JP2004117941A - 感熱性記録用シート - Google Patents
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Abstract
【課題】高い接着強度を有し、粘着性及び耐ブロッキング性に優れ、貼付作業性が良好な感熱性記録用シートを提供する。
【解決手段】本発明の感熱性記録用シートは、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)炭素数の合計が3以上のアルキル基で置換されたシクロヘキサン環等を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ii)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式
【化1】
で表されるリン化合物、及び(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されたハイドロキノン等又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物で構成されている。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の感熱性記録用シートは、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)炭素数の合計が3以上のアルキル基で置換されたシクロヘキサン環等を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ii)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式
【化1】
で表されるリン化合物、及び(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されたハイドロキノン等又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物で構成されている。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剥離紙を不要とする感熱性記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、記録用ラベルとしては、感圧性接着剤からなる粘着剤層と該粘着剤層を保護する剥離紙とが積層され、使用時に剥離紙を剥がして貼り合わせる形態のものが利用されている。しかし、ラベルを使用する際にこれらの剥離紙が大量の廃棄物として発生してしまうことから、近年では、粘着剤層として感熱性接着剤を用いることにより剥離紙を必要としない感熱性記録用シートが注目されている。このような感熱性記録用シートによれば、剥離紙を使用しないため環境の点で有利であるが、従来のものには、ラベル原反がブロッキングを生じたり、粘着性が消失しやすいため貼付作業性に劣り、ラベルが脱落する等の問題があった(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−303387号公報
【特許文献2】
特開平7−164736号公報
【特許文献3】
特開平11−263949号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い接着強度を有し、粘着性及び耐ブロッキング性に優れ、貼付作業性が良好な感熱性記録用シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた粘着持続性及び透明持続性を有する感熱性記録用シートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、発色かぶりを抑制しうる感熱性記録用シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、基材の片面に感熱発色層が設けられ、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び特定の固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートによれば、良好な粘着持続性及び耐ブロッキング性が発揮され貼付作業性に優れると共に、発色かぶりを抑制することができることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ii)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4a、R5、R6、R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4、式(2)におけるR5とR6とR7は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表されるリン化合物、及び(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物で構成されている感熱性記録用シート(以下、「感熱性記録用シート1」と称する場合がある)を提供する。
【0007】
また、本発明は、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ia)(A’)(A3)脂肪族アルコール若しくは(A4)シクロヘキサノール又は(A5)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が2以下である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールと(B’)フタル酸類とのフタル酸エステル類、(iia)2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類、(iib)2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(但し、前記リン酸エステル類(iia)を除く)、(iic)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)
【化4】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4a、R5、R6、R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4、式(2)におけるR5とR6とR7は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表されるリン化合物(但し、前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除く)、(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物、(iv)ヒンダードフェノール系化合物、及び(v)トリアゾール系化合物の8種の化合物群のうち少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物の組み合わせにより構成されている感熱性記録用シート(以下、「感熱性記録用シート2」と称する場合がある)を提供する。
【0008】
本発明の感熱性記録用シートは、前記固体可塑剤の融点が70℃以上であってもよく、前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、及びポリプロピレンから選択された少なくとも一種の成分により構成されていてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱性記録用シートは、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に感熱性粘着剤層が設けられている。前記感熱性粘着剤層は、少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含んでいる。
【0010】
熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル酸又はそのエステルを単量体として含むアクリル系重合体;酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニルを単量体として含む酢酸ビニル系重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレン樹脂、イソブチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの合成ゴム;天然ゴム;エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ビニルビロリドン−スチレン共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0011】
好ましい熱可塑性樹脂には、アクリル系重合体[例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として含むアクリル系共重合体]、酢酸ビニル系重合体、合成ゴム、天然ゴムなどが含まれる。より好ましい熱可塑性樹脂はアクリル系重合体である。
【0012】
前記アクリル系重合体の中でも、特に、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−メタクリル酸C1−4アルキルエステル共重合体)、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−メタクリル酸C1−4アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)等のアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸C1−4アルキルエステル)又はスチレンとをコモノマーとして含むアクリル系共重合体;及びスチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。
【0013】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、被着体の種類等を考慮し、シートとした時の接着性や耐ブロッキング性を損なわない範囲で適宜選択でき、通常、−10〜70℃程度である。前記ガラス転移温度が−10℃未満の場合には耐ブロッキング性が低下しやすい。また、前記ガラス転移温度が高すぎると、接着性が低下しやすくなる。
【0014】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は接着性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、一般には10万〜200万程度である。重量平均分子量(Mw)が10万未満であると、接着強度が小さく、放置しているだけで剥離してしまう。なお、重量平均分子量(Mw)が10万〜50万、好ましくは15万〜30万の熱可塑性樹脂を用いた感熱性記録用シートでは、実用上十分な接着強度が得られると共に、熱水等を使用することなく、手によって、被着体に感熱性粘着剤層を残存させることなく容易に剥離除去できるので、貼り直しや貼り替え作業が極めて容易である。
【0015】
本発明の感熱性記録用シート1の特徴の一つは、固体可塑剤として、(i)多エステル化合物(第1の化合物群)、(ii)リン化合物(第2の化合物群)、及び(iii)ジエステル化合物(第3の化合物群)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を用いることにある。
【0016】
[(i)多エステル化合物]
前記多エステル化合物(i)を構成するアルコール(A1)において、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環の置換基であるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。好ましいアルキル基には、メチル、イソプロピル、t−ブチル基などの炭素数1〜6(特に、炭素数1〜4)程度のアルキル基が含まれる。
【0017】
前記(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールとしては、例えば、下記式(I)〜(VII)で表される置換シクロヘキサノール、(VIII)〜(X)で表される置換シクロヘキセノール、(XI)〜(XII)で表されるカルボニル基を有する置換シクロヘキサノール、(XIII)で表されるカルボニル基を有する置換シクロヘキセノールなどが挙げられる。また、(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールとしては、例えば、該6員炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコール、例えば、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVIII)で表されるノルボルナン環を有するアルコール、(XVII)、(XIX)で表されるノルボルネン環を有するアルコール、(XX)、(XXI)で表されるアダマンタン環を有するアルコールなどが挙げられる。
【0018】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0019】
これらのアルコールの中でも、式(I)〜(VII)で表されるアルコールなどの1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサノール、式(XVI)、(XVIII)などで表されるノルボルナン環を有するアルコールなどのヒドロキシル基又はヒドロキシメチル基が結合した6員飽和炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールが好ましい。特に、前記式(I)で表される3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールが、粘着性の発現温度及び耐ブロッキング性の観点から好ましい。
【0020】
前記(B)多塩基酸には、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸などが含まれる。多価カルボン酸としては、下記式
【化13】
【化14】
で表される酸無水物(無水フタル酸、無水ピロメリット酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸)に対応する多価カルボン酸(フタル酸、ピロメリット酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸、トリメリット酸)や、下記式
【化15】
で表される多価カルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸)などが例示できる。上記式中、ベンゼン環には、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル基などのアルキル基(例えば、C1−4アルキル基);フェニル、ナフチル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基);フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子などの置換基が置換していてもよい。
【0021】
なかでも、可塑化が起こり始める温度及び加熱時の粘着性の性能の観点から、式(i)で表される3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールと無水フタル酸との反応により得られる下記式
【化16】
で表されるビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートが特に好ましい。
【0022】
なお、上記3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールには、ヒドロキシル基と5位のメチル基との立体的な位置関係により、シス体とトランス体の2つの幾何異性体が存在する。本発明では、これらの何れの異性体から得られる多エステル化合物を使用することもでき、また、これらの異性体の混合物から得られる多エステル化合物を使用することもできる。より好ましい多エステル化合物は、シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールから得られる多エステル化合物である。
【0023】
多エステル化合物(i)の代表的な化合物としては、例えば、ジメンチルフタレート(融点134℃)、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)フタレート(融点103,150℃)、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点93℃)、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点133℃)、ビス(トランス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点103℃)、ジボルニルフタレート(融点136℃)等が挙げられる。
【0024】
前記多エステル化合物(i)は、(A)アルコールと(B)多塩基酸又はその反応性誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、活性エステルなど)から、公知乃至慣用のエステル化法に従って製造することができる。例えば、(A)アルコールと(B)多塩基酸とを、プロトン酸触媒の存在下、トルエンなどの溶媒中で反応させ、副生する水を除去することにより上記多エステル化合物(i)を得ることができる。
【0025】
多エステル化合物(i)の融点は、好ましくは70〜160℃程度、さらに好ましくは70〜120℃程度である。多エステル化合物の融点が70℃より低いと耐ブロッキング性が低下しやすく、また160℃を超えると、溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。多エステル化合物(i)は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0026】
[(ii)リン化合物]
前記リン化合物(ii)には、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、ホスフィン類などが含まれる。前記融点55〜100℃のリン化合物としては、下記式(1)又は(2)
【化17】
(式中、R1〜R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、mは0〜3の整数を示す。R1とR2とA(m=1〜3のとき)、R3とR4とA(m=1〜3のとき)、R1とR3とR4(m=0のとき)、R5とR6とR7は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表される化合物が挙げられる。
【0027】
前記式(1)で表される化合物には、下記式(1a)、(1b)及び(1c)
【化18】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4a、R5、R6、R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表される化合物が含まれる。
【0028】
前記R1〜R7、R1a、R3a、R4aにおける炭化水素基には、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0029】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などのシクロアルケニル基;ノルボルニル、ビシクロ[4.3.0]ノニル、アダマンチル基などの橋かけ環炭化水素基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜12程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−へキセニル基などの炭素数2〜12程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜12程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0030】
前記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル基などのC1−4アルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基などのC1−4アルコキシ基;フェニルオキシ基などのアリールオキシ基;メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基;アセチル、ベンゾイル基などのアシル基;アセチルオキシ基などのアシルオキシ基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基などが例示できる。
【0031】
前記芳香族炭化水素基の代表的な例として、フェニル基;2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル基などのハロゲン原子を有するフェニル基;2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2−エチルフェニル、4−t−ブチルフェニル基などC1−4アルキル基を有するフェニル基などが挙げられる。前記脂環式炭化水素基の代表的な例として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへキセニル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、3−オキソ−1,5,5−トリメチルシクロヘキシル、6−オキソ−2,4,4−トリメチル−1−シクロへキセニル、1,7,7−トリメチルノルボルナン−2−イル基などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素基の代表的な例として、ベンジル、2−メチルフェニルメチル、2−フェニルエチル基などのアリール基が結合したアルキル基(アラルキル基)などが挙げられる。
【0032】
前記R1〜R7、R1a、R3a、R4aにおける複素環式基には、2−フリル、モルホニル、テトラヒドロピラニル基などの酸素原子含有複素環式基;2−チエニル基などのイオウ原子含有複素環式基;1−ピロリル、2−ピリジル、ピペリジノ、2−キノリル基などの窒素原子含有複素環式基などが含まれる。これらの複素環式基は置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記炭化水素基において例示した置換基などが挙げられる。
【0033】
前記Aにおける2価の炭化水素基には、2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基などの連結基を介して又は介することなく2以上結合していてもよく、また置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記R1〜R7等における炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。
【0034】
