JP2004124087A - ポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 触媒量を少なくしても、効率的に目標の分子量のポリエステルを製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 少なくとも脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体を含有するジカルボン酸成分とジオール成分とを重合してポリエステルを製造する方法において、該脂肪族ジカルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種を留去しながら重縮合することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【選択図】   なし

Description

 本発明は、少なくとも脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体を含有するジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合するポリエステルの製造方法に関する。
 生分解性を有する脂肪族ポリエステルは、環境問題に対する意識の高まりから、より環境負荷を回避する樹脂として、繊維、成形品、フィルムやシート等への応用がはかられている。例えば、生分解性を有するポリブチレンサクシネート及び/又はポリブチレンアジピネートは、ポリエチレンと似た力学特性を持つことから、ポリエチレンの代替ポリマーとして、開発されている。
 一方、経済的に有利なポリエステルの製造方法としては、触媒の存在下でのジカルボン酸とジオールとの直接エステル化反応、或いは、ジカルボン酸のアルキルエステルとジオールとのエステル交換反応によりエステル低重合体を製造後、これを加熱減圧下でエステル交換反応を行いながら生成するジオールを反応系から留去して高重合度のポリエステルを製造する方法が古くから知られ、採用されている。
 しかしながら、この従来の製造方法では、脂肪族ポリエステルの製造の場合には、重合活性が低く、実用上十分な強度を有する高重合度のポリエステルが得られないため、例えば、チタン化合物を触媒として用いた場合、鎖延長剤として、ジイソシアネート(例えば、特許文献1参照)やジフェニルカーボネート(例えば、特許文献2参照)を添加する工夫がなされている。
 また、重合触媒として、Ge化合物(例えば、特許文献3参照)、亜鉛化合物(例えば、特許文献4参照)、Fe、Mn、Co、Zr、V、Y、La、Ce、Li、Ca等のアセチルアセトネート(例えば、特許文献5参照)、或いは、有機アルコキシチタン化合物(例えば、特許文献6参照)を用いた製造方法も提案されているが、この場合でも重合度が上がらないため、同様に鎖延長剤が添加されているものであった。
 その他、脂肪族ポリエステルに3官能性基(例えば、特許文献7参照)や4官能性基(例えば、特許文献8参照)を導入したり、エポキシ基を導入したりすることにより分岐構造にして、メルトテンションを上げたりする試みもなされているが、このように溶融粘度の向上、溶融張力の向上に非常に努力されているにも拘わらず、所定の粘度(重合度)に達しないため、殆どの場合、重合後期にジイソシアネートを添加している。鎖延長剤を使用しない唯一の例では、非常に高真空にするという極めて高額の設備投資を要する方法が提案されている(例えば、特許文献9参照)が、実用的な方法ではない。
 一方、本願出願人は、重合成分に乳酸を加えて3元系(1,4−ブチレングリコール、コハク酸、乳酸)又は4元系(1,4−ブチレングリコール、コハク酸、アジピン酸、乳酸)にした時に、触媒としてGe系触媒を用いると、高活性で高重合度のポリエステルが製造できることを提案した(例えば、特許文献10参照)。
 経済的に有利な重縮合反応によるポリエステルの製造方法は、エステル化反応で生成する水やエステル交換反応で生成するジオールを留去させながらポリエステルの重合度を高める方法であるため、通常、ジオールはジカルボン酸に対して理論量より過剰に使用される。
 一般に、ジオールのジカルボン酸に対する比率が多い方が反応時間は長くなる傾向があ
るとされているが、過剰のジオールを使用する理由は、縮重合反応中にジオールが留出されやすいという理由以外に、一般にポリマーの熱安定性に著しく悪影響を与えるとされているポリエステルのカルボン酸末端量を減じることができる点にある。
 従って、従来の方法では、過剰のジオールを用いて、温度、減圧度、反応時間の条件を適当にコントロールさせて、ジオールの留去速度と反応速度を調整しながらポリエステルを製造するのが一般的であった。
 このように、従来の方法では、過剰のジオールの使用といった経済的に不利な反応系であるばかりではなく、長時間にわたって高真空に保つ必要があるため、ポリエステルの分解を誘発させる等の問題があった。
 一方、重合時間の短縮を目的にすれば、減圧速度を早くする方法や触媒量の増加等が挙げられるが、前者の場合は、遊離ジオールの残存量の低減化が可能であるが、未反応のカルボン酸量が増大する等の問題が生じ、後者の場合は、ポリマー中への触媒含有量の増大により耐加水分解性や熱安定性の低下という問題が生じるため好ましいものではなかった。
特開平4−189822号公報 特開平8−301999号公報 特開平5−39350号公報 特開平5−39352号公報 特開平5−39353号公報 特開平5−70566号公報 特開平5−295099号公報 特開平5−295098号公報 特開平5−310898号公報 特開平8−239461号公報
 本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、工業的に有利で且つ効率的な製造方法で、触媒量が少なくても目標の分子量を得ることができるポリエステルの製造方法を提供することにある。
 本発明の要旨は、少なくとも脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体を含有するジカルボン酸成分とジオール成分とを重合してポリエステルを製造する方法において、該脂肪族ジカルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種を留去しながら重縮合することを特徴とするポリエステルの製造方法に関する。
