JP7351614B2 - 樹脂含浸金属長繊維束およびその製造方法における品質管理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ボイドの少ない樹脂含有繊維束およびその製造方法における品質管理方法に関する。
強化繊維を含有する樹脂ペレットの製造において、ペレット内に空隙(ボイド)が含まれることは避けられない。ボイドの多い樹脂ペレットは、輸送時の衝撃等により割れやすく、含有する繊維に由来する毛羽が発生しやすいため、高品質の樹脂ペレットを製造するためには、ボイド率が小さくなるように制御することが課題となる。
特許文献1の発明では、繊維強化樹脂においてボイド発生の要因のひとつに、マトリックス樹脂が強化繊維トウの繊維フィラメント間に十分に含浸されていないことを挙げ、その解決手段として次のような樹脂複合強化繊維の製造方法;加熱により樹脂を低粘度化させて圧力や振動を加えながら繊維束を含浸させる方法;樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液組成物に繊維束を充填して乾燥させる方法;樹脂を溶解させた溶液組成物において異なる粘度のもの2種を調製し、それに順次繊維束を塗布含浸させる方法等が記載されている。
特開2017-186706号公報
本発明は、ボイド率を制御した樹脂含有繊維束とその製造方法における品質管理方法を提供することを課題とする。
本発明は、金属繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた金属長繊維束に熱可塑性樹脂が溶融状態で含有されて一体化したものが3~50mmの長さに切断された樹脂含有繊維束であって、
前記樹脂含有繊維束の幅方向の断面における下記式から求められるボイド率が3%以下のものである、樹脂含有繊維束。
式:(樹脂含有繊維束の幅方向の断面における全ボイド面積/樹脂含有繊維束の幅方向の断面積)×100
また本発明は、開繊した金属長繊維束に対して、溶融した熱可塑性樹脂を含有させる工程、
前工程で得られる樹脂含有繊維束を徐冷する工程、
その後、3~50mmの長さに切断する工程、
を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂含有繊維束の製造方法における品質管理方法であって、
得られた樹脂含有繊維束をサンプリングしてボイド率を測定する手順1、
測定したボイド率に応じて徐冷工程における条件を維持するか、または徐冷条件を調整する手順2、
を含み、
手順2において徐冷条件を調整したときは、徐冷条件の調整後に手順1と手順2を繰り返して樹脂含有繊維束のボイド率を3%以下に維持する、樹脂含有繊維束の製造方法における品質管理方法を提供する。
本発明の樹脂含有繊維束はボイド率が小さく、前記繊維束からなるペレット同士の衝突に起因したペレット割れが抑制され、それに伴ってペレットから発生する毛羽立ちも抑制されている。
また本発明の樹脂含有繊維束の製造方法における品質管理方法によると、ボイド率を容易に制御することができるため、ボイド率が小さいペレットを得ることができ、また前記ペレットの破損が抑制されることから、高品質のペレットを効率よく得ることができる。
樹脂含有繊維束の幅方向の断面SEM写真。(a)、(b)はボイド率3%以下の樹脂含有繊維束(実施例)。(c)、(d)はボイド率3%超の樹脂含有繊維束(比較例)。 実施例記載の攪拌テスト後の樹脂含有繊維束の外観を示す顕微鏡写真。(a)~(d)は図1と同じ。
<樹脂含有繊維束>
本発明の樹脂含有繊維束は、金属繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた金属長繊維束に、溶融状態の熱可塑性樹脂が含有されて一体化したものである。