前記リン化合物(ii)は、さらに、(iia)2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類、(iib)2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(但し、前記リン酸エステル類(iia)を除く)、及び(iic)リン化合物(ii)から前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除いたリン化合物に分類することができる。
【0035】
2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(iia)は、前記式(1a)で表されるリン化合物において、kが1のときにAが2価の芳香族炭化水素基である化合物として表される。前記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、ビフェニレンなどが挙げられる。
【0036】
2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(ia)としては、例えば、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点95℃)などが挙げられる。
【0037】
2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(iib)は、前記式(1a)で表されるリン化合物において、kが1のときにAが2価の脂環式炭化水素基であるか又は2価の脂環式炭化水素基部を有する2価の脂肪族炭化水素基である化合物として表される。すなわち、2価の脂環式炭化水素基は、直接リン酸と結合してエステルを形成してもよく、また、2価の脂肪族炭化水素基(例えばメチレン基等)を介してエステルを形成してもよい。
【0038】
前記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシリデン、1,2−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどのシクロアルキレン基;2−シクロヘキセン−1,4−ジイル基などのシクロアルケニレン基;アダマンタン−1,3−ジイル、5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジイル基などの2価の橋かけ環式基などが挙げられる。
【0039】
前記2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などの炭素数1〜6程度のアルキレン基;プロペニレン基などの炭素数2〜6程度のアルケニレン基;プロピニレン基などの炭素数2〜6程度のアルキニレン基などが挙げられる。
【0040】
前記2価の脂環式炭化水素基部を有する2価の脂肪族炭化水素基としては、前記2価の脂環式炭化水素基と前記2価の脂肪族炭化水素基が各々一つ以上結合したものであればよく、例えば、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−などが挙げられる。
【0041】
2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(iib)の具体例として、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)(融点97℃)などが挙げられる。
【0042】
なお、リン化合物(iic)としては、リン化合物(ii)から前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除いたリン化合物が挙げられる。リン化合物(iic)は、具体的には、融点55〜100℃のリン化合物、又は前記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)で表されるリン化合物であって、前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除いたリン化合物である。前記式(1a)で表されるリン化合物中、リン化合物(iic)には、例えば、kが1のときにAが2価の脂肪族炭化水素基又は2価の複素環式基である化合物などが含まれる。
【0043】
前記2価の脂肪族炭化水素基としては、上記に例示のものが用いられる。前記複素環式基には、多価の複素環式アルコール又はフェノール(例えば、イソソルバイド、イソマンナイド、スクロース、ラクトースなどの糖類)から2つのヒドロキシル基を除いた2価の基が含まれる。
【0044】
前記Aにおける2価の炭化水素基の代表的な例として、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,1−ジフェニルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルブタン−4′,4″−ジイル、4,4′−ビフェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,5,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3−ジイル、6−オキソ−2,4,4−トリメチルシクロヘキサン−1,2−ジイル、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−、1,1−ジシクロヘキシルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルブタン−4′,4″−ジイル、アダマンタン−1,3−ジイル、5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジイル、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などが例示できる。
【0045】
また、前記2価の炭化水素基と2価の複素環式基とが、前記連結基を介して又は介することなく結合していてもよい。
【0046】
前記式(1a)において、R1〜R4の少なくとも1つ(特に、R1〜R4のすべて)が芳香族炭化水素基であるのが好ましい。また、好ましいAには、1,3−フェニレン基などの少なくとも2価の芳香族炭化水素基部を含む2価の炭化水素基、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基などの少なくとも2価の脂環式炭化水素基部を有する2価の脂肪族炭化水素基が含まれる。nは1又は2、特に1であるのが好ましい。好ましいリン化合物の具体例としては、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点95℃)、1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)(融点97℃)などが挙げられる。
【0047】
前記式(1b)で表される好ましい化合物には、R1aとR3aとR4aが何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基である化合物、及びR1aとR3aとR4aのうち2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成した環状リン酸エステル類などが含まれる。
【0048】
式(1b)で表される化合物(リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリ(4−メチルフェニル)ホスフェート(融点78℃)などのトリ(メチルフェニル)ホスフェートなどのリン酸トリアリールエステル類、トリベンジルホスフェート(融点65℃)などのリン酸トリアラルキルエステル類、下記式(3)
【化19】
で表される化合物(融点95〜110℃)などの、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類などが挙げられる。
【0049】
式(1c)において、R1〜R4は、何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基であるのが好ましい。
【0050】
式(1c)で表される化合物(亜リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点75℃)などの亜リン酸トリアリールエステルなどが挙げられる。
【0051】
前記式(2)において、R5〜R7は好ましくは芳香族炭化水素基である。式(2)で表される化合物の具体例として、例えば、トリフェニルホスフィン(融点80℃)、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン(融点100℃)などのトリアリールホスフィン類が挙げられる。
【0052】
上記リン化合物は、周知乃至公知の方法により得ることができる。例えば、リン酸エステル類は、オキシ塩化リン、アリールジクロロホスフェートなどのジクロロリン酸モノエステル、又はジアリールクロロホスフェートなどのクロロリン酸ジエステルと目的化合物に対応するヒドロキシル基含有化合物(アルコール又はフェノール)とを、必要に応じてピリジンなどの塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。なお、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類は、前記ヒドロキシル基含有化合物として、2価以上、好ましくは3価以上(例えば3又は4価)のヒドロキシル基含有化合物[例えば、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ペンタエリスリトールなど]を用いることにより製造することができる。
【0053】
また、亜リン酸エステル類は、例えば、三塩化リンと目的化合物に対応するアルコール又はフェノールとを、必要に応じて塩基の存在下で反応させることにより製造できる。さらに、ホスフィン類(トリフェニルホスフィンなど)は、例えば、三塩化リンと目的化合物に対応するグリニヤール試薬(フェニルマグネシウムブロミドなど)との反応により得ることができる。
【0054】
なお、前記式(1a)、(1b)、(1c)又は(2)で表されるリン化合物については、融点は必ずしも55〜100℃の範囲でなくてもよく、例えば50〜160℃程度、好ましくは70〜120℃程度であってもよい。融点が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすく、逆に高すぎると溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。リン化合物(ii)は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0055】
[(iii)ジエステル化合物]
前記ジエステル化合物(iii)において、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコールのベンゼン環上の置換基としてのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基などが挙げられる。なかでも、メチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基が好ましい。ハイドロキノン又はレゾルシノールにおけるベンゼン環上のアルキル基の置換数は0、又は1〜4(好ましくは1〜3、さらに好ましくは2又は3)である。また、カテコールのベンゼン環上のアルキル基の置換数は1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは2又は3である。アルキル基の置換数が複数であるとき、該アルキル基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
前記(C)成分において、ベンゼン環にはアルキル基以外の置換基が結合していてもよい。このような置換基として、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基);フェノキシ基などのアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基などのアシル基;カルボキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。また、前記ベンゼン環には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、テトラヒドロフラン環などの3〜8員程度の芳香族性又は非芳香族性の炭素環又は複素環が縮合していてもよい。
【0057】
前記(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノールとしては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、2,6−ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンジアセテート、トリメチルハイドロキノンジアセテート、レゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール、4,6−ジメチルレゾルシノール、2,4,6−トリメチルレゾルシノールなどが例示できる。また、(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールとしては、例えば、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、トリメチルカテコール、3,4,5−トリメチルカテコールジアセテートなどが挙げられる。
【0058】
前記(D)有機一塩基酸には、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式の一塩基酸(カルボン酸、スルホン酸など)が含まれる。これらのなかでも、脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸が好ましい。
【0059】
前記脂肪族モノカルボン酸として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸などの炭素数1〜6程度の脂肪族モノカルボン酸(好ましくは炭素数1〜4程度の脂肪族モノカルボン酸、特に酢酸)などが例示できる。また、脂環式モノカルボン酸として、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの3〜8員程度のシクロアルカンカルボン酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸には、例えば、安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸などの、芳香環にアルキル基(炭素数1〜4程度のアルキル基など)、アルコキシ基(炭素数1〜4程度のアルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)などの置換基を1又は2以上有していてもよい芳香族カルボン酸などが含まれる。
【0060】
前記ジエステル化合物の代表的な化合物として、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)(融点156℃)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(融点185℃)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(融点110℃)等のヒンダードフェノール系化合物;2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点139℃)等のトリアゾール系化合物;ハイドロキノンジアセテート(融点123℃)、トリメチルハイドロキノンジアセテート(融点109℃)、3,4,5−トリメチルカテコールジアセテート(融点120℃)等のハイドロキノン系化合物などが例示される。
【0061】
上記のジエステル化合物のうち、ハイドロキノン系化合物は、例えば、前記(C)成分と前記(D)有機一塩基酸又はその反応性誘導体(例えば、酸ハライド、活性エステル、酸無水物など)とを、必要に応じて酸触媒又は塩基の存在下、公知のエステル化法に準じて反応させることにより得ることができる。
【0062】
また、3,4,5−トリメチルカテコールと有機一塩基酸とのジエステル化合物は、酸触媒の存在下、2,6,6−トリメチルシクロヘキセ−2−エン−1,4−ジオン(ケトイソホロン)と前記有機一塩基酸に対応するアシル化剤(酸無水物、アシルハライド、エノールエステル類など)とを反応させることにより得ることができる。
【0063】
この方法において、酸触媒としては、プロトン酸、ルイス酸の何れも使用できる。プロトン酸として、超強酸(SbF5、SbF5−HF、SbF5−FSO3H、SbF5−CF3SO3Hなど)、硫酸、塩酸、リン酸、フッ化ホウ素酸、p−トルエンスルホン酸、クロロ酢酸、ピクリン酸、ヘテロポリ酸等の有機酸及び無機酸が挙げられる。また、ルイス酸として、例えば、BF3、BF3O(C2H5)2、AlCl3、FeCl3などが例示できる。これらの触媒の使用量は、例えば、ケトイソホロンに対して、0.001〜20モル%、好ましくは0.01〜15モル%程度である。
【0064】
また、前記酸触媒として、固体酸触媒を用いることもできる。固体酸触媒には、強酸性イオン交換樹脂[例えば、アンバーリスト15(オルガノ社製)などのスチレンジビニルベンゼンスルホン酸系イオン交換樹脂など];超強酸性樹脂[例えば、ナフィオンNR50(アルドリッチ社製)などのフッ素化スルホン酸樹脂など];ゼオライト、シリカ−アルミナなどのアルミノシリケート又は無機酸化物(複合酸化物を含む);担体(例えば、グラファイト、金属硫酸塩、金属塩化物、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライト、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、チタニア−ジルコニア、カオリンなど、特に多孔質担体)に前記のプロトン酸又はルイス酸を担持した固体酸触媒などが含まれる。固体酸触媒の使用量は、例えば、ケトイソホロンに対して、0.1〜1000重量%、好ましくは5〜100重量%程度である。
【0065】
前記アシル化剤の使用量は、例えば、ケトイソホロン1モルに対して、2モル以上、好ましくは3〜10モル程度である。アシル化剤を溶媒として用いてもよい。
【0066】
ケトイソホロンとアシル化剤との反応は、無溶媒下で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。前記溶媒としては、ヘキサン、オクタン、オクテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。
【0067】
ケトイソホロンとアシル化剤とを反応させる際の反応温度は、例えば0〜150℃、好ましくは10〜100℃程度である。生成したジエステル化合物は、例えば、濾過、濃縮、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段に付すことにより分離精製できる。
【0068】
なお、こうして得られた3,4,5−トリメチルカテコールと有機一塩基酸とのジエステル化合物を、酸、例えば前記プロトン酸や固体酸触媒の存在下、水と反応させることにより、3,4,5−トリメチルカテコールを得ることができる。この場合、水は、通常、ジエステル化合物に対して過剰量用いられる。この加水分解反応における反応温度は、例えば40〜100℃程度である。生成した3,4,5−トリメチルカテコールは、例えば前記の分離精製手段により単離できる。
【0069】
ジエステル化合物(iii)の融点は、例えば50〜220℃程度であってもよいが、好ましくは70〜200℃(例えば90〜190℃)程度である。ジエステル化合物(iii)の融点が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすく、逆に高すぎると溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。ジエステル化合物(iii)は、1種又は2種以上混合して使用できる。
【0070】
本発明の感熱性記録用シート1は、固体可塑剤として、上記(i)多エステル化合物(第1の化合物群)、(ii)リン化合物(第2の化合物群)、及び(iii)ジエステル化合物(第3の化合物群)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を用いるため、粘着性を発現する温度が高く、しかも感熱性記録用シートの貼り付け温度で溶融して容易に熱可塑性樹脂を可塑化する。従って、粘着剤塗工工程においては、高い温度で短時間に乾燥できるため、感熱性記録用シートの生産性を大幅に向上できる。また、こうして得られた感熱性記録用シートを長期間保存してもブロッキングが生じないため、接着力の高い熱可塑性樹脂を使用することにより、感熱性記録用シートの接着強度を高めることができる。
【0071】
本発明の感熱性記録用シート2の特徴の一つは、固体可塑剤として、前記(i)多エステル化合物、前記(iii)ジエステル化合物、及びこれらに加えて、(ia)フタル酸エステル類、(iia)2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類、(iib)2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(但し、前記リン酸エステル類(iia)を除く)、及び(iic)融点55〜100℃のリン化合物、又は前記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)で表されるリン化合物(但し、前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除く)、(iv)ヒンダードフェノール系化合物、及び(v)トリアゾール系化合物からなる8種の化合物群のうち、少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物を組み合わせて用いることにある。
【0072】
前記フタル酸エステル類(ia)には、(A’)(A3)脂肪族アルコール若しくは(A4)シクロヘキサノール又は(A5)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が2以下である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールと(B’)フタル酸類とのエステル化合物が含まれる。
【0073】
前記脂肪族アルコール(A3)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘキサノール、イソヘキサノール、オクタノール、デカノールなどの炭素数1〜12程度のアルキルアルコールが挙げられる。これらの脂肪族アルコール(A3)は分子内に置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記炭化水素基が有していてもよい置換基として例示のものが用いられる。置換基を有する脂肪族アルコール(A3)としては、例えば、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、3−フェニル−2−プロペン−1−オールなどが挙げられる。前記アルコール(A5)において、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環の置換基であるアルキル基としては、メチル、エチル基などの炭素数1又は2のアルキル基が挙げられる。前記アルコール(A5)としては、例えば、メチルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノールなどが挙げられる。前記(B’)フタル酸類には、例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが含まれる。
