JP2004124122A - リング状ボンド磁石への液体燃料に対する耐久性付与方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用されたりするなど、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石に、液体燃料に対する優れた耐久性を付与する方法を提供すること。
【解決手段】液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石を当該環境で使用するに際し、当該磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成することを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石を当該環境で使用するに際し、当該磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成することを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用されたりするなど、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石に、液体燃料に対する優れた耐久性を付与する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用される磁石としては、磁性粉と樹脂バインダーを主成分とし、優れた寸法精度のもとに形状成形が容易なボンド磁石が好適に採用される。なぜなら、当該モータに組み込む磁石は、形状成形が必ずしも容易ではないリング形状であること、モータの不具合によってそのモータが装着された自動車などに事故が起きると人命にかかわることから、モータ自体に厳しいスペックが求められるとともに磁石についても優れた寸法精度が必要とされることなどの理由からである。
液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込む磁石は、これまでフェライト系永久磁石が主に採用されてきたが、近年、当該モータの軽量小型化を図るべく、フェライト系永久磁石よりも磁気特性に優れたNd−Fe−B系永久磁石に代表されるR−Fe−B系永久磁石などの希土類系永久磁石を採用したいという要請がある。
例えば、ガソリンの送液ポンプ用モータにリング状希土類系ボンド磁石を組み込んで使用しようとした場合の課題は、リング状希土類系ボンド磁石にガソリンに対する耐久性をいかに付与するかという点につきる。もともと、希土類系永久磁石は反応性の高い希土類金属:Rを含むため酸化腐食しやすく、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁石特性の劣化やばらつきを招きやすいという特性を有する。それにも増して、ガソリン中には油の加水分解(劣化)などにより生成したギ酸や酢酸などの有機酸が微量ながらも存在すること、結露などによってガソリン中に水分が混入すると、混入した水分がさらに油の加水分解を助長すること、自動車の使用環境によっては、ガソリンは、例えば、−20℃〜80℃といった大きな温度変化や0kPa〜300kPaといった大きな圧力変化を伴うことなどから、そこに浸漬されて使用される希土類系永久磁石は非常に酸化腐食しやすい過酷な環境下におかれることになる。さらに、ボンド磁石においては、樹脂バインダーがガソリンによって膨潤することで寸法精度の悪化、ひいては耐久性の悪化を招くといった事態を引き起こす。
また、フェライト系永久磁石は、希土類系永久磁石のように酸化腐食しやすいといった特性はないが、ボンド磁石においては、希土類系永久磁石と同様に、樹脂バインダーがガソリンによって膨潤するという問題がある。
本発明者は、このような問題を解決すべく、種々の検討を行う過程において、リング状希土類系ボンド磁石の表面に耐食性被膜としてのポリエステル樹脂被膜やエポキシ樹脂被膜を形成してガソリンに対する耐久性を調べたところ、磁石の表面に形成されたこれらの樹脂被膜はガソリンによって膨潤してしまい、リング状希土類系ボンド磁石に目的とする耐久性を付与することができないことが判明した。
なお、特許文献1には、表面に固体潤滑剤粒子を含むポリイミド樹脂被膜やポリアミドイミド樹脂被膜を有する円盤状や円柱状の希土類系ボンド磁石が記載されている。しかしながら、この文献では当該磁石のガソリンに対する耐久性の検討はなされていない。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−210505号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用されたりするなど、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石に、液体燃料に対する優れた耐久性を付与する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の点に鑑みて検討を重ねた結果、ガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜をリング状ボンド磁石の表面に形成した場合、当該樹脂被膜は、ガラス転移温度が100℃程度のポリエステル樹脂被膜や150℃程度のエポキシ樹脂被膜のようにガソリンによって膨潤することもほとんどなく、リング状ボンド磁石にガソリンに対する優れた耐久性を付与することができることを見出した。
