JP2004105174A - 新規気道上皮細胞株およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】クロライドチャンネル(CLCA)発現気道上皮細胞株および呼吸器疾患の予防・治療剤の提供。
【解決手段】カルシウム依存性CLCA発現気道上皮細胞株またはCLCAを発現する能力を有し粘液を分泌する気道上皮細胞株および同細胞株とサイトカンイを用いる呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療薬のスクリーニング方法。
【選択図】なし
【解決手段】カルシウム依存性CLCA発現気道上皮細胞株またはCLCAを発現する能力を有し粘液を分泌する気道上皮細胞株および同細胞株とサイトカンイを用いる呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療薬のスクリーニング方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規気道上皮細胞株の用途に関する。さらに詳しくは、呼吸器疾患などの予防・治療剤のスクリーニング方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】
慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、びまん性汎細気管支炎、内因性喘息などは、喫煙世代の高齢化、平均寿命の延長等にともなって、今後、呼吸器疾患の中心的な病気になると考えられている。また、気管支喘息は気道の慢性炎症性疾患であり、気道狭窄を示し、発作性の呼吸困難、喘鳴、咳などの症状が見られる。その発症と進展には気道上皮細胞、肥満細胞、好酸球、Tリンパ球などの多くの細胞が関与している。
外界からの刺激(アレルゲン、排気物)やウイルス感染により気道の炎症反応の引き金が引かれると、気道上皮細胞や気管支周辺の毛細血管内皮細胞上にVCAM−1やICAM−1などの接着分子が発現し〔ジャーナル・オブ・アラジー・アンド・クリニカル・イムノロジー(J. Allergy Clin. Immunol.)、96巻、941頁、1995年〕、サイトカインや化学遊走物質が産生される。気管支喘息の患者はTh2型のヘルパーT細胞の機能が亢進しており、IL−3、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSFなどのTh2型のサイトカインやeotaxin、RANTESなどのケモカインの産生が増加する。IL−4やIL−13はIgEの産生誘導作用があり、IL−3やIL−4は肥満細胞の増殖誘導作用がある。さらに、IL−5、GM−CSFなどの作用により好酸球が分化増殖し、eotaxin、RANTESにより気道に浸潤してくる〔アラジー・アンド・アズマ・プロシーディング(Allergy Asthma Proc.)、20巻、141頁、1999年〕。また、サイトカインの中でも、IL−13が慢性閉塞性肺疾患の発症や気管支喘息における粘液過分泌の重要な因子であることが報告されてきている〔非特許文献1 ジャーナル オブ クリニカル インヴェスティゲーション(J. Clin. Invest.)、106巻、1081頁、2000年;ジャーナル オブ クリニカル インヴェスティゲーション(J. Clin. Invest.)、103巻、779頁、1999年〕。
気管・気管支の粘膜を覆っている上皮細胞は外界からの刺激が直接粘膜下組織に伝わるのを防ぐバリヤーの機能、分泌物や異物の排泄機能を持つだけでなく、上皮由来平滑筋弛緩因子の分泌などによって気管の収縮を制御している。この気道上皮細胞からの分泌にはクロライドチャネルが重要な働きを持ち、その異常は様々な呼吸器疾患を引き起こす。気道上皮で機能するクロライドチャネルのうちCFTRの機能不全が嚢胞性繊維症を引き起こすことや(Science、257巻、1125頁、1992年)、CICクロライドチャネルが筋緊張症と関係している(Nature、354巻、304頁、1991年)ことが報告されている。特に喘息や慢性閉塞性肺疾患など気道粘液の過分泌を伴う疾患についてはカルシウム依存性クロライドチャネル(以下、CLCAと略称することもある)の関与が報告されている〔アメリカン ジャーナル オブ レスピラトリー アンド クリティカル ケア オブ メディシン(Am. J. Respir. Crit. Care Med.)1−65巻、1132頁、2002年〕。また、CLCA1などの活性を阻害することと喘息などの治療との関連や、Gob−5遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与による気道過敏性亢進の抑制などが報告されている(特許文献1 WO 01/38530号公報)。
CLCAを発現する細胞株としてはヒトCLCA2を発現しているMCF10A細胞(非特許文献2 Cancer Research、59巻、5488頁、1999年)、マウスCLCA1を発現しているHC11細胞(非特許文献3 J. Biol. Chem.、276巻、40510頁、2001年)などが報告されているが、これらはいずれも胸部上皮細胞株で、機能的にもガンやアポトーシスとの関連が示唆されており、粘液の過分泌との関連についての報告はない。また粘液を分泌する気道上皮細胞株としては、正常ヒト気道上皮細胞株のNHTBE細胞〔アメリカン ジャーナル オブ フィジオロジカル ラング セル モレキュラー フィジオロジー(Am. J. Physiol. Lung. Cell Mol. Physiol)、278巻、L1118頁、2000年〕、ハムスター初代気道上皮細胞のHTE細胞〔ジャーナル オブ セルラー フィジオロジー(J. Cellular Physiology)、125巻、167頁、1985年〕などが報告されている。
【特許文献1】
WO 01/38530号公報
【非特許文献1】
J. Clin. Invest.、106巻、1081頁、2000年
【非特許文献2】
Cancer Research、59巻、5488頁、1999年
【非特許文献3】
J. Biol. Chem.、276巻、40510頁、2001年
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
気道過敏性や気道粘液の過分泌を伴う疾患については、CLCAの関与が報告されており、CLCAの発現を抑制する薬剤、CLCAの活性を阻害する薬剤は、喘息や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患の有効な治療薬となりうる。しかしながら、CLCAは、疾患の発症に伴って発現が誘導される遺伝子であるため、呼吸器由来の細胞でCLCAを発現する細胞株は報告されておらず、また、ある種の刺激でCLCAを発現誘導しうる細胞株についても報告されていない。副作用の少ない優れた慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息の予防・治療剤を開発するために、CLCAを発現または発現誘導しうる細胞株の取得が切望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、初代気道上皮細胞株をIL−13で刺激することにより、CLCA1を高発現する気道上皮細胞株を見出した。この知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する気道上皮細胞株、
(2) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(3) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(4) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(4a) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:22で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(5) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を高発現する上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(5a) ハウスキーピング遺伝子に対して約0.01%以上のカルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質遺伝子を発現する上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(6) 粘液を分泌する能力を有する上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(7) 粘液がMUC2タンパク質および(または)MUC5ACタンパク質である上記(6)記載の気道上皮細胞株、
(8) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株に、サイトカインを接触させることを特徴とする、上記(1)記載の気道上皮細胞株の製造法、
(9) サイトカインがIL−13である上記(8)記載の製造法、
(9a) サイトカインを約0.01ng/ml以上用いる上記(8)記載の製造法、
(10) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞である上記(8)記載の製造法、
(11) NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞、
