JP2004131694A - デンドリマーの製造方法及びビルディングブロック化合物並びにチオフェン系化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記一般式(1)の繰り返し構造単位を有するデンドリマーの製造方法であって、末端部分を構成するチェニレン構造を有する化合物のチオフェン環のα位水素をsuzukiクロスカップリング反応する活性基V1に変換する反応工程1と、線状部及び分岐部Yに2つの活性基V2を有する化合物を工程1で得た化合物とsuzukiクロスカップリング反応させる反応工程2と、この生成物のチオフェン環のα位水素を活性基V1に変換すると共にこれに工程2で得た化合物を反応させて次世代のデンドロンを得る反応工程3と、この反応工程3を繰り返す工程を具備する。
(Zは2価の有機基又は単結合、R1及びR2は水素、アルキル基等、Yは3価の有機基、活性基V1及びV2は互いにsuzukiクロスカップリング反応する活性基。)
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学分野、医薬分野、電子材料分野などにおいて、種々の高機能材料の創製に有用な高分子材料として期待される、チエニレン構造を有する新規なデンドリマーの製造方法およびそのビルディングブロックとなる化合物並びにチオフェン系化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
デンドリック高分子は、その高度に枝分かれした構造のため、従来の鎖状高分子とは異なる物理的、化学的性質および機能が期待されている。デンドリック高分子は大きく分けてデンドリマーとハイパーブランチポリマーに分けることができる。デンドリマーは規則的に制御された分岐構造を有するもので、一般的には中心構造となる核(コア)または開始点から、放射状かつ規則的に枝分かれした構造を有し、その分子量はほぼ単一であることから、種々の分子量の混合物である従来の高分子とは大きく異なる。低粘度性、高溶解性、非晶性などの特徴的な性質を持っており、その応用が注目されている。また、外殻部となる末端基や中心部となる核に様々な機能基を導入することで、新規な機能を発現させるといった研究が盛んに行なわれている。一方、ハイパーブランチポリマーは構造の規則性がデンドリマーほど精密ではなく、分子量や分岐度の異なる化合物の混合物である。
【0003】
デンドリック高分子の合成法には、開始点あるいは核から順次枝を伸ばしていく「Divergent法」、末端から分岐ユニットをつなぎ合せて最後に開始点あるいは核に結合させる「Convergent法」、さらにAB2型の多官能モノマーの自己縮合(ここでAとBは互いに反応する官能基を示す)などの方法が知られている。AB2型の多官能モノマーの自己縮合は、分子量分布を持ったハイパーブランチポリマーの合成に利用される。「Divergent法」および「Convergent法」は、主にほぼ単一の分子量を持つデンドリマーの合成に利用される。「Divergent法」では反応点が常に最外殻にあり世代が進行すればするほど反応点の数が増加するために、欠陥が残りやすく、またそれを防ぐために過剰の反応試薬を必要とするなどの欠点がある。一方、「Convergent法」は過剰の原料を必要とせず合成中間体の精製も比較的容易である利点を有し、欠陥がなく高純度のデンドリマーを効率的に合成するには非常に有効な手段となっている(非特許文献1参照)。
【0004】
上記した「Convergent法」により合成されるデンドリマーの繰り返し構造は、主にポリアリールエーテル、ポリアリールアルキレン、ポリアリーレン、ポリアルキルエーテル、ポリアリールアルケン、ポリアミド、ポリカーボナートなどがある。より具体的にはポリベンジルエーテル、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニルアセチレン等が知られている。デンドリマーは中心構造となる核、外殻となる末端基、内部の骨格形成する繰り返し構造の組合せにより、多様な機能の発現が期待できる。従って、デンドリマーの繰り返し構造は、機能材料としての特徴に大きな影響を与えるため、より多くの構造およびその効率的な合成法が強く望まれている。
【0005】
一方、チエニレン構造は、優れた電気的特性を有すること、熱や光に対して安定であることなどから、導電性π共役系ポリマーまたはオリゴマーの基本構造として研究されている。デンドリック高分子の分野でも、その中心構造である核にオリゴチオフェン構造を、または外殻となる末端基にチエニル基が導入されたデンドリマーが報告されている(非特許文献2,3参照)。
【0006】
チエニレン構造を繰り返し構造単位に含むデンドリマーおよび合成法としては、チエニレン骨格のみで構成される繰り返し構造単位のデンドリマーが開示されている(非特許文献4参照)。
【0007】
この合成法はGrignard反応又はStilleカップリング反応でデンドリマーの世代を成長させるConvergent法である。しかしながら、Grignard反応を利用した場合、Grignard反応は急激な発熱反応で進行するため、工業生産時の温度管理が難しく、さらに収率よく合成するためには厳密な水分管理も必要であり、大規模な製造には適さない。また、Stilleカップリング反応を利用した場合は、毒性が高い有機スズ化合物を使用する必要があり、収率よく合成するためには厳密な脱酸素工程が必要である。この方法も大規模製造には好適でない。また、繰り返し単位の分岐部分となるビルディングブロックは2,3−ジブロモチオフェンのみであり、そのデンドリック構造が限定される。以上述べた以外には、チエニレン骨格の繰り返し構造単位が含まれるデンドリマー及びその合成法は知られていない。
【0008】
一方、特許文献1にはチエニレン−フェニレン構造を繰り返し構造単位とするハイパーブランチポリマーが開示されている。
【0009】
しかし、この製造方法はGrignard反応による重合反応を利用しているため、デンドリマーのような規則性の高い繰り返し構造を制御することは不可能である。したがって、この製造方法で合成した化合物は、一般的な高分子重合体と同様に広い分子量分布を有し、中心構造となる核や外殻となる末端基へ機能基を導入しようとしても、ランダムに導入されるため、所望の機能を得ることは難しい。
【0010】
【非特許文献1】
J. M. J. FrechetらChem. Rev. 101, 3819−3867(2001)
【非特許文献2】
J. M. J. FrechetらJ. Am. Chem. Soc., 120, 10990−10991(1998)
【非特許文献3】
J. Org. Chem., 63, 5675−5679 (1998)
【非特許文献4】
Chuanjin Xlaら; Organic Letters 2002, Vol. 4, No. 12, 2067−2070
【特許文献1】
特許第3074277号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な事情に鑑み、「Convergent法」によりチエニレン構造を有する新規なデンドリマーをより高効率かつ欠陥の少ない状態で比較的簡便に合成できるデンドリマーの製造方法及びそのビルディングブロックとなる化合物並びにチオフェン系化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、デンドリマーの合成反応において、チオフェン環のα位水素を活性基に置換し、その活性基をSuzukiクロスカップリング反応させて連結する反応工程を繰り返し利用することで、高効率かつ欠陥の少ない「Convergent法」によりチエニレン構造を有する新規なデンドリマーが合成できることを知見し、本発明を完成するに至った。Suzukiクロスカップリング反応を利用することにより、Grignard反応やStilleカップリング反応の問題が解決された。さらに、このような構成をとることにより、2つ以上の反応性基と1つのマスクされた反応性基を有するビルディングブロックを用意し、デンドリマーの末端部分となる基をこのビルディングブロックに反応させた後マスクされた反応性基を脱保護し更にビルディングブロックと反応させていた従来の「Convergent法」とは異なり、マスクの工程がなく、反応工程が単純であるという優れた製造方法である。また、Suzukiクロスカップリング反応において、活性基としてホウ素が置換したチオフェン系有機ホウ素化合物を、反応相手となるハロゲン等が置換した反応性化合物を含む反応系に、徐々に連続的又は断続的に添加することで、チオフェン系有機ホウ素化合物の分解を抑制し、収率が向上することを知見し、本発明を完成するに至った。この添加方法を上記に述べた「Convergent法」によるデンドリマーの製造方法に組み合わせることで、デンドリマーの合成収率をさらに高めることが可能になった。
【0013】
かかる本発明の第1の態様は、チエニレン構造を含む線状部と置換基を有してもよい3価の有機基である分岐部Yとからなる下記一般式(1)の繰り返し構造単位を有するデンドリマーをConvergent法により製造するデンドリマーの製造方法であって、末端部分を構成するチエニレン構造を有する下記化合物(a)のチオフェン環のα位水素をsuzukiクロスカップリング反応する活性基V1に変換して下記化合物(b)とする反応工程1と、線状部及び分岐部Yを有すると共に分岐部Yに前記活性基V1とsuzukiクロスカップリング反応する2つの活性基V2を有する下記化合物(c)と前記化合物(b)とをsuzukiクロスカップリング反応させて下記化合物(d)を得る反応工程2と、この生成物のチオフェン環のα位水素をsuzukiクロスカップリング反応する活性基V1に変換すると共にこれに下記化合物(c)を反応させて次世代のデンドロンを得る反応工程3と、この反応工程3を必要に応じて繰り返してデンドリマーとする工程とを具備することを特徴とするデンドリマーの製造方法にある。
【0014】
【化22】
【0015】
【化23】
【0016】
【化24】
【0017】
【化25】
【0018】
【化26】
【0019】
(式中Zは、置換基を有してもよい活性基を含まない2価の有機基又は単結合であり、R1、R2は、水素、アルキル基及びアルコキシ基から選択される。また、Yは、置換基を有してもよい3価の有機基であり、Y1は、Yと同一又はYと同一骨格を有する有機基である。Wは、置換基を有してもよい活性基を含まない1価の有機基であり、存在しなくてもよく、mは0又は1以上の整数である。活性基V1及びV2は、互いにsuzukiクロスカップリング反応する活性基から選択される。)
【0020】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記活性基V1が下記グループ1から選択され且つ前記活性基V2が下記グループ2から選択されることを特徴とするデンドリマーの製造方法にある。
【0021】
【化27】
【0022】
【化28】
