JP2004135441A - モータ駆動方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】モータ電流の検出値を補正するために、前記インバータの停止期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する。
【選択図】 図9
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出手段を用いて検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するモータ駆動方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、省エネ性を向上させる為に、高効率、高精度なインバータモータ制御が家電製品にも求められるようになってきており、モータにはリラクタンストルクを利用できる埋込磁石型DCモータが多く用いられている。
【0003】
そして、DCモータの制御にはロータ位置(回転子の磁極位置)の検出が不可欠であるが、圧縮機内部等の様に非常に過酷な環境下では位置センサを用いることは困難である。
【0004】
そこで、従来は、120度通電波形によりモータを駆動し、モータ端子に現れる誘起電圧を利用する位置検出が一般的に行われてきた。
【0005】
しかし、この手法ではリラクタンストルクを有効に利用できる電流位相にてモータを駆動することができないという問題点、および180度通電の正弦波にてモータを駆動することができないという問題点があった。
【0006】
そこで、この問題を解決する為に、モータに流れる電流と印加する電圧を検出し、マイコン内のモータモデルを用いて位置を計算により得る方法が使われるようになってきた。したがって、高効率な運転の為には、精度の高いロータ位置の検出が必要であり、すなわち精度の高い電流と電圧の検出が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、PWMインバータの電流検出においては、検出回路の零レベルが固体バラツキおよび温度により大きく変化することが知られており、この零レベルの変化の影響を受けて電流検出に誤差を生じ、モータの制御性能を低下させる要因となっている。
【0008】
また、零レベルの変化を小さくする為にバラツキの少ない回路を選定することも考えられるが、この場合には検出回路のコストが高くなり、コストダウンの要求が強い家電製品に適用することが困難であるという問題がある。
【0009】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、特別にバラツキの少ない回路を採用しなくても、零レベルの変化の影響を排除して精度の高いロータ位置の検出を達成することができるモータ駆動方法およびその装置を提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1のモータ駆動方法は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記インバータの停止期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する方法である。
【0011】
請求項2のモータ駆動方法は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータを駆動しない期間中に、前記インバータから零ベクトルを出力して、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する方法である。
【0012】
請求項3のモータ駆動方法は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータの駆動期間中であって、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する方法である。
【0013】
請求項4のモータ駆動方法は、零ベクトル出力期間が所定時間以上であることに応答して、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する方法である。
【0014】
請求項5のモータ駆動方法は、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する方法である。
【0015】
請求項6のモータ駆動方法は、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、所定周期で零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する方法である。
【0016】
請求項7のモータ駆動方法は、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、前記検出手段の周囲温度変化に応じて零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する方法である。
【0017】
請求項8のモータ駆動方法は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
1つのモータ相電流について検出値から直接読み取った時の交流電流振幅と、2つの異なるモータ相電流について検出値から直接読み取った値から計算で得た交流電流振幅との変化量から前記検出手段のオフセット量を得、得られたオフセット量により前記検出手段により検出されたモータ電流の零レベルの補正を行う方法である。
【0018】
請求項9のモータ駆動装置は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するものにおいて、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記インバータの停止期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する零レベル検出手段を含むものである。
【0019】
請求項10のモータ駆動装置は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するものにおいて、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータを駆動しない期間中に、前記インバータから零ベクトルを出力して、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する零レベル検出手段を含むものである。
【0020】
請求項11のモータ駆動装置は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するものにおいて、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータの駆動期間中であって、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出する零レベル検出手段を含むものである。
