JP2004123913A - 成形材料ならび成形物とその製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量で耐熱性に優れた産業資材として好適な繊維強化熱可塑性樹脂複合材を提供するものである。
【解決手段】強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtex以上の強化繊維と密度が1.0×103 kg/m3 以下の架橋性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の複合物からなることを特徴とする成形材料と、当該成形材料を、そのまま、あるいは賦形後に架橋処理を行なうことにより荷重たわみ温度が200℃以上の成型物となす。
【解決手段】強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtex以上の強化繊維と密度が1.0×103 kg/m3 以下の架橋性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の複合物からなることを特徴とする成形材料と、当該成形材料を、そのまま、あるいは賦形後に架橋処理を行なうことにより荷重たわみ温度が200℃以上の成型物となす。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的な産業資材として好適な繊維強化熱可塑性樹脂複合材に関するものであり、軽量で耐熱性に優れ、成形性が良好な成形材料と成形物、ならびに成形方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化樹脂複合材(以下、FRPと称す)は炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維、アラミド系繊維や高分子量ポリエチレン繊維などの有機繊維、ボロンなどの金属繊維、更には、竹などの植物から得られる繊維などの天然繊維を強化材として、マトリックスと呼称される樹脂を強化したものである。このFRPはマトリックスに適用する樹脂にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂を適用した繊維強化熱硬化性樹脂複合材(以下、FRTSと称す)とポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、他に、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィルドなどの熱可塑性樹脂を適用した繊維強化熱可塑性樹脂複合材(以下、FRTPと称す)に大別することが可能である。
【0003】
このFRPは密度が従来の鋼材やアルミニウム合金などの金属材料に対して低く、しかも、高強度、高弾性率の強化繊維を適用することで該金属材料に劣らない力学特性を発現することから、一般産業資材などに用いられてきた。
特に、FRTPはFRTSと比較して、再利用や焼却廃棄の観点から環境面で優位にあり、様々な用途に用いられ、一般に耐熱性が100℃〜150℃、強度が49MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上ある樹脂をエンジニアリングプラスチック(エンプラ)と呼称される樹脂を使用したものが多く用いられてきた。しかし、これらのエンプラは熱変形温度、熱分解温度などの耐熱性に限界があり、耐熱性部材への適用が困難であった。
【0004】
これらに対してゴムを混合して耐熱性を改善するものがある。融点の低いオレフィン系樹脂に対して、エチレン系ゴム(例えば、特許文献1参照。)、ジエン系ゴム(例えば、特許文献2参照。)、或いはアクリル系ゴムを添加して(例えば、特許文献3参照。)、等、耐熱性を向上させるものが開示されているが、耐熱性部材に適用可能な耐熱性が得られていない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−123642号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平02− 24346号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平04−120167号公報
【0008】
一方、スーパーエンプラと呼称される150℃以上の高温で長期間使用可能で強度が49MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上ある樹脂がある。このスーパーエンプラはポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)などの非晶性のものとポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂、また、溶融時に液晶製になる液晶ポリエステル(LCP)などの結晶性のものが挙げられ、耐熱性部材へ適用されている。
【0009】
しかし、一般に非晶性樹脂は結晶性樹脂と比較して耐溶剤性に劣り、成形の際の流動性が悪く、耐熱性もやや劣るため、不連続な強化繊維でも、フィラーと呼ばれる2〜3mmの強化繊維を使用した射出成形などに適用が限定される。
一方、PPS、PEEK、PEN、PTFEなどのフッ素樹脂、また、LCPなどの結晶性樹脂は耐溶剤性に優れ、成形の際に流れ良好なので薄肉成形に適し、耐熱性も高いため、PEI(例えば、特許文献4参照。)や、LCP(例えば、特許文献5参照。)を適用したものが開示されている。しかし、これらの樹脂は耐熱性に優れるものの、融点、あるいは、軟化点が高いため賦形を高温で行なう必要があった。
【特許文献4】
特開昭60− 38464号公報
【0010】
【特許文献5】
特開平01−270490号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来技術では耐熱性を向上させるため、樹脂の融点、あるいは、軟化点を主に向上させる必要があり、成形性と相反すると云う課題を有していた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般的な産業資材として好適な繊維強化熱可塑性樹脂複合材に関するものであり、軽量で耐熱性に優れ、成形性が良好な成形材料と成形物、ならびに成形方法を見出した。
