JP2004131470A - ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】反応装置へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを均一に攪拌した混合物として連続的または断続的に供給する工程と、前記反応装置に分子状酸素を供給しながらフタル酸ジエステルの酸化二量化反応を140℃以上且つ250℃未満の温度範囲でおこなう工程と、前記反応装置から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出す工程とを、同時並行でおこなうことを特徴とするビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フタル酸ジエステルを、パラジウム化合物を含む触媒の存在下に、分子状酸素が存在する雰囲気中、高温で、酸化二量化反応をさせて、ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを製造する改良された製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フタル酸ジエステルを、パラジウム化合物を含む触媒の存在下に分子状酸素が存在する雰囲気中高温で酸化二量化反応をさせて、ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを製造することは公知である。この製造方法では反応中にパラジウム化合物からなる触媒が容易に失活するという問題があり、この問題を解決するために種々の検討がなされてきた。
【0003】
特許文献1には、オルソフタル酸エステルを、パラジウム塩と塩基性二座配位子と銅塩とからなる触媒の存在下に、分子状酸素を含む気体を反応系に供給して、高温で、酸化カップリングさせ、次いで、前記触媒成分を反応系に1〜10回逐次添加して酸化カップリングさせるビフェニルテトラカルボン酸エステルの製造方法が開示されている。
特許文献2には、フタル酸エステルを、パラジウム塩と銅塩との存在下に、分子状酸素の存在する雰囲気で、高温で、反応系にβ−ジケトン類を連続的または断続的に補給しながら酸化カップリングさせるビフェニルテトラカルボン酸エステルの製造方法が開示されている。
特許文献3には、パラジウム塩、塩基性二座配位子及び銅塩からなる触媒の存在下に、O−フタル酸ジエステルを酸化二量化反応をおこなってビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを製造する方法において、反応槽に付設した循環ラインに反応液を循環させながら該循環ライン中に触媒成分を投入して、触媒成分を反応槽へ逐次補充することが開示されている。
特許文献4には、比表面積が0.5m2/g以上の粉末状パラジウム塩と塩基性二座配位子化合物とを使用し、触媒成分を逐次添加してO−フタル酸ジエステルを二量化する3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法が開示されている。
【0004】
これらの方法はいずれも触媒成分を逐次添加する方法であり、触媒成分を一度に加える方法と比べて、触媒を有効に活用することができ、反応収率を高めることができた。しかしながら、これらの方法では、触媒成分を逐次添加するための特殊な設備や煩雑な操作が必要であるし、また、触媒成分添加時に反応混合液中の各触媒成分濃度が急激に変化するので反応制御が容易ではなく、再現性良く高い反応収率及び所望の生成物の高選択性を得るうえで改良の余地があった。更に、触媒成分を逐次添加する方法で、多量の触媒成分を逐次添加しながら長期間反応を続けると、所望の生成物が逐次的に原料化合物と副反応を起こして副生成物が多くなるなどの問題があり、長期間に亘って再現性良く高い反応収率及び所望の生成物の高選択性を得ることが困難であり、改良の余地があった。
【0005】
更に、前記特許文献の製造方法はいずれも回分操作によるものであった。このため、これらの製造方法は、反応開始時や終了時にその都度昇温や冷却などの煩雑な操作を必要とするものであり、経済的見地からも昇温及び冷却によるエネルギー面の損失に加え回分操作に伴って各仕込みごとに装置を開放するので材料面での損失を免れないなどの問題があり、改良の余地があった。しかしながら、前記特許文献には、連続的な製造方法のための具体的な手段や方法について何ら示されていなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭60−51150号
【特許文献2】
特開昭61−106541号
【特許文献3】
特開昭64−48号
【特許文献4】
特開2000−186063号
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、フタル酸ジエステルを、パラジウム化合物を含む触媒の存在下に、分子状酸素を反応混合液中に供給して、高温で、酸化二量化反応させてビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを製造する方法において、特殊な設備や煩雑な操作が不要であり、触媒を効果的に利用することができ、容易に反応を制御することができ、連続的に製造することができ、更に経済的な、改良された製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、反応装置へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを均一に攪拌した混合物として連続的または断続的に供給する工程と、前記反応装置に分子状酸素を供給しながらフタル酸ジエステルの酸化二量化反応を140℃以上且つ250℃未満の温度範囲でおこなう工程と、前記反応装置から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出す工程とを、同時並行でおこなうことを特徴とするビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法に関する。また、反応装置へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを均一に溶解した混合溶液として供給すること、反応装置へ供給する前のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを、50℃〜100℃の温度範囲で保持すること、パラジウム化合物を含む触媒が、パラジウム化合物、二座配位子、及び、銅化合物とを含んでいること、二座配位子が、2個の窒素原子、2個の酸素原子、又は、窒素原子と酸素原子とによりパラジウムと錯体形成することができる二座配位子であること、パラジウム化合物をフタル酸ジエステルに対して0.00093倍モル以下にすること、銅化合物が、プロピオン酸銅、ノルマルブチル酸銅、ビス(アセチルアセトナト)銅、又はピバル酸銅の無水物もしくは含水物のいずれかであることに関する。