【0023】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記活性基V1が下記グループ3から選択され且つ前記活性基V2が下記グループ4から選択されることを特徴とするデンドリマーの製造方法にある。
【0024】
【化29】
【0025】
【化30】
【0026】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記Suzukiクロスカップリング反応を行う際に用いる化合物のうちの一方がホウ素を含むチオフェン系有機ホウ素化合物の場合、このチオフェン系有機ホウ素化合物を、他方の化合物が含まれる反応系へ、徐々に連続的又は断続的に添加してSuzukiクロスカップリング反応させることを特徴とするデンドリマーの製造方法にある。
【0027】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記反応工程3により又は前記反応工程3を繰り返すことにより得た下記一般式(e)の化合物のチオフェン環のα位水素を前記活性基V1に変換して下記化合物(f)とし、この化合物(f)とコアとなるY2を有する下記化合物(g)とを反応させて下記一般式(2)で表される化合物とする反応工程を具備することを特徴とするデンドリマーの製造方法にある。
【0028】
【化31】
【0029】
【化32】
【0030】
【化33】
【0031】
【化34】
【0032】
(式中、Y2はr価の有機基を表し、rは1以上の整数である。)
【0033】
本発明の第6の態様は、チエニレン構造を含む繰り返し構造単位を有するデンドリマーをConvergent法により製造するデンドリマーの製造方法に用いられるビルディングブロックであり、下記一般式(I−1)で表わされることを特徴とする化合物にある。
【0034】
【化35】
【0035】
(上記一般式(I−1)中、pは1〜10の整数を表わし、R3、R4は、水素、アルキル基、アルコキシ基から選択される。pが2〜10の場合、チエニレンの繰り返し単位ごとにR3、R4が異なっていても良い。V3は下記グループ5から選択される)。
【0036】
【化36】
【0037】
本発明の第7の態様は、下記一般式(I−2)で表わされることを特徴とする化合物にある。
【0038】
【化37】
【0039】
(上記一般式(I−2)中、S1〜S3は1〜10の整数を表わし、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R5〜R10は、水素、アルキル基、アルコキシ基から選択され、チエニレンの繰り返し単位ごとにR5〜R10が異なっていても良い。V4は下記グループ6から選択される。)
【0040】
【化38】
【0041】
本発明の第8の態様は、下記一般式(I−3)で表わされることを特徴とする化合物にある。
【0042】
【化39】
【0043】
(上記一般式(I−3)中、qは1〜10の整数を表わし、qが2〜10の場合、チエニレンの繰り返し単位ごとにR11,R12が異なっていても良い。V5は下記グループ7から選択される。)
【0044】
【化40】
【0045】
本発明の第9の態様は、チオフェン系有機ホウ素化合物と反応性化合物とをSuzukiクロスカップリング反応させてチオフェン系化合物を得るチオフェン系化合物の製造方法において、前記反応性化合物が含まれる反応系に、前記チオフェン系有機ホウ素化合物を、徐々に連続的又は断続的に添加してSuzukiクロスカップリング反応させることを特徴とするチオフェン系化合物の製造方法にある。
【0046】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記チオフェン系有機ホウ素化合物が下記グループ1から選択される活性基V6を有し、且つ前記反応性化合物が下記グループ2から選択される活性基V7を有することを特徴とするチオフェン系化合物の製造方法にある。
【0047】
【化41】
【0048】
【化42】
【0049】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0050】
本発明方法により製造されるデンドリマーとは、一般的に定義されるデンドリマーの合成法であるConvergent法で製造されるデンドリマーであり、重合法で合成されるハイパーブランチポリマーを含まない概念であり、上述した一般式(1)の繰り返し構造単位、すなわちデンドリック構造単位を少なくとも2段以上繰り返した構造を有するものを全て包含する。なお、この一般式(1)の繰り返し単位を含んだ構造、すなわち、繰り返し単位を分岐状に繰り返して連結した構造を分岐構造という。
【0051】
デンドリマー及びハイパーブランチポリマーは、一般的には下記式に示すように分類され、分岐構造が規則的であるものをデンドリマー、分岐構造が規則的でないものをハイパーブランチポリマーといい、本発明により製造されるのは前者のデンドリマーであって、1つの開始点から樹木状に分岐した構造か、複数の開始点をコアとなる多官能高分子に結合して放射状に分岐した構造かは問わない。勿論、これとは異なる定義もあるが、何れにしても、本発明方法で製造されるのは、分岐構造が規則的なデンドリマーであり、樹木状分岐構造のもの、放射状分岐構造のものを包含するものであるが、勿論、一般的なConvergent法による製造工程によって分岐構造に欠陥が生じた化合物も包含するものである。
【0052】
また、一般的な定義では、完全にデンドリック構造単位が繰り返された場合を世代というが、基本的な構造が同一であるが類似するデンドリック構造単位を2段以上連結した構造も本発明のデンドリマーに含むものとする。
【0053】
なお、デンドリマー、ハイパーブランチポリマーなどの概念は、柿本雅明,化学,50巻,608頁(1995)、高分子,Vol.47,P.804(1998)等に記載されており、これらを参照することができるが、これらに記載されたものに限定されるものではない。
【0054】
【化43】
【0055】
【化44】
【0056】
本発明方法により製造されるデンドリマーにおいて、デンドリック構造単位は、上記一般式(1)に表されるようにチエニレン構造を含む線状部と置換基を有してもよい3価の有機基である分岐部Yとからなり、これを2段繰り返した構造とは、分岐部Yの結合手のそれぞれに、同一のデンドリック構造単位が結合した構造をいい、これを第1世代デンドロンという。また、第1世代デンドロンの分岐部Yの結合手に順次同一のデンドリック構造単位が結合したものを第2世代、・・・第n世代デンドロンといい、このもの自体、又はこの末端や開始点に所望の置換基を結合させたものを樹木状分岐構造のデンドリマー、また、これをサブユニットとし、同一又は非同一の複数のサブユニットを複数価の核(コア)に結合させたものを放射状分岐構造のデンドリマーという。
【0057】
ここで、一般式(e)、(f)及び(2)で表される化合物において、デンドリック構造単位を囲む括弧、すなわち、下記式(h)で示す構造は、デンドリック構造単位が任意の数だけ繰り返されて、規則的に制御された又は必ずしも完全には制御されない樹木状分岐構造が形成されていることを示す。したがって、一般式(e)、(f)及び(2)で表される化合物において分岐構造の繰り返し回数がnである場合、第n世代となる。但し、これは単なる世代の呼び方であり、このように呼ばれるものに限定されるものではない。
【0058】
【化45】
【0059】
本発明方法で製造されるデンドリマーの具体例としては、下記式で表される化合物を挙げることができる。
【0060】
【化46】
【0061】
ここで、分岐部Yは3価の基であるが、Zとの結合手でない他の結合手が、同一の原子又は原子団に存在する場合と異なった原子又は原子団に存在する場合がある。
【0062】
一方、Y1は、Yと同一又はYと同一骨格を有する有機基であるが、「Yと同一又はYと同一骨格を有する有機基」とは、少なくともZとの結合側にYと同一又は同一骨格の構造が存在することを示し、例えば、Zと結合するYが下記式(A)で示される場合には、Y1としては下記(B)や(C)や(D)が例示できる。
【0063】
【化47】
【0064】
(mは1〜5の整数であり、Qは任意の置換基を示す。)
【0065】
また、本発明方法により製造されるデンドリマーは、分岐点の数の制限はない。
【0066】
本発明は、一般式(1)に示すように、そのデンドリック構造単位がチエニレン構造を含む線状部と分岐部Yからなり、線状部は少なくとも1つのチエニレン構造を含む2価の有機基であるデンドリマーであって、下記反応式(I)で示される反応工程からなり、必要に応じて反応工程3を繰り返すことにより所望の世代のデンドロンを合成可能な、当該デンドリマーを製造する方法に関する。なお、式中V1及びV2はSuzukiクロスカップリング反応する活性基、Zは、置換基を有してもよい活性基を含まない2価の有機基又は単結合であり、R1、R2は、水素、アルキル基及びアルコキシ基から選択される。ここで、この明細書において、特に限定しない場合には、アルキル基及びアルコキシ基等は炭素数が1〜20のものを示すものとする。また、Yは、置換基を有してもよい3価の有機基であり、Y1は、Yと同一又はYと同一骨格を有する有機基、Wは置換基を有してもよい活性基を含まない1価の有機基であり、存在しなくてもよく、mは0又は1以上の整数である。
【0067】
【化48】
【0068】
上記反応式(I)で表される反応工程は、チオフェン環のα位水素を活性基V1に置換する反応工程1、V1とV2をSuzukiクロスカップリング反応で結合させて世代を成長させる反応工程2、さらに世代を成長させるために反応工程2の生成物(d)のチオフェン環のα位水素を活性基V1に置換すると共にこれに化合物(c)を反応させる反応工程3と、必要に応じて反応工程3を繰り返す工程からなる。なお、Wは製造されるデンドリマーの末端基となる。
【0069】
反応式(I)において、反応工程2で使用するデンドリマーのビルディングブロックとなる化合物(c)としては、上記一般式(I−1)又は(I−2)で示される化合物が好適に利用できる。一般式(I−1)及び(I−2)で示される化合物の合成方法に特に制限はないが、対応するチオフェン誘導体とベンゼン誘導体のカップリング反応や活性基となるハロゲン又はホウ素系置換基の導入反応を組み合わせることで合成することができる。カップリング反応には、Grignard反応やStilleカップリング反応も利用できるが、本発明の製造方法と同様にSuzukiクロスカップリング反応が好適に利用できる。
【0070】
また、反応式(I)において、反応工程1の原料である化合物(a)の合成法に特に制限はないが、例えば、下記反応式(II)に示される反応工程、すなわち、V1とV2の反応により末端基となるWをY1に結合させる反応工程で、化合物(a)を得ることができる。
【0071】
【化49】
【0072】
なお、末端部にホール伝導材料であるトリアリールアミン骨格を導入する場合、化合物(a)としては、上記一般式(I−3)で示される化合物が好適に利用できる。その合成方法に制限はないが、前記式(II)において、Y1をベンゼン核とし、V2がハロゲンで、V1−Wが下記式で表わされる2級アリールアミン化合物との縮合反応が好適に利用できる。
