JP2004117890A - 液晶表示素子用シール剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)下記一般式(1)
【化1】
(式中、R1、R2、R3、およびR4は互いに同一または異種の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を示し、R5およびR6は互いに同一または異種の炭素原子数1〜50の1価有機基を示し、かつ、R5およびR6のうち少なくとも一方はアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれる基を一つ以上有する)
で表されるシルフェニレン化合物、
(B)エポキシアクリレートおよび/またはエポキシメタクリレート、
(C)光重合開始剤、
(D)エポキシ樹脂、並びに
(E)潜在性熱硬化剤
を含むことを特徴とする液晶表示素子用シール剤組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紫外線硬化と加熱硬化の二段階の硬化を行う液晶表示素子用シール剤組成物に関するものであり、特に、液晶に対する汚染性が少なく、かつ、ガラス基材に対する接着性が良好であることから、液晶表示素子のシール剤用途に適したものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯機器の小型化、薄型化および軽量化に伴い、これらに使用される液晶表示装置の薄型化も急激に進められてきた。また、同時に表示画面の大型化および低価格化という相反する要求が強くなってきている。従来より、液晶表示素子の製造方法は、TFT側基板にシール剤をスクリーン印刷またはディスペンサー装置による塗布をおこなった後、ビーズ状のスペーサー剤を散布したカラーフィルター側基板を重ね合わせた状態で、加圧下、シール剤を加熱硬化させ、空パネルを製造している。更に、この空パネルをスクライブ装置で切断してから、液晶を減圧下、注入口より注入して液晶表示素子を製造しているため、液晶の注入に時間がかかる、また、基板サイズの大型化および液晶の応答速度を短縮するためにパネルギャップの薄型化を行うことにより、液晶注入時間の占める割合が増加するという技術的問題があり、生産性の低下および液晶表示装置の低コスト化が困難であった。
【0003】
また、従来、液晶表示素子用シール剤組成物としては、未硬化状態で直接液晶と接触することが無いため、スクリーン印刷による印刷性またはディスペンサー装置による塗布性、Bステージ化による溶剤の揮発性、弾性率の制御によるガラス基板の貼り合わせ性、ギャップ形成性、といった作業性、或いは接着性、耐湿性、機械的強度等の硬化物特性に優れた一液の熱硬化型エポキシ樹脂が幅広い分野で使用されている(特開平10−273644号公報、特開2000−347203号公報等参照)。このため、従来の液晶表示素子用シール剤組成物では、作業性を改良するために反応性希釈剤や溶剤といった添加剤を使用することによる制御が可能であった。
【0004】
しかし、近年大型パネルの低コスト化が強く求められるようになり、ODF(One Drop Fill)方式による液晶表示装置の製造方法が検討されるようになり、従来方法では接触することがなかった液晶と未硬化液晶表示素子用シール剤組成物とが接触するようになったため、シール剤組成物による液晶に対する汚染性が重要な問題として浮上してきた。なお、ODF方式とは、TFT側基板にシール剤をスクリーン印刷またはディスペンサー装置による塗布を行った後、液晶をディスペンサー装置にて塗布し、ビーズ状のスペーサー剤を散布したカラーフィルター側基板またはフォトスペーサーを形成したカラーフィルター側基板を一括で貼り合わせる方式である。
【0005】
従来のODF方式のシール剤では、紫外線硬化成分としてエポキシアクリレート、および熱硬化成分として液状エポキシ樹脂を配合しているが、接着性、耐湿性、硬化性、保存性等に問題があった。このため、特開平7−13175号公報には、特に保存安定性を向上させる目的でエポキシアクリレートとともにイソボニル(メタ)メタクリレート等の反応性希釈剤を配合することが記載されている。しかし、前記公報記載のシール剤では、低分子量のモノマーを使用しているため、液晶に対する汚染性の点で問題がある。
【0006】
また、特開平9−5759号公報には、紫外線硬化時にラジカル重合が阻害されないことを目的として、紫外線硬化成分に熱硬化剤のみを併用したシール剤が記載されている。しかし、紫外線硬化が主であるため、耐湿性、接着性等の点で十分な性能を有するものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、従来の液晶表示素子用シール剤組成物に要求されていた作業性、接着性、耐湿性、機械的特性等に加えて、更に液晶に対する非汚染性に優れた液晶表示素子用シール剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、基材に対する濡れ性・接着性に優れ、液晶に対する汚染性が少なく、機械的特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐候性(耐光性)等が大幅に改善された液晶表示素子用シール剤組成物を得るべく、鋭意検討を行った結果、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(A)下記一般式(1)
【0010】
【化2】
