JP2004108714A - 円筒状構造物内壁面の汚染部除去方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円筒状構造物の内壁面をモニターで観察し、構造物内に配設された複数のヘッドを円筒軸方向に移動して検知された内壁面の汚染部に対向させ、各ヘッドを内壁面の略垂直軸まわりに自転させ、かつ円筒軸まわりに公転させ、各ヘッドに保持させた剛毛または切削刃を内壁面に圧接することで、内壁面を擦削または切削する。各ヘッドを円筒軸方向に2段に配設し、各段のヘッドを互いに逆方向に公転させるのが好ましい。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼却炉や加熱炉の煙突など円筒状構造物の内壁面に生じたダイオキシン等の有害物による汚染部を、該構造物の補修や解体に際して安全にかつ効率的に除去するための方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来使用されていた焼却炉や加熱炉には、操業中にダイオキシン等の有害物が発生し、煙突や煙道の内壁面がこれら有害物で汚染されているものがある。このような煙突や煙道を補修し、あるいは解体する場合、作業者が害を受けないように、また有害物が周囲に飛散しないように、汚染部をあらかじめ除去しておくことが必要である。そして除去作業も、作業者の安全が確保され、かつ有害物の拡散が阻止されるものでなければならない。
【0003】
煙突など円筒状構造物の内壁面表層を人手によらず除去するための従来技術として、下記特許文献1には、筒身内を昇降するゴンドラに取り付けたノズルからブラスト噴射することにより、内壁面ライニングの煤落とし清掃や脆化層除去を行うことが記載されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−184034号公報
【0005】
また下記特許文献2には、削岩機型はつり装置により内面ライニングを正確な深さにはつり落とすための装置が開示されている。さらに下記特許文献3および下記特許文献4には、内面ライニング材を回転カッターにより効率的に除去することが開示されている。
【0006】
【特許文献2】
特開平9−32350号公報
【0007】
【特許文献3】
特開平11−200640号公報
【0008】
【特許文献4】
特開2001−32535号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
煙突など円筒状構造物内壁面の有害物による汚染部を除去するにあたり、ブラスト噴射を行うと、内壁面の破砕粉とともに多量の粉砕ブラスト材が発生し、これら廃棄物は有害物を含有しているので、その処理設備や運転のためのコスト増大といった問題がある。
【0010】
ブラスト材を水とともに噴射する場合もあり、高圧水を単独で噴射することも考えられるが、いずれも有害物を含む多量の水を処理するため同様にコスト増大の問題がある。
削岩機型はつり装置や回転カッターによりライニング材を削り落とす場合は、有害物で汚染された層よりも内側まで深く削り落とすことになり、有害物を含む多量の廃棄物を処理するため同様にコスト増大の問題がある。
【0011】
そこで本発明が解決しようとする課題は、焼却炉や加熱炉の煙突など円筒状構造物の補修や解体に際して、内壁面に生じたダイオキシン等の有害物による汚染部を、人手によらず安全にかつ効率的に除去し、除去作業での廃棄物発生量を抑制するとともに、作業コストおよび廃棄物処理コストを必要最小限に抑えることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明法は、円筒状構造物の内壁面をモニターで観察し、該構造物内に配設された複数のヘッドを円筒軸方向に移動して検知された内壁面の汚染部に対向させ、各ヘッドを内壁面の略垂直軸まわりに自転させ、かつ円筒軸まわりに公転させ、各ヘッドに保持させた剛毛の毛先を内壁面に圧接することで、内壁面を擦削することを特徴とする円筒状構造物内壁面の汚染部除去方法である。
【0013】
そして、上記本発明法における剛毛に替えて切削刃を各ヘッドに保持させ、切削刃を内壁面に圧接することで、内壁面を切削することもできる。
また、各ヘッドを円筒軸方向に2段に配設し、各段のヘッドを互いに逆方向に公転させることが好ましい。
【0014】
