JP2004115569A - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる成形体に関するものである。さらに詳細には、剛性、引張り伸び特性および耐衝撃性のバランスに優れ、さらに、長期使用における耐熱老化性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂は、剛性や耐衝撃性等の機械的特性に優れる材料であることから、従来から、自動車内外装材、家電用材料、各種容器、日用雑貨等の広範な用途に利用されている。ポリプロピレン系樹脂の機械的特性を改良する方法の一つとして、造核剤を配合することが知られている。
【0003】
例えば、プラスチック・データブック(工業調査会出版、9.7項、造核剤、第978〜980頁)に造核剤が記載されており、例えば、タルク等の無機系造核剤、カルボン酸の金属塩やリン酸エステル系金属塩等の金属塩タイプの造核剤、ジベンジリデンソルビトール類およびその誘導体タイプの造核剤等が記載されており、さらに、これらの造核剤を配合したポリプロピレンの射出成形体も記載されている。
【0004】
また、特開昭63−125551号公報には、成型機や金型の腐食問題がなく、剛性、透明性が改良されたプロピレン重合体組成物として、重合触媒残渣としてMgおよびハロゲンを含むプロピレン重合体100重量部、p−t−ブチル安息香酸のアルミニウム塩0.03〜0.5重量部、高級脂肪族カルボン酸の周期律表第一族金属又は亜鉛の塩、およびハイドロタルサイト類より選ばれた少なくとも一種0.01〜0.5重量部からなるプロピレン重合体組成物が記載されている。
【0005】
しかし、上記公知文献等に記載されている造核剤が配合されたポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体は、引張り伸び特性が低下することがあり、剛性、引張り伸び特性および耐衝撃性のバランスについて、改良が望まれていた。また、ポリプロピレン系樹脂組成物は、融点以下の高温環境下で長期間使用されることがあるので、高温環境下での長期使用において機械的特性の低下が少ない材料、すなわち、長期使用における耐熱老化性に優れる材料が求められていた。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−125551号公報
【特許文献2】
特公昭39−1809号公報
【特許文献3】
特公昭39−14062号公報
【特許文献4】
特公昭40−1652号公報
【特許文献5】
特開平10−273494号公報
【特許文献6】
特開平11−222493号公報
【非特許文献1】
プラスチック・データブック(工業調査会出版、9.7項、造核剤、第978〜980頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、剛性、引張り伸び特性および耐衝撃性のバランスに優れ、さらに、長期使用における耐熱老化性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)0.001〜1重量部、下記一般式(I)で表される亜リン酸エステル類(C)0.01〜1重量部を含有するポリプロピレン系樹脂組成物に係るものである。
(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは硫黄原子もしくは−CHR6−基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。)を表し、nは0または1である。Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−CO(R7)m−基(R7は炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素原子との結合部位であることを示し、mは0または1である。)を表す。Y、Zは、そのいずれかの一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
また、本発明は、上記のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体に係るものである。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分(以下、重合体成分(I)と称する。)と、プロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィンの共重合体成分(以下、共重合体成分(II)と称する。)からなるポリプロピレン系共重合体等が挙げられる。これらのポリプロピレン系樹脂は単独で使用しても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0010】
α−オレフィンとしては、通常、炭素数4〜12のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0011】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。
【0012】
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体等が挙げられる。
【0013】
前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体の重合体成分(I)における主にプロピレンからなる共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分等が挙げられ、プロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィンの共重合体成分(前記共重合体成分(II))としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
前記共重合体成分(II)におけるエチレンおよび/またはα−オレフィンの含有量は、通常、10〜70重量%である。
【0014】
そして、前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
【0015】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)として、好ましくは、プロピレン単独重合体、または、前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体である。より好ましくは、前記共重合体成分(II)がプロピレンとエチレンおよび/またはα−オレフィンの共重合体成分であるポリプロピレン系共重合体である。
【0016】
さらに好ましくは、前記共重合体成分(II)がプロピレンとエチレンの共重合体成分であり、その共重合体成分の割合がポリプロピレン系共重合体全体に対して5〜40重量%であり、そして、その共重合体成分中のエチレン含有量が10〜70重量%であるポリプロピレン系共重合体である。