【0073】
【化50】
【0074】
この反応としては、銅と塩基触媒を用いるUllmann縮合(Chem.Lett.,1145,(1989)、Synth.Commu383,(1987)等、参照)や、パラジウム触媒とトリ−t−ブチルホスフィン配位子の組合せ及び塩基触媒を用いる東ソー法(特開平10−310561号公報)が利用でき、温和な条件下で行なえ収率や選択性が高いことから、後者の方法が好適である。この反応の利用により、例えば下記式で表わされるような反応様式により、トリアリールアミン骨格が構築できる。
【0075】
【化51】
【0076】
また、反応式(II)の化合物(m)としては、前記一般式(I−1)で示される化合物が好適に利用できる。
【0077】
反応式(I)及び(II)におけるV1及びV2の反応は、いずれもSuzukiクロスカップリング反応を使用するが、Suzukiクロスカップリング反応は、官能基に対する制約が少なく、反応の選択性も高くホモカップリングなどの副反応が少ないことが知られており、特に芳香族化合物やビニル化合物誘導体のクロスカップリング反応に広く利用されているため(鈴木ら,有機合成化学協会誌,46,848,(1988)、鈴木ら,Chem.Rev.,95,2457(1995)、鈴木,J. Organomet. Chem.,576,147(1999)参照)、本発明の製造方法によりデンドリマーは幅広い骨格の選択が可能である。
【0078】
上記反応式(I)及び(II)においてV1及びV2はSuzukiクロスカップリング反応により互いに反応する基である。なお、この置換基V1及びV2の組合せは、各反応工程において他の反応工程からそれぞれ独立に選択することができる。以下に好適な組合せを例示する。
【0079】
V1及びV2の第1の組合せとしては、V1が上記グループ1から選択され且つV2が上記グループ2から選択される組合せがある。反応収率や選択性の高さ、さらに汎用性の高さなどから、V1がB(OH)2またはB(OR)2で表わされるホウ酸エステル型の置換基で、V2がBrまたはIである場合の組合せが好適に利用できる。この場合の上記反応式におけるYは置換基を有してもよい3価の有機基であり、例えば、V2基に結合する部分がアリル、アルケニル、アルキニル、ベンジル、アリール、アルキルである構造や複素環基を含む構造を有する3価の基を挙げることができる。また、当該デンドリマーの末端基となるWは、置換基を有してもよい活性基を含まない1価の有機基で、存在しなくてもよいが、ここで「活性基を含まない」とは、Suzukiクロスカップリング反応に関与する基を含まないことを意味する。Wとしては例えば、置換または非置換のアリール、アルケニル、アルキル基等を挙げることができる。
【0080】
第2の組合せとしては、V1が上記グループ3から選択され且つV2が上記グループ4から選択される組合せがある。この場合の上記反応式におけるYは置換基を有してもよい3価の有機基であり、例えば、V2基に結合する部分がアリール、アルケニル、アルキルである構造や複素環基を含む構造を有する3価の基を挙げることができる。また、当該デンドリマーの末端基となるWは、置換基を有してもよい活性基を含まない1価の有機基で、存在しなくてもよいが、ここで「活性基を含まない」とは、Suzukiクロスカップリング反応に関与する基を含まないことを意味する。Wとしては例えば、置換または非置換のアリル、アルケニル、アルキニル、ベンジル、アリール、アルキル基等を挙げることができる。
【0081】
なお、上記第1又は2の組合せにおいて、Yは3価の有機基、Y1はYと同一又はYと同一骨格を有する有機基であり、また、Zは置換基を有してもよい活性基を含まない2価の有機基又は単結合である。ここで「活性基を含まない」とは、Suzukiクロスカップリング反応に関与する基を含まないことを意味する。なお、前記第1の組合せの場合、ハロゲン化による活性基導入の反応工程が不要であり、目的とする活性基導入点以外に、ハロゲン化試剤に対する活性を有する骨格あるいは置換基が存在する場合にも、好適に利用できる。
【0082】
Y及びX(Xは−チオフェン環−Z−を表す)の好ましい例を以下に示す。
【0083】
【化52】
【0084】
【化53】
【0085】
なお、Y及びZが、チエニレンと少なくとも部分的に共役しているものとすると、製造されるデンドリマーは半導体性となる。ここでいう少なくとも部分的に共役するとは、完全共役系だけではなく、π電子系が全て非局在化していない共役系も含むことを意味し、例えばベンゼン核のメタ配位が含まれる共役系の場合も含まれる。
【0086】
以下にチオフェン環のα位水素を活性基V1に変換する反応、及び活性基V1とV2の反応の条件の一例について述べる。
【0087】
[チオフェン環のα位水素を活性基V1に変換する反応]
反応工程1および反応工程3において、チオフェン環のα位水素を上記グループ1から選択される活性基V1に変換する反応の反応条件の一例について記述する。
【0088】
V1がB(OR)2又は下記式で表わされるホウ酸エステルである場合には、例えば、n−ブチルリチウムに代表されるアルキルリチウムやリチウムジイソプロピルアミド等を作用させチオフェン環のα位水素を引き抜きカルボアニオンとした後、対応するアルコキシボラン、すなわちトリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリイソプロポキシボラン、トリブトキシボラン又は2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランを求電子付加させる。
【0089】
【化54】
【0090】
溶媒としてはテトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、トルエン等の有機溶媒が好適に利用できる。反応温度は−100〜30℃が好ましく、より好ましくは−78〜0℃である。反応時間は、10分〜3時間が好ましく、より好ましくは30分〜2時間である。
【0091】
V1がB(OH)2である場合には、上記の方法で得られたホウ酸エステル類に水を添加して加水分解する。反応溶媒は特に限定されないが、製造上、上記の方法でホウ酸エステルを合成した反応混合物に、直接水を加えて加水分解することが簡便である。反応温度は0〜50℃が好ましく、反応時間は1時間〜3時間が好ましい。
【0092】
反応工程1および反応工程3において、チオフェン環のα位水素を上記グループ3から選択される活性基V1に変換する反応の反応条件の一例について記述する。
【0093】
V1がCl、BrまたはIのいずれの場合においても、対応するハロゲン化試薬を作用させ、チオフェン環のα位水素をハロゲン置換する。ハロゲン化試薬としては、例えば、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミドやN−ヨードスクシンイミド等が挙げられる。反応溶媒としてはテトラヒドロフラン、n−ヘキサン、ジエチルエーテル、ベンゼン、四塩化炭素、二硫化炭素、ジメチルホルムアミド、酢酸等の有機溶媒が好適に利用できる。反応温度は、−20〜80℃が好ましく、反応時間は1時間〜24時間が好ましい。
【0094】
[活性基V1とV2とのSuzukiクロスカップリング反応]
反応工程2および3において、Suzukiクロスカップリング反応により、V1とV2を反応させる反応条件の一例について記述する。
【0095】
Suzukiクロスカップリング反応においては、反応に用いる触媒としては、種々のパラジウム触媒と塩基触媒の組合せが利用できる。
【0096】
パラジウム触媒としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、パラジウム黒、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(トリ−o−トシルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジアセタート、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウムジクロリド、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウムジクロリド等が挙げられる。また、これらのパラジウム触媒に配位子となる化合物を併用することが有効な場合もあり、配位子となる化合物としては、トリフェニルホスフィン、1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、ジフェニルホスフィノベンゼン−3−スルホン酸ナトリウム塩、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。またパラジウム触媒の代わりにニッケル触媒の[1,1′−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ニッケルジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィノ)ニッケルジクロリド、塩化ニッケル・六水和物を使用することもできる。
【0097】
塩基触媒としては、炭酸ナトリウム、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド類、t−ブトキシカリウム、水酸化バリウム、トリエチルアミン、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0098】
また、Suzukiクロスカップリング反応の場合、溶媒としては種々の有機溶媒とその混合溶媒、それらの有機溶媒と水との混合溶媒が一般的に用いられ、有機溶媒としてはジメチルホルムアミド、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジメチルアセトアミド、キシレン、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、アセトン、2−ブタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、2、4−ジメチル−3−ペンタノン、ジオキソラン、N−メチルピロリドン、ジエトキシエタン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、メシチレン、エチルベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、テトラメチルウレア等が好適に利用できる。なお反応温度は、25〜150℃が好ましく、より好ましくは25〜80℃であり、反応時間は、30分〜24時間が好ましく、より好ましくは1〜12時間である。
【0099】
