JP2004115377A - 含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】医薬や農薬等の生理活性物質、更には機能性材料の原料として有用な含フッ素カルボン酸誘導体を容易に大量かつ安価に製造すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体、或いは前記一般式(IV)又は(V)で表される含フッ素エステルを酸性条件下で処理する工程を経て、下記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、下記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る。
【化1】
一般式(I): 一般式(IV): 一般式(V):
一般式(II): 一般式(III):
RfCH2CO2H RfCH2CO2R3
(但し、これらの一般式中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5及びR7は互いに同一であるか或いは異なっていてよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、またR6及びR8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【選択図】 なし
【解決手段】下記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体、或いは前記一般式(IV)又は(V)で表される含フッ素エステルを酸性条件下で処理する工程を経て、下記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、下記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る。
【化1】
一般式(I): 一般式(IV): 一般式(V):
一般式(II): 一般式(III):
RfCH2CO2H RfCH2CO2R3
(但し、これらの一般式中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、R1、R2、R3、R4、R5及びR7は互いに同一であるか或いは異なっていてよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、またR6及びR8は水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬や農薬等の生理活性物質、更には機能性材料の原料として有用な含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機化合物にフッ素を導入すると、その高い電子求引性、炭素との高い結合力、脂溶性効果等により、元の化合物の性質が著しく変化する。このようなフッ素原子の独特の性質を利用して、医薬、農薬、機能性材料へのフッ素導入が盛んに行われており、その合成のために、既知化合物の原料と類似の構造を持つ含フッ素ビルディングブロックが設計され、合成されている(「90年代のフッ素生理活性物質」石川延男監修CMC社刊(1991)、「フッ素系材料の最新動向」山辺正顕、松尾仁編集CMC社刊(1994))。
【0003】
また、RfCH2CO2Hで表される含フッ素カルボン酸も、種々の化合物の含フッ素合成中間体(Tetrahedron Lett. 1996,37,1829)として、また含フッ素機能性材料(J.Am.Chem.Soc,1951,73,2323)として用いられている。
【0004】
従来、RfCH2CO2Hは、1,1−ジフルオロエチレンを出発原料として多工程で合成する方法(例えば、下記の文献1参照)、マロン酸モノエステルを四フッ化硫黄により対応するエステル体:CF3CH2CO2Rとし、酸性条件下で加水分解して合成する方法(例えば、下記の文献2参照)などが報告されている。
【0005】
【文献1】
J. Fluorine Chem.,1982, 21(2), 99
【文献2】
J. Chem. Eng. Data, 1971, 16(3), 376
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した各文献に示された方法はいずれも、用いる試薬が高価であったり、多工程を要することや、特殊な設備を要するなどの理由から、大量合成には適していない。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、医薬や農薬等の生理活性物質、更には機能性材料の原料として有用な含フッ素カルボン酸誘導体を大量かつ安価に製造できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体、或いは下記一般式(IV)又は(V)で表される含フッ素エステル誘導体を酸性条件下で処理する工程を経て、下記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、下記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る、含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法に係るものである。
【0009】
【化4】
一般式(I):
(但し、この一般式(I)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、またR1及びR2は互いに同一であるか或いは異なっていてよく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【化5】
一般式(IV):
(但し、この一般式(IV)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、R4及びR5は互いに同一であるか或いは異なっていてよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、またR6は水素原子、又はR4又はR5と同一であってもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【化6】
一般式(V):
(但し、この一般式(V)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、R7は炭素数1〜6のアルキル基を表し、またR8は水素原子、又はR7と同一であってもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
