JP2004131597A - 耐塩素水性ゴム組成物及びゴム製品 - Google Patents

耐塩素水性ゴム組成物及びゴム製品 Download PDF

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Abstract

【課題】遊離残留塩素を含有する80℃前後の高温の温水中で長期間使用した場合でも、ゴムの劣化による補強材等の充填剤の脱離がなく、例えば水道配管や給湯機器等に使用されるゴム製品及びその成形材料であるゴム組成物を提供する。
【解決手段】エチレン含量が60重量%以上のエチレンプロピレン系ゴム100重量部に対し、(1)平均粒子径が50nm以上、(2)BET法による比表面積が30m/g以下、(3)ヨウ素吸着量が30mg/g以下の少なくとも1つを満足するカーボンブラック10〜200重量部と、有機過酸化物とを配合してなることを特徴とする耐塩素水性ゴム組成物。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐塩素水性ゴム組成物及び耐塩素水性ゴム製品に係り、特に塩素ガスや次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系浄化剤を含む水に対して優れた耐性を発揮できるゴム組成物及びゴム製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、水道水は川、湖水、地下水等を浄水場で浄化して配水されており、浄化方法は主に塩素ガスを水中に吹き込むか、あるいは次亜塩素酸ソーダを水中に投入することにより行われる。水道水中には、衛生上の安全のために各家庭の給水栓から取水した時点で1リットル当たり0.1mg以上の遊離残留塩素濃度を保持していることが義務づけられており、都市部では1リットル当たり0.6〜0.9mgの濃度であると言われている。
【0003】
一方、水道配管に使用されているゴム製品としては、ダイヤフラム、パッキング、ガスケット等が挙げられ、これらはゴムとカーボンブラックとを主成分とするゴムコンパウンドを架橋したものが一般的であり、用いられるゴムの種類としては、EPMやEPDM等のエチレンプロピレン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)等が使用されており、中でもエチレンプロピレン系ゴムが好ましく使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
そして、上記の水道水中の遊離残留塩素とは、塩素(Cl)、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO)を指し、これらは非常に酸化力の強い化学物質である。ゴム製品と水道水が接触する箇所では、水道水中に溶存している遊離残留塩素がゴムの劣化を引き起こし、ゴム中に配合されたカーボンブラック等の補強材等が遊離して水道水を汚濁する恐れがある。
【0005】
特に近年、温水機器に対する要求性能が高まり、例えば給湯ラインの延長化や追い炊き機構の新設等により、給湯温度が従来の40℃程度から60〜80℃にまで高くなってきている。水温の上昇によって上述の塩素や次亜塩素酸の反応性も高まり、配管に使用されているゴム製品の劣化を著しく早め、補強材のカーボンブラックが脱離して水道水が黒くなる(墨汁現象)という問題が発生している。
【0006】
この問題を解決するために、エチレンプロピレン系ゴムに配合する補強材として、カーボンブラックに換えて明色系補強材を用いることにより水道水の汚濁を目立たなくしたり、エチレンプロピレン系ゴムにシリコーンゴム、水素化ニトリルゴム、あるいはブチルゴム等をブレンドしたり、耐薬品性に優れたフッ素樹脂系微粉体を充填したりした耐塩素水性ゴムが報告されている(例えば、特許文献2〜5参照。)。
【0007】
しかし、明色系補強材を用いる方法では、外見上は水道水の汚濁が目立たなくなるものの耐塩素水性が向上する訳ではないので根本的な解決には至っていない。一方、エチレンプロピレン系ゴムにシリコーンゴムや水素化ニトリルゴム等をブレンドする方法や、フッ素樹脂系微粉体を充填する方法は、耐塩素水性向上に効果はあるものの原材料費や加工コストが増大する問題がある。
【特許文献1】
特開昭60−23431号公報
【特許文献2】
特開平4−353543号公報
【特許文献3】
特開平5−230300号公報
【特許文献4】
特開平9−157464号公報
【特許文献5】