【0017】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の結晶性としては、剛性の観点から結晶性が高いものが好ましい。結晶性が高いポリプロピレン系樹脂としては、結晶性の指標として用いられるA.Zambelliらによって発表された方法(Macromolecules 第6巻、第925頁、1973年)に従って求められるポリプロピレン分子中のペンタッド単位でプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率(アイソタクチックペンダット分率と称し、[mmmm]で表す。)が0.95以上のものが好ましい。
【0018】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法による製造方法が挙げられる。重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒、チーグラー・ナッタ型触媒、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系等が挙げられる。
【0019】
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法、またはそれらを連続的に行う液相−気相重合法等が挙げられ、これらの重合方法は、回分式であってもよく、連続式であってもよい。また、ポリプロピレン系樹脂(A)を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。特に、前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなるポリプロピレン系共重合体の製造方法として、好ましくは、前記重合体成分(I)を製造する段階と前記共重合体成分(II)を製造する段階からなる少なくとも二段階の多段階の製造方法が挙げられる。
【0020】
また、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の製造において、ポリプロピレン系樹脂(A)中に含まれる残留溶媒や、製造時に副生する超低分子量のオリゴマー等を除去するために、必要に応じてポリプロピレン系樹脂(A)をその樹脂(A)が融解する温度以下の温度で乾燥してもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55−75410号公報、特許第2565753号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、通常、0.01〜500g/10分の範囲である。好ましくは1〜200g/10分であり、より好ましくは0.1〜50g/100分である。
【0022】
本発明で用いられるカルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)は、ポリプロピレン系樹脂に含有させた場合に、ポリプロピレン系樹脂に造核効果を与える化合物である。カルボン酸類としては、例えば、環状の炭化水素基を有するカルボン酸類が好ましく、例えば、下記(II)式で示される安息香酸類や、下記(III)式で示されるアビチエン酸の誘導体等が挙げられる。
【0023】
(式(II)中、R8は、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アラルキル基又はフェニル基を示し、mは1〜3の整数であり、**は金属原子との結合部位を示す。)
【0024】
(式(III)中、***は金属原子との結合部位を示す。)
【0025】
また、造核剤(B)に用いられるカルボン酸類の金属塩の金属原子としては、元素の周期表の第1族の金属原子、第2族の金属原子、第4族の金属原子、第13族の金属原子、第14族の金属原子等が挙げられ、好ましくは、第1族の金属原子、第2族の金属原子または第13族の金属原子である。
【0026】
具体的には、第1族の金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、第2族の金属原子としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられ、第4族の金属原子としては、チタニウム、ジルコニウム等が挙げられ、第13族の金属原子としては、アルミニウム、ガリウム等が挙げられ、第14族の金属原子としては、ゲルマニウム、錫、鉛等が挙げられる。
【0027】
カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)として、好ましくは、安息香酸リチウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム、ヒドロキシ−ジ(パラ−t−ブチル安息香酸)アルミニウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム、シクロペンタンカルボン酸ナトリウム、デヒドロアビチエン酸ナトリウム、デヒドロアビチエン酸カリウム、デヒドロアビチエン酸マグネシウム、デヒドロアビチエン酸カルシウム、デヒドロアビチエン酸アルミニウムである。
【0028】
本発明に用いられるカルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)としては、分散性に優れるものが好ましい。その平均粒子径として、好ましくは、引張り伸び特性の観点から、レーザー法で測定される平均粒子径が0.01〜10μmであり、より好ましくは0.01〜5μmであり、さらに好ましくは0.01〜1μmである。
【0029】
本発明に用いられるカルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)の配合量は、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜1重量部である。好ましくは、0.01〜0.5重量部であり、より好ましくは0.05〜0.3重量部である。配合量が0.001重量部未満の場合、剛性の改良が不充分なことがあり、1重量部を超えた場合、引張り伸び特性が低下することがある。
【0030】
本発明で用いられる亜リン酸エステル類(C)とは、下記一般式(I)
(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは硫黄原子もしくは−CHR6−基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。)を表し、nは0または1である。Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−CO(R7)m−基(R7は炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素原子との結合部位であることを示し、mは0または1である。)を表す。Y、Zは、そのいずれかの一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。)で表される亜リン酸エステル類である。
【0031】
一般式(I)で表される亜リン酸エステル類(C)において、置換基R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表す。
