JP2004123498A - セラミックグリーンシート、その積層体およびその製造方法、ならびにセラミック多層基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セラミック粉末と、有機バインダとを含有するスラリーをシート状に成形してなるセラミックグリーンシートであって、引っ張り試験において観測される降伏応力値が0.1〜15MPaのセラミックグリーンシートを用いて、グリーンシートの降伏応力値以上の圧力を印加しながら、2層以上のグリーンシートを積層する。また、回路パターンを印刷塗布、乾燥した場合、セラミックグリーンシートの周囲を拘束した状態で、降伏応力値以上の圧力を印加しながら積層した後、焼成してセラミック多層基板を製造する。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体チップ用のセラミックパッケージ、半導体回路用積層セラミック基板等の半導体部品、あらゆる用途に使用される構造部品、積層コンデンサ、積層圧電部材等の電子部品、加熱用のセラミックヒータ、自動車に関する用途では、自動車の排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素センサ、センサ加熱用のセラミックヒータ、多層回路基板等の多層基板の形成に用いられる、セラミックグリーンシートと、その積層体およびその製造方法、ならびにセラミック多層基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
セラミック基板や、セラミック積層コンデンサ、セラミックヒータ等に使用するセラミックグリーンシートは、一般にドクターブレード法、押し出し成形法、カレンダー法等の公知の技術により成形される。得られたグリーンシートは、通常、導体ペーストを用いて、その表面にスクリーン印刷法により、所定の回路配線、電極等を印刷配置し、その後、所定の厚み、構造を形成するべく、同様のセラミックグリーンシートを、通常2層以上積層しセラミックグリーンシート積層体を形成する。ここで、グリーンシートの積層手法としては、特開2001−126852等に記載の熱圧着法や、セラミック粉末と有機バインダからなる接着液等を塗布後、加圧接着を実施する接着材法が知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−126852
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の如くセラミックグリーンシート上に導体ペーストを用いてスクリーン印刷法でパターン形成する場合、形成された導体パターンを70℃〜80℃で乾燥固定する際に、導体パターンの乾燥収縮、すなわち導体パターンの変形によりシートが変形し位置精度が劣化するという問題があった。
【0005】
この問題を回避するため、通常、セラミックグリーンシートの弾性変形を大きくすることによってシートの変形を防止し、位置精度の劣化を防止することが行なわれている。このときのセラミックグリーンシートの降伏応力σ1は、大体15MPa以上のものが用いられている。
【0006】
図1に、降伏応力の概念を詳述する。通常、所定のテストピースを用い、引っ張り試験を実施した場合、図1(a)(b)に示すプロファイルが得られる。ここで、σ1は降伏応力、σ2はグリーンシートが破断する破断応力を表す。このとき、変位x1は弾性変位(弾性延び)を、変位x2は破断までの総変位、変位x2−x1は塑性変位(塑性延び)を表す。図1から明らかなように降伏応力σ1の前後、すなわち弾性変形領域と塑性変形領域の境界では、プロファイルにおいて、接線の勾配が変化するため降伏応力σ1は明確に判定できる。
【0007】
さらに、図1(a)(b)との対比から明らかなように、降伏応力σ1が大きくなるほど、塑性変位x2−x1が小さくなり、セラミックグリーンシートが弾性体になっていくことが分かる。
【0008】
すなわち、前述の如くセラミックグリーンシートの降伏応力σ1を大きくすることで、グリーンシートを弾性体とし、パターンの乾燥収縮時にグリーンシートのうち、印刷パターン直下に発生する応力を効果的に低減し、乾燥時のパターン変形を抑制することとなるのである。
【0009】