特開平9−249778号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来の問題を解決するためになされたものであり、遊離残留塩素を含有する80℃前後の高温の温水中で長期間使用した場合でも、ゴムの劣化による補強材等の充填剤の脱離がなく、例えば水道配管や給湯機器等に使用されるゴム製品及びその成形材料であるゴム組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねたところ、高エチレン含量のエチレンプロピレン系ゴムに、粒径が比較的大きい、または比表面積が比較的小さい、あるいはヨウ素吸着量が比較的小さいカーボンブラックを配合し、有機過酸化物により架橋させたゴムが、遊離残留塩素を含有する温水に浸漬させた場合にゴムの劣化による充填剤の脱離や浸漬液の汚濁が全くなく、塩素水に対して優れた耐性を有していることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の請求項1に係る耐塩素水性ゴム組成物は、エチレン含量が60重量%以上のエチレンプロピレン系ゴム100重量部に対し、(1)平均粒子径が50nm以上、(2)BET法による比表面積が30m/g以下、(3)ヨウ素吸着量が30mg/g以下の少なくとも1つを満足するカーボンブラック10〜200重量部と、有機過酸化物とを配合してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る耐塩素水性ゴム製品は、上述の耐塩素水性ゴム組成物を所定形状に成形、加硫してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の耐塩素水性ゴム組成物及びそのゴム製品は、高エチレン含量のエチレンプロピレン系ゴムを用いることが第一の特徴である。遊離残留塩素は強力な酸化剤であり、ポリマー分子鎖から水素を引き抜いて酸化劣化を引き起こすことが考えられ、エチレンプロピレン系ゴムではこの水素引き抜き反応がプロピレン単位にある3級炭素に結合した水素との間で起こりやすい。そこで、本発明では、この部位が少ないポリマー、即ち高エチレン含量のエチレンプロピレン系ゴムを用いることにより、水素引き抜きに伴う酸化を抑えて耐塩素水性を向上させる。また、エチレン連鎖は水素引き抜き反応を受けても、ラジカルの再結合による架橋反応を起こしやすく、高エチレン含量のエチレンプロピレン系ゴムではこの作用が相俟って耐塩素水性を更に向上させる。
【0013】
また、本発明の耐塩素水性ゴム組成物及びそのゴム製品は、(1)平均粒子径が50nm以上、(2)BET法による比表面積が30m/g以下、(3)ヨウ素吸着量が30mg/g以下の少なくとも1つを満足するカーボンブラックを用いることが第二の特徴である。カーボンブラックは粒径が小さいものほど比表面積が大きくなり、ゴムに対する補強効果が高くなる一方で、物質を吸着しやすくなる。即ち、カーボンブラックが水道水中の遊離残留塩素を吸着して上記の水素引き抜き反応によりゴムの劣化を促進することが考えられるため、本発明では粒径が大きく、比表面積が小さいカーボンブラックを用いることで遊離残留塩素の吸着量を低減してゴムの劣化速度を抑える。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0015】
本発明で用いるゴムは、エチレンプロピレン系ゴムであり、且つエチレン含量が60重量%以上であり、好ましくは65重量%以上である。エチレン含量が60重量%未満のエチレンプロピレン系ゴムを用いたのでは、水素引き抜き反応が起こりやすく、十分な酸化抑制効果が得られない。また、エチレンプロピレン系ゴムはジエン等の第3成分を含有することもできるが、その含有量はエチレン含量が60重量%未満にならないように制限される。尚、第3成分の種類には制限は無く、目的とするゴム製品の物性、成形加工性等に応じて適宜選択することが出来る。
【0016】
本発明で用いるカーボンブラックは、下記の少なくとも1つの要件を満足する。
(1)平均粒子径が50nm以上、好ましくは60nm以上
(2)BET法による比表面積が30m/g以下、好ましくは25m/g以 下
(3)ヨウ素吸着量が30mg/g以下、好ましくは25mg/g以下
【0017】
平均粒子径が50nm未満のカーボンブラック、BET法による比表面積が30m/gを超えるカーボンブラック、ヨウ素吸着量が30mg/gを超えるカーボンブラックを用いたのでは塩素の吸着量が多すぎて、ゴムのエチレン含量が60重量%以上であっても酸化劣化を十分に抑えることが困難となる。尚、平均粒子径とは電子顕微鏡により直接計測した粒子径から求めたものである。
