JP5296296B2 - インクジェット記録用インク - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録用インクに関する。
インクジェット記録用インクに対する重要な要求特性の一つとして、良好な耐オゾン性を示すことが挙げられる。これは、インクジェット印字物が大気中に存在するオゾンとの接触に起因する褪色(画像品位の低下)を防止することである。ところで、シアン色のインクジェット記録用インクの着色剤として、マゼンタ色やイエロー色に比べて優れた耐光性を有する銅フタロシアニン染料が用いられているが、耐オゾン性が充分とは言えないという問題があった。
また、インクジェット記録用インクに対する別の重要な要求特性の一つとして、黴が発生し難いという性質を示すことが挙げられる。これは、黴が発生すると黴自体が異物となるため、インクジェットヘッドのノズルからのインクの噴射安定性が低下し、ノズルの目詰まりも生じるからである。このため、着色剤として銅フタロシアニン染料を使用するか否かに関わらず、インクジェット記録用インクに、防黴剤としてチアゾール系化合物を添加することが行われている(特許文献1)。
しかしながら、チアゾール系化合物からなる防黴剤を添加したインクジェット記録用インクにあっては、黴の発生は抑制されるものの、依然として析出物の発生が観察されるという問題があった。特に、この傾向は、着色剤として銅フタロシアニン染料を使用した場合に顕著であった。また、インクジェットヘッドのインク流路内の金属材料の腐食を防止するために付加的にインクにベンゾトリアゾール系化合物からなる防錆剤を配合することが行われる場合もあるが、その場合にもインク中に析出物の発生が観察されるという問題があった。
特開2000−355665号公報
本発明は、従来技術の課題を解決しようとするものであり、銅フタロシアニン染料を着色剤として使用し、且つチアゾール系化合物を使用しながらも、防黴性を損なうことなく、優れた耐オゾン性を示し、しかも析出物を発生させないインクジェット記録用インクを提供することを目的とする。
本発明者等は、耐オゾン性は不充分ではあるがチアゾール系化合物との併用でも析出物を生じにくいC.I.ダイレクトブルー199と、チアゾール系化合物との併用で析出物を生じ易いが優れた耐オゾン性を示す特定構造の銅フタロシアニン染料とを併用し、しかもそれらの全カウンターイオンのうち特定割合をアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンとすることにより、両者の良好な性質が損なわれることなく、しかもそれぞれの特性が相加平均的な中間レベルとなるのではなく、予想外にもそれぞれの良好な特性が維持されることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、チアゾール系化合物と、銅フタロシアニン染料として一般式(1)で表される染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199
Figure 0005296296
(一般式(2))
Figure 0005296296
(一般式(1)において、Pc(Cu)は一般式(2)で表される銅フタロシアニン核を表す。
一般式(1)中、 はリチウムスルホナトプロピルスルホニル基であり、R はN−(2−ヒドロキシプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基である。R、Rの少なくとも1つ以上は、一般式(2)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのそれぞれに存在する。kは、lはm及びnが共に0である)を含むインクジェット記録用インクであって、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インクを提供する。
本発明のインクジェット記録用インクは、銅フタロシアニン染料として上述の一般式(1)で表される染料構造を有する染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199とを併用し、しかもこれらの全カウンターイオンのうち1〜20モル%をアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンとしている。このため、耐オゾン性に優れ、また、チアゾール系化合物を含有しているにもかかわらず、析出物の発生を大きく抑制できる。
本発明のインクジェット記録用インクは、銅フタロシアニン染料として上述の一般式(1)で表される染料構造を有する染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199とを併用することを特徴とする。
一般式(1)で表される染料(1)は、染料分子の会合性が高いために、耐オゾン性に優れている。しかし、その一方で染料分子の会合度が大きいため、水への溶解性が低いという欠点を有する。このため、インクジェット記録用インクのシアン染料として染料(1)を単独で使用した場合、チアゾール系化合物の存在で析出物を生じさせ易いやすいという欠点がある。他方、C.I.ダイレクトブルー199は、染料(1)と比較して、耐オゾン性に乏しいが、水への溶解性が良好であり、チアゾール系化合物の存在でも析出物を生じさせ難いという利点がある。
一般に、特性の異なる2種類の染料を併用した場合、両者の良好な性質が損なわれることや、損なわれないとしてもそれぞれの特性が、それらの相加平均的な中間レベルとなることが考えられるが、染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199とを併用した場合には、予想外にもそれぞれの良好な特性が維持されるという効果が得られる。
また、本発明のインクジェット記録用インクにおいては、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の染料構造における合計の全カウンターイオンのうち1〜20モル%、好ましくは1〜15モル%がアンモニウムイオン(NH4 +)又は有機アンモニウムイオンとなっている。これは、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオン量が全カウンターイオンのうち1モル%未満であると、チアゾール系化合物が原因と思われる析出物の発生を抑制できず、噴射安定性が低下し、20モル%を超えるとゴム部材由来の析出物の発生の危険性が増大するからである。また、全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであると、ベンゾトリアゾール系化合物を併用しても、析出物の発生も抑制することができる。
なお、有機アンモニウムイオンとは、NH4 +の水素を1〜4個のアルキル基(メチル基、エチル基等)やヒドロキシアルキル基(ヒドロキシエチル基等)で置換したものであり、例えば、モノメチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、トリメチルアンモニウムイオン及びテトラメチルアンモニウムイオン等を挙げることができる。