【0032】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基の代表例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられ、炭素数5〜8のシクロアルキル基の代表例としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基の代表例としては、例えば1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数7〜12のアラルキル基の代表例としては、例えばベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
【0033】
R1、R2、R4として、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基である。なかでも、R1、R4として、より好ましくはt−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基である。
【0034】
R2として、より好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基である。
【0035】
R5として、好ましくは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基である。
【0036】
置換基R3は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表すが、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば前記と同様のアルキル基が挙げられる。好ましくは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0037】
また置換基Xは、nが0である場合、二つのフェノキシ基骨格を有する基が直接結合していることを表し、nが1である場合、硫黄原子又は炭素数1〜8のアルキル基もしくは炭素数5〜8のシクロアルキル基が置換していることもあるメチレン基を表す。ここで、メチレン基に置換している炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、それぞれ前記と同様のアルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。置換基Xとして、好ましくはnが0であり、二つのフェノキシ基骨格を有する基が直接結合していること、または、nが1であり、メチレン基又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等が置換したメチレン基である。
【0038】
また置換基Aは、炭素数2〜8のアルキレン基又は*−CO(R7)m−基(R7は炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素原子との結合部位であることを示し、mは0または1である。)を表す。
【0039】
ここで、炭素数2〜8のアルキレン基の代表例としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また*−COR7−基における*は、カルボニル基がホスファイト基の酸素原子と結合する部分であることを示す。R7における、炭素数1〜8のアルキレン基の代表例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられる。*−CO(R7)m−基として好ましくは、mが0である*−CO−基、または、mが1でありR7としてはエチレンである*−CO(CH2CH2)−基である。
【0040】
Y、Zは、そのいずれかの一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。
【0041】
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば前記と同様のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばアルキル部分が前記の炭素数1〜8のアルキルと同様のアルキルであるアルコキシ基が挙げられる又炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えばアラルキル部分が前記炭素数7〜12のアラルキルと同様のアラルキルであるアラルキルオキシ基が挙げられる。
【0042】
本発明に用いられる亜リン酸エステル類(C)として、好ましくは以下の化合物(化合物1〜13)であり、特に好ましくは、化合物1である。化合物1〜13の構造を式化1〜化13に示す。
【0043】
化合物1:
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
【化1】
【0044】
化合物2:
2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化2】
【0045】
化合物3:
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、
【化3】
【0046】
化合物4:
2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12−メチル―12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化4】
【0047】
化合物5:
2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化5】
【0048】
化合物6:
2,4,8,10−テトラ−t−ペンチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−12−メチル―12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化6】
【0049】
化合物7:
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、
【化7】
【0050】
化合物8:
2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化8】
【0051】
化合物9:
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイルオキシ)−12−メチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化9】
【0052】
化合物10:
2,10−ジメチル−4,8−ジ−t−ブチル−6[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化10】
【0053】
化合物11:
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化11】
【0054】
化合物12:
2,10−ジエチル−4,8−ジ−t−ブチル−6[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、