【0021】
請求項12のモータ駆動装置は、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間以上であることに応答して、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するものである。
【0022】
請求項13のモータ駆動装置は、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するものである。
【0023】
請求項14のモータ駆動装置は、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、所定周期で零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するものである。
【0024】
請求項15のモータ駆動装置は、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、前記検出手段の周囲温度変化に応じて零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するものである。
【0025】
請求項16のモータ駆動装置は、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するものにおいて、
ある1つのモータ相電流について検出値から直接読み取った時の交流電流振幅と、2つの異なるモータ相電流について検出値から直接読み取った値から計算で得た交流電流振幅との変化量から前記検出手段のオフセット量を得るオフセット獲得手段と、得られたオフセット量により、前記検出手段により検出されたモータ電流の零レベルの補正を行う零レベル補正手段とを含むものである。
【0026】
【作用】
請求項1のモータ駆動方法であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記インバータの停止期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するのであるから、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができる。
【0027】
請求項2のモータ駆動方法であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータを駆動しない期間中に、前記インバータから零ベクトルを出力して、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するのであるから、モータを積極的には運転していない状態においても零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出することができる。
【0028】
請求項3のモータ駆動方法であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータの駆動期間中であって、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するのであるから、モータの運転期間中において零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができる。
【0029】
請求項4のモータ駆動方法であれば、零ベクトル出力期間が所定時間以上であることに応答して、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するのであるから、請求項3と同様の作用を達成することができる。
【0030】
請求項5のモータ駆動方法であれば、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するのであるから、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項3と同様の作用を達成することができる。
【0031】
請求項6のモータ駆動方法であれば、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、所定周期で零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するのであるから、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項3と同様の作用を達成することができる。
【0032】
請求項7のモータ駆動方法であれば、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、前記検出手段の周囲温度変化に応じて零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するのであるから、周囲温度変化により零レベルの補正が必要であると考えられる場合に零レベルを精度よく検出して、請求項3と同様の作用を達成することができる。
【0033】
請求項8のモータ駆動方法であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
1つのモータ相電流について検出値から直接読み取った時の交流電流振幅と、2つの異なるモータ相電流について検出値から直接読み取った値から計算で得た交流電流振幅との変化量から前記検出手段のオフセット量を得、得られたオフセット量により前記検出手段により検出されたモータ電流の零レベルの補正を行うのであるから、零ベクトル出力期間に影響されることなく、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができる。
【0034】
請求項9のモータ駆動装置であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、零レベル検出手段によって、前記インバータの停止期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出することができる。
【0035】
したがって、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができる。
【0036】
請求項10のモータ駆動装置であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、零レベル検出手段によって、前記モータを駆動しない期間中に、前記インバータから零ベクトルを出力して、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出することができる。
【0037】
