JP2004107808A - 紡機の繊維束集束装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】繊維束集束装置は、ドラフト装置の最終送出ローラ対の下流側に設けられ、送出部と、送出部のニップ点に対して繊維束の移動方向の上流側に設けられた吸引孔32aを備えた摺動面32bを有する吸引パイプ32とを備えている。送出部を構成するボトムニップローラ35aを挟んで吸引パイプ32と反対側に巻掛け部材33が設けられている。吸引パイプ32、巻掛け部材33及びボトムニップローラ35aに通気エプロン34が巻き掛けられている。吸引パイプ32には通気エプロン34の横ずれを防止する規制ガイド49が一体に形成されている。規制ガイド49は吸引パイプ32の上面前側に長手方向に沿って延びるように形成された一段高い段差部50の一部を、通気エプロン34の幅に合わせて除去することにより形成されている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紡機の繊維束集束装置に係り、詳しくは例えば精紡機のドラフト装置(ドラフトパート)の下流に配置され、ドラフト装置でドラフトされた繊維束を集束する紡機の繊維束集束装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ドラフトされた繊維束を撚り掛けの前に予め集束し、毛羽の低減等の糸品質の向上を目的とした繊維束集束装置が種々提案されているが、基本の機能となる繊維束の集束・移送用としてエンドレスの多孔ベルト(多孔エプロン)が用いられる場合が多い(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照。)。
【0003】
前記多孔ベルトは繊維束の移動方向に延びる吸引孔を覆う状態で移動される。多孔ベルトの幅方向への移動(横移動)を規制するため、特許文献1には多孔ベルトの張力付与と案内のためにプラスチックからなる引張素子を設けることが開示されている。また、前記吸引孔を備えた中空プロフィルに多孔ベルトと係合する横方向ガイドを設けることが開示されている。また、特許文献2には多孔ベルトの緊張用の緊張ローラの横縁で多孔ベルトを横方向に案内することが開示されている。
【0004】
特許文献3に開示された装置では、本願明細書の図8(a),(b)に示すように、多孔エプロン71を具備した送出ローラ対72を備え、多孔エプロン71をガイドするエプロンガイド73に形成された溝孔を介して多孔エプロン71の搬送面に吸引気流が作用する。多孔エプロン71はエプロンガイド73と、送出ローラ72aと、張力付与部材74に巻き掛けられている。送出ローラ72aは、フロントボトムローラ(図示せず)と平行に配設された回転軸75の摩擦ローラ部75aとの摩擦により回転されるようになっている。多孔エプロン71は摩擦ローラ部75aの側面で横方向への移動が規制されるようになっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平11−286837号公報(段落番号[0022],[0030]、図1,7)
【特許文献2】
特開2000−34631号公報(段落番号[0018]、図1)
【特許文献3】
ドイツ特許出願公開DE19708410A1号公報(図2,3)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のような繊維束集束装置を装備した紡機で糸を紡出した場合は、繊維束集束装置を装備しない紡機で糸を紡出した場合に比較して、毛羽の発生が低下するとともに糸斑も低下してU%が向上するが、更なる向上が望まれている。
【0007】
従来の繊維束集束装置はニップ点を挟んで下流側においては糸品質の向上を図るための工夫はなされていなかった。本願発明者は、ニップ点の下流側にも通気エプロン(多孔エプロン)を介して繊維束に吸引作用を付与する吸引パイプを設けたり、ニップ点の下流側にフリースアングル(フリース角度)を大きくするため通気エプロンが巻き掛けられる巻掛け部材を設けることにより、糸品質を向上できる繊維束集束装置を考えた。この場合も通気エプロンの横ずれを防止する必要がある。なお、「フリースアングル」とは繊維束(フリース)がニップ点を通過した後、繊維束を引き出し位置まで案内する円弧面の曲率中心とニップ点とを結ぶ線分と、前記曲率中心と繊維束Fの引き出し点とを結ぶ線分との成す角度を意味する。
【0008】