【0006】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明のリング状ボンド磁石に液体燃料に対する耐久性を付与する方法は、請求項1記載の通り、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石を当該環境で使用するに際し、当該磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成することを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、前記樹脂被膜がポリイミド樹脂被膜またはポリアミドイミド樹脂被膜であることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1または2記載の方法において、前記樹脂被膜が無機質微粒子を含有せしめたものであることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法において、前記樹脂被膜の膜厚が1μm〜50μmであることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、磁石が希土類系永久磁石であることを特徴とする。
また、本発明の液体燃料の送液ポンプ用モータは、請求項6記載の通り、表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成したリング状ボンド磁石を組み込んだものであることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のリング状ボンド磁石に液体燃料に対する耐久性を付与する方法は、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石を当該環境で使用するに際し、当該磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成することを特徴とするものである。ガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜は、強い分子間結合のもとに三次元網目構造を密に形成しているので、当該樹脂被膜中に液体燃料分子が浸入しにくく、また、膨潤などによる寸法変化が起こりにくい。従って、かかる構成により、リング状ボンド磁石を自動車などに装着される液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込み、液体燃料に浸漬して使用しても、当該磁石は液体燃料に対して優れた耐久性を発揮する。ここで、液体燃料としては、ガソリン、軽油、液体石油ガスなどが挙げられる。
【0008】
ガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜としては、例えば、ポリイミド樹脂被膜(ガラス転移温度:一般に340℃程度)やポリアミドイミド樹脂被膜(ガラス転移温度:一般に250℃程度)などが挙げられる。ポリイミド樹脂被膜には、付加型ポリイミド樹脂被膜と縮合型ポリイミド樹脂被膜が存在するが、そのいずれも採用することができる。しかしながら、磁石が希土類系永久磁石である場合には、磁石が酸化腐食しやすいことを考慮して、硬化に際して水が生成することがない付加型ポリイミド樹脂被膜を採用することが望ましい。代表的な付加型ポリイミド樹脂被膜としては、無水アリルナジック酸とジアミンから合成され、脱水閉環反応が完結した両末端にアリル基を有するイミドモノマーであるビスアリルナジイミド(BANI:下記化学式参照)(必要ならば特開平5−9222号公報や特開平7−53516号公報を参照)から得られる樹脂被膜の他、末端ナジック酸型ポリイミド樹脂(PMR)、ビスマレイミド型ポリイミド樹脂、末端アセチレン型ポリイミド樹脂などからなる被膜が挙げられる。
【0009】
【化1】
【0010】
リング状ボンド磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成する方法については、特段の制限はなく、採用する樹脂被膜に応じた自体公知の方法、例えば、溶剤型スプレー塗装法や粉体塗装法などの塗装法、気相法などを採用すればよい。
【0011】
リング状ボンド磁石の表面に形成するガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜に無機質微粒子を含有せしめてもよい。このような態様により被膜中における樹脂の存在比率を低下させれば、被膜中への液体燃料分子の進入をよりいっそう困難なものとすることができ、また、たとえ樹脂が膨潤したとしても(この膨潤の程度はもちろんわずかなものであるが)、被膜全体としての寸法変化を抑制することができる。さらに、無機質微粒子を含有せしめた樹脂被膜を形成するための成膜処理液は、磁石端部における被膜の付き回り性などに優れるといった利点を有する。よって、樹脂被膜に無機質微粒子を含有せしめれば、これらの作用が相俟って液体燃料に対するより優れた耐久性が発揮される。ここで好適な無機質微粒子としては、長径が0.01μm〜10μm程度で鱗平状や球状のアルミニウム、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、亜鉛、錫などの微粒子が挙げられる。樹脂被膜中における無機質微粒子の含有量は、5重量%〜50重量%であることが望ましい。