上記課題を解決するための本発明装置は、円筒状構造物の内壁面を観察するモニターと、該構造物内に設けられる互いに連結した駆動部と作動部と保持部からなり、駆動部には円筒状構造物内にて駆動部を円筒軸方向に移動するための移動機構が設けられ、円筒軸方向を軸として回転するシャフトと駆動源を有し、作動部はシャフトの回転により円筒軸周りに公転するフレームと、フレームから内壁面に向けて放射状に伸びかつシャフトの回転によりロッド軸まわりに自転する複数のロッドと、各ロッドの先端に取り付けられたヘッドと、各ヘッドの内壁面側に保持された剛毛とを有し、保持部はシャフトを中心に開閉して内壁面に当接しシャフトを円筒軸の位置に保持する3組以上のリンクと、リンクの開閉機構を有していることを特徴とする円筒状構造物内壁面の汚染部除去装置である。
【0015】
そして、上記本発明装置における剛毛に替えて切削刃が各ヘッドに保持されたものとすることもできる。
また、円筒軸方向に2段のフレームを有し、各フレームが互いに逆方向に公転する機構でシャフトに連結されていることが好ましい。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明法を図1の例により説明する。本例は煙突に適用した例である。本発明法は、まず煙突1の内壁面2をモニター6で観察し、煙突1内に配設された複数のヘッド13を円筒軸9の方向に、本例では上下方向に移動して、検知された内壁面2の汚染部に対向させる。モニター6は、図1の例のほか、任意の位置に取り付けることもできる。複数のヘッド13は、図2のように円筒軸9を中心として、本例では4個配設されている。図1の例では、複数のヘッド13が円筒軸9の方向に2段に配設されている。
【0017】
次いで各ヘッド13を内壁面2の略垂直軸まわりに自転させ、かつ円筒軸9のまわりに公転させ、各ヘッド13に保持させた剛毛14の毛先を内壁面2に圧接することで内壁面2を擦削し、汚染部を除去する。図1および図2の例では、先端にヘッド13を取り付けたロッド12をロッド軸まわりに回転させることで各ヘッド13を自転させる。そして、円筒軸9と軸を一致させたシャフト10を円筒軸9まわりに回転させることで各ヘッド13を公転させる。
【0018】
ロッド12は内壁面2に向けて自由に伸びる構造にしておき、円筒軸9まわりの公転による遠心力で、先端の剛毛14の毛先を内壁面2に圧接することができる。また、バネやエアシリンダー等によりヘッド13を外方に移動させることで、圧接することもできる。
剛毛14を保持したヘッド13は、いわゆるブラシであって、剛毛14としては金属ブラシに使用される高剛性の細いワイヤ、プラスチック、シュロ、竹などを使用することができる。
【0019】
そして本発明法において、剛毛14に替えて図3の例のように切削刃39を各ヘッド13に保持させ、ヘッド13を回転させながら切削刃39を内壁面2に圧接することで、内壁面2を切削し汚染部を除去することもできる。切削刃39は剛毛14で除去しきれなかった汚染部、特に割れ目や継ぎ目などに入り込んだ汚染部を除去するのに効果的である。
また、図1のように各ヘッド13を円筒軸9方向に2段に配設し、各段のヘッド13を互いに逆方向に公転させることで、より効果的に汚染部を除去することができる。
【0020】
本発明法において、作動部4あるいは駆動部3にノズルを設け、水などの液体を内壁面2に供給することで擦削や切削の効果を高め、かつ削られた内壁面2を洗浄し、モニター観察による残存汚染部の検出を確実にするとともに、補修や解体時に有害物を含む細粉による害を防止することができる。この場合の液体供給は必要最小限とし、内壁面2から除かれた削粉とともに廃棄物処理する。
【0021】
次に本発明装置について説明する。図1の例のように、本発明装置は、煙突1など円筒状構造物の内壁面2を観察するモニター6と、該構造物内に設けられる互いに連結した駆動部3と作動部4と保持部5からなる。モニター6は、図1の例では保持部5の下端に取り付けているが、このほか駆動部3や作動部4に取り付けてもよい。また、これら各部と連結させず、独立に円筒軸9方向に移動可能に設けてもよく、さらに筒内の端部に固定してもよい。
【0022】
駆動部3には、煙突1などの内部にて駆動部3を円筒軸9方向に移動するための移動機構が設けられている。本例では、煙突1の上方と下端部にそれぞれ滑車21を設け、駆動部3と、作動部4を経て駆動部3に連結する保持部5との間に、両滑車21と2個のリール22を経てワイヤー20を張設し、両リール22の間に設けた牽引機23でワイヤー20を長さ方向に移動させることにより、駆動部3および駆動部3に連結する作動部4と保持部5を円筒軸9方向に移動させる機構としている。牽引機23はブレーキ機構を有し、目標とする移動位置で停止できるようにしている。
【0023】
駆動部3は、円筒軸9方向を回転軸とするシャフト10と駆動源を有している。本例では、モーター8をシャフト10の回転駆動源とし、油圧シリンダー7を保持部5の駆動源としている。シャフト10の駆動源としては、このほかエンジン等を採用することもできる。