ニップ点を挟んで上流側及び下流側の両方に通気エプロン(多孔エプロン)が巻き掛けられる巻掛け部材が存在する場合には、下流側に巻掛け部材が存在しない場合に比較して、通気エプロンの横方向(幅方向)への移動を規制する規制部材の存在が重要になる。通気エプロンはある程度の清掃周期あるいは寿命により交換が必要になる。ところが、吸引パイプや巻掛け部材の他に専用の規制部材を設ける構成では、通気エプロンの交換時に規制部材との係合を解除する分、交換に手間が掛かり、紡機1台あたり数百〜千もの通気エプロンの交換に時間が掛かる。また、特許文献3のように回転軸に特殊な加工を行う場合はコストが高くなる。
【0009】
本発明の目的は、簡単な構成で毛羽の発生を従来の繊維束集束装置より抑制させて糸品質を向上させることができ、通気エプロンの横移動を抑制できる紡機の繊維束集束装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、紡機のドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられ、前記ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置であって、ニップローラを備えた送出部と、前記送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向の上流側に設けられるとともに吸引用スリットを備えた案内面を有する吸引パイプと、前記送出部を構成するとともに前記案内面を摺動する状態で回転される通気エプロンとを備え、前記送出部のニップ点より繊維束の移動方向の下流側に前記通気エプロンの一部が巻き掛けられる巻掛け部材が前記吸引パイプと平行に設けられ、前記吸引パイプ及び前記巻掛け部材の少なくとも一方に前記通気エプロンの横ずれを防止する規制ガイドが一体に形成されている。
【0011】
この発明では、ドラフトパートでドラフトされた繊維束は、ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられた繊維束集束装置によって集束され、集束された状態で移動するため、繊維束集束装置の配設されない紡機に比較して、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質が改善される。また、ニップ点より下流側に吸引パイプと別体で設けられた巻掛け部材により、毛羽の発生抑制作用が高まり糸品質が向上する。繊維束の移送作用を行う通気エプロンは規制ガイドの作用により横ずれが防止された状態で移動(回動)されるため、繊維束の移送作用が安定して行われる。また、規制ガイドは吸引パイプ及び巻掛け部材の少なくとも一方に一体に形成されているため、専用の規制ガイドを吸引パイプ及び巻掛け部材と別に設けた場合に比較して構成が簡単になる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記規制ガイドは前記巻掛け部材に形成されている。この発明では、規制ガイドと通気エプロンとの間に風綿等が堆積した際の清掃除去が、規制ガイドが上流側の吸引パイプに形成されたものに比較して容易となる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記規制ガイドが形成された吸引パイプ又は巻掛け部材は、前記規制ガイドを形成すべき部分が一段高くなる段差部を有するように押出し成形され、前記規制ガイドは前記段差部を前記通気エプロンの幅に合わせて除去することにより形成されている。従って、この発明では、吸引パイプ又は巻掛け部材に規制ガイドを溶接や接着、あるいはねじ止めで取り付けて製造する場合に比較して製造が容易になる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図1〜図6に従って説明する。図1は吸引パイプ、巻掛け部材、通気エプロン等が組み付けられたユニットの一部省略模式斜視図、図2はドラフト装置の片側と繊維束集束装置とを示す一部破断概略側面図である。図3はドラフト装置のボトムローラと、繊維束集束装置の吸引部及びボトムニップローラとの関係を示すための、トップローラ側を省略した部分概略図である。図4(a)は繊維束集束装置をニップ点における繊維束引き出し方向(ドラフト装置における繊維束の移動方向前方)から見た概略図である。
【0015】