【化12】
【0055】
化合物13:
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[2,2−ジメチル−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン。
【化13】
【0056】
本発明に用いられる亜リン酸エステル類(C)の製造方法としては、例えば、特開平10−273494号公報に記載されている方法等を挙げることができる。
【0057】
本発明に用いられる亜リン酸エステル類(C)の配合量は、ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜1重量部である。好ましくは0.03〜0.5重量部であり、さらに好ましくは0.1〜0.3重量部である。亜リン酸エステル類(C)の配合量が0.01重量部未満の場合、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体の剛性が不充分であったり、長期の耐熱老化性が不充分なことがあり、1重量部を超えた場合、本発明の効果は飽和してしまい、不経済なだけである。
【0058】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、他の添加剤を加えてもよい。他の添加剤としては、例えば、中和剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ラクトン系安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、金属不活性化剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、加工助剤、顔料、発泡剤、抗菌剤、有機系過酸化物、充填材、可塑剤、難燃剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0059】
その中でも、好ましく用いられる添加剤としては、中和剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、帯電防止剤、滑剤、顔料である。
【0060】
例えば、中和剤としては、高級脂肪酸の金属塩類、ハイドロタルサイト、アルカリ土類金属の酸化物または水酸化物等が挙げられる。
【0061】
ハイドロタルサイトとは、下記一般式(IV)で表されるアニオン交換性の層状化合物である。
〔M2+ 1−XM3+ X(OH)2〕X+〔An− X/n・mH2O〕X− 式(IV)
〔M2+ 1−XM3+ X(OH)2〕X+が基本層であり、〔An− X/n・mH2O〕X−が中間層である。M2+は、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+等の2価金属カチオンであり、M3+は、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+等の3価金属カチオンである。An−は、OH−、F−、Cl−、Br−、NO3−、CO3 2−、SO4 2−、Fe(CN)6 3−、CH3COO−、シュウ酸イオン、サリチン酸イオンなどのn価のアニオンであり、nは正の整数である。Xは、0<X≦0.33であり、mは正の数である。
【0062】
上記ハイドロタルサイトは、天然鉱物であっても、合成品であっても良く、またその結晶構造、結晶粒子径、含水率等は、特に制限されるものではない。また、必要に応じて、上記ハイドロタルサイトには表面処理を行ってもよい。
【0063】
上記一般式(IV)で表されるハイドロタルサイトの中で、好ましくは下記式(V)で表されるハイドロタルサイトである。
MgYAl2(OH)2Y+4CO3・mH2O 一般式(V)
(式中、Yは、Y≧4であり、mは正の数である。)
【0064】
より好ましくは、上記一般式のM2+が、Mg2+、Zn2+の何れか1種、または2種の2価金属カチオンから構成されるものであり、特に好ましくは、下記のハイドロタルサイトである。
Mg4.5Al2(OH)13CO3・3H2O
Mg4.5Al2(OH)13(CO3)0.8・O0.2
Mg4Al2(OH)12CO3・3H2O
Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O
Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O(天然鉱物)
Zn4Al2(OH)12CO3・mH2O(mは0〜4)
Mg3ZnAl2(OH)12CO3・mH2O(mは0〜4)
【0065】
これらの中和剤として、好ましくは分散性に優れるものである。その平均粒子径は、耐面衝撃性の観点から、好ましくは0.01〜10μmであり、より好ましくは0.01〜5μmであり、さらに好ましくは0.01〜1μmである。
【0066】
また、フェノール系酸化防止剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、
【0067】
トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、
【0068】
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−エチリデン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)(ケミノックス1129)、2,2’−ブチリデン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トコフェロール類など。
【0069】
また、リン系酸化防止剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、
【0070】
ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、
【0071】
2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)エチルホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−6−メチルフェニル)メチルホスファイト、2−(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)−5−エチル−5−ブチル−1,3,2−オキサホスホリナン、2,2’,2’’−ニトリロ[トリエチル−トリス(3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイトおよびそれらの混合物など。
【0072】
また、イオウ系酸化防止剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、トリデシル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル 3,3’−チオジプロピオネート、ネオペンタンテトライルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキル(C12〜C14)チオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィドなど。
