JP3187396B2 - 耐食性皮膜を有するFe−B−R系永久磁石の製造方法 - Google Patents

耐食性皮膜を有するFe−B−R系永久磁石の製造方法

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JP3187396B2
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metal oxide
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた耐食性皮膜
を有するFe−B−R系永久磁石の製造方法に関する。
より詳細には、めっき処理や六価クロムを用いる処理な
どを行うことなく、簡易に、低コストで、磁石との密着
性に優れ、温度80℃×相対湿度90%の高温高湿条件
下に長時間放置しても磁気特性が劣化することなく、安
定した高い磁気特性を発揮させることができる耐食性皮
膜を磁石表面に有するFe−B−R系永久磁石の製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】Fe−B−Nd系永久磁石に代表される
Fe−B−R系永久磁石は、Sm−Co系永久磁石に比
べて、資源的に豊富で安価な材料が用いられ、かつ、高
い磁気特性を有していることから、種々の用途で実用化
されている。しかしながら、Fe−B−R系永久磁石
は、反応性の高いRとFeを含むため、大気中で酸化腐
食されやすく、何の表面処理をも行わずに使用した場合
には、わずかな酸やアルカリや水分などの存在によって
表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、磁
石特性の劣化やばらつきを招く。さらに、錆が発生した
磁石を磁気回路などの装置に組み込んだ場合、錆が飛散
して周辺部品を汚染するおそれがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の点に鑑み、Fe
−B−R系永久磁石の耐食性を改善するため、磁石表面
に無電解めっき法や電気めっき法のような湿式めっき法
によって耐食性を有する金属めっき皮膜を形成した磁石
が既に提案されている(特公平3−74012号公報参
照)。しかしながら、この方法では、めっき処理の前処
理で用いられる酸性溶液やアルカリ性溶液が磁石孔内に
残留し、磁石が時間の経過とともに腐食することがあ
る。また、該磁石は耐薬品性に劣るため、めっき処理時
に磁石表面が腐食することがある。さらに、上記のよう
に磁石表面に金属めっき皮膜を形成しても、温度60℃
×相対湿度90%の条件下での耐食性試験を行うと、1
00時間後にその磁気特性が初期値よりも10%以上劣
化することがある。
【0004】また、Fe−B−R系永久磁石の表面にリ
ン酸塩皮膜やクロム酸塩皮膜などの耐酸化性化成皮膜を
形成する方法も提案されているが(特公平4−2200
8号公報参照)、この方法で得られる皮膜は磁石との密
着性の点では優れるものの、温度60℃×相対湿度90
%の条件下での耐食性試験を行うと、300時間後にそ
の磁気特性が初期値よりも10%以上劣化することがあ
る。
【0005】また、Fe−B−R系永久磁石の耐食性を
改善するために提案された、気相成長法によってAl皮
膜を形成した後、クロム酸塩処理する方法、いわゆるア
ルミ−クロメート処理方法(特公平6−66173号公
報参照)は、磁石の耐食性を著しく改善するものであ
る。しかしながら、この方法に用いるクロム酸塩処理
は、環境上望ましくない六価クロムを用いるため、廃液
処理方法が複雑である。また、この方法によって得られ
る皮膜は、微量ながら六価クロムを含有するため、磁石
の取り扱い時における人体に対する影響も懸念される。
【0006】一方、Fe−B−R系永久磁石表面に金属
を主成分とする下地層を形成し、下地層の表面にガラス
層を形成する方法が提案されているが(特開平1−16
5105号公報参照)、湿式めっき法を用いて下地層を
形成したのでは、既に述べたように磁石が時間の経過と
ともに腐食することがある。たとえば、真空蒸着法など
のような気相めっき法を用いて下地層を形成すれば、こ
のような問題もなく、耐食性に優れた磁石を提供するこ
とが可能となる。しかしながら、気相めっき処理を行う
ためには大型の装置が必要となり、しかもその装置は高
価である。また、前処理として、磁石表面の清浄化処理
を必要としたり、Al、Sn、Znなどの易酸化性金属
を主成分とする下地層を形成するためには、きわめて高
い真空度が要求されるので、長時間の真空引き処理を必
要とするなど、製造工程上の煩雑さや長時間化は否めな
い。
【0007】そこで、本発明においては、めっき処理や
六価クロムを用いる処理などを行うことなく、簡易に、
低コストで、磁石との密着性に優れ、温度80℃×相対
湿度90%の高温高湿条件下に長時間放置しても磁気特
性が劣化することなく、安定した高い磁気特性を発揮さ
せることができる耐食性皮膜を磁石表面に有するFe−
B−R系永久磁石の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の点
に鑑みて種々の検討を行った結果、Fe−B−R系永久
磁石と金属片を処理容器内に入れ、前記処理容器内に
て、両者に振動を加え、および/または両者を攪拌する
と、金属片から生成される金属微粉が磁石表面に被着
し、磁石表面に該金属微粉を構成源とする金属皮膜を形
成することができること、また、金属皮膜の上にゾル−
ゲル成膜法によって金属酸化物皮膜を形成すると、該金
属酸化物皮膜は磁石上に強固に密着して磁石の耐食性が
