JP2011026558A - ポリプロピレン系樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】揮発性有機化合物(VOC)の放散量をより低減した成形体を提供することが可能なポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれからなる成形体を提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体(A)100質量部と、平均粒子径が0.01〜30μmであり、かつ、強熱減量が4〜8%である遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)0.01〜0.5質量部と、を含有した。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれからなる成形体に関するものである。
ポリプロピレン樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも、安価で軽量かつ成形加工性、機械的特性、耐熱性、長期の耐熱劣化等の特性に優れる代表的な樹脂であることから、各種容器、食品用包装材料、ボトルなどの容器のキャップ、文具、日用雑貨、カーペットやソファー用の繊維、自動車内外装材、家電用材料、ビルや住宅の内装材等の建築材料などの広範な用途に利用されている。
一方で、近年、ビルや住宅の内装材等、建築材料に対するシックハウス(室内空気汚染)問題への懸念から、使用する樹脂材料に対して、シックハウス問題の原因物質であると報告されている揮発性の有機化合物(Volatile Organic Compounds:略称VOC)の低減が求められるようになってきている。中でもホルムアルデヒドをはじめとする13種のVOCについて具体的な対策が検討されている。シックハウス問題は建築材料のみではなく、自動車等の車両の内装材料等においても対象とされ、VOCの少ない樹脂材料の使用が望まれている。
例えば、特許文献1には、保護シート(10)の基材(11)の内側の表面にVOC分解物質(12)とVOC吸着物質(13)を担持した担体(14)がコーティングされている内装部品であって、基材としてポリエチレン樹脂、VOC分解物質として酸化チタン、VOC吸着物質としてアパタイト等が使用された内装部品用の保護カバーが記載されている。
特開2007−15698号明細書
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂組成物については、環境保護対策の観点から、上記公報に記載されたような樹脂組成物及び該組成物からなる製品からのVOC、特にアルデヒド類の放散のさらなる低減が求められている。
以上の課題に鑑み、本発明は、揮発性有機化合物(VOC)の放散量をより低減した成形体を提供することが可能なポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれからなる成形体を得ることを目的とする。
即ち、本発明はプロピレン系重合体(A)100質量部と、平均粒子径が0.01〜30μmであり、かつ、強熱減量が4〜8%である遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)0.01〜0.5質量部と、を含有するポリプロピレン系樹脂組成物を提供するものである。
ここで、本発明における「主成分」とは、遷移アルミナ全体の中で最も多く含有される成分をいう。
本発明によれば、揮発性有機化合物(VOC)の放散量がより低減された成形体を提供することが可能なポリプロピレン系樹脂組成物、及び、それからなる成形体を得ることが可能である。
〔ポリプロピレン系樹脂組成物〕
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)は、プロピレン系重合体(A)及びアルミナ(B)を含有する。
<プロピレン系重合体(A)>
本発明で用いられプロピレン系重合体(A)とは、プロピレン単独重合体(A−1)及びプロピレン系ブロック共重合体(A−2)からなる群から選択される少なくとも1種の重合体であり、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)とは、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレン由来の単位からなる共重合体成分である重合体成分(A−2−I)と、エチレン及び炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーと、プロピレンとの共重合体成分である共重合体成分(A−2−II)とからなるプロピレン系ブロック共重合体である。
射出成形時の樹脂組成物の流動性及び成形体の耐衝撃性の観点から、プロピレン単独重合体(A−1)のJIS K6758に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定したメルトフローレート(以下、MFRと称する)は2〜150g/10分であり、好ましくは15〜130g/10分である。
プロピレン単独重合体(A−1)の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率(以下、mmmm分率と記すことがある)は、成形体の剛性、耐熱性、及び成形時の冷却工程における結晶化時間という観点から、好ましくは0.95以上であり、更に好ましくは、0.97以上である。
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー由来の単位の分率である。NMR吸収ピークの帰属は、Macromolecules,8,687(1975)に基づいて行う。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法によって英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
プロピレン単独重合体(A−1)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量分布(Q値、Mw/Mnと表示されることもある)として、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3〜5である。
プロピレン系ブロック共重合体(A−2)を構成するプロピレン以外のα−オレフィンは、好ましくは炭素数4〜12のα−オレフィンであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、さらに好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
前記重合体成分(A−2−I)は、プロピレン単独重合体成分又は主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分である。なお、主にプロピレン由来の単位からなる共重合体成分とは、全モノマー単位量の70質量%以上100質量%未満であるプロピレン由来の単位と、エチレン及び炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位とからなる共重合体成分である。
前記重合体成分(A−2−I)としての前記主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分において、エチレン及び炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、0.01〜30質量%である(但し、重合体成分(A−2−I)の全量を100質量%とする)。
前記重合体成分(A−2−I)が、主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分である場合、エチレン及び炭素数4〜12のα―オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、0.01〜30質量%である(但し、重合体成分(A−2−I)の全量を100質量%とする)。