本発明のインクジェット記録用インク中の一般式(1)で表される染料構造を有する染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199の合計含有量としては、インクの性能及び要求特性により適宜決められるが、インクジェット記録用インク全量に対して、好ましくは0.1〜5重量%である。なお、本発明の効果を損なわない範囲で他の染料も併用することができる。また、本発明のインクジェット記録用インクは、一般式(1)で表される染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199とを重量比(染料(1):C.I.ダイレクトブルー199)で、好ましくは70:30〜95:5、より好ましくは85:15〜95:5の比率で含有する。この範囲内にすることにより、それぞれの染料の優れた特性をバランス良く充分に発揮させることができる。
次に、一般式(1)中の置換基R、R、R及びR、Pc(Cu)、並びにk、l、m及びnについて説明する。
前述したように、Pc(Cu)は一般式(2)で表される銅フタロシアニン核を表す。R、R、R及びRは、それぞれ独立的に−SO−R、−SONR又は−CO−Rから選ばれる置換基を表し、R、R、R及びRはすべてが同一であることはない。但し、R、R、R及びRの少なくとも1つはイオン性親水性基を置換基として有する。R、R、R及びRの少なくとも1つ以上は、一般式(2)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのそれぞれに存在する。Rは置換もしくは無置換のアルキル基、Rは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、Rは置換もしくは無置換のアルキル基を表す。kは0<k<8を満たす数、lは0<l<8を満たす数、mは0≦m<8を満たす数、nは0≦n<8を満たす数であり、且つk、l、m及びnは4≦k+l+m+n≦8を満たす数である。
一般式(1)において、R、R又はRの置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素数が1〜12の直鎖、分岐及び脂環式アルキル基が好ましく挙げられる。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。
、R又はRの置換アルキル基における置換基の例としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖又は分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜12の直鎖又は分岐鎖シクロアルケニル基(以上の各基は分岐鎖を有するものが染料の溶解性及びインクの安定性を向上させる点から好ましく、不斉炭素を有するものが特に好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、2−メチルスルホニルエチル、3−フェノキシプロピル、トリフルオロメチル、シクロペンチル)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル、4−tert−ブチルフェニル、2,4−ジ−tert−アミルフェニル)、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メタンスルホニルエトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−tert−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、3−tert−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ、3−メトキシカルバモイル)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、4−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ、ブチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルブチルアミノ)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ、2−クロロアニリノ)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド、メチルウレイド、N,N−ジブチルウレイド)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、オクチルチオ、2−フェノキシエチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−tert−オクチルフェニルチオ、2−カルボキシフェニルチオ)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド)、カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、スルホニル基(例えば、メタンスルホニル、オクタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル)、ヘテロ環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ、4−メトキシフェニルアゾ、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ、ジブチルメチルシリルオキシ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジフェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ、2−ピリジルチオ)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル)、アシル基(例えば、アセチル、3−フェニルプロパノイル、ベンゾイル)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、ホスホノ基及び4級アンモニウム基)が挙げられる。これらの中でもヒドロキシル基、エーテル結合又はエステル結合を有する基、シアノ基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していてもよい。
このようなR、R又はRの置換又は無置換のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3−スルホプロピル基及び4−スルホブチル基等が挙げられる。