向上すること、さらに、ゾル−ゲル成膜法を採用するこ
とによって人体や環境への影響を大幅に低減することが
できること、しかもその製造方法は、非常に簡便なもの
であることを知見した。
【0009】本発明は、かかる知見に基づきなされたも
ので、本発明の磁石表面に金属皮膜を介して金属酸化物
皮膜を有する永久磁石の製造方法は、請求項1記載の通
り、Fe−B−R系永久磁石と金属片を処理容器内に入
れ、前記処理容器内にて、両者に振動を加え、および/
または両者を攪拌することにより、磁石表面に金属皮膜
を形成した後、前記金属皮膜の上に、金属酸化物皮膜の
原料となる金属化合物の加水分解反応と重合反応によっ
て得られるゾル液を塗布し、熱処理して金属酸化物皮膜
を形成することを特徴とする。また、請求項2記載の製
造方法は、請求項1記載の製造方法において、Al、S
n、Znから選ばれる少なくとも一つの金属成分からな
る金属皮膜を形成するための金属片を用いることを特徴
とする。また、請求項3記載の製造方法は、請求項1記
載の製造方法において、針状または円柱状で、大きさ
(長径)0.05mm〜10mmの金属片を用いること
を特徴とする。また、請求項4記載の製造方法は、請求
項1記載の製造方法において、金属皮膜の膜厚が0.0
1μm〜1μmであることを特徴とする。また、請求項
5記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法におい
て、Al酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、Ti酸化物
から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物成分からなる
金属酸化物皮膜を形成するためのゾル液を用いることを
特徴とする。また、請求項6記載の製造方法は、請求項
1記載の製造方法において、金属皮膜の金属成分と同一
の金属成分を含む金属酸化物皮膜を形成するためのゾル
液を用いることを特徴とする。また、請求項7記載の製
造方法は、請求項1記載の製造方法において、金属酸化
物皮膜の膜厚が0.01μm〜10μmであることを特
徴とする。また、請求項8記載の製造方法は、請求項1
記載の製造方法において、金属酸化物皮膜が含有するC
の含量が50ppm〜1000ppmであることを特徴
とする。また、請求項9記載の製造方法は、請求項1記
載の製造方法において、金属酸化物皮膜が非晶質を主体
とする金属酸化物からなることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】まず、Fe−B−R系永久磁石と
金属片を処理容器内に入れ、前記処理容器内にて、両者
に振動を加え、および/または両者を攪拌することによ
り、磁石表面に金属皮膜を形成する方法について説明す
る。
【0011】金属片は所望する金属皮膜の金属成分に対
応したものを用いればよく、たとえば、Al、Sn、Z
n、Cu、Fe、Ni、Co、Tiから選ばれる少なく
とも一つの金属成分からなる金属片が挙げられる。この
内、焼結磁石に対して効率良く金属皮膜を形成すること
ができる金属成分はAl、Sn、Znである。金属片は
単一金属からなるものであってもよいし、合金からなる
ものであってもよい。また、異なる金属成分の金属片を
複数用いて、複数の金属成分からなる金属皮膜を形成し
てもよい。金属片は針状(ワイヤー状)、円柱状、塊状
など様々な形状のものを用いることができるが、金属皮
膜の構成源となる金属微粉を効率よく生成させるためな
どの観点から、末端が鋭利な針状や円柱状のものを用い
ることが望ましい。金属片の大きさ(長径)は、金属皮
膜の構成源となる金属微粉を効率よく生成させるためな
どの観点から、0.05mm〜10mmが望ましいが、
より望ましくは0.3mm〜5mmであり、さらに望ま
しくは0.5mm〜3mmである。金属片は同一形状・
同一寸法のものを用いてもよく、異形状・異寸法のもの
を混合して用いてもよい。
【0012】磁石と金属片に対する、振動および/また
は攪拌は、両者が酸化腐食されやすいことに配慮して、
乾式的に行うことが望ましく、大気雰囲気中、常温にお
いて行うことができる。本発明において用いうる処理容
器は、複雑な装置のものを必要とせず、たとえば、バレ
ル装置の処理室などでよい。バレル装置は回転式、振動
式、遠心式など、公知の装置を用いることができる。回
転式の場合、その回転数は20rpm〜50rpmとす
ることが望ましい。振動式の場合、その振動数は50H
z〜100Hz、振動振幅は0.3mm〜10mmとす
ることが望ましい。遠心式の場合、その回転数は70r
pm〜200rpmとすることが望ましい。処理容器内
に入れる磁石と金属片の量は、処理容器内容積の20v
ol%〜90vol%が望ましい。20vol%未満で
は処理量が少なすぎて実用的でなく、90vol%を越
えると、効率よく金属皮膜を形成することができないお
それがあるからである。また、処理容器内に入れる磁石
と金属片との比率は、容積比率(磁石/金属片)にして
3以下が望ましい。容積比率が3を越えると、金属皮膜
の形成に時間を要して実用的でないおそれがあるからで
ある。また、処理時間は処理量にも依存するが、通常、
1時間〜10時間である。
【0013】上記の方法によって、金属片から生成され
る金属微粉を磁石表面に被着させ、金属皮膜を形成す
る。金属微粉が磁石表面に被着する現象は、一種のメカ
ノケミカル的反応であると考えられ、金属微粉は磁石表
面に強固に被着し、得られる金属皮膜は優れた耐食性を
示す。十分な耐食性を確保する観点からは、その膜厚は
0.01μm以上であることが望ましい。膜厚の上限は