【0009】
更に、本発明は、反応装置が直列に連結された複数個の反応器からなっており、第一の反応器へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを連続的または断続的に供給する工程と、各反応器から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出して次の反応器へ順次導入する工程と、各反応器に分子状酸素を供給しながらフタル酸ジエステルの酸化二量化反応をおこなう工程と、最後の反応器から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出す工程とを、同時並行でおこなうことを特徴とするビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法は、反応装置へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを均一に攪拌した混合物として連続的または断続的に供給する工程と、前記反応装置に分子状酸素を供給しながらフタル酸ジエステルの酸化二量化反応を140℃以上且つ250℃未満の温度範囲でおこなう工程と、前記反応装置から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出す工程とを、同時並行でおこなうことを特徴とする製造方法である。この製造法の反応中、反応混合液中の活性なパラジウム化合物を含む触媒は均一に且つ好適な所定濃度に保持される。
【0011】
具体的には、まず原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを反応装置に所定量になるまで供給する。次いで、その後の連続反応中は、原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを反応装置へ供給する供給量と反応装置から取出す反応混合液の取出量とをほぼ等量に調節することによって、反応装置内の反応混合液の量を所定の一定量に保持しながら、フタル酸ジエステルの酸化二量化反応をおこなう。その結果、反応器内では、原料のフタル酸ジエステル及び触媒などが好ましい所定量及び所定濃度に維持されるので、フタル酸ジエステルの酸化二量化反応を常に好適におこなうことが可能になる。
フタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを反応装置へ供給する工程と、反応装置から反応混合液を取出す工程とは、それらの供給と取出とがバランスをとって同時並行でおこなわれ、反応装置内の反応混合液の量が所定量を維持して連続的に酸化二量化反応をおこなわせることができるのであれば、供給工程及び取出工程が連続的であっても断続的であっても構わない。
しかし、原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを反応装置へ供給する工程と、反応装置からの反応混合液を取出す工程とは、煩雑な操作や複雑な設備などを必要とせず、簡便な送液ポンプなどを用いて容易に実施できるので連続的におこなうことが好適である。
【0012】
本発明において、原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とは、フタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とが酸化二量化反応に好適な所定の組成比をもった均一に攪拌された混合物として、好ましくは均一に溶解した混合溶液として反応装置へ供給される。
触媒成分を逐次添加する従来法とは異なり、本発明は、フタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを均一に攪拌した混合物として反応装置へ供給することによって、反応混合液中の活性なパラジウム化合物を含む触媒の濃度を好適な所定濃度に長期間一定に保持することが可能になる。
原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを、それぞれ別々に供給すると、供給設備が個別に必要になるという不都合があるのみならず、反応混合液中で原料と触媒の濃度にばらつきが生じるため、反応制御が難しくなり、また目的化合物の生成量が低下したり副生成物の生成量が増えるなどの問題が生じ易くなり、再現性良く高い反応収率及び所望の生成物の高選択性を得ることが困難となる。更に、原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを一緒に供給する場合でも、均一に攪拌した混合物として供給しないと、反応混合液中で原料と触媒との濃度にばらつきが生じるため、反応制御が難しくなり、また目的化合物の生成量が低下したり副生成物の生成量が増えるなどの問題が生じ易くなり、再現性良く高い反応収率及び所望の生成物の高選択性を得ることが困難となる。
【0013】
更に、本発明において、原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを、均一に溶解した混合溶液として反応装置へ供給することが特に好適である。フタル酸ジエステルにパラジウム化合物を含む触媒が溶解しないと、フタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とが常に均一な混合状態を保つように大型の攪拌装置や触媒供給装置を用いて攪拌・供給し続けなければならないなどの不都合を生じることがある。