一般式(II):
RfCH2CO2H
(但し、この一般式(II)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表す。)
一般式(III):
RfCH2CO2R3
(但し、この一般式(III)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、またR3は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0010】
本発明はまた、前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体と、前記一般式(IV)で表される含フッ素エステル誘導体と、前記一般式(V)で表される含フッ素エステル誘導体とからなる群より選択された少なくとも2種からなる混合物を酸性条件下で処理する工程を経て、一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、前記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る、含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法も提供するものである。
【0011】
本発明における前記一般式(I)〜(V)において、Rfは、直鎖状、分岐状又は環状構造をもつ炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であるのがよい。このようなパーフルオロアルキル基としては、CF3−をはじめ、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、(CF3)2CF−、CF3CF2CF2CF2−等が挙げられ、特にCF3−(トリフルオロメチル基)が好ましい。
【0012】
また、アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状構造をもち、その内部に窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等の置換基を有してもよい炭素数1〜6個のアルキル基又はシクロアルキル基であるのがよい。このようなアルキル基は、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、(CH3)2CH−、CH3CH2CH2CH2−等であってよい。
【0013】
また、本発明の出発原料である、前記一般式(I)、(IV)、(V)で表わされる含フッ素マロン酸誘導体又はエステル誘導体の合成方法としては、次式で示すように、例えば、安価で入手容易な(CF3)2CHCF2OCH3から四級アンモニウムエノラートを経由して合成する方法などが挙げられる(この合成方法は、特開昭58−57340号公報に開示されている)。
【0014】
【化7】
【0015】
上記の合成方法で得られる前記一般式(I)、(IV)、(V)で表される出発原料は、蒸留等の操作で精製して用いてもよいが、精製せずに混合物のまま用いてもよい。
【0016】
この場合、前記一般式(I)、(IV)、(V)で表される含フッ素マロン酸誘導体又はエステル誘導体が主成分であればよく、他のフッ素化合物を含んでいてもよい。このような他のフッ素化合物としては、前記一般式(IV)の化合物にアルコールが付加したオルソエステル(これは、特開昭58−57340号公報に記載されている)が挙げられる。
【0017】
また、本発明において前記酸性条件に使用する酸は、特に限定するものではないが、例えば、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、フッ化水素、フッ酸、塩化水素、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、過臭素酸、過沃素酸等のハロゲン化水素又はハロゲン化水素酸、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、又は過ハロゲン酸;
フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸等のスルホン酸又はポリスチレンスルホン酸等のポリマー担持スルホン酸;
ギ酸、酢酸、クロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;
BF3、BCl3、AlCl3、SbF3、SbCl3、SbF6、PF3、PF5、TiCl4等のルイス酸;
HBF5、HSbF6、HPF6、HAsF4、HSbCl6等のルイス酸とハロゲン化水素からなる酸との錯体;
又はこれらの混合物;
を例示することができる。なかでも、安価な硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸等が好ましく、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を合成する場合は、生成物の収率が高くてエステル体の混入率が低いという観点から、臭化水素酸が特に好ましい。
【0018】
この場合、臭化水素酸で処理することによって、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を得ること、特に前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体を臭化水素酸で処理することによって、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を得るのがよい。
【0019】
前記酸性条件下での処理温度、即ち反応温度は0℃〜200℃でよいが、好ましくは40℃〜150℃、更に好ましくは60℃〜130℃である。
【0020】
この反応を促進させるために、触媒量の四級アンモニウム塩等の層間移動触媒を添加してもよい。このような四級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどを例示することができる。
【0021】
