JP2004107497A - エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は低吸水であり、耐熱性の高い硬化物を与えるナフタレン骨格を有し、しかも低粘度の液状エポキシ樹脂、および該樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来工業的に最も使用されている液状エポキシ樹脂としてはビスフェノールAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物が知られている。また、耐熱性が要求される分野においてはオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂やトリフェニルメタン型エポキシ樹脂などが用いられている。また、耐熱性・耐水性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂として、アルキル基を有するキシレングリコールをグリシジルエーテル化したものが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、電気・電子分野においてはその技術的発展に伴い、高純度化を始め耐熱性、耐湿性、密着性、低誘電性等の諸特性の一層の向上が求められている。また、特に近年の表面実装技術に関連し、耐半田リフロー性が要求されていることから、さらなる低吸湿化、低応力化、そしてフィラー高充填化のためのエポキシ樹脂の低粘度化が求められている。また、構造材としては航空宇宙材料、レジャー・スポーツ器具用途等において軽量で機械特性の優れた材料が求められている。これらの要求に対しフェノール樹脂(エポキシ樹脂用硬化剤)、エポキシ樹脂、及びそれらを含有するエポキシ樹脂組成物について多くの提案がなされているが、未だ充分とはいえない。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−311154号公報
【非特許文献1】
Organic Synthesis, Vol.78,p42
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低粘度の液状エポキシ樹脂であり、その硬化物においては優れた耐熱性、耐湿性(耐水性)を示し、電気・電子部品用絶縁材料(高信頼性半導体封止材料など)及び積層板(プリント配線板など)やCFRPを始めとする各種複合材料用、接着剤、塗料等に有用なエポキシ樹脂およびその製造方法、さらにはエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは前記のような特性を持つエポキシ樹脂を見出すべく鋭意研究の結果、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂が、これらの要求を満たすものであることを見いだし、本発明を完成させるに到った。
【0007】
すなわち本発明は
(1)式(1)
【0008】
【化2】
(式(1)中、Gはグリシジル基を表す。R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基またはアリル基を表す。k、mは1〜3の整数を、nは平均値であり0〜8の正数をそれぞれ示す。)
で表されるエポキシ樹脂、
(2)前記(1)記載のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有してなるエポキシ樹脂組成物、
(3)無機充填剤を含有する前記(2)記載のエポキシ樹脂組成物、
(4)硬化促進剤を含有する前記(2)または(3)記載のエポキシ樹脂組成物、
(5)前記(2)〜(4)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のエポキシ樹脂は、下記式(2)
【0010】
【化3】
(式中、R1、R2、k、mは式(1)におけるのと同じ意味を表す。)
で表される化合物とエピハロヒドリンとをアルカリ金属水酸化物の共存下で反応させることにより得ることができる。式(2)の化合物は下記の文献に記載の方法に準じて得ることができる。以下に、全てのR1、R2が水素原子である化合物の合成法につき例示する。なお、得られる式(2)の化合物において、メチロール基の置換位置は、1,5、1,6、1,7、1,8等が挙げられ特に制限はない。
【0011】
【化4】
【0012】
式(2)において、好ましいR1、R2としては、水素原子;塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基等の炭素数1〜10の鎖状、枝分かれ状、環状のアルキル基;アリル基が挙げられ、全て水素原子であるものが好ましい。
また、式(2)の化合物において、メチロール基の置換位置に特に制限はない。
【0013】
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその固形物を利用してもよく、水溶液を使用してもよい。水溶液を使用する場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを留出させ、留出液を分液し、水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は式(2)で表される化合物の水酸基1当量に対して通常0.9〜2.5モルであり、好ましくは0.95〜2.0モルである。
【0014】
エピハロヒドリンの使用量は式(2)の化合物の水酸基1当量に対し通常0.8〜12モル、好ましくは0.9〜11モルである。この際、式(2)で表される化合物の溶解性を高めるためにメタノール、エタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒などを添加して反応を行うことが好ましい。
【0015】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し通常2〜20重量%、好ましくは4〜15重量%である。また非プロトン性極性溶媒を用いる場合はエピハロヒドリンの量に対し通常5〜100重量%、好ましくは10〜80重量%である。
【0016】
さらにジメチルスルホキシド以外を溶媒として用いる場合、反応をより確実にするために四級アンモニウム塩を添加するのが好ましい。なお、溶媒としてジメチルスルホキシドを用いる場合においても四級アンモニウム塩を加える方が好ましい。
【0017】
4級アンモニウム塩としてはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。4級アンモニウム塩の使用量としては式(2)で表される化合物の水酸基1当量に対し通常0.1〜15重量部であり、好ましくは0.2〜10重量部である。
【0018】
