JP3947184B2 - ゴムの耐塩素劣化性向上方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゴムの耐塩素劣化性を向上させるための、アルカリ性を有するシリカの使用に関する。さらに詳しくは、残留塩素を含む水と接触する箇所に使用されるゴム製品としたときに、耐塩素劣化性能に優れ長寿命化を可能にする組成物性能をもたらすゴム組成物およびそれを用いた成型品を与える、ゴムの耐塩素劣化性を向上させるための、アルカリ性を有するシリカの使用に関する。
従来より、水と接触する箇所例えば止水部などに用いられる部材(パッキン、Oリング、伸縮継手など)には、各種合成ゴム製品が使用されており、さらに耐熱性、耐オゾン性が要求される箇所には耐水性の優れたエチレンプロピレンゴム(EPDM)製品が採用されている。
しかし、昨今の環境悪化により自然界の河川、湖などを原水とする水道水中には、多量の塩素が投入されるようになった。その結果、従来には生じなかった残留塩素による合成ゴムの劣化が発生し、ゴム自体が水中へ離脱し、黒色の異物が流出したり、あるいは、硬化しゴム弾性を失い水漏れが生じる等のさまざまなトラブルが生じている。
また、給湯設備では高温下で使用されるケースが多くなり、残留塩素プラス高温状態という2つの相乗作用によって、合成ゴムの劣化はさらに激しくなり、例えば耐熱性に優れたエチレンプロピレンゴム(EPDM)においても同様のトラブルが生じている。
さらに、飲用に供されている給水中に黒色異物の混入が生じた場合には、水自体が飲用に適していても、異物流出防止の対策として、水を供給する施設の全面的な更新を行わなければならない。また、合成ゴムの劣化により止水性能が低下した部分では、水の侵入により金属部が腐食し、赤水や漏水などのトラブルが発生することになり、水配管の場合には、ライフラインの確保を困難にする。
このような問題を解決するには、テフロン(登録商標)やフッ素ゴムを使用した製品を採用することが実施される場合もあるが、これらは極めて高価な製品であり、さらには、採用される箇所によっては止水性能を発揮させるための材料強度が不足しているなどの問題点があり、安価で寿命が長く、そして信頼性の高い合成ゴムの成型品を提供することができる組成品が早急に望まれている。
本発明の目的は、アルカリ性を有するシリカが特定の合成ゴムとの配合物としたとき、耐塩素劣化性に優れた配合物を与える事実を究明し、かかる究明事実に基づいてアルカリ性を有するシリカの、ゴムの耐塩素劣化性を向上させるための使用を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、ゴム成分としての、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムと配合して該少なくとも1種のゴムの耐塩素劣化性を向上させるためのアルカリ性を有するシリカの使用を提供することにある。
本発明によれば、アルカリ性を有するシリカを配合した耐塩素劣化性能に優れた合成ゴムの組成物および成型品を与える、アルカリ性を有するシリカの使用が提供される。
本発明で対象とするゴムは、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムである。これらは1種または2種以上組合せである。
これらのゴムが残留塩素を含む水と接触したときに劣化するメカニズムについては、合成ゴム製品の接液部において、水中に含まれる残留塩素や酸素がゴム自体の吸着・拡散反応により、成型品表面にボイドなどの欠損や架橋による硬化劣化または主鎖切断を生じせしめ、さらに流水による振動やせん断力の作用あるいは硬度の上昇により、ゴム自体が一般に黒こと呼ばれる微量な黒色の異物となって、水中へ離脱・混入、水漏れ発生等を生じさせることであることが、本発明者等により究明された。すなわち、水中の残留塩素が合成ゴムに与えるダメージについては、合成ゴム中に充填剤として含まれているカーボンブラックの水分吸着性による影響が大きく、サンプルを用いた500ppm−40℃−72時間の浸漬試験結果では、EPMAによる分析の結果にて、接液部の表面近傍に高い濃度の塩素化合物による浸透拡散現象が確認され、SEMによる観察結果では、接液部表面の荒れ、凸凹やボイドなどの発生が認められた。さらに、架橋密度の変化を確認したところ、試験後のサンプルには架橋密度の増加が認められ、綱目鎖濃度の増加に伴う硬化劣化の進行が確認された。