また、前記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルは、対応する前記一般式(II)で表されるカルボン酸を単離した後に、これを通常の方法を用いてエステルへ変換でき、また、前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体の脱炭酸反応の終了後に、精製することなしに反応系内でアルコールと反応させ、対応するエステルを合成することもできる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1 トリフルオロメチルマロン酸ジメチルからの臭化水素酸による3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の合成
【0024】
トリフルオロメチルマロン酸ジメチル(20g、100mmol)に47%臭化水素酸(58ml、500mmol)を加え、120℃で3.5時間加熱還流した。
【0025】
反応物を冷却し、ジイソプロピルエーテル(50ml)、NaCl(15g)を加えて分液し、水層にジイソプロピルエーテル(50ml)を加えて再度抽出した後、有機層を集めて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0026】
溶媒を減圧留去し、減圧蒸留することにより、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を9.4g得た(収率73%)。この生成物の分析データは次の通りであった。
【0027】
沸点:75〜81℃/49Torr
1H−NMR(CDCl3):δ3.26(dq,J=0.6,9.9Hz,2H),8.30−8.90(brs,1H)
19F−NMR(CDCl3):δ−64.09(t,J=9.9Hz,3F)
【0028】
実施例2 トリフルオロメチルマロン酸ジメチルからの塩酸による3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の合成
【0029】
トリフルオロメチルマロン酸ジメチル(1g、5mmol)に濃塩酸(3.3ml)を加え、120℃で15.5時間加熱還流した。
【0030】
反応物を冷却し、内部標準としてトリフルオロ酢酸(3mmol)を加え、19F−NMRで収率を換算したところ、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸が70%で生成していることが分った。
【0031】
実施例3 1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルからの3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の合成
【0032】
1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル(15.54ml、100mmol)に26℃でトリエチルアミン(27.82ml、200mmol)を滴下した。
【0033】
その後、同温度で3時間攪拌した後、内部温度15℃以下でメタノール(16.18ml、400mmol)を注意深く滴下した。内部温度10℃で16時間攪拌した後、内部温度15℃以下で冷水(15ml)を滴下し、しかる後に15分間攪拌した。2層分離した反応溶液を分液ロートで分液し、粗生成物19gを得た。
【0034】
得られた粗生成物を実施例1と同様に処理し、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を6.5g得た(収率51%)。
【0035】
実施例4 トリフルオロメチルマロン酸ジメチルからの硫酸による3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルの合成
【0036】
トリフルオロメチルマロン酸ジメチル(15.7g、78.5mmol)に9M−硫酸水溶液(52ml)を加え、120℃で15時間加熱還流した(この時点の主生成物は3,3,3−トリフルオロプロピオン酸であった)。
【0037】
反応物を冷却後、反応溶液から直接蒸留することにより、エステル化反応が進行し、沸点65〜81℃/760Torrの留分である3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルとメタノールとの混合物8.9gを得た。この混合物を水洗、アルカリ洗浄及び乾燥することにより、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルを5.45g(収率49%)得た。この生成物の分析データは次の通りであった。
【0038】
1H−NMR(CDCl3):δ3.16(q,J=10.1Hz,2H),3.75(s,3H)
19F−NMR(CDCl3):δ−64.08(t,J=10.1Hz,3F
)
【0039】
【発明の作用効果】
本発明は、上述したように、前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体、或いは前記一般式(IV)又は(V)で表される含フッ素エステルを酸性条件下で処理する工程を経て、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、前記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得るようにしているので、医薬や農薬等の生理活性物質、更には機能性材料の原料として有用な含フッ素カルボン酸誘導体を容易に大量かつ安価に製造することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬や農薬等の生理活性物質、更には機能性材料の原料として有用な含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機化合物にフッ素を導入すると、その高い電子求引性、炭素との高い結合力、脂溶性効果等により、元の化合物の性質が著しく変化する。このようなフッ素原子の独特の性質を利用して、医薬、農薬、機能性材料へのフッ素導入が盛んに行われており、その合成のために、既知化合物の原料と類似の構造を持つ含フッ素ビルディングブロックが設計され、合成されている(「90年代のフッ素生理活性物質」石川延男監修CMC社刊(1991)、「フッ素系材料の最新動向」山辺正顕、松尾仁編集CMC社刊(1994))。
【0003】
また、RfCH2CO2Hで表される含フッ素カルボン酸も、種々の化合物の含フッ素合成中間体(Tetrahedron Lett. 1996,37,1829)として、また含フッ素機能性材料(J.Am.Chem.Soc,1951,73,2323)として用いられている。