なお、反応式(II)に示される反応工程、すなわち、V1とV2の反応により末端基となるWをY1に結合させて、反応工程1の原料である化合物(a)を得る反応工程においても、反応条件例は上述の反応工程2及び3と同様である。
【0100】
また、反応工程3により又は反応工程3を繰り返すことで所望の世代数まで成長させた後、核(コア)に結合させることもできる。これにより、一般式(2)で示されるデンドリマーを得ることができる。なお、Y2はr価の有機基(rは1以上の整数)であり、化合物(2)におけるrは中心構造からの分岐数を表す次数である。その他の記号は上述の通りである。ここで、rが2以上の場合は放射状分岐構造のデンドリマーとなる。rが1の場合には、樹木状分岐構造のデンドリマーとなるが、この場合でもY2をコアとよぶものとする。
【0101】
具体的には、下記反応式(III)に示すように、反応工程3により又は反応工程3を繰り返すことにより得た一般式(e)で示される化合物のチオフェン環のα位水素を活性基V1に変換して化合物(f)とし、この化合物(f)とコア(核)となるY2を有する化合物(g)とを反応させる。なお、この反応においても、チオフェン環のα位水素を活性基V1に変換する反応やV1及びV2の反応は、上述の反応工程1〜3と同様である。
【0102】
【化55】
【0103】
この反応により、あらゆる世代数のデンドリマーも、同様の反応工程により中心構造分子に結合させることができる。だだし、デンドリック構造単位の密集性と合成の容易性からデンドリマーの世代数は1〜10が好ましく、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜7、最も好ましいのは2〜5であり、また、中心構造からの分岐数は1〜6が好ましく、さらに好ましくは1〜4である。
【0104】
また、所望の世代数まで成長させる途中または核に結合させた後、末端基Wを化学修飾することで、デンドリマーの最外殻に新たな構造を導入することもできる。
【0105】
さらに、上記した工程毎に精製処理を行なうことで、欠陥の少ない高純度のデンドリマーが合成できる。精製方法は特に限定されないが、再結晶、晶析、昇華精製、カラム精製等が例示される。
【0106】
本発明の製造方法によれば、末端部分を構成する化合物(a)およびデンドリック構造の単量体単位となる化合物(c)および中心構造となる化合物(g)を選択することで、種々のデンドリマーが製造できる。さらに、反応工程毎に精製処理を行なうことが容易な「Convergent法」を利用しているため、欠陥の少ない高純度のデンドリマーも製造可能である。
【0107】
以上説明したデンドリマーの製造方法において適用した、チオフェン系有機ホウ素化合物と反応性化合物とのSuzukiクロスカップリング反応においては、チオフェン系有機ホウ素化合物が反応系内で加水分解されやすいこと、及び、チオフェン系有機ホウ素化合物を反応性化合物が含まれる反応系中に徐々に連続的又は断続的に添加することで、分解を抑制しSuzukiクロスカップリング反応を優先的に進行させることができることを知見した。すなわち、チオフェン系有機ホウ素化合物と反応性化合物とをSuzukiクロスカップリング反応させてチオフェン系化合物を得る際に、反応性化合物が含まれる反応系に、チオフェン系有機ホウ素化合物を、徐々に連続的又は断続的に添加してSuzukiクロスカップリング反応させることにより、高収率でチオフェン系化合物を得ることができる。ここで、チオフェン系化合物とは、チオフェン環を有する化合物である。
【0108】
チオフェン系有機ホウ素化合物としては、例えば、グループ1から選択される活性基V6を有するチオフェン系有機化合物、反応性化合物としてはグループ2から選択される活性基V7を有する化合物が挙げられる。
【0109】
以下この反応について詳述する。
【0110】
Suzukiクロスカップリング反応において、必要な原料の全量を仕込んで反応を開始すると、パラジウム等の金属触媒と塩基触媒による酸化付加−トランスメタル化−還元脱離という目的の反応サイクルと、チオフェン系有機ホウ素化合物の加水分解反応が競争的に進行すると考えられる。しかしながら、チオフェン系有機ホウ素化合物を徐々に反応系中に添加する、例えば滴下すると、添加されたものから速やかに目的の反応が進行するため、加水分解が抑制されると考えられ、それにより収率を向上させることができる。この滴下等、徐々にする添加は、連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。この場合、チオフェン系有機ホウ素化合物を除く全ての原料を全量仕込んだ反応系中にチオフェン系有機ホウ素化合物を徐々に連続的又は断続的に添加すればよい。
【0111】
また、複数の反応点を持つ化合物とチオフェン系有機ホウ素化合物とをカップリング反応させる場合、立体障害や電子的な影響によって反応速度が低下し、余剰の塩基により加水分解されやすくなる場合もあるので、必要に応じて塩基触媒も徐々に連続的又は断続的に添加してもよい。例えば、デンドロンの世代成長反応の場合は、分岐部を有する化合物に反応点が隣接して2点存在するため、まず、1点分に相当する塩基触媒の存在下、チオフェン系有機ホウ素化合物を徐々に連続的又は断続的に添加した後、もう1点分の塩基触媒を加えてチオフェン系有機ホウ素化合物を徐々に連続的又は断続的に添加する方法や、塩基触媒と有機ホウ素化合物を同時に連続的に添加する方法等が挙げられる。
【0112】
なお、チオフェン系有機ホウ素化合物以外の分解しやすい化合物についても、上記チオフェン系有機ホウ素化合物と同様に、徐々に連続的又は断続的に反応系に添加するようにすると、収率を向上させることができる。
【0113】
以下に、反応条件の一例について述べる。
【0114】
チオフェン系有機ホウ素化合物が固体の場合は、溶媒に溶かし溶液とすると連続的に添加し易く、溶媒へ溶解し難い場合は固体又は液体のまま添加すればよい。溶媒としては前記の反応溶媒が好適に利用できる。また、反応に影響がなければチオフェン系有機ホウ素化合物を調製した反応液をそのまま使用してもよい。連続的に添加する場合の添加速度は特に制限はないが、15分〜5時間が好ましく、より好ましくは30分〜2時間である。断続的に添加する場合の、1回の添加量と添加間隔に特に制限はないが、理論量を5〜50に分割した量を1回の添加量として、理論量の全量を15分〜5時間、より好ましくは30分〜2時間で断続的に添加することが好ましい。塩基触媒を徐々に連続的又は断続的に添加する場合も同様であり、添加のタイミングはチオフェン系有機ホウ素化合物を同時か、それよりも先に添加することが好ましい。また、連続的添加法と断続的添加法を組み合わせてもよく、例えば所定量の半分となる塩基触媒の存在下に、同様に所定量の半分となるチオフェン系有機ホウ素化合物を連続的に添加して反応させた後、残りの半分の塩基触媒を添加し、そこに残り半分のチオフェン系有機ホウ素化合物を連続的に添加する方法等が挙げられる。添加時の温度は前記の反応温度と同様である。
【0115】
この方法を本発明のデンドリマーの製造方法に適用した場合は、活性基V1又はV2にホウ素が置換している有機ホウ素化合物を、もう一方の活性基を有する化合物、塩基触媒、反応溶媒および金属触媒を含む反応系へ、徐々に連続的又は断続的に添加すればよい。例えば、活性基V1がグループ1から選択される化合物を、活性基V2がグループ2から選択される化合物が含まれる反応系へ、徐々に連続的又は断続的に添加してSuzukiクロスカップリング反応させるか、又は、活性基V2がグループ4から選択される化合物を、活性基V1がグループ3から選択される化合物が含まれる反応系へ、徐々に連続的又は断続的に添加してSuzukiクロスカップリング反応させる。
【0116】
このように、チオフェン系有機ホウ素化合物を徐々に連続的又は断続的に添加する方法を、本発明のデンドリマーの製造方法に適用すると、高収率で目的とするデンドリマーを得ることができる。
【0117】
【発明の実施の形態】
本発明のデンドリマーを以下に示す実施例に基づいて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、測定に用いた装置等は以下の通りである。
【0118】
1H−NMR:JEOL製JNM−AL400型FT−NMR(400MHz)、溶媒:CDCl3又はDMSO−d6、室温測定、ケミカルシフトの基準(0ppm)はテトラメチルシラン(TMS)とした。
【0119】
GPC:東ソー(株)製HLC−8220GPC、カラム:TSKgelSuperHZM−M、溶離液:THF、検出器:UV254nm、測定値(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn)は標準ポリスチレン換算による値である。
【0120】
(合成実施例1) 第3世代デンドリマーの合成
(合成実施例1−1) デンドリック構造の単量体単位の化合物(c)となる、下記式で示される5−(3,5−ジブロモフェニル)−2,2′−ビチオフェンの合成
【0121】
【化56】
【0122】
窒素雰囲気下、2,2′−ビチオフェン4.6gを脱水テトラヒドロフランに溶解し、ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。冷却後、1.6M−n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液18mlを滴下し,そのまま1時間反応させた。続いてトリメトキシボラン3.4gを滴下し、そのまま1時間反応させた。反応終了後、水を添加し加水分解させた後、冷却浴をはずして室温へ温度を上げた。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液及びジエチルエーテルを添加し、撹拌、静置してから有機層を分離した。さらに水層をテトラヒドロフラン/ジエチルエーテル(1/2容量比)混合溶媒で抽出し、先の有機層をあわせた。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。さらに硫酸ナトリウムで乾燥処理を行なった後、溶媒を減圧留去して粗製物を得た。粗製物をテトラヒドロフラン/n−ヘキサンで再結晶し、下記式で表される中間体化合物2,2′−ビチオフェン−5−ボロン酸4.3g(淡青白色固体)を収率73%で得た。
【0123】
【化57】
【0124】
その構造は1H−NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
【0125】
1H NMR (DMSO−d6) δ8.30 (s, BOH, 2H), δ7.60 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.51 (dd, J = 5.2Hz, J = 1.2 Hz, チオフェン環, 1H), δ7.34−7.32 (m, チオフェン環, 2H), δ7.10 (dd, J = 5.2Hz, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H).