【0013】
即ち本発明は、下記の構成からなる。
1.強化繊維と架橋性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の複合物からなることを特徴とする成形材料。
2.強化繊維の少なくとも1種類が強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtex以上であり、その体積含有率が20〜70vol%であることを特徴とする上記第1に記載の成形材料。
3.熱可塑性樹脂の密度が1.0×103 kg/m3 以下であることを特徴とする上記第1又は2に記載の成形材料。
4.上記第1に記載の成形材料を架橋処理することにより得られた密度が1.4×103 kg/m3 以下の成形物。
5.荷重たわみ温度が200℃以上であることを特徴とする上記第4に記載の成形物。
6.上記第1に記載の成形材料を、そのまま、あるいは賦形後に架橋処理を行なうことを特徴とする成形方法。
【0014】
本発明の成形材料と成形物に用いる強化繊維は金属繊維、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、PEI繊維、PAI繊維などのスーパーエンプラを用いた有機繊維や最近、新しい高強度、高耐熱性、高弾性率の繊維として知られるポリパラフェニレンテレフタルアミド(パラアラミド)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBT)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のポリベンザゾール(PBZ)繊維などの新規な有機繊維が挙げられる。また、ポリノボルネン、シクロペンテン、シクロブテンなどのシクロオレフィン系樹脂による繊維を適用することも可能である。更に、竹などの植物から得られる繊維など、熱特性が許される範囲で天然繊維も適用は可能である。但し、強度と弾性率、ならびに耐熱性と軽量の観点から高強度、高弾性率で密度の低い繊維の適用が良く、好ましくはエンプラやスーパーエンプラよりなる有機繊維が、また、炭素繊維や新規な有機繊維が密度や耐熱性の観点から好適である。
【0015】
適用する強化繊維の力学特性は産業資材への適用を考えると高強度、高弾性率であることが重要である。従って、強化繊維の体積含有率を考慮する必要があるが、少なくとも強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであり、更には強度20cN/dtex以上、弾性率が800cN/dtexである繊維を用いることが高強度、高弾性率の複合材料を得るために好ましい。なお、該強化繊維には必要に応じて、樹脂との接着性を向上させる処理剤を付与する、かつ/または、コロナ処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理などの処理を施すことが肝要である。
【0016】
基本となる熱可塑性樹脂は成形物の軽量を考慮し、密度が1.0×103 kg/m3 以下、更には、0.9×103 kg/m3 以下であることが好ましい。
【0017】
また、あらかじめ適度な耐熱性を有していることが望ましく、このような要件を満たすものとしては耐熱性のあるオレフィン系樹脂が選択でき、更には、ポリメチルペンテンやポリノルボルネン、シクロペンテン、シクロブテンなどのシクロオレフィン系樹脂が望ましい。また、近年、検討が行なわれているエチレンとα−オレフィンの共重合により結晶性を低下させて低密度化した共重合エチレンなども適用できる。
なお、熱可塑性樹脂についても強化繊維との接着性を向上させるため、処理剤などを付与することが肝要であり、加えて、架橋処理などでこれらの処理剤が該熱可塑性樹脂の官能基と各種の反応を起こし、より強固に接着することが好ましい。更に、熱可塑性樹脂には耐アルカリ劣化防止剤、熱劣化防止剤、酸化劣化防止剤、難燃剤など種々の添加剤も必要に応じて付与する必要がある。
【0018】
そして、本発明の成形材料に適用される熱可塑性樹脂は架橋処理を行なうことで物性を向上させることが可能であることが必要である。なお、ここで示す架橋とは、高分子が三次元網状構造を形成することを云う。
架橋が発生するのは樹脂、樹脂と繊維との界面、更に、使用する強化繊維に有機繊維を適用した場合は該有機繊維において、単独、または、組合わさって発生するのが好ましく、特に、樹脂と繊維との界面において発生することが成形物の強度や剛性などの力学特性や耐熱性などの性状を向上させることに繋がり、好ましい。
また、このような架橋を発生させる架橋処理とは高分子化学(第27巻、297号、65頁、1970年)に記載されているメチルメタクリレートおよびスチレンに架橋剤としてエチレングリコール誘導体に起因するエステルを有するジメタクリレートを用いたものや特開昭57−167340号公報に記載されているメタクリレートを主成分とするビニル系単量体に架橋剤として直鎖状のアルカンジオールに起因するジ(メタ)アクリレートを用いたものを反応させて三次元網状構造を得るために行なう加熱処理、また、上記のような架橋剤を加えたもの以外に、ポリプロピレンなどのエンプラ、PPSなどのスーパーエンプラに対して行なう光や紫外線の照射、電子線や放射線の照射などの処理を示すが、特に、これらに限定されるものではなく、活性シラン基による架橋が水との反応によって得られるような場合は、その際の水へ浸漬処理や蒸気処理なども架橋処理と云える。更に、特開平6−192916号公報に記載されるように疑似架橋を形成すると考えられる熱可塑性弾性樹脂に対する熱処理などであってもよい。
【0019】
本発明の成形物は密度が軽量を考慮し、密度が1.4×103 kg/m3 以下、より求められるのは、1.3×103 kg/m3 以下、更には、1.0×103 kg/m3 以下であることが好ましい。
一般に複合材の理論的特性値Xc は、強化繊維とベースとなる樹脂の特性値をそれぞれXf 、Xm とし、強化繊維とマトリックスの体積含有率をVf 、Vm としたとき、次式で求められる。
Xc = Xf Vf + Xm Vm
また、強化繊維間で樹脂が未含浸であるボイド(空隙)率は次式によって求められる。
Vv=1−(Vf + Vm)
なお、一般に Xf >Xmであるので、これらの式から、Xc は繊維含有率Vf をできるだけ高めること、含浸状態を向上させてボイドを少なくすることが特性 Xc向上に必要であることが分かる。