本発明において上記一方の成分であるゴムとして用いられるエチレンプロピレンゴム(EPDM)としては、例えば、エチレン,プロピレンと少量のジエン成分(第3成分とよばれ、ジシクロペンタジエン,1,4−ヘキサジエン,エチリデンノルボルネンなどを使用する)を炭化水素溶媒中でチーグラー触媒により重合させて製造されたもの等が例示される。
ブチルゴム(IIR)は、例えばイソブチレンに少量のイソプレンの如きジエンをカチオン重合により共重合させたものである。
また、クロロプレンゴム(CR)としては、例えば、クロロプレン(2−クロロブタジエン)を乳化重合で重合して製造されたものなどが好適に用いられる。
アクリロニトリルゴム(NBR)としては、例えばブタジエンとアクリロニトリルを乳化重合で重合して得られた共重合体等が挙げられる。
同様に、スチレンブタジエンゴム(SBR)としては、例えば、スチレンとブタジエンを乳化重合により重合して製造された共重合体が好適に使用される。
さらに、ブタジエンゴム(BR)としては、例えば、ニッケル,コバルトなどのチーグラー系触媒(シス−1,4結合が95%以上のもの)やリチウム系触媒(シス−1,4結合20〜40%)などによりブタジエンを溶液重合により重合せしめて製造されたポリマーが好ましく用いられる。
上記一方の成分であるゴムは単独であるいは2種以上組合せて使用することができる。また、これらのゴムはいずれも市販品として容易に入手することができる。
本発明におけるもう一方の成分であるシリカは、アルカリ性を有するシリカである。アルカリ性を有するシリカは、ケイ酸ナトリウムと硫酸の反応から生成される。
このシリカは一般にゴム用充填剤として知られており、また、特開平4−353543号公報にはシリカ系充填剤を配合することでゴムの耐塩素水性を向上させることが示されている。しかしながら、本発明においては、シリカのpHの違いによる耐塩素水性を明確にし、シリカ配合においてはアルカリ性を選択することでより優れた耐塩素水性がもたらされることが明らかにされた。
本発明は、前記一方の成分であるゴム100重量部に対し、アルカリ性を有するシリカを、好ましくは、10〜100重量部、より好ましくは30〜90重量部、さらに好ましくは50〜80重量部で使用することができる。
アルカリ性を有するシリカが、10重量部より少ないときには耐塩素劣化性の向上が小さくまた、100重量部を越えるとゴム性能が低下する傾向となり、いずれも好ましくない。
本発明は、上記の如き一方の成分であるゴムとアルカリ性を有するシリカを、それ自体公知の方法により、混合あるいは混練して配合物とることができる。
その際、ゴム配合薬品としてそれ自体公知の種々の添加物、例えば加硫剤あるいは架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、スコーチ防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、可塑剤、ゴム軟化剤、ゴム補強剤(例えばカーボンブラック)および充填剤、強化剤等を適宜配合することができる。
得られた配合物は、種々の成型品として用いることができる。特に、塩素を含む水と接触して用いられたとき、長期間に亘って耐塩素劣化性を保持しつづけることができ、そのため前記した如き黒色異物の放出や漏水を防止するのに効果的である。塩素を含む水は、上水、下水、排水等を問わず、上記配合物は、それぞれの水についての確立されたシステムにおいて、その使用される箇所に適切な形態の成型品として用いられる。そのような成型品としては、例えばパッキン、Oリングおよび伸縮継手等を挙げることができる。
本発明によれば、上記説明から理解されるとおり、アルカリ性を有するシリカの新規な使用法、すなわち上記の如き一方の成分であるゴムと配合して、その耐塩素劣化性を向上させるための使用が提供される。
以下、実施例により本発明をさらに詳述する。本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1〜2および比較例1〜3