したがって、モータを積極的には運転していない状態においても零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出することができる。
【0038】
請求項11のモータ駆動装置であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
前記モータ電流の検出値を補正するために、零レベル検出手段によって、前記モータの駆動期間中であって、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出することができる。
【0039】
したがって、モータの運転期間中において零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができる。
【0040】
請求項12のモータ駆動装置であれば、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間以上であることに応答して、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するのであるから、請求項11と同様の作用を達成することができる。
【0041】
請求項13のモータ駆動装置であれば、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するのであるから、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項11と同様の作用を達成することができる。
【0042】
請求項14のモータ駆動装置であれば、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、所定周期で零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するのであるから、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項11と同様の作用を達成することができる。
【0043】
請求項15のモータ駆動装置であれば、前記零レベル検出手段として、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、前記検出手段の周囲温度変化に応じて零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータから零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出するものを採用するのであるから、周囲温度変化により零レベルの補正が必要であると考えられる場合に零レベルを精度よく検出して、請求項11と同様の作用を達成することができる。
【0044】
請求項16のモータ駆動装置であれば、検出手段を用いてインバータからモータに供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータを制御するに当たって、
オフセット獲得手段によって、1つのモータ相電流について検出値から直接読み取った時の交流電流振幅と、2つの異なるモータ相電流について検出値から直接読み取った値から計算で得た交流電流振幅との変化量から前記検出手段のオフセット量を得、零レベル補正手段によって、得られたオフセット量により前記検出手段により検出されたモータ電流の零レベルの補正を行うことができる。
【0045】
したがって、零ベクトル出力期間に影響されることなく、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができる。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明のモータ駆動方法およびその装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0047】
図1はこの発明のモータ駆動装置の一実施形態を示す概略図である。
【0048】
このモータ駆動装置は、直流電源1の出力端子間に3相インバータ2を接続し、3相インバータ2の3相出力をモータ3に供給している。そして、直流電源1と3相インバータ2との間に電流検出回路4を接続し、電流検出値および図示しない電圧検出値を入力とし、モータモデルを用いてモータの回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準として従来公知の処理を行って制御信号を出力する制御回路5と、制御信号を入力として、3相インバータ2のスイッチングトランジスタを制御するゲートドライブ信号を出力するゲートドライブ回路6とを設けている。
【0049】
次いで、このモータ駆動装置の作用を説明する。
【0050】
図2に示す三相PWMインバータは、U、V、Wの各相のスイッチングトランジスタが上下で相補的にON、OFFを繰返し、その時比率を変化させることで平均的にモータ端子に任意の周波数と振幅の交流電圧を与えている。表1に示すように、U、V、W相のスイッチング状態の組合せは8種類存在し、それぞれの組合せを電圧ベクトルV0〜V7と定義している。
【0051】
【表1】
ここで、0〜7の数字は、各相のスイッチング状態を上アームがONの時に”1”、下アームがONの時に”0”としてU、V、Wの順に並べ、2進数として読んだ値を10進数表記したものである。これらのベクトルをベクトル図上に示すと、図3のようになる。この中で、ベクトルV0とベクトルV7については、モータ端子間の電位差が全て0になっており、モータ3にとっては同一のベクトルであると考えられる。そこで、以下では、ベクトルV0とベクトルV7を零ベクトルと表現する。
【0052】
図4は、正弦波電圧出力{図4中(a)参照}とその時の電圧ベクトルの組合せ{図4中(b)参照}を示しており、re0の期間では、ベクトルV4とベクトルV6及び零ベクトルの比率を変化させることで、正弦波電圧の出力を行っている。re1〜re5についても同様に、2つの電圧ベクトルと零ベクトルの組合せにより正弦波電圧の出力を行っている。図5はベクトルV4のときに3相インバータ2を流れる電流の経路を示している。図5において、DCリンクの電流IdcはU相からモータ巻線へ流れ込み、V、W相を通して再びDCリンクへ戻っているので、DCリンク電流IdcとU相電流Iuとが同じ電流値であることが分かる。同様にベクトルV6における電流経路を考えると、re0においてDCリンクに現れる電流は(Iu+Iv)すなわち−IWとなる。re0の期間に現れるIdcの様子を図6に示す。
【0053】
このように、零ベクトル以外の状態では直流電圧部とモータ3とは何れかのスイッチングトランジスタにより導通しており、モータ3を流れる電流がDCリンク部に現れる。DCリンク電流Idcに現れるモータ電流の相は、ベクトルによって決まっており、その関係は表2のようになる。
【0054】
【表2】