以上のように、複合材の物性は強化繊維の弾性率と体積含有率に依存し、使用する際に基本的に曲がりにくいことが、材料をより薄く、曳いては、軽量につながる。
従って、一方向のみの剛性が求められる場合、強化繊維は一方向のみに適用すればよく、密度が1.4×103 kg/m3 以下であれば、比剛性(=曲げ剛性/重量)は金属やそれらの合金に対しても充分に高いものとなりうるが、2方向や複数方向に対して剛性が求められると、それに応じた強化繊維の方向を設定する必要があり、その場合、1.3×103 kg/m3 以下、更には、1.1×103 kg/m3 以下であることが重要である。また、これと同時に強化繊維の体積含有率はその体積含有率が20〜70vol%、より好ましくは30〜60vol%であることが望ましい。体積含有率がこの範囲より小さい場合、密度が小さくても比剛性が低い。逆に、大きい場合も物理的に熱可塑性樹脂の周囲を覆い尽くせなくなって空隙などが多くなるなど、比剛性が低くなってしまう。
【0020】
また、本発明の成形物は一般的な産業資材として適用するために耐熱性が求められ、荷重たわみ温度が200℃以上、更には、荷重たわみ温度が230℃以上であることが、高温でも変形しにくく、安全に使用できるので好ましい。
【0021】
なお、適用する強化繊維の力学特性は高強度、高弾性率であることが重要なので、少なくとも強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであり、更には強度20cN/dtex以上、弾性率が800cN/dtexである繊維を用い、必要に応じて、樹脂との接着性を向上させるために処理剤を付与する、かつ/または、コロナ処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理などの処理を施すことが肝要である。加えて、架橋処理などでこれらの処理により熱可塑性樹脂の官能基と各種の反応を起こし、より強固に接着することが好ましい。
【0022】
また、以上の条件を満たすために基本となる熱可塑性樹脂は成形物の軽量を考慮し、密度が1.0×103 kg/m3 以下、更には、0.9×103 kg/m3 以下であることが好ましく、更には、あらかじめ適度な耐熱性を有していることが望ましく、このような要件を満たすものとしては耐熱性のあるオレフィン系樹脂が選択でき、より詳細には、ポリメチルペンテンやポリノルボルネン、シクロペンテン、シクロブテンなどのシクロオレフィン系樹脂が望ましい。
加えて、熱可塑性樹脂についても強化繊維との接着性を向上させるため、処理剤などを付与することが肝要であり、加えて、架橋処理などでこれらの処理剤が該熱可塑性樹脂の官能基と各種の反応を起こし、より強固に接着することが好ましい。なお、更に、熱可塑性樹脂には耐アルカリ劣化防止剤、熱劣化防止剤、酸化劣化防止剤、難燃剤など種々の添加剤も必要に応じて付与することも可能である。
【0023】
強化繊維と熱可塑性樹脂の複合物であり、そのまま、あるいは、賦形後に架橋処理を行なうことで物性を向上させることが可能な成形材料を成形する際には架橋処理を行なうことが重要である。この処理により、強度や弾性率などの機械物性、熱変形温度や連続使用温度などの熱的物性、電気抵抗や誘電率などの電気的物性、耐溶剤性や耐水性、耐油性、更には、環境に起因する耐ストレスクラック性などの化学的物性の向上が図れる。
なお、ここで示す架橋は高分子が三次元網状構造を形成することを云う。また、該三次元網状構造を得るために行なう処理を架橋処理と云い、具体的には、あらかじめ架橋剤を加えたものや、ポリプロピレンなどのエンプラ、PPSなどのスーパーエンプラに対して行なう加熱、光や紫外線の照射、電子線や放射線の照射などの処理を示すが、特に、これらに限定されるものではない。
【0024】
なお、架橋処理を行なうにあたり、対象となるものが最終形状にない場合、事前に賦形を行なうことが必要である。本発明は架橋処理を行なって、より高い物性を得るものであり、架橋後の賦形は逆に、物性を損なう可能性がある。因みに、ここに記す賦形とは、射出成形、プレス成形、回転成形、押出し成形、パイプ成形、熱成形、スタンピング成形、レイアップ成形、引抜き成形、フィラメントワインディング成形、発泡成形などが例示されるものであるが、特に、これらに限定されるものではなく、先に記した熱可塑性樹脂に一般的に適用でき、目的の形状物を得る成形手段である。また、これらの賦形と同時に架橋処理を行なうことで、効率よく成形物を得ることが可能である。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の実施例、ならびに、本文中、及び、実施例中の評価方法について記述する。なお、本発明は下記の本実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に則れば、これ以外の場合も可能である。
(1)複合材料の繊維含有率、密度、空洞率
JIS K 7075「炭素繊維強化プラスチックの繊維含有率及び空洞率試験方法」、ならびに、JIS K 7052「ガラス繊維強化プラスチックの繊維含有率測定方法」に準拠して、繊維含有率、密度、空洞率を求めた。
(2)含浸状態
任意に選択した複合材の断面を光学顕微鏡で観察し、強化繊維周囲長の50%以上が樹脂と接触した状態の該強化繊維の含有量で示すものである。なお、ここでは70%以上を良、70%未満のものを不良とした。
(3)力学特性(曲げ試験物性)
JIS K 7074「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験」(A法)に準拠して、曲げ強度(破壊強さ)と曲げ弾性率を求めた。
(4)架橋処理効果
下記の各種性能評価結果、統計的方法による有意差検定で第1種の誤りの確率5%で有意差があり、かつ、架橋処理後の方が高い場合を○、有意差がない場合を−、有意差があり、かつ、架橋処理後の方が低い場合を×とした。
(5)耐熱性(荷重たわみ温度)
JIS K 7191−3「プラスチック−荷重たわみ温度試験方 法−第3部:熱硬化性樹脂積層材及び繊維強化プラスチック」に準拠 して、荷重たわみ温度を求めた。
(6)耐衝撃性
JIS K 7077「炭素繊維強化プラスチックのシャルピー衝 撃試験方法」に準拠して得たシャルピー衝撃値を以て評価した。