表1に本発明における実施例と比較例の配合を示す。
表1においてEPDMはJSR(株)製(商品名:EP33、ムーニー粘度:45、エチレン含有量:52%、ジエン含有量:8.1%)を、ナフテン系オイルは新日本石油(株)製(商品名:コウモレックスH−22、粘度:0.92、比重:0.92)用いた。また、TMTDはテトラメチルチウラムジスルフィド、MBTは2−メルカプトベンゾチアゾールのことである
表1において実施例1、2と比較例1、2では、充填剤としてシリカ(東ソー・シリカ(株)製、商品名:Nipsil)80重量部を、比較例3では充填剤としてカーボンブラックHAF(旭カーボン(株)製、商品名:旭#70)80重量部を用いた。
また表2に実施例1、2と比較例1、2の配合で用いられたシリカのpHおよびBET比表面積(m2/g)を示す。BET比表面積とは、気体圧力と吸着量の関係からBET式により単分子吸着量を算出した値である。
各試料は表1に示すゴム組成物をロール混練りし、均一に分散させ、各々2mm厚の加硫シートに作製し(加硫条件:160℃×最適加硫時間)、以下の処理に供した。
−処理方法−
塩素水にイオン交換水を加えて塩素濃度を50ppmに調整し、80℃で720時間浸漬させ劣化処理を行った。
−評価方法−
処理後の試験片について、目視観察およびSEM(走査型電子顕微鏡)による観察を行うとともに、ゴム表面近傍の硬さを高分子計器(株)製マイクロゴム硬度計を用いて測定し、JIS K 6251に基づいた引張試験を行い、JIS K 6258での計算式に基づき、硬さの変化および引張り強さ,伸び,体積,質量のそれぞれの変化率を求めた。また、EPMA(電子線マイクロアナライザー)により、試料表面近傍の塩素の吸収強度(浸透度合い)を測定した。
−試験結果−
表3に硬さの変化および引張り強さ,伸び,体積,質量のそれぞれの変化率を、図1に試料表面に対し行ったSEM(走査型電子顕微鏡)による観察写真を、図2にEPMA(電子線マイクロアナライザー)による塩素の吸収強度(浸透度合い)測定結果を示す。
まず、図1に示す処理後のゴム表面状態におけるSEMによる観察結果から、比較例3では、ゴム表面に黒粉が多く発生し、クラックが生じていたのに対して、実施例1、2では、表面に黒粉やクラックの発生がほとんど認められなかった。特に実施例1では、黒粉やクラックの発生は皆無であった。
次に、図2に示す処理後のゴム表面近傍におけるEPMAによる塩素の吸収強度測定結果から、比較例1、2では表面近傍において塩素の吸収強度が高い結果となっているが、実施例1では塩素の吸収はほとんど認められなかった。
また表3に示す硬さの変化および引張り強さ,伸び,体積,質量のそれぞれの変化率の結果から、比較例1〜3に対し実施例1、2では引張り強さ変化率において小さな値となっており、強度の低下がほとんどみられなかった。一方、硬さ変化・伸び変化率・体積変化率・質量変化率については、比較例1〜3に対し実施例1、2では小さい値か同程度となっており、顕著な物性低下は認められなかった。
これらのことから、アルカリ性を有するシリカを配合することで、ゴムの物性に影響を与えることなく耐塩素劣化性を飛躍的に向上させることができることがわかる。
塩素水50ppm×80℃×720hの浸せき劣化処理を行った後の、実施例1、2および比較例1、2、3のゴム表面のSEM分析写真(倍率:×500)。 塩素水50ppm×80℃×720hの浸せき劣化処理を行った後の、実施例1および比較例1、2のEPMAによるゴム表面近傍における塩素吸収強度測定結果のグラフ。

Claims (2)

  1. ゴム成分としての、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴムおよびブタジエンゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種のゴムと配合して、上記少なくとも1種のゴムの耐塩素劣化性を向上させるための、アルカリ性を有するシリカの使用。
  2. 上記少なくとも1種のゴム100重量部に対し、アルカリ性を有するシリカ10〜100重量部を使用する請求項1に記載の使用
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