【0012】
リング状ボンド磁石の表面に形成するガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜の膜厚は、リング状ボンド磁石に液体燃料に対する優れた耐久性を付与するという観点とリング状ボンド磁石の有効体積を最大限に確保するという観点から、1μm〜50μmとすることが望ましい。
【0013】
本発明におけるリング状ボンド磁石は、フェライト系ボンド磁石でも希土類系ボンド磁石でもよい。希土類系ボンド磁石は、磁性粉と樹脂バインダーを主成分とするものであれば磁気的等方性磁石であっても磁気的異方性磁石であってもよい。また、樹脂バインダーにより結合形成されたものの他、金属バインダーや無機バインダーなどにより結合成形されたものであってもよい。さらに、バインダーにフィラーを含むものであってもよい。
【0014】
希土類系ボンド磁石としては、種々の組成のものや結晶構造のものが知られているが、これらすべてが本発明の対象となる。
例えば、特開平9−92515号公報に記載されているような異方性R−Fe−B系ボンド磁石、特開平8−203714号公報に記載されているようなソフト磁性相(例えば、α−FeやFe3B)とハード磁性相(Nd2Fe14B)を有するNd−Fe−B系ナノコンポジット磁石、従来から広く使用されている液体急冷法により作成された等方性Nd−Fe−B系磁石粉末(例えば、商品名:MQP−B・MQI社製)を用いたボンド磁石などが挙げられる。
また、特公平5−82041号公報記載の(Fe1−xRx)1−yNy(0.07≦x≦0.3,0.001≦y≦0.2)で表されるR−Fe−N系ボンド磁石などが挙げられる。
【0015】
なお、希土類系ボンド磁石を構成する磁性粉は、希土類系永久磁石合金を溶解し、鋳造後に粉砕する溶解粉砕法、一度焼結磁石を作成した後、これを粉砕する焼結体粉砕法、Ca還元にて直接磁性粉を得る直接還元拡散法、溶解ジェットキャスターで希土類系永久磁石合金のリボン箔を得、これを粉砕・焼純する急冷合金法、希土類系永久磁石合金を溶解し、これをアトマイズで粉末化して熱処理するアトマイズ法、原料金属を粉末化した後、メカニカルアロイングにて粉末末化して熱処理するメカニカルアロイ法などの方法で得ることができる。
また、R−Fe−N系ボンド磁石を構成する磁性粉は、希土類系永久磁石合金を粉砕し、これを窒素ガス中またはアンモニアガス中で窒化した後、粉末末化するガス窒化法などの方法でも得ることができる。
【0016】
【実施例】
本発明を以下の実施例と比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例と比較例は、急冷合金法で作製した、Nd:12原子%、Fe:77原子%、B:6原子%、Co:5原子%の組成からなる平均長径150μmの合金粉末にエポキシ樹脂を2wt%加えて混練し、686N/mm2の圧力で圧縮成形した後、150℃で1時間キュアすることによって作製された、外径31mm×内径28.5mm×長さ4mmのリング状希土類系ボンド磁石(以下、磁石体試験片と称する)を用いて行った。
【0017】
実施例1:
磁石体試験片50個をアルミナメディア(PS−4:チップトン社製)2Lとともに振動バレル(VM−10:チップトン社製)の処理室内に投入し、1時間表面研磨を行った。その後、エタノール中で1分間超音波洗浄し、大気中100℃×10分間乾燥させた。
付加型ポリイミド樹脂(BANI−M:丸善石油化学社製:ガラス転移温度は339℃)をキシレンにて50重量%希釈し、これを、ガン口径1.5mmのエアスプレー装置を使用し、吹付圧力0.2MPaの条件にて、一方の端面を下にしてトレー上に載置した上記の前処理を行った磁石体試験片に吹付けてスプレー塗装した後、仮焼き付けを大気中150℃×30分間行った。続いて磁石体試験片を上下反転させて最初に下にしていた端面を上にして上記と同じ条件にてスプレー塗装した後、本焼き付けを大気中200℃×60分間行うことで、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)の付加型ポリイミド樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面の付加型ポリイミド樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0018】
ガソリン耐久性試験として次の試験を行った。即ち、以上のようにして製造された表面に付加型ポリイミド樹脂被膜を有する磁石体試験片(以下、サンプルAと称する)3個を市販のレギュラーガソリン12mLとともに内容積50mLの耐圧密閉容器に収容して蓋を締結した。その後、この耐圧密閉容器をウォーターバス(恒温水槽)に収納し、80℃にて2時間保温した後(ガソリンの蒸気圧により容器内圧は約300kPaとなる)、耐圧密閉容器をウォーターバスから取り出し、大気中で12時間保持するという操作を1サイクルとし、この操作を5サイクル、15サイクル、30サイクル、50サイクル行った後のサンプルについて、寸法変化(外径と内径と高さ)、重量変化を調べた。結果を図1〜図4に示す。