【0018】
また、本発明で用いるカーボンブラックの種類としては、FEF(fast extruding furnace)、GPF(general purpose furnace)、SRF(semi reinforcing furnace)、FT(fine thermal)、MT(medium thermal)タイプ等の通常のゴム補強材として用いられている各タイプのカーボンブラックを用いることができ、これらの中から、上記の平均粒子径、BET法による比表面積、ヨウ素吸着量を満足するものを選択して使用する。但し、FT、MTタイプのカーボンブラックは、補強性が乏しく、単独で使用した場合、得られるゴム製品の引張強さ、伸び、圧縮永久ひずみ等の基本物性が不十分となる可能性があるため、FEF、GPF、SRFタイプのカーボンブラックと併用することが好ましい。また、カーボンブラックの配合量は、上記のエチレンプロピレン系ゴム100重量部に対して10〜200重量部であり、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは50〜120重量部である。カーボンブラックの配合量が10重量部未満では補強不足となり、200重量部を超えると得られるゴム製品のゴム弾性が小さくなりすぎ、例えばパッキンやガスケットとしたときにシール性能に劣るようになる。
【0019】
また、所望により可塑剤、軟化剤、老化防止剤等を配合しても良い。これらは一般的なゴム配合薬品として公知のものを使用すれば良く、配合量は所望の物性、加工性等に応じて適宜調整することが可能である。
【0020】
上記のゴム組成物は、有機過酸化物により架橋されてゴム製品となる。有機過酸化物は公知のものを適宜用いることが出来、具体的にはジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。また、これらの有機過酸化物のマスターバッチや不活性固体に含浸させた希釈品を用いても良い。有機過酸化物の配合量は、上記のエチレンプロピレン系ゴム100重量部に対して有機過酸化物純品に換算して0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部が望ましい。
【0021】
また、架橋のために共架橋剤を併用することも可能であり、具体的にはトリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリレート、N,N’−m−フェニレンジマレイミド等が挙げられ、その他アクリレート系、メタクリレート系モノマー等も用いることが出来る。共架橋剤の配合量は、上記のエチレンプロピレン系ゴム100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部が望ましい。
【0022】
本発明に係るゴム組成物及びそのゴム製品は、任意の慣用の方法によって製造することが出来る。具体的には、ロール、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて、エチレンプロピレン系ゴム、カーボンブラック、有機過酸化物、必要に応じて共架橋剤、その他の添加剤を一般的なゴム混練方法に基づいて混練してゴム組成物を得る。得られたゴム組成物は、金型等に充填して所定形状に成形された後、架橋させて所定のゴム製品、例えば、リング状、棒状、シート状、ブロック状、チューブ状、その他複雑形状等の所望の形状のゴム製品となる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0024】
(実施例1〜9、比較例1〜6)
表1に示した配合物をロール練りし、得られた混練物を数時間後に再練りした後、熱プレスで所定温度にて所定時間保持して架橋させ、更にギアーオーブンで所定温度にて所定時間二次架橋を施して実施例及び比較例の各サンプルを作製した。得られた実施例及び比較例の各サンプルの一般物性(硬さ、引張強さ、伸び、圧縮永久ひずみ)を表1に併記する。尚、一般物性の試験方法はそれぞれ以下に示したJISの試験方法に従った。
・硬さ:JIS K 6253 加硫ゴムの硬さ試験方法(タイプA)
・引張強さ、伸び:JIS K 6251 加硫ゴムの引張試験方法(ダンベル状3号形試験片)
・圧縮永久ひずみ:JIS K 6262 加硫ゴムの永久ひずみ試験方法(大型試験片)
【0025】
また、実施例及び比較例の各サンプルの耐塩素水性を評価するために、下記の(1)カーボン脱離評価及び(2)浸漬液の汚濁評価を行った。結果を表1に併記する。
