JP2004137211A - プライマー組成物及び象牙質接着性材料の接着方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】歯質と歯科用修復材料との接着性および辺縁の封鎖性に優れた象牙質接着性材料を提供する。
【解決手段】ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレート水溶液またはその水溶液を含むプライマー組成物。また、EDTAで前処理を行った後、ポリエチレングリコールまたはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレート水溶液またはその水溶液を含むプライマー組成物。また、EDTAで前処理を行った後、ポリエチレングリコールまたはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯質と歯科用修復材料との接着性および辺縁の封鎖性に優れ、皮膚刺激性の少ない象牙質接着性材料およびその接着方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、歯科材料分野においては歯質、特に象牙質に対して優れた接着性を有した接着剤が種々開発されてきた。かかる接着剤の接着性成分として用いられているのが分子内に酸性基を有する重合性単量体であり、かかる重合性単量体として公知なものに分子内にリン酸ジエステル基、リン酸モノエステル基、カルボキシル基、酸無水物基、酸ハロゲン化物基等を含有するメタアクリル酸モノマ一等が挙げられる。
【0003】
一方、象牙質接着性システムは基本的に、切削操作によって象牙質面上に付着した歯質の削り屑の層(スメアー層)を除去して、接着剤(ボンディング剤)を塗布し、コンポジットレジンを填塞するという3段階の処理が必須である。さらに、スメアー層を除去したのちに、ボンディング剤を塗布するに先立って、象牙質面を2−ハイドロキシエチルメタクリレート(2−hydroxyethuyl methacrylate)(2−HEMA)とグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)の混合水溶液を用いて前処理することにより接着性が著しく向上する。
【0004】
このような操作をデンティンプライミング(dentin priming)、そのための材料をデンティンプライマー(dentin primer)と呼び、このステップはその後行われるようになった。しかし、このプライマーは蛋白固定作用が強すぎるために、2−HEMA水溶液だけからなるデンティンプライマーが提案された。しかしなから、2−HEMAは皮膚組織に対して、遅延型アレルギーを引き起こすという報告もあり、その粘膜刺激性も含めて問題になっていた。このため、2−HEMAの代わりにグリセリルモノ(メタ)アクリレートを含む歯科用接着剤が発明された(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2782694号公報
【発明が解決しようとする課題】
グリセリルモノ(メタ)アクリレートを含む歯科用接着剤は接着性及び辺縁の封鎖性に関しては満足のいくものであったが、粘膜刺激性や臭い、味に関しては満足のいくものではなかった。これらのことから歯科用接着システム全般において粘膜刺激性を極力低減させたシステムの開発が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、モノマーの化学構造に注目し、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレートは、完全なプライミング効果を示すことが分かった。また、2−HEMAやエチレングリコール、ジエチレングリコールといった不純物を極力減らした組成物とすることにより粘膜刺激性を少なくできることがわかった。さらに、重合性単量体を含む組成物の使用を抑えた方法を用いることにより、患者に対し、臭いや味、さらには粘膜への刺激などの不快感をなくせる事がわかった。
【0007】
その発明の要旨とするところは、
(1)ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を含むプライマー組成物。
(2)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を含むプライマー組成物。
(3)下記式[1]の関係を満たすポリエチレングリコールを用いることを特徴とする前記のプライマー組成物。
エチレングリコールおよびジエチレングリコールを併せた含有量(ppm)≦(150×2900×0.85(x−150)/44)/x … [1]
(ただし、xはポリエチレングリコールの平均分子量)
(4)EDTAで前処理を行った後、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法。
(5)EDTAで前処理を行った後、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法にある。
【0008】
なお、ここで示した上記式[1]は、各分子量におけるポリエチレングリコールに含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量を算出した式である。
【0009】