図2に示すように、ドラフトパートとしてのドラフト装置11はフロントボトムローラ12、ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14を備えた3線式の構成となっている。フロントボトムローラ12は機台フレームを構成するローラスタンド15に対して所定位置に支持され、ミドル及びバックの各ボトムローラ13,14はローラスタンド15に対して前後方向に位置調整可能に固定された支持ブラケット13a,14aを介して支持されている。支持ブラケット13a,14aはローラスタンド15に形成された長孔を貫通するボルト及びナット(いずれも図示せず)により所定位置に締め付け固定されるようになっている。ボトムエプロン16はボトムテンサ17と、ミドルボトムローラ13とに巻き掛けられている。
【0016】
ウエイティングアーム18にはフロントトップローラ19、ミドルトップローラ20及びバックトップローラ21が、フロントボトムローラ12、ミドルボトムローラ13及びバックボトムローラ14と対応する位置にトップローラ支持部材を介してそれぞれ支持されている。各トップローラ19〜21は2錘1組として支持されている。フロントボトムローラ12及びフロントトップローラ19がドラフト装置11の最終送出ローラ対を構成する。
【0017】
ウエイティングアーム18にはレバー18aが加圧位置と解放位置とに回動可能に配設されている。レバー18aが図2に示すウエイティングアーム18のフレーム18bと当接する加圧位置に配置された状態では、ウエイティングアーム18に支持された各トップローラ19〜21をボトムローラ12,13,14側に押圧する加圧位置(紡出位置)にロック状態で保持される。また、レバー18aが図2に示す状態から上方の解放位置に回動された状態では、前記ロック状態が解除されるようになっている。
【0018】
図2に示すように、ドラフト装置11の最終送出ローラ対の下流側に繊維束集束装置30が配設されている。繊維束集束装置30は送出部31、吸引パイプ32、巻掛け部材33及び通気エプロン34を備えている。送出部31はフロントボトムローラ12と平行に配設された回転軸35に形成されたニップローラとしてのボトムニップローラ35aと、ボトムニップローラ35aに通気エプロン34を介して押圧されるニップローラとしてのトップニップローラ31aとで構成されている。図2及び図5に示すように、吸引パイプ32はボトムニップローラ35aのニップ点より繊維束Fの移動方向上流側に、巻掛け部材33は下流側に位置するようにそれぞれ配設されている。
【0019】
この実施の形態の繊維束集束装置30は、図4(a)に示すように、トップニップローラ31aがドラフト装置11の各トップローラ19〜21と同様に2錘毎に、支持部材36(図2及び図5に図示)を介してウエイティングアーム18に支持されている。なお、この実施の形態では支持部材36はフロントトップローラ19の支持部材と一体に形成されている。
【0020】
一方、繊維束集束装置30のボトム側は、ドラフト装置11のローラスタンド15間に配置される錘の半分、この実施の形態では4錘分を1ユニットとして構成されている。機台長手方向に所定間隔で配設されたローラスタンド15の中間位置には、図3に示すように、機台長手方向に延設された支持ビーム37に基端側が支持された状態で支持アーム38が配設され、ローラスタンド15と支持アーム38との間に回転軸35が支持されている。
【0021】
図4(b)に示すように、回転軸35は複数錘(この実施の形態では4錘)と対応する所定長さに形成され、その両端に軸受39が固定されている。そして、図1に示すように、回転軸35は一対のエンドプラグ40に軸受39が嵌合された状態でユニットに組み付けられている。吸引パイプ32及び巻掛け部材33も、回転軸35が支持された一対のエンドプラグ40にそれぞれ両端部が嵌合された状態で支持されている。
【0022】
図4(a)に示すように、エンドプラグ40は、嵌合部40aにおいてローラスタンド15及び支持アーム38に設けられた支持部15a,38aに支持されて、回転軸35がローラスタンド15と支持アーム38との間に回転可能に支持されている。支持部15a,38aは、エンドプラグ40を2個支持可能に形成され、隣接する回転軸35の端部に取り付けられたエンドプラグ40を支持可能になっている。
【0023】
支持部15aはローラスタンド15上に固定されたブロックで構成され、機台前側斜め上方に向かって延びる嵌合凹部を有している。支持部38aも機台前側斜め上方に向かって延びる嵌合凹部を有している。そして、エンドプラグ40は両嵌合凹部と嵌合可能な嵌合部40aを有し、嵌合部40aにおいて支持部15a,38aに対してワンタッチで嵌合可能に形成されている。
【0024】