金属長繊維束の内部には溶融状態の熱可塑性樹脂が浸透(含浸)されており、その浸透の程度によって分類される。
本発明の樹脂含有繊維束は、
(1)金属長繊維束を構成する中心部の繊維間にまで樹脂が入り込んだ状態のもの(以下「樹脂含浸金属長繊維束」という)、
(2)金属長繊維束の表面のみが樹脂で覆われた状態のもの(以下「樹脂表面被覆金属長繊維束」という)、
(3)金属長繊維束表面近傍のみに樹脂が含浸され、中心部にまで樹脂が入り込んでいないもの(以下「樹脂一部含浸金属長繊維束」という)を含む。
本発明の樹脂含有繊維束としては、樹脂含浸金属長繊維束が好ましい。
これらの樹脂含浸金属長繊維束、樹脂表面被覆金属長繊維束および樹脂一部含浸金属長繊維束には、前記繊維束中の金属長繊維束の周囲の少なくとも一部に、金属繊維を含まず熱可塑性樹脂が偏って存在している樹脂偏在領域が存在していてもよい。
金属繊維は、ステンレス繊維、銅繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維から選ばれるものが好ましい。
金属長繊維束の本数は、100~30000本の範囲から調整される。
樹脂含有繊維束中の金属繊維の含有量は、樹脂含有繊維束100質量%中、
10~50質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましく、残部は熱可塑性樹脂とする。
熱可塑性樹脂は、結晶性樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルテーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。これらの中でもポリアミドが好ましい。
非晶性樹脂としては、スチレン系樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド等を挙げることができる。これらの中でも、スチレン系樹脂が好ましい。
また、熱可塑性樹脂に、用途に応じて公知の樹脂用添加剤(難燃剤、熱安定剤、光安定剤、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤)を配合することができる。
金属繊維は、長さ方向に揃えた状態で束ねられた金属長繊維束を切断したもので、金属長繊維束に対して溶融状態の熱可塑性樹脂が含有されて一体化したものを3~50mmの長さに切断して得られる。そのため、金属繊維の長さは樹脂含有繊維束の長さと一致する。
本発明の樹脂含有繊維束(金属繊維の長さ)は、長さ3~50mmの範囲のものであり、長さ3~30mmが好ましく、長さ4~10mmがより好ましい。
前記繊維束の直径は、0.5~5mmの範囲のものが好ましく、1~4mmがより好ましい。
本発明の樹脂含有繊維束は、前記繊維束の幅方向の断面中、ボイド(ボイド率)を面積比率で3%以下含み、ボイド率2%以下であることが好ましい。
本発明においてボイド率は以下の式により算出される。
式:(樹脂含有繊維束の幅方向の断面における全ボイド面積/樹脂含有繊維束の幅方向の断面積)×100
式中の樹脂含有繊維束の断面積は、式中の全ボイド面積を含む。
式中の各面積は、実施例に記載された測定方法により得られる値を用いる。
<樹脂含有繊維束の製造方法>
本発明の樹脂含有繊維束は、金属繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた金属長繊維束を開繊して、溶融した熱可塑性樹脂を含有させる工程、
前工程で得られた樹脂含有繊維束を徐冷する工程、
その後、3~50mmの長さに切断する工程を含む製造方法により得られる。