図1〜図4から明らかなように、サンプルAは、上記の操作を50サイクル行った後も、いずれの評価項目に関しても実用上問題となりうる変化は観察されず、ガソリンに対して優れた耐久性を発揮した。なお、磁気特性については僅かに劣化したが、実用上問題になる程度のものではなかった。
【0019】
実施例2:
ポリアミドイミド樹脂(パイロマックスHR12N2:東洋紡績社製:ガラス転移温度は250℃)をN−メチルピロリドンにて50重量%希釈し、これを実施例1と同様にして前処理を行った磁石体試験片に対して実施例1と同様にして吹付けてスプレー塗装を行った後、焼付けを行い、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)のポリアミドイミド樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面のポリアミドイミド樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0020】
以上のようにして製造された表面にポリアミドイミド樹脂被膜が形成された磁石体試験片(以下、サンプルBと称する)に対し、実施例1と同様のガソリン耐久性試験を行った。結果を図1〜図4に示す。図1〜図4から明らかなように、サンプルBは、操作を50サイクル行った後も、いずれの評価項目に関しても実用上問題となりうる変化は観察されず、ガソリンに対して優れた耐久性を発揮した。なお、磁気特性については僅かに劣化したが、実用上問題になる程度のものではなかった。
【0021】
実施例3:
実施例1で使用した付加型ポリイミド樹脂に長径が約10μmで厚みが約1μmの鱗平状アルミニウム微粒子を8:2の割合で均一混合することで含有せしめ、これをキシレンにて50重量%希釈して成膜処理液とした。この成膜処理液を使用し、これを実施例1と同様にして前処理を行った磁石体試験片に対して実施例1と同様にして吹付けてスプレー塗装を行った後、焼付けを行い、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)のアルミニウム微粒子含有付加型ポリイミド樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面のアルミニウム微粒子含有付加型ポリイミド樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0022】
以上のようにして製造された表面にアルミニウム微粒子含有付加型ポリイミド樹脂被膜が形成された磁石体試験片(以下、サンプルCと称する)に対し、実施例1と同様のガソリン耐久性試験を行った。結果を図1〜図4に示す。図1〜図4から明らかなように、サンプルCは、操作を50サイクル行った後も、いずれの評価項目に関しても実用上問題となりうる変化は観察されず、高さ変化や重量変化がサンプルAやサンプルBよりも僅少で、ガソリンに対して優れた耐久性を発揮した。なお、磁気特性については僅かに劣化したが、実用上問題になる程度のものではなかった。
【0023】
比較例:
ポリエステル樹脂(ファスタイトグレー:大橋化学社製:ガラス転移温度は105℃)をキシレンにて50重量%希釈し、これを実施例1と同様にして前処理を行った磁石体試験片に対して実施例1と同様にして吹付けてスプレー塗装を行った後、焼付けを行い、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)のポリエステル樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面のポリエステル樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0024】
以上のようにして製造された表面にポリエステル樹脂被膜が形成された磁石体試験片(以下、サンプルDと称する)に対し、実施例1と同様のガソリン耐久性試験を行った。結果を図1〜図4に示す。図1〜図4から明らかなように、操作を50サイクル行った後は、いずれの評価項目に関してもサンプルDはサンプルA、サンプルB、サンプルCに比較して1.5倍〜3倍の変化を起した。また、サンプルDには点錆が発生し、実用上において無視できない磁気特性の劣化が見られた。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用されたりするなど、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石に、液体燃料に対する優れた耐久性を付与する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるガソリン耐久性試験結果(外径変化)を示すグラフ
【図2】同、内径変化を示すグラフ
【図3】同、高さ変化を示すグラフ
【図4】同、重量変化を示すグラフ