【0126】
次に,窒素雰囲気下、得られた中間体化合物2,2′−ビチオフェン−5−ボロン酸4.0g及び1,3,5−トリブロモベンゼン9.0gをテトラヒドロフランに溶解した。この溶液に酢酸パラジウム0.1g、トリフェニルホスフィン0.30gを加え、さらに水34mlに溶解した炭酸ナトリウム4.4gを添加し80℃の油浴中で6時間加熱撹拌しながら反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水30mlを添加した。得られた反応混合物を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物4.6g(淡黄色固体)を収率61%で得た。その構造は1H−NMRスペクトルにて、確認した。測定データを以下に示す。
【0127】
1H NMR (CDCl3) δ7.65 (d, J = 1.6Hz, ベンゼン環, 2H), δ7.55 (t, J = 1.6Hz, ベンゼン環, 1H), δ7.26−7.25 (チオフェン環, 1H), δ7.23 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.22 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.15 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.05 (dd, J = 5.2Hz, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H).
【0128】
(合成実施例1−2) デンドリック構造の末端部分を構成する化合物(a)となる、下記式で示される5−[2,2′]ビチオフェニル−5−イル−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミンの合成
【0129】
【化58】
【0130】
〈触媒の調製〉
酢酸パラジウム10mgにキシレン4.5mlを加え、窒素雰囲気下、トリ−t−ブチルホスフィン36mgを添加後、80℃で30分間加熱して、触媒溶液を得た。
【0131】
〈5−[2,2′]ビチオフェニル−5−イル−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミンの合成〉
合成実施例1−1で得られた5−(3,5−ジブロモフェニル)−2, 2′−ビチオフェン1.80g、ジフェニルアミン1.60gおよびt−ブトキシカリウム1.21gにキシレン4.5mlを加え、窒素雰囲気下、80℃で先に調製した触媒溶液を滴下した。滴下終了後、120℃に温度を上げ、そのまま18時間反応させた。反応後、室温まで冷却して水10mlを添加した。有機層を分離し、水層は塩化メチレンで抽出して、先の有機層と合わせた。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物2.20 g(淡黄色固体)を収率85%で得た。その構造は1H−NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
【0132】
1H NMR (CDCl3) δ7.22 (t, J = 7.8Hz, ベンゼン環, 8H), δ7.16 (dd, J = 1.2Hz, J = 5.2Hz, チオフェン環, 1H), δ7.11−7.09 (m, チオフェン環, 1H および ベンゼン環, 8H), δ7.02−6.96 (m, ベンゼン環, 4H および チオフェン環, 3H), δ6.90 (d, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 2H), δ6.73 (t, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 1H)
【0133】
(合成実施例1−3) デンドリック構造の末端部分を構成する化合物(a)のチオフェン環のα水素を活性基B(OH)2に変換して化合物(b)とする、下記式で示される5−(5′−ボロン酸−[2,2′]ビチオフェニル−5−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミンの合成
【0134】
【化59】
【0135】
窒素雰囲気下、合成実施例1−2で得られた5−[2,2′]ビチオフェニル−5−イル−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン2.0gを脱水テトラヒドロフランに溶解し,ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。冷却後、10wt%−リチウムジイソプロピルアミド/n−ヘキサン懸濁液4.5g(Aldrich社製)を滴下し,そのまま1時間反応させた。続いてトリメトキシボラン0.5gを滴下し、そのまま1時間反応させた。反応終了後、水を添加し加水分解させた後、冷却浴をはずして室温へ温度を上げた。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液及びジエチルエーテルを添加し、撹拌、静置してから有機層を分離した。さらに水層をテトラヒドロフラン/ジエチルエーテル(1/2容量比)混合溶媒で抽出し、先の有機層をあわせた。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。さらに硫酸ナトリウムで乾燥処理を行なった後、溶媒を減圧留去して粗製物を得た。粗製物をテトラヒドロフラン/n−ヘキサンで再結晶し、目的物1.5 g(淡黄色固体)を収率70%で得た。その構造は1H−NMRスペクトル(測定溶媒:DMSO−d6)にて、8.3ppm付近にボロン酸のOHプロトンが観測されたこと、およびベンゼン環由来のプロトンとチオフェン環由来のプロトンの積分比が目的構造と一致したことより確認した。
【0136】
(合成実施例1−4) 前記化合物(b)と(c)のSuzukiクロスカップリング反応による、下記式(11)で示される第1世代デンドリマーの合成
【0137】
【化60】
【0138】
〈連続的又は断続的添加法を利用しないSuzukiカップリング反応〉
合成実施例1−3で得られた5−(5′−ボロン酸−[2,2′]ビチオフェニル−5−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン1.30g、合成実施例1−1で得られた5−(3,5−ジブロモフェニル)−2, 2′−ビチオフェン0.40g、パラジウム酢酸13mg、トリフェニルホスフィン46mgおよび炭酸ナトリウム0.22gに、窒素雰囲気下、THF10mlと水2mlを加え、還流下で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水20mlを添加した。得られた反応混合物を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物0.84g(淡黄色固体)を収率60%で得た。その構造は1H−NMRスペクトル(測定溶媒: CDCl3)にて、6.74ppmに観測される窒素原子が2つ隣接したベンゼン環プロトンHaを基準(2H分。式(11)参照。以下、その他の世代についてもHaは窒素原子が2つ隣接したベンゼン核プロトンを示す)とし、ベンゼン環由来のプロトンおよびチオフェン環由来のプロトンの積分比が目的構造と一致したことより確認した。測定データを以下に示す。GPC測定値は、重量平均分子量(Mw)=1265、数平均分子量(Mn)=1241、分子量分布(Mw/Mn)=1.019であり、目的物が高純度、単分散であることを確認した。
【0139】
1H NMR (CDCl3) δ7.66 (d, J = 1.2Hz, ベンゼン環, 2H), δ7.65 (t, J = 1.2Hz, ベンゼン環, 1H), δ7.32 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.30 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 2H), δ7.25−7.22 (m,ベンゼン環, 16H および チオフェン環, 2H), δ7.18 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.13−7.10 (m, ベンゼン環, 16H および チオフェン環, 2H), 7.08 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 2H), 7.05 (dd, J = 5.2Hz, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), 7.02−6.98 (m, ベンゼン環, 8H および チオフェン環, 2H), 6.92 (d, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 4H), 6.74 (t, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 2H).
【0140】
〈有機ホウ素化合物の連続的/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法によるSuzukiカップリング反応〉
合成実施例1−1で得られた5−(3,5−ジブロモフェニル)−2, 2′−ビチオフェン0.40g、パラジウム酢酸13mg、トリフェニルホスフィン46mgおよび炭酸ナトリウム0.11gに、窒素雰囲気下、THF4mlと水1mlを加え、80℃の油浴で加熱した。ここに合成実施例1−3で得られた5−(5′−ボロン酸−[2,2′]ビチオフェニル−5−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン0.65gをテトラヒドロフラン3mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、さらに還流下で 0.5時間反応させた。次いで水1mlに溶解した炭酸ナトリウム0.11gを加えた後、合成実施例1−3で得られた5−(5′−ボロン酸−[2,2′]ビチオフェニル−5−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン0.65gをテトラヒドロフラン3mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、さらに還流下で5.5時間反応させた。
【0141】
反応終了後、室温まで冷却し、水20mlを添加した。得られた反応混合物を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物1.14g(淡黄色固体)を収率82%で得た。連続的および断続的添加法により収率が向上することを確認した。その構造は1H−NMRスペクトルが前記〈連続的又は断続的添加法を利用しないSuzukiカップリング反応〉と一致したこと、およびGPC測定値がほぼ同一であったことにより確認した。
【0142】
(合成実施例1−5) 下記式で示される第2世代デンドリマーの合成
【0143】
【化61】
【0144】
〈第1世代デンドリマーのチオフェン環のα水素を活性基B(OH)2に変換する反応により下記式(12)で示される第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体の合成〉
【0145】
【化62】
【0146】
窒素雰囲気下、合成実施例1−4で得られた第1世代デンドリマー1.4gを脱水テトラヒドロフランに溶解し、ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。冷却後、10wt%−リチウムジイソプロピルアミド/n−ヘキサン懸濁液2.1g(Aldrich社製)を滴下し、そのまま1時間反応させた。続いてトリメトキシボラン0.42gを滴下し、そのまま1時間反応させた。反応終了後、水を添加し加水分解させた後、冷却浴をはずして室温へ温度を上げた。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液及びジエチルエーテルを添加し、撹拌、静置してから有機層を分離した。さらに水層をテトラヒドロフラン/ジエチルエーテル(1/2容量比)混合溶媒で抽出し、先の有機層をあわせた。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。さらに硫酸ナトリウムで乾燥処理を行なった後、溶媒を減圧留去して粗製物を得た。粗製物をテトラヒドロフラン/n−ヘキサンで再結晶し、目的物である第1世代のボロン酸誘導体(以下、「G1−B(OH)2」と略す)0.9g(淡黄色固体)を収率63%で得た。その構造は1H−NMRスペクトル(測定溶媒:DMSO−d6)にて、8.3ppm付近にボロン酸のOHプロトンが観測されたこと、およびベンゼン環由来のプロトンとチオフェン環由来のプロトンの積分比が目的構造と一致したことより確認した。