熱可塑性樹脂を含有させる工程では、公知のクロスヘッドダイを用いた引抜成形法を適用することができ、特開2013-107979号公報(製造例1の樹脂含浸ガラス長繊維束の製造)、特開2013-121988号公報(製造例1の樹脂含浸ガラス長繊維束の製造)、特開2012-52093号公報(実施例1~9)、特開2012-131104号公報(製造例1の樹脂含浸ガラス長繊維束の製造、製造例2の樹脂含浸炭素繊維長繊維束の製造)、特開2012-131918号公報(製造例1の樹脂含浸炭素繊維束の製造、製造例2の樹脂含浸ガラス繊維束の製造)、特開2011-162905号公報(実施例1)、特開2004-14990号公報(実施例1~7)に記載の方法に準じて製造することができる。
前工程で得られた樹脂含有繊維ロービングは、徐冷する工程における徐冷ラインにより、熱可塑性樹脂の結晶化温度またはガラス転移温度以下にまで徐冷される。
徐冷ラインとは、前記樹脂含有繊維ロービングが、前工程のクロスヘッドダイの押出口から排出されてから冷却ロールを通るまでのラインを示す。
徐冷ラインでの徐冷方法は、水槽を通過させる等の急冷以外であれば、特に制限されるものではなく、霧を散布して徐冷する;送風装置や冷却ファンを用いて室温で空冷する等の方法を適用することができる。
徐冷ラインでは、ボイド率を小さくする観点から室温で空冷するのが好ましい。
徐冷された樹脂含有繊維束は、冷却ロールを通過した後、ペレタイザーにより、長さ3~50mmに切断される。
上記製造方法により得られる本発明の樹脂含有繊維束は、前記繊維束の幅方向の断面のボイド率が3%以下のものである。
ボイド(空隙)は、樹脂含有繊維束を冷却する過程において樹脂成分の収縮によってできたもので、ボイドを含まないよう樹脂を成形することは難しい。
本発明の樹脂含有繊維束は、それに含まれるボイド率を制御する下記に示す手順に基づいて、前記ボイド率を把握することにより、樹脂含有繊維束のボイド率を一定割合以下となるよう恒常的に管理することができる。
<樹脂含有繊維束の製造方法における品質管理方法>
ボイド率を3%以下に管理する方法としては、以下の手順1、2を含む。
手順1は、得られた樹脂含有繊維束をサンプリングしてボイド率を測定し、調製中の樹脂含有繊維束のボイド率を把握する。
手順2は、測定したボイド率に応じて、徐冷条件を維持するか、または徐冷条件を調整するか、を行う。
手順1において、樹脂含有繊維束のサンプリングは、切断工程直後の樹脂含有繊維束100gから無作為に3個を採取する。なお、手順1における樹脂含有繊維束は、長さ3~50mmに切断されたものとする。
手順1において、サンプリングされた前記繊維束から、実施例に記載された測定方法により得られる値を用いて、前記計算式(ボイド率の算出方法)を適用し、そのボイド率が算出される。
ボイド率が3%を超える値である場合、徐冷条件を緩和する、つまり徐冷する速度を遅くする(手順2)。具体的には、徐冷工程において散布する霧量を少なくする;空冷する徐冷ラインの速度を遅くする、等が挙げられる。
上記の徐冷条件を調整(手順2)した後、前記調整後に得られた樹脂含有繊維束を前記手順1と同様にサンプリングしてボイド率を測定する(手順1)。ボイド率が3%を超える値である場合、さらに徐冷条件を緩和する(手順2)。
ボイド率が3%以下である場合、ボイド率測定時の徐冷条件を維持する。
一定時間経過後または樹脂含有繊維束の一定量製造後、再び樹脂含有繊維束をサンプリングしてボイド率を測定し(手順1)、ボイド率に応じて徐冷条件の調整を行い(手順2)、つまり前記した手順1と手順2を繰り返すことで、樹脂含有繊維束中のボイド率を管理し、本発明の樹脂含有繊維束において恒常的に高品質のものを提供することができる。
さらに、樹脂含有繊維束のボイド率が3%以下の範囲で、目標ボイド率を設定することもできる。以下、目標ボイド率をX%(例えばXは1以上3以下の範囲から選ぶ)とする。