したがって、異なる相電流が得られる2つのベクトルにおいてDCリンク電流Idcを検出することで、モータ3に流れる全ての電流を知ることが出来る。零ベクトルについては、モータ端子が全て短絡された状態となることから、DCリンク電流Idcは0となる。
【0055】
図7は電流検出回路に含まれる直線性誤差を説明する図、図8はオフセットによる誤差を説明する図である。本発明は、オフセットによる誤差を補正し、検出電流の正しい零レベルを得るものである。
【0056】
図9はこの発明のモータ駆動方法の一実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0057】
ステップSP0において、Isumの値を0に初期化し、ステップSP1において、3相インバータ2の全てのスイッチングトランジスタをオフにし、ステップSP2において、電流検出ポートのA/D変換を開始し、ステップSP3において、電流検出ポートのA/D変換結果Izを読み込み、ステップSP4において、IsumをIzだけ増加させ、ステップSP5において、n回のサンプルが終了したか否かを判定する。ただし、nは1以上の整数である。
【0058】
そして、n回のサンプルが終了したと判定されるまでは、再びステップSP2の処理を行う。
【0059】
また、n回のサンプルが終了したと判定された場合には、ステップSP6において、Isumをnで除算してIzeroを算出し、ステップSP7において、Izeroを電流検出値の零レベルとし、そのまま一連の処理を終了する。
【0060】
以上から分かるように、3相インバータ2およびモータ3が停止している状態においては、理論的にはDCリンク電流Idcが0である為、検出したレベルを零レベルとすることができる。また、ノイズの影響が懸念される場合には、複数回検出した値を平均化して零レベルを求めることが好ましい。ここで、インバータの停止状態とは、全てのSWがOFFしている状態のことである。
【0061】
図10はこの発明のモータ駆動方法の他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0062】
ステップSP0において、Isumの値を0に初期化し、ステップSP1において、3相インバータ2の下アームのスイッチングトランジスタを全てオンにし(電圧ベクトルV0を出力し)、ステップSP2において、電流検出ポートのA/D変換を開始し、ステップSP3において、電流検出ポートのA/D変換結果Izを読み込み、ステップSP4において、IsumをIzだけ増加させ、ステップSP5において、n回のサンプルが終了したか否かを判定する。ただし、nは1以上の整数である。
【0063】
そして、n回のサンプルが終了したと判定されるまでは、再びステップSP2の処理を行う。
【0064】
また、n回のサンプルが終了したと判定された場合には、ステップSP6において、Isumをnで除算してIzeroを算出し、ステップSP7において、Izeroを電流検出値の零レベルとし、そのまま一連の処理を終了する。
【0065】
以上から分かるように、3相インバータ2は停止しているが、外部よりモータ3にトルクが与えられることでモータ3が回転している場合には、直流部電圧VDCの値によってはモータ3からの回生電流が流れてDCリンク電流Idcが0とならないことがある。このような状態が起こり得ると考えられるときには、DCリンク電流Idcが必ず0となるようにインバータ出力を零ベクトルV0とし、この状態を保持して検出したレベルを零レベルとすることができる。また、ノイズの影響が懸念される場合には、複数回検出した値を平均化して零レベルを求めることが好ましい。
【0066】
図11はこの発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0067】
ステップSP1において、モータ3の運転処理を行い、ステップSP2において、零ベクトルV7における電流検出ポートのA/D変換結果Izを読み込み、ステップSP3において、IsumをIzだけ増加させ、ステップSP4において、n回のサンプルが終了したか否かを判定する。ただし、nは1以上の整数である。
【0068】
そして、n回のサンプルが終了したと判定された場合には、ステップSP5において、Isumをnで除算してIzeroを算出し、その後、Isumの値を0に初期化し、ステップSP6において、Izeroを電流検出値の零レベルとする。
【0069】
また、n回のサンプルが終了していないと判定された場合、またはステップSP6の処理が行われた場合には、ステップSP7において、次回の電流検出のタイミングを設定し、そのまま一連の処理を終了する。
【0070】
以上から分かるように、インバータ駆動中においては、キャリア周期毎に繰返し現れる零ベクトルの期間中に検出を行い、この値を零レベルとする。図12に検出を行うタイミングの一例を示す。また、ノイズの影響が懸念される場合には、複数回検出した値を平均化して零レベルを求めることが好ましい。
【0071】
図13はこの発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0072】
ステップSP1において、モータ3の運転処理を行い、ステップSP2において、零ベクトルV7の持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であるか否かを判定する。
【0073】
そして、零ベクトルV7の持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であると判定された場合には、ステップSP3において、零ベクトルV7における電流A/D変換結果Izを読み込み、ステップSP4において、IsumをIzだけ増加させ、ステップSP5において、n回のサンプルが終了したか否かを判定する。ただし、nは1以上の整数である。
【0074】
そして、n回のサンプルが終了したと判定された場合には、ステップSP6において、Isumをnで除算してIzeroを算出し、その後、Isumの値を0に初期化し、ステップSP7において、Izeroを電流検出値の零レベルとする。
【0075】
また、零ベクトルV7の持続時間がA/Dサンプルに必要な時間未満であると判定された場合、n回のサンプルが終了していないと判定された場合、またはステップSP7の処理が行われた場合には、ステップSP8において、次回の電流検出のタイミングを設定し、そのまま一連の処理を終了する。
【0076】
したがって、零レベルを正確に検出することができる。また、ノイズの影響が懸念される場合には、複数回検出した値を平均化して零レベルを求めることが好ましい。
【0077】
図14はこの発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0078】
ステップSP1において、モータ3の運転処理を行い、ステップSP2において、零ベクトルにおける電流A/D変換結果Izを読み込み、ステップSP3において、IsumをIzだけ増加させ、ステップSP4において、n回のサンプルが終了したか否かを判定する。ただし、nは1以上の整数である。