特段制限されるものではないが、膜厚が1μmを越える
金属皮膜を形成するには時間を要するので、この方法は
膜厚が1μm以下の金属皮膜を形成する方法として適し
ている。
【0014】なお、上記の方法によって磁石表面に金属
皮膜を形成した後、熱処理することによって、磁石表面
と金属皮膜との密着性を高めることもできる。熱処理は
この段階で行ってもよいが、後述する金属酸化物皮膜を
形成するための熱処理によっても同様の効果を得ること
ができる。熱処理の温度は、500℃を越えると、磁石
の磁気特性の劣化を招くおそれや、金属皮膜が溶解して
しまうおそれがあるので、500℃以下で行うことが望
ましい。
【0015】次に、形成した金属皮膜の上に金属酸化物
皮膜の原料となる金属化合物の加水分解反応と重合反応
によって得られるゾル液を塗布し、熱処理して金属酸化
物皮膜を形成する方法について説明する。
【0016】金属酸化物皮膜は、単一の金属酸化物成分
からなる皮膜であってもよいし、複数の金属酸化物成分
からなる複合皮膜であってもよい。金属酸化物成分とし
ては、たとえば、Al酸化物、Si酸化物、Zr酸化
物、Ti酸化物から選ばれる少なくとも一つの金属酸化
物成分が挙げられる。単一の金属酸化物成分からなる皮
膜のうち、Si酸化物皮膜(SiO皮膜:0<x≦
2)は、皮膜を形成するためのゾル液が他の金属酸化物
皮膜を形成するためのゾル液に比べて安定である点や、
他の金属酸化物成分からなる皮膜を形成する場合に比べ
て低温で形成できるので、磁石の磁気特性に対する影響
を少なくすることができる点において都合がよい。Zr
酸化物皮膜(ZrO皮膜:0<x≦2)は耐食性に加
えて耐アルカリ性にも優れている点において都合がよ
い。また、下地層となる金属皮膜の金属成分と同一の金
属成分を含む金属酸化物皮膜であれば(たとえば、Al
皮膜の上にAl酸化物皮膜(Al皮膜:0<x≦
3)を形成した場合)、金属皮膜と金属酸化物皮膜との
界面での密着性がより強固なものになる点において都合
がよい。複数の金属酸化物成分からなる複合皮膜として
は、Si−Al複合酸化物皮膜(SiO・Al
皮膜:0<x≦2・0<y≦3)や、Si−Zr複合酸
化物皮膜(SiO・ZrO皮膜:0<x≦2・0<
y≦2)や、Si−Ti複合酸化物皮膜(SiO・T
iO皮膜:0<x≦2・0<y≦2)などが挙げられ
る。Si酸化物成分を含む複合皮膜は、ゾル液が比較的
安定である点や、比較的低温で形成できるので、磁石の
磁気特性に対する影響を少なくすることができる点にお
いて都合がよい。Zr酸化物成分を含む複合皮膜は、耐
アルカリ性にも優れている点において都合がよい。ま
た、下地層となる金属皮膜の金属成分と同一の金属成分
を含む複合皮膜であれば(たとえば、Al皮膜の上にS
i−Al複合酸化物皮膜を形成した場合やTi皮膜の上
にSi−Ti複合酸化物皮膜を形成した場合)、金属皮
膜と複合皮膜との界面での密着性がより強固なものにな
る点において都合がよい。
【0017】ゾル−ゲル成膜法に用いるゾル液は、金属
酸化物皮膜の構成源となる金属化合物、触媒、安定化
剤、水などを有機溶媒中で調整し、金属化合物の加水分
解反応や重合反応などによって得られるコロイドが分散
した溶液である。
【0018】金属酸化物皮膜の構成源となる金属化合物
としては、金属のメトキシド、エトキシド、プロポキシ
ド、ブトキシドなどのアルコキシド(一部のアルコキシ
ル基がメチル基やエチル基などのアルキル基やフェニル
基などで置換されたものであってもよい)、金属のシュ
ウ酸塩、酢酸塩、オクチル酸塩、ステアリン酸塩などの
カルボン酸塩、金属とアセチルアセトナートなどとのキ
レート化合物、さらには金属の硝酸塩や塩化物に代表さ
れる無機塩などを用いることができる。ゾル液の安定性
やコストなどを考慮すると、たとえば、Al酸化物皮膜
を形成する際に用いられるAl化合物やZr酸化物皮膜
を形成する際に用いられるZr化合物の場合は、Alや
Zrのプロポキシドやブトキシドなど炭素数が3〜4の
アルコキシル基を有するアルコキシド、金属の酢酸塩や
オクチル酸塩などのカルボン酸塩を用いることが望まし
い。Si酸化物皮膜を形成する際に用いられるSi化合
物の場合は、Siのメトキシド、エトキシド、プロポキ
シドなど炭素数が1〜3のアルコキシル基を有するアル
コキシドを用いることが望ましい。Ti酸化物皮膜を形
成する際に用いられるTi化合物の場合は、Tiのエト
キシド、プロポキシド、ブトキシドなど炭素数が2〜4
のアルコキシル基を有するアルコキシドを用いることが
望ましい。
【0019】複合酸化物皮膜を形成する際には、複数の
金属化合物を混合して用いることができる他、金属複合
アルコキシドなどの金属複合化合物を単独で、また、金
属化合物と混合して用いることもできる。たとえば、S
i−Al複合酸化物皮膜を形成する際には、Si−O−
Al結合を有し、炭素数が1〜4のアルコキシル基(一
部のアルコキシル基がメチル基やエチル基などのアルキ
ル基やフェニル基などで置換されたものであってもよ
い)を有するSi−Al複合アルコキシドなどのSi−
Al複合化合物を用いることができる。このような化合
物としては、具体的には、(HCO)−Si−O−
Al−(OCHや、(HO) −Si−O
−Al−(OCなどが挙げられる。
【0020】複数の金属化合物を用いて複合酸化物皮膜
を形成する場合における各金属化合物の混合割合は特段
限定されるものではなく、所望する複合酸化物皮膜の成
分割合に応じて決定すればよい。たとえば、Al皮膜の
上に、Si−Al複合酸化物皮膜を形成する場合、Si
−Al複合酸化物皮膜中に含まれるSiとAlの合計モ
ル数に対するAlのモル数(Al/Si+Al)が0.