(12) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(12a)(i)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを、カルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株、サイトカインおよび試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合における、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性をそれぞれ測定し、比較を行う上記(12)記載のスクリーニング方法、
(13) 上記(1)記載の気道上皮細胞株を用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(13a) (i)上記(1)記載の気道上皮細胞株をカルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii)上記(1)記載の気道上皮細胞株および試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合におけるカルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性をそれぞれ測定し、比較を行うことにより、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を選択する上記(13)記載のスクリーニング方法、
(14) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(12)または(13)記載のスクリーニング方法、
(15) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性が、クロライドチャネル様活性または粘液分泌活性である上記(12)または(13)記載のスクリーニング方法、
(15a) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性が、クロライドチャネル様活性または粘液分泌活性である上記(12a)または(13a)記載のスクリーニング方法、
(16) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインまたは上記(1)記載の気道上皮細胞株を含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(17) 上記(12)もしくは(13)記載のスクリーニング方法または上記(16)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(18) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(18a) (i)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを培養した場合と(ii)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株、サイトカインおよび試験化合物の混合物を培養した場合における、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質遺伝子の発現量をそれぞれ測定し、比較することにより、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩を選択する上記(18)記載のスクリーニング方法、
(18b) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、哺乳動物(ヒト、ラット、マウスなど)の初代気道上皮細胞が株化された細胞株である上記(18)または上記(18a)記載のスクリーニング方法、
(18c) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株がラット気道上皮細胞株である上記(18)または(18a)記載のスクリーニング方法、
(18d) ラット気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞またはSPOC1(American Journal of Respiratory Celland Molecular Biology、14巻、146頁、1996年)細胞である上記(18c)記載のスクリーニング方法、
(19) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(18)記載のスクリーニング方法、
(20) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(21) 上記(18)記載のスクリーニング方法または上記(20)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(22) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(22a) (i)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを培養した場合と(ii)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株、サイトカインおよび試験化合物の混合物を培養した場合における、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生量を、それぞれ測定し、比較することにより、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩を選択する上記(22)記載のスクリーニング方法、
(23) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(22)記載のスクリーニング方法、
(24) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(25) 上記(22)記載のスクリーニング方法または上記(24)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(26) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞である上記(12)、(18)または(22)記載のスクリーニング方法、
(27) 上記(17)、(21)または(25)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(28) 呼吸器疾患の予防・治療剤である上記(27)記載の医薬、
(29) 呼吸器疾患が慢性閉塞性肺疾患または気管支喘息である上記(28)記載の医薬、
(30) 鼻炎の予防・治療剤である上記(27)記載の医薬、
(31) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(32) 上記(1)記載の気道上皮細胞株を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(33) 上記(11)記載の細胞およびIL−13を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(34) 哺乳動物に対し、上記(17)、(21)または(25)記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療方法、
(35) 呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤の製造のための、上記(17)、(21)または(25)記載の化合物またはその塩の使用などを提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるカルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質(以下、本発明で用いられるタンパク質または本発明のタンパク質と称することもある)としては、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質ファミリーに属するタンパク質などが用いられ、例えば、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0006】
配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表わされるアミノ酸配列と約40%以上、好ましくは約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、クロライドチャネル様活性(例、カルシウム依存性クロライドチャネル様活性)、粘液分泌活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、クロライドチャネル様活性、粘液分泌活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
クロライドチャネル様活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、ジェノミクス(Genomics)、54巻、200頁(1998)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
粘液分泌活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、バイオケミカル ジャーナル(Biochem. J)、316巻、943頁(1996)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