前記重合体成分(A−2−I)としての前記主にプロピレン由来の単位からなるプロピレン系共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分等が挙げられる。
前記共重合体成分(A−2−II)は、エチレン及び炭素数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位と、プロピレンに由来する単位とを有する共重合体である。
前記共重合体成分(A−2−II)における、エチレン及び炭素原子数4〜12のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーに由来する単位の含有量は、1〜80質量%であり、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは30〜60質量%である(但し、共重合体成分(A−2−II)の全量を100質量%とする)。
前記炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
共重合体成分(A−2−II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分等が挙げられる。
プロピレン系ブロック共重合体(A−2)における重合体成分(A−2−I)の含有量は、30〜99質量%であり、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは、50〜90質量%である。
プロピレン系ブロック共重合体(A−2)における重合体成分(A−2−II)の含有量は、1〜70質量%であり、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。但し、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)の全量を100質量%とする。
前記重合体成分(A−2−I)と前記共重合体成分(A−2−II)とからなるプロピレン系ブロック共重合体(A−2)としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体等が挙げられる。
樹脂組成物の機械的物性や成形加工性、揮発性有機化合物(VOC)の放散量の観点から、重合体成分(A−2−I)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度[η]A−2−Iは、0.1〜5dl/gであり、好ましくは0.3〜4dl/gであり、より好ましくは0.5〜3dl/gである。
また、樹脂組成物の機械的物性や成形加工性の観点から、共重合体成分(A−2−II)の135℃テトラリン中で測定される極限粘度[η]A−2−IIは1〜20dl/gであり、好ましくは1〜15dl/gであり、より好ましくは2〜10dl/gであり、さらに好ましくは2〜7dl/gである。
また、重合体成分(A−2−I)の極限粘度[η]A−2−Iに対する共重合体成分(A−2−II)の極限粘度[η]A−2−IIの比([η]A−2−II)/[η]A−2−I)としては、ポリプロピレン系樹脂組成物の機械的物性や成形加工性の観点から、好ましくは1〜20であり、より好ましくは、2〜10であり、さらに好ましくは2〜8である。
プロピレン単独重合体(A−1)、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)、及びプロピレン系ブロック共重合体(A−2)中の重合体成分(A−2−I)の極限粘度は、以下の方法によって決定される。ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。測定は、テトラリンを溶媒として用いて、135℃で行われる。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる。
また、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)が、重合体成分(A−2−I)が第一段階の重合工程で得られ、共重合体成分(A−2−II)が第二段階目の工程で得られる方法によって製造されるブロック共重合体である場合、重合体成分(A−2−I)の極限粘度[η]A−2−Iは、第一段階の重合槽から抜き出した重合体パウダーを用いて測定される。重合体成分(A−2−II)の極限粘度[η]A−2−IIは、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)における重合体成分(A−2−I)及び共重合体成分(A−2−II)の含有量と、重合体成分(A−2−I)の極限粘度[η]A−2−Iと、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)の極限粘度[η]A−2Totalより算出される。
プロピレン単独重合体(A−1)、及びプロピレン系ブロック共重合体(A−2)に含有される重合体成分(A−2−I)の13C−NMRで測定されるmmmm分率は、プロピレン系重合体(A)の結晶性、成形体の剛性という観点から、0.96以上であり、より好ましくは0.97以上、さらに好ましくは0.98以上である。
プロピレン系ブロック共重合体(A−2)として好ましくは、重合体成分(A−2−I)がプロピレンの単独重合体であるプロピレン系ブロック共重合体である。
また、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)としてより好ましくは、重合体成分(A−2−I)がプロピレンの単独重合体成分であり、共重合体成分(A−2−II)がプロピレンとエチレンとの共重合体成分であり、共重合体成分(A−2−II)の含有量が5〜50質量%であり、共重合体成分(A−2−II)に含有されるエチレンに由来する単位の含有量が20〜70質量%であるブロック共重合体である。
樹脂組成物の機械的特性、成形加工性及びVOCの放散量の観点から、前記プロピレン系ブロック共重合体(A−2)として特に好ましくは、下記要件(a)、(b)、(c)及び(d)を満足するブロック共重合体である。
要件(a):
重合体成分(A−2−I)及び共重合体成分(A−2−II)からなるプロピレン系ブロック共重合体であり、
重合体成分(A−2−I)が、135℃テトラリン中で測定される極限粘度[η]A−2−Iが0.1〜5dl/gであり、
共重合体成分(A−2−II)が、135℃テトラリン中で測定される極限粘度[η]A−2−IIが1〜20dl/gである。
要件(b):
重合体成分(A−2−I)の13C−NMRで測定されるmmmm分率が0.98以上である。
要件(c):
共重合体成分(A−2−II)におけるエチレン及び炭素数4〜12のα−オレフィンから選択される少なくとも1種のモノマーの含有量が、1〜80質量%である(重合体成分(A−2−II)の全量を100質量%とする)。
要件(d):
共重合体成分(A−2−II)の含有量が、1〜70質量%である(プロピレン系ブロック共重合体の全量を100質量%とする)。
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
重合触媒としては、例えば、チーグラー型触媒系、チーグラー−ナッタ型触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第4族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物及び有機アルミニウム化合物からなる触媒系、及び上記の触媒成分を無機物等の粒子との共存下で処理することにより調製して得られる触媒系等が挙げられ、また、上記のような触媒系の存在下でエチレンやα−オレフィンを予備重合させて調製される予備重合触媒を用いてもよい。