銅フタロシアニン染料の好ましい態様としては、一般式(1)において、R、R、R及びRが−SO−Rで示される置換基であり、ここで、R、R、R及びRがそれぞれ有するRは置換もしくは無置換のアルキル基であるが、但し、これら4つのRの置換もしくは無置換のアルキル基のすべてが完全に同一ではない態様が挙げられる。ここで、完全に同一ではないということは、4つのRの少なくとも一つがイオン性親水性基を有する置換アルキル基であることを前提に、少なくとも2種類のRが存在することを意味する。
銅フタロシアニン染料のより好ましい態様としては、一般式(1)におけるkは0<k<4を満たす数、lは0<l<4を満たす数、mは0≦m<4を満たす数、nは0≦n<4を満たす数であり、且つk、l、m及びnはk+l+m+n=4を満たす数である態様が挙げられる。
銅フタロシアニン染料の好ましい具体例としては、以下の化学式(1−A)〜(1−E)で表される化合物が挙げられる。但し、以下の式において明示はしないが、以下式中の全カウンターイオンとC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオンとの合計の全カウンターイオンのうち1〜20モル%はアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。
Figure 0005296296
化学式(1−A)で表される化合物は、一般式(1)において、Rがリチウムスルホナトプロピルスルホニル基、RがN−(2−ヒドロキシプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基であり、kが3、lが1、m及びnが共に0である態様である。
Figure 0005296296
化学式(1−B)で表される化合物は、一般式(1)において、Rがリチウムスルホナトプロピルスルホニル基、RがN−(2−ヒドロキシイソプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基であり、kが3、lが1、m及びnが共に0である態様である。
Figure 0005296296
化学式(1−C)で表される化合物は、一般式(1)において、Rがリチウムスルホナトプロピルスルホニル基、RがN,N−(ジ(2−ヒドロキシエチル))スルファモイルプロピルスルホニル基であり、kが3、lが1、m及びnが共に0である態様である。
Figure 0005296296
化学式(1−D)で表される化合物は、一般式(1)において、Rがリチウムスルホナトプロピルスルホニル基、RがN−(2−ヒドロキシプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基、RがN−(2−ヒドロキシイソプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基であり、kが2、lが1、mが1、nが0である態様である。


Figure 0005296296
化学式(1−E)で表される化合物は、一般式(1)において、Rがリチウムスルホナトプロピルスルホニル基、Rがリチウムカルボキシラトプロピルスルホニル基、RがN−(2−ヒドロキシプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基、RがN−(2−ヒドロキシイソプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基であり、k、l、m及びnが共に1である態様である。
以下に一般式(1)で表される銅フタロシアニン染料(1)の製造方法について説明するが、一般に、無置換のフタロシアニン化合物は、特表2002-526589(WO00/17275)号公報等に記載されているようにスルホン化すると、比較的容易にフタロシアニン核にスルホ基を導入することができる。スルホン化したフタロシアニン化合物を水溶性染料として使用する場合には、スルホ基をアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムで造塩し、スルホン酸塩としてそのまま染料として使用することができる。この場合、スルホン化がフタロシアニン核の任意の位置でも起こり得る上に、導入されるスルホ基の個数の制御も困難である。従って、スルホ基の導入位置、導入個数を考慮することなく、主としてスルホン化の容易さのみを考慮した反応条件でスルホン化した場合には、生成物に導入されたスルホ基の位置と個数の特定は困難であり、置換基の個数や置換位置の異なる混合物が得られてしまう。そこで、銅フタロシアニン染料の耐オゾン性を向上させるためには、耐オゾン性が劣った生成物の混入を防止する必要があるため、あらかじめフタル酸誘導体に特定の置換基を導入し、この置換フタル酸誘導体とCuCl等の銅誘導体とから銅フタロシアニンを合成することが必要である。フタル酸誘導体と銅誘導体とから銅フタロシアニンを合成する方法に関しては、特開2000-303009号公報等に記載されている。
以下に、染料(1)の製造方法の一例を示す。ここで、置換フタル酸誘導体は、以下のスキームに従って製造することができる。
原料となるフタル酸誘導体としては、置換フタロニトリル、置換ジイミノイソインドリン、置換フタル酸ジアミド、置換フタルイミド、置換フタル酸及びその塩、置換無水フタル酸等を用いることができる。
置換フタル酸誘導体の置換基は、溶解性基もしくはその前駆体である。溶解性基とは、銅フタロシアニン染料に溶解性を付与する置換基であり、溶解性基により銅フタロシアニン染料に水溶性を付与する場合には、親水性基を表す。親水性基としては、例えばイオン性親水性基もしくはイオン性親水性基が置換された置換基が挙げられる。また、溶解性基の前駆体とは、フタロシアニン環を形成後、反応により溶解性基に変換され得る置換基を表す。置換フタル酸誘導体の置換基は、−SO−R、−SONR又は−CO−Rから選ばれる置換基が好ましい。Rは置換もしくは無置換のアルキル基、Rは水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、Rは置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
Figure 0005296296