反応温度は通常30〜90℃であり、好ましくは35〜80℃である。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。これらのエポキシ化反応の反応物を水洗後、または水洗無しに加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて反応を行い、閉環を確実なものにすることも出来る。この場合アルカリ金属水酸化物の使用量はエポキシ化に使用した式(2)の化合物の水酸基1当量に対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0019】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に加熱減圧下溶剤を留去することにより式(1)で表されるエポキシ樹脂が得られる。本発明のエポキシ樹脂は式(1)で表され、式(1)中のnの値はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定可能であり、通常平均値で0〜8の正数、好ましい態様では0.05〜0.3の正数をとる。また、n=0の化合物は低粘度の目的のために好適に使用できる。
【0020】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。前記(2)〜(4)記載のエポキシ樹脂組成物において本発明のエポキシ樹脂は単独でまた他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は10重量%以上が好ましく、特に20重量%以上が好ましい。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂混合物と併用し得る他のエポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール共縮合型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられるがこれらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0022】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用い得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない虞れがある。
【0024】
また本発明のエポキシ樹脂組成物においては硬化促進剤を使用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要により無機充填剤を含有しうる。用いうる無機充填材の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填剤は本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜90重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0026】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えば本発明のエポキシ樹脂と硬化剤並びに必要により硬化促進剤、無機充填剤及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0027】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱半乾燥して得たプリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中、通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
【0028】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0029】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら式(3)
【0030】
【化5】
【0031】
で表される化合物188部、エピクロルヒドリン1017部、ジメチルスルホキシド254部、トリメチルアンモニウムクロライド10部を仕込み、撹拌下で45℃まで昇温し、溶解させた。次いでフレーク状水酸化ナトリウム77部を100分かけて分割添加し、その後、更に45℃で2時間、70℃で1時間反応させた。ついで水洗を繰り返し中性に戻した後、油層から加熱減圧下、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物に300部のメチルイソブチルケトンを添加し溶解した。
【0032】
このメチルイソブチルケトンの溶液を70℃に加熱し30重量%の水酸化ナトリウム水溶液6.7部を添加し、1時間反応させた後洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返した。更に水層は分離除去し、式(4)
【0033】
【化6】
(式(4)中、ナフタレン環は1位と6位で結合し、Gはグリシジル基を表す。nは平均値でありn=0.1である。)
【0034】
で表されるエポキシ樹脂(A)141部を得た。得られたエポキシ樹脂は黄色の液状であり25℃での粘度は201mPa・s、エポキシ当量は160g/eqであった。
【0035】
実施例2、比較例1
エポキシ樹脂として実施例1で得られたエポキシ樹脂(A)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、エピコート828)、硬化剤として無水メチルナジック酸(日本化薬(株)製、カヤハードMCD)、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(略号 2E4MZ)を表1に示す割合(重量部)で配合した。
【0036】
【0037】
実施例2、比較例1で得られた各エポキシ樹脂組成物について注型法により樹脂成形体を調製し、120℃で2時間、更に150℃で6時間で硬化させた。
【0038】
このようにして得られた硬化物の物性を測定した結果を表2に示す。
尚、物性値の測定は以下の方法で行った。
【0039】
【0040】
表2より本発明の硬化物は、従来一般的に使用される液状エポキシ樹脂と比較して優れた耐熱性を示す(ガラス転移温度が高いことから判断される)。また、吸水率が低いことから耐湿性に優れていることが明らかとなった。
【0041】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂は非常に粘度が低くフィラーの高充填が可能であり、作業性に優れているばかりでなく、本エポキシ樹脂を含有するエポキシ樹脂組成物においては、優れた耐熱性と耐湿性を有した硬化物となる。このようなことから、本エポキシ樹脂は電気・電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板など)やCFRPを始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に極めて有用である。
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