(7)耐クリープ性
JIS K 7088「炭素繊維強化プラスチックの曲げクリープ 試験方法」に準拠し、一定時間経過後の曲げクリープひずみ量を以て 評価した。
【0026】
(実施例1)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリプロピレン樹脂が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、円形状のダイから引抜いた後、連続して長さ5mm程度に切断し、実施例1のペレット状物である成形材料を得た。
【0027】
(実施例2)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリメチルペンテン樹脂が吐出すること以外は実施例1と同様に曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、円形状のダイから引抜いた後、連続して長さ5mm程度に切断し、実施例2のペレット状物である成形材料を得た。
【0028】
(実施例3)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからポリシクロデカンアルキルエステル樹脂が吐出するること以外は実施例1と同様に曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、円形状のダイから引抜いた後、連続して長さ5mm程度に切断し、実施例3のペレット状物である成形材料を得た。
【0029】
(実施例4)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリプロピレン樹脂が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、平面形状のダイから引抜き、実施例4のテープ状物である成形材料を得た。
【0030】
(実施例5)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリプロピレン樹脂が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、平面形状のダイから引抜いた、実施例4と同様のテープ状物を長さ25mmに切断したものを堆積させたのち、該堆積物をプレス成形機(成形温度235℃×圧力0.1MPa×1min)にて圧縮成形を行ない、実施例5の板状物である成形材料(厚さ5mm)を得た。
【0031】
(実施例6〜8)
実施例1〜3で得たそれぞれのペレット状物から射出成形機(三菱重工社製:125/75型)を用いて板状成形体(厚さ2mm)を得た。更に、該成形体に対して市販の低エネルギー電子線(30〜70kV)照射装置により電子線(20Mrad)を照射し、実施例6〜8の成形物を得た。
【0032】
(比較例1〜3)
実施例1〜3で得たそれぞれのペレット状物から射出成形機(三菱重工社製:125/75型)を用いて比較例1〜3の板状成形体(厚さ2mm)を得た。
【0033】
(実施例9)
実施例4で得たテープ状物を弛まないように一方向に並べたものをプレス成形機(成形温度235℃×圧力0.1MPa×1min)で圧縮成形し、幅15mm、厚さ2mmの一方向強化材を得た。更に、該一方向強化材に対して市販の低エネルギー電子線(30〜70kV)照射装置により電子線(20Mrad)を照射し、実施例9の成形物を得た。
【0034】
(比較例4)
実施例4で得たテープ状物を弛まないように一方向に並べたものを実施例9と同様にプレス成形機(成形温度235℃×圧力0.1MPa×1min)で圧縮成形し、幅15mm、厚さ2mmの比較例4の一方向強化材を得た。
【0035】
(実施例10)
実施例5で得た板成形物をIRヒーターで加熱した後、プレス成形機(成形温度60℃×圧力5MPa)でスタンピング成形を行なったのち、市販の低エネルギー電子線(30〜70kV)照射装置により電子線(20Mrad)を照射し、実施例10の成形物を得た。
【0036】
(比較例5)
実施例5で得た板成形物をIRヒーターで加熱した後、プレス成形機(成形温度60℃×圧力5MPa)でスタンピング成形を行ない、比較例5の成形物を得た。
【0037】
なお、実施例1〜5において強化繊維をスリットから吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、ダイから引抜く工程を図1に示す。
【0038】
表1に、実施例1〜4において強化繊維をスリットから吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、ダイから引抜いて得たペレットの前駆体ととテープ状物に関する物性を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例で得られた成形材料はボイドが少なく、成形材料として好適であった。
【0041】
表2に、実施例6〜10と比較例1〜5において得られた成形物に関する架橋処理効果を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例11と参考例1)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからエチレンビニルアルコール共重合樹脂(クラレ製「エバール」)が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、平面形状のダイから引抜き、テープ状物である成形材料を得た。そして、該テープ状物を弛まないように一方向に並べたものをプレス成形機(成形温度190℃×圧力0.1MPa×1min)で圧縮成形し、幅15mm、厚さ2mmの一方向強化材である参考例1の成形物を得た。更に、該一方向強化材に対して放射線照射装置(MDSノーディオン社製 JS−8500型)によりγ線(30kGy)を照射し、実施例11の成形物を得た。
【0044】
実施例11は参考例1に対して実施例6〜10と同様に耐熱性、耐衝撃性、耐クリープ性が向上していた。また、溶剤であるDMSO(ジメチルスルホキシド)に浸漬した場合、参考例1の樹脂は溶解したのに対して、実施例11の樹脂は溶解せしなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によると、耐熱性に優れた産業資材として好適な繊維強化熱可塑性樹脂複合材を提供することを可能とした。