【0007】
また、本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、▲1▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、▲4▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲5▼それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
【0008】
本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明で用いられるタンパク質は、C末端が、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:22で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:26で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:42で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:44で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:50で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:51で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:52で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、マウスCLCA1(J Biol Chem, 273巻、32096頁、1998年)、マウスCLCA2(Biochem Biophys Res Commun, 264巻、933頁、1999年)などがあげられる。
【0009】
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
【0010】
また、本発明で用いられる部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明で用いられる部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
さらに、本発明で用いられる部分ペプチドには、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様に、C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有しているもの、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられる部分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いることができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0011】
本発明で用いられるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、タンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0012】
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0013】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0014】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0015】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0016】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
【0017】
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法が挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0018】
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明で用いられるタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列と約40%以上、好ましくは約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
【0019】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行うことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:22で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:23で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:26で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:27で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:42で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:43で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:44で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:45で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:50で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:54で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:51で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:55で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:52で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:56で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:57で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0020】
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(例、DNA)としては、前述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列を含有するDNAの一部分を有するDNA、または配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質、部分ペプチド(以下、これらをコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0021】
DNAの塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法やGapped duplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行うことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0022】
本発明のタンパク質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
【0023】
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
【0024】
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of MolecularBiology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
【0025】
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行うことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行うことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行うことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6, 47−55(1988))などに記載の方法に従って行うことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行うことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0026】
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Miller,Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G.A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明のタンパク質を生成せしめることができる。