001以上(モル比)になるように、Si化合物とAl
化合物を混合して用いたり、Si化合物とSi−Al複
合化合物を混合して用いたりすることが望ましい。この
ような混合割合にすることによって、Si酸化物皮膜に
おける優れた特性(ゾル液が比較的安定であることや、
比較的低温で皮膜を形成することができること)を維持
しつつ、Al皮膜との界面での反応性を向上することが
できる。なお、後述する、金属皮膜表面にゾル液を塗布
した後の熱処理を150℃以下で行う場合は、上記のモ
ル比は0.5以下が望ましく、100℃以下で行う場合
は、上記のモル比は0.2以下が望ましい。Alの混合
割合が増加するほど、熱処理温度を高くする必要がある
からである。
【0021】ゾル液に対する金属化合物の配合割合は、
0.1wt%〜20wt%(金属酸化物換算(たとえ
ば、Si化合物の場合はSiO換算、Si化合物+A
l化合物の場合はSiO+Al換算))の範囲
が望ましい。配合割合が0.1wt%未満では十分な膜
厚の皮膜を得るためには過度の回数の成膜工程を必要と
するおそれがあるからである。また、20wt%を超え
ればゾル液の粘性が高くなることによって皮膜の形成が
困難になるおそれがあるからである。
【0022】触媒としては、酢酸、硝酸、塩酸などの酸
を単独で、または混合して用いることができる。適正添
加量は調製するゾル液の水素イオン濃度で規定され、ゾ
ル液がpH2〜5になるように添加することが望まし
い。pHが2未満や5を超えると、皮膜形成に適したゾ
ル液を調製するに際しての加水分解反応や重合反応など
を制御できないおそれがあるからである。
【0023】ゾル液を安定化させるために必要に応じて
使用される安定化剤は、使用する金属化合物の化学的安
定性に応じて適宜選択されるものであるが、アセチルア
セトンをはじめとするβ−ジケトン、アセト酢酸エチル
をはじめとするβ−ケト酸エステルなど、金属とキレー
トを形成するような化合物が望ましい。安定化剤の配合
量は、たとえば、β−ジケトンを用いる場合、モル比
(安定化剤/金属化合物)で2以下が望ましい。モル比
が2を越えると、ゾル液調製時の加水分解反応や重合反
応などを阻害するおそれがあるからである。
【0024】ゾル液中に含まれる水の供給は、直接供給
であっても、たとえば、溶媒にアルコールを用いた場合
にカルボン酸とのエステル化反応で生成する水を利用す
るといったような化学反応を用いた間接的な供給であっ
ても、大気中の水蒸気を利用するといった方法であって
もよい。水をゾル液中に直接、または間接的に供給する
場合の水/金属化合物のモル比は100以下が望まし
い。モル比が100を超えるとゾル液の安定性に影響を
及ぼすおそれがあるからである。
【0025】有機溶媒は、ゾル液の成分となる金属化合
物、触媒、安定化剤、水をすべて均一に溶解し、かつ得
られたコロイドを均一に分散させるものであれば限定さ
れるものではなく、たとえば、エタノールに代表される
低級アルコール、エチレングリコールモノアルキルエー
テルに代表される炭化水素エーテルアルコール、エチレ
ングリコールモノアルキルエーテルアセテートに代表さ
れる炭化水素エーテルアルコールの酢酸エステル、エト
キシエチルアセテートに代表される低級アルコールの酢
酸エステル、酢酸エチルに代表される低級アルコールの
酢酸エステル、アセトンに代表されるケトンなどが使用
できるが、処理時の安全性やコストの点から、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの低級ア
ルコールを単独で、または混合して用いることが望まし
い。
【0026】ゾル液の粘度は、ゾル液に含まれる各種成
分の組み合わせにもよるが、一般的に20cP未満とす
ることが望ましい。20cPを超えると、均一な皮膜形
成が困難になり、熱処理時にクラックが発生するおそれ
があるためである。
【0027】なお、ゾル液の調整時間や調整温度は、ゾ
ル液に含まれる各種成分の組み合わせによるが、通常、
調整時間は1分〜72時間、調整温度は0℃〜100℃
である。
【0028】ゾル液の金属皮膜表面への塗布方法として
は、ディップコーティング法、スプレー法、スピンコー
ト法などを用いることができる。
【0029】金属皮膜表面にゾル液を塗布した後、熱処
理を行う。該処理の温度は少なくとも有機溶媒を蒸発さ
せるだけの温度が必要であり、たとえば、有機溶媒とし
てエタノールを用いた場合には、その沸点である80℃
が必要である。一方、焼結磁石の場合、熱処理温度が5
00℃を越えると、磁石の磁気特性の劣化を招くおそれ
や、金属皮膜が溶解してしまうおそれがある。したがっ
て、熱処理温度は80℃〜500℃が望ましいが、熱処
理後の冷却時におけるクラックの発生を極力防止すると
いう観点からは80℃〜250℃がより望ましい。ま
た、ボンド磁石の場合、熱処理の温度条件は使用する樹
脂の耐熱温度を考慮して設定しなければならない。たと
えば、エポキシ系樹脂やポリアミド系樹脂を用いたボン
ド磁石の場合、熱処理温度は、これらの樹脂の耐熱温度
を考慮して、80℃〜200℃とすることが望ましい。
なお、通常、熱処理時間は1分〜1時間である。