上記の触媒系としては、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報、特開平9−316147号公報に記載の触媒系が挙げられる。
また、重合方法としては、液相重合、溶液重合、スラリー重合又は気相重合が挙げられる。バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法であり、溶液重合及びスラリー重合はいずれも、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法であり、また、気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法である。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。プロピレン系重合体(A)の製造方法は、工業的かつ経済的な観点と、不活性炭化水素溶媒を極力使用せずにプロピレン系重合体(A)に残存する揮発性有機化合物を低減して、VOC放散量を抑制するという観点から、好ましくは、連続式の気相重合法や、液相重合法と気相重合法を連続的に行う液相−気相重合法による方法が好ましい。
また、プロピレン系ブロック共重合体(A−2)の製造方法は、プロピレン系ブロック共重合体を、少なくとも二段階の多段階で製造する方法である。好ましくは、重合体成分(A−2−I)を製造する段階と、重合体成分(A−2−I)と異なる共重合体成分(A−2−II)を製造する段階とからなる少なくとも二段階の方法である。
多段階でのプロピレン系ブロック共重合体(A−2)の製造方法としては、例えば、特開平5−194685号公報、特開2002−12719号公報に記載の多段階の重合法が挙げられる。
なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量、重合時間等)は、目的とするプロピレン系ブロック共重合体の性能に応じて、適宜決定すればよい。
また、プロピレン系重合体(A)のJIS K6758に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されるMFRは、成形体の揮発性有機化合物(VOC)の放散量、機械的物性、及び射出成形時における樹脂組成物の流動性の観点から、1〜200g/10分であり、好ましくは、5〜200g/10分であり、より好ましくは、10〜150g/10分であり、さらに好ましくは15〜120g/10分である。
プロピレン系重合体(A)は、前記の製造方法によって得られた重合体の他、前記の製造方法によって得られた重合体に、有機過酸化物を配合し溶融混練することにより、分解処理して得られた重合体を用いてもよい。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類及び過酸化カーボネート類が挙げられる。過酸化アルキル類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t―ブチルパーオキサイド、ジ−t―ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチルクミル、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等が挙げられる。
過酸化ジアシル類としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等が挙げられる。過酸化エステル類としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t―ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシル−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルーパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5―トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−ブチルパーオキシトリメチルアディペート等が挙げられる。
過酸化カーボネート類としては、例えば、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチル パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
このうち、過酸化アルキル類を用いることが好ましく、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナンのいずれかを用いることがより好ましい。
有機過酸化物の配合量は、処理するプロピレン系重合体(A)100質量部に対して、一般的には0.0001〜0.5質量部である。好ましくは0.0005〜0.3質量部であり、より好ましくは0.001〜0.1質量部である。但し、有機過酸化物を配合量が多すぎると、樹脂組成物の成形加工性は幾分改良されるが、樹脂組成物の揮発性有機化合物(VOC)の放散量が増加することがあるため、目的に応じて配合量を調整することが好ましい。
有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、プロピレン系共重合体(A)の粉末や、それとは異なるポリプロピレン系樹脂の粉末に任意の濃度で混合又は含浸させた粉末(マスターバッチ)として配合してもよい。
なお、本発明のプロピレン系共重合体(A)のJIS K6758に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されるMFRは、成形体の揮発性有機化合物(VOC)の放散量、機械的物性、特に自動車用材料などの大型成形体の製造で求められる成形加工時における樹脂組成物の流動性の観点から、5〜200g/10分であり、好ましくは、10〜200g/10分であり、より好ましくは、10〜150g/10分であり、さらに好ましくは15〜120g/10分である。
<アルミナ(B)>
本発明に係る樹脂組成物は、所定の遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)を含有する。
上記遷移アルミナとは、Alとして表される多形を有するアルミナのうち、α晶以外の全てのアルミナをいう。具体的には、γ−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ等が挙げられる。このうち、VOC低減効果の観点からγ−アルミナを用いることが好ましい。
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)は、粒子径分布を有する粒子からなる。アルミナ(B)の体積基準で測定された粒子径分布の累積が50%となる粒子径(以下、「平均粒子径」とする)の範囲は、0.01〜30μmであり、0.05〜20μmであることが好ましく、0.1〜15μmであることがより好ましい。また、粒子径が100μm以上である粒子の割合は30質量%未満であることが好ましい。平均粒子径が0.01μmよりも小さい場合には、製造コストや取り扱いの観点から不利な場合がある。また平均粒子径が30μmを超える場合には、プロピレン系重合体に対する分散性が劣り、それを含有するポリプロピレン系樹脂組成物の機械的特性が低下したり、後述するポリプロピレン系樹脂組成物の製造においてフィルターの通過性が低下する場合がある。
なお平均粒子径及び粒子形分布は、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いて純水中で測定される値を用いている。
また、遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)の強熱減量(LOI値)は4〜8%であり、好ましくは5〜7%以上である。強熱減量が4%未満であるとVOC低減効果が十分に発揮されない場合がある。また、強熱減量が8%を超えると水和水等の揮発性不純物の生成が多くなり、成形加工性に悪影響を及ぼす場合がある。