【0073】
また、紫外線吸収剤としては、例えば、アクリレート系紫外線吸収剤、オキサミド系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0074】
また、ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば次のようなものが挙げられる。
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートおよびメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジル)エステルおよび1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6−6−テトラメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールと高級脂肪酸のエステル混合物、
【0075】
テトラキス(2,2,6,6−テトラ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタ−メチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重縮合物、ポリ[{(6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル){(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}}、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、
【0076】
N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ミックスト{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオクスアスピロ(5,5)ウンデカン]ジメチル}−1,2,3,4ブタンテトラカルボキシレートなど。
【0077】
また、帯電防止剤として、好ましくは界面活性剤であり、例えば、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性系界面活性剤であり、特に好ましくは非イオン系界面活性剤である。
【0078】
また、滑剤としては、例えば、脂肪酸アマイド系化合物、ポリオレフィンワックス系化合物、シリコンワックス系化合物等が挙げられる。
【0079】
また、顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸化亜鉛、硫化亜鉛、弁柄、その他有機顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いてもよく、少なくとも2種以上を併用してもよい。また、これらの顔料は、一般的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸金属塩等と混合して用いられる。
【0080】
これらの添加剤を配合する方法としては、例えば、予め溶融混練されたポリプロピレン系樹脂組成物のペレットに配合する方法や、ポリプロピレン系樹脂組成物をペレット化する段階で各成分と一緒に配合する方法が挙げられる。
【0081】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂以外の他の樹脂を配合しても良い。
例えば、ポリエチレン系樹脂、エチレン/α−オレフィン系エラストマー、ポリスチレン類(例えばポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合)樹脂、AAS(特殊アクリルゴム/アクリロニトリル/スチレン共重合)樹脂、ACS(アクリロニトリル/塩素化ポリエチレン/スチレン共重合)樹脂、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、芳香族ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレートプリポリマー、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン/ブタジエン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。これらの他の樹脂は、単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0082】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物をペレット化する方法としては、ポリプロピレン系樹脂(A)に、カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)と、亜リン酸エステル類(C)と、さらに、必要に応じて他の添加剤とを配合して、公知の方法で溶融混練して、ペレットにする方法が挙げられる。例えば、溶融押出機、バンバリーミキサー等を使用して、有機過酸化物の存在下または不存在下で、溶融混練して、ペレットにする方法が挙げられる。
【0083】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いられるカルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)を配合する方法としては、カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)の濃度が1〜50重量%になるように、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(A)とカルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)を溶融混練して製造される造核剤(B)の高濃度ペレットをあらかじめ用意し、この高濃度ペレットを、さらにポリプロピレン系樹脂(A)と溶融混練することによって、希釈して配合する方法が挙げられる。
【0084】
また、カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)を配合する方法としては、カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)の濃度が10〜90重量%になるように、本発明で用いられる亜リン酸エステル類(C)または少なくとも1種の他の添加剤と、カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)とを混合し、顆粒状に固形化したものをあらかじめ用意し、本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(A)と溶融混練することによって、配合する方法が挙げられる。