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用されたりするなど、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石に、液体燃料に対する優れた耐久性を付与する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用される磁石としては、磁性粉と樹脂バインダーを主成分とし、優れた寸法精度のもとに形状成形が容易なボンド磁石が好適に採用される。なぜなら、当該モータに組み込む磁石は、形状成形が必ずしも容易ではないリング形状であること、モータの不具合によってそのモータが装着された自動車などに事故が起きると人命にかかわることから、モータ自体に厳しいスペックが求められるとともに磁石についても優れた寸法精度が必要とされることなどの理由からである。
液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込む磁石は、これまでフェライト系永久磁石が主に採用されてきたが、近年、当該モータの軽量小型化を図るべく、フェライト系永久磁石よりも磁気特性に優れたNd−Fe−B系永久磁石に代表されるR−Fe−B系永久磁石などの希土類系永久磁石を採用したいという要請がある。
例えば、ガソリンの送液ポンプ用モータにリング状希土類系ボンド磁石を組み込んで使用しようとした場合の課題は、リング状希土類系ボンド磁石にガソリンに対する耐久性をいかに付与するかという点につきる。もともと、希土類系永久磁石は反応性の高い希土類金属:Rを含むため酸化腐食しやすく、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁石特性の劣化やばらつきを招きやすいという特性を有する。それにも増して、ガソリン中には油の加水分解(劣化)などにより生成したギ酸や酢酸などの有機酸が微量ながらも存在すること、結露などによってガソリン中に水分が混入すると、混入した水分がさらに油の加水分解を助長すること、自動車の使用環境によっては、ガソリンは、例えば、−20℃〜80℃といった大きな温度変化や0kPa〜300kPaといった大きな圧力変化を伴うことなどから、そこに浸漬されて使用される希土類系永久磁石は非常に酸化腐食しやすい過酷な環境下におかれることになる。さらに、ボンド磁石においては、樹脂バインダーがガソリンによって膨潤することで寸法精度の悪化、ひいては耐久性の悪化を招くといった事態を引き起こす。
また、フェライト系永久磁石は、希土類系永久磁石のように酸化腐食しやすいといった特性はないが、ボンド磁石においては、希土類系永久磁石と同様に、樹脂バインダーがガソリンによって膨潤するという問題がある。
本発明者は、このような問題を解決すべく、種々の検討を行う過程において、リング状希土類系ボンド磁石の表面に耐食性被膜としてのポリエステル樹脂被膜やエポキシ樹脂被膜を形成してガソリンに対する耐久性を調べたところ、磁石の表面に形成されたこれらの樹脂被膜はガソリンによって膨潤してしまい、リング状希土類系ボンド磁石に目的とする耐久性を付与することができないことが判明した。
なお、特許文献1には、表面に固体潤滑剤粒子を含むポリイミド樹脂被膜やポリアミドイミド樹脂被膜を有する円盤状や円柱状の希土類系ボンド磁石が記載されている。しかしながら、この文献では当該磁石のガソリンに対する耐久性の検討はなされていない。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−210505号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用されたりするなど、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石に、液体燃料に対する優れた耐久性を付与する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の点に鑑みて検討を重ねた結果、ガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜をリング状ボンド磁石の表面に形成した場合、当該樹脂被膜は、ガラス転移温度が100℃程度のポリエステル樹脂被膜や150℃程度のエポキシ樹脂被膜のようにガソリンによって膨潤することもほとんどなく、リング状ボンド磁石にガソリンに対する優れた耐久性を付与することができることを見出した。
【0006】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明のリング状ボンド磁石に液体燃料に対する耐久性を付与する方法は、請求項1記載の通り、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石を当該環境で使用するに際し、当該磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成することを特徴とする。
また、請求項2記載の方法は、請求項1記載の方法において、前記樹脂被膜がポリイミド樹脂被膜またはポリアミドイミド樹脂被膜であることを特徴とする。
また、請求項3記載の方法は、請求項1または2記載の方法において、前記樹脂被膜が無機質微粒子を含有せしめたものであることを特徴とする。