【0147】
〈連続的又は断続的添加法を利用しないSuzukiカップリング反応〉
G1−B(OH)20.9g、合成実施例1−1で得られた5−(3,5−ジブロモフェニル)−2, 2′−ビチオフェン0.12g、パラジウム酢酸4mg、トリフェニルホスフィン14mgおよび炭酸ナトリウム66mgに、窒素雰囲気下、THF3mlと水0.6mlを加え、還流下で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水3mlを添加した。得られた反応混合物を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物である第2世代デンドリマー0.47g(淡黄色固体)を収率52%で得た。その構造は1H−NMRスペクトル(測定溶媒: CDCl3)にて、6.7ppm付近に観測される窒素原子が2つ隣接したベンゼン環プロトンHaを基準(4H分)とし、6.9−7.4ppm付近および7.6−7.8ppm付近に観測される、ベンゼン環由来のプロトンおよびチオフェン環由来のプロトンの積分比が目的構造と一致したことより確認した。GPC測定値は、重量平均分子量(Mw)=3514、数平均分子量(Mn)=3385、分子量分布(Mw/Mn)=1.038であり、目的物が高純度、単分散であることを確認した。
【0148】
〈有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法によるSuzukiクロスカップリング反応〉
合成実施例1−1で得られた5−(3,5−ジブロモフェニル)−2, 2′−ビチオフェン0.12g、パラジウム酢酸4mg、トリフェニルホスフィン14mgおよび炭酸ナトリウム33mgに、窒素雰囲気下、THF1.6mlと水0.3mlを加え、80℃の油浴で加熱した。G1−B(OH)20.45gをテトラヒドロフラン0.7mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、さらに還流下で0.5時間反応させた。次いで水0.3mlに溶解した炭酸ナトリウム33mgを加えた後、G1−B(OH)20.45gをテトラヒドロフラン0.7mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、さらに還流下で5.5時間反応させた。
【0149】
反応終了後、室温まで冷却し、水3mlを添加した。得られた反応混合物を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物である第2世代デンドリマー0.64g(淡黄色固体)を収率71%で得た。連続的および断続的添加法により収率が向上することを確認した。その構造は1H−NMRスペクトルが、前記〈連続的又は断続的添加法を利用しないSuzukiカップリング反応〉と一致したこと、およびGPC測定値がほぼ同一であったことにより確認した。
【0150】
(合成実施例1−6) 下記式で示される第3世代デンドリマーの合成
【0151】
【化63】
【0152】
合成実施例1−5で得られた第2世代デンドリマーのチオフェン環のα水素を活性基B(OH)2に変換する反応により第2世代デンドリマーのボロン酸誘導体を合成し、次いで合成実施例1−1で得られた5−(3,5−ジブロモフェニル)−2,2′−ビチオフェンとSuzukiクロスカップリング反応を行い、第3世代デンドリマーを合成した。なお、実施例1−5の条件で、第1世代デンドリマーの代わりに第2世代デンドリマーを用いる以外は全て同じ条件で行なった。得られた物質の構造は1H−NMRスペクトル(測定溶媒: CDCl3)にて、6.7ppm付近に観測される窒素原子が2つ隣接したベンゼン環プロトンHaを基準(8H分)とし、6.9−7.4ppm付近および7.6−7.8ppm付近に観測される、ベンゼン環由来のプロトンおよびチオフェン環由来のプロトンの積分比が目的構造と一致したことより確認した。GPC測定値は、重量平均分子量(Mw)=7890、数平均分子量(Mn)=7610、分子量分布(Mw/Mn)=1.037であり、目的物が高純度、単分散であることを確認した。
【0153】
[合成実施例2] 下記式で表わされる第1世代3分岐デンドリマー(第1世代デンドリマーのベンゼン核コアへの結合)。
【0154】
【化64】
【0155】
〈連続的又は断続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉
合成実施例(1−5)の〈第1世代デンドリマーのチオフェン環のα水素を活性基B(OH)2に変換する反応〉により得られた式(12)で表わされる第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体G1−B(OH)21.03g、1,3,5−トリブロモベンゼン68mg、パラジウム酢酸15mg、トリフェニルホスフィン51mgおよび炭酸ナトリウム95mgに、窒素雰囲気下、THF6mlと水1mlを加え、還流下で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水3mlを添加した。得られた反応混合物をクロロホルムで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、さらにクロロホルムで再結晶し、目的物である第1世代3分岐デンドリマー0.36g(淡黄色固体)を収率39%で得た。その構造は1H−NMRスペクトル(測定溶媒: CDCl3)にて、6.7ppm付近に観測される窒素原子が2つ隣接したベンゼン環プロトンHaを基準(6H分)とし、6.9−7.2ppm付近および7.4−7.5ppm付近に観測される、ベンゼン環由来のプロトンおよびチオフェン環由来のプロトンの積分比が目的構造と一致したことより確認した。測定データを以下に示す。GPC測定値は、重量平均分子量(Mw)=5017、数平均分子量(Mn)=4667、分子量分布(Mw/Mn)=1.073であり、目的物が高純度、単分散であることを確認した。
【0156】
1H NMR (CDCl3) 7.48 (s, ベンゼン環, 3H), 7.46 (s, ベンゼン環, 6H), 7.43 (s, ベンゼン環, 3H), 7.22−7.18 (m, ベンゼン環およびチオフェン環, 57H),7.10−7.08 (m, ベンゼン環およびチオフェン環, 60H), 6.99−6.94 (m, ベンゼン環およびチオフェン環, 33H), 6.90 (d, J = 0.8Hz, ベンゼン環, 12H), 6.87(d, J = 3.2Hz, チオフェン環, 6H), 6.73 (t, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 6H).
【0157】
〈有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法によるSuzukiクロスカップリング反応〉
1,3,5−トリブロモベンゼン68mg、パラジウム酢酸15mg、トリフェニルホスフィン51mgおよび炭酸ナトリウム32mgに、窒素雰囲気下、THF1.5mlと水0.4mlを加え、80℃の油浴で加熱した。ここに合成実施例(1−5)の〈第1世代デンドリマーのチオフェン環のα水素を活性基B(OH)2に変換する反応〉により得られた式(12)で表わされる第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体G1−B(OH)20.34gをテトラヒドロフラン1.5mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、さらに還流下で0.5時間反応させた。次いで水0.3mlに溶解した炭酸ナトリウム32mgを加えた後、G1−B(OH)20.34gをテトラヒドロフラン1.5mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、さらに還流下で0.5時間反応させた。次いで水0.3mlに溶解した炭酸ナトリウム32mgを加えた後、G1−B(OH)20.34gをテトラヒドロフラン1.5mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、さらに還流下で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水3mlを添加した。得られた反応混合物をクロロホルムで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、さらにクロロホルムで再結晶し、目的物である第1世代3分岐デンドリマー0.48g(淡黄色固体)を収率52%で得た。連続的および断続的添加法により収率が向上することを確認した。その構造は、前記〈連続的又は断続的添加法を利用しないSuzukiカップリング反応〉と1H NMRスペクトルが一致し、GPC分析値がほぼ同一であったことにより確認した。
【0158】
(合成実施例3)第1世代3分岐デンドリマーの合成
(合成実施例3−1)デンドリック構造の単量体単位の化合物(c)となる、下記式で示される3,5−ビス[2−(5−ブロモチエニル)]−2−チエニルベンゼン、および1,3,5−トリス[2−(5−ブロモチエニル)]ベンゼンの合成
【0159】
【化65】
【0160】
〈有機ホウ素化合物の連続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉
窒素雰囲気下、チオフェン14gの脱水テトラヒドロフラン100mlに溶解し、ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。−70℃以下に冷却後、1.6M−n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液100mlを40分間で滴下した。さらに1時間反応させた後、トリメトキシボラン20gを10分間かけて滴下した後、冷却浴を外してゆっくりと室温まで昇温し、反応混合物Aを得た。ここに、1,3,5−トリブロモベンゼン13g、酢酸パラジウム0.8g、トリフェニルホスフィン2.9g、及び炭酸ナトリウム8.7gをあらかじめ脱気および窒素置換したメタノール130 ml及び水25mlを加え、さらに窒素置換した後、85℃の油浴中で4時間反応した。反応終了後、メタノール50ml及び水100mlを添加し、室温まで冷却した。析出物をろ過し、塩化メチレン100ml及び水100mlを加えた。不溶成分をろ別除去した後、有機層を分離し、水次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理後、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製Silicagel60,溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製し、さらに塩化メチレン−メタノールで再結晶することで、下記式(13)に示す中間体となる1,3,5−トリス(2−チエニル)ベンゼン7.6g(白色粉末)を収率57%で得た。その構造は1H NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
【0161】
【化66】
【0162】
1H NMR (CDCl3) δ7.81 (s, ベンゼン環, 3H), δ7.74 (dd, J = 3.6, 0.8 Hz, チオフェン環, 3H), δ7.65 (dd, J = 5.2, 0.8 Hz, チオフェン環, 3H), δ7.21 (dd, J = 5.2, 3.6 Hz, チオフェン環, 3H).