【0085】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を各種成形方法によって成形したものであり、成形体の形状、サイズ等は特に制限されるものではない。
【0086】
本発明の成形体の製造方法としては、例えば、通常工業的に用いられている射出成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法、押出成形法等が挙げられ、また、目的に応じて、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物と同種のポリプロピレン系樹脂や他の樹脂と貼合する成形方法、共押出成形する方法等も挙げられる。
【0087】
本発明の成形体として、特に好ましくは、射出成形体であり、その成形方法は射出成形法である。
射出成形方法としては、例えば、一般的な射出成形、射出発泡成形、超臨界射出発泡成形、超高速射出成形、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、サンドイッチ成形、サンドイッチ発泡成形、インサート・アウトサート成形等の方法が挙げられる。
【0088】
本発明の成形体の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、OA機器材料、建材、医療用材料、排水パン、トイレタリー材料、各種ボトル、コンテナー、シート、フィルム等が挙げられる。
【0089】
自動車材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、フェンダーライナー、ファン等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
【0090】
排水パンとしては、洗面所、洗濯機用防水パン等が挙げられる。トイレタリー材料としては、便座、便蓋、インナータンク、アウタータンク、ペーパーホルダー等が挙げられる。
【0091】
家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽、内槽、蓋、パルセータ、バランサー等)、乾燥機用材料、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料等が挙げられる。
【0092】
OA機器・メディア関連材料としては、磁気記録媒体や光記録媒体のケース、パソコン用部品、プリンター用部品、インク保存タンク等が挙げられる。医療用材料としては、輸液バッグ、注射筒等が挙げられる。
【0093】
ボトルとしては、食品、飲料水、洗剤等の充填用ボトル等が挙げられる。コンテナー材料としては、食品充填用容器、ビール等の運搬用コンテナー、衣装コンテナー、文具用コンテナー等が挙げられる。
【0094】
シート材料としては、文具、雑貨用のシート等が挙げられる。フィルムとしては、各種包装用の延伸フィルム、未延伸フィルム、インフレーションフィルム等が挙げられる。
【0095】
中でも、特に、自動車材料、家電材料、医療用材料、排水パン、トイレタリー材料、コンテナーに用いられる。
【0096】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用したポリプロピレン系樹脂、添加剤を下記に示した。
【0097】
(1)ポリプロピレン系樹脂(成分A)
特許第2950168号公報の実施例5記載の方法によって得られる触媒を用いて、下記物性のポリプロピレン系樹脂が得られるような条件で気相重合法によって製造した。
(A−1)プロピレン−(エチレン−プロピレン)共重合体
▲1▼MFR(230℃、荷重2.16kg):8g/10分
▲2▼立体規則性([mmmm]):0.97
▲3▼エチレン−プロピレンランダム共重合体成分(II)の含有量:14重量%
▲4▼エチレン−プロピレンランダム共重合体成分(II)中のエチレン含有量:45重量%
【0098】
(2)カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(成分B)
(B−1)
安息香酸ナトリウム(20M):チバ・スペシャルティケミカルズ社(製)、平均粒子径:3.64μm、粒子径が10μm以上である粒子の割合:10%
(B−2)
ヒドロキシ−ジ(パラ−t−ブチル安息香酸)アルミニウム:共同薬品(株)製、平均粒子径:8.1μm、粒子径が10μm以上である粒子の割合:40%
上記(B−1)と(B−2)のそれぞれの平均粒子径および粒子径が10μm以上である粒子の割合は、レーザー回折式の粒度分布測定器(島津製作所製SALD2000J)を用いて測定した。
【0099】
(3)亜リン酸エステル類(成分C)
(C−1)
2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(住友化学工業(株)製スミライザーGP)
(化1)
【0100】
(4)酸化防止剤(比較例のポリプロピレン系樹脂組成物に使用した。)
(D−1)
テトラキス[メチレン−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティケミカルズ社製 IRGANOX1010)
(D−2)
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティケミカルズ社製 IRGAFOS168)
【0101】
(5)造核剤(比較例のポリプロピレン系樹脂組成物に使用した。)
(E−1)
粉末タルク(林化成(株)製ミクロンホワイト5000S)
(E−2)
1,3:2,4−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール(ミリケンケミカル社製 MILLAD3988)
【0102】
(6)中和剤
(F−1)ハイドロタルサイト DHT4C(協和化学工業(株)製)
化学式:Mg4.5Al2(OH)13(CO3)0.8・O0.2
【0103】
ポリプロピレン系樹脂組成物の物性は下記に示した方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従って、測定温度:230℃、荷重:2.16gで測定した。
【0104】
(2)エチレン−プロピレンランダム共重合体成分(II)の含有量およびエチレン−プロピレンランダム共重合体成分(II)中のエチレンの含有量(単位:重量%)
下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982年,第15巻,第1150〜1152頁)に基づいて求めた。
10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン−エチレンブロック共重合体を3mlの混合溶媒(オルトジクロロベンゼン/重オルトクロロベンゼン=4/1(容積比))に均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件で測定した。測定には、日本電子社製JNM−EX270を用いた。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0105】
(3)立体規則性([mmmm])