原料のフタル酸ジエステルにパラジウム化合物を含む触媒を酸化二量化反応に好適な所定濃度になるように予め均一に溶解した混合溶液とし、その混合溶液を供給すれば、反応混合液中でフタル酸ジエステルに対して活性なパラジウム化合物を含む触媒の濃度を好適な所定濃度に保持することが容易になるから、反応制御が極めて容易になる。
【0014】
更に、原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とは、50℃〜100℃の温度に加温して溶解し、反応装置へ供給するまで、前記混合溶液を50℃〜100℃の温度範囲で保持することが好適である。このような加温は触媒の均一な溶解を助け、反応装置へ供給したときに反応混合液内の触媒濃度及び温度のばらつきを抑制して反応の制御が容易になる。前記混合溶液を100℃を越える温度で保持すると、フタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とが反応速度が遅いながらも量論的な酸化二量化反応を起こし、分子状酸素の不足により再酸化速度が極めて遅くなるため、パラジウムが析出して所定量(濃度)の触媒供給ができなくなることがあるので好ましくない。
【0015】
本発明において、フタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒との好適な組成比は、パラジウム化合物がフタル酸ジエステルに対して、通常は0.00001倍モル以上特に0.00005倍モル以上であり、また0.01倍モル以下特に0.001倍モル以下であるが、パラジウム化合物がフタル酸ジエステルに対して0.00093倍モル以下が酸化二量化反応時にパラジウム化合物を含む触媒が容易に溶解するので特に本願発明においては好適である。
【0016】
本発明において、フタル酸ジエステルの酸化二量化反応は、140℃以上好ましくは200℃以上、且つ、250℃未満好ましくは240℃以下の温度範囲で実施される。
フタル酸ジエステルの酸化二量化反応の反応温度が250℃以上になると、パラジウム化合物を含む触媒は酸化二量化反応にともなって失活するだけでなく、触媒自身が熱分解によっても失活するようになるから、反応制御が困難になり、また酸化二量化反応生成物の収率が著しく低下する。一方、140℃未満では酸化二量化反応速度が十分でなくなるので好ましくない。
【0017】
また、パラジウム化合物を含む触媒の存在下分子状酸素を供給しながら高温でフタル酸ジエステルの酸化二量化反応をおこなう反応において、触媒を逐次添加する従来法では、触媒をどのタイミングでどの程度の量を添加するかは、実際の反応混合液中に活性な触媒がどの程度残留しているかを直接検知するのは難しいから、その都度実際の触媒活性の低下に対応して決定することはできない。即ち、触媒の逐次添加によって反応を制御して十分な再現性を得ることは難しい。
一方、本発明においては、原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを希望する酸化二量化反応が進むような所定の組成比で連続的に供給する。この結果、酸化二量化反応の反応温度が140℃以上且つ250℃未満の温度範囲であれば、反応器内の活性な触媒濃度を好適な一定の濃度に維持できるから、酸化二量化反応を容易に制御することができる。即ち、本発明においては、触媒の逐次添加のための特殊な装置や煩雑な操作なしに、長期間連続して制御された酸化二量化反応を好適におこなうことができる。
【0018】
本発明において、反応装置は、直列に連結された複数個の反応器、好ましくは2〜6個の反応器から構成されていることが特に好適である。反応器が単一の場合には、供給された直後の活性が十分に高い触媒の一部が反応装置から取出されることを抑制し難いから触媒を効果的に用いるという点において有利ではない。反応装置を直列に連結された複数個の反応器で構成し、第一の反応器へ原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを連続的または断続的に供給し、且つ、各反応器から反応混合液を連続的または断続的に取出して次の反応器へ順次導入しながら、各反応器において分子状酸素を供給して前記フタル酸ジエステルの酸化二量化反応をおこない、且つ、最後の反応器から反応混合液を連続的または断続的に取出すことによって、供給された直後の活性が十分に高い触媒が反応装置から取出されることを効果的に抑制することができるから、触媒を効果的に用いることが容易になる。
【0019】
反応装置を直列に連結された複数個の反応器で構成した場合には、連続反応中、反応装置の各反応器内に存在する反応混合液の量は、それぞれ所定量に維持される。すなわち、各反応器内の反応混合液が所定量に達した後は、第一の反応器への原料のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒との供給量と、各反応器から次の反応器へ順次導入される反応混合液の量と、最後の反応器から取出す反応混合液の取出量とは、ほぼ等量になるように調節される。
その結果、各反応器内では、原料のフタル酸ジエステル、触媒、及び、反応生成物などが、好ましい所定量及び所定濃度に維持されるのでフタル酸ジエステルの酸化二量化反応を好適におこなうことが可能になる。
【0020】
本発明において、反応装置を直列に連結された複数個の反応器で構成した場合の酸化二量化反応の反応温度は、各反応器で同一でもよく、また、異なっていても構わない。特に、各反応器の反応温度が140℃以上且つ250℃未満の温度範囲であって、(n+1)番目の反応器の反応温度がn番目の反応器の反応温度よりも高いことが好適である。(ここで、nは1以上の整数である。)
【0021】
本発明で使用するフタル酸ジエステルは、化学式(1)で示される。
【化1】
[ここで、R1は、それぞれ独立に、アルキル基、又は、アリール基であり、置換基を持っていてもよい。]
本発明で使用するフタル酸ジエステルは、具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジフェニルなどを好適に挙げることができる。
フタル酸ジエステルは、フタル酸、フタル酸無水物、フタル酸ハロゲン化物と、末端に水酸基を有する化合物、例えば、低級脂肪族アルコールや芳香族アルコールなどとを反応して容易に得ることができる。
【0022】
本発明で使用するパラジウム化合物を含む触媒は、パラジウム化合物触媒、パラジウム化合物と配位子との組合せからなる触媒、パラジウム化合物と銅化合物との組合せからなる触媒、又は、パラジウム化合物と配位子と銅化合物との組合せからなる触媒である。