(1)カーボン脱離評価:市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度6%以上)を純水で希釈して有効塩素濃度200ppmの水溶液を調製し、ガラス製試験管にこの次亜塩素酸ナトリウム水溶液200mlとゴム試験片(ダンベル状3号試験片6本)とを入れ、80℃に保持して500時間浸漬した。尚、浸漬液は休日を除いて毎日全量を新しいものに交換した。そして、浸漬後のゴム試験片表面に粘着テープを貼り付け、剥がしたときの粘着テープへのカーボン付着面積を画像解析装置を用いて計測し、単位面積当たりのカーボン付着率を求めた。判定基準は、○=1%未満、△=1%以上10%未満、×=10%以上である。
(2)浸漬液の汚濁評価:上記と同一の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に同一のゴム試験片を425〜500時間浸漬し、浸漬後の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を採取し、新しい次亜塩素酸ナトリウム水溶液と目視により比較して汚濁の有無を評価した。判定基準は、○=着色なし、△=薄い灰色、×=灰色(カーボン粒子の浮遊が認められる)である。
【0026】
【表1】
Figure 2004131597
【0027】
【表2】
Figure 2004131597
【0028】
*1 HAF:high abrasion furnace
*2 有機過酸化物A:2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン 40%希釈品
*3 有機過酸化物B:ジクミルパーオキサイド
*4 老化防止剤A:4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
*5 老化防止剤B:2−メルカプトベンツイミダゾール亜鉛塩
【0029】
表1に示したように、実施例及び比較例の各サンプルは、何れもゴム製品として使用するのに十分な一般物性を有している。しかし、耐塩素水性に関しては、実施例1〜9の各サンプルがカーボン脱離及び浸漬液の汚濁が無いのに対し、比較例1〜6の各サンプルではカーボン脱離及び浸漬液の汚濁が認められる。特に、比較例2のサンプルは、ゴム及びカーボンブラック共に本発明の規定範囲外の材料を使用しており、カーボン脱離及び浸漬液の汚濁が著しく、耐塩素水性に劣っている。また、比較例3〜5の各サンプルは、ゴムが本発明の規定範囲外の材料で、カーボンブラックは本発明の規定範囲内の材料であり、一方、比較例1及び比較例6の各サンプルは、ゴムは本発明の規定範囲内の材料であるが、カーボンブラックが本発明の規定範囲外の材料である。これらの比較例の各サンプルは、比較例2のサンプルと比べると若干耐塩素水性に優れるが、カーボン脱離や浸漬液の汚濁が認められ、実施例の各サンプルと比べて耐塩素水性が劣っている。即ち、ゴム及びカーボンブラックのどちらか一方でも本発明の規定範囲から外れると所期の効果が得られないと言える。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ゴムの劣化による補強材等のカーボンブラックの脱離がなく、耐塩素水性が格段に優れたゴム組成物及びゴム製品が得られ、水道配管や温水機器等に好適である。

Claims (2)

  1. エチレン含量が60重量%以上のエチレンプロピレン系ゴム100重量部に対し、(1)平均粒子径が50nm以上、(2)BET法による比表面積が30m/g以下、(3)ヨウ素吸着量が30mg/g以下の少なくとも1つを満足するカーボンブラック10〜200重量部と、有機過酸化物とを配合してなることを特徴とする耐塩素水性ゴム組成物。
  2. 請求項1に記載の耐塩素水性ゴム組成物を所定形状に成形、加硫してなることを特徴とする耐塩素水性ゴム製品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007296712A (ja) * 2006-04-28 2007-11-15 Inoac Corp 水道用ゴム製品の製造方法
JP2010031151A (ja) * 2008-07-29 2010-02-12 Fujikura Rubber Ltd ゴム組成物及びシール材
JP2014198783A (ja) * 2013-03-29 2014-10-23 大日精化工業株式会社 配水管用着色樹脂組成物及び配水管

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