JP2004134165A - 非水電解質及び電気化学デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】リチウム塩と常温溶融塩とからなる非水電解質において、前記リチウム塩と前記常温溶融塩との混合物が、示差走査熱量分析(測定温度範囲:−150℃〜100℃)において融点を有さずガラス転移点のみを有するように、前記リチウム塩と常温溶融塩との混合比が選択されていることを特徴とする非水電解質。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質に関するもので、さらに詳しくは、リチウム塩と常温溶融塩とからなる非水電解質に関するものである。また、それを用いた電気化学デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高性能化、小型化が進む電子機器用電源、電力貯蔵用電源、電気自動車用電源等として、リチウムイオン電池に代表される非水電解質電池や電気二重層キャパシタ等、高エネルギー密度が得られる種々の非水電解質を用いた電気化学デバイスが注目されている。
【0003】
これらの電気化学デバイスには、一般的に、常温で液状を呈する非水電解質(非水電解液)が用いられている。該非水電解液は、常温で液状の有機溶媒に常温で固体状のリチウム塩や脂肪族四級アンモニウム塩を溶解させてなるものであり、該有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピオラクトン、バレロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等のイオン解離性を有さない有機溶媒が用いられている。これらの有機溶媒は一般に揮発しやすく、引火性を有するため、可燃性物質に分類されるものである。
【0004】
一方、電気化学デバイス用非水電解質として、常温で液状を呈する常温溶融塩を用いることが提案されている。常温溶融塩は、それ自身が常温で液状でありながら揮発性が実質的になく、かつ、高い難燃性を有するものである(特許文献1〜4参照)。
【0005】
電気化学デバイスの中でも、特に電力貯蔵用電源や電気自動車用電源等の比較的大型の電気化学デバイスの用途には、引火の虞がない等非水電解質の使用が望まれており、上記常温溶融塩を電解質に用いる技術が注目されている。
【0006】
しかしながら、常温溶融塩は、一般的な非水電解液に比べて融点が高く、かつ、粘度も高いことから、リチウムイオン等のキャリアイオンの移動度を充分に高いものとすることができないといった問題点があった。そのため、常温溶融塩からなる非水電解質を用いた電気化学デバイスは、一般的な非水電解液を用いた電気化学デバイスに比べ、高率充放電特性や低温での特性が充分でないといった問題点があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平4−349365号公報
【特許文献2】
特開平10−92467号公報
【特許文献3】
特開平11−86905号公報
【特許文献4】
特開平11−260400号公報
【特許文献5】
特開2002−110230号公報
【非特許文献1】
溶融塩・熱技術研究会編「溶融塩・熱技術の基礎」アグネ技術センター出版、1993年、313p(ISBN 4−900041−24−6)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、安全性に優れた常温溶融塩を用いながらも、キャリアイオンの移動度が十分に得られる非水電解質を提供することを目的とする。また、これを用いて電気的特性に優れた電気化学デバイスを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の構成は以下の通りである。但し、作用機構については推定を含んでおり、その作用機構の成否は、本発明を制限するものではない。
【0010】
なお、本願にいう常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいう。常温とは、それを用いた電気化学デバイスが通常作動すると想定される温度範囲であり、上限が100℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限が−50℃程度、場合によっては−20℃程度である。一方、非特許文献1に記載されているような、各種電析等に用いられるLi2CO3−Na2CO3−K2CO3等の無機系溶融塩は、融点が300℃以上のものが大半であり、通常電気化学デバイスが作動すると想定される温度範囲内で液状を呈するものではなく、本発明における常温溶融塩には含まれない。
【0011】
本発明は、請求項1に記載したように、リチウム塩と常温溶融塩とからなる非水電解質において、前記リチウム塩と前記常温溶融塩との混合物が、示差走査熱量分析(測定温度範囲:−150℃〜100℃)において融点を有さずガラス転移点のみを有するように、前記リチウム塩と常温溶融塩との混合比が選択されていることを特徴とする非水電解質である。
【0012】
ここで、示差走査熱量分析DSCの条件は、アルミニウム製の密閉パンに測定試料を約10mg秤量して密閉し、温度範囲を−150℃〜100℃とし、昇温速度を10℃/分として測定するものとする。
【0013】
