の機械的強度不足もあって、接続箇所に対する十分な信頼性を保持させるには特別な接続技術を必要とした。
このようにアルミ導体は、はんだ付けによる接続に問題があるため、アルミ導体より若干比重は大きくなるが、アルミ導体の外周に銅テープを溶接によってパイプとなした銅パイプ被覆層を設け、更に線引き加工を施して銅クラッドアルミ線とする方法と、他方ではアルミニウム表面に亜鉛薄膜を設け、更に当該亜鉛薄膜上に直接電解銅めっきを施すことによって、良好な銅被覆層を形成して銅クラッドアルミ線とする方法の、2通りの製法によって、それぞれはんだ付け可能な軽量化電線として上市されている。更に、前記銅クラッドアルミ線の外周にエナメル絶縁被覆を施したエナメル被覆銅クラッドアルミ線は、電子機器部品に使用されるコイル用線材として幅広い分野で活用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
各種電子機器部品に使用されるコイル用線材も軽薄短小化や高機能化に伴い、例えば伝送速度、回転数、高密度化による内部温度雰囲気の上昇によって、更に耐熱性向上の要求が高まっている。すなわち、コイル用線材の導体としては、熱履歴に於ける物理的および機械的特性変動が少なく安定した特性を維持している導体が切望されている。
前記した銅クラッドアルミ線は、長時間の高温加熱によって銅−アルミ境界に脆い金属間化合物が形成されて成長し、これが厚くなると線材の特性を大きく損なうことになる。また銅・アルミの平衡状態図から、化合物はCu3Al2をはじめCuAl、CuAl2などの各層から成り立っていることが確認され、これら脆弱な化合物層が導電率の低下と引張り強さ、伸び、屈曲特性など物理的および機械的特性の大幅な低下を招いている。銅やアルミに於いては、一般的な安定化領域として140℃以下の雰囲気であることが望ましい。そのため、コイル部品も140℃以下の雰囲気で動作するものには大きな影響はないが、140℃を超える高温雰囲気に対しては大きな影響を受け、信頼性に乏しいものとなる。
また、Constitution of binary alloys, Dr. phil. Max Hansen et. ,1958, P118−121に記載された金属状態図からも、Al−Ni(ニッケル)の200℃以下の雰囲気での金属間化合物の生成状態に関し、Al−Cu(銅)のそれと比較すると大きくその抑制効果は認められていることが分かり、そのことからもNiは上述した問題を解決する有望な金属の1つに挙げられる。
しかしながら、AlとNiの有する機械的特性の大きな相違により、ニッケル−アルミ複合素材であるニッケル被覆アルミニウム線の冷間塑性加工は困難を極め、Ni表面に微視的欠陥を招来してしまうという問題点があった。
【0004】
本発明は上記従来技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、ニッケル−アルミ複合素材の冷間塑性加工を容易とし、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、はんだ接合が可能であり、且つ軽量化に好適なコイル用線材として使用されるニッケル被覆アルミニウム線およびエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1の観点として本発明は、アルミニウム導体の外周に、電解ニッケルめっきによりニッケル皮膜を連続して被覆し、更にその後、冷間塑性加工を施したニッケル被覆アルミニウム線に於いて、前記ニッケル皮膜の被覆率が10%以上であり、且つアルミニウム導体のTS(Tensile Strength)(引張り強度)が250N/mm2以上であることを特徴とするニッケル被覆アルミニウム線にある。
なお、ニッケル皮膜を被覆する前に、アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜を形成させるとより好ましい。
上記第1観点のニッケル被覆アルミニウム線(以下、ニッケル被覆アルミ線ともいう)は、ニッケル皮膜の被覆率(以下、ニッケル被覆率と略記する)を10%以上とし、且つアルミ導体のTSを250N/mm2以上とすることによって、冷間塑性加工時の引抜き応力と減面加工率(冷間塑性加工率)の関係に於いて、減面加工率の増加とともに引抜き応力が直線的に上昇するため、塑性加工を容易に施すことができ、細線径化できるので軽薄短小化に好適となる。一方、ニッケル被覆率が10%未満、叉は/及びアルミ導体のTSが250N/mm2未満では、引抜き応力と減面加工率の関係に於いて、減面加工率が増加しても直線的な上昇傾向が得られず不規則な変動が生じるため、均一な塑性加工を施すことが困難となり、細線径化できず軽薄短小化にも不適となる。またニッケル被覆率が10%未満の場合には、ニッケル皮膜に無数の亀裂が生じて素地アルミニウムが表面に露出されるため、耐熱効果が得られなくなる。なお、軽量化の観点からすると、ニッケルの面積比率(被覆率)は前記記載の条件を満足する範囲内で極めて少ないことが好ましい。