次に、上記の化合物a〜hに代表されるフタル酸誘導体と、CuCl等の金属誘導体をモル比(金属誘導体:フタル酸誘導体)3:1〜6:1で混合し、沸点80℃以上、好ましくは130℃以上の有機溶媒存在下で、80〜300℃の範囲で反応させる。この反応温度が80℃未満であると反応速度が極端に遅くなることがあり、一方、300℃を超えると得られるフタロシアニン染料の分解が起こる可能性がある。また、この反応の際の反応時間は、好ましくは2〜20時間である。この反応時間が2時間未満であると未反応原料が多く存在してしまうことがあり、一方20時間を超えると、得られるフタロシアニン染料の分解が起こる可能性がある。なお、この反応は1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)あるいはモリブデン酸アンモニウム等の触媒の存在下で行なうことができる。次いで透析によって元のカチオンを除去し、次いで1価の金属カチオンを添加する(例えば、アルカリ金属水酸化物の添加による)等の方法により交換することができる。反応終了後、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンを含まない一般式(1)で表される銅フタロシアニン染料を、染料構造の全カウンターイオンの少なくとも一部がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンとなるように、アンモニア水又は有機アンモニウムハイドロオキサイド水溶液で処理することによって、所望の耐オゾン性を有する一般式(1)で表される銅フタロシアニン染料を得ることができる。なお、銅フタロシアニン染料中のカウンターイオン量は、市販の陽イオンクロマトグラフィー装置により測定可能である。
本発明で使用されるC.I.ダイレクトブルー199とは、例えば、一般式(3)で表される染料である。
Figure 0005296296
(一般式(4))
Figure 0005296296
一般式(3)中、Pc(Cu)は一般式(4)で表される銅フタロシアニン核を表す。置換基SOY基(ここで、Yはカウンターイオンを表し、水素イオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオン等である。)及びSONH基は、一般式(4)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのいずれかに存在する。
C.I.ダイレクトブルー199は、例えば以下の工程(i)及び(ii)からなる公知の銅フタロシアニン置換方法等により製造することができる。
工程(i)
まず、クロロスルホン化剤を用いて銅フタロシアニンをクロロスルホン化する。クロロスルホン化剤としては、例えば、クロロスルホン酸と塩素化剤(オキシ塩化リン又は三塩化リン)との混合物を含んだものを使用する。クロロスルホン酸と銅フタロシアニン化合物のモル比(クロロスルホン酸:銅フタロシアニン化合物)は、5:1〜200:1の範囲が好ましく、塩素化剤と銅フタロシアニンのモル比(塩素化剤:銅フタロシアニン)は、0.5:1〜10:1の範囲が好ましい。
このクロロスルホン化反応は、90〜180℃の範囲の温度で0.5〜16時間行われる。一般に、クロロスルホン化の反応時間は反応温度に依存しており、反応温度がより高ければ短くなり、温度がより低ければ長くなる傾向にある。クロロスルホン化反応のより好ましい温度と時間の条件は、135〜145℃で1.5〜5.0時間である。
さらに、このクロロスルホン化剤は硫酸を含んでいてもよい。クロロスルホン化剤が硫酸を含有する場合、硫酸と銅フタロシアニン化合物のモル比(硫酸:銅フタロシアニン化合物)は、好ましくは0.3:1〜2:1の範囲である。
工程(ii)
次に、工程(i)で得られた生成物を、必要に応じて全カウンターイオン中の少なくとも一部がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンとなるように、アンモニア又は有機アミンと縮合させて、C.I.ダイレクトブルー199(但し、一般式(1)で表される染料(1)との合計の全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンである。)を得る。
具体的には、この工程は3〜35重量%の水酸化アンモニウム又は水酸化有機アンモニウムを用いて0〜50℃の反応温度で行なわれる。一般に、この反応時間は反応温度に依存しており、反応温度がより高ければ短くなり、反応温度がより低ければ長くなる傾向にある。縮合反応の好ましい温度と時間の条件は、0〜45℃で0.5〜24時間である。
なお、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の合計の全カウンターイオンのうち1〜20モル%をアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンとする際に、それぞれの全カウンターイオン中で1〜20モル%としてもよく、一方の染料だけにアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンを導入し、インクとした時に、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオン中でアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンが1〜20モル%となるようにしてもよい。即ち、インクとした時に、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオン中でアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンが1〜20モル%となる限り、染料(1)又はC.I.ダイレクトブルー199におけるカウンターイオン中での全アンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンの割合は適宜決定することができる。
本発明のインクジェット記録用インクは、チアゾール系化合物を含有する。チアゾール系化合物は、防黴剤として機能する。チアゾール系化合物としては、ベンズイソチアゾリン、イソチアゾリン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−(チオシアノメチルチオ)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンズチアゾール及び3−アリルオキシ−1,2−ベンズイソチアゾール−1,1−オキシド等を挙げることができる。また、チアゾール系防黴剤としては、アーチ・ケミカルズ(株)より製造販売されているProxelシリーズ(BDN,BD20,GXL,LV,XL2及びUltra10等)を使用することもできる。
チアゾール系化合物のインクジェット記録用インク中における含有量は、少な過ぎると防黴効果が期待できず、多すぎると析出物の発生の危険性が増大するので、インクジェット記録用インク全量に対して、好ましくは10〜500ppm、より好ましくは100〜500ppmである。
本発明のインクジェット記録用インクは、インクジェットヘッドを構成する金属材料(特に、42合金(42%ニッケルを含有するニッケル−鉄合金))がインクとの接触を原因の一つとする錆の発生を防止するために、さらに、ベンゾトリアゾール系化合物を配合することが好ましい。ベンゾトリアゾール系化合物は、防錆剤として機能する。ベンゾトリアゾール系化合物としては、1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩等を挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系化合物のインクジェット記録用インク中における含有量は、少な過ぎると防錆効果が期待できず、多すぎると析出物の発生の危険性が増大するので、インクジェット記録用インク全量に対して、好ましくは0〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.2重量%である。