また、請求項4記載の方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法において、前記樹脂被膜の膜厚が1μm〜50μmであることを特徴とする。
また、請求項5記載の方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法において、磁石が希土類系永久磁石であることを特徴とする。
また、本発明の液体燃料の送液ポンプ用モータは、請求項6記載の通り、表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成したリング状ボンド磁石を組み込んだものであることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のリング状ボンド磁石に液体燃料に対する耐久性を付与する方法は、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石を当該環境で使用するに際し、当該磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成することを特徴とするものである。ガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜は、強い分子間結合のもとに三次元網目構造を密に形成しているので、当該樹脂被膜中に液体燃料分子が浸入しにくく、また、膨潤などによる寸法変化が起こりにくい。従って、かかる構成により、リング状ボンド磁石を自動車などに装着される液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込み、液体燃料に浸漬して使用しても、当該磁石は液体燃料に対して優れた耐久性を発揮する。ここで、液体燃料としては、ガソリン、軽油、液体石油ガスなどが挙げられる。
【0008】
ガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜としては、例えば、ポリイミド樹脂被膜(ガラス転移温度:一般に340℃程度)やポリアミドイミド樹脂被膜(ガラス転移温度:一般に250℃程度)などが挙げられる。ポリイミド樹脂被膜には、付加型ポリイミド樹脂被膜と縮合型ポリイミド樹脂被膜が存在するが、そのいずれも採用することができる。しかしながら、磁石が希土類系永久磁石である場合には、磁石が酸化腐食しやすいことを考慮して、硬化に際して水が生成することがない付加型ポリイミド樹脂被膜を採用することが望ましい。代表的な付加型ポリイミド樹脂被膜としては、無水アリルナジック酸とジアミンから合成され、脱水閉環反応が完結した両末端にアリル基を有するイミドモノマーであるビスアリルナジイミド(BANI:下記化学式参照)(必要ならば特開平5−9222号公報や特開平7−53516号公報を参照)から得られる樹脂被膜の他、末端ナジック酸型ポリイミド樹脂(PMR)、ビスマレイミド型ポリイミド樹脂、末端アセチレン型ポリイミド樹脂などからなる被膜が挙げられる。
【0009】
【化1】
【0010】
リング状ボンド磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成する方法については、特段の制限はなく、採用する樹脂被膜に応じた自体公知の方法、例えば、溶剤型スプレー塗装法や粉体塗装法などの塗装法、気相法などを採用すればよい。
【0011】
リング状ボンド磁石の表面に形成するガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜に無機質微粒子を含有せしめてもよい。このような態様により被膜中における樹脂の存在比率を低下させれば、被膜中への液体燃料分子の進入をよりいっそう困難なものとすることができ、また、たとえ樹脂が膨潤したとしても(この膨潤の程度はもちろんわずかなものであるが)、被膜全体としての寸法変化を抑制することができる。さらに、無機質微粒子を含有せしめた樹脂被膜を形成するための成膜処理液は、磁石端部における被膜の付き回り性などに優れるといった利点を有する。よって、樹脂被膜に無機質微粒子を含有せしめれば、これらの作用が相俟って液体燃料に対するより優れた耐久性が発揮される。ここで好適な無機質微粒子としては、長径が0.01μm〜10μm程度で鱗平状や球状のアルミニウム、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、亜鉛、錫などの微粒子が挙げられる。樹脂被膜中における無機質微粒子の含有量は、5重量%〜50重量%であることが望ましい。
【0012】
リング状ボンド磁石の表面に形成するガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜の膜厚は、リング状ボンド磁石に液体燃料に対する優れた耐久性を付与するという観点とリング状ボンド磁石の有効体積を最大限に確保するという観点から、1μm〜50μmとすることが望ましい。
【0013】
本発明におけるリング状ボンド磁石は、フェライト系ボンド磁石でも希土類系ボンド磁石でもよい。希土類系ボンド磁石は、磁性粉と樹脂バインダーを主成分とするものであれば磁気的等方性磁石であっても磁気的異方性磁石であってもよい。また、樹脂バインダーにより結合形成されたものの他、金属バインダーや無機バインダーなどにより結合成形されたものであってもよい。さらに、バインダーにフィラーを含むものであってもよい。