各分子量におけるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量は要求によって適宜選択されるが、皮膚刺激性等を考慮すると分子量200において2,500ppm以下が好ましい。原料中に含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量、および反応中に副生するエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量は、エチレンオキシドの付加モル数が増加することにより減少するため、製品に含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量は一定の減少率を掛けた値となる。
【0010】
例えば、トリエチレングリコールを用いた場合、150はトリエチレングリコールの分子量を示し、2,900はトリエチレングリコールに含有されるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量の許容値に関する係数である。また、(x−150)/44はエチレンオキシドの付加モル数であり、エチレンオキシドが1モル付加する毎のエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量の減少率を0.85とした場合に、ポリエチレングリコール1モル(xg)当たりに含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの量に関する上限が示されることとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明に係るポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレートは、特にプライミング効果に優れている。このプライミング効果については、脱灰された象牙質コラーゲンを膨潤させるとか、ボンディング剤の浸透性を促進するためである。そこで、発明者らは臨床的にボンディング剤がエナメル質と象牙質に同時に作用し、しかもボンディング剤は象牙質よりもエナメル質により強力に接着することから、その被着物質は歯質内の無機成分と考えることが適切であり、さらに象牙質にだけプライミングが必要となるのは、象牙質をエナメル質により近似した物理的な性状に変革するためであると推測した。
【0013】
すなわち、象牙質内部からの水分の上昇を抑えて、レジンの重合をより完全にするとともに、ボンディング剤の歯質内への浸透をも抑制して、接着界面のボンディング剤の濃度低下を抑えることによって、象牙質をエナメル質化することが、接着性改善の効果であると推測した。すなわち、被着象牙質面直下にプライマーがハイドロゲル化した層が形成され、これか水分の移動とボンディング剤の浸透を妨げていることによって、接着性の向上に寄与していると考えられる。
【0014】
一方、このようなハイドロゲル化を特徴とする材料に注目し、分子量の小さいポリエチレングリコール(polyethyeneglycol)またはこれとメタクリレート(methacrylate)のエステル構造物に注目して、そのプライミング効果を検討した。その結果、OH(CH2CH2O)nHおよびCH2=CCH3COO(CH2CH2O)nHで表わされる構造物のうち、n=3〜10のポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールモノメタクリレートの水溶液に、完全なデンティンプライミング効果が確認された。
【0015】
上記構造物のnが1または2の単量体の場合は、プライマーとしての効果が不十分であるか、または粘膜刺激性が強い。また、nが10を超えると粘度が高くなり作用時間が長くかかることから望ましくない。従って、その範囲を3〜10とした。特に、nが3の場合のトリエチレングリコール(triethlenrglycol;TEG)およびトリエチレングリコールモノメタクリート(triethleneglycol mono−methacrylate;TEGMA)の水溶液に、優れたデンティンプライミング効果を確認した。しかも、これらの水溶液は瞬間的な作用によっても、十分なプライミング効果を発揮することが明らかになった。
【0016】
また、上記ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレートの水溶液濃度は25〜65重量%、望ましくは30〜55重量%とする。25重量%未満ではボンディング効果が十分でなく、また、65重量%を超えると効果が飽和すると共に作用時間に時間を要する。
【0017】
これら2種の組成物は、さらにリン酸エステルモノマーやカルボン酸エステルモノマーを配合させることによってセルフエッチングプライマー、さらに重合触媒を添加することによってワンステップボンディング剤への応用が可能であり、粘膜刺激性を有する2−HEMAに代用すべき、すべての象牙質接着材料の基礎的な組成物として、幅広い応用が可能である。
【0018】
上述したように、象牙質はエナメル質に比較して水分や有機質含有量が多い。従って、高分子材料の接着対象となる無機成分の量を確保し、その重合を阻害する水分を排除する必要かある。このために、象牙質には、エナメル質には不要な、デンティンコンディショニングとデンティンプライミングという特別な処理が必要となる。本発明でのポリエチレングリコールは、その含水性を利用し、薬物をカプセル化することによって血中への溶解に要する時間を延長することができる。
【0019】
このような効果は、象牙質被着面に含水性ポリマーを適用することによって、水分による汚染を排除し得る可能性を示している。そもそもボンディングシステムは、重合時に体積収縮を起こし、窩壁に接着したまま重合を完了させ、辺縁にギャップが形成されるのを防ぐために用いられる。すなわち、接着が不成立の場合には、辺縁にギャップが形成される。このような辺縁ギャップをコントラクションギャップと呼ぶ。発明者らは、このような、コントラクションギャップの観察法によって、接着性を理論的に評価した。