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般的な産業資材として好適な繊維強化熱可塑性樹脂複合材に関するものであり、軽量で耐熱性に優れ、成形性が良好な成形材料と成形物、ならびに成形方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
繊維強化樹脂複合材(以下、FRPと称す)は炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維、アラミド系繊維や高分子量ポリエチレン繊維などの有機繊維、ボロンなどの金属繊維、更には、竹などの植物から得られる繊維などの天然繊維を強化材として、マトリックスと呼称される樹脂を強化したものである。このFRPはマトリックスに適用する樹脂にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂などの熱硬化性樹脂を適用した繊維強化熱硬化性樹脂複合材(以下、FRTSと称す)とポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、他に、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィルドなどの熱可塑性樹脂を適用した繊維強化熱可塑性樹脂複合材(以下、FRTPと称す)に大別することが可能である。
【0003】
このFRPは密度が従来の鋼材やアルミニウム合金などの金属材料に対して低く、しかも、高強度、高弾性率の強化繊維を適用することで該金属材料に劣らない力学特性を発現することから、一般産業資材などに用いられてきた。
特に、FRTPはFRTSと比較して、再利用や焼却廃棄の観点から環境面で優位にあり、様々な用途に用いられ、一般に耐熱性が100℃〜150℃、強度が49MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上ある樹脂をエンジニアリングプラスチック(エンプラ)と呼称される樹脂を使用したものが多く用いられてきた。しかし、これらのエンプラは熱変形温度、熱分解温度などの耐熱性に限界があり、耐熱性部材への適用が困難であった。
【0004】
これらに対してゴムを混合して耐熱性を改善するものがある。融点の低いオレフィン系樹脂に対して、エチレン系ゴム(例えば、特許文献1参照。)、ジエン系ゴム(例えば、特許文献2参照。)、或いはアクリル系ゴムを添加して(例えば、特許文献3参照。)、等、耐熱性を向上させるものが開示されているが、耐熱性部材に適用可能な耐熱性が得られていない。
【0005】
【特許文献1】
特開昭61−123642号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平02− 24346号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平04−120167号公報
【0008】
一方、スーパーエンプラと呼称される150℃以上の高温で長期間使用可能で強度が49MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上ある樹脂がある。このスーパーエンプラはポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)などの非晶性のものとポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂、また、溶融時に液晶製になる液晶ポリエステル(LCP)などの結晶性のものが挙げられ、耐熱性部材へ適用されている。
【0009】
しかし、一般に非晶性樹脂は結晶性樹脂と比較して耐溶剤性に劣り、成形の際の流動性が悪く、耐熱性もやや劣るため、不連続な強化繊維でも、フィラーと呼ばれる2〜3mmの強化繊維を使用した射出成形などに適用が限定される。
一方、PPS、PEEK、PEN、PTFEなどのフッ素樹脂、また、LCPなどの結晶性樹脂は耐溶剤性に優れ、成形の際に流れ良好なので薄肉成形に適し、耐熱性も高いため、PEI(例えば、特許文献4参照。)や、LCP(例えば、特許文献5参照。)を適用したものが開示されている。しかし、これらの樹脂は耐熱性に優れるものの、融点、あるいは、軟化点が高いため賦形を高温で行なう必要があった。
【特許文献4】
特開昭60− 38464号公報
【0010】
【特許文献5】
特開平01−270490号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来技術では耐熱性を向上させるため、樹脂の融点、あるいは、軟化点を主に向上させる必要があり、成形性と相反すると云う課題を有していた。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般的な産業資材として好適な繊維強化熱可塑性樹脂複合材に関するものであり、軽量で耐熱性に優れ、成形性が良好な成形材料と成形物、ならびに成形方法を見出した。
【0013】
即ち本発明は、下記の構成からなる。
1.強化繊維と架橋性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の複合物からなることを特徴とする成形材料。
2.強化繊維の少なくとも1種類が強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtex以上であり、その体積含有率が20〜70vol%であることを特徴とする上記第1に記載の成形材料。
3.熱可塑性樹脂の密度が1.0×103 kg/m3 以下であることを特徴とする上記第1又は2に記載の成形材料。
4.上記第1に記載の成形材料を架橋処理することにより得られた密度が1.4×103 kg/m3 以下の成形物。
5.荷重たわみ温度が200℃以上であることを特徴とする上記第4に記載の成形物。
6.上記第1に記載の成形材料を、そのまま、あるいは賦形後に架橋処理を行なうことを特徴とする成形方法。
【0014】