【0014】
希土類系ボンド磁石としては、種々の組成のものや結晶構造のものが知られているが、これらすべてが本発明の対象となる。
例えば、特開平9−92515号公報に記載されているような異方性R−Fe−B系ボンド磁石、特開平8−203714号公報に記載されているようなソフト磁性相(例えば、α−FeやFe3B)とハード磁性相(Nd2Fe14B)を有するNd−Fe−B系ナノコンポジット磁石、従来から広く使用されている液体急冷法により作成された等方性Nd−Fe−B系磁石粉末(例えば、商品名:MQP−B・MQI社製)を用いたボンド磁石などが挙げられる。
また、特公平5−82041号公報記載の(Fe1−xRx)1−yNy(0.07≦x≦0.3,0.001≦y≦0.2)で表されるR−Fe−N系ボンド磁石などが挙げられる。
【0015】
なお、希土類系ボンド磁石を構成する磁性粉は、希土類系永久磁石合金を溶解し、鋳造後に粉砕する溶解粉砕法、一度焼結磁石を作成した後、これを粉砕する焼結体粉砕法、Ca還元にて直接磁性粉を得る直接還元拡散法、溶解ジェットキャスターで希土類系永久磁石合金のリボン箔を得、これを粉砕・焼純する急冷合金法、希土類系永久磁石合金を溶解し、これをアトマイズで粉末化して熱処理するアトマイズ法、原料金属を粉末化した後、メカニカルアロイングにて粉末末化して熱処理するメカニカルアロイ法などの方法で得ることができる。
また、R−Fe−N系ボンド磁石を構成する磁性粉は、希土類系永久磁石合金を粉砕し、これを窒素ガス中またはアンモニアガス中で窒化した後、粉末末化するガス窒化法などの方法でも得ることができる。
【0016】
【実施例】
本発明を以下の実施例と比較例によってさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例と比較例は、急冷合金法で作製した、Nd:12原子%、Fe:77原子%、B:6原子%、Co:5原子%の組成からなる平均長径150μmの合金粉末にエポキシ樹脂を2wt%加えて混練し、686N/mm2の圧力で圧縮成形した後、150℃で1時間キュアすることによって作製された、外径31mm×内径28.5mm×長さ4mmのリング状希土類系ボンド磁石(以下、磁石体試験片と称する)を用いて行った。
【0017】
実施例1:
磁石体試験片50個をアルミナメディア(PS−4:チップトン社製)2Lとともに振動バレル(VM−10:チップトン社製)の処理室内に投入し、1時間表面研磨を行った。その後、エタノール中で1分間超音波洗浄し、大気中100℃×10分間乾燥させた。
付加型ポリイミド樹脂(BANI−M:丸善石油化学社製:ガラス転移温度は339℃)をキシレンにて50重量%希釈し、これを、ガン口径1.5mmのエアスプレー装置を使用し、吹付圧力0.2MPaの条件にて、一方の端面を下にしてトレー上に載置した上記の前処理を行った磁石体試験片に吹付けてスプレー塗装した後、仮焼き付けを大気中150℃×30分間行った。続いて磁石体試験片を上下反転させて最初に下にしていた端面を上にして上記と同じ条件にてスプレー塗装した後、本焼き付けを大気中200℃×60分間行うことで、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)の付加型ポリイミド樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面の付加型ポリイミド樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0018】
ガソリン耐久性試験として次の試験を行った。即ち、以上のようにして製造された表面に付加型ポリイミド樹脂被膜を有する磁石体試験片(以下、サンプルAと称する)3個を市販のレギュラーガソリン12mLとともに内容積50mLの耐圧密閉容器に収容して蓋を締結した。その後、この耐圧密閉容器をウォーターバス(恒温水槽)に収納し、80℃にて2時間保温した後(ガソリンの蒸気圧により容器内圧は約300kPaとなる)、耐圧密閉容器をウォーターバスから取り出し、大気中で12時間保持するという操作を1サイクルとし、この操作を5サイクル、15サイクル、30サイクル、50サイクル行った後のサンプルについて、寸法変化(外径と内径と高さ)、重量変化を調べた。結果を図1〜図4に示す。
図1〜図4から明らかなように、サンプルAは、上記の操作を50サイクル行った後も、いずれの評価項目に関しても実用上問題となりうる変化は観察されず、ガソリンに対して優れた耐久性を発揮した。なお、磁気特性については僅かに劣化したが、実用上問題になる程度のものではなかった。
【0019】
実施例2:
ポリアミドイミド樹脂(パイロマックスHR12N2:東洋紡績社製:ガラス転移温度は250℃)をN−メチルピロリドンにて50重量%希釈し、これを実施例1と同様にして前処理を行った磁石体試験片に対して実施例1と同様にして吹付けてスプレー塗装を行った後、焼付けを行い、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)のポリアミドイミド樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面のポリアミドイミド樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0020】