また上記第1観点のニッケル被覆アルミ線は、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、且つはんだ接合が容易となる。
【0006】
第2の観点として本発明は、前記アルミニウム導体は、Mg(マグネシウム)が0.5%以上含有されているAl(アルミニウム)−Mg合金からなることを特徴とするニッケル被覆アルミニウム線にある。
上記第2観点のニッケル被覆アルミ線は、アルミ導体として、Mgが0.5%以上含有されているAl−Mg合金が好ましく用いられる。なお、なおMgが0.5%未満の含有では、アルミ導体のTSが250N/mm2 以上にならないので、上記第1観点で説明したように、均一な塑性加工を施すことが困難となる等の問題があるので好ましくない。なお、アルミ導体の含有物について鋭意検討したところ、Mgが0.5%以上含有されていれば、その他の不可避的に混在する成分として、Si(シリコン)が微量含まれていても同様の結論となることが分かった。
【0007】
上記第1および第2観点については、ニッケル被覆率と冷間塑性加工の関係、およびアルミニウム導体のMg含有量と冷間塑性加工の関係について、減面加工率に対する引抜き応力を測定し、グラフ化して検討した結果から分かったものであり、図3、図4を用いて説明する。
【0008】
図3は、ニッケル被覆率と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図で、更に詳しくは、アルミ導体外周のニッケル皮膜の被覆率を5%(5%Ni),10%(10%Ni),15%(15%Ni)(()内は図3での表示))と変化させたときの減面加工率と引抜き応力の関係を示すグラフ図である。
図3から明らかなように、ニッケル被覆率が10%以上(10,15%)の条件に於いて、減面加工率が93%付近までは、減面加工率が増加しても直線的な上昇が得られる。なお、ニッケル被覆率が10%未満(5%)では、緩やかな上昇は得られるものの減面加工率が70%以上から不規則な変動領域に達し、冷間塑性加工が極めて困難であることが伺える。なお減面加工率が0%時の各アルミ導体(素線)としては、外径Φ0.9mmで、TSが250N/mm2位のものを用いている。
【0009】
図4は、アルミニウム導体のMg含有量と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図で、更に詳しくは、純度99.72%アルミ導体(Pure−Al)、およびアルミ導体のMgの含有量を0.25%(Al−0.25Mg)、0.5%(Al−0.5Mg)、5.0%(Al−5.0Mg)と調整し(()内は図4での表示))、また全て10%のニッケル被覆率に調整したときの減面加工率と引抜き応力の関係を示すグラフ図である。
図4から明らかなように、減面加工率において直線的な上昇が得られる条件は、アルミ導体に含まれるMgの含有量が0.5%以上の条件(0.5、5.0%)であることが確認された。また、このときのアルミ導体(素線)のTSを測定したところ250N/mm2以上あった(0.5%−270N/mm2、5.0%−336N/mm2)。一方、純度99.72%アルミ導体およびMgの含有量が0.25%のアルミ導体(素線)のTS は、それぞれ178N/mm2および234N/mm2であり、250N/mm2未満であった。なお減面加工率が0%時の各アルミ導体(素線)としては、外径Φ0.9mmのものを用いている。
【0010】
上記図3、図4の結果をまとめると、図3からは、例えアルミ導体のTSが250N/mm2あっても、ニッケル被覆率が5%未満では冷間塑性加工が極めて困難であることが分かる。また図4からは、ニッケル被覆率が10%あっても、Mgの含有量が0.5%未満ではTSが250N/mm2以上にならず冷間塑性加工が極めて困難であることが分かる。
従って、図3、図4より、ニッケル被覆率が10%以上であり、且つアルミ導体のTSが250N/mm2以上(Mgの含有量が0.5%以上)あれば冷間塑性加工が容易であることが明らかとなったものである。
【0011】
第3の観点として本発明は、前記ニッケル被覆アルミニウム線の外周に、更に、エナメル塗料を塗布焼付けしてエナメル絶縁皮膜を設けたことを特徴とするエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(以下、絶縁ニッケル被覆アルミ線ともいう)にある。
上記第3観点の絶縁ニッケル被覆アルミ線は、前記ニッケル被覆アルミ線の外周に、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドイミド、またはポリイミド塗料等のエナメル塗料を塗布焼付けしてエナメル絶縁皮膜を設けることにより容易に製造可能であり、はんだ接合が可能で、熱履歴による影響がなく、軽量化されたコイル用線材として好適となった。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を、図に示す実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明のニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。図2は、本発明のエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。