本発明者らは、常温で液状を呈する常温溶融塩にキャリアイオンを提供するためのリチウム塩を混合した系について鋭意検討した結果、常温溶融塩に対するリチウム塩の濃度を徐々に増やしていくと、濃度の増加に伴って混合物の粘度は高くなるものの、リチウム塩の濃度が比較的低い領域では混合物の融点が低温側にシフトする現象(融点降下)が認められた。そして、リチウム塩の濃度をさらに増加させると、驚くべきことに、ある特定の濃度範囲において、混合物の融点が消失し、ガラス転移点のみを示すことを見いだした。そしてさらに、リチウム塩の濃度が前記範囲を超えると、再び融点が認められた。しかも、リチウム塩の濃度範囲によっては、リチウム塩の含有量が前記範囲を超えた場合に観察される融点は、リチウム塩の含有量が前記範囲未満の場合に観察された融点よりも高温側に観察される場合が多い。
【0014】
このように、特定の混合比の範囲において融点が消失する原因については推定の域を出ないが、常温溶融塩とリチウム塩が複塩を形成するためであると考えられる。
【0015】
次に、本発明者らは、常温溶融塩とリチウム塩とからなる非水電解質を用いた電気化学デバイスにおいて、常温溶融塩とリチウム塩との混合比を上記現象が現れる範囲とした場合には、実に驚くべきことに前記混合比を前記範囲外とした場合に比べて、低温下でも優れた電気的性能が発揮されることを見いだし、本発明に至った。この原因については必ずしも明らかではないが、常温溶融塩とリチウム塩の混合比として前記範囲を選択した場合には、電気化学デバイスの作動温度においても、前記常温溶融塩を構成するイオンとリチウム塩を構成するイオンとの配列が無秩序性の高いものとなる傾向があるため、非水電解質の分子レベルの結晶化を抑制し、キャリアイオンであるリチウムイオンの移動度を高く保つことが可能となるものと推定される。
【0016】
また、本発明の非水電解質は常温溶融塩を主構成成分としているので、常温で液状でありながら揮発性を実質的に有さないため高い不燃性を有するといった常温溶融塩の特徴を生かすことができるので、高い安全性を有する非水電解質とすることができる。
【0017】
即ち、本発明の非水電解質は、常温溶融塩とリチウム塩とを必須構成成分とするものである。本発明に係る非水電解質中のリチウム塩の含有量は、リチウム塩と常温溶融塩との混合物が、示差走査熱量分析(測定温度範囲:−150℃〜100℃)において融点を有さずガラス転移点のみを有する範囲とされる。本発明に係る非水電解質中のリチウム塩の含有量の範囲は、リチウム塩の種類や常温溶融塩の種類に応じて適宜決定される。リチウム塩の含有量が、前記範囲より低いと、特に低温下では非水電解質の結晶化が起こりやすく、電気化学デバイスの電気的特性を充分なものとすることができない。逆にリチウム塩の含有量が、前記濃度範囲を越えると、やはり非水電解質の結晶化が起こりやすく、電気化学デバイスの電気的特性を充分なものとすることができない。
【0018】
本発明に係る非水電解質は、常温において液状を呈するものであることが好ましい。従って、本発明の非水電解質において観察されるガラス転移点は、用いる常温溶融塩やリチウム塩の種類に依存するが、常温溶融塩やリチウム塩の種類としては、該ガラス転移点が常温以下となるものを選択することが強く推奨され、好ましい。
【0019】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記常温溶融塩は、四級アンモニウム有機物カチオンを有することを特徴とする非水電解質である。
【0020】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記四級アンモニウム有機物カチオンは、(化学式1)で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンであることを特徴とする非水電解質である。
【0021】
【化2】
(但し、R1、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、R2、R4、R5は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基のいずれかである)
【0022】
このような構成によれば、前記常温溶融塩として、四級アンモニウム有機物カチオン、なかでも、(化学式1)で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンを有する常温溶融塩を用いることにより、非水電解質中のリチウムイオンの移動度を充分に得ることができる上、上記作用を効果的に得ることが可能となる。
【0023】
また、本発明は、請求項4に記載したように、前記非水電解質を構成するリチウム塩及び常温溶融塩は、非金属元素のみからなるアニオンから構成されていることを特徴とする非水電解質である。
【0024】
このような構成によれば、非水電解質のアニオンを非金属元素のみからなるアニオンから選択することにより、融点の低い常温溶融塩を形成しやすくなるので、上記作用をさらに効果的に得ることが可能となる。
【0025】
また、本発明は、請求項5に記載したように、前記非水電解質を用いた電気化学デバイスである。
【0026】