以上のようにして製造された表面にポリアミドイミド樹脂被膜が形成された磁石体試験片(以下、サンプルBと称する)に対し、実施例1と同様のガソリン耐久性試験を行った。結果を図1〜図4に示す。図1〜図4から明らかなように、サンプルBは、操作を50サイクル行った後も、いずれの評価項目に関しても実用上問題となりうる変化は観察されず、ガソリンに対して優れた耐久性を発揮した。なお、磁気特性については僅かに劣化したが、実用上問題になる程度のものではなかった。
【0021】
実施例3:
実施例1で使用した付加型ポリイミド樹脂に長径が約10μmで厚みが約1μmの鱗平状アルミニウム微粒子を8:2の割合で均一混合することで含有せしめ、これをキシレンにて50重量%希釈して成膜処理液とした。この成膜処理液を使用し、これを実施例1と同様にして前処理を行った磁石体試験片に対して実施例1と同様にして吹付けてスプレー塗装を行った後、焼付けを行い、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)のアルミニウム微粒子含有付加型ポリイミド樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面のアルミニウム微粒子含有付加型ポリイミド樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0022】
以上のようにして製造された表面にアルミニウム微粒子含有付加型ポリイミド樹脂被膜が形成された磁石体試験片(以下、サンプルCと称する)に対し、実施例1と同様のガソリン耐久性試験を行った。結果を図1〜図4に示す。図1〜図4から明らかなように、サンプルCは、操作を50サイクル行った後も、いずれの評価項目に関しても実用上問題となりうる変化は観察されず、高さ変化や重量変化がサンプルAやサンプルBよりも僅少で、ガソリンに対して優れた耐久性を発揮した。なお、磁気特性については僅かに劣化したが、実用上問題になる程度のものではなかった。
【0023】
比較例:
ポリエステル樹脂(ファスタイトグレー:大橋化学社製:ガラス転移温度は105℃)をキシレンにて50重量%希釈し、これを実施例1と同様にして前処理を行った磁石体試験片に対して実施例1と同様にして吹付けてスプレー塗装を行った後、焼付けを行い、磁石体試験片の表面全体に膜厚が約20μm(断面観察による)のポリエステル樹脂被膜を形成した。無作為に抽出した20個の磁石体試験片の表面のポリエステル樹脂被膜を拡大鏡(×4)にて外観検査したところ、ピンホールや突起や異物付着などを有する不良品は存在せず、全てが均質な被膜で良品と評価された。
【0024】
以上のようにして製造された表面にポリエステル樹脂被膜が形成された磁石体試験片(以下、サンプルDと称する)に対し、実施例1と同様のガソリン耐久性試験を行った。結果を図1〜図4に示す。図1〜図4から明らかなように、操作を50サイクル行った後は、いずれの評価項目に関してもサンプルDはサンプルA、サンプルB、サンプルCに比較して1.5倍〜3倍の変化を起した。また、サンプルDには点錆が発生し、実用上において無視できない磁気特性の劣化が見られた。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、自動車などに装着されるガソリンなどの液体燃料の送液ポンプ用モータに組み込まれて使用されたりするなど、液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石に、液体燃料に対する優れた耐久性を付与する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例におけるガソリン耐久性試験結果(外径変化)を示すグラフ
【図2】同、内径変化を示すグラフ
【図3】同、高さ変化を示すグラフ
【図4】同、重量変化を示すグラフ
Claims (6)
- 液体燃料の存在下を使用環境とするリング状ボンド磁石を当該環境で使用するに際し、当該磁石の表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成することで当該磁石に液体燃料に対する耐久性を付与する方法。
- 前記樹脂被膜がポリイミド樹脂被膜またはポリアミドイミド樹脂被膜である請求項1記載の方法。
- 前記樹脂被膜が無機質微粒子を含有せしめたものである請求項1または2記載の方法。
- 前記樹脂被膜の膜厚が1μm〜50μmである請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
- 磁石が希土類系永久磁石である請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
- 表面にガラス転移温度が200℃以上の特性を有する樹脂被膜を形成したリング状ボンド磁石を組み込んだ液体燃料の送液ポンプ用モータ。
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