【0163】
〈有機ホウ素化合物の連続的添加法によるSuzukiカップリング反応〉
窒素雰囲気下、チオフェン14gの脱水テトラヒドロフラン100mlに溶解し、ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。−70℃以下に冷却後、1.6M−n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液100mlを40分間で滴下した。さらに1時間反応させた後、トリメトキシボラン20gを10分間かけて滴下した後、冷却浴を外してゆっくりと室温まで昇温し、反応混合物Aを得た。次いで、1,3,5−トリブロモベンゼン13g、酢酸パラジウム0.8g、トリフェニルホスフィン2.9g、及び炭酸ナトリウム8.7gをあらかじめ脱気および窒素置換したメタノール130ml及び水25mlを加え、さらに窒素置換した後、85℃の油浴中で加熱撹拌し、先に調製した反応混合物Aを80分かけて滴下し、さらに3時間反応した。反応終了後、メタノール50ml及び水100mlを添加し、室温まで冷却した。析出物をろ過し、塩化メチレン100ml及び水100mlを加えた。不溶成分をろ別除去した後、有機層を分離し、水次いで飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理後、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製Silicagel60,溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製し、さらに塩化メチレン−メタノールで再結晶することで、式(13)に示す中間体となる1,3,5−トリス(2−チエニル)ベンゼン12g(白色粉末)を収率90%で得た。有機ホウ素化合物の連続的添加法により収率が向上することを確認した。その構造は1H NMRスペクトルが前記〈有機ホウ素化合物の連続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉と一致したことにより確認した。
【0164】
〈中間体1,3,5−トリス(2−チエニル)ベンゼンのブロモ化反応〉
得られた1,3,5−トリス(2−チエニル)ベンゼン2.0gをジメチルホルムアミド10mlに溶解し、氷水浴中で冷却した。そこにN−ブロモコハク酸イミド2.4gのジメチルホルムアミド(9ml)溶液を添加した後、氷水浴を外して室温まで昇温した。反応終了後、水を添加した。得られた反応混合物をクロロホルムで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:クロロホルム/n−ヘキサン)によりそれぞれ単離精製し、目的の3,5−ビス[2−(5−ブロモチエニル)]−2−チエニルベンゼン1.05g(白色固体)及び1,3,5−トリス[2−(5−ブロモチエニル)]ベンゼン1.49g(白色固体)を得た。その構造は1H−NMRスペクトルにより確認した。測定データを以下に示す。
【0165】
3,5−ビス[2−(5−ブロモチエニル)]−2−チエニルベンゼン
1H NMR (CDCl3) δ7.64 (d, J = 1.6Hz, ベンゼン環, 2H), δ7.52 (t, J = 1.6 Hz, ベンゼン環, 1H), δ7.39 (dd, J = 1.2Hz, J = 3.6 Hz, チオフェン環,1H), δ7.35 (dd, J = 1.2Hz,J = 5.2Hz, チオフェン環, 1H), δ7.15−7.12 (m, チオフェン環, 3H) δ7.08 (d, J = 4.0Hz, チオフェン環, 2H).
1,3,5−トリス[2−(5−ブロモチエニル)ベンゼン
1H NMR (CDCl3) δ7.53 (s, ベンゼン環, 3H), δ7.07 (d, J = 4.0 Hz, チオフェン環, 3H), δ7.00 (d, J = 4.0 Hz, チオフェン環, 3H).
【0166】
(合成実施例3−2)下記式で表わされる1,3−ジクロロ−5−(2−チエニル)ベンゼンの合成
【0167】
【化67】
【0168】
〈有機ホウ素化合物の連続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉
窒素雰囲気下、チオフェン7.0 gを脱水テトラヒドロフラン55mlに溶解し、ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。−70℃以下に冷却後、1.6M−n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液50mlを1時間で滴下した。さらに1時間反応させた後、トリメトキシボラン9.8 gを10分間かけて滴下した後、冷却浴から外してゆっくりと室温まで昇温し、反応混合物Aを得た。次いで反応混合物Aに、窒素下雰囲気下、1−ブロモ−3,5−ジクロロベンゼン16.3g、酢酸パラジウム0.5g、トリフェニルホスフィン1.7g、及び炭酸ナトリウム6.9gをあらかじめ脱気および窒素置換したメタノール150ml及び水30mlを加え、さらに窒素置換した後、85℃の油浴中で4時間反応した。反応終了後、メタノール50ml及び水100mlを添加し室温まで冷却した。析出物をろ別除去し、塩化メチレン100ml及び水100mlを加えた。不溶成分をろ別除去した後、有機層を分離し、水、次いで飽和塩化ナトリウムで3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理後、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製Silicagel60,溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、目的物11.7g(白色粉末)を収率70%で得た。その構造は1H NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
【0169】
1H NMR (CDCl3) δ7.47 (d, J = 0.8 Hz, ベンゼン環, 2H), δ7.35 (d, J = 5.2 Hz, チオフェン環, 1H), δ7.32 (d, J = 3.6, チオフェン環, 1H), δ7.26(br, ベンゼン環 1H), δ7.09 (dd, J = 5.2 , 3.6 Hz, チオフェン環, 1H).
【0170】
〈有機ホウ素化合物の連続的添加法によるSuzukiクロスカップリング反応〉
窒素下雰囲気下、1−ブロモ−3,5−ジクロロベンゼン16.3g、酢酸パラジウム0.5g、トリフェニルホスフィン1.7g、及び炭酸ナトリウム6.9gをあらかじめ脱気および窒素置換したメタノール150ml及び水30mlを加え、さらに窒素置換した後、85℃の油浴中で加熱撹拌した。そこに前記〈有機ホウ素化合物の連続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉と同様に調製した反応混合物Aを1時間かけて滴下し、さらに3時間反応した。反応終了後、メタノール50ml及び水100mlを添加し室温まで冷却した。析出物をろ別除去し、塩化メチレン100ml及び水100mlを加えた。不溶成分をろ別除去した後、有機層を分離し、水、次いで飽和塩化ナトリウムで3回洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理後、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製Silicagel60,溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製することで、目的物15g(白色粉末)を収率90%で得た。前記〈有機ホウ素化合物の連続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉に比べ収率が向上することを確認した。その構造は1H NMRスペクトルが前記〈有機ホウ素化合物の連続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉と一致したことにより確認した。
【0171】
(合成実施例3−3) デンドリック構造の末端部分を構成する化合物(a)となる、下記式で示される5−(2−チエニル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミンの合成
【0172】
【化68】
【0173】
窒素下雰囲気下、酢酸パラジウム0.01gのキシレン50ml溶液に、トリ−t−ブチルホスフィン35mgを添加し、80℃の油浴中で10分間加熱撹拌、室温まで冷却することで触媒を調製した。続いて、窒素雰囲気下、合成実施例3−2で合成した1,3−ジクロロ−5−(2−チエニル)ベンゼン10g、ジフェニルアミン16g及びカリウム−t−ブトキシド12gをキシレン18mlに加え、80℃の油浴中で加熱した後、先に調製した触媒を添加し、その後120℃の油浴で18時間反応した。反応終了後、室温まで冷却し、有機層を水で洗浄、水層は塩化メチレンで2回抽出し、有機層を合わせ、さらに水で洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理後、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製Silicagel60,溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により精製し、さらに塩化メチレン−メタノールで再結晶することで目的物15g(白色粉末)を収率70%で得た。その構造は1H NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
【0174】
1H NMR (CDCl3) δ7.22 (t, ベンゼン環, J = 7.6 Hz, 8H), δ7.16 (dd, J =1.0, 5.2 Hz, チオフェン環, 1H), δ7.09 (d, J = 7.6 Hz, ベンゼン環,8H),δ7.06 (dd, J = 1.0, 3.6 Hz, チオフェン環 1H),δ7.00−6.94 (m, ベンゼン環及びチオフェン環, 5H),δ6.91 (d, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 2H), δ6.73 (t, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 1H).
1H NMR (DMSO) δ7.43 (dd, J = 1.2, 5.2 Hz, チオフェン環, 1H),δ7.29 (t, J = 8.0 Hz, ベンゼン環, 8H),δ7.43 (dd, J = 1.2, 3.6 Hz, ベンゼン環, 1H),δ7.07−7.00 (m, ベンゼン環及びチオフェン環, 13H),δ6.73 (d, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 2H),δ6.53 (t, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 1H).
【0175】
(合成実施例3−4)デンドリック構造の末端部分を構成する化合物(a)のチオフェン環のα水素を活性基B(OH)2に変換して化合物(b)とする、下記式で示される5−(5−ボロン酸−チオフェン−2−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミンの合成
【0176】
【化69】
【0177】
窒素雰囲気下、ジイソプロピルアミン3.2gを脱水テトラヒドロフラン50mlに溶解し、ドライアイスメタノール浴中で冷却した後、−70℃以下で、1.6M−n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液19mlを10分間で滴下し、0℃で30分反応させ、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)溶液を調製した。続いて、合成実施例3−3で合成した5−(2−チエニル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン5.0gを脱水テトラヒドロフラン30mlに溶解し、ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。この溶液に、さきに調製したLDA溶液を1時間で滴下した。さらに−70℃以下で1時間反応した後、トリメトキシボラン6.9gを10分間かけて滴下し、その後1時間かけてゆっくりと室温まで昇温した。反応終了後、氷水浴中で冷却した後、ジエチルエーテル70ml及び水20mlを添加し加水分解させた後、室温まで昇温した。続いて、水50mlおよび飽和塩化アンモニウム水溶液70mlを添加し、有機層を分離した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液120mlで2回、飽和塩化ナトリウム水溶液120mlで2回洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで、目的物5.4g(微黄色粉末)を収率99%で得た。その構造は1H NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
【0178】
1H NMR (DMSO) δ8.20 (s, ボロン酸, 2H), δ7.52 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.29 (t, J = 3.6Hz, ベンゼン環, 9H), δ7.16 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 1H), δ7.07−7.02 (m, ベンゼン環, 12H) , δ6.75 (d, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 1H), δ6.54 (t, J = 2.0Hz, ベンゼン環 1H).