(式中、R1、R2、R3、およびR4は互いに同一または異種の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を示し、R5およびR6は互いに同一または異種の炭素原子数1〜50の1価有機基を示し、かつ、R5およびR6のうち少なくとも一方はアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれる基を一つ以上有する)
で表されるシルフェニレン化合物、
(B)エポキシアクリレートおよび/またはエポキシメタクリレート、
(C)光重合開始剤、
(D)エポキシ樹脂、並びに
(E)潜在性熱硬化剤
を含むことを特徴とする液晶表示素子用シール剤組成物を提供するものである。
【0011】
(なお、以下、上記一般式(1)で表わされるシルフェニレン化合物を、単に「シルフェニレン化合物」ということがある。また、以下、「アクリロイル基」または「メタクリロイル基」を区別しない場合は「(メタ)アクリロイル基」と、「アクリレート」または「メタクリレート」を区別しない場合は「(メタ)アクリレート」と、「アクリロイロキシ」または「メタクリロイロキシ」を区別しない場合は「(メタ)アクリロイロキシ」ということがある。)
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
[(A)シルフェニレン化合物]
本発明で使用する(A)成分のシルフェニレン化合物は、下記一般式(1)で示されるものであり、シルフェニレン骨格を中心としてその片端または両端にラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基を含んでいるものであって、本発明を特徴づける重要な成分である。
【0014】
【化3】
(式中、R1、R2、R3、およびR4は互いに同一または異種の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を示し、R5およびR6は互いに同一または異種の炭素原子数1〜50の1価有機基を示し、かつ、R5およびR6のうち少なくとも一方はアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれる基を一つ以上有する)
【0015】
この(A)成分は、下記一般式(2):
【0016】
【化4】
(式中、R1、R2、R3、およびR4は前記と同じ)
で表される1,4−ジクロロシルフェニレン化合物と、下記一般式(3)および一般式(4):
R5−OH (3)
R6−OH (4)
(前記式中、R5およびR6は互いに同一または異種の炭素原子数1〜50の1価有機基を示し、かつ、R5およびR6のうち少なくとも一方はアクリロイル基およびメタクリロイル基からなる群から選ばれる基を一つ以上有する)
で表されるヒドロキシ基含有有機化合物とを反応させることによって合成することができる。
【0017】
上記R1、R2、R3、およびR4としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等が挙げられ、これらの中でも、合成が比較的容易な点からメチル基が好ましい。
【0018】
上記R5、R6、またはR5およびR6が、(メタ)アクリロイル基を有する有機基である場合、該有機基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、好ましくは(メタ)アクリロキシ基を1個以上、好ましくは1〜12個、より好ましくは1〜6個、特に好ましくは1〜3個含有し、(メタ)アクリロキシ基以外のエステル結合、エーテル結合、ケトン結合を1個以上(好ましくは1〜5個、但し、エーテル結合については、好ましくは1〜10個程度)含有してもよい、炭素原子数が4〜50個、好ましくは5〜30個、より好ましくは5〜20個程度の、飽和または不飽和の脂肪族または芳香族1価炭化水素基等が挙げられる。
【0019】
上記R5、R6、またはR5およびR6が、(メタ)アクリロイル基を有する有機基である場合、上記一般式(3)および一般式(4)で表されるヒドロキシ基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物としては、具体的には、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリン−1,3−ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−3−(4−メチルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン・2−((メタ)アクリロイロキシ)エチルアルコールエステル、ジ(ε−カプロラクトン)・2−((メタ)アクリロイロキシ)エチルアルコールエステル、ペンタエリスリトールジジ(メタ)アクリレートモノステアレート、3−メチル−4−(メタ)アクリロイロキシフェノール、3−(パーフルオロ3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ8−メチルデシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−((メタ)アクリロイロキシ)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(2−ヒドロキシプロピル)[2−((メタ)アクリロイロキシ)エチル]フタレート、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)シクロへキサンモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル−3−((メタ)アクリロイロキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