これらの図において、1はアルミニウム導体(Al−Mg合金)、2は亜鉛薄膜、3はニッケル皮膜(ニッケルめっき層)、5はニッケル被覆アルミニウム線(ニッケル被覆アルミニウム線母線)、6はエナメル絶縁皮膜(ポリウレタン絶縁皮膜)、また10はエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(ポリウレタン絶縁ニッケル被覆アルミニウム線)である。
【0013】
−第1の実施の形態(実施例1)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第1実施形態について図1を用いて説明する。
アルミニウム純度99.92%の高純度アルミニウムと20%Mg含有Al−Mg母合金を用いて鋳造し、アルミ中に0.5%のマグネシウムが含有されているAl−0.5%Mg合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(ニッケル皮膜)(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは270N/mm2であった。
【0014】
−第2の実施の形態(実施例2)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第2実施形態について説明する。なおニッケル被覆アルミニウム線の構造は実施例1と同様である。(以下実施例3,4も同様)
アルミニウム純度99.92%の高純度アルミニウムと20%Mg含有Al−Mg母合金を用いて鋳造し、アルミ中に1.0%のマグネシウムが含有されているAl−1.0%Mg合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは285N/mm2であった。
【0015】
−第3の実施の形態(実施例3)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第3実施形態について説明する。
アルミニウム純度99.92%の高純度アルミニウムと20%Mg含有Al−Mg母合金を用いて鋳造し、アルミ中に5.0%のマグネシウムが含有されているAl−5.0%Mg合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは336N/mm2であった。
【0016】
−第4の実施の形態(実施例4)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第4実施形態について説明する。
アルミニウム純度99.7%の純アルミニウムと20%Mg+4%Si含有Al−Mg−Si母合金を用いて鋳造し、アルミ中に1.0%のマグネシウムおよび0.2%のシリコンが含有されているAl−1.0%Mg−0.2%Si合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは296N/mm2であった。
【0017】
上記実施例1〜4により得られたニッケル被覆アルミ線(母線)(5)は、冷間塑性加工が容易となり、細線径化でき、量産安定性が極めて良好であった。また本発明のニッケル被覆アルミ線は、軽薄短小化に好適となり、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、且つはんだ接合が容易となった。
【0018】
−第5の実施の形態(実施例5)−
本発明のエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線の実施形態について図2を用いて説明する。
上記実施例1により得られた外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)の外周に、ポリウレタン塗料を塗布,焼付して0.006mm厚さのポリウレタン絶縁皮膜(6)を設けて外径Φ0.112mmのポリウレタン絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(10)を製造した。
【0019】
上記実施例5により得られた絶縁ニッケル被覆アルミ線(10)は、熱履歴による影響がなく、軽薄短小化に好適なコイル用線材となった。
【0020】
【発明の効果】