強熱減量(LOI値)は以下の方法で算出した。
まず、アルミナ(B)を粉砕後、白金容器にW(g)を秤り取り、白金容器を含む質量W1(g)を求める。次いで大気中、1100℃で1時間強熱し、冷却後、白金容器を含む質量W2(g)を求めた。これらW,W1,W2の値を、式(1)に代入して強熱減量を算出した。
強熱減量(%)=(W1−W2)/W×100−M(%)・・・式(1)
ここで、Mは、アルミナ(B)A(g)を大気中、200℃で1時間加熱した後の質量B(g)から、式(2)に従い算出される乾燥減量である。
M=(A−B)/A×100(%)・・・(2)
遷移アルミナの製造方法は、特に限定されない。例えば、水酸化アルミニウムを熱処理する方法、硫酸アルミニウムの分解法、ミョウバン分解法、塩化アルミニウムの気相分解法あるいはアンモニウムアルミニウム炭酸塩の分解法等により得られる。
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物中のアルミナ(B)の含有量は、前記プロピレン系重合体(A)100質量部に対し、0.01〜0.5質量部の範囲であり、好ましくは、0.03〜0.3質量部の範囲である。アルミナ(B)の含有量が0.01質量部未満の場合は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中におけるVOC(特にアルデヒド類)の捕捉効果が不十分であり、また、遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)の量が0.5質量部を超える場合は、VOC(特にアルデヒド類)の低減効果は飽和してしまう。
<エチレン−α−オレフィン共重合体(C)>
また、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、成形体の耐衝撃性の観点から、上記プロピレン系重合体(A)以外のエチレン−α−オレフィン共重合体(C)をさらに含有していてもよい。
成形体の剛性や硬度、耐衝撃性の観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体(C)の密度は、0.85〜0.91g/cmであり、好ましくは0.85〜0.88g/cmであり、より好ましくは0.855〜0.875g/cmである。
また、成形時の樹脂組成物の流動性や、成形体の剛性と耐衝撃性とのバランスの観点から、230℃、荷重2.16kgfで測定されるMFR(JIS K−7210に準拠)は、0.05〜100g/10分であり、より好ましくは0.1〜50.0g/10分である。さらに好ましくは0.1〜30g/10分である。
エチレン−α−オレフィン共重合体(C)に含有されるエチレン含量は、成形体の衝撃性強度、特に低温衝撃強度という観点から、好ましくは5〜95質量%であり、より好ましくは10〜90質量%である。
エチレン−α−オレフィン共重合体(C)を形成するのに用いることができるα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらのα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等の炭素数4〜8のα−オレフィンを用いることがより好ましい。
エチレン−α−オレフィン共重合体(C)として、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム又はエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムである。また、2種以上のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
エチレン−α−オレフィン共重合体(C)の製造方法としては、公知の触媒と公知の重合方法を用いて、エチレンとα−オレフィンを共重合させることによって製造する方法が挙げられる。
公知の触媒としては、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒系、チーグラーナッタ触媒系又はメタロセン触媒系等が挙げられ、公知の重合方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法又は気相重合法等が挙げられる。メタロセン系触媒としては、例えば、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載されているメタロセン系触媒が挙げられる。メタロセン系触媒を用いるエチレン−α−オレフィン共重合体(C)の製造方法として、好ましくは、欧州特許出願公開第1211287号明細書に記載されている方法が挙げられる。
成形体の剛性や耐熱性の観点から、本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物中のエチレン−α−オレフィン共重合体(C)の含有量は、前記プロピレン系重合体(A)と、無機充填材(B)と、の合計量100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部であり、より好ましくは3〜40質量部であり、特に好ましくは5〜30質量部である。
<その他>
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、機械物性のバランスをさらに改良するために、ビニル芳香族化合物含有ゴムを含有しても良い。ビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体と共役ジエン系重合体からなるブロック共重合体や、このブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。この水素添加物の水素添加率は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは85質量%以上である(ただし、共役ジエン重合体部分に含有される二重結合の全量を100質量%とする)。
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムに含有されるビニル芳香族化合物の含有量として、好ましくは10〜20質量%であり、より好ましくは12〜19質量%である(ただし、ビニル芳香族化合物含有ゴムの全量を100質量%とする)。
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムのJIS K7210に従って温度230℃、荷重2.16kgfで測定されるMFRは、好ましくは0.01〜15g/10分であり、より好ましくは0.03〜13g/10分である。また、上記のビニル芳香族化合物含有ゴムのGPC法によって測定される分子量分布として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは1〜2.3以下である。
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体、及びこれらのブロック共重合体を水添したブロック共重合体等が挙げられる。さらに、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)にスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させて得られたゴムも挙げられる。また、2種以上のビニル芳香族化合物含有ゴムを併用しても良い。
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムの製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体ゴム又は共役ジエンゴムに対し、ビニル芳香族化合物を、重合又は反応等によって結合させる方法等が挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、機械物性のバランスをさらに改良するために、無機充填材を含有してもよい。