【0074】
フタル酸エステル類(ia)の代表的な化合物としては、例えば、ジヘキシルフタレート(融点73℃)、ジイソヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート(融点63℃)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート(融点94℃)などのフタル酸エステル;ジメチルイソフタレート、ジベンジルイソフタレート、ジジシクロヘキシルイソフタレート等のイソフタル酸エステル;ジメチルテレフタレート、ジベンジルテレフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート、ビス(ジメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点89℃)などのテレフタル酸エステルなどが挙げられる。
【0075】
前記フタル酸エステル類(ia)は、前記多エステル化合物(i)と同様、(A’)アルコールと(B’)フタル酸類又はその反応性誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、活性エステルなど)から、公知乃至慣用のエステル化法に従って製造することができる。
【0076】
なお、前記リン酸エステル類(iia)、リン酸エステル類(iib)及びリン化合物(iic)は、前記リン化合物(ii)の例に示したように、リン化合物(ii)をさらに分類した3種の化合物群を示すものである。
【0077】
前記ヒンダードフェノール系化合物(iv)の代表的な例として、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)(融点156℃)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点208℃)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(融点185℃)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(融点110℃)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点106℃)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル(融点120℃)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点127℃)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点128℃)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点130℃)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(融点130℃)、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール(融点131℃)、及び4−ヒドロキシ−メチル−2,6−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェノール(融点140℃)などが挙げられる。
【0078】
前記トリアゾール系化合物(v)の代表的な例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(融点154℃)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点139℃)、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール](融点195℃)、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(融点104℃)、2−[2’−ヒドロキシー3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール(融点139℃)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点140℃)などが挙げられる。
【0079】
前記8種の化合物群のうちの少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物は、それぞれ、固体可塑剤全量に対して、例えば1〜99重量%程度、特に5〜95重量%程度、就中5〜80重量%程度であるのが好ましい。
【0080】
また、上記の8種の化合物群のうち少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物を組み合わせて用いる場合を含め、一般に2種以上の固体可塑剤を併用する場合には、該2種以上の固体可塑剤のうちの1つの固体可塑剤と他の何れかの固体可塑剤(例えば、モル数の最も多い2種の固体可塑剤)の比率(固形分重量比)が、30:70〜70:30であるのが好ましい。また、3種以上の固体可塑剤を用いる場合、任意の2種の固体可塑剤の比率(固形分重量比)が上記の範囲にあるのも好ましい。2種以上の固体可塑剤を上記の比率で含む感熱性記録用シートでは、特に長期に亘って粘着性を保持できる。
【0081】
なお、固体可塑剤としては、上記の8種の化合物群に含まれる化合物のほかに、例えば、ジフェニルフタレート(融点73℃)、フタル酸ジナフチルなどの前記以外のフタル酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸トリ(p−t−ブチルフェニル)などの前記以外のリン化合物;安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸トリメチロールエタン、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスロット、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、尿素誘導体、塩化パラフィン等を用いることもできる。これらの固体可塑剤は、前記(i)〜(v)の化合物群に含まれる化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0082】
本発明の感熱性記録用シート2は、固体可塑剤として、上記の8種の化合物群のうち少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物を組み合わせて用いるため、感熱性粘着剤層を加熱して固体可塑剤を一旦溶融させ、熱可塑性樹脂を可塑化した後において、固体可塑剤の再結晶化が遅延され、高い透明性及び粘着性が長期に亘って持続する。そのため、基材の色や質感等を損なうことなく、また、部分的に剥離した際にも再び被着体に強固に貼り付けることができる点で有利である。
【0083】
感熱性粘着剤層における固体可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば30〜1000重量部、好ましくは100〜1000重量部、さらに好ましくは150〜900重量部、特に200〜800程度である。固体可塑剤の含有量が30重量部より少ないと、加熱時に十分な粘着性が発現しない場合が生じ、また、1000重量部よリ多いと、凝集力が低下し十分な接着強度が発現しないことがある。
【0084】
前記粘着付与剤としては、例えば、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂など)、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、キシレン樹脂等の樹脂類を挙げることができる。これらの粘着付与剤は2種以上併用してもよい。
【0085】
感熱性粘着剤層における粘着付与剤の含有量は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂と前記固体可塑剤との組合せに応じて適宜選択でき、通常、熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜600重量部程度であり、20〜500重量部程度が好ましい。特に、粘着付与剤の量を、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば20〜100重量部、好ましくは25〜70重量部程度に調整すると、熱可塑性樹脂と固体可塑剤と粘着付与剤とを含む熱可塑性樹脂組成物(特に水性分散液)をシート状基材に塗工して感熱性粘着剤層を形成する際の塗工安定性(機械安定性)に優れ、連続して長時間塗工しても粘着剤の凝固物などが発生せず、均質な感熱性粘着剤層を有する感熱性記録用シートを安定して製造できる。
【0086】
感熱性粘着剤層には、その特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば、成膜助剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤(無機粒子、有機粒子等)を添加してもよい。
【0087】
前記成膜助剤としては、例えば、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのグリコールエーテル類及びグリコールエステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチルなどの可塑剤;ベンジルアルコール、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶剤などが挙げられる。このような成膜助剤を粘着剤層に添加すると、粘着剤塗工工程において、より短時間の乾燥で均質な粘着剤層を形成でき、生産効率の一層の効率化を図ることができる。前記成膜助剤の添加量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部程度である。
【0088】
感熱性粘着剤層は、前記熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む熱可塑性樹脂組成物(少なくとも前記2成分を含む混合物)を基材上に塗工することにより形成できる。例えば、前記熱可塑性樹脂が水に分散している水性組成物を塗工したり、前記熱可塑性樹脂等を有機溶剤に溶解させて塗工したり、或いは前記熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融して塗工することにより感熱性粘着剤層を形成できる。これらの中でも、熱可塑性樹脂が水に分散している水性組成物を塗工する方法が好ましい。
【0089】
前記水性組成物において、熱可塑性樹脂の分散に用いる分散剤としては、特に限定されるものではなく、従来より公知のアニオン系、ノニオン系分散剤(乳化剤)等の何れをも使用することができる。アニオン系分散剤としては、カルボン酸塩(脂肪族モノカルボン酸塩、N−アシロイルグルタミン酸塩、ポリカルボン酸塩など)、硫酸エステル塩(硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩など)、スルホン酸塩(アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、スルホコハク酸ジアルキルエステルなど)、リン酸エステル塩(リン酸アルキル塩など)等を挙げることができる。これらの中でもカルボン酸アンモニウム塩などが好ましい。ノニオン系分散剤としては、エステル型(グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど)、エーテル型(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなど)、エステルエーテル型(ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど)、アルカノールアミド型(脂肪酸アルカノールアミドなど)、多価アルコール型のものなどを挙げることができる。これらの分散剤は単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0090】
前記水性組成物の調製法も、従来より公知の各種の方法を採用することができる。例えば、上記調製法として、熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を予め混合した後に水に分散させる方法、熱可塑性樹脂エマルジョン又は粘着付与剤エマルジョンに固体可塑剤を分散させた後にこれらのエマルジョンを混合する方法、固体可塑剤を水に分散させておき、この固体可塑剤水分散液に熱可塑性樹脂エマルジョン及び粘着付与剤エマルジョンを混合する方法等が挙げられる。固体可塑剤を上記エマルジョン又は水に分散させる方法としては、溶融させた固体可塑剤を分散させる方法、固体可塑剤を微粉末にしながら分散させる方法及び微粉末にした固体可塑剤を分散させる方法等を例示することができる。
【0091】
固体可塑剤を水に分散させる際に用いる分散剤としては、前記アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤等を使用できる。これらの分散剤は単独で又は2種以上混合して使用できる。分散剤の使用量は、分散剤の種類や分散させる固体可塑剤の種類に応じて広い範囲で適当に選択できるが、通常、固体可塑剤100重量部に対して、7〜40重量部程度、好ましくは8〜35重量部であり、特に10〜30重量部程度であるのが好ましい。
【0092】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンは、乳化重合により調製してもよく、また、乳化重合以外の方法により重合体を得た後、必要に応じて添加剤を用いることによりエマルジョン化して調製してもよい。例えば、水溶性の有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコールなど)の存在下で重合した重合体を含む有機溶液に添加剤(例えば、乳化剤、pH調整剤、酸など)を添加した後、水を添加してエマルジョン化し、その後、有機溶剤を除去することにより熱可塑性樹脂エマルジョンを調製することができる。
【0093】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンを調製する際(乳化重合の際、又は重合後のエマルジョン化の際)に用いる乳化剤としては、前記ノニオン系分散剤、アニオン系分散剤などを使用できる。これらの乳化剤(分散剤)は単独で又は2種以上混合して使用できる。特に、ノニオン系乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなどのエーテル型等)とアニオン系乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩などの硫酸エステル型等)とを併用すると、該熱可塑性樹脂エマルジョンを用いて熱可塑性樹脂と固体可塑剤と粘着付与剤とを含む熱可塑性樹脂組成物(水性分散液)を調製し、これを基材に塗工して粘着剤層を形成する際の塗工安定性(機械安定性)が著しく向上し、連続して長時間塗工しても粘着剤の凝固物などが発生せず、均質な粘着剤層を有する感熱性記録用シートを安定して製造できる。この効果は、アクリル系重合体などを乳化剤の存在下で乳化重合させて熱可塑性樹脂エマルジョンを調製する場合などに特に顕著である。ノニオン系乳化剤とアニオン系乳化剤との割合は、広い範囲で選択できるが、好ましくは、前者/後者(固形分重量比)=50/50〜95/5程度である。
【0094】
水性組成物(熱可塑性樹脂組成物)中の固体可塑剤の平均粒子径は、好ましくは0.5〜20μm程度であり、さらに好ましくは1〜15μm程度である。平均粒子径が0.5μmよリ小さいと耐ブロッキング性が低下したり、粉砕に時間を要して生産性が低下するおそれがある。平均粒子径が20μmを超えると塗工面がざらつき、シートの品質が低下するおそれがある。
【0095】
本発明における感熱発色層は、少なくともロイコ染料及び顕色剤から構成される。
【0096】
ロイコ染料としては、感熱材料に慣用のものから適宜選択され、例えば、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フエノチアジン系化合物、スピロピラン系化合物、スルホニルメタン系化合物などが挙げられ、一般に、無色又は淡色の電子供与性染料が用いられる。
【0097】
前記フタリド系化合物としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3,−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−クロルフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−ニトロフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジエチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−メチルフェニル)フタリド、3−(2’−メトキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−4’−クロル−5’−メチルフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−[1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−[1,1,−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−フェニルエチレン−2−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−p−クロロフェニルエチレン−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−メトキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノフェニル−1”−p−クロロフェニル−1”,3”−ブタジエン−4”−イル)ベンゾフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジメチルアミノ−フルオレン−9−スピロ−3’(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,3’−ビス[2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,5,6,7,−テトラクロロフタリド、3−ビス[1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル]−5,6−ジクロロ−4,7−ジブロモフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリドなどが挙げられる。
【0098】
前記フルオラン系化合物としては、例えば、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−N−メチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−[N−(3’−トリフルオロメチルフェニル)アミノ]−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)フルオラン、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4’−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3,N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’,−ベンゾフルオランなどが挙げられる。
【0099】
上記の他に、例えば、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどのフェノチアジン系化合物;6’−クロロ−8’−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6’−ブロモ−3’−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピランなどのスピロピラン系化合物;ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−ナフタレンスルホニルメタン、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−p−トリルスルホニルメタンなどのスルホニルメタン系化合物;2−[3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム]などのラクタム系化合物などの化合物がロイコ染料に含まれる。
【0100】
顕色剤としては、前記ロイコ染料を接触時(または熱時)発色させる電子受容性化合物(酸性物質)からなる感熱発色性材料が用いられ、例えば、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸エステル類、有機酸及びその金属塩、錯体等が挙げられる。
【0101】
顕色剤には、例えば、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4’−sec−ブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−2−2−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエンなどのフェノール性化合物などが含まれる。
【0102】
その他の顕色剤には、例えば、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−ジフェノールスルホン、4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジフェノールスルホキシド、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)、2,4’−ジフェノールスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジフェノールスルホンなどのチオフェノール性化合物;p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキユ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチルなどの有機酸エステル類;N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素などのチオ尿素誘導体;サリチルアニリド、5−クロロ−サリチルアニリドなどのサリチルアニリド系化合物;2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸などの有機酸;亜鉛、アルミニウム、カルシウム等の金属による前記有機酸の金属塩;チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体などの前記有機酸金属塩の錯体等が含まれる。
【0103】
感熱発色層は、ロイコ染料及び顕色剤を基材上に結合支持させる目的で、結合剤を含んでいてもよい。前記結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックスなどが挙げられる。
【0104】