【0030】上記の方法によれば、耐食性に優れた非晶
質を主体とする金属酸化物皮膜を得ることができる。な
お、たとえば、Si−Al複合酸化物皮膜の場合、その
構造は、Si成分が豊富な皮膜の場合、Si−O−Si
結合とSi−O−Al結合を多く含み、Al成分が豊富
な場合、Al−O−Al結合とSi−O−Al結合を多
く含む。皮膜中の両成分の存在割合は、上記の金属化合
物の混合割合によって決定される。
【0031】また、上記の方法によれば、金属酸化物皮
膜は金属化合物や安定化剤に起因するCを含有する。C
を含有することによって、耐食性に優れた非晶質を主体
とする金属酸化物皮膜が得られやすくなるが、その含量
は50ppm〜1000ppm(wt/wt)であるこ
とが望ましい。Cの含量が50ppm未満では皮膜にク
ラックが生成することがあり、Cの含量が1000pp
mを越えると皮膜の緻密化が十分に起こらないおそれが
あるからである。
【0032】上記の方法によって得られる金属酸化物皮
膜は、膜厚が0.01μm以上であれば優れた耐食性を
有している。上記の方法によって形成しうる皮膜の膜厚
の上限は限定されるものではないが、磁石自体の小型化
に基づく要請や自動車用モータなどのように温度変化が
大きな部品に組み込まれた場合の耐久性を確保する観点
から、10μm以下、望ましくは5μm以下、より望ま
しくは1μm以下の膜厚を有する皮膜を形成するのに適
している。なお、必要に応じて、金属皮膜表面へのゾル
液の塗布、それに続く熱処理を複数回繰り返して行って
もよいことはいうまでもない。
【0033】金属皮膜の上に金属酸化物皮膜を形成する
前工程として、ショットピーニング(硬質粒子を衝突さ
せることによって表面を改質する方法)を行ってもよ
い。ショットピーニングを行うことによって、金属皮膜
の平滑化を行い、薄膜でも優れた耐食性を有する金属酸
化物皮膜を形成しやすくすることができる。ショットピ
ーニングに用いる粉末としては、形成した金属皮膜の硬
度と同等以上の硬度のものが望ましく、たとえば、スチ
ールボールやガラスビーズなどのようなモース硬度が3
以上の球状硬質粉末が挙げられる。該粉末の平均粒度が
30μm未満では金属皮膜に対する押圧力が小さくて処
理に時間を要する。一方、3000μmを越えると表面
粗度が荒くなりすぎて仕上がり面が不均一となるおそれ
がある。したがって、該粉末の平均粒径は30μm〜3
000μmが望ましく、40μm〜2000μmがより
望ましい。ショットピーニングにおける噴射圧は1.0
kg/cm〜5.0kg/cm が望ましい。噴射圧
が1.0kg/cm未満では金属皮膜に対する押圧力
が小さくて処理に時間を要し、噴射圧が5.0kg/c
を越えると金属皮膜に対する押圧力が不均一になっ
て表面粗度の悪化を招くおそれがあるからである。ショ
ットピーニングにおける噴射時間は1分〜1時間が望ま
しい。噴射時間が1分未満では全表面に対して均一な処
理ができないおそれがあり、1時間を越えると表面粗度
の悪化を招くおそれがあるからである。
【0034】本発明において用いられるFe−B−R系
永久磁石における希土類元素(R)は、Nd、Pr、D
y、Ho、Tb、Smのうち少なくとも1種、あるいは
さらに、La、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb、
Lu、Yのうち少なくとも1種を含むものが望ましい。
また、通常はRのうち1種をもって足りるが、実用上は
2種以上の混合物(ミッシュメタルやジジムなど)を入
手上の便宜などの理由によって用いることもできる。F
e−B−R系永久磁石におけるRの含量は、10原子%
未満では結晶構造がα−Feと同一構造の立方晶組織と
なるため、高磁気特性、特に高い保磁力(iHc)が得
られず、一方、30原子%を超えるとRリッチな非磁性
相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下して優れた
特性の永久磁石が得られないので、Rの含量は組成の1
0原子%〜30原子%であることが望ましい。
【0035】Feの含量は、65原子%未満ではBrが
低下し、80原子%を超えると高いiHcが得られない
ので、65原子%〜80原子%の含有が望ましい。ま
た、Feの一部をCoで置換することによって、得られ
る磁石の磁気特性を損なうことなしに温度特性を改善す
ることができるが、Co置換量がFeの20%を超える
と、磁気特性が劣化するので望ましくない。Co置換量
が5原子%〜15原子%の場合、Brは置換しない場合
に比較して増加するため、高磁束密度を得るのに望まし
い。
【0036】Bの含量は、2原子%未満では菱面体構造
が主相となり、高いiHcは得られず、28原子%を超
えるとBリッチな非磁性相が多くなり、Brが低下して
優れた特性の永久磁石が得られないので、2原子%〜2
8原子%の含有が望ましい。また、磁石の製造性の改善
や低価格化のために、2.0wt%以下のP、2.0w
t%以下のSのうち、少なくとも1種、合計量で2.0
wt%以下を含有していてもよい。さらに、Bの一部を
30wt%以下のCで置換することによって、磁石の耐
食性を改善することができる。