【0079】
そして、n回のサンプルが終了したと判定された場合には、ステップSP5において、Isumをnで除算してIzeroを算出し、その後、Isumの値を0に初期化し、ステップSP6において、Izeroを電流検出値の零レベルとする。
【0080】
また、n回のサンプルが終了していないと判定された場合、またはステップSP6の処理が行われた場合には、ステップSP7において、次回の零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であるか否かを判定する。
【0081】
そして、零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間未満であると判定された場合には、ステップSP8において、挿入する零ベクトルを選択し、ステップSP9において、零ベクトルの挿入を要求する。
【0082】
また、零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であると判定された場合、またはステップSP9の処理が行われた場合には、ステップSP10において、次回の電流検出のタイミングを設定し、そのまま一連の処理を終了する。
【0083】
さらに説明する。
【0084】
PWMインバータでは、出力電圧が大きくなると零ベクトルの時間が短くなり(図15参照)、変調率が最大となるときにはその時間は0になる(図16参照)。一方、A/D変換器のホールドに必要な時間以下では、正しいA/D変換結果を得ることは出来ない。したがって、零レベルを検出するのに十分な時間の零ベクトルが全く現れない場合には、強制的に零ベクトルを挿入して零レベルの検出を行うことができる。
【0085】
また、ステップSP8における挿入すべき零ベクトルの選択は、表3に示すように、出力電圧ベクトルに対応して行うことが好ましく、変化させるべきスイッチングトランジスタの数を必要最小限にすることができ、ノイズの発生を少なくするとともに、スイッチング損失を少なくすることができる。
【0086】
【表3】
図17はこの発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0087】
ステップSP1において、モータ3の運転処理を行い、ステップSP2において、零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であるか否かを判定する。
【0088】
そして、零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であると判定された場合には、ステップSP3において、零ベクトルにおける電流A/D変換結果Izを読み込み、ステップSP4において、IsumをIzだけ増加させ、ステップSP5において、頻度を規定するパラメータIを0にリセットし、ステップSP6において、n回のサンプルが終了したか否かを判定する。ただし、nは1以上の整数である。
【0089】
そして、n回のサンプルが終了したと判定された場合には、ステップSP7において、Isumをnで除算してIzeroを算出し、その後、Isumの値を0に初期化し、ステップSP8において、Izeroを電流検出値の零レベルとする。
【0090】
また、ステップSP2において零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間未満であると判定された場合には、ステップSP9において、パラメータIを1だけインクリメントし、ステップSP10において、パラメータIがk以上であるか否かを判定する。ただし、kは1以上の整数である。
【0091】
そして、パラメータIがk以上であると判定された場合には、ステップSP11において、挿入する零ベクトルを選択し、ステップSP12において、零ベクトルの挿入を要求する。
【0092】
また、n回のサンプルが終了していないと判定された場合、パラメータIがk未満であると判定された場合、ステップSP8の処理が行われた場合、またはステップSP12の処理が行われた場合には、ステップSP13において、次回の電流検出のタイミングを設定し、そのまま一連の処理を終了する。
【0093】
この実施形態は、頻繁に零ベクトルを挿入すると、電圧利用率の低下および制御性能の低下を引き起こす可能性がある場合に好適なものであり、強制的な零ベクトルの挿入を必要最小限に止めることができる。
【0094】
図18はこの発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0095】
ステップSP1において、モータ3の運転処理を行い、ステップSP2において、周囲温度(3相インバータなどの周囲温度)Taを検出し、ステップSP3において、零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であるか否かを判定する。
【0096】
そして、零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間以上であると判定された場合には、ステップSP4において、零ベクトルにおける電流A/D変換結果Izを読み込み、ステップSP5において、IsumをIzだけ増加させ、ステップSP6において、n回のサンプルが終了したか否かを判定する。ただし、nは1以上の整数である。
【0097】
そして、n回のサンプルが終了したと判定された場合には、ステップSP7において、Isumをnで除算してIzeroを算出し、その後、Isumの値を0に初期化し、ステップSP8において、Izeroを電流検出値の零レベルとし、ステップSP9において、検出した周囲温度Taを過去の周囲温度Ta0に代入し、ステップSP10において、n回のサンプルが終了したことを示すフラグf# Izを1にセットする。
【0098】
また、ステップSP3において零ベクトルの持続時間がA/Dサンプルに必要な時間未満であると判定された場合には、ステップSP11において、今回検出した周囲温度Taと過去の周囲温度Ta0との差の絶対値が所定の温度差ΔTmax以上であるか否かを判定する。
【0099】
そして、今回検出した周囲温度Taと過去の周囲温度Ta0との差の絶対値が所定の温度差ΔTmax以上であると判定された場合には、ステップSP12において、フラグf# Izを0にセットする。
【0100】
また、今回検出した周囲温度Taと過去の周囲温度Ta0との差の絶対値が所定の温度差ΔTmax未満であると判定された場合、またはステップSP12の処理が行われた場合には、ステップSP13において、フラグf# Izが0か否かを判定する。
【0101】
そして、フラグf# Izが0であると判定された場合には、ステップSP14において、挿入する零ベクトルを選択し、ステップSP15において、零ベクトルの挿入を要求する。
【0102】