回転軸35にはギヤ41が回転軸35と一体回転可能に設けられている。ギヤ41は回転軸35の中央から1錘分端部側にずれた位置に設けられている。図3に示すように、フロントボトムローラ12にはギヤ41と対向する位置にギヤ部12aが形成されている。そして、前記支持アーム38と同様に、基端側が支持ビーム37に固定された支持アーム42に、中間ギヤ43が回転可能に支持され、中間ギヤ43はギヤ部12a及びギヤ41に噛合している。即ち、フロントボトムローラ12の回転力は、ギヤ部12a、中間ギヤ43及びギヤ41を介して回転軸35に伝達される。
【0025】
図2に示すように、精紡機機台にはその長手方向(図2の紙面と垂直方向)に延びるように、繊維束集束装置30用の吸引源(負圧源)としてのダクト44が配設されている。ダクト44にはダクト44内を負圧にするための吸引装置45がパイプ46を介して接続されている。吸引装置45としてファン47aをモータ47で駆動するファンモータが使用されている。図2に示すように、ダクト44はドラフト装置11の後側上方において紡機機台の中央に配設され、吸引装置45はダクト44の下方に配設されている。吸引パイプ32は長手方向の中央部に接続部32c(図1に図示)が形成され、ダクト44と平行に延びる状態で、接続部32cに嵌合される接続管48を介してダクト44に接続されている。
【0026】
吸引パイプ32は、ボトムニップローラ35aのニップ点を挟んで繊維束(フリース)Fの移動方向の上流側に延びる吸引用スリットとしての吸引孔32aが形成された案内面としての摺動面32bを有する。吸引パイプ32は、通気エプロン34をフロントボトムローラ12とフロントトップローラ19とのニップ点の近傍に至るように案内可能な形状に形成されている。
【0027】
図1及び図3等に示すように、吸引パイプ32には通気エプロン34の横ずれを防止する規制ガイド49が一体に形成されている。規制ガイド49は吸引パイプ32の上面前側(繊維束Fの移動方向下流側)に長手方向に沿って延びるように形成された一段高い段差部50の一部を通気エプロン34の幅に合わせて除去することにより形成されている。なお、図1では、吸引孔32a及び規制ガイド49を分かり易くするため、通気エプロン34の図示を一つおきにしている。
【0028】
規制ガイド49が一体形成された吸引パイプ32の製造を容易にするため、吸引パイプ32は規制ガイド49を形成すべき部分が一段高くなる段差部50を有するように押出し成形される。そして、段差部50を通気エプロン34の幅に合わせて除去する切削加工や、吸引孔32aの加工が行われる。
【0029】
巻掛け部材33は、通気エプロン34を摺動案内する案内面としての摺動面33aを有する。巻掛け部材33は、前記ニップ点と、繊維束Fがニップ点より下流側において通気エプロン34から離れる位置までの距離L(図6(a)に図示)が5mm以上、好ましくは8〜10mmとなるように設けられている。巻掛け部材33はバー状の充実体で形成されている。
【0030】
通気エプロン34は一部が吸引パイプ32に、一部が巻掛け部材33に、一部がボトムニップローラ35aに接触するように巻掛けられ、ボトムニップローラ35aの回転に伴って摺動面32b,33aに沿って摺動しつつ回転されるようになっている。この実施の形態では通気エプロン34は、適度な通気性を確保できる織布により形成されている。
【0031】
図2及び図4(a)等に示すように、巻掛け部材33の下方近傍には、糸切れ時にドラフト装置11から送出される繊維束Fを吸引する作用をなすシングルタイプのニューマ装置の吸引ノズル51の先端がそれぞれ配設されている。吸引ノズル51の基端は全錘共通のニューマダクト52に接続されている。
【0032】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。
精紡機が運転されると、繊維束Fはドラフト装置11のボトムローラ12〜14と、トップローラ19〜21との間を通過することによりドラフトされた後、繊維束集束装置30へ案内される。送出部31のトップニップローラ31aはフロントボトムローラ12及びフロントトップローラ19の表面速度より若干速く回転され、繊維束Fは適度な緊張状態で送出部31のニップ点を過ぎた後、撚り掛けを受けながら下流側へ移動する。
【0033】
また、ダクト44の吸引作用が接続管48を介して吸引パイプ32に及び、摺動面32bに形成された吸引孔32aの吸引作用が通気エプロン34を介して繊維束Fに及ぶ。そして、繊維束Fが吸引孔32aと対応する位置に吸引集束された状態で移動する。従って、繊維束集束装置30の配設されない紡機に比較して、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質が改善される。
