JP2004131559A - インクジェット記録用水性インク - Google Patents
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- C09D11/00—Inks
- C09D11/30—Inkjet printing inks
- C09D11/38—Inkjet printing inks characterised by non-macromolecular additives other than solvents, pigments or dyes
Abstract
【解決手段】少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるインクジェット記録用水性インクであって、p−tert−ブチル安息香酸カリウム、水に分散又は溶解する着色剤、水、及び、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用水性インク。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるインクジェット記録用水性インクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式のプリンター技術とは、急激に加熱し発生した気泡により微細ノズルからインクを吐出させるバブル方式、電圧印加により変形する圧電素子を用いて微細ノズルからインクを吐出させるピエゾ方式等により、基本色となる数色のインクジェット記録用インクを、数ピコリットル〜数十ピコリットルという微小液滴として選択的に紙面上に着弾させることにより画像を形成する印字技術である。
【0003】
このインクジェット記録方式の長所は、微小液滴の吐出を制御することにより高い印字品質、高い印画品質を得ることができる点であり、数ピコリットルの微小インク液滴を微小径の吐出ノズルから高精度で紙面上に着弾させることにより、フルカラーに近い色再現、及び、粒状感のない画像形成が可能となる。微小径の吐出ノズルから微小インク液滴を安定して吐出するためには、目詰まりを生じないことが重要であり、調製後にインク中のゴミ及び不純物が精密濾過により除去されたインクジェット記録用インクを使用する必要がある。
【0004】
しかし、インク供給経路にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドにおいて、インクジェット記録用水性インクが長期間使用された場合には、長期にわたるインクジェット記録用水性インクとの接触により、金属部材が腐食されたり、金属部材からニッケル等の金属イオンが溶出したりするため、金属酸化物が生成したり、着色剤が染料である場合には、金属イオンと染料とが不溶性無機塩を形成して析出物となったり、着色剤が非水溶性の顔料である場合には、インク調製時に顔料粒子の粒子径を制御していても金属イオンにより顔料粒子の凝集、析出が生じたりするため、フィルター及びノズルにおいて目詰まりが発生し、長期にわたり高精度かつ安定して吐出を行うことができないという問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献1には、インクジェット記録用インクに防錆剤として安息香酸を添加する技術が開示され、特許文献2には、インクジェット記録用インクに防腐防黴剤として安息香酸ナトリウムを添加する技術が開示されている。しかし、これらのインクジェット記録用インクがニッケル又はニッケルを含有する合金を用いたインクジェットヘッドに用いることができるかについては開示されていない。また、特許文献3には、インクと接するニッケル、リン酸化処理ニッケル等を用いた部分の腐食を防止するために、ホットメルト型インクに、アジン系着色剤と金属腐食防止用リン化合物とを含有させる技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−287455号公報
【特許文献2】
特公平7−122044号公報
【特許文献3】
特開平11−116865号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、ニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属と長期にわたり接触しても、腐食、溶解等により金属を劣化させることがなく、長期にわたり高精度かつ安定した吐出を行うことができるインクジェット記録用水性インクを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるインクジェット記録用水性であって、p−tert−ブチル安息香酸カリウム、水に分散又は溶解する着色剤、水、及び、水溶性有機溶剤を含有するインクジェット記録用水性インクである。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるインクジェット記録用水性インクであって、防錆剤としてp−tert−ブチル安息香酸カリウムを含有する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、インクジェット記録用水性インクにp−tert−ブチル安息香酸カリウムを添加することにより、p−tert−ブチル安息香酸カリウムがニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属表面に緻密な合成被膜を形成し、この合成被膜が保護膜となって腐食、溶解を抑制することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