 本発明の製造方法は、工業的に有利で且つ効率的に触媒量が少なくても目標の分子量のポリエステルを製造することができる。
 また、減圧用排気口の温度を、脂肪族ジカルボン酸無水物の融点、又は重縮合反応時の真空度での脂肪族ジカルボン酸無水物の沸点のいずれか低い方の温度以上に保持すると生成する酸無水物が効率よく反応系から除去でき、目的の高重合度のポリエステルが短時間で製造することができる。
 以下、本発明につき詳細に説明する。
 本発明において用いられるジオール成分としては、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば、特
に制限はされないが、その炭素数は通常2以上10以下、好ましくは6以下である。
 脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレグリコール、及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
 この内、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオールが好ましく、更には、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
 また、両末端ヒドロキシポリエーテルを単独で又は上記の脂肪族ジオールと混ぜて使用してもよい。両末端ヒドロキシポリエーテルとしては、炭素数の下限が通常4以上、好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、上限が通常1000以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは100以下のものである。
 両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。
 次に、本発明において用いられるジカルボン酸成分には、少なくとも脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体が含まれることが必須である。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルが挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
 本発明においては、これらの脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物を反応系から留去しながらポリエステルを製造する形態が採られるが、遊離の脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物を生成させるためには、末端がカルボキシル基である方が有利であるため、ジカルボン酸成分として必須成分として含まれる脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸が好ましく、その中でも、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物が、減圧下での加熱により比較的容易に留去できる点から、アジピン酸及びコハク酸が好ましく、その中でも特にコハク酸が好ましい。
 ジカルボン酸成分として、必須成分である脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体のジカルボン酸中の割合としては、20モル%以上が好ましく、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは70モル%以上である。
 また、上記の脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体の他に使用するジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。芳香族ジカルボン酸の具体的な例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸及びジフェニルジカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、前記した芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として上記脂肪族カルボン酸に加えて使用してもよい。この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。
 本発明においては、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、共重合成分を導入すると比較的容易に高重合度のポリエステルが得られる場合があるため、共重合成分を加えてポリエステルを製造する方法も好んで用いられる。
 共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や分岐構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物および3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれた少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。
 2官能のオキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸等が挙げられるが、これらはオキシカルボン酸のエステルやラクトン、或いはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であっても良い。また、これらオキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中では、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸が特に好ましい。形態は、30〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。この場合、オキシカルボン酸の使用量は、通常、原料モノマーに対して通常下限が0.02モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上であり、上限が通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下である。