【0034】
吸引パイプ32の下流側に吸引パイプ32と別体で設けられた巻掛け部材33が存在するため、図6(a)に示すように、フリースアングルθ1が、巻掛け部材33が存在しない場合のフリースアングルθ2(図6(b)に図示)に比較して増大された状態となる。フリースアングルが大きい状態では、ニップ点を通過した後、繊維束Fが通気エプロン34の表面から離れるまでの距離Lが長くなる。従って、巻取り部から繊維束Fに伝わる撚り掛け作用により、繊維束が回転される際に、繊維束Fの周囲に飛び出している繊維fが通気エプロン34と接触した状態で回転される状態となり、該繊維fが繊維束Fに撚り込まれ易くなり、毛羽の発生が抑制される。また、巻掛け部材33が存在する構成では、繊維束Fがエプロンに沿って転動するように往復移動するため、繊維束Fの周囲に飛び出している繊維fが繊維束Fに撚り込まれ易くなる。
【0035】
従来、フリースアングルを増加させると糸切れし易くなると言われている。しかし、繊維束集束装置30を備えている場合は、繊維束Fは吸引孔32aの吸引作用により集束された状態でニップ点から引き出されるため、巻き取り作用による撚りがニップ点近くまで到達し易くなって、糸強力が増し、フリースアングルが増大されても糸切れの発生増加が抑制される。従って、糸切れによる生産性の低下を抑制できる。
【0036】
繊維束Fの移送作用を行う通気エプロン34は規制ガイド49の作用により横ずれが防止された状態で移動(回動)されるため、繊維束Fの移送作用が安定して行われる。規制ガイド49のうち、接続管48への接続部32c寄りに巻き掛けられた通気エプロン34を規制するものは、通気エプロン34が幅方向のいずれの側へ移動しようとした場合も段差部50が除去された端面で規制する。エンドプラグ40寄りに巻き掛けられた通気エプロン34を規制するものは、通気エプロン34が吸引パイプ32の中央側へ移動しようとした場合は段差部50が除去された端面で規制し、通気エプロン34が吸引パイプ32の端部側へ移動しようとした場合はエンドプラグ40の端面で規制する。
【0037】
この実施の形態は以下の効果を有する。
(1) 送出部31のニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向の上流側に吸引パイプが設けられ、ニップ点より繊維束Fの移動方向の下流側に通気エプロン34の一部が巻き掛けられる巻掛け部材33が吸引パイプ32と平行に設けられている。従って、フリースアングルが増大し、巻掛け部材33が存在しない構成に比較して毛羽の発生抑制作用が高まり糸品質が向上する。
【0038】
(2) 吸引パイプ32に通気エプロン34の横ずれを防止する規制ガイド49が一体に形成されている。従って、繊維束Fの移送作用を行う通気エプロン34は規制ガイド49の作用により横ずれが防止された状態で移動(回動)されるため、繊維束Fの移送作用が安定して行われる。また、専用の規制ガイドを吸引パイプ32と別に設けた場合に比較して構成が簡単になる。
【0039】
(3) 規制ガイド49が形成された吸引パイプ32は、規制ガイド49を形成すべき部分が一段高くなる段差部50を有するように押出し成形され、規制ガイド49は段差部50を通気エプロン34の幅に合わせて除去することにより形成されている。従って、吸引パイプに規制ガイドを溶接や接着、あるいはねじ止めで取り付けて製造する場合に比較して製造が容易になる。
【0040】
(4) 巻掛け部材33は送出部31のニップ点と、繊維束がニップ点より下流側において通気エプロン34から離れる位置までの距離Lが5mm以上となるように設けられている。従って、繊維束Fが通気エプロン34上を転動しながら移動する間に、繊維束Fから浮き上がった繊維fが繊維束Fに撚り込まれ易くなり、毛羽の発生抑制作用が向上する。
【0041】
(5) 巻掛け部材33はバー状の充実体で形成されている。従って、巻掛け部材33を管状に形成するのに比較して製造が簡単になるとともに、組み付け時や分解保全作業時等に巻掛け部材33と他の部材とがぶつかっても、損傷し難い。
【0042】
(6) トップニップローラ31aが通気エプロン34を押圧する力がボトムニップローラ35aで担われ、吸引パイプ32にトップニップローラ31aの押圧力が作用しない。従って、吸引パイプ32は従来装置(特許文献1)に比較して、剛性が必要とされず、樹脂製としても充分な強度を確保できる。