上記p−tert−ブチル安息香酸カリウムの配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.1〜1.0重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、防錆の効果が充分得られないことがある。1.0重量%を超えると、本発明のインクジェット記録用水性インクの保存安定性が低下したり、水分蒸発時に本発明のインクジェット記録用水性インクが固まりやすくなったりすることがある。
【0011】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水に分散又は溶解する着色剤を含有する。
上記水に分散又は溶解する着色剤としては特に限定されず、例えば、染料、顔料等を挙げることができる。これらの着色剤は、単独で用いられてもよく、染料同士、顔料同士、又は、染料と顔料との組み合わせで2種以上併用されてもよい。
【0012】
上記染料としては特に限定されないが、例えば、塩基性染料、酸性染料、直接染料、反応性染料等のカチオン性、アニオン性の染料等を好適に用いることができる。市販されているものとしては、例えば、カラーインデックスナンバー(以下、C.I.ともいう)ベーシックレッド1,1:1,2,12,13,14,18,22,27,28,29,34,38,39,46,46:1,67,69,70、C.I.ベーシックバイオレット1,2,3,4,5,7,8,10,11,11:1,20,33、C.I.ベーシックブルー3,6,7,9,11,12,16,17,24,26,41,47,66、C.I.ベーシックグリーン1,4,5、C.I.ベーシックイエロー1,11,19,21,24,25,28,29,36,45,51,67,73、C.I.ベーシックオレンジ14,21,22,32、C.I.ベーシックブラウン1,4、C.I.ダイレクトブラック17,19,32,51,71,108,146,154,168、C.I.ダイレクトブルー6,22,25,71,86,90,106,199、C.I.ダイレクトレッド1,4,17,28,83,227、C.I.ダイレクトイエロー12,24,26,86,98,132,142、C.I.ダイレクトオレンジ34,39,44,46,60、C.I.ダイレクトバイオレット47,48、C.I.ダイレクトブラウン109、C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.アシッドブラック2,7,24,26,31,52,63,112,118、C.I.アシッドブルー9,22,40,59,93,102,104,113,117,120,167,229,234、C.I.アシッドレッド1,6,32,37,51,52,80,85,87,92,94,115,181,256,289,315,317、C.I.アシッドイエロー11,17,23,25,29,42,61,71、C.I.アシッドオレンジ7,19、C.I.アシッドバイオレット49、C.I.フードブラック1,2、C.I.リアクティブレッド180等を挙げることができる。
【0013】
上記顔料としては水相に分散可能なものであれば特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料、有機顔料等を挙げることができ、これらの顔料が界面活性剤や高分子分散剤等により表面処理されたものであってもよい。
上記有機顔料としては特に限定されず、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック昼光蛍光顔料等を挙げることができる。上記無機顔料としては特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化鉄系顔料、カーボンブラック系顔料等を挙げることができる。上記界面活性剤や高分子分散剤等により表面処理された顔料としては特に限定されず、例えば、グラフトカーボン等を挙げることができる。
【0014】
上記水に分散又は溶解する着色剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用インク全量に対して0.1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜15重量%、更に好ましくは0.5〜10重量%である。
【0015】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水に分散又は溶解する着色剤として顔料を含有する場合には、適当な分散剤が添加されて公知の方法により分散処理されることが好ましい。
上記分散剤としては特に限定されず、例えば、高分子分散剤、界面活性剤等が挙げられる。上記高分子分散剤としては特に限定されず、例えば、ゼラチン、アルブミン等の蛋白質;アラビアゴム、トラガントゴム等の天然ゴム類;サポニン等のグルコシド類;メチルセルロース、カルボキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子;ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合物の塩、スチレン−マレイン酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物の塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リン酸塩等の陰イオン性高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等の非イオン性高分子等を挙げることができる。上記界面活性剤としては特に限定されず、例えば、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類等の陰イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等の非イオン性界面活性剤等を挙げることができる。これらの分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記分散剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して0.01〜20重量%であることが好ましい。