本発明のニッケル被覆アルミ線は、アルミ導体の外周に、電解ニッケルめっきによりニッケル皮膜を連続被覆させ、更にその後、冷間塑性加工を施すニッケル被覆アルミ線に於いて、ニッケル被覆率を10%以上とし、且つ、アルミ導体のTSが250N/mm2以上であることにより、冷間塑性加工が容易となり、細線径化できるので軽薄短小化に好適となり、極めて量産安定性が良い線材を提供できるようになった。また本発明のニッケル被覆アルミ線は、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、且つはんだ接合が容易となった。また、前記ニッケル被覆アルミ線の外周にエナメル絶縁皮膜を設けた絶縁ニッケル被覆アルミ線は、熱履歴による影響がなく、軽薄短小化に好適なコイル用線材となった。また導体にアルミニウムを用いることによって軽量化も図れた。従って、本発明は、電子機器部品の軽薄短小化、高性能化に大きく寄与するところ極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。
【図3】ニッケル被覆率と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図である。
【図4】アルミニウム導体のMg含有量と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム導体(Al−Mg合金)
2 亜鉛薄膜
3 ニッケル皮膜(ニッケルめっき層)
5 ニッケル被覆アルミニウム線(ニッケル被覆アルミニウム線母線)
6 エナメル絶縁皮膜(ポリウレタン絶縁皮膜)
10 エナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(ポリウレタン絶縁ニッケル被覆アルミニウム線)
【発明の属する技術分野】
本発明は、はんだ付け可能な軽量化電線およびコイル用線材に関し、更に詳しくはニッケル被覆アルミニウム線およびエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近時、電子機器あるいは電子部品(以下、電子機器部品と略記する)の軽薄短小化に伴い、これらに用いられているコイル等の導体においても細径化がなされ、また導体の軽量化要求に対しては比重が銅の1/3以下であるアルミニウムまたはアルミニウム合金が採用されてきている。
しかしながら、アルミニウム導体(以下、アルミ導体と略記する)は電気化学的に卑な電位を有しており、瞬時に酸化皮膜が形成されるため、はんだ付けが非常に困難な材料である。また、アルミ導体自身の機械的強度不足もあって、接続箇所に対する十分な信頼性を保持させるには特別な接続技術を必要とした。
このようにアルミ導体は、はんだ付けによる接続に問題があるため、アルミ導体より若干比重は大きくなるが、アルミ導体の外周に銅テープを溶接によってパイプとなした銅パイプ被覆層を設け、更に線引き加工を施して銅クラッドアルミ線とする方法と、他方ではアルミニウム表面に亜鉛薄膜を設け、更に当該亜鉛薄膜上に直接電解銅めっきを施すことによって、良好な銅被覆層を形成して銅クラッドアルミ線とする方法の、2通りの製法によって、それぞれはんだ付け可能な軽量化電線として上市されている。更に、前記銅クラッドアルミ線の外周にエナメル絶縁被覆を施したエナメル被覆銅クラッドアルミ線は、電子機器部品に使用されるコイル用線材として幅広い分野で活用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
各種電子機器部品に使用されるコイル用線材も軽薄短小化や高機能化に伴い、例えば伝送速度、回転数、高密度化による内部温度雰囲気の上昇によって、更に耐熱性向上の要求が高まっている。すなわち、コイル用線材の導体としては、熱履歴に於ける物理的および機械的特性変動が少なく安定した特性を維持している導体が切望されている。
前記した銅クラッドアルミ線は、長時間の高温加熱によって銅−アルミ境界に脆い金属間化合物が形成されて成長し、これが厚くなると線材の特性を大きく損なうことになる。また銅・アルミの平衡状態図から、化合物はCu3Al2をはじめCuAl、CuAl2などの各層から成り立っていることが確認され、これら脆弱な化合物層が導電率の低下と引張り強さ、伸び、屈曲特性など物理的および機械的特性の大幅な低下を招いている。銅やアルミに於いては、一般的な安定化領域として140℃以下の雰囲気であることが望ましい。そのため、コイル部品も140℃以下の雰囲気で動作するものには大きな影響はないが、140℃を超える高温雰囲気に対しては大きな影響を受け、信頼性に乏しいものとなる。
また、Constitution of binary alloys, Dr. phil. Max Hansen et. ,1958, P118−121に記載された金属状態図からも、Al−Ni(ニッケル)の200℃以下の雰囲気での金属間化合物の生成状態に関し、Al−Cu(銅)のそれと比較すると大きくその抑制効果は認められていることが分かり、そのことからもNiは上述した問題を解決する有望な金属の1つに挙げられる。
しかしながら、AlとNiの有する機械的特性の大きな相違により、ニッケル−アルミ複合素材であるニッケル被覆アルミニウム線の冷間塑性加工は困難を極め、Ni表面に微視的欠陥を招来してしまうという問題点があった。
【0004】