【0020】
ポリエチレングリコールを用いる場合、エチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量が式[1]に示す含有量であり、さらに好ましくは、トリエチレングリコールの場合、600ppm以下を、エチレンオキシドの付加モル数が4〜10の時には200ppm以下を用いると粘膜刺激性を抑える点において有用である。
【0021】
エチレングリコールおよびジエチレングリコールを併せた含有量[ppm]≦(150×2900×0.85(x−150)/44)/x … [1]
(注:xはポリエチレングリコールの平均分子量)
本発明における処理方法としてはEDTA水溶液によってスメアー層を除去し、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレート水溶液を塗布した後に、エアーにて乾燥し、さらに接着剤を塗布してコンポジットレジンを填塞する。本処理方法を用いることにより、刺激のある重合性単量体に触れる機会が減り、粘膜刺激性あるいは嫌な臭い、味を抑える点において有用である。
【0022】
本発明に用いられる接着剤は多官能性重合性単量体であり、1分子中に複数の重合性不飽和基をもつ重合性単量体であれば特に限定されず、公知の化合物を使用することができる。
【0023】
これらの重合性単量体は必要に応じて複数を混合して用いることも可能であり、単官能性重合性単量体との混合も可能である。このような重合性単量体には単官能性重合性単量体として、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
【0024】
二官能性重合性単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレートなどが挙げられる。
【0025】
多官能性重合性単量体として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンテトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが用いることができる。
【0026】
さらに、本発明における接着剤には酸性基を有する重合性単量体を含むことができ、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基またはスルホン酸残基等が含まれる。該化合物の具体例として、以下のものが挙げられる。リン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイ
ルオキシエチル フェニルホスホネート等、およびこれらの酸塩化物。
【0027】
ピロリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)等、およびこれらの酸塩化物。チオリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等、およびこれらの酸塩化物。
【0028】
カルボン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等およびこれらの酸塩化物。
【0029】
スルホン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、などのスルホン酸基を含有する化合物などを挙げることができる。また、本接着剤には操作性、塗布性、機械的強度の改善のために、フィラーを配合しても構わない。
【0030】
以上に述べた各成分の他、実用上必要に応じて、エタノール、アセトン等の有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等を添加することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
【0032】
(実施例1)
象牙質窩壁は、EDTAによってスメアー層を除去し、トリエチレングリコール(分子量150、エチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量500ppm)水溶液(35重量%)を塗布した後に、エアーにて乾燥し、さらにリン酸エステルモノマーを含む市販ボンディング剤クリアフィルニューボンド(10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジエンホスフェート含有)を塗布してコンポジットレジン(Silux Plus)を填塞した。コンポジットレジン硬化10分後に窩縁を光学顕微鏡下で辺縁ギャップの有無を観察した結果、完全にギャップ形成を抑制した。さらに、その適用時間を1秒にまで短縮しても、ギャップは全く観察されなかった。象牙質平面に対する剪断接着強さを計測した結果、6.69MPaの接着力が得られた。
【0033】
(実施例2)
トリエチレングリコールをトリエチレングリコールモノメタクリレートに変えた以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0034】
コンポジットレジン硬化10分後に窩縁を光学顕微鏡下で辺縁ギャップの有無を観察した結果、完全にギャップ形成を抑制した。さらに、その適用時間を1秒にまで短縮しても、ギャップは全く観察されなかった。また、象牙質平面に対する剪断接着強さを計測した結果、7.41MPaの接着力が得られた。
【0035】
(比較例1)