また、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6−ヘキサンジオール等などの(メタ)アクリロイル基を含有するジオール類、更に(メタ)アクリロイル基を含有するトリオール類等を用いて、上記一般式(2)で表わされる1,4−ビス(ジクロロメチルシリル)ベンゼンと同様に反応させることにより、シルフェニレン骨格と(メタ)アクリロイル基を含有する基とを有する化合物を得ることも可能であり、その場合は、分子量の異なる複数の化合物が得られることとなる。
【0021】
上記R5またはR6が、(メタ)アクリロイル基を有しない有機基である場合の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基等の非置換または置換の1価炭化水素基等が挙げられる。
【0022】
上記R5またはR6が、(メタ)アクリロイル基を有しない有機基である場合、上記一般式(3)または一般式(4)で表されるヒドロキシ基含有化合物としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、sec−ペンチルアルコール、1−エチル−1−プロピルアルコール、2−メチル−1−ブチルアルコール、3−メチル−1−ブチルアルコール、2−メチル−2−ブチルアルコール、3−メチル−2−ブチルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロピルアルコール、n−ヘキシルアルコール、4−メチル−2−ペンチルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
【0023】
上記一般式(2)で表わされる化合物と上記一般式(3)および(4)で表わされる化合物とを反応させて、上記一般式(1)で表わされる(A)成分のシルフェニレン化合物を合成する場合には、上記一般式(2)で表わされる化合物1モルに対して、上記一般式(3)および(4)で表わされる化合物を、合計1.5〜2.5モル、特に1.8〜2.2モル使用して行うことが好ましい。
【0024】
上記反応は、通常、例えば、THF、トルエン、アセトン等の有機溶媒中で行われることが好ましい。また、上記反応は、脱HCl反応であることから、アミン類を共存させて、生じるHClをアンモニウム塩としてトラップすることが好ましい。前記アミン類としては、公知のアミンを用いることができ、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、モルホリン等が挙げられる。アミン類の使用量は、上記一般式(2)で表わされるシルフェニレン化合物1モルに対し、通常、2.0〜2.4モル程度である。上記反応は、通常、遮光条件下に、室温(例えば、0〜45℃、好ましくは5〜40℃)で行えばよい。しかし、上記反応は発熱反応であることから、(メタ)アクリロイル基の重合反応を防止するため、反応温度が過度に上昇しないように制御する必要がある。
【0025】
上記反応により得られた本(A)成分のシルフェニレン化合物は、(メタ)アクリロイル基を含有するものであるので、光、例えば紫外線照射、および加熱により重合させることができる。
【0026】
また、本(A)成分のシルフェニレン化合物は、シロキサン結合(即ち、Si−O結合)とともに、ケイ素原子−炭素原子結合(即ち、Si−C結合)を有していることから、本(A)成分の配合により、本発明のシール剤組成物は、シロキサン結合に基づく耐熱性、耐候性および表面張力低減との効果を維持したまま、更に、従来の液晶表示素子用シール剤の問題点であった透湿性、酸素透過性等を低減させることができる。また、本発明のシール剤組成物は、ガラス基材に対する濡れ性および接着性を向上させることができるものである。
【0027】
また、本(A)成分のシルフェニレン化合物は、(B)成分のエポキシ(メタ)アクリレートおよび(C)成分のエポキシ樹脂に対する相溶性および希釈効果が大きいので、本発明のシール剤組成物の調製上の作業性については何ら問題とはならない。そして、一般にシリコーン樹脂等を用いる場合に問題とされる低分子シロキサンを生じるものではないことから、本(A)成分のシルフェニレン化合物の配合は、液晶に対する汚染性についても何ら問題とはならない。
【0028】
本(A)成分のシルフェニレン化合物の配合量は、重合性(メタ)アクリロイル基を含有する、(A)成分と(B)成分の合計量に対して、好ましくは50重量%以下、より好ましくは5重量%以上35重量%以下添加することで、基材に対する濡れ性・接着性が良好で、液晶に対する汚染性が少なく、機械的特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐候性(耐光性)が大幅に改善された液晶表示素子用シール剤組成物を得ることができる。本(A)成分の前記配合量が少なすぎると、(A)成分の配合効果が乏しく、一方、逆に多すぎると希釈効果、表面張力の低下によるシール剤粘度の低下、および形状保持力の低下による決壊の発生という問題が生じるので、あまり好ましくない。
本(A)成分の具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