【0024】
作動部4は、フレーム11、ロッド12、ヘッド13、剛毛14を有する。図2の例に示すように、フレーム11の中心部をシャフト10が貫通し、ロッド12はフレーム11から内壁面2に向けて複数本、本例では4本、放射状に伸び、各ロッド12の先端にヘッド13と、各ヘッドの内壁面2側に剛毛14が保持されている。シャフト10は、軸心が煙突1の円筒軸9と一致するように、後記保持部5により保持される。フレーム11はシャフト10の回転により円筒軸9まわりに公転し、各ロッド12はシャフト10の回転によりロッド軸まわりに自転する。
【0025】
公転および自転の機構例を図7に示す。フレーム11はシャフト10のまわりを回転自在に取り付けてある。本例では、駆動部のハウジング30を上下に貫通する軸を介して、歯車31,32,33,34により、モーター8の回転でフレーム11が円筒軸9まわりに公転する。ロッド12はフレーム11を回転自在に貫通して、傘歯車35,36によりシャフト10の回転で自転する。
【0026】
フレーム11の公転により、各ロッド12および各ヘッド13も円筒軸9まわりに公転し、公転の遠心力により各ヘッド13に保持された剛毛14が内壁面2に圧接される。圧接の機構例を図4,図5,図6に示す。
図4の例は、ロッド12の軸心にスプライン軸24を嵌合させ、スプライン軸24の先端にヘッド13を固設している。ロッド12の公転により遠心力でスプライン軸24が外方に移動し、ヘッド13に保持された剛毛14が内壁面2に圧接される。公転を停止すると、スプリング25によりスプライン軸24は内方に移動し、圧接が解除される。
【0027】
図5の例は、ロッド12とヘッド13をユニバーサルジョイント27で接続している。またロッド12を分割して別のユニバーサルジョイント27で連結し、ヘッド13側のロッド12を、リング28を介してスプリング26でフレーム11に接続している。公転の遠心力が、ロッド12の分割部で屈曲を直線化する方向に作用し、ヘッド13に保持された剛毛14が内壁面2に圧接される。公転を停止すると、スプリング26によりロッド12は分割部の屈曲が大となり圧接が解除される。
図6の例は、ロッド12を2分割しパンタグラフ29で接続している。公転の遠心力でパンタグラフ29が伸びて、ヘッドに保持された剛毛14が内壁面2に圧接される。公転を停止すると、パンタグラフ29が縮み圧接が解除される。
【0028】
また図4〜図6の例において、スプリング25,26を反対方向に作用させることで13を外方に移動させ、剛毛14を内壁面2に圧接させる機構とすることもできる。さらにまた、ロッド12の軸心部に圧縮空気を通し、エアシリンダーによりヘッド13を外方に移動させることで剛毛14を内壁面2に圧接させる機構とすることもできる。
【0029】
保持部5は、図1の例のように、3組以上のリンク16とリンク16の開閉機構を有している。各リンク16は、シャフト10を中心に傘骨のように開閉する。シャフト10下端部には支持枠19が上下動可能に嵌合し、支持枠19とリンク16を支持棒18で連結している。駆動部3の油圧シリンダー7によって支持枠19を上昇させることで、傘を開くようにリンク16が開き、先端の接触端17が内壁面2に当接して、シャフト10を円筒軸9の位置に保持する。
【0030】
本発明装置における剛毛14に替えて、図3に示すような切削刃44をビス45などで各ヘッド13に保持させることもできる。剛毛14と切削刃44は、状況に応じて使い分けできるように、それぞれを保持したヘッド13をロッド12に対して着脱できる方式とすることができる。またヘッド13を2分割して、先端側に剛毛14または切削刃44保持させ、ヘッド13の分割部を着脱できるようにしてもよい。
【0031】
また、作動部4は円筒軸方向に2段のフレーム11を有し、各フレーム11が互いに逆方向に公転する機構でシャフト10に連結されていることが好ましい。その機構例を図8に示す。シャフト10に回転自在に貫通している2段の各フレーム11,11は、ファーガソンの不思議歯車機構37,38によってシャフト10の回転を互いに逆方向に伝達される。
【0032】
2段の各フレーム11,11を互いに逆方向に回転させる機構としては、このほか遊星歯車機構などを採用することができる。図9に遊星歯車機構の例を示す。各フレーム11,11には内歯歯車が形成され、上段フレーム11の内歯歯車は、遊星歯車41を経て太陽歯車39に歯合している。太陽歯車39はシャフト10に軸を一致して固定され、遊星歯車41はハウジング30に軸を固定されているので、上段フレーム11はシャフト10の回転と逆方向に回転する。シャフト10と上段フレーム11の回転比は、太陽歯車39、遊星歯車41および内歯歯車の歯数によって定まる。