【0004】
従来、RfCH2CO2Hは、1,1−ジフルオロエチレンを出発原料として多工程で合成する方法(例えば、下記の文献1参照)、マロン酸モノエステルを四フッ化硫黄により対応するエステル体:CF3CH2CO2Rとし、酸性条件下で加水分解して合成する方法(例えば、下記の文献2参照)などが報告されている。
【0005】
【文献1】
J. Fluorine Chem.,1982, 21(2), 99
【文献2】
J. Chem. Eng. Data, 1971, 16(3), 376
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した各文献に示された方法はいずれも、用いる試薬が高価であったり、多工程を要することや、特殊な設備を要するなどの理由から、大量合成には適していない。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、医薬や農薬等の生理活性物質、更には機能性材料の原料として有用な含フッ素カルボン酸誘導体を大量かつ安価に製造できる方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体、或いは下記一般式(IV)又は(V)で表される含フッ素エステル誘導体を酸性条件下で処理する工程を経て、下記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、下記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る、含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法に係るものである。
【0009】
【化4】
一般式(I):
(但し、この一般式(I)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、またR1及びR2は互いに同一であるか或いは異なっていてよく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【化5】
一般式(IV):
(但し、この一般式(IV)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、R4及びR5は互いに同一であるか或いは異なっていてよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、またR6は水素原子、又はR4又はR5と同一であってもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【化6】
一般式(V):
(但し、この一般式(V)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、R7は炭素数1〜6のアルキル基を表し、またR8は水素原子、又はR7と同一であってもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
一般式(II):
RfCH2CO2H
(但し、この一般式(II)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表す。)
一般式(III):
RfCH2CO2R3
(但し、この一般式(III)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、またR3は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0010】
本発明はまた、前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体と、前記一般式(IV)で表される含フッ素エステル誘導体と、前記一般式(V)で表される含フッ素エステル誘導体とからなる群より選択された少なくとも2種からなる混合物を酸性条件下で処理する工程を経て、一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、前記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る、含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法も提供するものである。
【0011】
本発明における前記一般式(I)〜(V)において、Rfは、直鎖状、分岐状又は環状構造をもつ炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であるのがよい。このようなパーフルオロアルキル基としては、CF3−をはじめ、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、(CF3)2CF−、CF3CF2CF2CF2−等が挙げられ、特にCF3−(トリフルオロメチル基)が好ましい。
【0012】
また、アルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状構造をもち、その内部に窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子又はフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等の置換基を有してもよい炭素数1〜6個のアルキル基又はシクロアルキル基であるのがよい。このようなアルキル基は、CH3−、CH3CH2−、CH3CH2CH2−、(CH3)2CH−、CH3CH2CH2CH2−等であってよい。
【0013】
また、本発明の出発原料である、前記一般式(I)、(IV)、(V)で表わされる含フッ素マロン酸誘導体又はエステル誘導体の合成方法としては、次式で示すように、例えば、安価で入手容易な(CF3)2CHCF2OCH3から四級アンモニウムエノラートを経由して合成する方法などが挙げられる(この合成方法は、特開昭58−57340号公報に開示されている)。
【0014】
【化7】
【0015】
上記の合成方法で得られる前記一般式(I)、(IV)、(V)で表される出発原料は、蒸留等の操作で精製して用いてもよいが、精製せずに混合物のまま用いてもよい。
【0016】