【0029】
【化5】
【0030】
【化6】
【0031】
【化7】
【0032】
【化8】
【0033】
【化9】
【0034】
【化10】
【0035】
【化11】
なお、これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0036】
[(B)エポキシ(メタ)アクリレート]
(B)成分のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、従来から公知のものを全て用いることができる。例えば、該(B)成分は、1分子あたり2個以上のエポキシ基を有する、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等とアクリル酸および/またはメタクリル酸とを付加反応させることにより得られるものである。なお、エポキシ環と前記アクリル酸および/またはメタクリル酸との付加反応の結果、(B)成分は、(メタ)アクリロイロキシ基とヒドロキシ基とを含有することとなる。また、この(B)成分は1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0037】
[(C)光重合開始剤]
(C)成分の光重合開始剤としては、上記(B)成分の光重合用に用いられている、従来から公知のものを全て用いることができる。
該(C)成分の具体例としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、1−{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−メチル−2−モルホリノプロパン−1−オン、1−(4−モルホリノフェニル)−2−ベンジル−2−ジメチルアミノブタン−1−オン、オリゴ[1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン](商品名:ESACURE KIP−150、LAMBERTI S.p.A 社製)、KR−04(商品名、香川ケミカル(株)製)等のフェニルケトン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド等のベンゾイルホスフィンオキサイド類;等を挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0038】
上記例示の中でも、特に、液晶表示素子用としては、光硬化時にVOC(揮発性有機化合物)が少ない点から、ESACURE KIP−150(同上)、KR−04(同上)等が好適である。
本(C)成分の配合量は、上記(A)成分と(B)成分の合計量100重量部あたり、通常、1〜6重量部、特に3〜4重量部の範囲で添加することが好ましい。添加量が少なすぎると光重合性・硬化性が低下する場合があり、逆に多すぎるとシール剤組成物の保存性が低下する傾向となる場合がある。
【0039】
[(D)エポキシ樹脂]
(D)成分のエポキシ樹脂としては、一分子あたり2個以上のエポキシ基を持ったものであればよく、従来から公知のものを全て使用することができる。その具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0040】
これらの中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂およびナフタレン型エポキシ樹脂が比較的低粘度であり、耐熱性および耐湿性に優れていることから好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂には、その合成過程でエピクロルヒドリンを使用することから、このエピクロルヒドリン由来の塩素が少量含まれるが、この全塩素含有量は1500ppm以下、望ましくは1000 ppm以下とすることが好ましい。また、エポキシ樹脂に同重量のイオン交換水を加えて、100℃×20時間の条件で抽出処理を行った後の水中塩素濃度が10 ppm以下であることが好ましい。全塩素含有量または抽出水塩素が多すぎると、液晶セル用透明電極の信頼性、特に耐湿性に悪影響を与える。
【0042】
この(D)成分の配合量は、上記(A)成分および(B)成分の合計量100重量部に対して、通常、20〜60重量部、好ましくは30〜50重量部の範囲とするのがよい。(D)成分の配合量が多すぎると紫外線照射による硬化を行っても、シール剤組成物内部の硬化が不十分となり、ガラス基材に対する接着力が不十分となるという問題があり、一方、逆に少なすぎると紫外線照射による硬化性は良好となるが、最終的な熱硬化を行った後での硬化物特性が低下していまうという問題がある。
【0043】
[(E)潜在性熱硬化剤]
本発明の(E)成分の潜在性熱硬化剤は、室温では固体であり、加熱硬化時に液化して上記(D)成分のエポキシ樹脂の硬化剤として作用するものである。
【0044】
この(E)成分としては、例えば、ジシアンジアミド、アミキュアPN−23(商品名、味の素(株)製)、アミキュアPN−H(同)、アミキュアPN−31(同)、アミキュアPN−D(同)、アミキュアMY−24(同)、アミキュアMY−H(同)、アミキュアMY−D(同)等のアミンアダクト系化合物;シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、アジピン酸ジホドラジド、クエン酸トリヒドラジド、キュアVDH(商品名、味の素(株)製)、アミキュアVDH−J(同)、アミキュアUDH(同)の有機酸ヒドラジド化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。