感熱発色層は、上記の他の構成成分として、感度向上剤を含んでいてもよい。感度向上剤には、例えば種々の熱可塑性物質を使用することができ、具体例としては、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、グレヤコールカーボネート、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジロキシナフタレン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ジフェノキシ−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ジフェニルチオブタン、1,4−ジフェニルチオ−2−ブテン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、p−プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3−フェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、1,2−ビス(4−メトキシフェノキシ)プロパン、1,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−オキサペンタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロロベンジル)等が挙げられる。
【0105】
また、感熱発色層には、填料が含まれていてもよい。填料としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末;尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などの有機系微粉末などが挙げられる。
【0106】
感熱発色層には、その特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば界面活性剤などを添加してもよい。
【0107】
感熱発色層は、前記ロイコ染料及び顕色剤を含む混合液を基材上に塗工することにより形成できる。例えば、これらの構成成分及び水を混合攪拌させた水分散液を塗工することにより感熱発色層を形成できる。
【0108】
本発明における感熱発色層は、加熱により発色し始める温度(最低発色温度)が、例えば80〜150℃、好ましくは90〜120℃、特に好ましくは100〜110℃程度である。
【0109】
本発明の感熱性記録用シートは、基材と感熱性粘着剤層との間、及び/又は基材と感熱発色層との間に断熱層を設けてもよい。前記断熱層によれば、サーマルヘッドの熱エネルギーの効率的活用による発色感度の向上、及び裏面の感熱性粘着剤層の活性化効率の向上により、感熱性粘着剤の活性化温度と感熱発色層の発色開始温度との温度差を大きくすることができる。
【0110】
断熱層には、目的に応じて発泡性、又は非発泡性の断熱層が用いられる。断熱層は、一般に、熱可塑性樹脂からなる微小中空粒子を主成分としている。熱可塑性樹脂としては、上記に例示の熱可塑性樹脂を利用することができ、例えば、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、ブタジエンなどを単量体成分とする単独又は共重合体などが好ましく用いられる。発泡性断熱層に用いる微小中空粒子は、内部に加熱により発泡する発泡剤、例えば、プロパン、ブタンなどの低沸点溶媒を含有しており、加熱により発泡させるのに対し、非発泡性断熱層に用いる微小中空粒子は、内部に空気その他の気体を含有する物で、すでに発砲状態となっている。前記微小中空粒子は、目的に応じた粒子径及び中空度(中空粒子の外径と内径の比)を選択して利用できる。断熱層には、一般に、前記微小中空粒子と共にバインダーが含まれ、必要に応じて顔料が混合される。前記バインダーとしては、従来公知の水溶性高分子及び/又は水溶性高分子エマルジョンが用いられ、前記顔料としては、例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の有機顔料やシラス土等の無機顔料等のポーラスな顔料などが利用される。
【0111】
断熱層は、前記微小中空粒子(場合により顔料)及びバインダーと共に、必要に応じて慣用の補助添加成分、例えば、熱可塑性物質、界面活性剤等を併用することができる。熱可塑性物質としては、前記感熱発色層成分と同様のものを用いることができ、界面活性剤には慣用のものを利用できる。
【0112】
断熱層は、例えば、上記の構成成分を水に分散させた水分散液を基材表面及び/又は表面に塗布し、乾燥することによって得られる。なお、発泡性断熱層の形成の際には、塗布乾燥後、塗布面を加熱して微小中空粒子を発泡させる工程を設けてもよく、さらに、加熱発泡後、発泡により表面にできた凹凸を平滑にするため、カレンダー処理などの工程を設けてもよい。
【0113】
断熱層を設けることにより、サーマルヘッドの熱エネルギーを効率的に活用して発色感度を向上させることができる。また、感熱性粘着剤を活性化するために感熱性粘着剤層へ照射した光のエネルギーが熱に変換されて生じる感熱発色層表面の発色かぶりを防止することができる。
【0114】
また、本発明の感熱性記録用シートは、感熱性粘着剤を効率よく活性化して粘着性を発現させる目的で、赤外吸収物質を含んでもよい。本発明において、赤外吸収物質とは、赤外光(波長0.7〜2.5μm)を有効に吸収し、光を熱に変換することが可能な物質を意味しており、感熱性粘着剤層、基材、及び必要に応じて設けられた断熱層のいずれの層の構成成分として添加されていてもよい。
【0115】
赤外吸収物質としては、特に限定されず、例えば、シアニン系色素、アズレニウム系色素、ピリリウム、チオピリリウム系色素、スクワリリウム系色素、トリアリールメタンン系色素、インモニウム、ジインモニウム系色素、チオールニッケル錯塩系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アントラキノン系色素などの有機近赤外吸収色素、及びトリフェニルフォスフェイト、2−エチルヘキシルジエフェニルフォスフェイト、フルフリルアセテート、ビス(1−チオ−2−フェノレート)ニッケル−テトラブチルアンモニウム、ビス(1−チオ−2−ナフトレート)ニッケル−テトラブチルアンモニウム、1,1−ジエチル−4,4’−キノカーボシアニンアイオダイド、1,1’−ジエチル−6,6’−ジクロロ−4,6’−キノトリカーボシアニンアイオダイド等の有機化合物が挙げられる。
【0116】
上記の他の赤外吸収物質には、カーボンブラックや黒鉛:酸化アルミニウムなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;雲母族、長石族、シリカ鉱物族、粘土鉱物などの珪酸塩鉱物;珪酸亜鉛、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸バリウムなどの珪酸塩化合物;リン酸亜鉛などのリン酸塩化合物;四窒化三ケイ素、窒化ホウ素などの窒素化合物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウムなどの硫酸塩化合物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などの炭酸塩化合物;硝酸カリウムなどの硝酸塩化合物などの無機化合物が含まれる。これらの赤外吸収物質は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。中でも、0.7〜2.5μmの波長に一様に強い吸収波長を有し、且つその光を効率よく熱に変換することができることから黒鉛が好ましく用いられる。黒鉛は、その製法及び構造から、鱗状黒鉛、粒状黒鉛、土状晶黒鉛などの天然黒鉛、腎臓黒鉛が存在し、いずれも利用できる。
【0117】
これらの赤外吸収物質は可能な限り微粒子化して使用するのが好ましい。微粒化方法は通常の乾式及び湿式粉砕法や溶解コロイドというような化学的手法の何れであってもよい。特に、分散性の微粒子化された黒鉛を用いた場合には、赤外吸収効果が優れるため熱変換効率が向上し、優れた粘着性を示すことができる。
【0118】
赤外吸収物質の使用量は、それ自身の着色性やサーマル表面への汚染などの点からできるだけ少量であることが好ましく、添加する層の構成材料全体の乾燥重量に対して、例えば0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%程度である。10重量%を超える場合、添加した層の着色がひどく、また印字した際のサーマル表面のPCS低下(地肌部の着色による)、被着体への汚染が起こるだけでなく、多量の赤外光エネルギーを取り込むことに起因するサーマル表面の発色かぶりを引き起こす。0.1重量%未満では、光のエネルギーが熱エネルギーへ変換される効率が低くなるため感熱性粘着剤が活性化されず、粘着性の発現がなされない。
【0119】
基材としては、例えば、紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属等からなるフィルム又はシート状のもの、及びこれらの積層体等が挙げられる。
【0120】
紙としては、例えば、原紙、及び上質紙、グラシン紙、アート紙、コート紙、キャスト紙などの一般紙等が挙げられる。
【0121】
原紙はパルプと填料を主成分として構成される。パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプやGP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプなどの木材パルプ;DIP等の古紙パルプ;バガス、ケナフ、麻、綿等から得られる非木材天然パルプ;ポリエチレン、ポリプロピレン等を原料とした合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種又は2種以上組み合わせて使用できる。填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂などの有機顔料などが挙げられる。これらの填料は、1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0122】
原紙は、上記の他に、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等を含んでいてもよい。前記サイズ剤としては、例えば、酸性抄紙用ロジンサイズ剤、中性抄紙用変性ロジンサイズ剤、AKD、ASA、カチオンポリマー型サイズ剤等を挙げられる。
【0123】
原紙は、木材パルプ、填料及び必要に応じて添加剤を含む混合液より、酸性、中性、アルカリ性で抄造でき、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種装置を用いて製造できる。この際、該原紙は、金属ロールと合成樹脂ロールからなるカレンダー装置でをオンマシン処理してもよく、処理後に、さらにマシンカレンダー、スーパーカレンダー等でカレンダー処理を施して平坦性をコントロールしてもよい。
【0124】
なお、一般紙としては、上記の原紙に対し、例えば、特定の溶剤等に浸積したり、化学的又は物理的な表面処理を施したり、ラミネートなどにより積層体を形成するなどの各種加工を施すことにより得ることができる。
【0125】
プラスチックフィルムを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12等)、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、更にこれらの共重合体、ブレンド物、架橋物を用いてもよい。
【0126】
これらのフィルムのうち、通常、ポリオレフィン(特にポリプロピレン)、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートなど)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどが使用され、特に、機械的強度、作業性などの点からポリエステルが好ましい。なお、上記のプラスティックフィルムは透明基材としても好ましく用いられる。プラスティックフィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、顔料などの慣用の添加剤を添加してもよい。
【0127】
基材には、感熱性粘着剤層との接着性を向上させるため、コロナ放電処理やアンダーコート処理などの表面処理を施してもよく、さらに、カールを防止するため、基材の裏面などに樹脂層や顔料層などのカール防止層を設けてもよい。基材は、用途に応じて、不透明、半透明、透明のいずれであってもよい。基材の厚みは用途に応じて選択でき、通常、5〜500μm、好ましくは10〜300μm程度である。
【0128】
感熱発色層、感熱性粘着剤層、断熱層を設ける塗工方法としては、例えば、ロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、シルクスクリーンコーターなどを用いた方法などが挙げられる。感熱性粘着剤層はグラビヤ印刷機などを用いた印刷により形成することもできる。感熱性粘着剤層の塗工量は、例えば4〜20g/m2、好ましくは5〜15g/m2程度である。該粘着剤層の厚みが小さすぎると、感熱性記録用シートとして使用する際に十分な接着機能が得られにくくなる。また、逆に粘着剤層の厚みが大きすぎると、粘着性を発現するのに時間がかかりやすくなる。
【0129】
本発明の感熱性記録用シートの記録方法は、使用目的によって熱ペン、熱スタンプ、サーマルヘッド、レーザー加熱等によって行われるが、特に限定されない。
【0130】
感熱性記録用シートの被着体への貼り付け法としては、感熱性記録用シートを加熱圧着できる方法であれば特に限定されず、例えば、加熱手段としてアイロンやドライヤーを用いて手の力により貼り付けたり、適当な貼付機を用いて貼り付けることができる。
【0131】
本発明の感熱性記録シートは、例えば、POSラベルや管理ラベルなどに利用される。
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の固体可塑剤と熱可塑性樹脂を含む感熱性粘着剤層を設けるため、十分な接着強度と高い粘着性及び耐ブロッキング性が発揮され、特にラップなどの柔らかい被着体に対する貼付作業性に優れる。さらに、特定の2種以上の固体可塑剤を用いた場合には、優れた粘着持続性及び透明持続性を発揮することができる。さらに、発色かぶりを抑制することができるため、高品質のラベルとして有効に利用することができる。
【0133】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」を示す。
[感熱発色剤水分散液の調製]
調製例1
3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、10%ポリビニルアルコール水溶液10部、及び水30部からなる組成物1と、ビスフェノールA10部、10%ポリビニルアルコール水溶液、炭酸カルシウム20部、及び水50部からなる組成物2を、それぞれサンドグラインダーを用いて3時間分散させた後、組成物1及び組成物2を重量比1:6の割合で混合撹拌することにより感熱発色剤水分散液を得た。
【0134】
[固体可塑剤水分散液の調製]
なお、平均粒子径は、堀場製作所製、LA−500を用いて測定を行った。また、マーロン機械安定性試験は、25kg、1000回転、15分の条件において行った。
製造例1
ディスパー撹拌機装備の容器に固体可塑剤としてのレゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点95℃)100部、アニオン系界面活性剤(アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩型)4.5部及びイオン交換水90部を混合、撹拌し、得られた混合液をビーズミルに送液し、平均粒子径が2.2μmとなるまで粉砕、分散することにより、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]の水分散液(固体可塑剤水分散液1)を得た。得られた水分散液について、マーロン機械安定性試験を行ったところ、凝集物の発生率は水分散液に対して0.4%であった。また、3ヶ月間保存後も沈降することなく保存安定性が良好であった。
【0135】
製造例2
ディスパー撹拌機装備の容器に、固体可塑剤としてのビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート(融点94℃)100部、アニオン系界面活性剤(スルホン酸塩型)3.5部及びイオン交換水90部を混合を混合、撹拌し、得られた混合液をビーズミルに送液し、平均粒子径が2.5μmとなるまで粉砕、分散することにより、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレートの水分散液(固体可塑剤水分散液2)を得た。得られた水分散液について、マーロン機械安定性試験を行ったところ、凝集物の発生率は水分散液に対して0.02%であった。また、3ヶ月間保存後も沈降することなく保存安定性が良好であった。
【0136】
製造例3
ディスパー撹拌機装備の容器に、固体可塑剤としてのビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点93℃)100部、アニオン系界面活性剤(スルホン酸塩型)3.5部及びイオン交換水90部を混合、撹拌し、得られた混合液をビーズミルに送液し、平均粒子径が2.5μmとなるまで粉砕、分散することにより、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートの水分散液(固体可塑剤水分散液3)を得た。得られた水分散液について、マーロン機械安定性試験を行ったところ、凝集物の発生率は水分散液に対して0.04%であった。また、3ヶ月保存後も沈降することなく保存安定性が良好であった。
【0137】
[感熱性記録用シートの製造]
実施例1
製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1、熱可塑性樹脂としてのスチレン−アクリル酸エステル共重合体(ガラス転移温度Tg20℃)の水系エマルション、粘着付与剤としての重合ロジンエステル樹脂の水系分散液及び水を混合し、均一になるまで撹拌して、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。構成成分の配合比は、固体可塑剤100重量部に対し、熱可塑性樹脂28重量部、粘着付与剤14重量部であった。
基材としての上質紙(坪量81.4g/m2)に対して、一方の面に調製例1で得られた感熱発色剤水分散液を乾燥後の塗工量が5g/m2となるように、他の面に得られた感熱性粘着剤を乾燥後の塗工量が10g/m2となるように、それぞれバーコーターを用いて塗工し、40℃で2分30秒間乾燥して感熱性記録用シートを得た。
【0138】
実施例2
実施例1において、固体可塑剤として、製造例3で得られた固体可塑剤水分散液3を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0139】
実施例3
実施例1において、固体可塑剤として、製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1と製造例2で得られた固体可塑剤水分散液2を固形分重量比65:35の割合で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0140】
実施例4
実施例1において、固体可塑剤として、製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1と製造例3で得られた固体可塑剤水分散液3を固形分重量比45:55の割合で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0141】
実施例5
実施例1において、固体可塑剤として、製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1と製造例3で得られた固体可塑剤水分散液3を固形分重量比45:55の割合で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤を得た。さらに、基材として、上質紙の代わりに、両面をコロナ処理済みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm)を用いて感熱性記録用シートを得た。
【0142】
比較例1
実施例1において、固体可塑剤として、ジシクロヘキシルフタレート水分散液(商品名「H−521」、中京油脂製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0143】
比較例2
実施例5において、固体可塑剤として、ジシクロヘキシルフタレート水分散液(商品名「H−521」、中京油脂製)を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0144】
性能評価
実施例及び比較例で得られた感熱性記録用シートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(発色かぶり)
実施例及び比較例で得られた感熱性記録用シートを、熱傾斜試験機(東洋精機製)により100℃で2秒間処理したときの感熱発色層について発色かぶりの有無を目視により観察した。全く発色が見られなかった場合を「○」、感熱発色層に発色が見られた場合を「×」として評価した。
(粘着性)
実施例及び比較例で得られた感熱性記録用シートを、製造直後、及び製造後23℃、50%RHの雰囲気下に3ヶ月間放置したシートについて、熱傾斜試験機(東洋精機製)により100℃で2秒間処理した時の粘着性を指触により評価した。十分な粘着性が発現した場合を「○」、粘着性が大きく減少するか失われた場合を「×」として評価した。
(接着力)
感熱性記録用シートを幅25mm、長さ125mmの大きさに切断した切断片を、100℃で1秒間加熱して粘着性を発現させ、ガラス板[岩城硝子(株)製、Micro Slide Glass 白緑磨]上に置き、ゴムロールで2kgの荷重をかけて1往復させて貼り付けたものを試験片とした。得られた試験片を23℃、50%RHの雰囲気下に放置し、1ヶ月後に、引っ張り試験機(オリエンテック社製、テンシロンUCT−5T)を用いて、引っ張り速度300mm/分、剥離角度180°の条件で接着力を測定した。
(透明持続性)
基材としてPETが用いられている実施例5及び比較例2で得られた感熱性記録用シートを、23℃、50%RHの雰囲気下に放置し、3ヶ月後のラベルの透明性を目視観察した。曇りが全くなく透明性が非常によかった場合を「○」、曇りが生じた場合を「×」として評価した。
(耐ブロッキング性)
感熱性記録用シートを3cm×3cmに切断した切断片4枚を、粘着剤層と感熱発色層が接するように重ね、555gf/cm2の荷重をかけ、50℃の雰囲気下で24時間放置した後、以下の基準で耐ブロッキング性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
5:剥離抵抗なく剥離できた。
4:剥離時に若干音を発しながら剥離した。
3:剥離時に連続的に音を発しながら剥離した。
2:剥離時に粘着剤層が部分的に凝集破壊した。
1:ブロッキングして粘着剤層が凝集破壊した。
【0145】
【表1】
【発明の属する技術分野】
本発明は、剥離紙を不要とする感熱性記録用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、記録用ラベルとしては、感圧性接着剤からなる粘着剤層と該粘着剤層を保護する剥離紙とが積層され、使用時に剥離紙を剥がして貼り合わせる形態のものが利用されている。しかし、ラベルを使用する際にこれらの剥離紙が大量の廃棄物として発生してしまうことから、近年では、粘着剤層として感熱性接着剤を用いることにより剥離紙を必要としない感熱性記録用シートが注目されている。このような感熱性記録用シートによれば、剥離紙を使用しないため環境の点で有利であるが、従来のものには、ラベル原反がブロッキングを生じたり、粘着性が消失しやすいため貼付作業性に劣り、ラベルが脱落する等の問題があった(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開昭63−303387号公報