特に、パラジウム化合物と二座配位子と銅化合物との組合せからなる触媒は、酸化二量化反応生成物収率が高く、且つ特定の異性体を選択的に生成することができるので好適である。
【0023】
本発明で使用するパラジウム化合物としては、塩化パラジウム、臭化パラジウム、沃化パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、ピバル酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、ビス(アセチルアセトナト)パラジウム、及び、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト)パラジウムなどを挙げることができるが、特に、酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、ピバル酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、及び、硝酸パラジウムが、高い触媒活性を示すことから好適である。
本発明において、フタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒との好適な組成比は、パラジウム化合物がフタル酸ジエステルに対して、0.00001倍モル以上特に0.00005倍モル以上、且つ0.01倍モル以下特に0.001倍モル以下であるが、パラジウム化合物がフタル酸ジエステルに対して0.00093倍モル以下が酸化二量化反応時にパラジウム化合物を含む触媒がフタル酸ジエステルに容易に溶解するので特に本発明においては好適である。パラジウム化合物の量が原料のフタル酸ジエステルに対して0.00001倍モル未満でも反応は進行するが反応速度が遅くなるので好ましくない。また、パラジウム化合物の量が原料のフタル酸ジエステルに対して0.01倍モルを越えて用いてもよいが、触媒コストを考慮すると経済的ではなくなる。
【0024】
本発明で使用する配位子としては、パラジウムと二座で配位することができる二座配位子が好ましく、特に、2個の窒素原子によりパラジウム塩と錯体形成をすることができる二座配位子、2個の酸素原子によりパラジウム塩と錯体形成をすることができる二座配位子、及び、窒素原子と酸素原子によりパラジウム塩と錯体形成をすることができる二座配位子が好適である。
【0025】
2個の窒素原子によりパラジウム塩と錯体形成をする二座配位子としては、例えば、化学式(2)、及び、化学式(3)で示される二座配位子を好適に用いることができる。
【化2】
[ここで、R2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、又は、アリール基である。アルキル基、アルコキシ基、及び、アリール基は置換基を有することもできる。]
【化3】
[ここで、R3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、アルキル基、アルコキシ基、又は、アリール基である。アルキル基、アルコキシ基、及び、アリール基は置換基を有することもできる。]
これらの配位子を用いると、対称性のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを選択的に得ることが可能になる。具体的には、非対称二量化生成物である2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの生成を抑制し、対称二量化生成物である3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを選択的に生成させることができる。
【0026】
化学式(2)及び化学式(3)で示される二座配位子の具体例としては、1,10−フェナントロリン、2,2’−ビピリジルを好適に挙げることができる。特に、1,10−フェナントロリンは酸化二量化反応を促進する効果が高く、且つ、パラジウムに配位したときの錯体化合物のフタル酸ジエステルへの溶解性が高いので好適である。
【0027】
更に、2個の酸素原子によりパラジウム塩と錯体形成をすることができる二座配位子としては、例えばアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、1,3−ジフェニル‐1,3−プロパンジオン、1,1,1−トリフルオロアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ヘキサンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトンなどのβ−ジケトン類を好適に挙げることができる。
また、窒素原子と酸素原子によりパラジウム塩と錯体形成をすることができる二座配位子としては、例えばピリジンカルボン酸、ピリジンカルボン酸メチルエステル、ピリジンカルボン酸エチルエステル、ピラジンカルボン酸、ピラジンカルボン酸メチルエステル、ピラジンカルボン酸エチルエステル、キノリンカルボン酸、イソキノリンカルボン酸、ヒドロキシキノリン、2−ベンゾイルピリジン、2−ピリジルアミドなどの置換基に酸素原子を持つ含窒素ヘテロ環化合物や、N,N−ジメチルグリシン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの置換基に酸素原子を持つ脂肪鎖アミン類を好適に挙げることができる。
前述の2個の酸素原子によりパラジウム塩と錯体形成することができる二座配位子化合物又は窒素原子と酸素原子とによりパラジウム塩と錯体形成することができる二座配位子化合物を用いると、非対称二量化生成物を選択的に得ることが可能になる。具体的には、対称二量化生成物の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの生成を抑制し、非対称二量化生成物の2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを選択的に生成することができる。
【0028】
これらの二座配位子は、パラジウム化合物に対して0.1〜5倍モルを加えるのが好ましく、特に、パラジウム化合物に対して0.5〜1.5倍モル用いるのが望ましい。0.1倍モル未満の量では十分な選択性が得られない。5倍モルを越える量を用いた場合は触媒活性が低下する場合がある。