次に、本発明のインクジェット記録用インクを構成する水及び水溶性有機溶剤について説明する。
本発明で使用する水としては、塩類の少ないイオン交換水が好ましい。インクジェット記録用インク中における水の含有量は、他の成分の残部という位置づけであるから、他の成分の含有量に依存するが、インクジェット記録用インク全量に対して、通常10〜90重量%、好ましくは40〜80重量%である。
本発明で使用する水溶性有機溶剤としては、主としてインクジェットヘッドのノズル先端部におけるインクの乾燥を防止するための湿潤剤と、主として記録紙面上での乾燥速度を速くするための浸透剤とが含まれる。
湿潤剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコール;グリセリン;2−ピロリドン;N−メチル−2−ピロリドン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。中でも、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好適である。
インクジェット記録用インク中における湿潤剤の含有量は、インクジェット記録用インク全量に対して、一般的には0〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
一方、浸透剤としては、例えば、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールエチルエーテル、トリプロピレングリコールプロピルエーテル等のグリコール系エーテルが挙げられる。
インクジェット記録用インク中における浸透剤の含有量は、インクジェット記録用インク全量に対して、一般的には0〜20重量%、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%である。なお、含有量が過剰であると、インクの記録紙への浸透性が高くなりすぎて滲みの原因となってしまうことがある点に留意が必要である。
本発明のインクジェット記録用インクは、更に必要に応じて、ポリビニルアルコール、セルロース及び水溶性樹脂等の粘度調整剤;表面張力調整剤等の従来公知の添加剤を含有していてもよい。
本発明のインクジェット記録用インクは、上述の着色剤である銅フタロシアニン染料と、チアゾール系化合物と、更に水と、水溶性有機溶剤と、その他の必要に応じて各種添加剤とを、常法に従って均一に混合することにより調製することができる。
実施例1〜11及び比較例1〜5
表1に示すインク組成成分を、均一に混合することによりインクジェット記録用インクを調製した。なお、実施例及び比較例で使用した染料は以下のとおりである。
染料(1−A)は前出の化学式(1−A)で表される化合物であって、全カウンターイオンのアンモニウムイオン率は0モル%、染料(1−B)は前出の化学式(1−B)で表される化合物であって、全カウンターイオンのアンモニウムイオン率は0.5モル%、染料(1−C)は前出の化学式(1−C)で表される化合物であって、全カウンターイオンのアンモニウムイオン率は2モル%、染料(1−D)は前出の化学式(1−D)で表される化合物であって、全カウンターイオンのアンモニウムイオン率は5モル%、染料(1−E)は前出の化学式(1−E)で表される化合物であって、全カウンターイオンのアンモニウムイオン率は10モル%、染料(1−F)は前出の化学式(1−A)で表される化合物であって、全カウンターイオンのアンモニウムイオン率は20モル%、染料(1−G)は前出の化学式(1−B)で表される化合物であって、全カウンターイオンのアンモニウムイオン率は30モル%であった。残りのカウンターイオン種は、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオン等の1価の金属イオンであった。
染料(2−A)〜(2−F)はいずれもC.I.ダイレクトブルー199であるが、全カウンターイオンのうちアンモニウムイオンの割合が、染料(2−A)の場合には0モル%、染料(2−B)の場合には2モル%、染料(2−C)の場合には5モル%、染料(2−D)の場合には10モル%、染料(2−E)の場合には20モル%、染料(2−F)の場合には30モル%であった。なお、染料(2−A)〜(2−F)における残りのカウンターイオン種は、いずれの場合においてもナトリウムイオンであった。
なお、染料中のアンモニウムイオンの測定には日本ダイオネクス(株)製DX−500シリーズを用いた。測定の際、分離カラムとして日本ダイオネクス(株)製ION Pac CG16を用い、恒温槽温度45℃、サプレッサとして日本ダイオネクス(株)製CMMS III 4mmを用いた。
<<評価>>
インクジェット記録用インクについて、保存安定性(濾過試験)、噴射安定性、耐久噴射安定性、防黴性、防錆性、ゴム析出性、耐オゾン性及びOD値1.0のパッチのOD値減少率を、以下に説明するように試験評価した。得られた結果を表1に示す。
<保存安定性(濾過試験)>
インクジェット記録用インク100mLをガラス容器内に密閉し、60℃の恒温槽中に14日間放置した後、インク50mLを孔径0.2μmの親水性メンブランフィルタで濾過を行い、メンブランフィルタ上の析出物の有無を目視観察及び顕微鏡観察によって以下の基準で評価した。
○…メンブランフィルタ上に析出物が存在しない
×…メンブランフィルタ上に析出物が存在する
<噴射安定性>
各インクジェット記録用インクについて、所望のインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機(ブラザー工業(株)製;DCP−110C)に装着し、1億ドット(約3万枚)の連続印字を行い、以下の基準に従って評価した。
◎…連続印字中において、不吐出及び吐出曲がり全くなし
○…連続印字中において、不吐出もしくは吐出曲がりが僅かにあり、不吐出もしくは吐出曲がり共に5回以内のパージによって回復
×…連続印字中において、不吐出及び吐出曲がり多数有り、不吐出及び吐出曲がり共に短時間で回復せず
<耐久噴射安定性>
上述の噴射安定性の試験を行った後、インクカートリッジが装着された状態のインクジェトプリンタ搭載デジタル複合機(DCP−110C)を60℃の恒温槽中に2週間放置し、その後、再び1億ドット(約3万枚)の連続印字を行い、以下の基準で評価した。
◎…連続印字中において、不吐出及び吐出曲がり全くなし
○…連続印字中において、不吐出もしくは吐出曲がりが僅かにあり、不吐出もしくは吐出曲がり共に5回以内のパージによって回復
×…連続印字中において、不吐出及び吐出曲がり多数有り、不吐出及び吐出曲がり共に短時間で回復せず
<防黴性>