本発明に用いることができる無機充填材としては、例えば、非繊維状無機充填材、繊維状無機充填材、又は、これらの混合物である。非繊維状無機充填材として、タルク、マイカ、粒状炭酸カルシウム、粒状硫酸バリウム、粒状炭酸マグネシウム、クレー、粒状シリカ、粒状硫酸カルシウム、けい砂、カーボンブラック、球状酸化チタン、粒状水酸化マグネシウム、ゼオライト、けいそう土、セリサイト、シラス、粒状水酸化カルシウム、粒状亜硫酸カルシウム、粒状硫酸ソーダ、ベントナイト、粒状黒鉛等が挙げられる。
また、繊維状無機充填材としては、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、繊維状チタン酸カリウム、繊維状水酸化マグネシウム、繊維状ホウ酸アルミニウム、繊維状ケイ酸カルシウム、繊維状炭酸カルシウム、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、タルク、マイカ、粒状炭酸カルシウム、粒状シリカ、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、繊維状ワラストナイトを使用することが好ましく、タルク、繊維状マグネシウムオキシサルフェートを用いることがさらに好ましい。これらの無機充填剤は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
無機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.1〜50μmであり、さらに好ましくは0.1〜20μmである。無機充填材として非繊維状無機充填材を使用する場合には、その平均粒子径は、20μm以下であり、好ましくは10μm以下である。
ここで、上記平均粒子径は、無機充填材をエタノール溶液中に入れ、超音波洗浄装置で10分間分散後、日機装(株)製マイクロトラック粒度分析計(SPA方式)を用い、レーザー回折法にて求められる積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
また、無機充填材として、繊維状無機充填材を使用する場合には、その平均繊維径は好ましくは0.2〜1.5μmであり、平均繊維長は5〜30μmであり、平均アスペクト比は10〜50である。
ここで繊維状無機充填材の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比は、走査電子顕微鏡(SEM)観察を行って得られた画像から、無作為に50本以上の繊維状充填材を選択し、その繊維径、繊維長及びアスペクト比を測定して平均することによって求められる。なお、アスペクト比は繊維径に対する繊維長の比である。
上記無機充填材は、無処理のまま使用してもよく、プロピレン系重合体との界面接着強度を向上させるために、又は、樹脂組成物中での無機充填材の分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で無機充填材の表面を処理して使用してもよい。
無機充填材の含有量は、成形体の剛性や衝撃強度の観点から、プロピレン系重合体(A)とアルミナ(B)合わせて100質量部に対し、好ましくは1〜40質量部であり、より好ましくは1〜30質量部であり、さらに好ましくは1〜25質量部である。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の効果を著しく抑制しない範囲で1種類以上の添加剤を含有してもよい。例えば、中和剤、酸化防止剤、加工安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、透明化核剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤、金属石鹸、着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料)、発泡剤、抗菌剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤等が挙げられる。
中でも、酸化防止剤が好ましく用いられる。例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。特に好ましくは、フェノール系酸化防止剤が用いられる。
フェノール系酸化防止剤としては、好ましくは、分子量300以上のフェノール系酸化防止剤が用いられる。例えば、テトラキス[メチレン−3(3’,5’ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオビス−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
金型汚染性、揮発性有機化合物(VOC)の放散量、熱安定性、耐光安定性、成形加工性に加えて、さらに、樹脂組成物の色相安定性の観点から、好ましくは、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピンが用いられる。
フェノール系酸化防止剤の配合量は、任意に決定されるが、プロピレン系重合体(A)とアルミナ(B)合わせて100質量部に対し、0.01〜1質量部であることが好ましい。
また、加工性の改良や、着色顔料(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料)の分散性の改良等の目的で脂肪酸金属塩類を本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有させる場合は、金型汚染を抑制する観点から、その含有量は、プロピレン系重合体(A)とアルミナ(B)合わせて100質量部に対し、0.01〜0.5質量部であり、より好ましくは0.01〜0.2質量部である。脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等が挙げられる。
また、熱酸化安定性及び光安定性を改良するために、脂肪酸モノアミド及び脂肪酸ビスアミドから選択される脂肪酸アミドを本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有させることが好ましい。適用可能な脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、オレインアマイド、べへニン酸アマイド、エルカ酸アマイド、メチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスステアリルアマイド、エチレンビスオレイルアマイド、ヘキサメチレンビスステアリルアマイド等があげられる。脂肪酸アミドの配合量はプロピレン系重合体(A)とアルミナ(B)合わせて100質量部に対し、0.01〜0.2質量部、好ましくは0.01〜0.1質量部である。無機充填材を配合した系では、脂肪酸アミドを配合することにより熱酸化安定性及び光安定性を大幅に改良することができる。
〔ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法〕