【特許文献2】
特開平7−164736号公報
【特許文献3】
特開平11−263949号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い接着強度を有し、粘着性及び耐ブロッキング性に優れ、貼付作業性が良好な感熱性記録用シートを提供することにある。
本発明の他の目的は、優れた粘着持続性及び透明持続性を有する感熱性記録用シートを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、発色かぶりを抑制しうる感熱性記録用シートを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、基材の片面に感熱発色層が設けられ、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び特定の固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートによれば、良好な粘着持続性及び耐ブロッキング性が発揮され貼付作業性に優れると共に、発色かぶりを抑制することができることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ii)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)
【化3】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4a、R5、R6、R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4、式(2)におけるR5とR6とR7は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表されるリン化合物、及び(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物で構成されている感熱性記録用シート(以下、「感熱性記録用シート1」と称する場合がある)を提供する。
【0007】
また、本発明は、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ia)(A’)(A3)脂肪族アルコール若しくは(A4)シクロヘキサノール又は(A5)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が2以下である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールと(B’)フタル酸類とのフタル酸エステル類、(iia)2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類、(iib)2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(但し、前記リン酸エステル類(iia)を除く)、(iic)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)
【化4】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4a、R5、R6、R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4、式(2)におけるR5とR6とR7は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表されるリン化合物(但し、前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除く)、(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物、(iv)ヒンダードフェノール系化合物、及び(v)トリアゾール系化合物の8種の化合物群のうち少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物の組み合わせにより構成されている感熱性記録用シート(以下、「感熱性記録用シート2」と称する場合がある)を提供する。
【0008】
本発明の感熱性記録用シートは、前記固体可塑剤の融点が70℃以上であってもよく、前記基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、及びポリプロピレンから選択された少なくとも一種の成分により構成されていてもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱性記録用シートは、基材の一方の面に感熱発色層、他の面に感熱性粘着剤層が設けられている。前記感熱性粘着剤層は、少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含んでいる。
【0010】
熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独又は共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ビニルピロリドン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などの(メタ)アクリル酸又はそのエステルを単量体として含むアクリル系重合体;酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニルを単量体として含む酢酸ビニル系重合体;スチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレン樹脂、イソブチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン樹脂、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などの合成ゴム;天然ゴム;エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ビニルビロリドン−スチレン共重合体、塩素化プロピレン樹脂、ウレタン樹脂、エチルセルロースなどが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0011】
好ましい熱可塑性樹脂には、アクリル系重合体[例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単量体として含むアクリル系共重合体]、酢酸ビニル系重合体、合成ゴム、天然ゴムなどが含まれる。より好ましい熱可塑性樹脂はアクリル系重合体である。
【0012】
前記アクリル系重合体の中でも、特に、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−メタクリル酸C1−4アルキルエステル共重合体)、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−メタクリル酸C1−4アルキルエステル−(メタ)アクリル酸共重合体)、アクリル酸エステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体)等のアクリル酸エステル(例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステル)とメタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸C1−4アルキルエステル)又はスチレンとをコモノマーとして含むアクリル系共重合体;及びスチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが好ましい。
【0013】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、被着体の種類等を考慮し、シートとした時の接着性や耐ブロッキング性を損なわない範囲で適宜選択でき、通常、−10〜70℃程度である。前記ガラス転移温度が−10℃未満の場合には耐ブロッキング性が低下しやすい。また、前記ガラス転移温度が高すぎると、接着性が低下しやすくなる。
【0014】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量(Mw)は接着性等を損なわない範囲で適宜選択できるが、一般には10万〜200万程度である。重量平均分子量(Mw)が10万未満であると、接着強度が小さく、放置しているだけで剥離してしまう。なお、重量平均分子量(Mw)が10万〜50万、好ましくは15万〜30万の熱可塑性樹脂を用いた感熱性記録用シートでは、実用上十分な接着強度が得られると共に、熱水等を使用することなく、手によって、被着体に感熱性粘着剤層を残存させることなく容易に剥離除去できるので、貼り直しや貼り替え作業が極めて容易である。
【0015】
本発明の感熱性記録用シート1の特徴の一つは、固体可塑剤として、(i)多エステル化合物(第1の化合物群)、(ii)リン化合物(第2の化合物群)、及び(iii)ジエステル化合物(第3の化合物群)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を用いることにある。
【0016】
[(i)多エステル化合物]
前記多エステル化合物(i)を構成するアルコール(A1)において、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環の置換基であるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などが挙げられる。好ましいアルキル基には、メチル、イソプロピル、t−ブチル基などの炭素数1〜6(特に、炭素数1〜4)程度のアルキル基が含まれる。
【0017】
前記(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールとしては、例えば、下記式(I)〜(VII)で表される置換シクロヘキサノール、(VIII)〜(X)で表される置換シクロヘキセノール、(XI)〜(XII)で表されるカルボニル基を有する置換シクロヘキサノール、(XIII)で表されるカルボニル基を有する置換シクロヘキセノールなどが挙げられる。また、(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールとしては、例えば、該6員炭素環を構成する炭素原子のうち隣接する炭素原子以外の2つの炭素原子間にアルキレン基が結合して橋を形成している橋かけ環を有するアルコール、例えば、(XIV)、(XV)、(XVI)、(XVIII)で表されるノルボルナン環を有するアルコール、(XVII)、(XIX)で表されるノルボルネン環を有するアルコール、(XX)、(XXI)で表されるアダマンタン環を有するアルコールなどが挙げられる。
【0018】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0019】
これらのアルコールの中でも、式(I)〜(VII)で表されるアルコールなどの1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサノール、式(XVI)、(XVIII)などで表されるノルボルナン環を有するアルコールなどのヒドロキシル基又はヒドロキシメチル基が結合した6員飽和炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールが好ましい。特に、前記式(I)で表される3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールが、粘着性の発現温度及び耐ブロッキング性の観点から好ましい。
【0020】
前記(B)多塩基酸には、多価カルボン酸、多価スルホン酸、多価ホスホン酸などが含まれる。多価カルボン酸としては、下記式
【化13】
【化14】
で表される酸無水物(無水フタル酸、無水ピロメリット酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸)に対応する多価カルボン酸(フタル酸、ピロメリット酸、シクロヘキセン−4,5−ジカルボン酸、トリメリット酸)や、下記式
【化15】
で表される多価カルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸)などが例示できる。上記式中、ベンゼン環には、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル基などのアルキル基(例えば、C1−4アルキル基);フェニル、ナフチル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基);フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子などの置換基が置換していてもよい。
【0021】
なかでも、可塑化が起こり始める温度及び加熱時の粘着性の性能の観点から、式(i)で表される3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールと無水フタル酸との反応により得られる下記式
【化16】
で表されるビス(3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートが特に好ましい。
【0022】
なお、上記3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールには、ヒドロキシル基と5位のメチル基との立体的な位置関係により、シス体とトランス体の2つの幾何異性体が存在する。本発明では、これらの何れの異性体から得られる多エステル化合物を使用することもでき、また、これらの異性体の混合物から得られる多エステル化合物を使用することもできる。より好ましい多エステル化合物は、シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールから得られる多エステル化合物である。
【0023】
多エステル化合物(i)の代表的な化合物としては、例えば、ジメンチルフタレート(融点134℃)、ビス(t−ブチルシクロヘキシル)フタレート(融点103,150℃)、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点93℃)、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点133℃)、ビス(トランス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点103℃)、ジボルニルフタレート(融点136℃)等が挙げられる。
【0024】
前記多エステル化合物(i)は、(A)アルコールと(B)多塩基酸又はその反応性誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、活性エステルなど)から、公知乃至慣用のエステル化法に従って製造することができる。例えば、(A)アルコールと(B)多塩基酸とを、プロトン酸触媒の存在下、トルエンなどの溶媒中で反応させ、副生する水を除去することにより上記多エステル化合物(i)を得ることができる。
【0025】
多エステル化合物(i)の融点は、好ましくは70〜160℃程度、さらに好ましくは70〜120℃程度である。多エステル化合物の融点が70℃より低いと耐ブロッキング性が低下しやすく、また160℃を超えると、溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。多エステル化合物(i)は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0026】
[(ii)リン化合物]
前記リン化合物(ii)には、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、ホスフィン類などが含まれる。前記融点55〜100℃のリン化合物としては、下記式(1)又は(2)
【化17】
(式中、R1〜R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、mは0〜3の整数を示す。R1とR2とA(m=1〜3のとき)、R3とR4とA(m=1〜3のとき)、R1とR3とR4(m=0のとき)、R5とR6とR7は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表される化合物が挙げられる。
【0027】
前記式(1)で表される化合物には、下記式(1a)、(1b)及び(1c)
【化18】
(式中、R1、R2、R3、R4、R1a、R3a、R4a、R5、R6、R7はそれぞれ炭化水素基又は複素環式基を示し、Aは2価の炭化水素基又は複素環式基を示し、kは0又は1を示し、nは1〜3の整数を示す。式(1a)におけるR1とR2とA、R3とR4とA、式(1b)におけるR1aとR3aとR4a、式(1c)におけるR1とR3とR4は、それぞれ2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成していてもよい)
で表される化合物が含まれる。
【0028】
前記R1〜R7、R1a、R3a、R4aにおける炭化水素基には、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0029】
前記芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などが挙げられる。脂環式炭化水素基には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などのシクロアルケニル基;ノルボルニル、ビシクロ[4.3.0]ノニル、アダマンチル基などの橋かけ環炭化水素基などが含まれる。脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル基などの炭素数1〜12程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−へキセニル基などの炭素数2〜12程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜12程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0030】
前記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル基などのC1−4アルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基などのC1−4アルコキシ基;フェニルオキシ基などのアリールオキシ基;メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基;アセチル、ベンゾイル基などのアシル基;アセチルオキシ基などのアシルオキシ基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;オキソ基などが例示できる。
【0031】
前記芳香族炭化水素基の代表的な例として、フェニル基;2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル基などのハロゲン原子を有するフェニル基;2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2−エチルフェニル、4−t−ブチルフェニル基などC1−4アルキル基を有するフェニル基などが挙げられる。前記脂環式炭化水素基の代表的な例として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへキセニル、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、3−オキソ−1,5,5−トリメチルシクロヘキシル、6−オキソ−2,4,4−トリメチル−1−シクロへキセニル、1,7,7−トリメチルノルボルナン−2−イル基などが挙げられる。前記脂肪族炭化水素基の代表的な例として、ベンジル、2−メチルフェニルメチル、2−フェニルエチル基などのアリール基が結合したアルキル基(アラルキル基)などが挙げられる。
【0032】
前記R1〜R7、R1a、R3a、R4aにおける複素環式基には、2−フリル、モルホニル、テトラヒドロピラニル基などの酸素原子含有複素環式基;2−チエニル基などのイオウ原子含有複素環式基;1−ピロリル、2−ピリジル、ピペリジノ、2−キノリル基などの窒素原子含有複素環式基などが含まれる。これらの複素環式基は置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記炭化水素基において例示した置換基などが挙げられる。
【0033】
前記Aにおける2価の炭化水素基には、2価の芳香族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基が含まれる。これらの炭化水素基は、酸素原子、イオウ原子、カルボニル基、カルボニルオキシ基などの連結基を介して又は介することなく2以上結合していてもよく、また置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記R1〜R7等における炭化水素基が有していてもよい置換基として例示した基が挙げられる。
【0034】
前記リン化合物(ii)は、さらに、(iia)2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類、(iib)2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(但し、前記リン酸エステル類(iia)を除く)、及び(iic)リン化合物(ii)から前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除いたリン化合物に分類することができる。
【0035】
2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(iia)は、前記式(1a)で表されるリン化合物において、kが1のときにAが2価の芳香族炭化水素基である化合物として表される。前記2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、ビフェニレンなどが挙げられる。
【0036】
2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(ia)としては、例えば、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点95℃)などが挙げられる。
【0037】
2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(iib)は、前記式(1a)で表されるリン化合物において、kが1のときにAが2価の脂環式炭化水素基であるか又は2価の脂環式炭化水素基部を有する2価の脂肪族炭化水素基である化合物として表される。すなわち、2価の脂環式炭化水素基は、直接リン酸と結合してエステルを形成してもよく、また、2価の脂肪族炭化水素基(例えばメチレン基等)を介してエステルを形成してもよい。
【0038】