日水製薬(株)製の細菌検査用フードスタンプ(生菌数用及び真菌用)のキャップをとり、寒天培地面に充分なインクジェット記録用インクを塗布した。キャップをしないまま10時間放置することにより、菌の付着を促した。その後でキャップをし、生菌数用フードスタンプについては36℃の恒温槽中に2日間、真菌用フードスタンプについては23℃の恒温槽中で5日間、培養した。目視観察により、以下の基準にて評価を行った。
○…黴の発生なし
×…黴の発生あり
<防錆性>
インクジェットヘッド部に使用している金属部材を縦50mm×横10mm×厚さ2mmの短冊形状に加工した金属部材サンプル片1枚を密閉容器内で、インクジェット記録用インク10mLに浸漬し、60℃の恒温槽中に2週間放置した。その後、浸漬した金属部材サンプル片を取り出し、金属部材サンプル片を目視観察及び顕微鏡観察を行い、以下の基準にて評価を行った。
◎…着色及び腐食がまったくない
○…わずかな着色があるが腐食はない
×…着色及び腐食がある
<ゴム析出性>
縦50mm×横10mm×厚さ2mmの短冊形状に加工したゴムサンプル1枚を、密閉容器内でインクジェット記録用インク10mLに浸漬し、60℃の恒温槽中に2週間放置した。その後、浸漬したサンプルを取り出し、サンプルを取り出した後のインク全量を電鋳フィルター(孔径13μm、有効濾過面積8cm2)で濾過し、濾過に要する時間を計測した。また、対照として、ゴムサンプルを加えないインクのみを同条件(60℃、2週間)で放置し、同一規格の電鋳フィルターで濾過し、濾過に要する時間(基準時間)を求めた。ゴムサンプルを浸漬させたインクの濾過に要した時間の基準時間に対する割合を求め、以下の基準で評価した。なお、濾過後の電鋳フィルターを顕微鏡観察したところ、濾過時間の基準時間に対する割合が大きいほど、析出物の量が多い傾向があった。
◎…基準時間の130%未満の濾過時間を要する
○…基準時間の130%以上200%未満の濾過時間を要する
△…基準時間の200%以上400%未満の濾過時間を要する
×…基準時間の400%以上の濾過時間を要する
<耐オゾン性>
インクジェット記録用インクを所望のインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンタ搭載デジタル複合機(ブラザー工業(株)製;DCP−110C)に装着し、印字評価を行った。まず、評価サンプルとして、写真光沢紙(ブラザー工業(株)製;BP60GLA)にシアンインクのグラデーションサンプルをプリントし、初期OD値1.0のパッチを作成した。このパッチに対し、耐オゾン性評価試験を、スガ試験機(株)製オゾンウェザーメーターOMS−Hを用いて、オゾン濃度1ppm、槽内温度24℃、湿度60%RHで40時間放置する条件下で行なった。具体的には、試験前にOD値1.0を示すシアン色プリント部カラーパッチについて、耐オゾン性評価試験後におけるOD値を測定した。OD値はGretag Macbeth社製Spectrolino(光源:D65;視野:2°;status A)により測定した。得られた測定値(試験後OD値)を以下の数式に代入し、試験前OD値(1.0)に対するOD値減少率を求めた。
Figure 0005296296
得られたOD値減少率を以下の評価基準に基づき評価した。OD値減少率が30%未満であれば、一般使用における耐オゾン性能は合格レベルであると判断した。
◎…OD値減少率が20%未満
○…OD値減少率が20%以上30%未満
△…OD値減少率が30%以上40%未満
×…OD値減少率が40%以上
<総合評価>
以上の評価結果を勘案し、以下の基準にて総合評価を行った。
G …すべての評価結果が◎又は○である
NG…評価結果のいずれかに△又は×がある
















Figure 0005296296

<実施例及び比較例で得られた結果の考察>
実施例1のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの12%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有していないため、金属部材の浸漬でわずかに着色したが、腐食には至らず、防錆性は実用上問題はないレベルであった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−E)を全染料中の90重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例2のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの19.4%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず、防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−F)を全染料中の97重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例3のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=0.5重量%)は、全染料中のカウンターイオンの1.17%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−B)を全染料中の93重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例4のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=3.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの6.05%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−D)を全染料中の93重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例5のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=1.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの1.8%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−C)を全染料中の90重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例6のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの18.2%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−F)を全染料中の90重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例7のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=2.