プライマーを用いない以外は実施例1と同様の評価を行った。
【0036】
コンポジットレジン硬化10分後に窩縁を光学顕微鏡下で辺縁ギャップの有無を観察した結果、完全にギャップ形成を抑制することはできなかった。さらに、その適用時間を1秒にまで短縮すると、ギャップの形成が多数観察された。このときの象牙質平面に対する剪断接着強さを計測した結果、5.87MPaの接着力が得られた。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によるプライマーを用いること、また、プライマーと共に接着剤を混合することにより、歯質、特に象牙質に対して極めて優れた接着性を有すると共に歯質修復材料との辺縁の封鎖性に優れている。従って、かかる効果が求められている種々の歯科用途に用いられる。なかでも蝕症を有する歯牙の修復に好適である優れた効果を奏するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、歯質と歯科用修復材料との接着性および辺縁の封鎖性に優れ、皮膚刺激性の少ない象牙質接着性材料およびその接着方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、歯科材料分野においては歯質、特に象牙質に対して優れた接着性を有した接着剤が種々開発されてきた。かかる接着剤の接着性成分として用いられているのが分子内に酸性基を有する重合性単量体であり、かかる重合性単量体として公知なものに分子内にリン酸ジエステル基、リン酸モノエステル基、カルボキシル基、酸無水物基、酸ハロゲン化物基等を含有するメタアクリル酸モノマ一等が挙げられる。
【0003】
一方、象牙質接着性システムは基本的に、切削操作によって象牙質面上に付着した歯質の削り屑の層(スメアー層)を除去して、接着剤(ボンディング剤)を塗布し、コンポジットレジンを填塞するという3段階の処理が必須である。さらに、スメアー層を除去したのちに、ボンディング剤を塗布するに先立って、象牙質面を2−ハイドロキシエチルメタクリレート(2−hydroxyethuyl methacrylate)(2−HEMA)とグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)の混合水溶液を用いて前処理することにより接着性が著しく向上する。
【0004】
このような操作をデンティンプライミング(dentin priming)、そのための材料をデンティンプライマー(dentin primer)と呼び、このステップはその後行われるようになった。しかし、このプライマーは蛋白固定作用が強すぎるために、2−HEMA水溶液だけからなるデンティンプライマーが提案された。しかしなから、2−HEMAは皮膚組織に対して、遅延型アレルギーを引き起こすという報告もあり、その粘膜刺激性も含めて問題になっていた。このため、2−HEMAの代わりにグリセリルモノ(メタ)アクリレートを含む歯科用接着剤が発明された(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特許第2782694号公報
【発明が解決しようとする課題】
グリセリルモノ(メタ)アクリレートを含む歯科用接着剤は接着性及び辺縁の封鎖性に関しては満足のいくものであったが、粘膜刺激性や臭い、味に関しては満足のいくものではなかった。これらのことから歯科用接着システム全般において粘膜刺激性を極力低減させたシステムの開発が望まれていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、モノマーの化学構造に注目し、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレートは、完全なプライミング効果を示すことが分かった。また、2−HEMAやエチレングリコール、ジエチレングリコールといった不純物を極力減らした組成物とすることにより粘膜刺激性を少なくできることがわかった。さらに、重合性単量体を含む組成物の使用を抑えた方法を用いることにより、患者に対し、臭いや味、さらには粘膜への刺激などの不快感をなくせる事がわかった。
【0007】
その発明の要旨とするところは、
(1)ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を含むプライマー組成物。
(2)ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を含むプライマー組成物。
(3)下記式[1]の関係を満たすポリエチレングリコールを用いることを特徴とする前記のプライマー組成物。
エチレングリコールおよびジエチレングリコールを併せた含有量(ppm)≦(150×2900×0.85(x−150)/44)/x … [1]
(ただし、xはポリエチレングリコールの平均分子量)
(4)EDTAで前処理を行った後、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法。
(5)EDTAで前処理を行った後、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法にある。
【0008】
なお、ここで示した上記式[1]は、各分子量におけるポリエチレングリコールに含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量を算出した式である。
【0009】