このような構成によれば、電気化学デバイスの電解質が、安全性の高い常温溶融塩を用いながらも、キャリアイオンの移動度を十分に得られる非水電解質からなるので、非水電解質電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスを電気的特性に優れたものとすることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明はこれらの記述により限定されるものではない。
【0028】
本発明における常温溶融塩は、四級アンモニウム有機物カチオンを有するものとすることが好ましい。四級アンモニウム有機物カチオンとしては、イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン等が挙げられる。このうち特に、(化学式1)で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0029】
前記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、ジアルキルイミダゾリウムカチオンとして、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオン等が、またトリアルキルイミダゾリウムカチオンとして、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
前記テトラアルキルアンモニウムカチオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
前記ピリジニウムカチオンとしては、N−メチルピリジニウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記ピロリウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピロリウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記ピラゾリウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピラゾリウムイオン、1−エチル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−プロピル−2−メチルピラゾリウムイオン、1−ブチル−2−メチルピラゾリウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
前記ピロリニウムカチオンとしては、1,2−ジメチルピロリニウムイオン、1−エチル−2−メチルピロリニウムイオン、1−プロピル−2−メチルピロリニウムイオン、1−ブチル−2−メチルピロリニウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記ピロリジニウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピロリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
前記ピペリジニウムカチオンとしては、1,1−ジメチルピぺリジニウムイオン、1−エチル−1−メチルピぺリジニウムイオン、1−メチル−1−プロピルピぺリジニウムイオン、1−ブチル−1−メチルピぺリジニウムイオン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
なお、これらの四級アンモニウム有機物カチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0038】
また、本発明においては、非水電解質のアニオンを非金属元素のみからなるアニオンから選択することが好ましい。前記非金属元素のみからなるアニオンとしては、BF4 −、PF6 −、CF3SO3 −、N(CF3SO2)2 −、N(C2F5SO2)2 −、N(CF3SO2)(C4F9SO2)−、C(CF3SO2)3 −及びC(C2F5SO2)3 −からなる群から1種以上のアニオンを選択することが好ましいが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、常温溶融塩のアニオンとリチウム塩のアニオンは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
なお、本発明における非水電解質は、リチウム塩と常温溶融塩の他、高分子を複合化させることにより、前記非水電解質をゲル状に固体化して使用してもよい。ここで、前記高分子としては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニリデン、各種アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、アクリルアミド系モノマー、アリル系モノマー、スチレン系モノマーの重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0040】