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの5.6%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−C)を全染料中の80重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例8のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=5.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの9.0%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−E)を全染料中の80重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例9のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=3.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの3.35%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−B)を全染料中の70重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例10のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=0.5重量%)は、全染料中のカウンターイオンの9.0%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−A)を全染料中の70重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。
実施例11のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの18.8%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、終始安定に噴射することができ、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−G)を全染料中の60重量%含むため、他の実施例に比べると劣るものの耐オゾン性も良好であった。
一方、比較例1のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性は良好であった。また、ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、全染料中にカウンターイオンとしてアンモニウムイオンを含まないため、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−A)を全染料中の80重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。しかし、全染料中にカウンターイオンとしてアンモニウムイオンを含まないため、析出物の発生を抑制することができず、そのため、噴射安定性及び耐久噴射安定性に問題があった。
比較例2のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属への腐食を起こさず良好であった。全染料中のカウンターイオンのアンモニウムイオン量が0.65%であるため、ゴムに対する攻撃性は弱く、ゴム部材由来の析出物は生じなかった。耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−B)を全染料中の90重量%含むため、耐オゾン性は良好であった。しかし、全染料中のカウンターイオンのアンモニウムイオン量が0.65%であるため、析出物の発生を抑制することができず、そのため、噴射安定性及び耐久噴射安定性に問題があった。
比較例3
本比較例のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの30%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、インク供給直後の噴射安定性には問題が無かった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性も良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。また、耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−G)を全染料中の80重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。しかし、全染料中のカウンターイオンのアンモニウムイオン量が30%であるため、ゴムに対する攻撃性が強く、ゴム部材由来の析出物が生じてしまい、耐久噴射安定性に問題が生じた。
比較例4のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの5%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、噴射安定性、耐久噴射安定性には問題がなく、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物も生じなかった。チアゾール系化合物を含有しているため、黴の発生はなく防黴性も良好であった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有しているため、金属の腐食が生じず防錆性も良好であった。しかし、使用した染料(2−C)の耐オゾン性が低いため、インクジェット記録用インクの耐オゾン性は不充分であった。
比較例5のインクジェット記録用インク(染料合計含有量=4.0重量%)は、全染料中のカウンターイオンの6.5%がアンモニウムイオンであるため、析出物の発生はなく、噴射安定性には問題はなく、また、ゴムに対する攻撃性が弱く、ゴム部材由来の析出物も生じなかった。ベンゾトリアゾール系化合物を含有していないため、金属部材の浸漬でわずかに着色したが、腐食には至らず、防錆性は実用上問題はないレベルであった。耐オゾン性の良好な銅フタロシアニン染料(1−D)を全染料中の90重量%含むため、耐オゾン性も良好であった。しかし、チアゾール系化合物を含有していないため、インク中に黴が発生し、黴の影響で耐久噴射安定性に問題があった。
本発明のインクジェット記録用インクは、銅フタロシアニン染料として、前出の一般式(1)で表される染料構造を有する染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199とを併用し、しかもそれらの合計の全カウンターイオンのうち1〜20モル%をアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンとしている。このため、耐オゾン性に優れ、また、チアゾール系化合物を含有しているにもかかわらず、析出物の発生を大きく抑制できる。