はじめに、(X×1/2)%以下の値である場合、徐冷条件を強化する、つまり徐冷する速度を速くする(手順2)。具体的には、徐冷工程において散布する霧量を多くする;空冷する徐冷ラインの速度を速くする、等が挙げられる。
ボイド率が3%以下、さらにはX%以下の樹脂含有繊維束は、水槽に浸漬して急冷する冷却方法を適用する従来の樹脂含有繊維束の製造方法と比べると、比較的冷却時間が長い。そのため、(X×1/2)%以下という極めて小さいボイド率を含む樹脂含有繊維束が得られた場合は、冷却時間の短縮を図るため、ボイド率が3%以下の範囲で徐冷条件を強化する。
上記の徐冷条件を強化して調整(手順2)した後、前記調整後に得られた樹脂含有繊維束をサンプリングしてボイド率を測定する。ボイド率が(X×1/2)%以下である場合、さらに徐冷条件を強化する。
次に、ボイド率が(X×1/2)%超X%以下である場合、ボイド率測定時の徐冷条件を維持する。
一定時間経過後または樹脂含有繊維束の一定量製造後、再び樹脂含有繊維束をサンプリングしてボイド率を測定し(手順1)、ボイド率に応じて徐冷条件の調整を行い(手順2)、つまり前記した手順1と手順2を繰り返すことで、樹脂含有繊維束中のボイド率を管理し、本発明の樹脂含有繊維束において恒常的に高品質のものを提供することができる。
X%以上3%以下である場合、ボイド率測定時の徐冷条件を緩和する、つまり徐冷する速度を遅くする(手順2)。
<樹脂含有繊維束>
金属繊維:ステンレス繊維(直径11~12μm、約7000本集束)
熱可塑性樹脂1:中分子量PA6「UBE NYLON 1013B」(宇部興産株式会社製)
熱可塑性樹脂2:低分子量PA「UBE NYLON 1011FB」(宇部興産株式会社製)
熱可塑性樹脂3:ABS「サンタック AT-05」(日本エイアンドエル株式会社製)
<樹脂含有繊維束の断面観察>
樹脂含有繊維束(ペレット)を、包埋容器の底面の中心部に固定して、前記ペレットが浸漬する量のエポキシ樹脂を前記容器内に流入して硬化させ、エポキシ樹脂で包埋された樹脂含有繊維束からなる、断面観察用サンプルを調製した。リファインテック(株)製PTO-228を用いて前記サンプル表面を切り出して研磨し、本発明の樹脂含有繊維束を幅方向の断面の面出しを行った。樹脂含有繊維束の断面を、倒立金属顕微鏡(Nikon製ECLIPSE MA200)により前記繊維束中のボイドを観察した(図1)。
<ボイド率の測定>
(1)図1の断面写真の樹脂含有繊維束(図1(a)の樹脂含有繊維束1)において、ボイド部(図1(a)のボイド5)が黒に、ボイド部以外(図1(a)の金属繊維束2、熱可塑性樹脂3)が白になるように、ある輝度(閾値)で二値化した。ここでの黒(ボイド部)の面積をS1とした。
(2)次に、前記(1)同様に、図1の断面写真において、ボイドを含む前記繊維束(図1(a)の樹脂含有繊維束1)の全断面が黒に、前記繊維束以外(包埋したエポキシ樹脂部)が白になるように、ある輝度(閾値)で二値化した。ここでの黒(前記繊維束の全断面)の面積をS2とした。
(3)前記S1、S2を用いて、ボイド率(%、面積比率)=(S1/S2)×100を算出した(表1)。
<攪拌テスト>
得られた樹脂含有繊維束(ペレット)を無作為に20g採取し、攪拌テスト機(IKA-WERKE GMBH&CO.KG製 M 20)に投入して10秒間攪拌した。その後、攪拌したペレットの外観を目視にて観察した(図2)。
また、攪拌テスト後のペレットの外観や毛羽発生の程度を、下記基準により評価した(表1)。
○:ペレットの破損が少なく、毛羽立ちも少ない。
×:ペレットの破損が多く、毛羽立ちも目立つ。
実施例1、2