また、本発明における非水電解質は、リチウム塩と常温溶融塩の他、−150℃〜100℃の温度範囲にて融点を有さない限りにおいて、常温で液状である有機溶媒を添加して使用してもよい。ここで、前記有機溶媒としては、一般にリチウム二次電池用電解液に使用される有機溶媒が使用できる。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、プロピロラクトン、バレロラクトン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メトキシエトキシエタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、これらの有機溶媒は前述したとおり引火性を有するため、難燃性である常温溶融塩の特徴を生かそうとする場合には、その添加量を制限することが好ましい。また、一般にリチウム二次電池用電解液に添加される難燃性溶媒である、リン酸エステルを使用してもよい。リン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリ(トリフルオロメチル)、リン酸トリ(トリフルオロエチル)、リン酸トリ(トリパーフルオロエチル)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0041】
【実施例】
以下に、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により限定されるものではない。
【0042】
(比較電解質1)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(EMIBF4)のみからなる非水電解質である。
【0043】
(比較電解質2)
EMIBF41リットルに、0.5モルのLiBF4を混合することにより、非水電解質を得た。
【0044】
(本発明電解質1)
EMIBF41リットルに、0.75モルのLiBF4を溶解させることにより、非水電解質を得た。
【0045】
(本発明電解質2)
EMIBF41リットルに、1モルのLiBF4を混合することにより、非水電解質を得た。
【0046】
(本発明電解質3)
EMIBF41リットルに、1.5モルのLiBF4を混合することにより、非水電解質を得た。
【0047】
(本発明電解質4)
EMIBF41リットルに、2.8モルのLiBF4を混合することにより、非水電解質を得た。
【0048】
(比較電解質3)
EMIBF41リットルに、4.3モルのLiBF4を混合することにより、非水電解質を得た。
【0049】
(比較電解質4)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(EMITFSI)のみからなる非水電解質である。
【0050】
(本発明電解質5)
EMITFSI1リットルに、1モルのLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)を溶解させることにより、非水電解質を得た。
【0051】
(比較電解質5)
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペルフルオロエタンスルフォニル)イミド(EMIBETI)のみからなる非水電解質である。
【0052】
(本発明電解質6)
EMIBETI1リットルに、1モルのLiN(C2F5SO2)2(LiBETI)を溶解させることにより、非水電解質を得た。
【0053】
(比較電解質6)
1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボラート(BPBF4)のみからなる非水電解質である。
【0054】
(本発明電解質7)
BPBF41リットルに、1モルのLiBF4を混合することにより、非水電解質を得た。
【0055】
(比較電解質7)
トリメチルヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(TMHATFSI)のみからなる非水電解質である。
【0056】
(本発明電解質8)
TMHATFSI1リットルに、0.5モルのLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)を混合することにより、非水電解質を得た。
【0057】
(融点及びガラス転移点の測定)
上記した本発明電解質1〜8及び比較電解質1〜7について、融点及びガラス転移点を測定した。アルミニウム製の密閉パンにそれぞれの非水電解質を約10mg秤量して密閉し、示差走査熱量分析計(DSC)によって融点及びガラス転移点を求めた。なお、測定温度範囲は−150℃〜100℃とし、昇温速度は10℃/分とした。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、本発明非水電解質1〜8は、いずれも融点を有さず、ガラス転移点のみを示した。一方、比較非水電解質1〜7は、いずれも融点を有した。
【0060】
次に、EMIBF4に0〜1.5MのLiBF4を溶解させてなる本発明電解質1〜3及び比較電解質1,2について、ACインピーダンス法により60℃におけるリチウムイオン伝導度を測定したところ、いずれも10−2S/cmオーダーの高いイオン伝導度を示した。
【0061】
(電気化学デバイスの作製)
本発明電解質1〜8及び比較電解質2,3を用いて、電気化学デバイスとして非水電解質電池を作製した。これを本発明電池1〜8及び比較電池2,3とする。実施例に係る非水電解質電池の断面図を図1に示す。実施例に係る非水電解質電池は、正極1、負極2、及びセパレータ3からなる極群4と、非水電解質と、外装材としての金属樹脂複合フィルム5から構成されている。正極1は、正極合剤11が正極集電体12上に塗布されてなる。また、負極2は、負極合剤21が負極集電体22上に塗布されてなる。非水電解質は極群4に含浸されている。金属樹脂複合フィルム5は、極群4を覆い、その四方を熱溶着により封止されている。