ところが、上記のような方法でセラミックグリーンシート上に導体パターンを形成する場合、前述の熱圧着法や、接着材法で加圧積層した時、セラミックグリーンシートの弾性変形が大きく、加圧積層直後の圧力解放時に各グリーンシートがスプリングバック現象(もとの形状に戻る現象)により積層されたグリーンシート間で剥離が生じやすくなるという問題があった。
【0010】
この剥離は、剥離部分が大きい場合には、グリーンシートの加圧後に確認されるが、剥離部分が小さく微細な空隙として存在する場合はグリーンシート積層時に発見し難にくく、脱脂時および焼成時に微細な空隙が連通し易く、この結果、脱脂時に積層部が剥離したり、焼成収縮時に、空隙部の直下に存在する導体パターンの収縮が不均一となり断線や剥離を招くことがあった。特に、導体パターンがタングステン等の易酸化性物質の場合は、連通した空隙部から酸素が進入し、導体パターンが酸化し、導電率の低下、さらには断線を招くという問題があった。
【0011】
従って、本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、セラミックグリーンシートの接合部に空隙を発生させることなく積層することができるセラミックグリーンシートおよびその積層体と、積層不良の発生を抑制するとともに、導体パターンの変形を抑制した信頼性の高いセラミック多層基板の製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミックグリーンシートによれば、セラミック粉末と、有機バインダとを含有するスラリーをシート状に成形してなるセラミックグリーンシートであって、引っ張り試験において観測される降伏応力値が0.1〜15MPaであることを特徴とする。
【0013】
また、前記セラミックグリーンシートの水銀圧入法による気孔率は5〜50%であることが望ましく、さらには、前記セラミックグリーンシート表面における有機バインダ層の厚みが10μm以下であることが望ましい。
【0014】
また、本発明によれば、上記のセラミックグリーンシートを2層以上積層してセラミックグリーンシート積層体を形成したものであり、積層にあたっては、前記セラミックグリーンシートの降伏応力値以上の圧力を印加しながら、積層し、前記セラミックグリーンシート間に、接着材層を介在させたり、接着材層を介在させることなく積層する。
【0015】
また、上記のセラミックグリーンシートに対して、導体ペーストによって回路パターンを形成する場合、上記のセラミックグリーンシートの周囲を拘束した状態で、回路パターンを印刷塗布、乾燥した後、前記セラミックグリーンシートの降伏応力値以上の圧力を印加しながら積層した後、焼成することによってセラミック多層基板を製造することを特徴とするものである。
【0016】
さらに、上記の積層体やセラミック多層基板を作製する時の積層時に印加する圧力は、25〜200MPaとすることにより、迅速に積層体やセラミック多層配線基板を作製することが可能となる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミックグリーンシートは、セラミック粉末と、有機バインダとを含有するものであって、さらには、補助的な材料として可塑剤、消泡剤、分散剤などが有機溶媒とともに、混合されてスラリーを形成し、このスラリーを用いて、ドクターブレード法、カレンダーロール法、プレス成形法、押し出し成形法などによって厚さ2〜2000μm、特に100〜600μmのグリーンシートに成形される。
【0018】
本発明によれば、このようにして形成されるグリーンシートの引っ張り試験において観測される降伏応力値が0.1〜15MPaであることが重要である。これは、降伏応力値が0.1MPaよりも低いと、セラミックグリーンシートが非常に脆く、ハンドリング性が劣化するため好ましくなく、降伏応力値が15MPaを超えると、セラミックグリーンシートの積層接合体を形成時、グリーンシートの弾性変形によりスプリングバック現象が発生して、グリーンシート積層体における積層界面に剥離や空隙等の欠陥不具合を生じる。
【0019】
このセラミックグリーンシートの降伏応力値は、特に0.3〜8MPa、さらには0.4〜7MPaの領域において、グリーンシートの積層接合時における上記の不具合を好適に回避でき好ましい。
【0020】