【0045】
また、上記潜在性熱硬化剤は室温で固形のものであることから、その使用に際しては、粉砕および分級したものを使用し、更には三本ロール等で分散混練して最大粒径が3μm以上のものが無いようにするのがよい。
【0046】
なお、これら潜在性熱硬化剤は、保存安定性を良くするために、マイクロカプセル化するか、或いはシランカップリング剤等で予め表面処理等を行うのがよい。
【0047】
この(E)成分の配合量は、上記(D)成分に対して、エポキシ当量比で0.7〜0.9の範囲とすることが好ましい。前記配合量が多すぎると未反応の硬化剤が残り、耐湿性に影響を与える。また、逆に少なすぎると未反応・未硬化のエポキシ樹脂が残り、硬化物特性の低下を引き起こす場合がある。
【0048】
[その他の成分]
上記(A)〜(E)成分の他に、本発明の液晶表示素子用シール剤組成物に、必要に応じて、下記成分を添加・配合することは任意である。
【0049】
<硬化促進剤>
上記(E)成分の潜在性熱硬化剤に加えて、更に、室温での保存安定性が良好であり、100〜120℃に加熱した際にエポキシ樹脂と潜在性熱硬化剤との反応を促進できる硬化促進剤を配合することができる。
前記硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−エチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾールのトリメリット酸付加物、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾールのトリメリット酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール誘導体;ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部にキュアダクトL−07N(商品名、四国化成工業(株)製)11重量部およびキュアダクトP−0505(同)20重量部をアダクトした化合物;脂肪族ポリアミンの誘導体であるフジキュアFXR−1020(商品名、富士化成工業(株)製)、FXR−1030(同)、FXR−1080(同);イミダゾール化合物をエポキシ樹脂でマイクロカプセル化したノバキュアLSA−H0116(商品名、旭化成工業(株)製)、LSA−H0112(同)、LSA−H0202(同)、LSA−0117(同)、HXA−3792(同);等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。
【0050】
また、上記硬化促進剤が室温で固形のものである場合、その使用に際しては、粉砕および分級したものを使用し、更には三本ロール等で分散混練して最大粒径が3μm以上のものが無いようにするのがよい。
【0051】
なお、これらの硬化促進剤は、(D)成分のエポキシ樹脂および(E)成分の潜在性硬化剤の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部、特に0.5〜6重量部の範囲で添加することが好ましい。前記添加量が少なすぎると硬化性が低下する場合があり、逆に多すぎると保存性が低下する傾向となる場合がある。
【0052】
<無機充填材・カップリング剤>
本発明のシール剤組成物には、膨張係数を小さくするために、従来より公知の各種無機質充填材を添加することができる。
この無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカチタニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート、タルク、マイカ等が挙げられ、これらは1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。また、これらの中でもシリカ、アルミナおよびタルクを単独または2種類以上併用して用いることが好ましい。
【0053】
用いられる無機充填材は、最大粒径3μm以上の含有率が1重量%以下、かつ平均粒子径が0.5〜2μmのものがよい。ここで、最大粒径が3μmを越えたものが1重量%を越えると、ガラス基板のギャップ出し精度が悪くなり、貼り合わせが困難になる。また、平均粒子径が0.5μm未満であると、粘度が高くなり、ニードルからの塗布量が低下し、塗布スピードが遅くなり、生産性が悪くなるため、実用的でない。
【0054】
本発明のシール剤組成物中に占める無機充填材の含有率は、10〜40重量%、好ましくは15〜25重量%の範囲とするのがよい。前記含有率が10重量%未満では、膨張係数が大きいため、硬化後に歪みを生じさせる傾向がある。40重量%を超えると組成物の粘度が高くなるため、使用時に後添加するスペーサー剤の分散性およびガラス基板のギャップ出し精度が悪くなる。
【0055】
上記無機充填材は、予めシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理したものを使用することが好ましい。より好ましくは、使用するエポキシ樹脂とカップリング剤で表面処理した充填材とを予め減圧下で加熱・混練処理を行うことである。これにより、充填材表面とエポキシ樹脂の界面がよく濡れた状態とすることができ、耐湿信頼性が格段に向上する。