各分子量におけるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量は要求によって適宜選択されるが、皮膚刺激性等を考慮すると分子量200において2,500ppm以下が好ましい。原料中に含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量、および反応中に副生するエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量は、エチレンオキシドの付加モル数が増加することにより減少するため、製品に含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量は一定の減少率を掛けた値となる。
【0010】
例えば、トリエチレングリコールを用いた場合、150はトリエチレングリコールの分子量を示し、2,900はトリエチレングリコールに含有されるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量の許容値に関する係数である。また、(x−150)/44はエチレンオキシドの付加モル数であり、エチレンオキシドが1モル付加する毎のエチレングリコールおよびジエチレングリコールの合計量の減少率を0.85とした場合に、ポリエチレングリコール1モル(xg)当たりに含まれるエチレングリコールおよびジエチレングリコールの量に関する上限が示されることとなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明に係るポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレートは、特にプライミング効果に優れている。このプライミング効果については、脱灰された象牙質コラーゲンを膨潤させるとか、ボンディング剤の浸透性を促進するためである。そこで、発明者らは臨床的にボンディング剤がエナメル質と象牙質に同時に作用し、しかもボンディング剤は象牙質よりもエナメル質により強力に接着することから、その被着物質は歯質内の無機成分と考えることが適切であり、さらに象牙質にだけプライミングが必要となるのは、象牙質をエナメル質により近似した物理的な性状に変革するためであると推測した。
【0013】
すなわち、象牙質内部からの水分の上昇を抑えて、レジンの重合をより完全にするとともに、ボンディング剤の歯質内への浸透をも抑制して、接着界面のボンディング剤の濃度低下を抑えることによって、象牙質をエナメル質化することが、接着性改善の効果であると推測した。すなわち、被着象牙質面直下にプライマーがハイドロゲル化した層が形成され、これか水分の移動とボンディング剤の浸透を妨げていることによって、接着性の向上に寄与していると考えられる。
【0014】
一方、このようなハイドロゲル化を特徴とする材料に注目し、分子量の小さいポリエチレングリコール(polyethyeneglycol)またはこれとメタクリレート(methacrylate)のエステル構造物に注目して、そのプライミング効果を検討した。その結果、OH(CH2CH2O)nHおよびCH2=CCH3COO(CH2CH2O)nHで表わされる構造物のうち、n=3〜10のポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールモノメタクリレートの水溶液に、完全なデンティンプライミング効果が確認された。
【0015】
上記構造物のnが1または2の単量体の場合は、プライマーとしての効果が不十分であるか、または粘膜刺激性が強い。また、nが10を超えると粘度が高くなり作用時間が長くかかることから望ましくない。従って、その範囲を3〜10とした。特に、nが3の場合のトリエチレングリコール(triethlenrglycol;TEG)およびトリエチレングリコールモノメタクリート(triethleneglycol mono−methacrylate;TEGMA)の水溶液に、優れたデンティンプライミング効果を確認した。しかも、これらの水溶液は瞬間的な作用によっても、十分なプライミング効果を発揮することが明らかになった。
【0016】
また、上記ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレートの水溶液濃度は25〜65重量%、望ましくは30〜55重量%とする。25重量%未満ではボンディング効果が十分でなく、また、65重量%を超えると効果が飽和すると共に作用時間に時間を要する。
【0017】
これら2種の組成物は、さらにリン酸エステルモノマーやカルボン酸エステルモノマーを配合させることによってセルフエッチングプライマー、さらに重合触媒を添加することによってワンステップボンディング剤への応用が可能であり、粘膜刺激性を有する2−HEMAに代用すべき、すべての象牙質接着材料の基礎的な組成物として、幅広い応用が可能である。
【0018】
上述したように、象牙質はエナメル質に比較して水分や有機質含有量が多い。従って、高分子材料の接着対象となる無機成分の量を確保し、その重合を阻害する水分を排除する必要かある。このために、象牙質には、エナメル質には不要な、デンティンコンディショニングとデンティンプライミングという特別な処理が必要となる。本発明でのポリエチレングリコールは、その含水性を利用し、薬物をカプセル化することによって血中への溶解に要する時間を延長することができる。
【0019】
このような効果は、象牙質被着面に含水性ポリマーを適用することによって、水分による汚染を排除し得る可能性を示している。そもそもボンディングシステムは、重合時に体積収縮を起こし、窩壁に接着したまま重合を完了させ、辺縁にギャップが形成されるのを防ぐために用いられる。すなわち、接着が不成立の場合には、辺縁にギャップが形成される。このような辺縁ギャップをコントラクションギャップと呼ぶ。発明者らは、このような、コントラクションギャップの観察法によって、接着性を理論的に評価した。