また、このような降伏応力を持つための1つの条件として、セラミックグリーンシートの水銀圧入法による気孔率は5〜50%、特に8%〜45%、さらには10〜40%であることが望ましい。気孔率5%より低いと降伏応力値が15MPaよりも大きくなりやすく、気孔率50%を超えると、前記降伏応力値が0.1MPaよりも小さくなりやすいためである。特に降伏応力値を最適にする観点から気孔率は8%〜45%、さらには10〜40%であることが望ましい。
【0021】
本発明のグリーンシート中に含まれるセラミック粉末の平均粒径は、0.1〜5μm、特に0.3〜3μmであることが適当である。ここで、平均粒径とは、粒度測定におけるD50値、すなわち二次粒子径(一次粒子凝集粒径)をあらわす。特に、平均粒径と降伏応力とは、平均粒径が大きくなるほど、有機バインダの添加量を少なくすることが可能となり易く、そのため前記気孔率を大きくすることが可能となり、降伏応力値は小さくなる傾向にある。
【0022】
本発明のグリーンシート中に含まれる有機バインダは、セラミック粉末100質量部に対して、5〜40質量部、特に8〜20質量部の割合で添加混合される。この有機バインダの添加量は、降伏応力値とは、添加量が大きくなるほど、降伏応力値は大きくなる傾向にある。
【0023】
また、降伏応力値は、有機バインダの種類によっても変化する。例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート等のようにモノマー組成がアルキルメタクリレート、アルキルアクリレートのいずれか、またはその混合物からなる重合体であるアクリル系樹脂の場合は後述のように、分子量(重合度)、ガラス転移点の設計値で降伏応力値は自由に変化する場合が多い。
【0024】
一方、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、酢酸セルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース等の各種のセルロース、ポリエステルなどのガラス転移点の大きなバインダの場合は降伏応力値は大きくなる場合が多い。
【0025】
さらに、有機バインダの分子量によっても降伏応力値は変動する。一般に、重量平均分子量としては、5万〜70万、特に10万〜60万のものが知られており、重量平均分子量が大きくなるほど降伏応力値は小さくなる。逆に、重量平均分子量が小さくなるほど降伏応力値は大きくなる。
【0026】
また、さらに有機樹脂のガラス転移点(Tg)も降伏応力値は変動する。一般に、ガラス転移点(Tg)としては、アクリル系樹脂は−50〜60℃、ブチラール系の場合、50〜100℃のものが知られているが、ガラス転移点(Tg)が大きくなるほど降伏応力値は小さくなる。逆に、ガラス転移点(Tg)が小さくなるほど降伏応力値は大きくなる。
【0027】
また、グリーンシート中に可塑剤を添加してグリーンシートの降伏応力値を調製することも可能である。用いられる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等のフタル酸エステルや、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール誘導体、その他高融点の燐酸エステル、脂肪酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この可塑剤は、セラミック粉末100質量部に対して1〜12質量部の範囲でシート表面に可塑剤が浸み出さずべとつきがない程度で添加される。
【0028】
バインダ添加量を増加させる必要がある場合、セラミックグリーンシートの表面にバインダが滲出する現象が顕著になる。また、セラミックグリーンシートの降伏応力値は、前述の通り、グリーンシート中の有機バインダ量が多いほど大きくなる傾向にある。しかしながら、有機バインダ量が多くなると、シート表面に有機バインダがにじみ出て、有機バインダ層が形成されやすくなる。この有機バインダ層は、複数のグリーンシートを加熱、積層する際に互いに移動して接着材として機能させることができるが、グリーンシート間の界面に10μmよりも厚い有機バインダ層として存在すると、焼成時にこの有機バインダ層が焼失して空隙や剥離をもたらし、積層不良の原因となってしまう。従って、この有機バインダ層は、実質存在せず、存在してもその厚みが10μm以下、特に5μm以下であることが望ましい。