【0056】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤;チタン系カップリング剤;アルミニウム系カップリング剤;等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組合わせても使用することができる。これらの中でも、シラン系カップリング剤を使用することがこ好ましく、耐湿信頼性に優れ、吸湿劣化後の接着強度の低下が少ない液晶表示素子用シール剤組成物を得ることができる。
上記カップリング剤を用いる場合、その使用量は、上記無機充填材100重量部に対して0.5〜2.0重量部程度である。
【0057】
<その他>
本発明の液晶表示素子用シール剤組成物には、応力を低下させる目的でシリコーンパウダー、シリコーンゴム、シリコーンオイルや液状のポリブタジエンゴム、アクリルコアシェル樹脂などの熱可塑性樹脂を配合してもよい。
さらに必要に応じ、重合禁止剤、消泡剤、レベリング剤、イオントラップ剤、その他の添加剤を配合することができる。
【0058】
[液晶表示素子用シール剤組成物の調製]
本発明の液晶表示素子用シール剤組成物は、(D)成分のエポキシ樹脂と上記各成分を、同時にまたは別々に必要により加熱処理を加えながら攪拌、混合および分散させることにより得ることができる。これらの混合物の混合、攪拌、分散等に用いられる装置については、特に限定されないが、攪拌および加熱装置を備えたライカイ機、三本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、これらの装置を適宜組み合わせてもよい。
【0059】
[液晶表示素子用シール剤組成物の適用]
本発明の液晶表示素子用シール剤組成物に、スペーサーとしてガラスファイバー(直径5μmの短繊維)が1重量%になるように配合し、真空攪拌脱泡装置で分散、脱泡を行いシリンジに分取する。次に、ディスペンサー装置を用い、ガラス基板上に線幅が0.3mm、高さが0.1mmのパターンを描画した後、液晶(メルク製:MLC−6267−000)をディスペンサー装置にて所定量、点塗布する。次に、このガラス基板を減圧下におき(13.3Pa)、ガラス基板を重ね合せる。その後、荷重が100g/cm2になるように設定し、UV照射して(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2)仮止め(仮硬化)を行った後、大気圧中にガラス基板を戻す。次いで、ホットプレスにて120℃×60分間の条件でシール剤の加熱硬化および液晶の再配向を行い、液晶パネルが作製される。
得られた液晶パネルについて、偏光フィルムおよびバックライトを取り付け、点燈表示を行って、シール剤周辺の配向ムラの有無の確認、信頼性評価を行って、問題がないか、確認することができる。
【0060】
【実施例】
以下、合成例、実施例および比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されたものではない。なお、以下の例において部、%はそれぞれ重量部、重量%を意味する。また、表1および表2中の数は重量部を意味する。
【0061】
[合成例1]
1,4−ビス(ジメチルクロロシリル)ベンゼン0.20モルを、THF250mlに溶解し撹拌しておき(溶液▲1▼)、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.40モルおよびトリエチルアミン0.44モルをTHF150mlに撹拌混合したもの(溶液▲2▼)を溶液▲1▼に室温で添加した。反応溶液は、(C2H5)3NH+Cl−の析出により白濁し、溶液温度は20℃から40℃まで上昇した。室温雰囲気中で2時間撹拌した後、吸引濾過にてアンモニウム塩を取除き、濾過液をロータリーエバポレーターにて、留分が出なくなるまで加熱減圧処理をして(50℃、1mmHg)、下記構造式で示されるシルフェニレン化合物を得た。これを、「シルフェニレン化合物A」とする。
【0062】
【化12】
【0063】
[合成例2]
2−ヒドロキシエチルアクリレートを、2−ヒドロキシエチルメタクリレートに変更すること以外は、合成例1と同様な方法により下記構造式で示されるシルフェニレン化合物を得た。これを、「シルフェニレン化合物B」とする。
【0064】
【化13】
【0065】
[合成例3]
2−ヒドロキシエチルアクリレートを、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートに変更すること以外は、合成例1と同様な方法により下記構造式で示されるシルフェニレン化合物を得た。これを、「シルフェニレン化合物C」とする。
【0066】
【化14】
【0067】
[実施例1〜7]
(A)成分として、上記シルフェニレン化合物A、シルフェニレン化合物Bまたはシルフェニレン化合物Cを用い、(B)成分として、ビスフェノールA型エポキシアクリレート:エポキシエステル3000M(商品名、共栄化学(株)製)を用い、(C)成分の光重合開始剤として、ESACURE KIP−150(商品名、LAMBERTI S.p.A 社製)またはKR−04(商品名、香川ケミカル(株)製)を用い、(D)成分として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂:RE−310S(商品名、日本化薬(株)製)およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂:RE−305S(商品名、日本化薬(株)製)を用い、(E)成分の潜在性熱硬化剤として、ヒドラジド化合物:アミキュアVDH−J(商品名、味の素(株)製)を用い、更に、無機充填材として、溶融球状シリカ:SE2030(商品名、アドマテックス社製)およびヒュームドシリカ:MU−SIL130(商品名、信越化学工業(株)製)、シランカップリング剤として、KBM−403(商品名、信越化学工業(株)製)、熱可塑性樹脂として、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体であるCTBN:HYCAR CT 1300×13(商品名、宇部興産(株)製)、重合禁止剤として、BHT(2,6−ジtert−ブチル−p−クレゾール)を用いて、表1および表2に示した組成及び量(重量部)で配合し、プラネタリーミキサーで均一に混練し、次に三本ロールで固形原料が3μm以下になるまで十分混合分散し、得られた混合物を真空脱泡処理することにより実施例1〜7の本発明の液晶表示素子用シール剤組成物を得た。