また、n回のサンプルが終了していないと判定された場合、フラグf# Izが0でないと判定された場合、ステップSP10の処理が行われた場合、またはステップSP15の処理が行われた場合には、ステップSP16において、次回の電流検出のタイミングを設定し、そのまま一連の処理を終了する。
【0103】
さらに説明する。
【0104】
インバータ停止中に零レベルの補正を行っている場合、インバータ駆動中に検出回路のオフセット量が変化する要因は主に温度によるものである。したがって、回路の温度変化を直接見ることが出来る場合には、温度変化によるオフセット量の変化が電流誤差の許容範囲を超えそうだと判断された時に零ベクトルの挿入と零レベルの補正を行えばよい。回路の温度変化を直接見ることが出来ない場合には、周囲温度、インバータ出力電流、インバータ出力電力等から回路の温度変化を推測して零ベクトルの挿入と零レベルの補正とを行うことができる。
【0105】
具体的には、電流零における検出回路出力V0の温度特性が図19に示すように与えられるのであるから、最大の変化量を示す特性に基づいて、許容誤差に対応する所定の温度差ΔTmaxを得ることができ、この温度差ΔTmaxを用いて零ベクトルの挿入と零レベルの補正とを行うべきか否かを判定することができる。
【0106】
また、一つの零ベクトルの持続時間ではA/D変換に不十分であっても、近接する零ベクトルを一箇所に集めることで十分な時間を得られる場合には、変調率を変えることなく、零ベクトル期間の拡張を達成することが可能である(図20参照)。
【0107】
さらに、相補PWMインバータでは、上下アームの短絡を防止する為に、スイッチングトランジスタの切り替わり時には上下共にOFF状態とするデットタイム期間が存在する(図21中のデッドタイムtdを参照)。そして、ゲート信号の状態にて零ベクトルを出力すると、必ず2回のデットタイム期間を伴う為、強制的な零ベクトルの挿入時におけるインバータ出力電圧の変動が大きくなる。そこで、少しでもインバータ出力電圧の変動を抑える為に次のようなゲート駆動を行うことが好ましい。
【0108】
図22はW相のスイッチングトランジスタを上下アーム共にOFFとすることで、インバータ出力電圧がベクトルから零ベクトルに変わる様子を示す図である。このように、モータを流れている電流の方向が分かっているときには、ある相のスイッチングトランジスタを上下アーム共にOFFとすることで零ベクトルを発生させることができ、この期間を検出に必要な時間とすることでインバータ出力電圧の変動を最小限に抑えることが可能になる。モータ電流の方向と上下のスイッチングトランジスタをOFFとする相の選択方法を表4に示す。
【0109】
【表4】
図23および図24はこの発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【0110】
ステップSP1において、DCリンクの電流を検出し、ステップSP2において、モータの運転処理を行い、ステップSP3において、各相の電流振幅Iu#amp、Iv#amp、IW#ampを演算し、ステップSP4において、インバータ出力電圧ベクトルの組み合わせが変化したか否かを判定する。
【0111】
そして、インバータ出力電圧ベクトルの組み合わせが変化したと判定された場合には、ステップSP5において、re0からre1に変化したか否かを判定し、re0からre1には変化していないと判定された場合には、ステップSP7において、re1からre2に変化したか否かを判定し、re1からre2には変化していないと判定された場合には、ステップSP9において、re2からre3に変化したか否かを判定し、re2からre3には変化していないと判定された場合には、ステップSP11において、re3からre4に変化したか否かを判定し、re3からre4には変化していないと判定された場合には、ステップSP13において、re4からre5に変化したか否かを判定し、re4からre5には変化していないと判定された場合には、ステップSP15において、re5からre0に変化したか否かを判定する。
【0112】
ステップSP5においてre0からre1に変化したと判定された場合には、ステップSP6において、ΔI={(Iu#amp−Iu#amp#old)+(Iv#amp#old−Iv#amp)}/2の演算を行ってΔIを算出する。
【0113】
ステップSP7においてre1からre2に変化したと判定された場合には、ステップSP8において、ΔI={(Iu#amp−Iu#amp#old)+(IW#amp#old−IW#amp)}/2の演算を行ってΔIを算出する。
【0114】
ステップSP9においてre2からre3に変化したと判定された場合には、ステップSP10において、ΔI={(Iv#amp−Iv#amp#old)+(IW#amp#old−IW#amp)}/2の演算を行ってΔIを算出する。
【0115】
ステップSP11においてre3からre4に変化したと判定された場合には、ステップSP12において、ΔI={(Iv#amp−Iv#amp#old)+(Iu#amp#old−Iu#amp)}/2の演算を行ってΔIを算出する。
【0116】
ステップSP13において、re4からre5に変化したと判定された場合には、ステップSP14において、ΔI={(IW#amp−IW#amp#old)+(Iu#amp#old−Iu#amp)}/2の演算を行ってΔIを算出する。
【0117】
ステップSP15において、re5からre0に変化したと判定された場合には、ステップSP16において、ΔI={(IW#amp−IW#amp#old)+(Iv#amp#old−Iv#amp)}/2の演算を行ってΔIを算出する。
【0118】
そして、ステップSP6の処理、ステップSP8の処理、ステップSP10の処理、ステップSP12の処理、ステップSP14の処理、またはステップSP16の処理が行われた場合には、ステップSP17において、電流検出値の零レベルにΔIを加算する。
【0119】
また、ステップSP4においてインバータ出力電圧ベクトルの組み合わせが変化していないと判定された場合、ステップSP15において、re5からre0には変化していないと判定された場合、またはステップSP17の処理が行われた場合には、ステップSP18において、演算された各相の電流振幅Iu#amp、Iv#amp、IW#ampをそれぞれ過去の各相の電流振幅Iu#amp#old、Iv#amp#old、IW#amp#oldとし、そのまま一連の処理を終了する。
【0120】
さらに説明する。
【0121】
DCリンクからモータ電流検出を行う場合、通常一つの回路を用いて、異なる2つの電圧ベクトルにおける電流を検出することで2つの相電流を得、残る1相については検出した2相より計算できる。このことから、直接読み取れる2つの相電流には同じオフセット量が含まれており、残る1相の電流は計算によりオフセット量が相殺されることが分かる。その様子を図25に示す。
【0122】