【0037】さらに、Al、Ti、V、Cr、Mn、B
i、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、
Ni、Si、Zn、Hf、Gaのうち少なくとも1種の
添加は、保磁力や減磁曲線の角型性の改善、製造性の改
善、低価格化に効果がある。なお、その添加量は、最大
エネルギー積(BH)maxを20MGOe以上とする
ためには、Brが少なくとも9kG以上必要となるの
で、該条件を満たす範囲で添加することが望ましい。な
お、Fe−B−R系永久磁石には、R、Fe、B以外に
工業的生産上不可避な不純物を含有するものでも差し支
えない。
【0038】また、本発明において用いられるFe−B
−R系永久磁石は、平均結晶粒径が1μm〜80μmの
範囲にある正方晶系の結晶構造を有する化合物を主相と
し、体積比で1%〜50%の非磁性相(酸化物相を除
く)を含むことを特徴とする。該磁石は、iHc≧1k
Oe、Br>4kG、(BH)max≧10MGOeを
示し、(BH)maxの最大値は25MGOe以上に達
する。
【0039】なお、本発明の金属酸化物皮膜の上に、更
に別の皮膜を積層形成してもよい。このような構成を採
用することによって、金属酸化物皮膜の特性を増強・補
完したり、さらなる機能性を付与したりすることができ
る。
【0040】
【実施例】たとえば、米国特許4770723号公報に
記載されているようにして、公知の鋳造インゴットを粉
砕し、微粉砕後に成形、焼結、熱処理、表面加工を行う
ことによって得られた17Nd−1Pr−75Fe−7
B組成の23mm×10mm×6mm寸法の焼結磁石
(以下「磁石体試験片」と称する)を用いて以下の実験
を行った。以下の実験において、金属皮膜の膜厚は蛍光
X線膜厚計を用いて測定した。金属酸化物皮膜の膜厚は
破断面の電子顕微鏡観察により測定した。金属酸化物皮
膜中のC量はグロー放電質量分析装置を用いて測定し
た。金属酸化物皮膜の構造はX線回折装置を用いて解析
した。なお、本発明はFe−B−R系焼結磁石への適用
に限られるものではなく、Fe−B−R系ボンド磁石に
対しても適用できるものである。
【0041】実験例1:150個の磁石体試験片(見か
け容量0.5l、重量1.6kg)と直径0.8mm、
長さ1mmの短円柱状Al片(見かけ容量20l、重量
100kg)を容積50lの振動バレル装置の処理室に
投入し(合計投入量は処理室内容積の40vol%)、
振動数60Hz、振動振幅1.8mmの条件にて乾式的
に処理を5時間行い、磁石表面にAl皮膜を形成した。
得られたAl皮膜の膜厚は0.05μmであった。ゾル
液を、表1に示すAl化合物、触媒、安定化剤、有機溶
媒および水の各成分にて、表2に示す組成、粘度および
pHで調整し、ディップコーティング法にて、表3に示
す引き上げ速度でAl皮膜を有する磁石に塗布し、熱処
理を行ってAl皮膜の上にAl酸化物皮膜を形成した。
得られた皮膜(Al皮膜:0<x≦3)の膜厚は
1μmであった。皮膜中のC量は450ppmであっ
た。皮膜の構造は非晶質であった。上記の方法で得られ
た、磁石表面に、Al皮膜を介して、Al酸化物皮膜を
有する磁石を、温度80℃×相対湿度90%の高温高湿
条件下にて300時間放置し、耐食性加速試験を行っ
た。試験前後の磁気特性ならびに試験後の外観変化状況
を表4に示す。結果として、得られた磁石は、高温高湿
条件下に長時間放置しても、磁気特性、外観ともにほと
んど劣化することなく、要求される耐食性を十分に満足
していることがわかった。また、別の実験として、変性
アクリレート系接着剤(製品番号・ハードロックG−5
5:電気化学工業社製)を用いて、得られた磁石を鋳鉄
製の治具に接着し、24時間放置後にアムスラー試験機
にて圧縮せん断試験を行い、得られた磁石のせん断接着
強度を測定したところ、331kg重/cmという優
れた値を示した。
【0042】実験例2:実験例1で得られた、磁石表面
に0.05μmのAl皮膜を有する磁石に対し、表1に
示すSi化合物、触媒、安定化剤、有機溶媒および水の
各成分にて、表2に示す組成、粘度およびpHのゾル液
を調整し、ディップコーティング法にて、表3に示す引
き上げ速度で塗布し、熱処理を行ってAl皮膜の上にS
i酸化物皮膜を形成した。得られた皮膜(SiO
膜:0<x≦2)の膜厚は0.8μmであった。皮膜中
のC量は450ppmであった。皮膜の構造は非晶質で
あった。上記の方法で得られた、磁石表面に、Al皮膜
を介して、Si酸化物皮膜を有する磁石に対して、実験
例1と同一条件の耐食性加速試験を行った。その結果を
表4に示す。結果として、得られた磁石は、要求される
耐食性を十分に満足していることがわかった。また、別
の実験として、実施例1と同一条件の圧縮せん断試験を
行い、得られた磁石のせん断接着強度を測定したとこ
ろ、274kg重/cmという優れた値を示した。
【0043】実験例3:実験例1で得られた、磁石表面
に0.05μmのAl皮膜を有する磁石に対し、表1に
示すZr化合物、触媒、安定化剤、有機溶媒および水の
各成分にて、表2に示す組成、粘度およびpHのゾル液
を調整し、ディップコーティング法にて、表3に示す引