【0033】
下段フレーム11の内歯歯車は、遊星歯車42を経て太陽歯車40に歯合している。太陽歯車40はシャフト10に軸を一致して固定され、あるいは回転自在に軸支されており、遊星歯車42はシャフト10に固定された腕43に回転自在に軸支されているので、下段フレーム11はシャフト10の回転と同方向に回転する。シャフト10と下段フレーム11の回転比は、太陽歯車40、遊星歯車42および内歯歯車の歯数と、太陽歯車40がシャフトに固定されているか否かによって定まる。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、焼却炉や加熱炉の煙突など円筒状構造物の補修や解体に際して、内壁面に生じたダイオキシン等の有害物による汚染部を、人手によらず安全にかつ効率的に除去することができる。除去作業では、廃棄物発生量が抑制されるので、作業コストおよび廃棄物処理コストを必要最小限に抑えられる。
特にゴミ焼却炉においては、ダイオキシンの発生する従来設備が使用できなくなっているので、その解体に本発明が顕著な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明例を示す全体説明図である。
【図2】本発明におけるヘッドの配置例を示す平面図である。
【図3】本発明における切削刃の例を示し、(a)は平面図(b)は側面図である。
【図4】本発明におけるロッドとヘッドの例を示す側面図である。
【図5】本発明におけるロッドとヘッドの別の例を示す側面図である。
【図6】本発明におけるロッドとヘッドの別の例を示す側面図である。
【図7】本発明におけるヘッドの自転および公転の機構例を示す正面図である。
【図8】本発明における2段のヘッドの公転の機構例を示す正面図である。
【図9】本発明における2段のヘッドの公転の別の機構例を示す正面図である。
【符号の説明】
1:煙突 2:内壁面
3:駆動部 4:作動部
5:保持部 6:モニター
7:油圧シリンダー 8:モーター
9:円筒軸 10:シャフト
11:フレーム 12:ロッド
13:ヘッド 14:剛毛
15:保持枠 16:リンク
17:接触端 18:支持棒
19:支持枠 20:ワイヤー
21:滑車 22:リール
23:牽引機 24:スプライン軸
25、26:スプリング 27:ユニバーサルジョイント
28:リング 29:パンタブラフ
30:ハウジング
31,32,33,34:歯車 35,36:傘歯車
37,38:ファーガソンの不思議歯車機構
39,40:太陽歯車 41,42:遊星歯車
43:腕 44:切削刃
45:ビス
Claims (6)
- 円筒状構造物の内壁面をモニターで観察し、該構造物内に配設された複数のヘッドを円筒軸方向に移動して検知された内壁面の汚染部に対向させ、各ヘッドを内壁面の略垂直軸まわりに自転させ、かつ円筒軸まわりに公転させ、各ヘッドに保持させた剛毛の毛先を内壁面に圧接することで、内壁面を擦削することを特徴とする円筒状構造物内壁面の汚染部除去方法。
- 請求項1における剛毛に替えて切削刃を各ヘッドに保持させ、切削刃を内壁面に圧接することで、内壁面を切削することを特徴とする円筒状構造物内壁面の汚染部除去方法。
- 各ヘッドを円筒軸方向に2段に配設し、各段のヘッドを互いに逆方向に公転させることを特徴とする請求項1または2記載の円筒状構造物内壁面の汚染物除去方法。
- 円筒状構造物の内壁面を観察するモニターと、該構造物内に設けられる互いに連結した駆動部と作動部と保持部からなり、駆動部には円筒状構造物内にて駆動部を円筒軸方向に移動するための移動機構が設けられ、円筒軸方向を軸として回転するシャフトと駆動源を有し、作動部はシャフトの回転により円筒軸周りに公転するフレームと、フレームから内壁面に向けて放射状に伸びかつシャフトの回転によりロッド軸まわりに自転する複数のロッドと、各ロッドの先端に取り付けられたヘッドと、各ヘッドの内壁面側に保持された剛毛とを有し、保持部はシャフトを中心に開閉して内壁面に当接しシャフトを円筒軸の位置に保持する3組以上のリンクと、リンクの開閉機構を有していることを特徴とする円筒状構造物内壁面の汚染部除去装置。
- 請求項4における剛毛に替えて切削刃が各ヘッドに保持されていることを特徴とする円筒状構造物内壁面の汚染部除去装置。
- 円筒軸方向に2段のフレームを有し、各フレームが互いに逆方向に公転する機構でシャフトに連結されていることを特徴とする請求項4または5記載の円筒状構造物内壁面の汚染部除去装置。
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