本発明の成形材料と成形物に用いる強化繊維は金属繊維、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維が挙げられる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、PEI繊維、PAI繊維などのスーパーエンプラを用いた有機繊維や最近、新しい高強度、高耐熱性、高弾性率の繊維として知られるポリパラフェニレンテレフタルアミド(パラアラミド)繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール(PBT)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)等のポリベンザゾール(PBZ)繊維などの新規な有機繊維が挙げられる。また、ポリノボルネン、シクロペンテン、シクロブテンなどのシクロオレフィン系樹脂による繊維を適用することも可能である。更に、竹などの植物から得られる繊維など、熱特性が許される範囲で天然繊維も適用は可能である。但し、強度と弾性率、ならびに耐熱性と軽量の観点から高強度、高弾性率で密度の低い繊維の適用が良く、好ましくはエンプラやスーパーエンプラよりなる有機繊維が、また、炭素繊維や新規な有機繊維が密度や耐熱性の観点から好適である。
【0015】
適用する強化繊維の力学特性は産業資材への適用を考えると高強度、高弾性率であることが重要である。従って、強化繊維の体積含有率を考慮する必要があるが、少なくとも強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであり、更には強度20cN/dtex以上、弾性率が800cN/dtexである繊維を用いることが高強度、高弾性率の複合材料を得るために好ましい。なお、該強化繊維には必要に応じて、樹脂との接着性を向上させる処理剤を付与する、かつ/または、コロナ処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理などの処理を施すことが肝要である。
【0016】
基本となる熱可塑性樹脂は成形物の軽量を考慮し、密度が1.0×103 kg/m3 以下、更には、0.9×103 kg/m3 以下であることが好ましい。
【0017】
また、あらかじめ適度な耐熱性を有していることが望ましく、このような要件を満たすものとしては耐熱性のあるオレフィン系樹脂が選択でき、更には、ポリメチルペンテンやポリノルボルネン、シクロペンテン、シクロブテンなどのシクロオレフィン系樹脂が望ましい。また、近年、検討が行なわれているエチレンとα−オレフィンの共重合により結晶性を低下させて低密度化した共重合エチレンなども適用できる。
なお、熱可塑性樹脂についても強化繊維との接着性を向上させるため、処理剤などを付与することが肝要であり、加えて、架橋処理などでこれらの処理剤が該熱可塑性樹脂の官能基と各種の反応を起こし、より強固に接着することが好ましい。更に、熱可塑性樹脂には耐アルカリ劣化防止剤、熱劣化防止剤、酸化劣化防止剤、難燃剤など種々の添加剤も必要に応じて付与する必要がある。
【0018】
そして、本発明の成形材料に適用される熱可塑性樹脂は架橋処理を行なうことで物性を向上させることが可能であることが必要である。なお、ここで示す架橋とは、高分子が三次元網状構造を形成することを云う。
架橋が発生するのは樹脂、樹脂と繊維との界面、更に、使用する強化繊維に有機繊維を適用した場合は該有機繊維において、単独、または、組合わさって発生するのが好ましく、特に、樹脂と繊維との界面において発生することが成形物の強度や剛性などの力学特性や耐熱性などの性状を向上させることに繋がり、好ましい。
また、このような架橋を発生させる架橋処理とは高分子化学(第27巻、297号、65頁、1970年)に記載されているメチルメタクリレートおよびスチレンに架橋剤としてエチレングリコール誘導体に起因するエステルを有するジメタクリレートを用いたものや特開昭57−167340号公報に記載されているメタクリレートを主成分とするビニル系単量体に架橋剤として直鎖状のアルカンジオールに起因するジ(メタ)アクリレートを用いたものを反応させて三次元網状構造を得るために行なう加熱処理、また、上記のような架橋剤を加えたもの以外に、ポリプロピレンなどのエンプラ、PPSなどのスーパーエンプラに対して行なう光や紫外線の照射、電子線や放射線の照射などの処理を示すが、特に、これらに限定されるものではなく、活性シラン基による架橋が水との反応によって得られるような場合は、その際の水へ浸漬処理や蒸気処理なども架橋処理と云える。更に、特開平6−192916号公報に記載されるように疑似架橋を形成すると考えられる熱可塑性弾性樹脂に対する熱処理などであってもよい。
【0019】
本発明の成形物は密度が軽量を考慮し、密度が1.4×103 kg/m3 以下、より求められるのは、1.3×103 kg/m3 以下、更には、1.0×103 kg/m3 以下であることが好ましい。
一般に複合材の理論的特性値Xc は、強化繊維とベースとなる樹脂の特性値をそれぞれXf 、Xm とし、強化繊維とマトリックスの体積含有率をVf 、Vm としたとき、次式で求められる。
Xc = Xf Vf + Xm Vm
また、強化繊維間で樹脂が未含浸であるボイド(空隙)率は次式によって求められる。
Vv=1−(Vf + Vm)
なお、一般に Xf >Xmであるので、これらの式から、Xc は繊維含有率Vf をできるだけ高めること、含浸状態を向上させてボイドを少なくすることが特性 Xc向上に必要であることが分かる。
以上のように、複合材の物性は強化繊維の弾性率と体積含有率に依存し、使用する際に基本的に曲がりにくいことが、材料をより薄く、曳いては、軽量につながる。
従って、一方向のみの剛性が求められる場合、強化繊維は一方向のみに適用すればよく、密度が1.4×103 kg/m3 以下であれば、比剛性(=曲げ剛性/重量)は金属やそれらの合金に対しても充分に高いものとなりうるが、2方向や複数方向に対して剛性が求められると、それに応じた強化繊維の方向を設定する必要があり、その場合、1.3×103 kg/m3 以下、更には、1.1×103 kg/m3 以下であることが重要である。また、これと同時に強化繊維の体積含有率はその体積含有率が20〜70vol%、より好ましくは30〜60vol%であることが望ましい。体積含有率がこの範囲より小さい場合、密度が小さくても比剛性が低い。逆に、大きい場合も物理的に熱可塑性樹脂の周囲を覆い尽くせなくなって空隙などが多くなるなど、比剛性が低くなってしまう。
【0020】