【0029】
この有機バインダ層は、有機バインダの量が多いほど形成されやすい。そのために、有機バインダ量を調整することによって、有機バインダ層の厚みを適正範囲に制御するとともに、降伏応力値を調整することができる。
【0030】
本発明によれば、上記のセラミックグリーンシートは、2層以上の積層体を形成する上で有効に用いられる。このセラミックグリーンシートを積層するにあたっては、上記セラミックグリーンシートをセラミックグリーンシートの降伏応力値以上の圧力を印加しながら、積層する。即ち、このときの圧力が降伏応力値よりも低いと、スプリングバック現象が生じ、グリーンシートが弾性変形してしまうために、グリーンシート間で剥離が発生しやすく、積層欠陥が発生しやすい。圧力印加手法としては、一軸プレス法、等方加圧法(乾式、湿式法)等の公知の技術を応用すればよい。
【0031】
また、セラミックグリーンシート間には、適宜、接着材層を介して、または接着剤層を介することなく、積層することができる。
【0032】
前記積層体を形成する際にセラミックグリーンシート間に、グリーンシート中のセラミック粉末と、有機バインダと、有機溶媒とからなる接着材層を介在させると、セラミック粒子が焼成時に結合層を形成することから、グリーンシートの接合部に欠陥が発生し難く、安定した積層体を形成し易い。特に、前述のようにセラミックグリーンシートの表面に有機バインダ層が存在する場合は、本手法によれば、より簡便に積層体を得られる。このときに用いられる接着材としては、セラミック粉末0〜85体積%と、有機バインダ15〜100体積%からなる固形成分100質量部に、有機溶媒を20〜10000質量部の割合で添加混合してなるスラリーをグリーンシート表面に塗布して積層、接着することが望ましい。
【0033】
ところで、前述の如くセラミックグリーンシート間に接着材層を介在させ積層体を形成する場合、接着材中の有機溶媒はセラミックグリーンシート中に浸透、拡散する場合が多く、その結果、セラミックグリーンシートが膨潤し軟化する。前記積層体において、積層する各グリーンシートの位置精度が100μm以下、特に50μm以下の厳しい公差を要求される場合は、このグリーンシートの上記軟化は位置精度を劣化させる1つの要因となる。
【0034】
このような場合は、積層シート間にセラミックおよび/または有機バインダもしくは有機溶媒からなる接着材層を介在させることなく積層する。この時、セラミックグリーンシートに使用する有機バインダのガラス転移点Tgが−50℃〜0℃、特に−50℃〜−10℃の場合、例えばアクリル系有機バインダを使用する場合は、加圧積層時に、温度を30℃以上、好ましくは50℃以上付与しつつ、加圧圧力を降伏応値力以上の圧力とすることで、積層するセラミックグリーンシート中の有機バインダが、積層界面において互いに移動し、そのため積層欠陥なく、セラミックグリーンシートの積層体が得られる。
【0035】
一方、セラミックグリーンシートに使用する有機バインダのガラス転移点Tgが0℃以上、例えばポリビニルブチラール等のようにTg>50℃以上の場合でも、可塑剤を使用する場合は、有機バインダのガラス転移点Tg以上の温度、好ましくは50℃以上、さらには90℃以上の温度を付与しつつ、降伏応力値以上の圧力を加圧圧力とすることで、積層するセラミックグリーンシート中の可塑剤が、セラミックグリーンシート表面に滲出し、セラミックグリーンシート表層のバインダを再溶解させ、その結果、積層欠陥なくセラミックグリーンシート積層体が得られる。
【0036】
また、上述のように積層時に印加する圧力は、基本的に降伏応力以上の圧力を付与すればよいが、積層体中の欠陥をより迅速に除去するためには、25MPa以上、特に75MPa以上の圧力を印加することが望ましい。たとえば、セラミックグリーンシートの気孔率が10%以下の場合や、降伏応力値が1MPa以上の場合には、印加する圧力が降伏応力近傍であると、上述の接着材層を介在させない積層時は、バインダのシート間の移動や可塑剤の滲出に一定の時間が必要である。つまり、量産等を考慮した場合、成形タクトが大きくなり経済的にコストアップの方向となる。そのため、圧力を25MPa以上に高めることによって、成形タクトを短縮することができる。また、接着材層を介在させる場合は、バインダのシート間の移動や可塑剤の滲出は、事実上不要であるが、接着材層を塗布する際に使用するスクリーンのメッシュ跡等を迅速に除去するためにも、上記の圧力を付与することが望ましい。