【0020】
ポリエチレングリコールを用いる場合、エチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量が式[1]に示す含有量であり、さらに好ましくは、トリエチレングリコールの場合、600ppm以下を、エチレンオキシドの付加モル数が4〜10の時には200ppm以下を用いると粘膜刺激性を抑える点において有用である。
【0021】
エチレングリコールおよびジエチレングリコールを併せた含有量[ppm]≦(150×2900×0.85(x−150)/44)/x … [1]
(注:xはポリエチレングリコールの平均分子量)
本発明における処理方法としてはEDTA水溶液によってスメアー層を除去し、ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールモノメタクリレート水溶液を塗布した後に、エアーにて乾燥し、さらに接着剤を塗布してコンポジットレジンを填塞する。本処理方法を用いることにより、刺激のある重合性単量体に触れる機会が減り、粘膜刺激性あるいは嫌な臭い、味を抑える点において有用である。
【0022】
本発明に用いられる接着剤は多官能性重合性単量体であり、1分子中に複数の重合性不飽和基をもつ重合性単量体であれば特に限定されず、公知の化合物を使用することができる。
【0023】
これらの重合性単量体は必要に応じて複数を混合して用いることも可能であり、単官能性重合性単量体との混合も可能である。このような重合性単量体には単官能性重合性単量体として、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2,3−ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、11−メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、エリトリトールモノ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−(ジヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシドデシルピリジニウムブロマイド、(メタ)アクリロイルオキシヘキサデシルピリジニウムクロライドなどが挙げられる。
【0024】
二官能性重合性単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル〕プロパン、2,2−ビス[4−〔3−((メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕プロパン、1,2−ビス〔3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリトリトールジ(メタ)アクリレート、1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、[2,2,4−トリメチルヘキサメチレンビス(2−カルバモイルオキシエチル)]ジメタクリレートなどが挙げられる。
【0025】
多官能性重合性単量体として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ウレタンテトラメタクリレート、1,7−ジアクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラアクリロイルオキシメチル−4−オキシヘプタンなどが用いることができる。
【0026】
さらに、本発明における接着剤には酸性基を有する重合性単量体を含むことができ、リン酸残基、ピロリン酸残基、チオリン酸残基、カルボン酸残基またはスルホン酸残基等が含まれる。該化合物の具体例として、以下のものが挙げられる。リン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンホスフェート、9−(メタ)アクリロイルオキシノニルジハイドロジェンホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンホスフェート、11−(メタ)アクリロイルオキシウンデシルジハイドロジェンホスフェート、20−(メタ)アクリロイルオキシエイコシルジハイドロジェンホスフェート、1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロピル−2−ジハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルハイドロジェンホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル 2’−ブロモエチルハイドロジェンホスフェート、(メタ)アクリロイ
ルオキシエチル フェニルホスホネート等、およびこれらの酸塩化物。
【0027】
ピロリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、ピロリン酸ジ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)等、およびこれらの酸塩化物。チオリン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルジハイドロジェンジチオホスフェート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルジハイドロジェンチオホスフェート等、およびこれらの酸塩化物。