【0027】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行うことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当なタンパク修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。タンパク修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
【0028】
かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより測定することができる。本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0029】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウイルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行うことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行うことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行うことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0030】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行うことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行うことができる。
【0031】
(1)本発明の気道上皮細胞株
カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する気道上皮細胞株(以下、本発明の気道上皮細胞株と略記することもある)としては、本発明で用いられるタンパク質を発現する、ヒトなどの哺乳動物由来の気道上皮細胞株である。
本発明の気道上皮細胞株としては、粘液を分泌する能力を有するものが好ましい。粘液としては、例えば、MUC5ACタンパク質、MUC2タンパク質などが挙げられる。
本発明の気道上皮細胞株の気道上皮細胞株であるか否かの確認は、公知の方法を用いて、例えばサイトケラチンの発現の測定によって行えばよい。
本発明の気道上皮細胞株としては、本発明で用いられるタンパク質を高発現するものが好ましい。例えば、ハウスキーピング遺伝子(例、GAPDH遺伝子)に対して約0.01%以上、好ましくは約0.1%以上、より好ましくは約1%以上の該タンパク質の遺伝子を発現する気道上皮細胞株などが用いられる。
本発明の気道上皮細胞株は、本発明で用いられるタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株(以下、気道上皮細胞株Aと略記することもある)に、サイトカインを接触させることにより得られる。
本発明の気道上皮細胞株には、気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させることにより得られる、本発明で用いられるタンパク質を発現する細胞も含まれる。
上記気道上皮細胞株Aとしては、例えば、ヒトなどの哺乳動物の初代気道上皮細胞(例、ラット初代気道上皮細胞など)が株化されたもの、SPOC1細胞〔アメリカン ジャーナル オブ レスピラトリー セル アンド モレキュラーバイオロジー(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.)、14巻、146頁、1996年〕などが挙げられる。具体例としては、ラットの気管から細胞を分離し、培地(例、ラット気道上皮細胞用培地〔Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 12巻、385頁、1995年〕の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地など)で、単一細胞に由来するコロニーの出現が認められるまで培養を継続した細胞などが挙げられる。好ましくは、後述の実施例で得られたNIM−1などが用いられる。
サイトカインとしては、例えば、IL−13、IL−1、IL−4、IL−6、IL−8、IL−9、TNF−α、TGF−α、EGF、bFGFなどが挙げられる。好ましくはIL−13である。
サイトカインの使用量としては、例えば、約0.01ng/ml以上、好ましくは約0.1ng/ml以上、約1ng/ml以上が用いられる。
気道上皮細胞株Aに、サイトカインを接触させる方法は特に限定されず、例えば、プレートに播種された気道上皮細胞株Aに、サイトカインを添加し、培養する方法などが挙げられる。
【0032】
(2)気道上皮細胞株Aまたは本発明の気道上皮細胞株を用いるスクリーニング方法
本発明のタンパク質は、肺・気道の炎症に先立ち発現が増加し、本発明のタンパク質遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは気道過敏性亢進を抑制するので、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩などは、肺・気道の炎症を伴う肺・胸部疾患や呼吸器疾患〔例、慢性閉塞性肺疾患(例、慢性気管支炎、肺気腫)、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、過敏性肺炎、肺線維症など〕、炎症性腸疾患、アレルギー性結膜炎などの予防・治療剤などの医薬として使用できる。
さらに、本発明のタンパク質は、鼻炎時に発現が増加するので、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩などは、例えば、鼻炎(例、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、萎縮性鼻炎、乾燥性前鼻炎、血管運動性鼻炎、壊疽性鼻炎、副鼻腔炎など)などの予防・治療剤として使用することができる。
したがって、本発明の気道上皮細胞株および気道上皮細胞株Aは、上記化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
本発明は、本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のタンパク質の活性(例えば、クロライドチャネル様活性、粘液分泌活性など)を阻害する化合物またはその塩(以下、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、例えば、(a)(i)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインをカルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii)気道上皮細胞株A、サイトカインおよび試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法、(b)(i’)本発明の気道上皮細胞株をカルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii’)本発明の気道上皮細胞株および試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法が挙げられる。
上記スクリーニング方法においては、例えば、(i)と(ii)または(i’)と(ii’)の場合における、本発明のタンパク質のクロライドチャネル様活性、粘液分泌活性などを測定して、比較する。
クロライドチャネル様活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、ジェノミクス(Genomics)、54巻、200頁(1998)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
粘液分泌活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、バイオケミカル ジャーナル(Biochem.J)、316巻、943頁(1996)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
カルシウム賦活剤としては、例えば、イオノマイシン、A23187(カルシマイシン)などが用いられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0033】
気道上皮細胞株A、サイトカインおよび試験化合物の混合は、(1)気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させ、カルシウム賦活剤で活性化する前に試験化合物と混合する、(2)気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させ、カルシウム賦活剤で活性化した後に試験化合物と混合する、(3)気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させ、カルシウム賦活剤と試験化合物の混合物を添加するなど、気道上皮細胞株Aにカルシウム賦活剤を接触させる前に、気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触される順序であれば、いずれの順序で行ってもよい。