 3官能以上の多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
 3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、具体的には、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
 3官能以上のオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸が好ましい。
 上記の3官能以上の多官能化合物の使用量は、ジカルボン酸成分全体100モル%に対して、通常0.1〜5モル%である。
 本発明の方法によると、鎖延長剤を使用しなくても所定の重合度を達成することができるが、ジイソシアネート、ジフェニルカーボネート、ジオキサゾリンなどの鎖延長剤を使用してもよい。また、溶融テンションを高めるために、少量のパーオキサイドを添加してもよい。
 本発明におけるポリエステルの製造方法としては、従来の公知の方法が使用でき、例えば、上記の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった、溶融重合の一般的方法によってポリエステルを製造することができる。
 ここで、反応の温度、時間、圧力などの条件は、従来公知の条件が採用できる。例えば、常圧下、温度の下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上で、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲で、窒素或いはアルゴン不活性ガス雰囲気下で、脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応
及び/又はエステル交換反応を通常1時間以上10時間以下、好ましくは、4時間以下行った後、圧力の下限が通常0.01×103Pa以上、上限が通常1.4×103Pa以下、、好ましくは0.4×103Pa以下の減圧度で、温度の下限が通常150℃以上、好
ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは150℃以下の反応温度で、2時間以上15時間以下、好ましくは10時間以下重縮合反応を行うと目的のポリエステルが製造できる。
 本発明において、重合触媒の存在下に重縮合反応を行うのが好ましく、重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
 本発明において、ジカルボン酸成分として脂肪族カルボン酸に加えて芳香族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルを混合して使用する場合は、特に添加順序には限定はなく、例えば、第1として、原料のモノマーを一括に反応釜に入れて反応することもできるし、第2として、ジオール成分と脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体とをエステル化反応又はエステル交換反応させた後、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸又はその誘導体をエステル化反応又はエステル交換反応させ、更に重縮合反応させる方法等種々の方法を採用することができる。
 本発明のポリエステルの製造方法において使用される重合触媒としては、具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムおよびストロンチウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩またはβ―ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。また、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸やメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸等を単独で或いは上記金属化合物と組み合わせた触媒も使用することができる。
 更には、白水春雄著「粘土鉱物学」朝倉書店(1995年)等に記載される公知の層状珪酸塩を単独で或いは上記金属化合物と組み合わせた触媒を使用すると、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物が生成しやすくなる場合があるため、このような触媒系もまた好んで使用される。
 層状珪酸塩としては、具体的には、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族、バーミキュライト等のバーミキュライト族、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク及び緑泥石群等が挙げらる。
 これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。
 チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネートが好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましい。
 ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
 重合触媒としてゲルマニウム化合物を使用する場合、ゲルマニウム化合物は、そのまま添加してもよいが、ゲルマニウム化合物を上記の2官能のオキシカルボン酸水溶液に溶解して添加する方法が重合反応の速度という点で好ましい。