前記2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシリデン、1,2−シクロペンチレン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレンなどのシクロアルキレン基;2−シクロヘキセン−1,4−ジイル基などのシクロアルケニレン基;アダマンタン−1,3−ジイル、5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジイル基などの2価の橋かけ環式基などが挙げられる。
【0039】
前記2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などの炭素数1〜6程度のアルキレン基;プロペニレン基などの炭素数2〜6程度のアルケニレン基;プロピニレン基などの炭素数2〜6程度のアルキニレン基などが挙げられる。
【0040】
前記2価の脂環式炭化水素基部を有する2価の脂肪族炭化水素基としては、前記2価の脂環式炭化水素基と前記2価の脂肪族炭化水素基が各々一つ以上結合したものであればよく、例えば、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−などが挙げられる。
【0041】
2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(iib)の具体例として、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)(融点97℃)などが挙げられる。
【0042】
なお、リン化合物(iic)としては、リン化合物(ii)から前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除いたリン化合物が挙げられる。リン化合物(iic)は、具体的には、融点55〜100℃のリン化合物、又は前記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)で表されるリン化合物であって、前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除いたリン化合物である。前記式(1a)で表されるリン化合物中、リン化合物(iic)には、例えば、kが1のときにAが2価の脂肪族炭化水素基又は2価の複素環式基である化合物などが含まれる。
【0043】
前記2価の脂肪族炭化水素基としては、上記に例示のものが用いられる。前記複素環式基には、多価の複素環式アルコール又はフェノール(例えば、イソソルバイド、イソマンナイド、スクロース、ラクトースなどの糖類)から2つのヒドロキシル基を除いた2価の基が含まれる。
【0044】
前記Aにおける2価の炭化水素基の代表的な例として、1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,4−ナフチレン、1,1−ジフェニルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジフェニルブタン−4′,4″−ジイル、4,4′−ビフェニレン、1,4−シクロへキシレン、1,5,5−トリメチルシクロヘキサン−1,3−ジイル、6−オキソ−2,4,4−トリメチルシクロヘキサン−1,2−ジイル、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−、1,1−ジシクロヘキシルエタン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルプロパン−4′,4″−ジイル、2,2−ジシクロヘキシルブタン−4′,4″−ジイル、アダマンタン−1,3−ジイル、5,7−ジメチルアダマンタン−1,3−ジイル、トリメチレン、2−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、テトラメチレン基などが例示できる。
【0045】
また、前記2価の炭化水素基と2価の複素環式基とが、前記連結基を介して又は介することなく結合していてもよい。
【0046】
前記式(1a)において、R1〜R4の少なくとも1つ(特に、R1〜R4のすべて)が芳香族炭化水素基であるのが好ましい。また、好ましいAには、1,3−フェニレン基などの少なくとも2価の芳香族炭化水素基部を含む2価の炭化水素基、−CH2−1,4−シクロへキシレン−CH2−基などの少なくとも2価の脂環式炭化水素基部を有する2価の脂肪族炭化水素基が含まれる。nは1又は2、特に1であるのが好ましい。好ましいリン化合物の具体例としては、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点95℃)、1,4−シクロヘキサンジメタノールビス(ジフェニルホスフェート)(融点97℃)などが挙げられる。
【0047】
前記式(1b)で表される好ましい化合物には、R1aとR3aとR4aが何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基である化合物、及びR1aとR3aとR4aのうち2以上の基が互いに結合してリン原子を含む環を形成した環状リン酸エステル類などが含まれる。
【0048】
式(1b)で表される化合物(リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリ(4−メチルフェニル)ホスフェート(融点78℃)などのトリ(メチルフェニル)ホスフェートなどのリン酸トリアリールエステル類、トリベンジルホスフェート(融点65℃)などのリン酸トリアラルキルエステル類、下記式(3)
【化19】
で表される化合物(融点95〜110℃)などの、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類などが挙げられる。
【0049】
式(1c)において、R1〜R4は、何れも芳香族炭化水素基又はアラルキル基であるのが好ましい。
【0050】
式(1c)で表される化合物(亜リン酸エステル類)の具体例として、例えば、トリ(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト(融点75℃)などの亜リン酸トリアリールエステルなどが挙げられる。
【0051】
前記式(2)において、R5〜R7は好ましくは芳香族炭化水素基である。式(2)で表される化合物の具体例として、例えば、トリフェニルホスフィン(融点80℃)、トリ(3−メチルフェニル)ホスフィン(融点100℃)などのトリアリールホスフィン類が挙げられる。
【0052】
上記リン化合物は、周知乃至公知の方法により得ることができる。例えば、リン酸エステル類は、オキシ塩化リン、アリールジクロロホスフェートなどのジクロロリン酸モノエステル、又はジアリールクロロホスフェートなどのクロロリン酸ジエステルと目的化合物に対応するヒドロキシル基含有化合物(アルコール又はフェノール)とを、必要に応じてピリジンなどの塩基の存在下で反応させることにより得ることができる。なお、リン原子を環の構成原子として含む環状リン酸エステル類は、前記ヒドロキシル基含有化合物として、2価以上、好ましくは3価以上(例えば3又は4価)のヒドロキシル基含有化合物[例えば、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)エタン、ペンタエリスリトールなど]を用いることにより製造することができる。
【0053】
また、亜リン酸エステル類は、例えば、三塩化リンと目的化合物に対応するアルコール又はフェノールとを、必要に応じて塩基の存在下で反応させることにより製造できる。さらに、ホスフィン類(トリフェニルホスフィンなど)は、例えば、三塩化リンと目的化合物に対応するグリニヤール試薬(フェニルマグネシウムブロミドなど)との反応により得ることができる。
【0054】
なお、前記式(1a)、(1b)、(1c)又は(2)で表されるリン化合物については、融点は必ずしも55〜100℃の範囲でなくてもよく、例えば50〜160℃程度、好ましくは70〜120℃程度であってもよい。融点が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすく、逆に高すぎると溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。リン化合物(ii)は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0055】
[(iii)ジエステル化合物]
前記ジエステル化合物(iii)において、ハイドロキノン、レゾルシノール、カテコールのベンゼン環上の置換基としてのアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基などが挙げられる。なかでも、メチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基が好ましい。ハイドロキノン又はレゾルシノールにおけるベンゼン環上のアルキル基の置換数は0、又は1〜4(好ましくは1〜3、さらに好ましくは2又は3)である。また、カテコールのベンゼン環上のアルキル基の置換数は1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは2又は3である。アルキル基の置換数が複数であるとき、該アルキル基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
前記(C)成分において、ベンゼン環にはアルキル基以外の置換基が結合していてもよい。このような置換基として、例えば、フッ素、塩素、臭素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1−4アルコキシ基);フェノキシ基などのアリールオキシ基;アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ベンゾイルオキシ基などのアシルオキシ基;アセチル、プロピオニル、ベンゾイル基などのアシル基;カルボキシル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;シアノ基;ニトロ基などが挙げられる。また、前記ベンゼン環には、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、テトラヒドロフラン環などの3〜8員程度の芳香族性又は非芳香族性の炭素環又は複素環が縮合していてもよい。
【0057】
前記(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノールとしては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、2,6−ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンジアセテート、トリメチルハイドロキノンジアセテート、レゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、5−メチルレゾルシノール、2,5−ジメチルレゾルシノール、4,6−ジメチルレゾルシノール、2,4,6−トリメチルレゾルシノールなどが例示できる。また、(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールとしては、例えば、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、トリメチルカテコール、3,4,5−トリメチルカテコールジアセテートなどが挙げられる。
【0058】
前記(D)有機一塩基酸には、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式の一塩基酸(カルボン酸、スルホン酸など)が含まれる。これらのなかでも、脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸が好ましい。
【0059】
前記脂肪族モノカルボン酸として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸などの炭素数1〜6程度の脂肪族モノカルボン酸(好ましくは炭素数1〜4程度の脂肪族モノカルボン酸、特に酢酸)などが例示できる。また、脂環式モノカルボン酸として、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸などの3〜8員程度のシクロアルカンカルボン酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸には、例えば、安息香酸、トルイル酸、ナフトエ酸などの、芳香環にアルキル基(炭素数1〜4程度のアルキル基など)、アルコキシ基(炭素数1〜4程度のアルコキシ基など)、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素原子など)などの置換基を1又は2以上有していてもよい芳香族カルボン酸などが含まれる。
【0060】
前記ジエステル化合物の代表的な化合物として、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)(融点156℃)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(融点185℃)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(融点110℃)等のヒンダードフェノール系化合物;2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点139℃)等のトリアゾール系化合物;ハイドロキノンジアセテート(融点123℃)、トリメチルハイドロキノンジアセテート(融点109℃)、3,4,5−トリメチルカテコールジアセテート(融点120℃)等のハイドロキノン系化合物などが例示される。
【0061】
上記のジエステル化合物のうち、ハイドロキノン系化合物は、例えば、前記(C)成分と前記(D)有機一塩基酸又はその反応性誘導体(例えば、酸ハライド、活性エステル、酸無水物など)とを、必要に応じて酸触媒又は塩基の存在下、公知のエステル化法に準じて反応させることにより得ることができる。
【0062】
また、3,4,5−トリメチルカテコールと有機一塩基酸とのジエステル化合物は、酸触媒の存在下、2,6,6−トリメチルシクロヘキセ−2−エン−1,4−ジオン(ケトイソホロン)と前記有機一塩基酸に対応するアシル化剤(酸無水物、アシルハライド、エノールエステル類など)とを反応させることにより得ることができる。
【0063】
この方法において、酸触媒としては、プロトン酸、ルイス酸の何れも使用できる。プロトン酸として、超強酸(SbF5、SbF5−HF、SbF5−FSO3H、SbF5−CF3SO3Hなど)、硫酸、塩酸、リン酸、フッ化ホウ素酸、p−トルエンスルホン酸、クロロ酢酸、ピクリン酸、ヘテロポリ酸等の有機酸及び無機酸が挙げられる。また、ルイス酸として、例えば、BF3、BF3O(C2H5)2、AlCl3、FeCl3などが例示できる。これらの触媒の使用量は、例えば、ケトイソホロンに対して、0.001〜20モル%、好ましくは0.01〜15モル%程度である。
【0064】
また、前記酸触媒として、固体酸触媒を用いることもできる。固体酸触媒には、強酸性イオン交換樹脂[例えば、アンバーリスト15(オルガノ社製)などのスチレンジビニルベンゼンスルホン酸系イオン交換樹脂など];超強酸性樹脂[例えば、ナフィオンNR50(アルドリッチ社製)などのフッ素化スルホン酸樹脂など];ゼオライト、シリカ−アルミナなどのアルミノシリケート又は無機酸化物(複合酸化物を含む);担体(例えば、グラファイト、金属硫酸塩、金属塩化物、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライト、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、チタニア−ジルコニア、カオリンなど、特に多孔質担体)に前記のプロトン酸又はルイス酸を担持した固体酸触媒などが含まれる。固体酸触媒の使用量は、例えば、ケトイソホロンに対して、0.1〜1000重量%、好ましくは5〜100重量%程度である。
【0065】
前記アシル化剤の使用量は、例えば、ケトイソホロン1モルに対して、2モル以上、好ましくは3〜10モル程度である。アシル化剤を溶媒として用いてもよい。
【0066】
ケトイソホロンとアシル化剤との反応は、無溶媒下で行ってもよく、溶媒中で行ってもよい。前記溶媒としては、ヘキサン、オクタン、オクテン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類;酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸類;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド類などが挙げられる。
【0067】
ケトイソホロンとアシル化剤とを反応させる際の反応温度は、例えば0〜150℃、好ましくは10〜100℃程度である。生成したジエステル化合物は、例えば、濾過、濃縮、抽出、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの慣用の分離精製手段に付すことにより分離精製できる。
【0068】
なお、こうして得られた3,4,5−トリメチルカテコールと有機一塩基酸とのジエステル化合物を、酸、例えば前記プロトン酸や固体酸触媒の存在下、水と反応させることにより、3,4,5−トリメチルカテコールを得ることができる。この場合、水は、通常、ジエステル化合物に対して過剰量用いられる。この加水分解反応における反応温度は、例えば40〜100℃程度である。生成した3,4,5−トリメチルカテコールは、例えば前記の分離精製手段により単離できる。
【0069】
ジエステル化合物(iii)の融点は、例えば50〜220℃程度であってもよいが、好ましくは70〜200℃(例えば90〜190℃)程度である。ジエステル化合物(iii)の融点が低すぎると耐ブロッキング性が低下しやすく、逆に高すぎると溶融するのに時間がかかり、生産性が低下したり、基材が変質したりするおそれがある。ジエステル化合物(iii)は、1種又は2種以上混合して使用できる。
【0070】
本発明の感熱性記録用シート1は、固体可塑剤として、上記(i)多エステル化合物(第1の化合物群)、(ii)リン化合物(第2の化合物群)、及び(iii)ジエステル化合物(第3の化合物群)からなる群から選択された少なくとも1種の化合物を用いるため、粘着性を発現する温度が高く、しかも感熱性記録用シートの貼り付け温度で溶融して容易に熱可塑性樹脂を可塑化する。従って、粘着剤塗工工程においては、高い温度で短時間に乾燥できるため、感熱性記録用シートの生産性を大幅に向上できる。また、こうして得られた感熱性記録用シートを長期間保存してもブロッキングが生じないため、接着力の高い熱可塑性樹脂を使用することにより、感熱性記録用シートの接着強度を高めることができる。
【0071】
本発明の感熱性記録用シート2の特徴の一つは、固体可塑剤として、前記(i)多エステル化合物、前記(iii)ジエステル化合物、及びこれらに加えて、(ia)フタル酸エステル類、(iia)2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類、(iib)2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(但し、前記リン酸エステル類(iia)を除く)、及び(iic)融点55〜100℃のリン化合物、又は前記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)で表されるリン化合物(但し、前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除く)、(iv)ヒンダードフェノール系化合物、及び(v)トリアゾール系化合物からなる8種の化合物群のうち、少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物を組み合わせて用いることにある。
【0072】
前記フタル酸エステル類(ia)には、(A’)(A3)脂肪族アルコール若しくは(A4)シクロヘキサノール又は(A5)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が2以下である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールと(B’)フタル酸類とのエステル化合物が含まれる。
【0073】
前記脂肪族アルコール(A3)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ヘキサノール、イソヘキサノール、オクタノール、デカノールなどの炭素数1〜12程度のアルキルアルコールが挙げられる。これらの脂肪族アルコール(A3)は分子内に置換基を有していてもよい。前記置換基としては、前記炭化水素基が有していてもよい置換基として例示のものが用いられる。置換基を有する脂肪族アルコール(A3)としては、例えば、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、3−フェニル−2−プロペン−1−オールなどが挙げられる。前記アルコール(A5)において、シクロヘキサン環又はシクロヘキセン環の置換基であるアルキル基としては、メチル、エチル基などの炭素数1又は2のアルキル基が挙げられる。前記アルコール(A5)としては、例えば、メチルシクロヘキサノール、ジメチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノールなどが挙げられる。前記(B’)フタル酸類には、例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが含まれる。
【0074】
フタル酸エステル類(ia)の代表的な化合物としては、例えば、ジヘキシルフタレート(融点73℃)、ジイソヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート(融点63℃)、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート(融点94℃)などのフタル酸エステル;ジメチルイソフタレート、ジベンジルイソフタレート、ジジシクロヘキシルイソフタレート等のイソフタル酸エステル;ジメチルテレフタレート、ジベンジルテレフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート、ビス(ジメチルシクロヘキシル)テレフタレート(融点89℃)などのテレフタル酸エステルなどが挙げられる。
【0075】
前記フタル酸エステル類(ia)は、前記多エステル化合物(i)と同様、(A’)アルコールと(B’)フタル酸類又はその反応性誘導体(例えば、酸無水物、酸ハライド、活性エステルなど)から、公知乃至慣用のエステル化法に従って製造することができる。
【0076】
なお、前記リン酸エステル類(iia)、リン酸エステル類(iib)及びリン化合物(iic)は、前記リン化合物(ii)の例に示したように、リン化合物(ii)をさらに分類した3種の化合物群を示すものである。
【0077】