【0029】
本発明において、触媒として、パラジウム化合物と共に銅化合物を用いることによって、反応時の酸素分圧を低くしても触媒の失活を抑制することができる。従って、パラジウム化合物と共に銅化合物を用いることによって、常圧又は常圧に近い圧力下で酸化二量化反応をおこなうことが可能になるから本発明の製造方法においては特に好適である。
本発明で使用する銅化合物としては、酢酸銅、プロピオン酸銅、ノルマルブチル酸銅、2−メチルプロピオン酸銅、ピバル酸銅、乳酸銅、酪酸銅、安息香酸銅、トリフルオロ酢酸銅、ビス(アセチルアセトナト)銅、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅、塩化銅、臭化銅、沃化銅、硝酸銅、亜硝酸銅、硫酸銅、リン酸銅、酸化銅、水酸化銅、トリフルオロメタンスルホン酸銅、パラトルエンスルホン酸銅、及び、シアン化銅等を好適に挙げることができる。特に、酢酸銅、プロピオン酸銅、ノルマルブチル酸銅、ピバル酸銅、及び、ビス(アセチルアセトナト)銅が酸化二量化反応を促進する効果が高いので好適であり、なかでも、プロピオン酸銅、ノルマルブチル酸銅、ピバル酸銅、及び、ビス(アセチルアセトナト)銅は原料のフタル酸ジエステルに容易に溶解するので本発明の製造方法に極めて好適に用いることができる。
尚、これらの銅化合物は、無水物でも水和物でも、どちらも用いることができる。
本発明において、銅化合物の添加量は、パラジウム化合物に対して0.01〜10倍モルが好ましく、特に0.1〜2.0倍モルが好適である。銅化合物の量が0.01倍モル未満では反応時の酸素分圧を低くすることができなくなり、10倍モルを越えると経済的に不利になる。
【0030】
本発明において、反応溶媒は用いても構わないし、用いなくても構わない。工業的には実質的に反応溶媒を用いないで反応させることが好ましい。反応溶媒を用いる場合は、例えば、エチレングリコールジアセテート、アジピン酸ジメチルなどの有機酸エステル、n−ブチルメチルケトン、メチルエチルケトン、イソプロピルエチルケトンなどのケトン化合物などを挙げることができる。その使用量は、例えば、出発物質のフタル酸ジエステルに対して、10000容量倍以下、好ましくは1000容量倍以下である。
【0031】
本発明において、分子状酸素は、純酸素ガスで供給してもよいが、爆発の危険性を考慮すると、窒素ガスや炭酸ガスなどの不活性ガスで酸素含有量が約5体積%〜50体積%程度まで希釈された酸素含有混合ガス、または、空気を用いることが好ましい。また、酸素含有混合ガス、または、空気は、反応液1000ml当たり約1〜20000ml/分、特に10〜10000ml/分の供給速度で、反応液中に均一に行き渡るようにバブリング、好ましくはフィルターを用いたバブリングなどによって供給することが好ましい。
【0032】
本発明において、酸化二量化反応は、常圧または200気圧以下特に50気圧以下に加圧しておこなうことができるが、常圧で反応することが、設備や操作が簡便になるので好ましい。また、本発明において、酸化二量化反応は、酸素分圧が0.01〜200気圧、好ましくは0.05〜50気圧でおこなわれることが好ましい。
【0033】
本発明で用いる反応装置は、特に限定されるものではないが、反応器が一つの一槽式又は複数の多槽式の、完全混合型反応装置、多管式熱交換型の管型反応装置、又は、塔型反応装置を用いることができる。また、反応器の材質は特に制限されるものではないが、例えばガラス製又はsus製の反応器を好適に用いることができる。
【0034】
本発明のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法について、図1、図2及び図3に示した反応装置の実施形態例を示す模式図によって、更に詳しく説明する。尚、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図1において、原料槽1には、原料のフタル酸ジエステルと触媒とを所定割合で混合、溶解した原料混合液が所定温度で保持されている。前記の原料混合液は送液ポンプ2によって原料供給用導管3から所定速度で反応器4に導入される。反応器4は、加熱装置(図には記載していない。)、攪拌装置5、空気供給用導管6、反応混合液取出用導管7、気体抜出用導管8などを備えている。この反応器中に導入されたフタル酸ジエステルと触媒などからなる原料混合液は、攪拌下、所定温度で、所定量の空気を空気供給用導管6より反応混合液中へバブリングさせて酸化二量化反応がおこなわれる。気体抜出用導管8は冷却コンデンサによる低沸物及び蒸気圧分のフタル酸ジエステルの回収部(図には記載していない。)を経て大気へ開放されており、バブリングで導入された空気によって反応器内の気体が気体抜出用導管8を経て反応器外へ排気される。反応混合液取出用導管7から液送ポンプ9を介して、反応器4へ供給される原料混合液の量とほぼ等量の反応混合液が取出される。反応器中の反応混合液は、反応中、所定温度に保たれ、且つ、供給される原料混合液と取出す反応混合液の量をほぼ等量にすることによって、ほぼ一定の量に保たれる。
【0035】
図2において、反応装置は直列に連結された2個の反応器4、11からなっている。反応器4は、加熱装置(図には記載していない。)、攪拌装置5、空気供給用導管6、反応混合液取出用導管7、気体抜出導管8などを備えている。また、反応器11も同様に、加熱装置(図には記載していない。)、攪拌装置12、空気供給用導管13、反応混合液取出用導管14、気体抜出用導管15などを備えている。
原料槽1には、原料のフタル酸ジエステルと触媒などとを所定割合で混合、溶解した原料混合液が所定温度で保持されている。前記の原料混合液は送液ポンプ2によって原料供給用導管3から所定速度で反応器4に導入される。反応器4中に導入された原料混合液は、攪拌下、所定温度で、所定量の空気を空気供給用導管6より反応混合液中へバブリングさせて酸化二量化反応がおこなわれる。気体抜出用導管8は冷却コンデンサによる低沸物及び蒸気圧分のフタル酸ジエステルの回収部(図には記載していない。)を経て大気へ開放されており、バブリングで導入された空気によって反応器内の気体が気体抜出用導管8を経て反応器外へ排気される。反応混合液取出用導管7から液送ポンプ9を介して、反応器4へ供給される原料混合液の量とほぼ等量の反応混合液が取出され、前記反応混合液は反応混合液供給用導管10から反応器11へ供給される。反応器4中の反応混合液は、反応中、所定温度に保たれ、且つ、供給される原料混合液と取出す反応混合液の量をほぼ等量にすることによって、ほぼ一定の量に保たれる。