 本発明においてポリエステルを製造する反応装置としては、公知の縦型或いは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、特に限定はされないが、溶融重合を同一又は異なる反応装置を用いて、エステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には、凝縮器が結合されており、該凝縮器にて縮重合反応中に生成する揮発成分や未反応モノマーが回収される方法が好んで用いられる。
 本発明においては、脂肪族カルボン酸及び/又はその無水物の除去は、通常、上記溶融重合工程における後段の減圧下での重縮合反応中に脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物を加熱留出させる方法が採られるが、重縮合反応条件下では、脂肪族ジカルボン酸は容易に酸無水物になりやすいため、酸無水物の形態で加熱留出させる場合が多い。また、その際、ジオールから誘導される鎖状又は環状エーテル及び/又はジオールもまた脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物と共に除去されてもよい。
 本発明において反応中に留出される脂肪族カルボン酸及び/又はその無水物は、通常、常温、常圧で固体である。本発明においては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管の反応容器側排気口の温度を、脂肪族ジカルボン酸無水物の融点、又は重縮合反応時の真空度での脂肪族ジカルボン酸無水物の沸点のいずれか低い方の温度以上に保持すると生成する酸無水物が効率よく反応系から除去でき、目的の高重合度のポリエステルが短時間で製造できるため好ましい。更には、反応容器側排気口から凝縮器までの配管温度を酸無水物の融点、又は重縮合反応時の真空度での沸点のいずれか低い方の温度以上に保持するとより好ましい。
 本発明のポリエステルの製造方法の最大の特徴は、従来の、ポリエステルのアルコール末端のエステル交換反応により生成するジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法とは異なり、ポリエステルの脂肪族カルボン酸末端から脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物を留去させながらポリエステルの重合度を高める点にある。
 尚、本発明においては、ポリエステルの重合度を高めるために、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物に加えてジオール及び/又はジオールから誘導される鎖状又は環状エーテルを生成、除去してもよい。
 但し、本発明において、留去される脂肪族ジカルボン酸及び/又はその無水物とジオールとの合計量中、脂肪族ジカルボン酸及び/又はその無水物の量は、50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上である。
 本発明の製造方法では、目的とする重合度のポリエステルを得るには末端カルボン酸量が多い方が有利であるため、従来の方法で用いられるような原料としてより過剰なジオールの使用は必要なく、目的とするポリエステルの重合度や種類によって、ジオール成分とジカルボン酸成分とのモル比の好ましい範囲は異なるが、ジオール成分とジカルボン酸成
分との使用割合は、通常、ジカルボン酸成分1モルに対し、ジオール成分が通常0.8モル以上、好ましくは、0.9モル以上、更に好ましくは0.95モル以上、上限が通常1.15モル以下、好ましくは1.1モル以下、より好ましくは1.09モル以下、更に好ましくは1.07モル以下である。
 本発明のポリエステルの製造方法の第二の特徴は、ポリマーの耐加水分解性や熱安定性の低下を引き起こすポリマー中に含有される重合触媒の量を低減できる点にある。すなわち、本発明のポリエステルの製造方法は、従来のジオールを留去する方法に比較して重合速度が高いため、用いる触媒の添加量を低減しても充分な重合活性が得られる。
 従って、重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒添加量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上、上限が通常250ppm以下、好ましくは150ppm以下、更に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
 一方、本発明のポリエステルの製造方法を用いると、ポリマーの熱安定性に著しく悪影響を与えるカルボン酸末端量の増大が懸念されるが、重合度の尺度である還元粘度(ηsp/c)値が高いポリエステルは、本発明の方法で製造したものでも末端カルボン酸量が低く、耐熱安定性にすぐれたポリエステルである。
 しかしながら、本発明の製造方法によって製造されるポリエステルは、重合度が低い場合には、従来の方法に比べカルボン酸量末端が多い傾向があるため、得られるポリエステルの物性を考慮すると、本発明で製造されるポリエステルの還元粘度(ηsp/c)値は、実用上1.5以上が好ましく、中でも1.6以上、特に1.8以上が好ましい。1.5以上の還元粘度を有するポリエステルは、末端COOH基数は35eq/トン以下となり、耐熱安定性にすぐれたポリエステルである。より好ましくは25eq/トン以下である。
 以上のように、本発明の製造方法で得られるポリエステルは、末端COOH基数が少なく、しかもポリマー中の触媒量も低いため、熱安定性に優れ、成形時の品質の低下が少ない、即ち、溶融成形時に末端基の切断や、主鎖の切断等の副反応が少ないという特徴を有する。
 本発明の製造方法の途中又は得られるポリエステルには、特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、難燃剤、帯電防止剤、離型剤及び紫外線吸収剤等を重合時に添加してもよい。
 また、成形時に上に示した各種の添加剤の他に、ガラス繊維、炭素繊維、チタンウィスカー、マイカ、タルク、CaCO3、TiO2、シリカ等の強化剤及び増量剤を添加して成形することもできる。
 本発明の製造方法により得られるポリエステルは、耐熱性、色調に優れ、更に耐加水分解性や生分解性にも優れ、しかも安価に製造できるので、各種のフィルム用途や射出成形品の用途に適している。
 具体的な用途としては、射出成型品(例えば、生鮮食品のトレーやファーストフードの