【0043】
(7) 負圧源としてのダクト44が、糸切れ時にドラフトパートから送出されるフリースを吸引する作用をなすニューマ装置と独立して設けられている。従って、吸引パイプ32の吸引圧力を適正な圧力に調整し易い。
【0044】
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
〇 規制ガイド49は吸引パイプ32及び巻掛け部材33の少なくとも一方に形成されていればよく、例えば、図7に示すように、規制ガイド49が巻掛け部材33に形成された構成としてもよい。規制ガイド49を巻掛け部材に形成した場合は、規制ガイドと通気エプロンとの間に風綿等が堆積した際の清掃除去が、規制ガイドが上流側の吸引パイプ32に形成されたものに比較して容易となる。
【0045】
〇 規制ガイド49を吸引パイプ32及び巻掛け部材33の両方に形成してもよい。
○ 巻掛け部材33を充実体で形成する代わりに、管状に形成してもよい。管状とした場合は、軽量となる。
【0046】
○ 送出部31のニップ点から繊維束Fが送出部31のニップ点より下流側において通気エプロン34から離れる位置までの距離Lは5mm以上であれば、毛羽の発生抑制作用が良好となり、距離Lの上限は特に限定されるものではない。しかし、あまり長くしても毛羽抑制効果がさほど向上するわけではなく、機台の大型化につながるため、8〜10mmが好ましい。
【0047】
○ 繊維束集束装置30の送出部は、ニップローラ対を装備する構成に限らない。例えば、通気エプロン34を駆動する構成として、吸引パイプ32及びボトムニップローラ35aを無くして、断面卵形の吸引パイプを設け、該吸引パイプの所定位置に吸引孔を形成し、吸引パイプ及び巻掛け部材33の外周に沿って通気エプロン34を摺動可能に巻き掛ける。そして、トップニップローラ31aを積極駆動可能とし、トップニップローラ31aを通気エプロン34に圧接しながら駆動することで通気エプロン34を駆動するようにしてもよい。この場合、巻掛け部材33に通気エプロン34の張力調整機能を持たせることができる。
【0048】
〇 巻掛け部材33にも通気エプロン34によって移送される繊維束Fに吸引作用を及ぼす機能を持たせてもよい。例えば、巻掛け部材33をパイプで形成するとともに吸引孔を形成する。この場合、繊維束Fが吸引孔と対応する位置に吸引集束された状態で移動する。従って、繊維束Fがニップ点を過ぎた後も吸引作用を受けて集束された状態で移動するため、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質が向上する。
【0049】
○ 吸引パイプ32、巻掛け部材33及び回転軸35は4錘を1ユニットとする構成に限らず、ローラスタンド15間の錘数(例えば8錘)を1ユニットとしたり、2錘を1ユニットとした構成としてもよい。また、必ずしも全ユニットを同じ錘数とせずに、ローラスタンド15間の錘数を異なる数に分けて(例えば6錘と2錘)それに対応して2種のユニットを設けてもよい。
【0050】
〇 吸引パイプ32は端部が閉塞された形状に形成してもよい。この場合、エンドプラグ40は吸引パイプ32の端部を密閉する配慮をせず、軸受39が嵌合される嵌合孔と、吸引パイプ32及び巻掛け部材33の端部が嵌合される嵌合部(孔)とを有する構成とすればよいため、製造が簡単になる。
【0051】
○ ダクト44は紡機機台の長手方向に沿って複数設けても、紡機機台の全長にわたって1本のみ設けてもよい。
○ ダクト44の位置はドラフト装置11の後側上方に限らず、ドラフト装置11の後側あるいはドラフト装置11の後側下方に配設してもよい。
【0052】
○ ダクト44を精紡機の左右両側に配設された吸引パイプ32で共用する代わりに、右側用と左側用に分けて、紡機機台の長手方向に沿って2列に配設してもよい。
【0053】
○ 通気エプロン34を織布で形成する代わりに、編み地により形成してもよい。この場合も織布と同様に通気エプロン34を構成するベルトに小さな孔をわざわざ開ける手間をかけずとも適度な通気性が得られ、通気エプロン34を安価に製造できる。さらに、編み地の伸縮性により、テンション装置を特に設けなくても通気エプロン34が適度な張力状態で回転される。
【0054】
○ 通気エプロン34を織布や編み地で形成する代わりに、ゴム製や弾性を有する樹脂製のベルトに多数の孔を開けて形成してもよい。
○ ボトムニップローラ35aが形成される回転軸35を全錘共通のシャフトとして、ドラフト装置11の各ボトムローラ12〜14と同様に機台のギヤエンドに設けられたギヤ列を介してモータにより駆動される構成としてもよい。