本発明の気道上皮細胞株と試験化合物との混合は、本発明の気道上皮細胞株をカルシウム賦活剤で活性化する前または後の何れであってもよく、また本発明の気道上皮細胞株に試験化合物とカルシウム賦活剤の混合物を添加してもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、気道上皮細胞株Aまたは本発明の気道上皮細胞株をスクリーニングに適したバッファーに浮遊して調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、ほう酸バッファーなどの、本発明のタンパク質の活性を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
例えば、上記(ii)または(ii’)の場合におけるクロライドチャネル活性または粘液分泌活性などを、上記(i)または(i’)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0034】
以下に、スクリーニングの具体例を記載する。
(A)気道上皮細胞株Aを96穴ブラッククリアボトムプレートにウェルあたり4×104個播種する。2日ごとに新鮮な培地〔例、ラット気道上皮細胞用培地(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、12巻、385頁、1995年)の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地など〕に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養する。Cl−チャネル活性の測定はFLIPR Membrane Potential Assay Kit(モレキュラーデバイス社製)を使用する。20mMのHEPESを含むHBSSバッファー(Component B)で希釈した電位感受性色素(Component A)を1ウェルあたり75μl添加し、37℃で20分間反応する。そのプレートにComponent B、またはComponent Bで一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり25μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、プレートをFLIPRにセットし、Component Bまたは終濃度10μMのイオノマイシンを含むComponent Bを1ウェルあたり50μl添加する。添加後の蛍光変化をCl−チャネル活性として観察する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のCl−チャネル活性を100%、イオノマイシン無刺激時のCl−チャネル活性を0%として、Cl−チャネル活性を評価し、Cl−イオンチャネル阻害作用を有する化合物を選択する。
【0035】
(B)本発明の気道上皮細胞株を96穴ブラッククリアボトムプレートにウェルあたり4×105個播種し一晩培養する。20mMのHEPESを含むHBSSバッファー(Component B)で希釈した電位感受性色素(Component A)を1ウェルあたり75μl添加し、37℃で20分間反応する。そのプレートにComponent B、またはComponent Bで一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり25μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、プレートをFLIPRにセットし、Component Bまたは終濃度10μMのイオノマイシンを含むComponent Bを1ウェルあたり50μl添加する。添加後の蛍光変化をCl−チャネル活性として観察する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のCl−チャネル活性を100%、イオノマイシン無刺激時のCl−チャネル活性を0%として、Cl−チャネル活性を評価し、Cl−イオンチャネル阻害作用を有する化合物を選択する。
【0036】
さらに、本発明は、気道上皮細胞株Aを用いることを特徴とする本発明のタンパク質遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩(以下、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法も提供する。より具体的には、例えば、
(iii)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを培養した場合と(iv)気道上皮細胞株A、サイトカインおよび試験化合物の混合物を培養した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法においては、例えば、(iii)と(iv)の場合における、本発明のタンパク質遺伝子の発現量(具体的には、本発明のタンパク質量または前記タンパク質をコードするmRNA量)を測定して、比較する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、気道上皮細胞株Aをスクリーニングに適したバッファーに浮遊して調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、ほう酸バッファーなどの、本発明のタンパク質の発現を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
本発明のタンパク質量の測定は、公知の方法、例えば、本発明のタンパク質を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
本発明のタンパク質遺伝子の発現量は、公知の方法、例えば、ノーザンブロッティングやReverse transcription−polymerase chain reaction(RT−PCR)、リアルタイムPCR解析システム(ABI社製、TaqMan polymerase chain reaction)などの方法あるいはそれに準じる方法にしたがって測定することができる。
例えば、上記(iv)の場合における本発明のタンパク質遺伝子の発現を、上記(iii)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のタンパク質遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0037】
以下に、スクリーニングの具体例を記載する。
気道上皮細胞株Aを96穴プレートにウェルあたり2×104個播種し、2日ごとに新鮮培地〔例、ラット気道上皮細胞用培地(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、12巻、385頁、1995年)の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地など〕に交換しながら、4日間培養する。そのプレートに新鮮培地、または新鮮培地で一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり10μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、IL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに1日間培養し、細胞中の全RNAをRNeasy 96 Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出する。これらの全RNAを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成する。その一部を用いてABI PRISM 7700シークエンスディテクター(アプライドバイオシステムズ社製)を用いたTaqMan PCR法により、本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)のコピー数を測定する。試験化合物無添加の状態で、IL−13添加時の本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現量を100%、IL−13無添加時の本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現量を0%として、本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現の阻害度を評価し、本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現を阻害する作用を有する化合物を選択する。
【0038】
本発明は、気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを用いることを特徴とする本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩(以下、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法も提供する。より具体的には、例えば、
(v)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを培養した場合と(vi)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインと試験化合物の混合物を培養した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法においては、例えば、本発明のタンパク質に対する抗体などを用いて(v)と(vi)の場合における、本発明のタンパク質の産生量(本発明のタンパク質量)を測定(例、本発明のタンパク質の発現を検出、本発明のタンパク質の発現量を定量等)して、比較する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、気道上皮細胞株Aをスクリーニングに適したバッファーに浮遊して調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、ほう酸バッファーなどの、本発明のタンパク質の活性を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