前記ヒンダードフェノール系化合物(iv)の代表的な例として、例えば、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)(融点156℃)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点208℃)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(融点185℃)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(融点110℃)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](融点106℃)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル(融点120℃)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点127℃)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点128℃)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(融点130℃)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(融点130℃)、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール(融点131℃)、及び4−ヒドロキシ−メチル−2,6−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェノール(融点140℃)などが挙げられる。
【0078】
前記トリアゾール系化合物(v)の代表的な例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(融点154℃)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点139℃)、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール](融点195℃)、2−(2’−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール(融点104℃)、2−[2’−ヒドロキシー3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール(融点139℃)、及び2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(融点140℃)などが挙げられる。
【0079】
前記8種の化合物群のうちの少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物は、それぞれ、固体可塑剤全量に対して、例えば1〜99重量%程度、特に5〜95重量%程度、就中5〜80重量%程度であるのが好ましい。
【0080】
また、上記の8種の化合物群のうち少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物を組み合わせて用いる場合を含め、一般に2種以上の固体可塑剤を併用する場合には、該2種以上の固体可塑剤のうちの1つの固体可塑剤と他の何れかの固体可塑剤(例えば、モル数の最も多い2種の固体可塑剤)の比率(固形分重量比)が、30:70〜70:30であるのが好ましい。また、3種以上の固体可塑剤を用いる場合、任意の2種の固体可塑剤の比率(固形分重量比)が上記の範囲にあるのも好ましい。2種以上の固体可塑剤を上記の比率で含む感熱性記録用シートでは、特に長期に亘って粘着性を保持できる。
【0081】
なお、固体可塑剤としては、上記の8種の化合物群に含まれる化合物のほかに、例えば、ジフェニルフタレート(融点73℃)、フタル酸ジナフチルなどの前記以外のフタル酸エステル類;リン酸トリフェニル、リン酸トリ(p−t−ブチルフェニル)などの前記以外のリン化合物;安息香酸スクロース、二安息香酸エチレングリコール、三安息香酸トリメチロールエタン、三安息香酸グリセリド、四安息香酸ペンタエリスロット、八酢酸スクロース、クエン酸トリシクロヘキシル、N−シクロヘキシル−p−トルエンスルホンアミド、尿素誘導体、塩化パラフィン等を用いることもできる。これらの固体可塑剤は、前記(i)〜(v)の化合物群に含まれる化合物と組み合わせて使用してもよい。
【0082】
本発明の感熱性記録用シート2は、固体可塑剤として、上記の8種の化合物群のうち少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物を組み合わせて用いるため、感熱性粘着剤層を加熱して固体可塑剤を一旦溶融させ、熱可塑性樹脂を可塑化した後において、固体可塑剤の再結晶化が遅延され、高い透明性及び粘着性が長期に亘って持続する。そのため、基材の色や質感等を損なうことなく、また、部分的に剥離した際にも再び被着体に強固に貼り付けることができる点で有利である。
【0083】
感熱性粘着剤層における固体可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば30〜1000重量部、好ましくは100〜1000重量部、さらに好ましくは150〜900重量部、特に200〜800程度である。固体可塑剤の含有量が30重量部より少ないと、加熱時に十分な粘着性が発現しない場合が生じ、また、1000重量部よリ多いと、凝集力が低下し十分な接着強度が発現しないことがある。
【0084】
前記粘着付与剤としては、例えば、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂など)、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロン−インデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等とのエステル、樹脂酸ダイマー等)、キシレン樹脂等の樹脂類を挙げることができる。これらの粘着付与剤は2種以上併用してもよい。
【0085】
感熱性粘着剤層における粘着付与剤の含有量は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂と前記固体可塑剤との組合せに応じて適宜選択でき、通常、熱可塑性樹脂100重量部に対して10〜600重量部程度であり、20〜500重量部程度が好ましい。特に、粘着付与剤の量を、熱可塑性樹脂100重量部に対して、例えば20〜100重量部、好ましくは25〜70重量部程度に調整すると、熱可塑性樹脂と固体可塑剤と粘着付与剤とを含む熱可塑性樹脂組成物(特に水性分散液)をシート状基材に塗工して感熱性粘着剤層を形成する際の塗工安定性(機械安定性)に優れ、連続して長時間塗工しても粘着剤の凝固物などが発生せず、均質な感熱性粘着剤層を有する感熱性記録用シートを安定して製造できる。
【0086】
感熱性粘着剤層には、その特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば、成膜助剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤等)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤(無機粒子、有機粒子等)を添加してもよい。
【0087】
前記成膜助剤としては、例えば、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートなどのグリコールエーテル類及びグリコールエステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチルなどの可塑剤;ベンジルアルコール、トルエン、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶剤などが挙げられる。このような成膜助剤を粘着剤層に添加すると、粘着剤塗工工程において、より短時間の乾燥で均質な粘着剤層を形成でき、生産効率の一層の効率化を図ることができる。前記成膜助剤の添加量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して、1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部程度である。
【0088】
感熱性粘着剤層は、前記熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む熱可塑性樹脂組成物(少なくとも前記2成分を含む混合物)を基材上に塗工することにより形成できる。例えば、前記熱可塑性樹脂が水に分散している水性組成物を塗工したり、前記熱可塑性樹脂等を有機溶剤に溶解させて塗工したり、或いは前記熱可塑性樹脂組成物を加熱溶融して塗工することにより感熱性粘着剤層を形成できる。これらの中でも、熱可塑性樹脂が水に分散している水性組成物を塗工する方法が好ましい。
【0089】
前記水性組成物において、熱可塑性樹脂の分散に用いる分散剤としては、特に限定されるものではなく、従来より公知のアニオン系、ノニオン系分散剤(乳化剤)等の何れをも使用することができる。アニオン系分散剤としては、カルボン酸塩(脂肪族モノカルボン酸塩、N−アシロイルグルタミン酸塩、ポリカルボン酸塩など)、硫酸エステル塩(硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩など)、スルホン酸塩(アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、スルホコハク酸ジアルキルエステルなど)、リン酸エステル塩(リン酸アルキル塩など)等を挙げることができる。これらの中でもカルボン酸アンモニウム塩などが好ましい。ノニオン系分散剤としては、エステル型(グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなど)、エーテル型(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなど)、エステルエーテル型(ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど)、アルカノールアミド型(脂肪酸アルカノールアミドなど)、多価アルコール型のものなどを挙げることができる。これらの分散剤は単独で又は2種以上混合して使用できる。
【0090】
前記水性組成物の調製法も、従来より公知の各種の方法を採用することができる。例えば、上記調製法として、熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を予め混合した後に水に分散させる方法、熱可塑性樹脂エマルジョン又は粘着付与剤エマルジョンに固体可塑剤を分散させた後にこれらのエマルジョンを混合する方法、固体可塑剤を水に分散させておき、この固体可塑剤水分散液に熱可塑性樹脂エマルジョン及び粘着付与剤エマルジョンを混合する方法等が挙げられる。固体可塑剤を上記エマルジョン又は水に分散させる方法としては、溶融させた固体可塑剤を分散させる方法、固体可塑剤を微粉末にしながら分散させる方法及び微粉末にした固体可塑剤を分散させる方法等を例示することができる。
【0091】
固体可塑剤を水に分散させる際に用いる分散剤としては、前記アニオン系分散剤、ノニオン系分散剤等を使用できる。これらの分散剤は単独で又は2種以上混合して使用できる。分散剤の使用量は、分散剤の種類や分散させる固体可塑剤の種類に応じて広い範囲で適当に選択できるが、通常、固体可塑剤100重量部に対して、7〜40重量部程度、好ましくは8〜35重量部であり、特に10〜30重量部程度であるのが好ましい。
【0092】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンは、乳化重合により調製してもよく、また、乳化重合以外の方法により重合体を得た後、必要に応じて添加剤を用いることによりエマルジョン化して調製してもよい。例えば、水溶性の有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコールなどのアルコールなど)の存在下で重合した重合体を含む有機溶液に添加剤(例えば、乳化剤、pH調整剤、酸など)を添加した後、水を添加してエマルジョン化し、その後、有機溶剤を除去することにより熱可塑性樹脂エマルジョンを調製することができる。
【0093】
前記熱可塑性樹脂エマルジョンを調製する際(乳化重合の際、又は重合後のエマルジョン化の際)に用いる乳化剤としては、前記ノニオン系分散剤、アニオン系分散剤などを使用できる。これらの乳化剤(分散剤)は単独で又は2種以上混合して使用できる。特に、ノニオン系乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルなどのエーテル型等)とアニオン系乳化剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸塩などの硫酸エステル型等)とを併用すると、該熱可塑性樹脂エマルジョンを用いて熱可塑性樹脂と固体可塑剤と粘着付与剤とを含む熱可塑性樹脂組成物(水性分散液)を調製し、これを基材に塗工して粘着剤層を形成する際の塗工安定性(機械安定性)が著しく向上し、連続して長時間塗工しても粘着剤の凝固物などが発生せず、均質な粘着剤層を有する感熱性記録用シートを安定して製造できる。この効果は、アクリル系重合体などを乳化剤の存在下で乳化重合させて熱可塑性樹脂エマルジョンを調製する場合などに特に顕著である。ノニオン系乳化剤とアニオン系乳化剤との割合は、広い範囲で選択できるが、好ましくは、前者/後者(固形分重量比)=50/50〜95/5程度である。
【0094】
水性組成物(熱可塑性樹脂組成物)中の固体可塑剤の平均粒子径は、好ましくは0.5〜20μm程度であり、さらに好ましくは1〜15μm程度である。平均粒子径が0.5μmよリ小さいと耐ブロッキング性が低下したり、粉砕に時間を要して生産性が低下するおそれがある。平均粒子径が20μmを超えると塗工面がざらつき、シートの品質が低下するおそれがある。
【0095】
本発明における感熱発色層は、少なくともロイコ染料及び顕色剤から構成される。
【0096】
ロイコ染料としては、感熱材料に慣用のものから適宜選択され、例えば、フタリド系化合物、フルオラン系化合物、フエノチアジン系化合物、スピロピラン系化合物、スルホニルメタン系化合物などが挙げられ、一般に、無色又は淡色の電子供与性染料が用いられる。
【0097】
前記フタリド系化合物としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3,−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−クロルフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−ニトロフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジエチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−メチルフェニル)フタリド、3−(2’−メトキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−4’−クロル−5’−メチルフェニル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−[1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−[1,1,−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−フェニルエチレン−2−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−p−クロロフェニルエチレン−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−メトキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノフェニル−1”−p−クロロフェニル−1”,3”−ブタジエン−4”−イル)ベンゾフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジメチルアミノ−フルオレン−9−スピロ−3’(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,3’−ビス[2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル]−4,5,6,7,−テトラクロロフタリド、3−ビス[1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル]−5,6−ジクロロ−4,7−ジブロモフタリド、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリドなどが挙げられる。
【0098】
前記フルオラン系化合物としては、例えば、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−N−メチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−[N−(3’−トリフルオロメチルフェニル)アミノ]−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)フルオラン、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−メチル−N−イソプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4’−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3,N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’,−ベンゾフルオランなどが挙げられる。
【0099】
上記の他に、例えば、ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルーなどのフェノチアジン系化合物;6’−クロロ−8’−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、6’−ブロモ−3’−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピランなどのスピロピラン系化合物;ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−ナフタレンスルホニルメタン、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−p−トリルスルホニルメタンなどのスルホニルメタン系化合物;2−[3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム]などのラクタム系化合物などの化合物がロイコ染料に含まれる。
【0100】
顕色剤としては、前記ロイコ染料を接触時(または熱時)発色させる電子受容性化合物(酸性物質)からなる感熱発色性材料が用いられ、例えば、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸エステル類、有機酸及びその金属塩、錯体等が挙げられる。
【0101】
顕色剤には、例えば、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4’−sec−ブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−2−2−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエンなどのフェノール性化合物などが含まれる。
【0102】
その他の顕色剤には、例えば、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−2−メチルフェノール)、4,4’−ジフェノールスルホン、4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジフェノールスルホキシド、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)、2,4’−ジフェノールスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジフェノールスルホンなどのチオフェノール性化合物;p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキユ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチルなどの有機酸エステル類;N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素などのチオ尿素誘導体;サリチルアニリド、5−クロロ−サリチルアニリドなどのサリチルアニリド系化合物;2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸などの有機酸;亜鉛、アルミニウム、カルシウム等の金属による前記有機酸の金属塩;チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体などの前記有機酸金属塩の錯体等が含まれる。
【0103】
感熱発色層は、ロイコ染料及び顕色剤を基材上に結合支持させる目的で、結合剤を含んでいてもよい。前記結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョンやスチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックスなどが挙げられる。
【0104】
感熱発色層は、上記の他の構成成分として、感度向上剤を含んでいてもよい。感度向上剤には、例えば種々の熱可塑性物質を使用することができ、具体例としては、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチル、ジフェニルカーボネート、グレヤコールカーボネート、テレフタル酸ジベンジル、テレフタル酸ジメチル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジロキシナフタレン、1,2−ジフェノキシエタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ジフェノキシ−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ジフェニルチオブタン、1,4−ジフェニルチオ−2−ブテン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、p−プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−ベンジルオキシベンジルアルコール、1,3−フェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、1,2−ビス(4−メトキシフェノキシ)プロパン、1,5−ビス(4−メトキシフェノキシ)−3−オキサペンタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ビス(4−メチルベンジル)、シュウ酸ビス(4−クロロベンジル)等が挙げられる。
【0105】
また、感熱発色層には、填料が含まれていてもよい。填料としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、タルク、表面処理されたカルシウムやシリカ等の無機系微粉末;尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、塩化ビニリデン系樹脂などの有機系微粉末などが挙げられる。
【0106】
感熱発色層には、その特性を損なわない範囲で慣用の添加剤、例えば界面活性剤などを添加してもよい。
【0107】
感熱発色層は、前記ロイコ染料及び顕色剤を含む混合液を基材上に塗工することにより形成できる。例えば、これらの構成成分及び水を混合攪拌させた水分散液を塗工することにより感熱発色層を形成できる。
【0108】
本発明における感熱発色層は、加熱により発色し始める温度(最低発色温度)が、例えば80〜150℃、好ましくは90〜120℃、特に好ましくは100〜110℃程度である。