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、各成分を溶融混練する方法が挙げられ、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いる方法等が挙げられる。用いられる溶融混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸同方向回転押出機(Coperion製 ZSK[登録商標]や東芝機械(株)製 TEM[登録商標]、日本製鋼所(株)製 TEX[登録商標]、テクノベル(株)製 二軸混練機等)、二軸異方向回転押出機(日本製鋼所(株)製 CMP[登録商標]、TEX[登録商標]、神戸製鋼所(株)製 FCM[登録商標]、NCM[登録商標]、LCM[登録商標]等)が挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、例えば、プロピレン系重合体(A)と無機充填材(B)と、必要に応じて各種の添加剤を、170℃以上の温度で溶融混合し、得られた溶融混合物を、フィルターを通過させて製造することができる。ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体における揮発性有機化合物(VOC)の放散量を低減するために、溶融混合する際の温度は、好ましくは、180℃以上300℃未満であり、さらに好ましくは、180℃以上270℃未満である。溶融混合時間は通常、1〜20分間である。また、各成分の混練は同時に行っても良く、逐次に行っても良い。
各成分を分割して混練する方法としては、例えば、次の(1)、(2)、(3)の方法が挙げられる。
(1)プロピレン系重合体(A)を混練し、押し出してペレットを調製し、次に同ペレットと無機充填材(B)と、場合によっては任意成分(例えばエチレン−α−オレフィン共重合体(C))を混練する方法。
(2)プロピレン系重合体(A)と無機充填材(B)とを混練し、押し出してペレットを調製し、このペレットと任意成分を混練する方法。
(3)プロピレン系重合体(A)と任意成分とを混練し、押し出してペレットを調製し、次に同ペレットと無機充填材(B)とを混練する方法。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造において、無機充填材(B)を効率よく配合する方法として、本発明に用いられるプロピレン系共重合(A)を溶融混合してなるマスターバッチを用いてもよい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の形状としては、例えば、ストランド状、シート状、平板状、ストランドを適当な長さに裁断したペレット状等が挙げられる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を成形加工へ適用するためには、得られる成形体の生産安定性の観点から、形状として好ましくは、長さが1〜50mmのペレット状である。
〔成形体の製造方法〕
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて各種成形方法によって、成形体を製造することができる。成形体の形状やサイズ等は、適宜、決定してもよい。
前記成形体の製造方法としては、例えば、工業的に用いられている射出成形法、プレス成形法、真空成形法、発泡成形法、押出成形法等が挙げられ、また、目的に応じて、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物をそれと同種或いは異種のポリプロピレン系樹脂や他の樹脂と貼合する成形方法、共押出成形する方法等も挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から製造される成形体は、好ましくは、射出成形体である。射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、インサート・アウトサート成形法等の方法が挙げられる。
成形体の用途としては、例えば、自動車材料、家電材料、建材等が挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及びそれからなる成形体は、揮発性有機化合物(VOC)の放散量の観点から、好ましくは、自動車用材料、建材(特にヒトの居住空間に存在する表面積の広い製品)等の用途に用いられる。
自動車用材料としては、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、コンソール、ロッカーパネル、アームレスト、ドアーパネル、スペアタイヤカバー等の内装部品等、及び、バンパー、スポイラー、フェンダー、サイドステップ等の外装部品、その他エアインテークダクト、クーラントリザーブタンク、フェンダーライナー、シロッコファン、エアコンケース、ファンシュラウド、アンダーデフレクター等の部品、また、フロント・エンドパネル等の一体成形部品等が挙げられる。
また、家電材料としては、例えば、洗濯機用材料(外槽)、乾燥機用材料、掃除機用材料、炊飯器用材料、ポット用材料、保温機用材料、食器洗浄機用材料、空気清浄機用材料、エアコン用材料、照明器具用材料等が挙げられる。
また、建材としては、屋内の床部材、壁部材、窓枠部材等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例によって本発明を説明する。
プロピレン系共重合体(成分A)、ポリプロピレン系樹脂組成物の物性は以下に示した試験方法に従って測定した。
(1)メルトフローレート(MFR)
MFRは、JIS−K−6758に規定された方法に従って温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
(2)極限粘度
まず、ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。尚、試料は重合槽から採取した重合体パウダーを用いた。プロピレン系ブロック共重合体の重合体成分(A−2−I)の場合、第一段階の重合槽から一部抜き出した重合体パウダーの極限粘度を測定してこれを[η]A−2−Iとした。
(3)プロピレン系ブロック共重合体における重合体成分(A−2−I)及び共重合体成分(A−2−II)の割合、極限粘度([η]A−2−Total、[η]A−2−I、[η]A−2−II)の測定及び算出
第一段階の重合工程で得た重合体成分(A−2−I)の極限粘度[η]A−2−I、第二段階の重合工程後の最終重合体(成分(A−2−I)と成分(A−2−II)の合計)の前記(2)の方法で測定した極限粘度[η]A−2−Total、第二段階目の工程で重合された共重合体成分(A−2−II)の最終重合体の中の含有量(質量比)から、第二段階目の工程で重合された共重合体成分(A−2−II)の極限粘度[η]A−2−IIを、下記式から計算して求めた。
[η]A−2−II={[η]A−2−Total−([η]A−2−I×XA−2−I)}/XA−2−II
[η]A−2−Total:2段階重合工程後の最終重合体の極限粘度(dl/g)
[η]A−2−I:1段階重合工程後に重合槽より抜き出した重合体パウダーの極限粘度(dl/g)
A−2−I:1段階目の工程で重合された成分の質量比
A−2−II:2段階目の工程で重合された成分の質量比
尚、XA−2−I、XA−2−IIは重合時の物質収支から求めた。
(4)プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A−2−II)の含有量及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A−2−II)中のエチレン含有量の算出
下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982年,第15巻,第1150〜1152頁)に基づいてプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A−2−II)の含有量及びプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A−2−II)中のエチレン含有量を求めた。
10mmφの試験管中で約200mgのプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体を3mlの混合溶媒(オルトジクロロベンゼン/重オルトクロロベンゼン=4/1(容積比))に均一に溶解させて試料を調製し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。測定は、日本電子社製JNM−EX270を用いて行った。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