【0016】
上記顔料の分散処理に用いられる分散機としては特に限定されず、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル等を挙げることができる。なかでも、高速型のサンドミルが好適に用いられる。
【0017】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水を含有する。
上記水は、脱イオン水(純水)であることが好ましい。
上記水の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して40重量%以上であることが好ましい。40重量%未満であると、通常時のインク粘度を正常に噴射可能な低粘度に保つことができないことがある。
【0018】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、水溶性有機溶剤を含有する。
上記水溶性有機溶剤は、インクジェットヘッドの先端部における本発明のインクジェット記録用水性インクからの析出発生、乾固防止を主目的として使用される。
上記水溶性有機溶剤としては特に限定されないが、揮発性が低く、染料溶解性が高いものが好ましく、例えば、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール類;グリセリン;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン類等を挙げることができる。これらの水溶性有機溶剤は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0019】
上記水溶性有機溶剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して5〜40重量%であることが好ましい。5重量%未満であると、湿潤作用が不充分となり、析出や乾固等の問題を生じることがある。40重量%を超えると、本発明のインクジェット記録用水性インクが必要以上に増粘して吐出ができなくなったり、記録紙上での乾燥が極端に遅くなったりする等の問題を生じることがある。より好ましくは7〜40重量%、更に好ましくは10〜30重量%である。
【0020】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、更に必要に応じて、公知の浸透剤、樹脂バインダー、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、染料溶解剤、防腐防カビ剤等を含有していてもよい。また、本発明のインクジェット記録用水性インクの記録紙への浸透性及び乾燥性を制御する目的で、エタノール、イソプロピルアルコール等の1価アルコールを含有させてもよい。
【0021】
上記浸透剤は、記録紙へのインク浸透速度を効果的に速めることにより、本発明のインクジェット記録用水性インクの紙面上での速乾性を向上させ、記録紙上での遅乾性に起因するブリーディング(異なる色の境界でのにじみ)を防止する。上記浸透剤としては特に限定されないが、浸透に伴うフェザリング(紙の繊維に沿ったヒゲ状のにじみ)を起こし難いものが好ましく、例えば、低臭気性で蒸気圧の低い多価アルコールモノアルキルエーテル等が好適に用いられる。
【0022】
上記多価アルコールモノアルキルエーテルとしては特に限定されず、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等を挙げることができる。
【0023】
上記浸透剤の配合量は、本発明のインクジェット記録用水性インク全量に対して3〜15重量%であることが好ましい。3重量%未満であると、記録紙へのインク浸透速度が遅く、乾燥時間及び滲みの問題を生じることがある。15重量%を超えると、記録紙へのインク浸透速度が速くなりすぎ、記録紙の裏側まで本発明のインクジェット記録用水性インクが達してしまったり、滲みを生じてしまったりする。
【0024】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、熱エネルギーの作用によってインクを吐出させるインクジェット方式に適用される場合には、比熱、熱膨張係数、熱伝導率等の熱的な物性値が調整されてもよい。
【0025】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるものである。このようなインクジェットヘッドとしては、微細ノズルと上記微細ノズルへのインク供給経路とを有し、上記ノズルから微小液滴を吐出することにより記録媒体の表面に画像を形成するものであって、例えば、特開平10−278265号公報に開示されているように、インク供給経路の内面にニッケルからなる電極を配置したもの、特開2002−19102号公報に開示されているように、インク供給経路を内部に有するように積層した複数のプレートを42%ニッケル合金鋼で構成したもの等を挙げることができる。本発明のインクジェット記録用水性インクは、ニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材と長期にわたり接触しても金属部材を劣化させることがないので、インク供給経路内等のインクジェット記録用水性インクと直接接触する部分にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を用いたインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に好適に使用することができる。