【0037】
なお、成形時の圧力があまり高すぎると、前記バインダや可塑剤が積層体表面に過剰に滲出し、積層体表面にタック性が発現するため、ハンドリング性が損なわれる場合があることから、200MPa、特に150MPaを上限とすることが望ましい。
【0038】
次に、本発明のセラミック多層基板を製造するにあたり、各グリーンシートの表面に、導体ペーストをスクリーン印刷によって印刷塗布して、多層基板内に多層の回路を形成する場合、グリーンシートの降伏応力値が小さすぎると、導体パターンを70℃〜80℃で乾燥固定した際に、導体パターンの乾燥収縮により、印刷基体となるグリーンシートのうち、導体パターン直下のシート部分が塑性変形を生じ、このため導体パターンの位置精度が劣化する場合がある。
【0039】
本発明によれば、導体パターンをグリーンシートの表面に塗布、乾燥する時、セラミックグリーンシートの外周を金属などの枠体に粘着テープ等を用いて拘束しつつ、導体ペーストを印刷、乾燥することにより、位置精度の劣化を効果的に回避できる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、セラミック多層基板の一例として、セラミック抵抗回路基板を作製し種々の評価を検討した。
【0041】
図2は、セラミック抵抗回路基板を分解した状態を示す分解斜視図である。このセラミック抵抗回路基板は、セラミックグリーンシートが焼成されてなるセラミック層1a、1b、1cと、これらのセラミック層1a〜1cの間に配設される抵抗回路2a、2bからなる。抵抗回路2a、2bはセラミック層1bの上下面に、対称良く形成されており、スルーホール3にて連通し、セラミック層1aの端子4から給電される。
【0042】
(1)グリーンシートの作製
上記図2のセラミック抵抗回路基板を製造するにあたり、表1に示す種々のセラミック粉末に、所定量の分子量を有する有機バインダ、特に有機バインダのガラス転移点TgがTg≧0℃の場合は、さらに2重量部のジブチルフタレートおよび2重量部のジオクチルフタレートを添加し、70〜110重量部のトルエンを添加した後、ボールミルによって混合し、スラリー混合物を作製した。その後、このスラリーを減圧下で、撹拌脱泡し、ドクターブレード法により、厚み0.2mmのセラミックグリーンシート1a〜1cを作製した。
【0043】
得られたセラミックグリーンシートに対して、全長50mmで両端10mmで治具に固定し有効長さ30mmとして引っ張り試験を実施し、降伏応力を測定した。また、水銀圧入法により気孔率を求めた。あわせて、グリーンシート表面における有機バインダ層の厚みを断面から測定した。
【0044】
(2)抵抗回路の形成
平均粒径0.5〜1μmのタングステン粉末とセラミックグリーンシートを構成するセラミック材料を用いて調合したタングステンペーストを、スクリーン印刷法により、セラミックグリーンシート1a〜1cの一表面に印刷し、抵抗回路を形成し、70℃で乾燥させた。なお、セラミック材料がZrO2の場合には、平均粒径2μmの白金粉末とZrO2を用いて調合した白金ペーストを用いた。また、乾燥後のグリーンシートの変形の有無を調査した。また、この抵抗回路の形成にあたり、適宜、グリーンシートの周囲を厚み0.5mmのステンレス枠体に粘着テープで拘束した。
【0045】
(3)セラミック抵抗回路基板の作製および焼成
セラミックグリーンシートを構成するセラミック材料と有機バインダからなる接着材層をセラミックグリーンシート1a〜1cのうち、印刷面に使用していない面に400メッシュスクリーンを用いて適宜、塗布後、該グリーンシート1aの端子とグリーンシート1b、1cの抵抗回路が対称良く配置されるよう、重ね合わせ温度70℃、圧力をグリーンシートの降伏応力値+2MPaの圧力を印加し2分間加熱圧着した。その後、端子に連通孔を形成し、抵抗回路と同様のタングステン導体ペーストを充填した。
【0046】
得られたグリーン積層体型セラミック抵抗回路を、Al2O3、ZrO2は1500℃で、Si3N4は1750℃、AlNは1700℃でそれぞれ1〜2時間焼成し、セラミック抵抗回路基板を得た。
【0047】