【0055】
○ 吸引パイプ32の負圧源とニューマ装置の負圧源とを共通にしてもよい。
〇 ニューマ装置としてシングルノズルタイプに代えて、フルートタイプの構成を採用してもよい。
【0056】
前記実施の形態から把握される発明(技術的思想)について、以下に記載する。
(1) 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記巻掛け部材はバー状の充実体で形成されている。
【0057】
(2) 請求項1〜請求項3及び前記技術的思想(1)のいずれか一項に記載の繊維束集束装置を備えたリング精紡機。
(3) 紡機のドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられ、前記ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置の通気エプロンが巻き掛けられる案内面と、前記通気エプロンの横移動を規制する規制ガイドとを備えた巻掛け部材の製造方法であって、前記規制ガイドを形成すべき部分が一段高くなる段差部を有するように押出し成形により、所定の断面形状のバー又はパイプを形成し、その後、前記段差部を前記通気エプロンの幅に合わせて除去することにより所定位置に前記規制ガイドを形成する巻掛け部材の製造方法。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜請求項3に記載の発明によれば、簡単な構成で毛羽の発生を従来の繊維束集束装置より抑制させて糸品質を向上させることができ、通気エプロンの横移動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施の形態の繊維束集束装置の一部省略要部模式斜視図。
【図2】一実施の形態の一部破断概略側面図。
【図3】吸引パイプとボトムニップローラとの関係を示す部分概略図。
【図4】(a)は繊維束集束装置を繊維束移動方向前方から見た部分概略図、(b)は回転軸の正面図。
【図5】図2の部分拡大図。
【図6】(a)は巻掛け部材が有る場合の作用を説明する模式図、(b)は巻掛け部材が無い場合の作用を説明する模式図。
【図7】別の実施の形態の部分断面図。
【図8】(a)は従来技術の正面図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【符号の説明】
F…繊維束、11…ドラフトパートとしてのドラフト装置、12…最終ローラ対を構成するフロントボトムローラ、19…同じくフロントトップローラ、30…繊維束集束装置、31…送出部、31a…送出部を構成するニップローラとしてのトップニップローラ、32…吸引パイプ、32a…吸引用スリットとしての吸引孔、32b,33a…案内面としての摺動面、33…巻掛け部材、34…通気エプロン、35a…送出部を構成するニップローラとしてのボトムニップローラ、49…規制ガイド、50…段差部。
Claims (3)
- 紡機のドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられ、前記ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置であって、
ニップローラを備えた送出部と、前記送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向の上流側に設けられるとともに吸引用スリットを備えた案内面を有する吸引パイプと、前記送出部を構成するとともに前記案内面を摺動する状態で回転される通気エプロンとを備え、前記送出部のニップ点より繊維束の移動方向の下流側に前記通気エプロンの一部が巻き掛けられる巻掛け部材が前記吸引パイプと平行に設けられ、前記吸引パイプ及び前記巻掛け部材の少なくとも一方に前記通気エプロンの横ずれを防止する規制ガイドが一体に形成されている紡機における繊維束集束装置。 - 前記規制ガイドは前記巻掛け部材に形成されている請求項1に記載の紡機の繊維束集束装置。
- 前記規制ガイドが形成された吸引パイプ又は巻掛け部材は、前記規制ガイドを形成すべき部分が一段高くなる段差部を有するように押出し成形され、前記規制ガイドは前記段差部を前記通気エプロンの幅に合わせて除去することにより形成されている請求項1又は請求項2に記載の紡機の繊維束集束装置。
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