以下に上記インクジェット記録装置のインクジェットヘッドの好適な態様を図面を参照しながら説明する。
【0026】
図1はインクジェットヘッドの分解斜視図、図2はノズル板を除いたインクジェットヘッドの組立て状態の斜視図である。このインクジェットヘッドは、インク供給経路を構成するインク溝を有する2つの基板10、40と、両者間に挟まれたカバー板30と、インク溝に対応するノズル孔33を有するノズル板32とから構成されている。2つの基板10、40は、ほぼ同構成であるので、主として一方の基板10について説明し、基板40については基板10の各部分10a〜10fと対応する部分を40a〜40fと書き換えて説明を省略する。
【0027】
基板10には、インクを収容する複数のインク溝21と、空間となる複数のダミー溝22とが交互に平行形成され、その両溝間は隔壁24で隔てられている。隔壁24は、その高さ方向に相互に逆に分極(図4の矢印P)した2つの圧電材料を、高さ方向に積層して構成される。
【0028】
インク溝21は、その長手方向を基板10の一方の面10aに開放しかつ両端を基板10の前後両端面10b、10cに開放して形成されている。ダミー溝22は、その長手方向を基板10の一方の面10aに開放しかつ一端を基板10の前端面10bに開放して形成されているが他端を基板の後端面10cに対して壁23で閉鎖されている。両溝21、22の長手方向の開放面は、上記面10aに接着したカバー板30により覆われている。基板10の前端面10bには、ダミー溝22と連続した縦溝25が形成され、縦溝25は、基板の一方の面10aと反対側の面10dに接続している。
【0029】
基板10の後端面10cには、マニホールド31(図3)が接続され、図示しないインク供給源から供給口31aに供給されたインクが複数のインク溝21に供給される。ダミー溝22の後端は壁23によって覆われているので、インクは供給されない。
基板10の前端面10aには、各インク溝21の前端に対向するノズル孔33を複数有するノズル板32が接合される。
【0030】
図4に示したように、インク溝21及びダミー溝22の内側面、すなわち隔壁24の側面には、ニッケルの電極26a、26bが無電解メッキ法によりそれぞれ形成され、ダミー溝22の内で対向する電極26b、26bは溝底に沿って形成された分離溝27によって相互に絶縁されている。上記一方の面10aと反対側の他方の面10dには、接続端子28bが整列して形成されている。1つのインク溝21の両外側に位置する各電極26b、26bは、ダミー溝22に連続して形成された縦溝25の側面に形成された導電層を介して1つの接続端子28bに接続している。縦溝25の側面の導電層は、ダミー溝22内の各電極26b、26bと同様に溝底で分割されており、ダミー溝22内で対向する電極26b、26bは、それぞれ別の接続端子28b、28bに接続している。
【0031】
複数の接続端子28bの外側に位置する、他方の面10d上の導電層は、接続端子28aを構成する。この接続端子28aは、基板10の後端面10c上の導電層を介してすべてのインク溝21内の電極26aと接続している。接続端子28aと接続端子28b間、及び、接続端子28b同士の間は、分離溝29によって絶縁されている。接続端子28a、28bには、図示しないフレキシブルな配線材がハンダ接合され、外部の噴射パルス信号発生源に接続される。
【0032】
接続端子28aすなわちすべてのインク溝21内の電極26aをアースし、インクを噴射しようとするインク溝21に対応する接続端子28bを介して電極26b、26bにパルス信号を印加すると、図4に示したように、そのインク溝21の両側の隔壁24、24に分極方向Pと直交する電界Eが生じる。その結果、隔壁の上部及び下部がそれぞれ反対方向に圧電厚みすべり変形し、全体としてインク溝21の容積を拡大する。それにより、マニホールド31からインク溝21内にインクを吸引する。その後、パルス信号の印加を停止すると、隔壁24が復帰して、インク溝内のインクに圧力が加えられ、インクは、ノズル孔33からインク滴として噴射される。
【0033】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、p−tert−ブチル安息香酸カリウムを含有することにより、ニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属と長期にわたり接触しても、金属表面に緻密な合成被膜を形成し、この合成被膜が保護膜となって腐食、溶解を抑制するので、金属を劣化させることがなく、少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において使用された際に、インク供給経路内で金属部材を腐食したり、金属部材からニッケル等の金属イオンを溶出させたりしてフィルターやノズルの目詰まりを引き起こすことがなく、長期にわたり高精度かつ安定した吐出を行うことができるものである。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
実施例1〜3において、下記材料を充分に混合攪拌し、それぞれ下記組成のインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
(比較例1)
p−tert−ブチル安息香酸カリウム(第一工業製薬社、ラミプルーフA−1、有効成分40重量%)を配合しない代りにイオン交換水の配合量を増やしたこと以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0040】