【0036】
反応器11内へ導入された反応混合液は、攪拌下、所定温度で、所定量の空気を空気供給用導管13より反応混合液中へバブリングさせて更に酸化二量化反応がおこなわれる。気体抜出用導管15は冷却コンデンサによる低沸物及び蒸気圧分のフタル酸ジエステルの回収部(図には記載していない。)を経て大気へ開放されており、バブリングで導入された空気によって反応器内の気体が気体抜出用導管15を経て反応器外へ排気される。反応混合液取出用導管14から液送ポンプ16を介して、供給される反応混合液の量とほぼ等量の反応器11内の反応混合液が取出される。反応器11内の反応混合液は、反応中、所定温度に保たれ、且つ、供給される原料混合液と取出す反応混合液の量をほぼ等量にすることによって、ほぼ一定の量に保たれる。
【0037】
図3は、図2と同様に直列に連結された2個の反応器4、11からなる製造装置であり、図2と同様な方法によって用いられるが、反応器4から反応混合液を取出して反応器11へ導入するときに送液ポンプを用いないで、反応混合液取出用導管を反応器4の所定の高さに配置し且つ取出された反応混合液が自重によって導かれるように次の反応器11を低い位置に配置することによって、反応器4からのオーバーフロー分を自重によって反応器11へ導入している。更に、反応器11からの反応混合液の取出しもオーバーフローによっておこなっている。このようにすることによって、原料混合液の供給量と等量の反応混合液を当該反応器から次の反応器へ導入するのが容易になり、且つ、各反応器中の反応混合液を所定量に保つのが容易になるので好適である。
【0038】
本発明の製造方法において、最後の反応器から取出された反応混合液は必要に応じてタンクに貯蔵される。また、目的のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルは、前記反応混合液から、蒸留操作や晶析操作などの周知の手段からなる後処理工程を経て分離、精製して得ることができる。
本発明の連続製造方法によって得られるビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルは、例えば、ポリイミド樹脂の原料などとして極めて重要なものである。ビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルは、高温且つ高圧で加水分解する方法、又は、酸又はアルカリを添加して加水分解する方法によって加水分解してビフェニルテトラカルボン酸とすることができる。更に、これを高温に加熱することによって無水化してビフェニルテトラカルボン酸二無水物を得ることができる。この二無水物は、ポリイミド製造におけるモノマー原料の一つとして、又は、エポキシ樹脂硬化剤等として有用なものである。
【0039】
【実施例】
次に、本発明のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法について、参考例及び実施例によってより具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
また、実施例では反応原料としてフタル酸ジメチルエステルを用いているが、酸化二量化生成物であるビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(以下、BPTTと略記することもある。)の収率、触媒回転数(以下、TONと略記することもある。)、及び、生成物中の異性体である3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(以下、s−BPTTと略記することもある。)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステル(以下、a−BPTTと略記することもある。)の生成量の比(以下、S/Aと略記することもある。)は、次の計算式に従って算出した。尚、計算式中の単位はモル数である。
【数1】
【0041】
参考例1(パラジウム化合物の溶解性)
酢酸パラジウム(以下、Pd(OAc)2と略記することもある)、及び酢酸パラジウムと1,10−フェナントロリンとからなる錯体化合物(以下、[(phen)Pd(OAc)2]と略記することもある)の500mgをそれぞれフタル酸ジメチルエステル5mlに加え、50℃で1時間攪拌した。0.2μmのフィルターによってろ過し、残留量を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)によって定量し、溶解度を算出した結果、Pd(OAc)2はフタル酸ジメチルエステル1gに対してPd金属換算で12000μg(0.022倍モル)、[(phen)Pd(OAc)2]はフタル酸ジメチルエステル1gに対してPd金属換算で510μg(0.00093倍モル)の溶解性を示した。本発明において、好ましくはパラジウム化合物を含む触媒が、パラジウム化合物、二座配位子、及び、銅化合物とを含んでいるおり、パラジウム化合物と二座配位子との錯体化合物が実際の触媒活性を発揮するから、パラジウム化合物をフタル酸ジエステルに対して0.00093倍モル以下にすることによって、パラジウム化合物はもちろん、実際の触媒活性を発揮するパラジウム化合物と二座配位子との錯体化合物をも均一に溶解した混合溶液として反応装置へ供給することができるので好適である。
【0042】
参考例2(銅化合物の溶解性)
銅化合物についてもフタル酸ジメチルエステルに対する溶解性を測定した。銅化合物の500mgをそれぞれフタル酸ジメチルエステル5mlに加え、50℃で1時間攪拌した。0.2μmのフィルターによってろ過し、残留量を誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)によって定量し、溶解度を算出した結果は次のとおりであった。
酢酸銅・一水和物はフタル酸ジメチルエステル1gに対してCu金属換算で17μg(0.000052倍モル)、ビス(アセチルアセトナト)銅はフタル酸ジメチルエステル1gに対してCu金属換算で160μg(0.00049倍モル)、プロピオン酸銅・一水和物はフタル酸ジメチルエステル1gに対してCu金属換算で110μg(0.00034倍モル)、ノルマルブチル酸銅はフタル酸ジメチルエステル1gに対してCu金属換算で120μg(0.00037倍モル)、イソブチル酸銅はフタル酸ジメチルエステル1gに対してCu金属換算で31μg(0.000094倍モル)の溶解性を示した。