Claims (8)

  1. チアゾール系化合物と、銅フタロシアニン染料として一般式(1)で表される染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199
    Figure 0005296296
    (一般式(2))
    Figure 0005296296
    (一般式(1)において、Pc(Cu)は一般式(2)で表される銅フタロシアニン核を表す。
    一般式(1)中、 はリチウムスルホナトプロピルスルホニル基であり、R はN−(2−ヒドロキシプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基である。R、Rの少なくとも1つ以上は、一般式(2)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのそれぞれに存在する。kは、lはm及びnが共に0である)を含むインクジェット記録用インクであって、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インク。
  2. チアゾール系化合物と、銅フタロシアニン染料として一般式(1)で表される染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199
    Figure 0005296296
    (一般式(2))

    Figure 0005296296
    (一般式(1)において、Pc(Cu)は一般式(2)で表される銅フタロシアニン核を表す。
    一般式(1)中、R がリチウムスルホナトプロピルスルホニル基であり、R がN−(2−ヒドロキシイソプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基を有する。R 、R の少なくとも1つ以上は、一般式(2)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのそれぞれに存在する。kは3、lは1、m及びnが共に0である)を含むインクジェット記録用インクであって、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インク。
  3. チアゾール系化合物と、銅フタロシアニン染料として一般式(1)で表される染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199
    Figure 0005296296
    (一般式(2))

    Figure 0005296296
    (一般式(1)において、Pc(Cu)は一般式(2)で表される銅フタロシアニン核を表す。
    一般式(1)中、R がリチウムスルホナトプロピルスルホニル基であり、R がN,N−(ジ(2−ヒドロキシエチル))スルファモイルプロピルスルホニル基を有する。R 、R の少なくとも1つ以上は、一般式(2)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのそれぞれに存在する。kは3、lは1、m及びnが共に0である)を含むインクジェット記録用インクであって、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インク。
  4. チアゾール系化合物と、銅フタロシアニン染料として一般式(1)で表される染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199
    Figure 0005296296
    (一般式(2))

    Figure 0005296296
    (一般式(1)において、Pc(Cu)は一般式(2)で表される銅フタロシアニン核を表す。
    一般式(1)中、R がリチウムスルホナトプロピルスルホニル基であり、R がN−(2−ヒドロキシプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基、R がN−(2−ヒドロキシイソプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基である。R 、R 、R の少なくとも1つ以上は、一般式(2)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのそれぞれに存在する。kは2、lは1、mが1、及びnが0である)を含むインクジェット記録用インクであって、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インク。
  5. チアゾール系化合物と、銅フタロシアニン染料として一般式(1)で表される染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199
    Figure 0005296296
    (一般式(2))

    Figure 0005296296
    (一般式(1)において、Pc(Cu)は一般式(2)で表される銅フタロシアニン核を表す。
    一般式(1)中、R がリチウムスルホナトプロピルスルホニル基であり、R がリチウムカルボキシラトプロピルスルホニル基、R がN−(2−ヒドロキシプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基、R がN−(2−ヒドロキシイソプロピル)スルファモイルプロピルスルホニル基である。R 、R 、R 及びR の少なくとも1つ以上は、一般式(2)で表される銅フタロシアニン核中の4つのベンゼン環A、B、C及びDのそれぞれに存在する。k、l、m及びnが共に1である)を含むインクジェット記録用インクであって、染料(1)及びC.I.ダイレクトブルー199の全カウンターイオンのうち1〜20モル%がアンモニウムイオン又は有機アンモニウムイオンであることを特徴とするインクジェット記録用インク。
  6. さらに、ベンゾトリアゾール系化合物を含有する請求項1〜5記載のインクジェット記録用インク。
  7. 染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199との合計含有量が、インクジェット記録インク全量に対して0.1〜5.0重量%である請求項1〜6いずれかに記載のインクジェット記録用インク。
  8. 染料(1)とC.I.ダイレクトブルー199とを、重量比(染料(1):C.I.ダイレクトブルー199)で70:30〜95:5の比率で含有する請求項1〜のいずれかに記載のインクジェット記録用インク。
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