本発明は上記従来技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、ニッケル−アルミ複合素材の冷間塑性加工を容易とし、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、はんだ接合が可能であり、且つ軽量化に好適なコイル用線材として使用されるニッケル被覆アルミニウム線およびエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
第1の観点として本発明は、アルミニウム導体の外周に、電解ニッケルめっきによりニッケル皮膜を連続して被覆し、更にその後、冷間塑性加工を施したニッケル被覆アルミニウム線に於いて、前記ニッケル皮膜の被覆率が10%以上であり、且つアルミニウム導体のTS(Tensile Strength)(引張り強度)が250N/mm2以上であることを特徴とするニッケル被覆アルミニウム線にある。
なお、ニッケル皮膜を被覆する前に、アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜を形成させるとより好ましい。
上記第1観点のニッケル被覆アルミニウム線(以下、ニッケル被覆アルミ線ともいう)は、ニッケル皮膜の被覆率(以下、ニッケル被覆率と略記する)を10%以上とし、且つアルミ導体のTSを250N/mm2以上とすることによって、冷間塑性加工時の引抜き応力と減面加工率(冷間塑性加工率)の関係に於いて、減面加工率の増加とともに引抜き応力が直線的に上昇するため、塑性加工を容易に施すことができ、細線径化できるので軽薄短小化に好適となる。一方、ニッケル被覆率が10%未満、叉は/及びアルミ導体のTSが250N/mm2未満では、引抜き応力と減面加工率の関係に於いて、減面加工率が増加しても直線的な上昇傾向が得られず不規則な変動が生じるため、均一な塑性加工を施すことが困難となり、細線径化できず軽薄短小化にも不適となる。またニッケル被覆率が10%未満の場合には、ニッケル皮膜に無数の亀裂が生じて素地アルミニウムが表面に露出されるため、耐熱効果が得られなくなる。なお、軽量化の観点からすると、ニッケルの面積比率(被覆率)は前記記載の条件を満足する範囲内で極めて少ないことが好ましい。
また上記第1観点のニッケル被覆アルミ線は、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、且つはんだ接合が容易となる。
【0006】
第2の観点として本発明は、前記アルミニウム導体は、Mg(マグネシウム)が0.5%以上含有されているAl(アルミニウム)−Mg合金からなることを特徴とするニッケル被覆アルミニウム線にある。
上記第2観点のニッケル被覆アルミ線は、アルミ導体として、Mgが0.5%以上含有されているAl−Mg合金が好ましく用いられる。なお、なおMgが0.5%未満の含有では、アルミ導体のTSが250N/mm2 以上にならないので、上記第1観点で説明したように、均一な塑性加工を施すことが困難となる等の問題があるので好ましくない。なお、アルミ導体の含有物について鋭意検討したところ、Mgが0.5%以上含有されていれば、その他の不可避的に混在する成分として、Si(シリコン)が微量含まれていても同様の結論となることが分かった。
【0007】
上記第1および第2観点については、ニッケル被覆率と冷間塑性加工の関係、およびアルミニウム導体のMg含有量と冷間塑性加工の関係について、減面加工率に対する引抜き応力を測定し、グラフ化して検討した結果から分かったものであり、図3、図4を用いて説明する。
【0008】
図3は、ニッケル被覆率と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図で、更に詳しくは、アルミ導体外周のニッケル皮膜の被覆率を5%(5%Ni),10%(10%Ni),15%(15%Ni)(()内は図3での表示))と変化させたときの減面加工率と引抜き応力の関係を示すグラフ図である。
図3から明らかなように、ニッケル被覆率が10%以上(10,15%)の条件に於いて、減面加工率が93%付近までは、減面加工率が増加しても直線的な上昇が得られる。なお、ニッケル被覆率が10%未満(5%)では、緩やかな上昇は得られるものの減面加工率が70%以上から不規則な変動領域に達し、冷間塑性加工が極めて困難であることが伺える。なお減面加工率が0%時の各アルミ導体(素線)としては、外径Φ0.9mmで、TSが250N/mm2位のものを用いている。
【0009】
図4は、アルミニウム導体のMg含有量と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図で、更に詳しくは、純度99.72%アルミ導体(Pure−Al)、およびアルミ導体のMgの含有量を0.25%(Al−0.25Mg)、0.5%(Al−0.5Mg)、5.0%(Al−5.0Mg)と調整し(()内は図4での表示))、また全て10%のニッケル被覆率に調整したときの減面加工率と引抜き応力の関係を示すグラフ図である。