金属長繊維束をクロスヘッドダイに導入して、開繊しながら押出機から供給した溶融状態の熱可塑性樹脂(表1)と含浸させて、長尺状の樹脂含浸繊維ロービングを調製した。長尺状の樹脂含浸繊維ロービングは、徐冷ラインにおいて空冷(室温26℃)しながら8m/minの速さで約35秒間通過させた。その後引取り機を通過させてペレタイザーで6mmに切断し、樹脂含浸繊維束からなる長さ6mmのペレット(金属繊維40質量%含有)を得た。
得られた樹脂含浸繊維束(ペレット)のボイド率は、いずれも3%以下であった(表1)。前記繊維束の幅方向の断面のSEM写真を図1に、攪拌テスト後のペレットの外観を図2に示す。
比較例1、2
金属長繊維束をクロスヘッドダイに導入して、開繊しながら押出機から供給した溶融状態の熱可塑性樹脂(表1)と含浸させて、長尺状の樹脂含浸繊維ロービングを調製した。長尺状の樹脂含浸繊維ロービングは、水槽による水冷(水温26℃)および水冷直後の空冷(室温26℃)の組み合わせの冷却を、8m/minの速さで、水冷を約2秒間および空冷を約10秒間行った。その後引取り機を通過させてペレタイザーで6mmに切断し、樹脂含浸繊維束からなる長さ6mmのペレット(金属繊維40質量%含有)を得た。
得られた樹脂含浸繊維束(ペレット)のボイド率は、いずれも3%を超える値であった(表1)。前記繊維束の幅方向の断面のSEM写真を図1に、攪拌テスト後のペレットの外観を図2に示す。
Figure 0007351614000001

図1の(a)は、実施例1で得られる繊維束(ペレット)の断面であり、樹脂含有繊維束1の輪郭となる太い実線は、樹脂含有繊維束1の外周部(樹脂含有繊維束1と包埋樹脂の界面)を示す。
樹脂含有繊維束1の断面は、円形でなく、歪みのある扁平形状であることが確認できた。前記繊維束1中の白い部分は金属繊維2であり、金属繊維2の間にも熱可塑性樹脂3が含浸されていることが確認できた。
さらに、金属繊維2の周囲には、均等の厚さで熱可塑性樹脂3が被覆されているのではなく、偏った厚さで熱可塑性樹脂3が被覆され、また前記繊維束1中の熱可塑性樹脂3が占める範囲、特に金属繊維2の繊維束の周囲を被覆する樹脂3が占める範囲には、金属繊維2を含まないで熱可塑性樹脂3が偏って存在している樹脂偏在領域4が存在することが確認できた。
そして、前記繊維束1内のボイド発生は、極めて小さいボイド5が僅かに点在する程度であることが確認できた。
なお、図1(a)中の点線で囲まれた部分は、樹脂偏在領域4を示す範囲の一部であり、樹脂偏在領域4が金属繊維2を含まないことを示す大体の範囲である。図1(b)~(d)も、前記(a)同様である。
図1(b)は、実施例2で得られる繊維束(ペレット)の断面を示す。前記(a)同様、金属繊維2の間にも熱可塑性樹脂3が含浸されていることが確認でき、金属繊維2の周囲には偏った厚さで熱可塑性樹脂3が被覆され、また前記繊維束1中の熱可塑性樹脂3が占める範囲には樹脂偏在領域4が存在することが確認できた。
そして、前記繊維束1内にボイドがほとんど発生していないことが確認できた。
図1(c)、(d)は比較例1、2で得られる繊維束(ペレット)の断面を示す。前記(a)同様、金属繊維2の間にも熱可塑性樹脂3が含浸されていることが確認でき、金属繊維2の周囲には偏った厚さで熱可塑性樹脂3が被覆され、また被覆した熱可塑性樹脂3が占める範囲には樹脂偏在領域4が存在することが確認できた。
しかしながら、前記(a)よりも大きいボイドが、特に樹脂偏在領域4に多く見られた。
図1(a)、(b)と図1(c)、(d)との対比より、樹脂含有繊維束1に中の金属繊維2と熱可塑性樹脂3の存在形態に差はないものの、図1(c)、(d)では、熱可塑性樹脂3の樹脂偏在領域にボイド5が多数存在しており、ボイド5の大きさも、図1(a)、(b)と比べると大きいものになっていた。
そして、実施例と比較例との対比より、樹脂含有繊維束の製造フロー中の冷却工程において、実施例1、2の徐冷方法を適用することで、特に樹脂偏在領域におけるボイド発生を抑制することができた。