したがって、同一の相電流において、検出値から直接読み取った時と計算により得られた時の交流電流振幅の変化量を求めることで、検出回路のオフセット量を得て検出電流の零レベルの補正を行うことが可能となる。
【0123】
図26は検出回路に+ΔI相当のオフセット誤差を生じたときに検出電流に現れる誤差を示している。また、図27は検出回路に−ΔI相当のオフセット誤差を生じたときに検出電流に現れる誤差を示している。
【0124】
なお、以上には、零レベルを検出する処理を主として説明し、検出電流の補正、補正後の電流値を用いる回転子の磁極位置検出、磁極位置を基準とするインバータ制御演算などについては詳細な説明を省略している。これは、後者の処理が公知だからである。
【0125】
もちろん、上記の各実施形態の処理をハードウエアにより達成することができる。
【0126】
また、検出回路の増幅器に入力電圧オフセットの大きなオペアンプを使える等、検出回路を安価に構成できる。さらに、電流検出精度の向上により、インバータ、モータ制御の性能を向上させることができる。
【0127】
【発明の効果】
請求項1の発明は、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができるという特有の効果を奏する。
【0128】
請求項2の発明は、モータを積極的には運転していない状態においても零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出することができるという特有の効果を奏する。
【0129】
請求項3の発明は、モータの運転期間中において零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができるという特有の効果を奏する。
【0130】
請求項4の発明は、請求項3と同様の効果を奏する。
【0131】
請求項5の発明は、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項3と同様の効果を奏する。
【0132】
請求項6の発明は、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項3と同様の効果を奏する。
【0133】
請求項7の発明は、周囲温度変化により零レベルの補正が必要であると考えられる場合に零レベルを精度よく検出して、請求項3と同様の効果を奏する。
【0134】
請求項8の発明は、零ベクトル出力期間に影響されることなく、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができるという特有の効果を奏する。
【0135】
請求項9の発明は、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができるという特有の効果を奏する。
【0136】
請求項10の発明は、モータを積極的には運転していない状態においても零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出することができるという特有の効果を奏する。
【0137】
請求項11の発明は、モータの運転期間中において零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができるという特有の効果を奏する。
【0138】
請求項12の発明は、請求項11と同様の効果を奏する。
【0139】
請求項13の発明は、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項11と同様の効果を奏する。
【0140】
請求項14の発明は、零ベクトル出力期間が短い場合にも零レベルを精度よく検出して、請求項11と同様の効果を奏する。
【0141】
請求項15の発明は、周囲温度変化により零レベルの補正が必要であると考えられる場合に零レベルを精度よく検出して、請求項11と同様の効果を奏する。
【0142】
請求項16の発明は、零ベクトル出力期間に影響されることなく、零レベルを精度よく検出することができ、ひいてはモータの回転子の磁極位置を精度よく検出し、モータの高効率な運転を達成することができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のモータ駆動装置の一実施形態を示す概略図である。
【図2】3相インバータの構成を示す概略図である。
【図3】インバータ出力電圧ベクトルを説明する図である。
【図4】正弦波電圧出力とインバータ出力電圧ベクトルの組み合わせを示す図である。
【図5】インバータ出力電圧ベクトルV4における電流経路の例を説明する図である。
【図6】re0におけるインバータ出力電圧ベクトルとDCリンク電流の一例を示す図である。
【図7】ゲイン誤差による検出電流のばらつきを説明する図である。
【図8】オフセット誤差による検出電流のばらつきを説明する図である。
【図9】この発明のモータ駆動方法の一実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【図10】この発明のモータ駆動方法の他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【図11】この発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【図12】インバータ出力電圧ベクトルV7におけるA/D変換処理とキャリア割り込み処理を説明する図である。
【図13】この発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【図14】この発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【図15】変調率が大きい時のインバータ出力電圧ベクトルとDCリンク電流を説明する図である。
【図16】零ベクトルが存在しない例を示す図である。
【図17】この発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【図18】この発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部を説明するフローチャートである。
【図19】電流零における検出回路出力の温度特性を説明する図である。
【図20】零ベクトルの拡大例を示す図である。
【図21】ゲート信号、インバータ出力電圧ベクトル、およびDCリンク電流の関係を説明する図である。
【図22】上下アームのスイッチングトランジスタのオフによる零ベクトルの挿入を説明する図である。
【図23】この発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部の一部を説明するフローチャートである。
【図24】この発明のモータ駆動方法のさらに他の実施形態の要部の残部を説明するフローチャートである。
【図25】オフセット量の検出電流への影響を説明する図である。
【図26】+ΔI相当のオフセットが存在する時の検出電流を示す図である。