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules, 第6巻, 第925頁 (1973年)に記載されている13C−NMRを使用する測定方法によって得られるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖であり、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules, 第8巻, 第687頁 (1975年)に基づいて行った。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。なお、測定には、BRUKER社製AM400を用いた。
【0106】
(4)曲げ弾性率および曲げ強度(単位:MPa)
JIS−K−7203に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが6.4mmであり、スパン長さが100mmである試験片を用いて、荷重速度は2.5mm/分で、測定温度は23℃で測定した。
【0107】
(5)引張り試験
ASTM D638に規定された方法に従って測定した。射出成形によって得られた厚みが3.2mmである試験片を用いて測定した。引張り速度は50mm/分であり、降伏強度(単位:MPa)、破断点伸び(%)を評価した。測定温度は23℃であった。
【0108】
(6)アイゾット衝撃強度(単位:KJ/m2)
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。射出成形によって得られた厚みが6.4mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きの試験片を用いた。測定温度は−20℃であった。
【0109】
(7)耐熱老化性(単位:時間)
JIS K 7212[熱可塑性プラスチックの熱老化性試験法(オーブン法)通則]に従って評価を行った。東洋精機製作所(株)製、ギヤーオーブンを使用し160℃で測定した。そして試験片(厚み1mmのプレス成形シート)が完全劣化するまで、言い換えれば抗張力がゼロになるまでの時間を測定した。
なお、プレス成形シートは、230℃で10分間加熱溶融させ、30℃で5分間冷却させることによって作製した。
【0110】
(射出成形体の作製)
上記の機械的特性評価用の試験片(射出成形体)は下記の方法に従い作製した。
住友重機械製NEOMAT350/120型射出成形機を用い、成形温度230℃、金型冷却温度50℃で射出成形を行い、試験片を得た。
【0111】
実施例1
ポリプロピレン系樹脂(A−1)100重量部に対し、安息香酸ナトリウム(B−1)0.1重量部と、亜リン酸エステル類(C−1)0.1重量部と、ハイドロタルサイトDHT4C(F−1)0.01重量部とを配合し、ヘンシェルミキサーであらかじめ5分間混合した。この混合物を内径40mmの単軸押出機(田辺製作所製)で、設定温度を230℃にし、回転数を100rpmにして、加熱溶融混練し、ペレットにした。このペレットのMFRは8.2g/10分であった。
上記で得られたペレットを用いて、機械的特性評価用の試験片(射出成形体)を作製し、得られた試験片を用いて機械的特性を測定した。測定は、射出成形後72時間23℃で状態調整を行った後に実施した。また、上記で得られたペレットを厚み1mmのシートにプレス成形して、シートの耐熱老化性試験を行った。結果を表1に示した。
【0112】
実施例2
実施例1で用いた安息香酸ナトリウム(B−1)をヒドロキシ−ジ(パラ−t−ブチル安息香酸)アルミニウム(B−2)に変更した以外は、実施例1記載の方法と同様に行った。結果を表1に示した。
【0113】
比較例1
実施例1で用いた安息香酸ナトリウム(B−1)を用いなかった以外は、実施例1記載の方法と同様に行った。結果を表1に示した。
【0114】
【表1】
【0115】
比較例2および3
実施例1で用いた安息香酸ナトリウム(B−1)をタルクであるミクロンホワイト5000S(E−1)、またはソルビトール系造核剤であるMILLAD3988(E−2)に変更した以外は、実施例1記載の方法と同様に行った。結果を表2に示した。
【0116】
比較例4
実施例2で用いた亜リン酸エステル類(C−1)を表2に記載した酸化防止剤(D−1)および(D−2)に変更した以外は、実施例2記載の方法と同様に行った。結果を表2に示した。
【0117】
【表2】
【0118】
本発明の要件を満足する実施例1および2は、剛性、引張り伸び特性および耐衝撃性のバランスに優れ、さらに、長期使用における耐熱老化性に優れるものであることが分かる。
【0119】
これに対して、本発明の要件であるカルボン酸類の金属塩からなる造核剤を含有しない比較例1は、剛性、耐衝撃性および長期使用における耐熱老化性が劣っており、また、本発明の要件であるカルボン酸類の金属塩からなる造核剤の替わりに、本発明の要件ではないタルクを含有する比較例2は、剛性および耐熱老化性が劣っており、また、本発明の要件であるカルボン酸類の金属塩からなる造核剤の替わりに、本発明の要件ではないジベンジリデンソルビトール系造核剤を含有する比較例3は、剛性が劣っており、そして、本発明の要件である亜リン酸エステル類の替わりに、本発明の要件ではない酸化防止剤を含有する比較例4は、引張り伸び特性および耐熱老化性が劣っていることが分かる。
【0120】
【発明の効果】
以上、詳述したとおり、本発明によれば、剛性、引張り伸び特性および耐衝撃性のバランスに優れ、さらに、長期使用における耐熱老化性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる成形体を得ることができる。
Claims (4)
- ポリプロピレン系樹脂(A)100重量部に対して、カルボン酸類の金属塩からなる造核剤(B)0.001〜1重量部、下記一般式(I)で表される亜リン酸エステル類(C)0.01〜1重量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは硫黄原子もしくは−CHR6−基(R6は水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。)を表し、nは0または1である。Aは炭素数2〜8のアルキレン基又は*−CO(R7)m−基(R7は炭素数1〜8のアルキレン基を、*は酸素原子との結合部位であることを示し、mは0または1である。)を表す。Y、Zは、そのいずれかの一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を表し、他方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。) - 造核剤(B)に用いられるカルボン酸類の金属塩のカルボン酸類が、安息香酸類であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 造核剤(B)に用いられるカルボン酸類の金属塩の金属原子が、元素の周期表の第1族の金属原子、第2族の金属原子または第13族の金属原子であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体。
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