図4から明らかなように、減面加工率において直線的な上昇が得られる条件は、アルミ導体に含まれるMgの含有量が0.5%以上の条件(0.5、5.0%)であることが確認された。また、このときのアルミ導体(素線)のTSを測定したところ250N/mm2以上あった(0.5%−270N/mm2、5.0%−336N/mm2)。一方、純度99.72%アルミ導体およびMgの含有量が0.25%のアルミ導体(素線)のTS は、それぞれ178N/mm2および234N/mm2であり、250N/mm2未満であった。なお減面加工率が0%時の各アルミ導体(素線)としては、外径Φ0.9mmのものを用いている。
【0010】
上記図3、図4の結果をまとめると、図3からは、例えアルミ導体のTSが250N/mm2あっても、ニッケル被覆率が5%未満では冷間塑性加工が極めて困難であることが分かる。また図4からは、ニッケル被覆率が10%あっても、Mgの含有量が0.5%未満ではTSが250N/mm2以上にならず冷間塑性加工が極めて困難であることが分かる。
従って、図3、図4より、ニッケル被覆率が10%以上であり、且つアルミ導体のTSが250N/mm2以上(Mgの含有量が0.5%以上)あれば冷間塑性加工が容易であることが明らかとなったものである。
【0011】
第3の観点として本発明は、前記ニッケル被覆アルミニウム線の外周に、更に、エナメル塗料を塗布焼付けしてエナメル絶縁皮膜を設けたことを特徴とするエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(以下、絶縁ニッケル被覆アルミ線ともいう)にある。
上記第3観点の絶縁ニッケル被覆アルミ線は、前記ニッケル被覆アルミ線の外周に、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミドイミド、またはポリイミド塗料等のエナメル塗料を塗布焼付けしてエナメル絶縁皮膜を設けることにより容易に製造可能であり、はんだ接合が可能で、熱履歴による影響がなく、軽量化されたコイル用線材として好適となった。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の内容を、図に示す実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明のニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。図2は、本発明のエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。
これらの図において、1はアルミニウム導体(Al−Mg合金)、2は亜鉛薄膜、3はニッケル皮膜(ニッケルめっき層)、5はニッケル被覆アルミニウム線(ニッケル被覆アルミニウム線母線)、6はエナメル絶縁皮膜(ポリウレタン絶縁皮膜)、また10はエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(ポリウレタン絶縁ニッケル被覆アルミニウム線)である。
【0013】
−第1の実施の形態(実施例1)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第1実施形態について図1を用いて説明する。
アルミニウム純度99.92%の高純度アルミニウムと20%Mg含有Al−Mg母合金を用いて鋳造し、アルミ中に0.5%のマグネシウムが含有されているAl−0.5%Mg合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(ニッケル皮膜)(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは270N/mm2であった。
【0014】
−第2の実施の形態(実施例2)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第2実施形態について説明する。なおニッケル被覆アルミニウム線の構造は実施例1と同様である。(以下実施例3,4も同様)
アルミニウム純度99.92%の高純度アルミニウムと20%Mg含有Al−Mg母合金を用いて鋳造し、アルミ中に1.0%のマグネシウムが含有されているAl−1.0%Mg合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは285N/mm2であった。
【0015】
−第3の実施の形態(実施例3)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第3実施形態について説明する。
アルミニウム純度99.92%の高純度アルミニウムと20%Mg含有Al−Mg母合金を用いて鋳造し、アルミ中に5.0%のマグネシウムが含有されているAl−5.0%Mg合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは336N/mm2であった。
【0016】
−第4の実施の形態(実施例4)−
本発明のニッケル被覆アルミニウム線の第4実施形態について説明する。