き上げ速度で塗布し、熱処理を行ってAl皮膜の上にZ
r酸化物皮膜を形成した。得られた皮膜(ZrO
膜:0<x≦2)の膜厚は1μmであった。皮膜中のC
量は450ppmであった。皮膜の構造は非晶質であっ
た。上記の方法で得られた、磁石表面に、Al皮膜を介
して、Zr酸化物皮膜を有する磁石に対して、実験例1
と同一条件の耐食性加速試験を行った。その結果を表4
に示す。結果として、得られた磁石は、要求される耐食
性を十分に満足していることがわかった。
【0044】実験例4:実験例1で得られた、磁石表面
に0.05μmのAl皮膜を有する磁石に対し、表1に
示すTi化合物、触媒、安定化剤、有機溶媒および水の
各成分にて、表2に示す組成、粘度およびpHのゾル液
を調整し、ディップコーティング法にて、表3に示す引
き上げ速度で塗布し、熱処理を行ってAl皮膜の上にT
i酸化物皮膜を形成した。得られた皮膜(TiO
膜:0<x≦2)の膜厚は1μmであった。皮膜中のC
量は320ppmであった。皮膜の構造は非晶質であっ
た。上記の方法で得られた、磁石表面に、Al皮膜を介
して、Ti酸化物皮膜を有する磁石に対して、実験例1
と同一条件の耐食性加速試験を行った。その結果を表4
に示す。結果として、得られた磁石は、要求される耐食
性を十分に満足していることがわかった。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】比較例1:磁石体試験片を脱脂、酸洗後、
亜鉛4.6g/l、リン酸塩17.8g/lからなる浴
温70℃の処理液に浸漬し、磁石表面に膜厚1μmのリ
ン酸塩皮膜を形成した。得られた磁石に対して、実験例
1と同一条件の耐食性加速試験を行った。その結果を表
4に示す。結果として、得られた磁石は、磁気特性の劣
化と発錆を招いた。
【0050】比較例2:磁石体試験片に対して、実験例
1と同一条件の耐食性加速試験を行った。その結果を表
4に示す。結果として、磁石体試験片は、磁気特性の劣
化と発錆を招いた。
【0051】実験例5:実験例1で得られた、磁石表面
に0.05μmのAl皮膜を有する磁石に対し、表5に
示すSi化合物、Al化合物、触媒、安定化剤、有機溶
媒および水の各成分にて、表6に示す組成、粘度および
pHのゾル液を調整し、ディップコーティング法にて、
表7に示す引き上げ速度で塗布し、熱処理を行ってAl
皮膜の上にSi−Al複合酸化物皮膜を形成した。得ら
れた皮膜(SiO・Al皮膜:0<x≦2・0
<y≦3)の膜厚は0.9μmであった。皮膜中のC量
は290ppmであった。皮膜の構造は非晶質であっ
た。上記の方法で得られた、磁石表面に、Al皮膜を介
して、Si−Al複合酸化物皮膜を有する磁石に対し
て、実験例1と同一条件の耐食性加速試験を行った。そ
の結果を表8に示す。結果として、得られた磁石は、要
求される耐食性を十分に満足していることがわかった。
また、別の実験として、実施例1と同一条件の圧縮せん
断試験を行い、得られた磁石のせん断接着強度を測定し
たところ、323kg重/cmという優れた値を示し
た。
【0052】
【表5】
【0053】
【表6】
【0054】
【表7】
【0055】
【表8】
【0056】実験例6:30個の磁石体試験片(見かけ
容量0.1l、重量0.32kg)と直径0.8mm、
長さ1mmの短円柱状Sn片(見かけ容量2l、重量1
1kg)を容積3.5lの振動バレル装置の処理室に投
入し(合計投入量は処理室内容積の60vol%)、振
動数60Hz、振動振幅1.5mmの条件にて乾式的に
処理を5時間行い、磁石表面にSn皮膜を形成した。得
られたSn皮膜の膜厚は0.4μmであった。ゾル液
を、表9に示すSi化合物、触媒、安定化剤、有機溶媒
および水の各成分にて、表10に示す組成、粘度および
pHで調整し、ディップコーティング法にて、表11に
示す引き上げ速度でSn皮膜を有する磁石に塗布し、熱
処理を行ってSn皮膜の上にSi酸化物皮膜を形成し
た。得られた皮膜(SiO皮膜:0<x≦2)の膜厚
は0.3μmであった。皮膜中のC量は350ppmで
あった。皮膜の構造は非晶質であった。上記の方法で得
られた、磁石表面に、Sn皮膜を介して、Si酸化物皮
膜を有する磁石に対して、実験例1と同一条件の耐食性
加速試験を行った。その結果を表12に示す。結果とし
て、得られた磁石は、要求される耐食性を十分に満足し
ていることがわかった。
【0057】実験例7:150個の磁石体試験片(見か
け容量0.5l、重量1.6kg)と直径1mm、長さ
1mmの短円柱状Zn片(見かけ容量20l、重量10
0kg)を容積50lの振動バレル装置の処理室に投入
し(合計投入量は処理室内容積の40vol%)、振動
数60Hz、振動振幅1.8mmの条件にて乾式的に処
理を5時間行い、磁石表面にZn皮膜を形成した。得ら
れたZn皮膜の膜厚は0.2μmであった。ゾル液を、
表9に示すSi化合物、触媒、安定化剤、有機溶媒およ
び水の各成分にて、表10に示す組成、粘度およびpH
で調整し、ディップコーティング法にて、表11に示す
引き上げ速度でZn皮膜を有する磁石に塗布し、熱処理
を行ってZn皮膜の上にSi酸化物皮膜を形成した。得
られた皮膜(SiO皮膜:0<x≦2)の膜厚は0.