【図27】−ΔI相当のオフセットが存在する時の検出電流を示す図である。
【符号の説明】
2 3相インバータ 3 モータ
4 電流検出回路 5 制御回路
Claims (16)
- 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動方法において、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記インバータ(2)の停止期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出することを特徴とするモータ駆動方法。 - 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動方法において、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータを駆動しない期間中に、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力して、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出することを特徴とするモータ駆動方法。 - 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動方法において、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータの駆動期間中であって、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段からの出力を零レベルとして検出することを特徴とするモータ駆動方法。 - 零ベクトル出力期間が所定時間以上であることに応答して、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出する請求項3に記載のモータ駆動方法。
- 零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出する請求項3に記載のモータ駆動方法。
- 零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、所定周期で零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出する請求項3に記載のモータ駆動方法。
- 零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、前記検出手段(4)の周囲温度変化に応じて零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出する請求項3に記載のモータ駆動方法。
- 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動方法において、
ある1つのモータ相電流について検出値から直接読み取った時の交流電流振幅と、2つの異なるモータ相電流について検出値から直接読み取った値から計算で得た交流電流振幅との変化量から前記検出手段(4)のオフセット量を得、得られたオフセット量により前記検出手段(4)により検出されたモータ電流の零レベルの補正を行うことを特徴とするモータ駆動方法。 - 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動装置において、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記インバータ(2)の停止期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出する零レベル検出手段(5)を含むことを特徴とするモータ駆動装置。 - 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動装置において、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータを駆動しない期間中に、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力して、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出する零レベル検出手段(5)を含むことを特徴とするモータ駆動装置。 - 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動装置において、
前記モータ電流の検出値を補正するために、前記モータの駆動期間中であって、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出する零レベル検出手段(5)を含むことを特徴とするモータ駆動装置。 - 前記零レベル検出手段(5)は、零ベクトル出力期間が所定時間以上であることに応答して、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出するものである請求項11に記載のモータ駆動装置。
- 前記零レベル検出手段(5)は、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出するものである請求項11に記載のモータ駆動装置。
- 前記零レベル検出手段(5)は、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、所定周期で零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出するものである請求項11に記載のモータ駆動装置。
- 前記零レベル検出手段(5)は、零ベクトル出力期間が所定時間未満であることに応答して、前記検出手段(4)の周囲温度変化に応じて零ベクトル出力期間を追加し、前記インバータ(2)から零ベクトルを出力している期間中に、前記モータ電流を検出する検出手段(4)からの出力を零レベルとして検出するものである請求項11に記載のモータ駆動装置。
- 検出手段(4)を用いてインバータ(2)からモータ(3)に供給されるモータ電圧およびモータ電流を検出し、検出したモータ電圧、モータ電流、および予め設定したモータモデルを用いてモータ(3)の回転子の磁極位置を検出し、検出した磁極位置を基準としてインバータ(2)を制御するモータ駆動装置において、
ある1つのモータ相電流について検出値から直接読み取った時の交流電流振幅と、2つの異なるモータ相電流について検出値から直接読み取った値から計算で得た交流電流振幅との変化量から前記検出手段(4)のオフセット量を得るオフセット獲得手段(5)と、得られたオフセット量により前記検出手段(4)により検出されたモータ電流の零レベルの補正を行う零レベル補正手段(5)とを含むことを特徴とするモータ駆動装置。
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