【0109】
本発明の感熱性記録用シートは、基材と感熱性粘着剤層との間、及び/又は基材と感熱発色層との間に断熱層を設けてもよい。前記断熱層によれば、サーマルヘッドの熱エネルギーの効率的活用による発色感度の向上、及び裏面の感熱性粘着剤層の活性化効率の向上により、感熱性粘着剤の活性化温度と感熱発色層の発色開始温度との温度差を大きくすることができる。
【0110】
断熱層には、目的に応じて発泡性、又は非発泡性の断熱層が用いられる。断熱層は、一般に、熱可塑性樹脂からなる微小中空粒子を主成分としている。熱可塑性樹脂としては、上記に例示の熱可塑性樹脂を利用することができ、例えば、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、ブタジエンなどを単量体成分とする単独又は共重合体などが好ましく用いられる。発泡性断熱層に用いる微小中空粒子は、内部に加熱により発泡する発泡剤、例えば、プロパン、ブタンなどの低沸点溶媒を含有しており、加熱により発泡させるのに対し、非発泡性断熱層に用いる微小中空粒子は、内部に空気その他の気体を含有する物で、すでに発砲状態となっている。前記微小中空粒子は、目的に応じた粒子径及び中空度(中空粒子の外径と内径の比)を選択して利用できる。断熱層には、一般に、前記微小中空粒子と共にバインダーが含まれ、必要に応じて顔料が混合される。前記バインダーとしては、従来公知の水溶性高分子及び/又は水溶性高分子エマルジョンが用いられ、前記顔料としては、例えば、尿素ホルムアルデヒド樹脂等の有機顔料やシラス土等の無機顔料等のポーラスな顔料などが利用される。
【0111】
断熱層は、前記微小中空粒子(場合により顔料)及びバインダーと共に、必要に応じて慣用の補助添加成分、例えば、熱可塑性物質、界面活性剤等を併用することができる。熱可塑性物質としては、前記感熱発色層成分と同様のものを用いることができ、界面活性剤には慣用のものを利用できる。
【0112】
断熱層は、例えば、上記の構成成分を水に分散させた水分散液を基材表面及び/又は表面に塗布し、乾燥することによって得られる。なお、発泡性断熱層の形成の際には、塗布乾燥後、塗布面を加熱して微小中空粒子を発泡させる工程を設けてもよく、さらに、加熱発泡後、発泡により表面にできた凹凸を平滑にするため、カレンダー処理などの工程を設けてもよい。
【0113】
断熱層を設けることにより、サーマルヘッドの熱エネルギーを効率的に活用して発色感度を向上させることができる。また、感熱性粘着剤を活性化するために感熱性粘着剤層へ照射した光のエネルギーが熱に変換されて生じる感熱発色層表面の発色かぶりを防止することができる。
【0114】
また、本発明の感熱性記録用シートは、感熱性粘着剤を効率よく活性化して粘着性を発現させる目的で、赤外吸収物質を含んでもよい。本発明において、赤外吸収物質とは、赤外光(波長0.7〜2.5μm)を有効に吸収し、光を熱に変換することが可能な物質を意味しており、感熱性粘着剤層、基材、及び必要に応じて設けられた断熱層のいずれの層の構成成分として添加されていてもよい。
【0115】
赤外吸収物質としては、特に限定されず、例えば、シアニン系色素、アズレニウム系色素、ピリリウム、チオピリリウム系色素、スクワリリウム系色素、トリアリールメタンン系色素、インモニウム、ジインモニウム系色素、チオールニッケル錯塩系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、アントラキノン系色素などの有機近赤外吸収色素、及びトリフェニルフォスフェイト、2−エチルヘキシルジエフェニルフォスフェイト、フルフリルアセテート、ビス(1−チオ−2−フェノレート)ニッケル−テトラブチルアンモニウム、ビス(1−チオ−2−ナフトレート)ニッケル−テトラブチルアンモニウム、1,1−ジエチル−4,4’−キノカーボシアニンアイオダイド、1,1’−ジエチル−6,6’−ジクロロ−4,6’−キノトリカーボシアニンアイオダイド等の有機化合物が挙げられる。
【0116】
上記の他の赤外吸収物質には、カーボンブラックや黒鉛:酸化アルミニウムなどの金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;雲母族、長石族、シリカ鉱物族、粘土鉱物などの珪酸塩鉱物;珪酸亜鉛、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸バリウムなどの珪酸塩化合物;リン酸亜鉛などのリン酸塩化合物;四窒化三ケイ素、窒化ホウ素などの窒素化合物;硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウムなどの硫酸塩化合物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などの炭酸塩化合物;硝酸カリウムなどの硝酸塩化合物などの無機化合物が含まれる。これらの赤外吸収物質は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。中でも、0.7〜2.5μmの波長に一様に強い吸収波長を有し、且つその光を効率よく熱に変換することができることから黒鉛が好ましく用いられる。黒鉛は、その製法及び構造から、鱗状黒鉛、粒状黒鉛、土状晶黒鉛などの天然黒鉛、腎臓黒鉛が存在し、いずれも利用できる。
【0117】
これらの赤外吸収物質は可能な限り微粒子化して使用するのが好ましい。微粒化方法は通常の乾式及び湿式粉砕法や溶解コロイドというような化学的手法の何れであってもよい。特に、分散性の微粒子化された黒鉛を用いた場合には、赤外吸収効果が優れるため熱変換効率が向上し、優れた粘着性を示すことができる。
【0118】
赤外吸収物質の使用量は、それ自身の着色性やサーマル表面への汚染などの点からできるだけ少量であることが好ましく、添加する層の構成材料全体の乾燥重量に対して、例えば0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%程度である。10重量%を超える場合、添加した層の着色がひどく、また印字した際のサーマル表面のPCS低下(地肌部の着色による)、被着体への汚染が起こるだけでなく、多量の赤外光エネルギーを取り込むことに起因するサーマル表面の発色かぶりを引き起こす。0.1重量%未満では、光のエネルギーが熱エネルギーへ変換される効率が低くなるため感熱性粘着剤が活性化されず、粘着性の発現がなされない。
【0119】
基材としては、例えば、紙、プラスチックフィルム、木材、布、不織布、金属等からなるフィルム又はシート状のもの、及びこれらの積層体等が挙げられる。
【0120】
紙としては、例えば、原紙、及び上質紙、グラシン紙、アート紙、コート紙、キャスト紙などの一般紙等が挙げられる。
【0121】
原紙はパルプと填料を主成分として構成される。パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプやGP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプなどの木材パルプ;DIP等の古紙パルプ;バガス、ケナフ、麻、綿等から得られる非木材天然パルプ;ポリエチレン、ポリプロピレン等を原料とした合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種又は2種以上組み合わせて使用できる。填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの白色無機顔料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂などの有機顔料などが挙げられる。これらの填料は、1種又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0122】
原紙は、上記の他に、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、顔料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等を含んでいてもよい。前記サイズ剤としては、例えば、酸性抄紙用ロジンサイズ剤、中性抄紙用変性ロジンサイズ剤、AKD、ASA、カチオンポリマー型サイズ剤等を挙げられる。
【0123】
原紙は、木材パルプ、填料及び必要に応じて添加剤を含む混合液より、酸性、中性、アルカリ性で抄造でき、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種装置を用いて製造できる。この際、該原紙は、金属ロールと合成樹脂ロールからなるカレンダー装置でをオンマシン処理してもよく、処理後に、さらにマシンカレンダー、スーパーカレンダー等でカレンダー処理を施して平坦性をコントロールしてもよい。
【0124】
なお、一般紙としては、上記の原紙に対し、例えば、特定の溶剤等に浸積したり、化学的又は物理的な表面処理を施したり、ラミネートなどにより積層体を形成するなどの各種加工を施すことにより得ることができる。
【0125】
プラスチックフィルムを構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリアルキレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12等)、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、更にこれらの共重合体、ブレンド物、架橋物を用いてもよい。
【0126】
これらのフィルムのうち、通常、ポリオレフィン(特にポリプロピレン)、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートなど)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルなどが使用され、特に、機械的強度、作業性などの点からポリエステルが好ましい。なお、上記のプラスティックフィルムは透明基材としても好ましく用いられる。プラスティックフィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、顔料などの慣用の添加剤を添加してもよい。
【0127】
基材には、感熱性粘着剤層との接着性を向上させるため、コロナ放電処理やアンダーコート処理などの表面処理を施してもよく、さらに、カールを防止するため、基材の裏面などに樹脂層や顔料層などのカール防止層を設けてもよい。基材は、用途に応じて、不透明、半透明、透明のいずれであってもよい。基材の厚みは用途に応じて選択でき、通常、5〜500μm、好ましくは10〜300μm程度である。
【0128】
感熱発色層、感熱性粘着剤層、断熱層を設ける塗工方法としては、例えば、ロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、シルクスクリーンコーターなどを用いた方法などが挙げられる。感熱性粘着剤層はグラビヤ印刷機などを用いた印刷により形成することもできる。感熱性粘着剤層の塗工量は、例えば4〜20g/m2、好ましくは5〜15g/m2程度である。該粘着剤層の厚みが小さすぎると、感熱性記録用シートとして使用する際に十分な接着機能が得られにくくなる。また、逆に粘着剤層の厚みが大きすぎると、粘着性を発現するのに時間がかかりやすくなる。
【0129】
本発明の感熱性記録用シートの記録方法は、使用目的によって熱ペン、熱スタンプ、サーマルヘッド、レーザー加熱等によって行われるが、特に限定されない。
【0130】
感熱性記録用シートの被着体への貼り付け法としては、感熱性記録用シートを加熱圧着できる方法であれば特に限定されず、例えば、加熱手段としてアイロンやドライヤーを用いて手の力により貼り付けたり、適当な貼付機を用いて貼り付けることができる。
【0131】
本発明の感熱性記録シートは、例えば、POSラベルや管理ラベルなどに利用される。
【0132】
【発明の効果】
本発明によれば、特定の固体可塑剤と熱可塑性樹脂を含む感熱性粘着剤層を設けるため、十分な接着強度と高い粘着性及び耐ブロッキング性が発揮され、特にラップなどの柔らかい被着体に対する貼付作業性に優れる。さらに、特定の2種以上の固体可塑剤を用いた場合には、優れた粘着持続性及び透明持続性を発揮することができる。さらに、発色かぶりを抑制することができるため、高品質のラベルとして有効に利用することができる。
【0133】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」を示す。
[感熱発色剤水分散液の調製]
調製例1
3−(N−メチル−N−シクロヘキシル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン10部、10%ポリビニルアルコール水溶液10部、及び水30部からなる組成物1と、ビスフェノールA10部、10%ポリビニルアルコール水溶液、炭酸カルシウム20部、及び水50部からなる組成物2を、それぞれサンドグラインダーを用いて3時間分散させた後、組成物1及び組成物2を重量比1:6の割合で混合撹拌することにより感熱発色剤水分散液を得た。
【0134】
[固体可塑剤水分散液の調製]
なお、平均粒子径は、堀場製作所製、LA−500を用いて測定を行った。また、マーロン機械安定性試験は、25kg、1000回転、15分の条件において行った。
製造例1
ディスパー撹拌機装備の容器に固体可塑剤としてのレゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](融点95℃)100部、アニオン系界面活性剤(アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩型)4.5部及びイオン交換水90部を混合、撹拌し、得られた混合液をビーズミルに送液し、平均粒子径が2.2μmとなるまで粉砕、分散することにより、レゾルシノールビス[ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]の水分散液(固体可塑剤水分散液1)を得た。得られた水分散液について、マーロン機械安定性試験を行ったところ、凝集物の発生率は水分散液に対して0.4%であった。また、3ヶ月間保存後も沈降することなく保存安定性が良好であった。
【0135】
製造例2
ディスパー撹拌機装備の容器に、固体可塑剤としてのビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレート(融点94℃)100部、アニオン系界面活性剤(スルホン酸塩型)3.5部及びイオン交換水90部を混合を混合、撹拌し、得られた混合液をビーズミルに送液し、平均粒子径が2.5μmとなるまで粉砕、分散することにより、ビス(ジメチルシクロヘキシル)フタレートの水分散液(固体可塑剤水分散液2)を得た。得られた水分散液について、マーロン機械安定性試験を行ったところ、凝集物の発生率は水分散液に対して0.02%であった。また、3ヶ月間保存後も沈降することなく保存安定性が良好であった。
【0136】
製造例3
ディスパー撹拌機装備の容器に、固体可塑剤としてのビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレート(融点93℃)100部、アニオン系界面活性剤(スルホン酸塩型)3.5部及びイオン交換水90部を混合、撹拌し、得られた混合液をビーズミルに送液し、平均粒子径が2.5μmとなるまで粉砕、分散することにより、ビス(シス−3,3,5−トリメチルシクロヘキシル)フタレートの水分散液(固体可塑剤水分散液3)を得た。得られた水分散液について、マーロン機械安定性試験を行ったところ、凝集物の発生率は水分散液に対して0.04%であった。また、3ヶ月保存後も沈降することなく保存安定性が良好であった。
【0137】
[感熱性記録用シートの製造]
実施例1
製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1、熱可塑性樹脂としてのスチレン−アクリル酸エステル共重合体(ガラス転移温度Tg20℃)の水系エマルション、粘着付与剤としての重合ロジンエステル樹脂の水系分散液及び水を混合し、均一になるまで撹拌して、固形分濃度50重量%の感熱性粘着剤を得た。構成成分の配合比は、固体可塑剤100重量部に対し、熱可塑性樹脂28重量部、粘着付与剤14重量部であった。
基材としての上質紙(坪量81.4g/m2)に対して、一方の面に調製例1で得られた感熱発色剤水分散液を乾燥後の塗工量が5g/m2となるように、他の面に得られた感熱性粘着剤を乾燥後の塗工量が10g/m2となるように、それぞれバーコーターを用いて塗工し、40℃で2分30秒間乾燥して感熱性記録用シートを得た。
【0138】
実施例2
実施例1において、固体可塑剤として、製造例3で得られた固体可塑剤水分散液3を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0139】
実施例3
実施例1において、固体可塑剤として、製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1と製造例2で得られた固体可塑剤水分散液2を固形分重量比65:35の割合で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0140】
実施例4
実施例1において、固体可塑剤として、製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1と製造例3で得られた固体可塑剤水分散液3を固形分重量比45:55の割合で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0141】
実施例5
実施例1において、固体可塑剤として、製造例1で得られた固体可塑剤水分散液1と製造例3で得られた固体可塑剤水分散液3を固形分重量比45:55の割合で混合したものを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤を得た。さらに、基材として、上質紙の代わりに、両面をコロナ処理済みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm)を用いて感熱性記録用シートを得た。
【0142】
比較例1
実施例1において、固体可塑剤として、ジシクロヘキシルフタレート水分散液(商品名「H−521」、中京油脂製)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0143】
比較例2
実施例5において、固体可塑剤として、ジシクロヘキシルフタレート水分散液(商品名「H−521」、中京油脂製)を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行うことにより、感熱性粘着剤及び感熱性記録用シートを得た。
【0144】
性能評価
実施例及び比較例で得られた感熱性記録用シートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(発色かぶり)
実施例及び比較例で得られた感熱性記録用シートを、熱傾斜試験機(東洋精機製)により100℃で2秒間処理したときの感熱発色層について発色かぶりの有無を目視により観察した。全く発色が見られなかった場合を「○」、感熱発色層に発色が見られた場合を「×」として評価した。
(粘着性)
実施例及び比較例で得られた感熱性記録用シートを、製造直後、及び製造後23℃、50%RHの雰囲気下に3ヶ月間放置したシートについて、熱傾斜試験機(東洋精機製)により100℃で2秒間処理した時の粘着性を指触により評価した。十分な粘着性が発現した場合を「○」、粘着性が大きく減少するか失われた場合を「×」として評価した。
(接着力)
感熱性記録用シートを幅25mm、長さ125mmの大きさに切断した切断片を、100℃で1秒間加熱して粘着性を発現させ、ガラス板[岩城硝子(株)製、Micro Slide Glass 白緑磨]上に置き、ゴムロールで2kgの荷重をかけて1往復させて貼り付けたものを試験片とした。得られた試験片を23℃、50%RHの雰囲気下に放置し、1ヶ月後に、引っ張り試験機(オリエンテック社製、テンシロンUCT−5T)を用いて、引っ張り速度300mm/分、剥離角度180°の条件で接着力を測定した。
(透明持続性)
基材としてPETが用いられている実施例5及び比較例2で得られた感熱性記録用シートを、23℃、50%RHの雰囲気下に放置し、3ヶ月後のラベルの透明性を目視観察した。曇りが全くなく透明性が非常によかった場合を「○」、曇りが生じた場合を「×」として評価した。
(耐ブロッキング性)
感熱性記録用シートを3cm×3cmに切断した切断片4枚を、粘着剤層と感熱発色層が接するように重ね、555gf/cm2の荷重をかけ、50℃の雰囲気下で24時間放置した後、以下の基準で耐ブロッキング性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。
5:剥離抵抗なく剥離できた。
4:剥離時に若干音を発しながら剥離した。
3:剥離時に連続的に音を発しながら剥離した。
2:剥離時に粘着剤層が部分的に凝集破壊した。
1:ブロッキングして粘着剤層が凝集破壊した。
【0145】
【表1】
Claims (4)
- 基材の一方の面に感熱発色層、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ii)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)
で表されるリン化合物、及び(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物からなる群から選択された少なくとも1種の化合物で構成されている感熱性記録用シート。 - 基材の一方の面に感熱発色層、他の面に少なくとも熱可塑性樹脂及び固体可塑剤を含む感熱性粘着剤層が設けられた感熱性記録用シートであって、前記固体可塑剤が、(i)(A)(A1)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が3以上である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコール又は(A2)6員炭素環を少なくとも含む橋かけ環を有するアルコールと(B)多塩基酸との多エステル化合物、(ia)(A’)(A3)脂肪族アルコール若しくは(A4)シクロヘキサノール又は(A5)1若しくは複数のアルキル基で置換され且つ置換基の炭素数の合計が2以下である置換シクロヘキサン環若しくは置換シクロヘキセン環を有するアルコールと(B’)フタル酸類とのフタル酸エステル類、(iia)2価の芳香族炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類、(iib)2価の脂環式炭化水素基部を含むポリオールから誘導されるリン酸エステル類(但し、前記リン酸エステル類(iia)を除く)、(iic)融点55〜100℃のリン化合物、又は下記式(1a)、(1b)、(1c)若しくは(2)
で表されるリン化合物(但し、前記リン酸エステル類(iia)及び(iib)を除く)、(iii)(C)(C1)ベンゼン環がアルキル基で置換されていてもよいハイドロキノン若しくはレゾルシノール又は(C2)ベンゼン環がアルキル基で置換されたカテコールと(D)有機一塩基酸とのジエステル化合物、(iv)ヒンダードフェノール系化合物、及び(v)トリアゾール系化合物の8種の化合物群のうち少なくとも2種の化合物群に含まれる化合物の組み合わせにより構成されている感熱性記録用シート。 - 固体可塑剤の融点が70℃以上である請求項1又は2記載の感熱性記録用シート。
- 基材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、及びポリプロピレンから選択された少なくとも一種の成分により構成される請求項1〜3の何れかの項に記載の感熱性記録用シート。
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