図2より、ボイド率3%以下である実施例1、2のペレットは、上記した攪拌テスト後でも毛羽立ちが比較的少なく、ペレットの破損も少ないことが確認できた。ボイド率3%を超える値を示す比較例1、2のペレットは攪拌テストにより破損したペレットが多く確認でき、ペレット破損により発生した毛羽も多数確認できた。
実施例3
金属長繊維束をクロスヘッドダイに導入して、開繊しながら押出機から供給した溶融状態の熱可塑性樹脂1を含浸させて、長尺状の樹脂含浸繊維ロービングを調製した。長尺状の樹脂含浸繊維ロービングは、水冷(水温26℃)およびその直後の空冷(室温26℃)を組み合わせた冷却方法を適用し、10m/minの速さで、水冷を約24秒間および空冷を約4秒間行った。その後引取り機を通過させてペレタイザーで6mmに切断し、樹脂含浸繊維束からなる長さ6mmのペレットを得た(金属繊維40質量%含有)。得られたペレットのボイド率を測定したところ、3%を超える値であったため、水冷に代えて空冷(室温26℃)を適用し、10m/minの速さで約28秒間通過させた。
この徐冷条件による製造を一定時間続けて製造ラインが安定した後、前記徐冷条件により製造されたペレット100gから無作為に3個のペレットをサンプリングしてボイド率を測定したところ、いずれもボイド率は3%以下であった。
1 樹脂含有繊維束
2 金属繊維
3 熱可塑性樹脂
4 樹脂偏在領域
5 ボイド

Claims (5)

  1. 金属繊維を長さ方向に揃えた状態で束ねた金属長繊維束に熱可塑性樹脂が溶融状態で含有されて一体化したものが3~50mmの長さに切断された樹脂含浸金属長繊維束であって、
    前記金属繊維がステンレス繊維で、前記樹脂含浸金属長繊維束中における金属繊維の含有量が10~50質量%であり、
    前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂であり、
    前記樹脂含浸金属長繊維束が、金属長繊維束を構成する中心部の繊維間まで樹脂が入り込んだ状態のものであり、
    前記樹脂含浸金属長繊維束の幅方向の断面における下記式から求められるボイド率が3%以下のものである、樹脂含有金属長繊維束。
    式:(樹脂含浸金属長繊維束の幅方向の断面における全ボイド面積/樹脂含浸金属長繊維束の幅方向の断面積)×100
  2. 前記ボイド率が0.3%以下のものである、請求項1記載の樹脂含浸金属長繊維束。
  3. 開繊した金属長繊維束に対して、溶融した熱可塑性樹脂を含有させる工程、
    前工程で得られる樹脂含浸金属長繊維束を徐冷する工程、
    その後、3~50mmの長さに切断する工程、
    を含む、請求項1記載の樹脂含浸金属長繊維束の製造方法における品質管理方法であって、
    得られた樹脂含浸金属長繊維束をサンプリングしてボイド率を測定する手順1、
    測定したボイド率に応じて徐冷工程における徐冷条件を維持するか、または徐冷条件を調整する手順2、
    を含み、
    手順2において徐冷条件を調整したときは、徐冷条件の調整後に手順1と手順2を繰り返して樹脂含浸金属長繊維束のボイド率を3%以下に維持する、樹脂含浸金属長繊維束の製造方法における品質管理方法。
  4. 前記手順1が、得られた樹脂含浸金属長繊維束100gから無作為に3個をサンプリングしてボイド率を測定するものである、請求項記載の樹脂含浸金属長繊維束の製造方法における品質管理方法。
  5. 前記手順2における徐冷条件の調整が、ボイド率が3%を超えているときは徐冷条件を緩和するものである、請求項または記載の樹脂含浸金属長繊維束の製造方法における品質管理方法。
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