この場合、前記一般式(I)、(IV)、(V)で表される含フッ素マロン酸誘導体又はエステル誘導体が主成分であればよく、他のフッ素化合物を含んでいてもよい。このような他のフッ素化合物としては、前記一般式(IV)の化合物にアルコールが付加したオルソエステル(これは、特開昭58−57340号公報に記載されている)が挙げられる。
【0017】
また、本発明において前記酸性条件に使用する酸は、特に限定するものではないが、例えば、硫酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸、フッ化水素、フッ酸、塩化水素、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、過臭素酸、過沃素酸等のハロゲン化水素又はハロゲン化水素酸、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、又は過ハロゲン酸;
フルオロスルホン酸、クロロスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸等のスルホン酸又はポリスチレンスルホン酸等のポリマー担持スルホン酸;
ギ酸、酢酸、クロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;
BF3、BCl3、AlCl3、SbF3、SbCl3、SbF6、PF3、PF5、TiCl4等のルイス酸;
HBF5、HSbF6、HPF6、HAsF4、HSbCl6等のルイス酸とハロゲン化水素からなる酸との錯体;
又はこれらの混合物;
を例示することができる。なかでも、安価な硫酸、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸等が好ましく、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を合成する場合は、生成物の収率が高くてエステル体の混入率が低いという観点から、臭化水素酸が特に好ましい。
【0018】
この場合、臭化水素酸で処理することによって、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を得ること、特に前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体を臭化水素酸で処理することによって、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を得るのがよい。
【0019】
前記酸性条件下での処理温度、即ち反応温度は0℃〜200℃でよいが、好ましくは40℃〜150℃、更に好ましくは60℃〜130℃である。
【0020】
この反応を促進させるために、触媒量の四級アンモニウム塩等の層間移動触媒を添加してもよい。このような四級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどを例示することができる。
【0021】
また、前記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルは、対応する前記一般式(II)で表されるカルボン酸を単離した後に、これを通常の方法を用いてエステルへ変換でき、また、前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体の脱炭酸反応の終了後に、精製することなしに反応系内でアルコールと反応させ、対応するエステルを合成することもできる。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0023】
実施例1 トリフルオロメチルマロン酸ジメチルからの臭化水素酸による3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の合成
【0024】
トリフルオロメチルマロン酸ジメチル(20g、100mmol)に47%臭化水素酸(58ml、500mmol)を加え、120℃で3.5時間加熱還流した。
【0025】
反応物を冷却し、ジイソプロピルエーテル(50ml)、NaCl(15g)を加えて分液し、水層にジイソプロピルエーテル(50ml)を加えて再度抽出した後、有機層を集めて無水硫酸マグネシウムで乾燥した。
【0026】
溶媒を減圧留去し、減圧蒸留することにより、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を9.4g得た(収率73%)。この生成物の分析データは次の通りであった。
【0027】
沸点:75〜81℃/49Torr
1H−NMR(CDCl3):δ3.26(dq,J=0.6,9.9Hz,2H),8.30−8.90(brs,1H)
19F−NMR(CDCl3):δ−64.09(t,J=9.9Hz,3F)
【0028】
実施例2 トリフルオロメチルマロン酸ジメチルからの塩酸による3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の合成
【0029】
トリフルオロメチルマロン酸ジメチル(1g、5mmol)に濃塩酸(3.3ml)を加え、120℃で15.5時間加熱還流した。
【0030】
反応物を冷却し、内部標準としてトリフルオロ酢酸(3mmol)を加え、19F−NMRで収率を換算したところ、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸が70%で生成していることが分った。
【0031】
実施例3 1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテルからの3,3,3−トリフルオロプロピオン酸の合成
【0032】
1,1,3,3,3−ペンタフルオロ−2−トリフルオロメチルプロピルメチルエーテル(15.54ml、100mmol)に26℃でトリエチルアミン(27.82ml、200mmol)を滴下した。
【0033】
その後、同温度で3時間攪拌した後、内部温度15℃以下でメタノール(16.18ml、400mmol)を注意深く滴下した。内部温度10℃で16時間攪拌した後、内部温度15℃以下で冷水(15ml)を滴下し、しかる後に15分間攪拌した。2層分離した反応溶液を分液ロートで分液し、粗生成物19gを得た。
【0034】
得られた粗生成物を実施例1と同様に処理し、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸を6.5g得た(収率51%)。
【0035】
実施例4 トリフルオロメチルマロン酸ジメチルからの硫酸による3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルの合成