【0028】
カルボン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシカルボニルフタル酸無水物、5−(メタ)アクリロイルアミノペンチルカルボン酸、11−(メタ)アクリロイルオキシ−1,1−ウンデカンジカルボン酸等およびこれらの酸塩化物。
【0029】
スルホン酸残基を有する重合性単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、などのスルホン酸基を含有する化合物などを挙げることができる。また、本接着剤には操作性、塗布性、機械的強度の改善のために、フィラーを配合しても構わない。
【0030】
以上に述べた各成分の他、実用上必要に応じて、エタノール、アセトン等の有機溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等を添加することができる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明について実施例によって具体的に説明する。
【0032】
(実施例1)
象牙質窩壁は、EDTAによってスメアー層を除去し、トリエチレングリコール(分子量150、エチレングリコールおよびジエチレングリコールの含有量500ppm)水溶液(35重量%)を塗布した後に、エアーにて乾燥し、さらにリン酸エステルモノマーを含む市販ボンディング剤クリアフィルニューボンド(10−メタクリロイルオキシデシルジハイドロジエンホスフェート含有)を塗布してコンポジットレジン(Silux Plus)を填塞した。コンポジットレジン硬化10分後に窩縁を光学顕微鏡下で辺縁ギャップの有無を観察した結果、完全にギャップ形成を抑制した。さらに、その適用時間を1秒にまで短縮しても、ギャップは全く観察されなかった。象牙質平面に対する剪断接着強さを計測した結果、6.69MPaの接着力が得られた。
【0033】
(実施例2)
トリエチレングリコールをトリエチレングリコールモノメタクリレートに変えた以外は実施例1と同様に評価を行った。
【0034】
コンポジットレジン硬化10分後に窩縁を光学顕微鏡下で辺縁ギャップの有無を観察した結果、完全にギャップ形成を抑制した。さらに、その適用時間を1秒にまで短縮しても、ギャップは全く観察されなかった。また、象牙質平面に対する剪断接着強さを計測した結果、7.41MPaの接着力が得られた。
【0035】
(比較例1)
プライマーを用いない以外は実施例1と同様の評価を行った。
【0036】
コンポジットレジン硬化10分後に窩縁を光学顕微鏡下で辺縁ギャップの有無を観察した結果、完全にギャップ形成を抑制することはできなかった。さらに、その適用時間を1秒にまで短縮すると、ギャップの形成が多数観察された。このときの象牙質平面に対する剪断接着強さを計測した結果、5.87MPaの接着力が得られた。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によるプライマーを用いること、また、プライマーと共に接着剤を混合することにより、歯質、特に象牙質に対して極めて優れた接着性を有すると共に歯質修復材料との辺縁の封鎖性に優れている。従って、かかる効果が求められている種々の歯科用途に用いられる。なかでも蝕症を有する歯牙の修復に好適である優れた効果を奏するものである。
Claims (5)
- ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を含むプライマー組成物。
- ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を含むプライマー組成物。
- 下記式[1]の関係を満たすポリエチレングリコールを用いることを特徴とする請求項1記載のプライマー組成物。
エチレングリコールおよびジエチレングリコールを併せた含有量(ppm)≦(150×2900×0.85(x−150)/44)/x … [1]
(ただし、xはポリエチレングリコールの平均分子量) - エチレンジアミン四酢酸(EDTA)で前処理を行った後、ポリエチレングリコール(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法。
- EDTAで前処理を行った後、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの付加モル数が3〜10)またはその水溶液を用いてプライマー処理を行い、接着剤を塗布してなることを特徴とする象牙質接着性材料の接着方法。
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JP2008222642A (ja) * | 2007-03-13 | 2008-09-25 | Tokuyama Dental Corp | 歯科用前処理剤組成物 |
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JP2015017049A (ja) * | 2013-07-10 | 2015-01-29 | クラレノリタケデンタル株式会社 | 歯科用前処理材組成物 |
-
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- 2002-10-18 JP JP2002304401A patent/JP2004137211A/ja not_active Withdrawn
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