また、本発明の成形物は一般的な産業資材として適用するために耐熱性が求められ、荷重たわみ温度が200℃以上、更には、荷重たわみ温度が230℃以上であることが、高温でも変形しにくく、安全に使用できるので好ましい。
【0021】
なお、適用する強化繊維の力学特性は高強度、高弾性率であることが重要なので、少なくとも強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtexであり、更には強度20cN/dtex以上、弾性率が800cN/dtexである繊維を用い、必要に応じて、樹脂との接着性を向上させるために処理剤を付与する、かつ/または、コロナ処理、プラズマ処理、ケミカルエッチング処理などの処理を施すことが肝要である。加えて、架橋処理などでこれらの処理により熱可塑性樹脂の官能基と各種の反応を起こし、より強固に接着することが好ましい。
【0022】
また、以上の条件を満たすために基本となる熱可塑性樹脂は成形物の軽量を考慮し、密度が1.0×103 kg/m3 以下、更には、0.9×103 kg/m3 以下であることが好ましく、更には、あらかじめ適度な耐熱性を有していることが望ましく、このような要件を満たすものとしては耐熱性のあるオレフィン系樹脂が選択でき、より詳細には、ポリメチルペンテンやポリノルボルネン、シクロペンテン、シクロブテンなどのシクロオレフィン系樹脂が望ましい。
加えて、熱可塑性樹脂についても強化繊維との接着性を向上させるため、処理剤などを付与することが肝要であり、加えて、架橋処理などでこれらの処理剤が該熱可塑性樹脂の官能基と各種の反応を起こし、より強固に接着することが好ましい。なお、更に、熱可塑性樹脂には耐アルカリ劣化防止剤、熱劣化防止剤、酸化劣化防止剤、難燃剤など種々の添加剤も必要に応じて付与することも可能である。
【0023】
強化繊維と熱可塑性樹脂の複合物であり、そのまま、あるいは、賦形後に架橋処理を行なうことで物性を向上させることが可能な成形材料を成形する際には架橋処理を行なうことが重要である。この処理により、強度や弾性率などの機械物性、熱変形温度や連続使用温度などの熱的物性、電気抵抗や誘電率などの電気的物性、耐溶剤性や耐水性、耐油性、更には、環境に起因する耐ストレスクラック性などの化学的物性の向上が図れる。
なお、ここで示す架橋は高分子が三次元網状構造を形成することを云う。また、該三次元網状構造を得るために行なう処理を架橋処理と云い、具体的には、あらかじめ架橋剤を加えたものや、ポリプロピレンなどのエンプラ、PPSなどのスーパーエンプラに対して行なう加熱、光や紫外線の照射、電子線や放射線の照射などの処理を示すが、特に、これらに限定されるものではない。
【0024】
なお、架橋処理を行なうにあたり、対象となるものが最終形状にない場合、事前に賦形を行なうことが必要である。本発明は架橋処理を行なって、より高い物性を得るものであり、架橋後の賦形は逆に、物性を損なう可能性がある。因みに、ここに記す賦形とは、射出成形、プレス成形、回転成形、押出し成形、パイプ成形、熱成形、スタンピング成形、レイアップ成形、引抜き成形、フィラメントワインディング成形、発泡成形などが例示されるものであるが、特に、これらに限定されるものではなく、先に記した熱可塑性樹脂に一般的に適用でき、目的の形状物を得る成形手段である。また、これらの賦形と同時に架橋処理を行なうことで、効率よく成形物を得ることが可能である。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の実施例、ならびに、本文中、及び、実施例中の評価方法について記述する。なお、本発明は下記の本実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に則れば、これ以外の場合も可能である。
(1)複合材料の繊維含有率、密度、空洞率
JIS K 7075「炭素繊維強化プラスチックの繊維含有率及び空洞率試験方法」、ならびに、JIS K 7052「ガラス繊維強化プラスチックの繊維含有率測定方法」に準拠して、繊維含有率、密度、空洞率を求めた。
(2)含浸状態
任意に選択した複合材の断面を光学顕微鏡で観察し、強化繊維周囲長の50%以上が樹脂と接触した状態の該強化繊維の含有量で示すものである。なお、ここでは70%以上を良、70%未満のものを不良とした。
(3)力学特性(曲げ試験物性)
JIS K 7074「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験」(A法)に準拠して、曲げ強度(破壊強さ)と曲げ弾性率を求めた。
(4)架橋処理効果
下記の各種性能評価結果、統計的方法による有意差検定で第1種の誤りの確率5%で有意差があり、かつ、架橋処理後の方が高い場合を○、有意差がない場合を−、有意差があり、かつ、架橋処理後の方が低い場合を×とした。
(5)耐熱性(荷重たわみ温度)
JIS K 7191−3「プラスチック−荷重たわみ温度試験方 法−第3部:熱硬化性樹脂積層材及び繊維強化プラスチック」に準拠 して、荷重たわみ温度を求めた。
(6)耐衝撃性
JIS K 7077「炭素繊維強化プラスチックのシャルピー衝 撃試験方法」に準拠して得たシャルピー衝撃値を以て評価した。
(7)耐クリープ性
JIS K 7088「炭素繊維強化プラスチックの曲げクリープ 試験方法」に準拠し、一定時間経過後の曲げクリープひずみ量を以て 評価した。
【0026】
(実施例1)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリプロピレン樹脂が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、円形状のダイから引抜いた後、連続して長さ5mm程度に切断し、実施例1のペレット状物である成形材料を得た。
【0027】
(実施例2)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリメチルペンテン樹脂が吐出すること以外は実施例1と同様に曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、円形状のダイから引抜いた後、連続して長さ5mm程度に切断し、実施例2のペレット状物である成形材料を得た。
【0028】