容器、野外レジャー製品など)、押出成型品(フィルム、シート等、例えば釣り糸、漁網、植生ネット、保水シートなど)、中空成型品(ボトル等)等が挙げられ、更にその他農業用のフィルム、コーティング資材、肥料用コーティング材、ラミネートフィルム、板、延伸シート、モノフィラメント、マルチフィラメント、不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体、ショッピングバッグ、ゴミ袋、コンポスト袋、化粧品容器、洗剤容器、漂白剤容器、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、クッション材フィルム及び合成
紙などに利用可能である。
 以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
 還元粘度(ηsp/c)は、実施例及び比較例で得られたポリエステルをフェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)中、30℃で溶液濃度(0.5g/dl)で測定した溶液粘度から求めた。
 末端カルボキシル基量は、実施例で得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1N NaOHにて滴定した値であり、1×106 g当たりのカルボキシル基当量である。末端OH基量は、1H NMRにより求めた値であり、1×106 g当たりのOH
基当量である。
 実施例1
 攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸118.1g(1.0mol)、1,4―ブタンジオール95.52g(1.06mol)ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.3重量%溶解させた90%乳酸水溶液6.27g(0.06mol)を仕込み(生成ポリマー中のGe濃度75ppm)、窒素減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
 次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1時間30分かけて0.07×103Paになる
ように減圧し、0.07×103Paの減圧下で無水コハク酸を留去させて、4時間反応
を行い重合を終了し、白色のポリエステルを得た。尚、減圧下での重縮合反応中は、反応容器の減圧用排気口を110℃に加熱し続けた。
 得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.94であり、末端カルボキシル基量は9eq/トン、末端ブタンジオールのOH基量は33eq/トンであった。減圧用排気口から重合中に留出した主な揮発成分は、無水コハク酸が5.9g、水及びテトラヒドロフランの混合液が44.1gであった。
 実施例2
 実施例1において、原料をコハク酸118.1g(1.0mol)、1,4−ブタンジオール89.28g(0.99mol)ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.1重量%溶解させた90%乳酸水溶液6.27g(0.06mol)(生成ポリマー中のGe濃度25ppm)に代え、0.07×103Paの減圧下で無水コハク酸を留去させて、6.5時間反応を行い重合を終了した他は、実施例1と同様な方法で重縮合反応を行い、白色のポリエステルを得た。
 得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.8であり、末端カルボキシル基量は11eq/トン、末端ブタンジオールのOH基量は40eq/トンであった。。減圧用排気口から重合中に留出した主な揮発成分は、無水コハク酸が9.1g、水ならびにテトラヒドロフランの混合液が41.3gであった。
 実施例3
 実施例2において、反応容器の減圧用排気口の加熱を行わなかった他は、実施例2と同様な方法で重縮合反応を行い、白色のポリエステルを得た。重合中の減圧用排気口付近の温度は40〜50℃であった。
 得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.4であり、末端カルボキシル基量は36eq/トン、末端ブタンジオールのOH基量は48eq/トンであった。減圧用排気口から重合中に留出した主な揮発成分は、無水コハク酸が8.3g、水ならびにテトラヒドロ
フランの混合液が40gであった。
 比較例1
 実施例1において、1,4ブタンジオールの仕込量を108.2g(1.2mol)に代えた他は実施例1と同様な方法で重縮合反応を行った。重合中には、無水コハク酸の留出は観測されず、主な揮発成分は水、テトラヒドロフラン(45g)及び1,4−ブタンジオール(7g)であった。また、還元粘度(ηsp/c)0.8以上のポリエステルは得られなかった。
  実施例4
 触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.3重量%溶解させた90%乳酸水溶液(5.31g、0.053mol)(生成ポリマー中のGe濃度75ppm)を、コハク酸100
.3g(0.85mol)および1,4−ブタンジオール81.15g(0.90mol)の混合物に仕込んだ以外は実施例1と同様の方法で重縮合反応を行った。0.07×103Paの減圧下で無水コハク酸を留去させて、6時間反応を行い重合を終了し、白色の
ポリエステルを得た。尚、減圧下での重縮合反応中は、反応容器の減圧用排気口を110℃に加熱し続けた。
 得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.3であり、末端カルボキシル基量は33eq/トン、末端ブタンジオールのOH基量は29eq/トンであった。減圧用排気口から重合中に留出した主な揮発成分は、無水コハク酸が5.7g、水及びテトラヒドロフランの混合液が35.5gであった。
 実施例5
 触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート(0.11g)(生成ポリマー中のTi濃度100ppm)を、コハク酸100.3g(0.85mol)、リンゴ酸0.37g(0.