(5)強熱減量(LOI値)
強熱減量はアルミナを粉砕後、白金容器にW(g)を秤り取り、白金容器を含む質量W1(g)を求めた。次いで大気中、1100℃で1時間強熱し、冷却後、白金容器を含む質量W2(g)を求めた。これらの値を、下記式に代入して強熱減量を算出した。
強熱減量(%)=(W1−W2)/W×100−M(%)・・・式(1)
ここで、Mは、アルミナA(g)を大気中、200℃で1時間加熱した後の質量B(g)から、式(2)に従い算出される乾燥減量である。
M=(A−B)/A×100(%)・・・(2)
(6)VOC(揮発性有機化合物)放散量
VOC放散量の測定は、後述する試験片を用いて、以下の方法により測定を行った。
(i)試験片を容積10Lのテドラーバッグに封入し、純窒素ガスを充填した。その後、純窒素ガスを抜くことにより、テドラーバッグ内のガスを窒素ガスに置換する作業を2回繰り返し行った。
(ii)テドラーバッグに純窒素ガス4Lを充填し、テドラーバッグのコックを閉じた。
テドラーバッグをオーブンの中に入れ、コックの先にサンプリング用テフロン(登録商標)チューブを取り付けてオーブンの外まで延ばし、この状態で65℃、2時間加熱処理を行った。
(iii)ホルムアルデヒドの採取及び測定
上記(ii)で調製した試料ガスを、65℃の加熱状態で、2,4−ジニトロフェノルヒドラジン(2,4−Dinitrophenylhydrazine(略称:DNPH))カートリッジに3L採取した。採取後のカートリッジはアセトニトリルで溶出処理を行い、得られた溶出液を高速液体クロマトグラフ(HPLC;Waters製、型式:Ultra Performance Liquid Chromatography Aquiy)を用いて、カートリッジから溶出した成分の測定を行った。
上述の方法により検出された成分がVOCである。なお、VOC放散量(所定サイズの試験片1枚から放散されるVOCの量、単位:μg/試験片)は、当該成分の標準物質の検量線を用いて算出した。VOCが検出されない場合については不検出と示す。
(7)面衝撃性 JIS K7211の測定方法に従い、複数個ある試験片のうちの半数が破壊するときの衝撃エネルギーを求めた。測定温度は23℃で実施した。
尚、試験片は後述の射出成形体の製造方法によって得られたものを用いた。具体的には、MD×TD×厚み=150×90×3mmの長平板状試験片を使用した。
(射出成形体の作製)
上記の揮発性有機化合物(VOC)測定用及び各種評価用の試験片(射出成形体)は下記の方法に従い作製した。
(i)成形加工:
住友重機械製NEOMAT350/120サイキャップ−M型射出成形機を用い、成形温度220℃、金型冷却温度50℃で射出成形を行い、MD長さ×TD長さ×厚み=150mm×90mm×3mmの寸法の成形品を得た。
(ii)VOC測定用試験片:
試験片の片面の面積が80cmとなるように上記成形品を裁断した後、23℃、相対湿度50%の条件下で14日静置させたものを測定用試験片とした。
〔実施例1〕
(1)プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の製造:
固体触媒成分(a)の調製
攪拌機付きの200LSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55mol、フタル酸ジイソブチル2.8mol、及びテトラエトキシシラン98.9molを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1mol/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを、反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。
滴下終了後5℃で1時間、室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.2Kg/Lになるようにトルエン量を調整した後、105℃で1時間攪拌した。その後、95℃まで冷却し、フタル酸ジイソブチル47.6mol加え、95℃で30分間反応させた。反応後固液分離し、得られた固体をトルエン70Lで2回洗浄を行った。
次いで、スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、フタル酸ジイソブチル3.1mol、n−ジブチルエーテル8.9mol及び四塩化チタン274molを加え、105℃で3時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、得られた固体を105℃でトルエン90Lを用いて2回洗浄を行った。スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、n−ジブチルエーテル8.9mol及び四塩化チタン137molを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90Lを用いて3回洗浄を行った後、さらに105℃でヘキサン70Lを用いて3回洗浄した後減圧乾燥して固体触媒成分(a)11.4Kgを得た。固体触媒成分(a)はチタン原子1.83質量%、フタル酸エステル8.4質量%、エトキシ基0.30質量%、ブトキシ基0.20質量%を含有していた。
(2)プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の製造
[予備重合]
(液相重合)
ジャケット付きのSUS製反応器中に、脱気・脱水されたn−へキサン、特開平7−216017号公報の実施例5に記載の方法で製造した固体触媒成分(a)、シクロヘキルエチルジメトキシシラン(b)、及びトリエチルアルミニウム(c)を、(I)の量に対する(c)の量の比が1.67mmol/g、(c)の量に対する(b)の量の比が0.13mmol/mmolになるように供給して、プロピレン予備重合度が3.5の予備重合触媒成分を製造した。なお、予備重合度は、固体触媒成分(a)1g当たりに生成した予備重合体のグラム数をいう。
[本重合]
SUS製ループ型液相重合反応器の内部の気体をプロピレンで十分置換したのち、トリエチルアルミニウム(c)に対するシクロヘキシルエチルジメトキシシラン(b)の量のモル比が((b)/(c)比率=0.15mol/mol)、及び前記の予備重合触媒成分を2.2g/時間の速度で連続して供給し、さらに内温を70℃、圧力をプロピレン及び水素で4.5MPaに調整し、重合を開始した。
重合度が全重合度の20質量%となった時点で、ループ型液相重合反応器で生成された粉末状のプロピレン単独重合体を抜き出してSUS製気相重合反応器へ移した。
(気相重合)
第一槽にて、反応温度80℃で反応圧力2.1MPaを保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を7.0vol%に保つように水素を供給しながら、前記液相重合反応器から移送されたプロピレン単独重合体成分の存在下に気相重合を行った。
ついで、第一槽における重合で生成した重合体成分の一部を、断続的に第二槽に移し、反応温度80℃、反応圧力1.7MPaが保たれた条件で、プロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を7.0vol%に保つように水素を供給しながら、気相重合を継続して、プロピレン単独重合体成分(以下、重合体成分(I)と記す)を生成させた。
第二槽による重合で得られた重合体成分(I)を分析した結果、極限粘度[η]は1.07dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率(以下、mmmm分率)は0.983であり、20℃キシレン可溶部(CXS(I))含有量は0.20質量%であった。