【0068】
[比較例1]
(A)成分のシルフェニレン化合物を配合せず、これに代えてシクロペンタジエン系ジアクリレート:ライトアクリレート DCP−A(商品名、共栄化学(株)製)を用いて、各成分を表2に示した組成及び量(重量部)で配合して実施例1〜7と同様にして組成物を得た。
【0069】
[比較例2]
(A)成分のシルフェニレン化合物を配合せず、これに代えてライトアクリレート(同上)および1,6−ヘキサンジオール系ジアクリレート:カヤラッド R−167(商品名、日本化薬(株)製)を用い、かつ、熱可塑性樹脂を使用せず、各成分を表2に示した組成及び量(重量部)で配合して実施例1〜7と同様にして組成物を得た。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
[評価手法]
上記で得られた各液晶表示素子用シール剤組成物について、下記の諸試験を行って、諸特性を評価し、その結果を表3に示した。
なお、各組成物の硬化条件は、先ず、紫外線照射による光重合硬化(UV照射光量:2.5J/cm2、UV照度:100mW/cm2)、次いで、加熱硬化(120℃×1時間)とした。
【0073】
(a)粘度(組成物)
各組成物について、JIS Z 8803に準じ、測定温度:25℃、E型粘度計を用いて2分後の値を測定した。
【0074】
(b)チキソ比(組成物)
上記(a)の粘度の測定においてローシェアとハイシェアの比が10倍になるようにして測定した両者の粘度の比の値を示した。
【0075】
(c)保存安定性(組成物)
各組成物100部を褐色ポリエチレン製容器に入れ、密封した後、初期の25℃ E型粘度値を100とし、−20℃×30日経過後の粘度値の変化率に基づいて、次のとおりに評価した。
○:初期粘度に対する変化率が10%未満であり、保存安定性は良好。
△:初期粘度に対する変化率が10〜40%であり、保存安定性にやや問題がある。
×:初期粘度に対する変化率が40%を越えており、保存安定性が悪い。
【0076】
(d)ポットライフ(組成物)
褐色ポリエチレン製容器に密封保存された各組成物を、冷凍保管庫(−20℃)から取出し、3時間かけて解凍し組成物温度を25℃とした。その時点の25℃E型粘度値を100とし、これに対する24時間放置後の粘度変化率に基づいて、ポットライフ(可使時間)を次のとおりに評価した。
○:初期粘度に対する変化率が20%未満であり、ポットライフは良好かつ十分である。
△:初期粘度に対する変化率が20〜40%であり、ポットライフにやや問題がある。
×:初期粘度に対する変化率が40%を越えており、ポットライフが短く不十分である。
【0077】
(e)イオン濃度(組成物)
各組成物20部、トルエン40部およびイオン交換水100部を、200mlポリエチレン容器に採取し、室温下、1時間攪拌接触をさせた後、水相を分取し、イオン濃度を導電率計により測定した。なお、表3記載の数値の評価は次のとおりである。
○:伝導度が2mS/m以下であり、汚染性について良好である。
△:伝導度が2mS/mを越え10mS/m以下であり、汚染性にやや問題がある。
×:伝導度が10mS/mを越えており、汚染性について不良である。
【0078】
(f)揮発分の測定(組成物)
各組成物3gを直径50mmのアルミシャーレに採取し、150℃熱風循環式恒温槽に1時間入れた後、室温に戻し、重量減少率(%)を測定した。
【0079】
(g)ガラス転移温度(Tg)(硬化物)
各組成物を平滑な離型フィルム上に、厚さ100μmに塗布し、上記硬化条件で硬化させて硬化フィルムを得た。
この硬化フィルムを4mm×15mmのサイズに切り出し、試験片とした。室温から200℃まで5℃/分の一定昇温速度条件下にTMA(熱機械的分析装置)の測定を行い、歪み量変曲点の温度をその硬化物のガラス転移温度(Tg:℃)とした。
【0080】
(h)透湿度(硬化物)
上記硬化フィルムを100mm角のサイズに切り出し、試験片とした。JIS K7129に準じて、透湿度試験を実施し、40℃×24時間の条件下で透湿した膜厚100μm当たりの水蒸気量(単位:g/m2・24hrs)を求めた。
【0081】
(i)吸水率(硬化物)
上記硬化フィルムを100mm角のサイズに切り出し、試験片とした。該試験片を室温下、24時間水中に浸漬後の重量増加量を求め、その値を元の重量で割った値に100を乗じた値を吸水率とした。即ち、吸水率(%)=(室温×24時間浸漬後の重量増加量/浸漬前の質量)×100
【0082】
(j)液晶処理試料の作成
3ml透明バイアル瓶に、上記各組成物0.5gを入れ、その後液晶(メルク製:MLC−6267−000)2.0gを入れる。次に、以下の処理を施し、試料溶液を調整した。なお、同時に上記組成物を入れないで同様の処理を施したものを、ブランクとした。