得られたセラミック抵抗回路基板を、超音波探傷にて評価し、その後、断面を切り出し、鏡面研磨後に観察し、積層界面における欠陥(剥離や空隙)の有無を観察した。結果を表1に記す。
【0048】
また、表1中の試料No.4、8について、積層時の加圧力を種々変化させて、それによる欠陥がなくなるまでの加圧時間を表2に示した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
表1の結果から明らかなように、グリーンシートの降伏応力値が0.1MPaより低いと、シートのハンドリング性が非常に劣悪で、印刷不能であった。グリーンシートの降伏応力値が0.1〜15MPaで、接合体の剥離、空隙もなく良好な接合体が得られた。また、シートの降伏応力が15MPaを超えると、導体パターンの変形が認められないが、積層接合部に剥離、さらに微少な空隙が超音波探傷法により確認された。この欠陥部の断面観察においても、超音波探傷で確認された位置と同位置に、剥離および空隙を見いだした。
【0052】
なお、セラミックグリーンシートの降伏応力は、表1に示すように、セラミック材料の平均粒径、グリーンシートをなす有機バインダの添加量、分子量、ガラス転移点Tg、気孔率等により変化するために、これらの要素を制御して降伏応力が本発明の範囲になるように制御することが重要である。
【0053】
また、表2の結果から、積層時に印加する圧力を25〜200MPaとすることによって、成形タクトを短縮することができるとともに、積層欠陥、剥離等の不具合を効果的に除去することができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、セラミックグリーンシートに形成した印刷パターンの乾燥固定時に生じる変形(位置精度の劣化)を抑制しつつ、該グリーンシートの積層接合部に剥離、空隙等の欠陥のないセラミックグリーンシート接合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】セラミックグリーンシートの引っ張り試験時に観測される降伏応力の一例を説明するための概略図である。
【図2】セラミック多層基板の一例の分解斜視図である。
【符号の説明】
A:積層型セラミック抵抗回路
1a、1b、1c:セラミックグリーンシート
2a、2b:抵抗回路
Claims (10)
- セラミック粉末と、有機バインダとを含有するスラリーをシート状に成形してなるセラミックグリーンシートであって、引っ張り試験において観測される降伏応力値が0.1〜15MPaであることを特徴とするセラミックグリーンシート。
- 前記セラミックグリーンシートの水銀圧入法による気孔率が5〜50%であることを特徴とする請求項1記載のセラミックグリーンシート。
- 前記セラミックグリーンシート表面における有機バインダ層の厚みが10μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のセラミックグリーンシート。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか記載のセラミックグリーンシートを2層以上積層してなることを特徴とする積層体。
- 前記セラミックグリーンシート間に、接着材層を介在させて積層してなることを特徴とする請求項4記載の積層体。
- 前記セラミックグリーンシート間に、接着材層を介在させることなく積層してなることを特徴とする請求項4記載の積層体。
- 請求項1ないし請求項3記載のいずれかに記載のセラミックグリーンシートを前記セラミックグリーンシートの降伏応力値以上の圧力を印加しながら、積層することを特徴とする積層体の製造方法。
- 積層時に印加する圧力を25〜200MPaとすることを特徴とする請求項7記載の積層体の製造方法。
- 請求項1ないし請求項3記載のいずれかに記載のセラミックグリーンシートの周囲を拘束した状態で、導体ペーストによって回路パターンを印刷塗布、乾燥した後、前記セラミックグリーンシートの降伏応力値以上の圧力を印加しながら積層した後、焼成することを特徴とするセラミック多層基板の製造方法。
- 積層時に印加する圧力を25〜200MPaとすることを特徴とする請求項9記載のセラミック多層基板の製造方法。
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