引き続いて、生成した重合体成分(I)の一部を、ジャケット付きの第三槽に移し、プロピレン及びエチレンの重合によるエチレン−プロピレン共重合体成分(以下、重合体成分(II)と記す)の製造を開始した。温度70℃で圧力を1.3MPaに保つようにプロピレン/エチレン=2/1(質量比)の割合で、プロピレンとエチレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度が3.0vol%に保たれるように水素の供給量を調整しながら気相重合を継続して、重合体成分(II)を生成させた。
ついで、第三槽内の粉末を断続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、この粉末を65℃の窒素により乾燥して、プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)からなる白色のパウダーを得た。
得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の極限粘度[η]Totalは、1.4dl/gであり、エチレン含量は7.0質量%であった。又、重合体成分(I)の重合体成分(II)に対する質量比は80/20であった。この比は、最終的に得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体の質量と重合体成分(I)の量から算出した。したがって、重合体成分(II)中のエチレンの含有量は35質量%であり、重合体成分(II)の極限粘度[η]IIは2.7dl/gであった。
上記プロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の諸物性をまとめると以下の通りである。
ブロック共重合体のMFR:45g/10分
ブロック共重合体のエチレン含量:7.0質量%
ブロック共重合体の極限粘度[η]total:1.4dl/g
重合体成分(I):プロピレン単独重合体成分
重合体成分(I)の分子量分布Mw/Mn:5
重合体成分(I)のアイソタクチック・ペンタッド分率:0.983
重合体成分(I)の極限粘度[η]:1.07dl/g
重合体成分(II):プロピレン−エチレンランダム共重合体成分
重合体成分(II)の含有量:20質量%
重合体成分(II)のエチレン含有量:35質量%
重合体成分(II)の極限粘度[η]II:2.7dl/g
[造粒(溶融混練、濾過)]
得られたプロピレン−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体(A−1)の粉末100質量部に、遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B−1)(BK105、住友化学製、平均粒径6.0μm、LOI=5.0%)、更にステアリン酸カルシウムを0.05質量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05質量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05質量部、有機過酸化物としてパーカドックス14の8%マスターバッチ(化薬アクゾ(株)製8%質量濃度の有機過酸化物と92質量%のポリプロピレンパウダー(プロピレン単独重合体)の混合物)を0.2質量部(有機過酸化物配合量:0.016質量部)の組成割合で配合し、タンブラーで均一に予備混合した後、更に、得られた混合物を、単軸押出機(田辺プラスチックス(株)製、バレル内径:40mm、スクリュー回転数:100rpm、シリンダー温度:230℃)を用いて溶融混練した。この溶融混練物を二軸混練機に移し、該混練機のダイ部入り口にセットした織金網フィルター(50メッシュ、開き目:410μm)で濾過した後にダイ部より押し出した。この押出物を冷水により冷却固化、切断して、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。また、このときの押出速度は18kg/時間であった。
[成形体の製造]
上記に示した方法に従って射出成形機を用いて試験片(射出成形体)を作成し、状態調整後、VOC放散量の測定を行った。評価結果を表1に示した。
〔実施例2〕
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)として、(B−1)0.3質量部を(B−2)(製品名:BK−112、住友化学製、平均粒径14.3μm、LOI=6.2%)0.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
〔比較例1〕
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B−1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
〔比較例2〕
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B−1)0.3質量部をαアルミナ(B−3)(製品名:AA−03、住友化学製、平均粒径0.4μm、LOI=0.14%)0.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
〔比較例3〕
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B−1)0.3質量部を水酸化アルミニウム(B−4)(製品名:C−303、住友化学製、平均粒径2.6μm、LOI=33.8%)0.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
〔比較例4〕
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B−1)0.3質量部を水酸化アルミニウム(B−5)(結晶構造:ベーマイト、平均粒径1.7μm、LOI=16.1%)0.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。なお、使用した水酸化アルミニウム(B−4)は、以下の方法により合成した。
NaO濃度 550g/Lの水酸化ナトリウム水溶液8.4質量部、水酸化アルミニウム(住友化学株式会社製 C−301)350質量部、純水1022質量部を混合し、オートクレーブにて180℃で2時間水熱処理を行い、水洗・乾燥して水酸化アルミニウム(B−4)を得た。
〔比較例5〕
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B−1)0.3質量部をハイドロタルサイト(B−6)(化学式:Mg4.5Al(OH)11(CO0.80.2、製品名:DHT−4C、協和化学工業製、平均粒径0.43μm、LOI=33.6%)0.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
〔比較例6〕
遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B−1)の配合量を0.3質量部から5.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。



























Figure 2011026558

Claims (3)

  1. プロピレン系重合体(A)100質量部と、
    平均粒子径が0.01〜30μmであり、かつ、強熱減量が4〜8%である遷移アルミナを主成分とするアルミナ(B)0.01〜0.5質量部と、を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. 前記遷移アルミナは、γ−アルミナである請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体。
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