(比較例2)
p−tert−ブチル安息香酸カリウム(第一工業製薬社、ラミプルーフA−1、有効成分40重量%)を配合しない代りにイオン交換水の配合量を増やしたこと以外は、実施例2と同様にしてインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0041】
(比較例3)
p−tert−ブチル安息香酸カリウム(第一工業製薬社、ラミプルーフA−1、有効成分40重量%)を配合しない代りにイオン交換水の配合量を増やしたこと以外は、実施例3と同様にしてインクジェット記録用水性インクを調製した。
【0042】
(評価)
<吐出性評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3で調製したインクジェット記録用水性インクを用いて、ニッケルの電極がインク溝内に露出されている図1〜4に示したインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置のノズルからの吐出性を評価した。
初期確認として全ノズルからインクジェット記録用水性インクが正常に吐出されることを確認した。次に、室温で1週間放置した後、印字を行った。更に室温での1週間の放置と印字とを12週間繰り返し行った。12週間後の吐出状態により吐出性を以下の基準に基づき評価した。表1に評価結果を示した。
A・・・12週間後において、不吐出及び曲がりは全くなかった。
B・・・12週間後において、不吐出は全くなく、曲がりは僅かにあったが短時間で回復した。
C・・・12週間後において、不吐出及び曲がりが僅かにあり、短時間で回復しなかった。
D・・・12週間後において、不吐出及び曲がりが多数あり、短時間で回復しなかった。
【0043】
<金属腐食性評価>
実施例1〜3及び比較例1〜3で調製したインクジェット記録用水性インクに、ニッケル片を浸漬し、60℃/2週間の放置試験を行った。放置試験後の金属片の表面を観察して、腐食の度合いについて目視により以下の基準に基づき評価した。表1に評価結果を示した。
A・・・金属片の表面に腐食された形跡が見られなかった。
B・・・金属片の表面に若干の腐食された形跡が見られた。
C・・・金属片の表面に激しく腐食された形跡が見られた。
D・・・金属片の表面が激しく腐食され、多量の固着物が見られた。
【0044】
<不純物の生成確認>
金属腐食性評価における60℃/2週間の放置試験に使用した後のインクジェット記録用水性インクについて、不純物の生成の有無を顕微鏡観察により確認し、以下の基準により評価した。表1に評価結果を示した。
A・・・インクジェット記録用水性インク中で、析出及び凝集は見られなかった。
B・・・インクジェット記録用水性インク中で、僅かな析出、凝集が見られた。析出、凝集の顕微鏡観察範囲中に占める割合が5%未満であった。
C・・・インクジェット記録用水性インク中で、析出、凝集が見られた。析出、凝集の顕微鏡観察範囲中に占める割合が5〜15%であった。
D・・・インクジェット記録用水性インク中で、多量の析出、凝集が見られた。析出、凝集の顕微鏡観察範囲中に占める割合が15%を超えた。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示したように、実施例1〜3で調製したインクジェット記録用インクは、金属部材を腐食することがなく、フィルターやノズルの目詰まりを引き起こす析出や凝集を生じることもなく、長期にわたり安定した噴射が可能であった。一方、比較例1〜3で調製したインクジェット記録用インクは、いずれも金属部材を腐食し、析出や凝集を生じ、長期にわたり安定した噴射を行うことができないという問題を有していた。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、ニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属と長期にわたり接触しても、腐食、溶解等により金属を劣化させることがなく、少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において使用された際にも、長期にわたり高精度かつ安定した吐出を行うことができるインクジェット記録用水性インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェットヘッドの分解斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドの組立て状態の斜視図である。
【図3】インクジェットヘッドの水平断面図である。
【図4】インクジェットヘッドの垂直断面図である。
【符号の説明】
10 基板
21 インク溝
22 ダミー溝
23 壁
24 隔壁
25 縦溝
26a、26b 電極
27 分離溝
28a、28b 接続端子
29 分離溝
30 カバー板
31 マニホールド
31a 供給口
32 ノズル板
33 ノズル孔
40 基板
Claims (2)
- 少なくとも吐出部へのインク供給経路内にニッケル又はニッケルを含有する合金からなる金属部材を有するインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に用いるインクジェット記録用水性インクであって、
p−tert−ブチル安息香酸カリウム、水に分散又は溶解する着色剤、水、及び、水溶性有機溶剤を含有する
ことを特徴とするインクジェット記録用水性インク。 - p−tert−ブチル安息香酸カリウムの配合量は、0.1〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
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