(実施例3)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからポリシクロデカンアルキルエステル樹脂が吐出するること以外は実施例1と同様に曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、円形状のダイから引抜いた後、連続して長さ5mm程度に切断し、実施例3のペレット状物である成形材料を得た。
【0029】
(実施例4)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリプロピレン樹脂が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、平面形状のダイから引抜き、実施例4のテープ状物である成形材料を得た。
【0030】
(実施例5)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからマレイン酸変性を行なったポリプロピレン樹脂が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、平面形状のダイから引抜いた、実施例4と同様のテープ状物を長さ25mmに切断したものを堆積させたのち、該堆積物をプレス成形機(成形温度235℃×圧力0.1MPa×1min)にて圧縮成形を行ない、実施例5の板状物である成形材料(厚さ5mm)を得た。
【0031】
(実施例6〜8)
実施例1〜3で得たそれぞれのペレット状物から射出成形機(三菱重工社製:125/75型)を用いて板状成形体(厚さ2mm)を得た。更に、該成形体に対して市販の低エネルギー電子線(30〜70kV)照射装置により電子線(20Mrad)を照射し、実施例6〜8の成形物を得た。
【0032】
(比較例1〜3)
実施例1〜3で得たそれぞれのペレット状物から射出成形機(三菱重工社製:125/75型)を用いて比較例1〜3の板状成形体(厚さ2mm)を得た。
【0033】
(実施例9)
実施例4で得たテープ状物を弛まないように一方向に並べたものをプレス成形機(成形温度235℃×圧力0.1MPa×1min)で圧縮成形し、幅15mm、厚さ2mmの一方向強化材を得た。更に、該一方向強化材に対して市販の低エネルギー電子線(30〜70kV)照射装置により電子線(20Mrad)を照射し、実施例9の成形物を得た。
【0034】
(比較例4)
実施例4で得たテープ状物を弛まないように一方向に並べたものを実施例9と同様にプレス成形機(成形温度235℃×圧力0.1MPa×1min)で圧縮成形し、幅15mm、厚さ2mmの比較例4の一方向強化材を得た。
【0035】
(実施例10)
実施例5で得た板成形物をIRヒーターで加熱した後、プレス成形機(成形温度60℃×圧力5MPa)でスタンピング成形を行なったのち、市販の低エネルギー電子線(30〜70kV)照射装置により電子線(20Mrad)を照射し、実施例10の成形物を得た。
【0036】
(比較例5)
実施例5で得た板成形物をIRヒーターで加熱した後、プレス成形機(成形温度60℃×圧力5MPa)でスタンピング成形を行ない、比較例5の成形物を得た。
【0037】
なお、実施例1〜5において強化繊維をスリットから吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、ダイから引抜く工程を図1に示す。
【0038】
表1に、実施例1〜4において強化繊維をスリットから吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、ダイから引抜いて得たペレットの前駆体ととテープ状物に関する物性を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例で得られた成形材料はボイドが少なく、成形材料として好適であった。
【0041】
表2に、実施例6〜10と比較例1〜5において得られた成形物に関する架橋処理効果を示す。
【0042】
【表2】
【0043】
(実施例11と参考例1)
市販の炭素繊維(強度3500MPa、弾性率230GPa)を開繊バーにて充分開繊した後、スリットからエチレンビニルアルコール共重合樹脂(クラレ製「エバール」)が吐出する曲面ダイ、ならびに、樹脂浴を通過させた後、平面形状のダイから引抜き、テープ状物である成形材料を得た。そして、該テープ状物を弛まないように一方向に並べたものをプレス成形機(成形温度190℃×圧力0.1MPa×1min)で圧縮成形し、幅15mm、厚さ2mmの一方向強化材である参考例1の成形物を得た。更に、該一方向強化材に対して放射線照射装置(MDSノーディオン社製 JS−8500型)によりγ線(30kGy)を照射し、実施例11の成形物を得た。
【0044】
実施例11は参考例1に対して実施例6〜10と同様に耐熱性、耐衝撃性、耐クリープ性が向上していた。また、溶剤であるDMSO(ジメチルスルホキシド)に浸漬した場合、参考例1の樹脂は溶解したのに対して、実施例11の樹脂は溶解せしなかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によると、耐熱性に優れた産業資材として好適な繊維強化熱可塑性樹脂複合材を提供することを可能とした。
Claims (6)
- 強化繊維と架橋性ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の複合物からなることを特徴とする成形材料。
- 強化繊維の少なくとも1種類が強度15cN/dtex以上、弾性率が500cN/dtex以上であり、その体積含有率が20〜70vol%であることを特徴とする請求項1に記載の成形材料。
- 熱可塑性樹脂の密度が1.0×103 kg/m3 以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形材料。
- 請求項1に記載の成形材料を架橋処理することにより得られた密度が1.4×103 kg/m3 以下の成形物。
- 荷重たわみ温度が200℃以上であることを特徴とする請求項4に記載の成形物。
- 請求項1に記載の成形材料を、そのまま、あるいは賦形後に架橋処理を行なうことを特徴とする成形方法。
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2002
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