この測定結果から、ビス(アセチルアセトナト)銅、プロピオン酸銅、及びノルマルブチル酸銅が、フタル酸ジエステルに容易に溶解する銅化合物であり、フタル酸ジエステルに均一に溶解した混合溶液として反応装置へ供給することが容易であるから好適であることがわかる。
【0043】
実施例1
50mlのガラス製反応器からなる図1に示したような反応装置を用いた。反応器では、攪拌子により攪拌をおこない、内部温度を220℃に調整し、Aグレード空気を20ml/分で反応混合液中にバブリングさせて供給して酸化二量化反応をおこなった。ここで、Aグレード空気とは露点が−80℃以下の乾燥空気である。
フタル酸ジメチルエステル、および、前記フタル酸ジメチルエステルに対して0.00032倍モルの酢酸パラジウム、同0.00032倍モルの1,10−フェナントロリン、及び、同0.000096倍モルのプロピオン酸銅・一水和物とを、80℃で30分間以上攪拌して均一に溶解し、温度を80℃に保持しながらその溶液を送液ポンプにより反応器へ供給し、反応混合液が所定量に達した後、前記酸化二量化反応をおこなわせながら、反応器の液面がほぼ一定に保たれるように原料混合液の供給量とほぼ同じ量の反応混合液を送液ポンプにより10ml/時で連続的に抜き出して、連続運転をおこなった。
抜き出した反応混合液は室温まで冷却したあとで、アセトンで希釈し、酢酸コレステロールを内部基準物質として加えて、ガスクロマトグラフィーによって、反応開始から10〜20時間の間に抜き出した反応混合物について、各生成物を定量した。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は5時間であった。
【0044】
実施例2
原料混合液を5ml/時で連続的に反応器へ供給したこと以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は10時間であった。
【0045】
実施例3
反応器の内部温度を210℃に調整したこと以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は5時間であった。
【0046】
実施例4
反応器の内部温度を210℃に調整したこと以外は、実施例2と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は10時間であった。
【0047】
実施例5
直列に連結された二つの50mlのガラス製反応器からなる図2に示したような反応装置を用いた。二つの反応器では共に、攪拌子により攪拌をおこない、内部温度を220℃に調整し、Aグレード空気を20ml/分で反応混合液中にバブリングさせて供給して酸化二量化反応をおこなった。
フタル酸ジメチルエステル、および、前記フタル酸ジメチルエステルに対して0.00032倍モルの酢酸パラジウム、同0.00032倍モルの1,10−フェナントロリン、及び、同0.000096倍モルのプロピオン酸銅・一水和物とを、80℃で30分間以上攪拌して均一に溶解し、温度を80℃に保持しながらその溶液を送液ポンプにより反応器へ供給し、反応混合液が所定量に達した後、前記酸化二量化反応をおこなわせながら、反応器の液面がほぼ一定に保たれるように原料混合液の供給量とほぼ同じ量の反応混合液を送液ポンプにより10ml/時で連続的に抜き出して、第二の反応器へ供給した。
第二の反応器でも、反応混合液が所定量に達した後、前記酸化二量化反応をおこなわせながら、反応器の液面がほぼ一定に保たれるように反応混合液の供給量とほぼ同じ量の反応混合液を連続的に抜き出して、連続運転をおこなった。
抜き出した反応混合液は室温まで冷却したあとで、アセトンで希釈し、酢酸コレステロールを内部基準物質として加えて、ガスクロマトグラフィーによって、反応開始から10〜20時間の間に抜き出した反応混合物について、各生成物を定量した。その結果は表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は10時間であった。
【0048】
実施例6
原料混合液を5ml/時で連続的に反応器へ供給したこと以外は、実施例5と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は20時間であった。
【0049】
実施例7
反応器の内部温度を210℃に調整したこと以外は、実施例5と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は10時間であった。
【0050】
実施例8
反応器の内部温度を210℃に調整したこと以外は、実施例6と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は20時間であった。
【0051】
比較例1
反応器の内部温度を250℃に調整したこと以外は、実施例1と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は5時間であった。
【0052】
比較例2
反応器の内部温度を250℃に調整したこと以外は、実施例5と同様の操作をおこなった。その結果を表1に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は10時間であった。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例9
50mlのガラス製反応器からなる図1に示したような反応装置を用いた。反応器では、攪拌子により攪拌をおこない、内部温度を200℃に調整し、Aグレード空気を20ml/分で反応混合液中にバブリングさせて供給して酸化二量化反応をおこなった。
フタル酸ジメチルエステル、および、前記フタル酸ジメチルエステルに対して0.00032倍モルの酢酸パラジウム、同0.00032倍モルの2−ピリジンカルボン酸、同0.00064倍モルのトリフルオロ酢酸、及び同0.000096倍モルのプロピオン酸銅・一水和物とを、80℃で30分間以上攪拌して溶解し、温度を80℃に保持しながらその溶液を送液ポンプにより反応器へ供給し、反応混合液が所定量に達した後、前記酸化二量化反応をおこなわせながら、反応器の液面がほぼ一定に保たれるように原料混合液の供給量とほぼ同じ量の反応混合液を送液ポンプにより10ml/時で連続的に抜き出して、連続運転をおこなった。