【0179】
(合成実施例3−5)下記式で表わされる第1世代デンドロンの合成
【0180】
【化70】
【0181】
〈有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉
合成実施例3−1で得られた3,5−ビス[2−(5−ブロモチエニル)]−2−チエニルベンゼン1.49g、合成実施例3−4で得られた5−(5−ボロン酸−チオフェン−2−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン3.98g、パラジウム酢酸69mg、トリフェニルホスフィン0.24gおよび炭酸ナトリウム0.85gに、窒素雰囲気下、THF30mlと水6mlを加え、還流下で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水20mlを添加した。得られた反応混合物を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物2.43g(白色固体)を収率60%で得た。その構造は1H−NMRスペクトルにより確認した。測定データを以下に示す。
【0182】
1H NMR (CDCl3) δ7.68 (d, J = 1.6Hz, ベンゼン環, 2H), δ7.65 (t, J = 1.6Hz, ベンゼン環, 1H), δ7.40 (dd, J = 1.0Hz, J = 3.4Hz, チオフェン環, 1H), δ7.34 (dd, J = 1.0Hz, J = 5.2Hz, チオフェン環, 1H), δ7.29 (d, J = 3.6Hz, チオフェン環, 2H), δ7.26−7.22 (m,ベンゼン環, 16H および チオフェン環, 2H), δ7.13−7.08 (m, ベンゼン環, 16H および チオフェン環, 4H), 7.02−6.98 (m, ベンゼン環, 8H および チオフェン環, 1H), 6.91 (d, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 4H), 6.74 (t, J = 2.0Hz, ベンゼン環, 2H).
【0183】
〈有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法によるSuzukiクロスカップリング反応〉
合成実施例3−1で得られた3,5−ビス[2−(5−ブロモチエニル)]−2−チエニルベンゼン1.49g、パラジウム酢酸69mg、トリフェニルホスフィン0.24gおよび炭酸ナトリウム0.43gに、窒素雰囲気下、THF10mlと水3mlを加え、80℃の油浴で加熱した。ここへ合成実施例3−4で得られた5−(5−ボロン酸−チオフェン−2−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン1.99gをテトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、還流下で0.5時間反応させた。次いで水3mlに溶解した炭酸ナトリウム0.42gを加えた後、合成実施例3−4で得られた5−(5−ボロン酸−チオフェン−2−イル)−N,N,N′,N′−テトラフェニル−1,3−フェニレンジアミン1.99gをテトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液を、1時間かけて滴下し、還流下で5.5時間反応させた。
【0184】
反応終了後、室温まで冷却し、水20mlを添加した。得られた反応混合物を塩化メチレンで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、目的物3.40g(白色固体)を収率84%で得た。有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法により収率が向上することを確認した。その構造は1H−NMRスペクトルが合成実施例3−5と一致したことで確認した。
【0185】
(合成実施例3−6) 合成実施例2と同じ構造の第1世代3分岐デンドリマーの合成
【0186】
〈第1世代デンドリマーのチオフェン環のα水素を活性基B(OH)2に変換する反応により下記式(14)で示される第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体の合成〉
【0187】
【化71】
【0188】
窒素雰囲気下、ジイソプロピルアミン0.73gを脱水テトラヒドロフラン10mlに溶解し、ドライアイスメタノール浴中で冷却した後、−70℃以下で、1.6M−n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液4.3mlを10分間で滴下し、0℃で15分反応させ、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)溶液を調製した。続いて、合成実施例3−5で得られた第1世代デンドリマー2.0gを脱水テトラヒドロフラン30mlに溶解し、ドライアイス−メタノール浴中で冷却した。この溶液に、さきに調製したLDA溶液を20分間で滴下した。さらに−70℃以下で1時間反応した後、トリメトキシボラン1.6gを10分間かけて滴下し、その後1時間かけてゆっくりと室温まで昇温した。反応終了後、氷水浴中で冷却した後、ジエチルエーテル20ml及び水20mlを添加し加水分解させた後、室温まで昇温した。続いて、飽和塩化アンモニウム水溶液20mlを添加し、有機層を分離した。有機層を飽和塩化アンモニウム水溶液50mlで3回、飽和塩化ナトリウム水溶液50mlで2回洗浄した。さらに硫酸ナトリウムで乾燥処理を行なった後,溶媒を減圧留去して粗製物を得た。粗製物をテトラヒドロフラン/n−ヘキサンで再結晶し、目的物である第1世代のボロン酸誘導体2.0g(淡黄色固体)を収率97%で得た。その構造は1H−NMRスペクトル(測定溶媒:DMSO−d6)にて、8.3ppm付近にボロン酸のOHプロトンが観測されたこと、およびベンゼン環由来のプロトンとチオフェン環由来のプロトンの積分比が目的構造と一致したことより確認した。
【0189】
〈有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉
上記式(14)で表される第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体2.1g、合成実施例3−1で得られた1,3,5−トリス[2−(5−ブロモチエニル)]ベンゼン238mg、パラジウム酢酸14mg、トリフェニルホスフィン50mgおよび炭酸ナトリウム0.18gに、窒素雰囲気下、THF28mlと水2mlを加え、還流下で8時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水20mlを添加した。得られた反応混合物をクロロホルムで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、さらにクロロホルムで再結晶し、目的物である第1世代3分岐デンドリマー0.74g(淡黄色固体)を収率41%で得た。1H NMRスペクトルが合成実施例2と一致することを確認した。GPC測定値は、重量平均分子量(Mw)=5240、数平均分子量(Mn)=4855、分子量分布(Mw/Mn)=1.079であり、目的物が高純度、単分散であることを確認した。
【0190】
〈有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法によるSuzukiクロスカップリング反応〉
合成実施例3−1で得られた1,3,5−トリス[2−(5−ブロモチエニル)]ベンゼン238mg、パラジウム酢酸14mg、トリフェニルホスフィン50mgおよび炭酸ナトリウム0.06gに、窒素雰囲気下、THF2mlと水0.4mlを加え、80℃の油浴で加熱した。ここに式(14)で表される第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体0.7gをテトラヒドロフラン8.4mlに溶解した溶液を、1時間で滴下し、還流下で0.5時間反応させた。次いで水0.4mlに溶解した炭酸ナトリウム0.06gを加え、式(14)で表される第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体0.7gをテトラヒドロフラン8.4mlに溶解した溶液を、1時間で滴下し、還流下で0.5時間反応させた。次いで水0.4mlに溶解した炭酸ナトリウム0.06gを加え、式(14)で表される第1世代デンドリマーのボロン酸誘導体0.7gをテトラヒドロフラン8.4mlに溶解した溶液を、1時間で滴下し、還流下で4時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却し、水20mlを添加した。得られた反応混合物をクロロホルムで抽出し、得られた有機層を水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥処理し、溶媒を減圧留去することで粗製物を得た。カラムクロマトグラフィー(充填剤:Merck製 Silicagel 60, 溶離液:塩化メチレン/n−ヘキサン)により単離精製し、さらにクロロホルムで再結晶し、目的物である第1世代3分岐デンドリマー1.01g(淡黄色固体)を収率56%で得た。有機ホウ素化合物の連続/断続添加、および塩基触媒の断続添加により、収率が向上することを確認した。その構造は1H NMRスペクトルが前記〈有機ホウ素化合物の連続/断続的添加法、および塩基触媒の断続的添加法を利用しないSuzukiクロスカップリング反応〉と一致したこと、およびGPC測定値がほぼ同一であることにより確認した。
【0191】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、過剰の原料を必要とせず合成中間体の精製も比較的容易である「Convergent法」を用いるため、欠陥がなく高純度のデンドリマーを効率的に合成することができ、化学分野、医薬分野、電子材料分野などにおいて、種々の高機能材料の創製に有用な高分子材料として期待される、チエニレン構造を有する新規なデンドリマーの提供が可能となる。
Claims (10)
- チエニレン構造を含む線状部と置換基を有してもよい3価の有機基である分岐部Yとからなる下記一般式(1)の繰り返し構造単位を有するデンドリマーをConvergent法により製造するデンドリマーの製造方法であって、末端部分を構成するチエニレン構造を有する下記化合物(a)のチオフェン環のα位水素をsuzukiクロスカップリング反応する活性基V1に変換して下記化合物(b)とする反応工程1と、線状部及び分岐部Yを有すると共に分岐部Yに前記活性基V1とsuzukiクロスカップリング反応する2つの活性基V2を有する下記化合物(c)と前記化合物(b)とをsuzukiクロスカップリング反応させて下記化合物(d)を得る反応工程2と、この生成物のチオフェン環のα位水素をsuzukiクロスカップリング反応する活性基V1に変換すると共にこれに下記化合物(c)を反応させて次世代のデンドロンを得る反応工程3と、この反応工程3を必要に応じて繰り返してデンドリマーとする工程とを具備することを特徴とするデンドリマーの製造方法。
- 請求項1〜3の何れかにおいて、前記Suzukiクロスカップリング反応を行う際に用いる化合物のうちの一方がホウ素を含むチオフェン系有機ホウ素化合物の場合、このチオフェン系有機ホウ素化合物を、他方の化合物が含まれる反応系へ、徐々に連続的又は断続的に添加してSuzukiクロスカップリング反応させることを特徴とするデンドリマーの製造方法。
- チオフェン系有機ホウ素化合物と反応性化合物とをSuzukiクロスカップリング反応させてチオフェン系化合物を得るチオフェン系化合物の製造方法において、前記反応性化合物が含まれる反応系に、前記チオフェン系有機ホウ素化合物を、徐々に連続的又は断続的に添加してSuzukiクロスカップリング反応させることを特徴とするチオフェン系化合物の製造方法。
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