7μmであった。皮膜中のC量は450ppmであっ
た。皮膜の構造は非晶質であった。上記の方法で得られ
た、磁石表面に、Zn皮膜を介して、Si酸化物皮膜を
有する磁石に対して、実験例1と同一条件の耐食性加速
試験を行った。その結果を表12に示す。結果として、
得られた磁石は、要求される耐食性を十分に満足してい
ることがわかった。
【0058】実験例8:実験例7で得られた、磁石表面
に0.2μmのZn皮膜を有する磁石に対し、表9に示
すZr化合物、触媒、安定化剤、有機溶媒および水の各
成分にて、表10に示す組成、粘度およびpHのゾル液
を調整し、ディップコーティング法にて、表11に示す
引き上げ速度で塗布し、熱処理を行ってZn皮膜の上に
Zr酸化物皮膜を形成した。得られた皮膜(ZrO
膜:0<x≦2)の膜厚は0.6μmであった。皮膜中
のC量は140ppmであった。皮膜の構造は非晶質で
あった。上記の方法で得られた、磁石表面に、Zn皮膜
を介して、Zr酸化物皮膜を有する磁石に対して、実験
例1と同一条件の耐食性加速試験を行った。その結果を
表12に示す。結果として、得られた磁石は、要求され
る耐食性を十分に満足していることがわかった。
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
【表11】
【0062】
【表12】
【0063】
【発明の効果】本発明の、耐食性皮膜を有するFe−B
−R系永久磁石の製造方法によれば、めっき処理や六価
クロムを用いる処理などを行うことなく、簡易に、低コ
ストで、磁石との密着性に優れ、温度80℃×相対湿度
90%の高温高湿条件下に長時間放置しても磁気特性が
劣化することなく、安定した高い磁気特性を発揮させる
ことができる耐食性皮膜を磁石表面に形成することが可
能であり、耐食性に優れたFe−B−R系永久磁石を提
供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平10−303731 (32)優先日 平成10年10月26日(1998.10.26) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平10−349915 (32)優先日 平成10年12月9日(1998.12.9) (33)優先権主張国 日本(JP) 早期審査対象出願 (56)参考文献 特開 平2−251110(JP,A) 特開 平4−237103(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 41/00 - 41/12 H01F 1/00 - 1/44

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Fe−B−R系永久磁石と金属片を処理
    容器内に入れ、前記処理容器内にて、両者に振動を加
    え、および/または両者を攪拌することにより、磁石表
    面に金属皮膜を形成した後、前記金属皮膜の上に、金属
    酸化物皮膜の原料となる金属化合物の加水分解反応と重
    合反応によって得られるゾル液を塗布し、熱処理して金
    属酸化物皮膜を形成することを特徴とする磁石表面に金
    属皮膜を介して金属酸化物皮膜を有する永久磁石の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 Al、Sn、Znから選ばれる少なくと
    も一つの金属成分からなる金属皮膜を形成するための金
    属片を用いることを特徴とする請求項1記載の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 針状または円柱状で、大きさ(長径)
    0.05mm〜10mmの金属片を用いることを特徴と
    する請求項1記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 金属皮膜の膜厚が0.01μm〜1μm
    であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 Al酸化物、Si酸化物、Zr酸化物、
    Ti酸化物から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物成
    分からなる金属酸化物皮膜を形成するためのゾル液を用
    いることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 金属皮膜の金属成分と同一の金属成分を
    含む金属酸化物皮膜を形成するためのゾル液を用いるこ
    とを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 金属酸化物皮膜の膜厚が0.01μm〜
    10μmであることを特徴とする請求項1記載の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 金属酸化物皮膜が含有するCの含量が5
    0ppm〜1000ppmであることを特徴とする請求
    項1記載の製造方法。
  9. 【請求項9】 金属酸化物皮膜が非晶質を主体とする金
    属酸化物からなることを特徴とする請求項1記載の製造
    方法。
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