抜き出した反応混合液は室温まで冷却したあとで、アセトンで希釈し、酢酸コレステロールを内部基準物質として加えて、ガスクロマトグラフィーによって、反応開始から10〜20時間の間に抜き出した反応混合物について、各生成物を定量した。その結果は表2に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は5時間であった。
【0055】
実施例10
原料混合液を5ml/時で連続的に反応器へ供給したこと以外は、実施例8と同様の操作をおこなった。その結果を表2に示した。
尚、反応混合液の反応容器内平均滞留時間は10時間であった。
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したようなものであるから、以下に記載されるような効果を奏する。
本発明は、フタル酸ジエステルを、パラジウム化合物を含む触媒の存在下に、分子状酸素を反応系に供給して、高温で、酸化二量化反応させてビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルを製造する方法において、特殊な設備や煩雑な操作が不要であり、触媒を効果的に利用することができ、容易に反応を制御することができ、連続的に製造することができ、更に経済的な、改良された製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法において用いる反応装置の一つの実施形態を示す模式図
【図2】本発明の製造方法において用いる反応装置の他の一つの実施形態を示す模式図
【図3】本発明の製造方法において用いる反応装置の他の一つの実施形態を示す模式図
【符号の説明】
1:原料槽
2、9、16:送液ポンプ
3:原料供給用導管
4、11:反応器
5、12:攪拌装置
6、13:空気供給用導管
7、14:反応混合液取出用導管
8、15:気体抜出用導管
10:反応混合液供給用導管
Claims (9)
- 反応装置へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを均一に攪拌した混合物として連続的または断続的に供給する工程と、前記反応装置に分子状酸素を供給しながらフタル酸ジエステルの酸化二量化反応を140℃以上且つ250℃未満の温度範囲でおこなう工程と、前記反応装置から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出す工程とを、同時並行でおこなうことを特徴とするビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- 反応装置へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを均一に溶解した混合溶液として供給することを特徴とする前記請求項1に記載のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- 反応装置へ供給する前のフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを、50℃〜100℃の温度範囲で保持することを特徴とする前記請求項1〜2のいずれかに記載のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- パラジウム化合物を含む触媒が、パラジウム化合物、二座配位子、及び、銅化合物とを含んでいることを特徴とする前記請求項1〜3のいずれかに記載のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- 二座配位子が、2個の窒素原子、2個の酸素原子、又は、窒素原子と酸素原子とによりパラジウムと錯体形成することができる二座配位子であることを特徴とする請求項4に記載のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- パラジウム化合物をフタル酸ジエステルに対して0.00093倍モル以下にすることを特徴とする前記請求項4に記載のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- 銅化合物が、プロピオン酸銅、ノルマルブチル酸銅、ビス(アセチルアセトナト)銅、又はピバル酸銅の無水物もしくは含水物のいずれかであることを特徴とする前記請求項4に記載のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- 反応装置が直列に連結された複数個の反応器からなっており、第一の反応器へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを連続的または断続的に供給する工程と、各反応器から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出して次の反応器へ順次導入する工程と、各反応器に分子状酸素を供給しながらフタル酸ジエステルの酸化二量化反応をおこなう工程と、最後の反応器から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出す工程とを、同時並行でおこなうことを特徴とする前記請求項1〜7のいずれかに記載のビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
- 反応装置が直列に連結された複数個の反応器からなっており、第一の反応器へフタル酸ジエステルとパラジウム化合物を含む触媒とを連続的または断続的に供給する工程と、各反応器から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出して次の反応器へ順次導入する工程と、各反応器に分子状酸素を供給しながらフタル酸ジエステルの酸化二量化反応をおこなう工程と、最後の反応器から反応混合液の一部を連続的または断続的に取出す工程とを、同時並行でおこなうことを特徴とするビフェニルテトラカルボン酸テトラエステルの製造方法。
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