1)バイアル瓶を25℃で2時間、24時間放置する。
2)バイアル瓶に紫外線照射装置(ウシオ電機製:スポットキュア装置)でUV照射(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2)する。
3)バイアル瓶を120℃熱風循環式恒温槽に1時間入れた後、室温に戻す。
4)上記1)〜3)の処理をおこなった処理液晶をサンプル瓶にデカンテーションする。
【0083】
(k)相転移温度(TNI)の測定(液晶処理試料)
DSC測定装置(メトラー・トレド製:DSC821e)を使い、液晶のTNIを測定する。上記(j)で調整した処理液晶を、40μlアルミパンに10mg採取し、昇温速度:10℃/分で測定し、ピーク温度を測定し、次のとおり評価した。
○:ブランク値に対する低温側への変化量が0.5℃未満であり、良好。
△:ブランク値に対する低温側への変化量が0.5〜1℃であり、やや問題がある。
×:ブランク値に対する低温側への変化量が1℃を越えており、液晶への汚染が激しいので、不良である。
【0084】
(l)比抵抗値の測定(液晶処理試料)
比抵抗測定装置(アドバンテスト製:エレクトロ・メーターR8340A、液体抵抗試料箱:R12707)を使い、液晶の25℃での比抵抗値を測定する。液体電極に、上記処理液晶およびブランク液晶を1ml採取し、0.5Vの電圧をかけ、1分後の液晶の比抵抗値(Ω・cm)を測定し、次のとおり評価した。
○:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の低下が0.5オーダー未満であり、汚染性については問題がない。
△:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の低下が0.5〜1オーダーであり、汚染性にやや問題がある。
×:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の低下が1オーダーを越えており、汚染性に問題がある。
【0085】
(m)接着試験(硬化物)
上記各実施例・比較例で得られた液晶表示素子用シール剤組成物100部に、スペーサーとしてガラスファイバー(直径5μmの短繊維)が1重量%になるように配合し、真空攪拌脱泡装置で分散、脱泡を行いシリンジに分取した。
【0086】
次に、清浄なガラス基板(コーニング社製:#1737、サイズ20mm角、厚さ0.7mm)の中心部に、前記スペーサー剤を分散させた液晶表示素子用シール剤組成物を塗布し、その基板に同サイズのガラス基板を重ね合わせて、厚み5μm、直径3mmになるように荷重をかけた。その後、UV照射し(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2)、次いで、120℃×1時間の条件で熱硬化させた。得られたガラス面に支持基材を張り付け、接着用試験片を作成した。得られた試験片を、島津製作所(株)製オートグラフ装置を用いて、引張りスピード25mm/分にて単位面積当たりの垂直剥離強度(MPa)を求めた。
【0087】
(n)シール性試験
上記実施例・比較例で得られた液晶表示素子用シール剤組成物100部にスペーサーとしてガラスファイバー(直径5μmの短繊維)が1重量%になるように配合し、真空攪拌脱泡装置で分散、脱泡を行いシリンジに分取した。ディスペンサー装置を使い、2cm角、線幅が0.3mm、高さが0.1mmのパターンを描画した後、液晶(メルク製:MLC−6267−000)を滴下し、ガラス基板を重ね合せた。その後。荷重が100g/cm2になるように設定し、10分、1時間および24時間の各放置時間後にUV照射し(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2)、次いで、120℃×1時間の条件で熱硬化させて、評価用試験片を作成した。
【0088】
(i)形状保持性
上記各放置時間後の評価用試験片について、シール剤と液晶との界面を拡大鏡で観察し、シール剤の決壊、液晶のシール剤への侵入の有無について測定し、次のとおり評価した。
○:シール剤の液晶への進入およびシール剤の決壊が認められず、形状安定性性は良好である。
△:シール剤の決壊は認められないが、シール剤の液晶への進入が僅かにあり、形状安定性性にやや問題がある。
×:シール剤の決壊は認められ、かつシール剤の液晶への進入が多くあり、形状安定性性に問題がある。
【0089】
(ii)ブリード性
上記各放置時間後の評価用試験片について、シール剤と液晶界面を拡大鏡で観察し、液晶側へのシール剤樹脂の滲み出しの有無について測定した。
○:液晶側へのシール剤樹脂の滲み出しがなく、ブリード性は良好である。
△:液晶側へのシール剤樹脂の滲み出しが僅かにあり、ブリード性にやや問題がある。
×:液晶側へのシール剤樹脂の滲み出しが多くあり、ブリード性に問題がある。
【0090】
【表3】
【0091】
【発明の効果】
本発明の液晶表示素子用シール剤組成物は、液晶に対する非汚染性、ガラス基材に対する接着性、作業性、耐湿性、および機械的特性等に優れており、ODF(One Drop Fill)方式による液晶表示装置の製造方法において好適に使用が可能である。
Claims (2)
- 前記(A)成分および(B)成分の合計量に対する、前記(A)成分の含有量が50重量%以下である請求項1記載の液晶表示素子用シール剤組成物。
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