アルミニウム純度99.7%の純アルミニウムと20%Mg+4%Si含有Al−Mg−Si母合金を用いて鋳造し、アルミ中に1.0%のマグネシウムおよび0.2%のシリコンが含有されているAl−1.0%Mg−0.2%Si合金組成を得、最終的に外径Φ0.9mmのアルミニウム導体(素線)(1)とし、続いて当該アルミ導体を脱脂、エッチング後、亜鉛置換によって亜鉛薄膜(2)を形成させた。次に、スルファミン酸ニッケル(結晶)600g/L、塩化ニッケル5g/L、ホウ酸30g/L、浴温50℃、pH4.5に調整したニッケル電解浴によって、陰極電流密度10A/dm2の電解条件で、15分間通電して25μm厚さのニッケルめっき層(3)を得、仕上がり外径Φ0.950mmのニッケル被覆アルミニウム線(母線)(5)を作製した。その後、前記母線を、ダイヤモンドダイスを用いた伸線によって冷間塑性加工を施し、仕上がり外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)を製造した。
前記ニッケル皮膜(3)の被覆率は約10%であり、またアルミ導体(素線)(1)のTSは296N/mm2であった。
【0017】
上記実施例1〜4により得られたニッケル被覆アルミ線(母線)(5)は、冷間塑性加工が容易となり、細線径化でき、量産安定性が極めて良好であった。また本発明のニッケル被覆アルミ線は、軽薄短小化に好適となり、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、且つはんだ接合が容易となった。
【0018】
−第5の実施の形態(実施例5)−
本発明のエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線の実施形態について図2を用いて説明する。
上記実施例1により得られた外径Φ0.10mmのニッケル被覆アルミニウム線(5)の外周に、ポリウレタン塗料を塗布,焼付して0.006mm厚さのポリウレタン絶縁皮膜(6)を設けて外径Φ0.112mmのポリウレタン絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(10)を製造した。
【0019】
上記実施例5により得られた絶縁ニッケル被覆アルミ線(10)は、熱履歴による影響がなく、軽薄短小化に好適なコイル用線材となった。
【0020】
【発明の効果】
本発明のニッケル被覆アルミ線は、アルミ導体の外周に、電解ニッケルめっきによりニッケル皮膜を連続被覆させ、更にその後、冷間塑性加工を施すニッケル被覆アルミ線に於いて、ニッケル被覆率を10%以上とし、且つ、アルミ導体のTSが250N/mm2以上であることにより、冷間塑性加工が容易となり、細線径化できるので軽薄短小化に好適となり、極めて量産安定性が良い線材を提供できるようになった。また本発明のニッケル被覆アルミ線は、熱拡散による特性の劣化が抑制でき、且つはんだ接合が容易となった。また、前記ニッケル被覆アルミ線の外周にエナメル絶縁皮膜を設けた絶縁ニッケル被覆アルミ線は、熱履歴による影響がなく、軽薄短小化に好適なコイル用線材となった。また導体にアルミニウムを用いることによって軽量化も図れた。従って、本発明は、電子機器部品の軽薄短小化、高性能化に大きく寄与するところ極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線の実施形態を示す断面図である。
【図3】ニッケル被覆率と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図である。
【図4】アルミニウム導体のMg含有量と冷間塑性加工の関係を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム導体(Al−Mg合金)
2 亜鉛薄膜
3 ニッケル皮膜(ニッケルめっき層)
5 ニッケル被覆アルミニウム線(ニッケル被覆アルミニウム線母線)
6 エナメル絶縁皮膜(ポリウレタン絶縁皮膜)
10 エナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線(ポリウレタン絶縁ニッケル被覆アルミニウム線)
Claims (3)
- アルミニウム導体の外周に、電解ニッケルめっきによりニッケル皮膜を連続して被覆し、更にその後、冷間塑性加工を施したニッケル被覆アルミニウム線に於いて、
前記ニッケル皮膜の被覆率が10%以上であり、且つアルミニウム導体のTS(Tensile Strength)(引張り強度)が250N/mm2以上であることを特徴とするニッケル被覆アルミニウム線。 - 前記アルミニウム導体は、Mg(マグネシウム)が0.5%以上含有されているAl(アルミニウム)−Mg合金からなることを特徴とする請求項1記載のニッケル被覆アルミニウム線。
- 請求項1または2に記載のニッケル被覆アルミニウム線の外周に、更に、エナメル塗料を塗布焼付けしてエナメル絶縁皮膜を設けたことを特徴とするエナメル絶縁ニッケル被覆アルミニウム線。
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