003mol)および1,4−ブタンジオール80.35g(0.89mol)の混合物に仕込んだ以外は実施例1と同様の方法で重縮合反応を行った。0.07×103Paの
減圧下で無水コハク酸を留去させて、3.5時間反応を行い重合を終了し、白色のポリエステルを得た。尚、減圧下での重縮合反応中は、反応容器の減圧用排気口を110℃に加熱し続けた。
 得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.4であり、末端カルボキシル基量は16eq/トン、末端ブタンジオールのOH基量は55eq/トンであった。減圧用排気口
から重合中に留出
した主な揮発成分は、無水コハク酸、コハク酸と1,4−ブタンジオールとの環状単量体(コハク酸と1,4−ブタンジオールとの1分子同士の環状縮合体)、水及びテトラヒドロフランであった。
 比較例2
 触媒として二酸化ゲルマニウムを予め1.0重量%溶解させた90%乳酸水溶液(5.31g、0.053mol)(生成ポリマー中のGe濃度245ppm)を、コハク酸10
0.3g(0.85mol)および1,4−ブタンジオール84.22g(0.93mol)の混合物に仕込んだ以外は実施例1と同様の方法で重縮合反応を行った。0.07×103Paの減圧下での重合反応が約4.5時間までは撹拌トルクの上昇が観測されたが
(ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.9)、それ以降はポリエステルの分解に伴う撹拌トルクの低下が観測され、更に1.5時間反応させた後に得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.5であった。この結果と実施例4との比較から、使用する触媒量が多いとポリエステルの耐熱性が著しく低下することが判る。減圧用排気口から重合中に留出した主な揮発成分は、1,4−BGを主体とした液成分(6g)であり、水及びテトラヒドロフランの混合液が37.6gであった。
 比較例3
 触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート(0.11g)(生成ポリマー中のTi濃度100ppm)を、コハク酸100.3g(0.85mol)、リンゴ酸0.37g(0.
003mol)および1,4−ブタンジオール84.18g(0.93mol)の混合物に仕込んだ以外は実施例1と同様の方法で重縮合反応を行った。0.07×103Paの
減圧下で無水コハク酸を留去させて、還元粘度(ηsp/c)は2.4のポリエステルを製造するためには、重合時間が7時間(実施例5の2倍)も必要であった。得られた末端カルボキシル基量は22eq/トン、末端ブタンジオールのOH基量は63eq/トンであり、ポリマーの分解に起因する末端ビニルの生成も確認された。減圧用排気口から重合中に留出した主な揮発成分は、1,4−ブタンジオール、コハク酸と1,4−ブタンジオールとの環状単量体、水及びテトラヒドロフランのみであった。
 実施例6 熱量分析
 実施例2で得られたポリエステル(還元粘度(ηsp/c)は1.8)と比較例2の重合反応途中で取り出したポリエステル(還元粘度(ηsp/c)は1.9)について、熱量分析(300℃で60分間保持)した際のポリエステルの重量保持率は、前者が90%であった
のに対して、後者は80%であった。この結果から、使用触媒量が少ない方がポリエステルの耐熱性が向上することが判る。
 本発明の製造方法によれば、触媒量を少なくしても、効率的に目標の分子量のポリエステルを製造することができる。

Claims (8)

  1. 少なくとも脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体を含有するジカルボン酸成分とジオール成分とを重合してポリエステルを製造する方法において、該脂肪族ジカルボン酸及びその酸無水物の少なくとも1種を留去しながら重縮合することを特徴とするポリエステルの製造方法。
  2. 重合触媒の存在下、重縮合反応することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
  3. 重合触媒がゲルマニウム化合物またはチタン化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエステルの製造方法。
  4. 重合触媒の金属元素濃度が10ppm以上150ppm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
  5. ジカルボン酸成分1モルに対してジオール成分を0.9モル以上1.1モル以下使用することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
  6. 酸無水物が無水コハク酸であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
  7. 重縮合反応を、減圧用排気口を具備した攪拌槽型反応器を用い、かつ、該減圧用排気口の温度を脂肪族ジカルボン酸無水物の融点、又は重縮合反応時の真空度での脂肪族ジカルボン酸無水物の沸点のいずれか低い方の温度以上に保持することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のポリエステルの製造方法。
  8. 重縮合反応を0.01×103〜0.4×103Paの減圧度で行うことを特徴とする請求項7に記載のポリエステルの製造方法。
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