【0062】
次に、上記構成の非水電解質電池の製造方法を説明する。正極1は次のようにして得た。まず、LiCoO2と、導電剤であるアセチレンブラックを混合し、さらに結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物をアルミ箔からなる正極集電体12の片面に塗布した後、乾燥し、正極合剤11の厚さが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により正極1を得た。負極2は、次のようにして得た。まず、負極活物質であるLi4/3Ti5/3O4と、導電剤であるケッチェンブラックを混合し、さらに結着剤としてポリフッ化ビニリデンのN−メチル−2−ピロリドン溶液を混合し、この混合物を銅箔からなる負極集電体22の片面に塗布した後、乾燥し、負極合剤21厚さが0.1mmとなるようにプレスした。以上の工程により負極2を得た。セパレータ3は、ポリエチレン性微孔膜を用いた。極群4は、正極合剤11と負極合剤21とを対向させ、その間にセパレータ3を配し、正極1、セパレータ3、負極2の順に積層することにより、構成した。次に、非水電解質中に極群4を浸漬させることにより、極群4に非水電解質を含浸させた。さらに、金属樹脂複合フィルム5で極群4を覆い、その四方を熱溶着により封止した。
【0063】
(初期放電容量試験)
本発明電池及び比較電池について、初期放電容量試験を行った。試験温度は20℃とした。充電は、電流1mA、終止電圧2.7Vの定電流充電とした。放電は、電流1mA、終止電圧1.2Vの定電流放電とした。得られた放電容量を、初期放電容量とした。なお、本発明電池及び比較電池の設計容量は、全て10mAhである。
【0064】
(高率放電試験)
本発明電池及び比較電池について、高率放電試験を行った。初期放電容量試験と同様の条件で、初期容量の確認を行った電池を、同様の条件で充電後、電流5mA、終止電圧1.2Vの定電流放電を行った。得られた放電容量を、高率放電容量とした。
【0065】
(低温放電試験)
本発明電池及び比較電池について、低温放電試験を行った。初期放電容量試験と同様の条件で、初期容量の確認を行った電池を、同様の条件で充電後、試験温度0℃、電流1mA、終止電圧1.2Vの定電流放電を行った。得られた放電容量を、低温放電容量とした。
【0066】
以上の電池試験の結果を表1に併せて示す。
【0067】
これらの結果から明らかなように、本発明電池1〜8は、初期放電容量、高率放電容量、低温放電容量とも、比較電池1,2よりも優れる性能を示した。
【0068】
以上の結果から明らかなように、本発明の非水電解質は、融点を有さず、ガラス転移点のみを示すという特徴を有するので、キャリアイオンの移動度が優れたものとなる。また、これを用いた本発明電池は、高率放電性能や低温放電性能において優れたものとなる。さらに、本発明の非水電解質は難燃性を有するので、これを用いた本発明電池は、高い安全性を兼ね備えたものであることはいうまでもない。
【0069】
なお、本実施例においては、電気化学デバイスの一例として非水電解質電池を用いたが、本発明に係る非水電解質は、電気二重層キャパシタ、燃料電池、太陽電池等、その他の電気化学デバイスにも広く好適に適用することができる。
【0070】
また、本実施例においては、四級アンモニウム有機物カチオンとしてイミダゾリウムカチオンを例に挙げて説明したが、その他の四級有機物アンモニウムカチオン(テトラアルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、等)を用いても同様の効果が得られる。
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、実質的に揮発性がなく高い難燃性を有するため高い安全性を有し、かつ、キャリアイオンの移動度を十分に得られる非水電解質を提供することができ、これを用いた電気化学デバイスは電気的特性に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る非水電解質電池の断面図である。
【符号の説明】
1 正極
11 正極合剤
12 正極集電体
2 負極
21 負極合剤
22 負極集電体
3 セパレータ
4 極群
5 金属樹脂複合フィルム
Claims (5)
- リチウム塩と常温溶融塩とからなる非水電解質において、前記リチウム塩と前記常温溶融塩との混合物が、示差走査熱量分析(測定温度範囲:−150℃〜100℃)において融点を有さずガラス転移点のみを有するように、前記リチウム塩と常温溶融塩との混合比が選択されていることを特徴とする非水電解質。
- 前記常温溶融塩は、四級アンモニウム有機物カチオンを有することを特徴とする請求項1記載の非水電解質。
- 前記リチウム塩及び常温溶融塩は、非金属元素のみからなるアニオンから構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非水電解質。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の非水電解質を用いた電気化学デバイス。
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