【0036】
トリフルオロメチルマロン酸ジメチル(15.7g、78.5mmol)に9M−硫酸水溶液(52ml)を加え、120℃で15時間加熱還流した(この時点の主生成物は3,3,3−トリフルオロプロピオン酸であった)。
【0037】
反応物を冷却後、反応溶液から直接蒸留することにより、エステル化反応が進行し、沸点65〜81℃/760Torrの留分である3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルとメタノールとの混合物8.9gを得た。この混合物を水洗、アルカリ洗浄及び乾燥することにより、目的の3,3,3−トリフルオロプロピオン酸メチルを5.45g(収率49%)得た。この生成物の分析データは次の通りであった。
【0038】
1H−NMR(CDCl3):δ3.16(q,J=10.1Hz,2H),3.75(s,3H)
19F−NMR(CDCl3):δ−64.08(t,J=10.1Hz,3F
)
【0039】
【発明の作用効果】
本発明は、上述したように、前記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体、或いは前記一般式(IV)又は(V)で表される含フッ素エステルを酸性条件下で処理する工程を経て、前記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、前記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得るようにしているので、医薬や農薬等の生理活性物質、更には機能性材料の原料として有用な含フッ素カルボン酸誘導体を容易に大量かつ安価に製造することができる。
Claims (8)
- 下記一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体を酸性条件下で処理する工程を経て、下記一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、下記一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る、含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法。
【化1】
一般式(I):
(但し、この一般式(I)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、またR1及びR2は互いに同一であるか或いは異なっていてよく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
一般式(II):
RfCH2CO2H
(但し、この一般式(II)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表す。)
一般式(III):
RfCH2CO2R3
(但し、この一般式(III)中、Rfはパーフルオロアルキル基を表し、またR3は炭素数1〜6のアルキル基を表す。) - 請求項1に記載した一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体と、請求項2に記載した一般式(IV)で表される含フッ素エステル誘導体と、請求項3に記載した一般式(V)で表される含フッ素エステル誘導体とからなる群より選択された少なくとも2種からなる混合物を酸性条件下で処理する工程を経て、請求項1に記載した、一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸と、一般式(III)で表される含フッ素カルボン酸エステルとの少なくとも一方を得る、含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法。
- 前記酸性条件に用いる酸を臭化水素酸とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載した製造方法。
- 臭化水素酸で処理することによって、請求項1に記載した一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を得る、請求項5に記載した製造方法。
- 請求項1に記載した一般式(I)で表される含フッ素マロン酸誘導体を臭化水素酸で処理することによって、請求項1に記載した一般式(II)で表される含フッ素カルボン酸を得る、請求項6に記載した製造方法。
- Rfがトリフルオロメチル基である、請求項1〜7のいずれか1項に記載した製造方法。
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JP2002276906A JP2004115377A (ja) | 2002-09-24 | 2002-09-24 | 含フッ素カルボン酸誘導体の製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2008019213A (ja) * | 2006-07-13 | 2008-01-31 | Sagami Chem Res Center | 含フッ素プロピオン酸誘導体の製造方法 |
US7880033B2 (en) | 2005-11-01 | 2011-02-01 | Central Glass Company, Limited | Process for producing 3,3,3-trifluoropropionic acid |
JP2014108925A (ja) * | 2012-11-30 | 2014-06-12 | Kanto Denka Kogyo Co Ltd | 3,3,3−トリフルオロプロピオニル化合物の製造方法 |
US20220227696A1 (en) * | 2019-06-04 | 2022-07-21 | 3M Innovative Properties Company | Multifunctional Fluorinated Compound, Fluorinated Polymers Made from the Compound, and Related Methods |
-
2002
- 2002-09-24 JP JP2002276906A patent/JP2004115377A/ja active Pending
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