本発明のタンパク質量の測定は、公知の方法、例えば、本発明のタンパク質を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
例えば、上記(vi)の場合における本発明のタンパク質の産生を、上記(v)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のタンパク質の産生(発現)を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0039】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明の気道上皮細胞株、または気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを含有するものである。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物またはその塩であり、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物もしくはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物もしくはその塩、または本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物もしくはその塩である。
該化合物の塩としては、前記した本発明のタンパク質の塩と同様のものが用いられる。
【0040】
本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物もしくはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物もしくはその塩、または本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物もしくはその塩は、例えば、肺・気道の炎症を伴う肺・胸部疾患や呼吸器疾患〔例、慢性閉塞性肺疾患(例、慢性気管支炎、肺気腫)、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、過敏性肺炎、肺線維症など〕、炎症性腸疾患、アレルギー性結膜炎に対する予防・治療剤などの医薬として有用である。さらには鼻炎(例、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、萎縮性鼻炎、乾燥性前鼻炎、血管運動性鼻炎、壊疽性鼻炎、副鼻腔炎など)などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
上記化合物またはその塩を上述の予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。
例えば、上記化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
【0041】
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、慢性閉塞性肺疾患治療の目的で本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物またはその塩の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、慢性閉塞性肺疾患治療の目的で本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物またはその塩を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0042】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0043】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0044】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0045】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ラットCLCA1タンパク質の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するラットCLCA1タンパク質部分アミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
参考例1で用いられたプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
参考例1で用いられたプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
参考例1で用いられたプライマー3の塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
参考例1で用いられたプライマー4の塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
参考例1で用いられたプライマー5の塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
参考例1で用いられたプライマー6の塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
参考例1で用いられたプライマー7の塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
実施例3で用いられたプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
実施例3で用いられたプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
実施例3で用いられたTaqManプローブの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
参考例1で用いられたプライマー10の塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
参考例1で用いられたプライマー11の塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
参考例1で用いられたT7 promoter primerの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
参考例1で用いられたM13RV primerの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
参考例1で用いられたプライマー12の塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕
参考例1で用いられたプライマー13の塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
参考例1で用いられたプライマーAP1の塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
参考例1で用いられたプライマーAP2の塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
参考例1で用いられたU19 primerの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
ラットCLCA1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:23〕
配列番号:22で表されるアミノ酸配列を有するラットCLCA1タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:24〕
参考例1で用いられたプライマー14の塩基配列を示す。
〔配列番号:25〕
参考例1で用いられたプライマー15の塩基配列を示す。
〔配列番号:26〕
マウスCLCA4タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:27〕
配列番号:26で表されるアミノ酸配列を有するマウスCLCA4タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:28〕
マウスCLCA4遺伝子5’側の塩基配列を示す。
〔配列番号:29〕
マウスCLCA4遺伝子3’側の塩基配列を示す。
〔配列番号:30〕
参考例2で用いられたプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:31〕
参考例2で用いられたプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:32〕
参考例2で用いられたプライマー3の塩基配列を示す。
〔配列番号:33〕
参考例2で用いられたプライマー4の塩基配列を示す。
〔配列番号:34〕
参考例2で用いられたプライマー5の塩基配列を示す。
〔配列番号:35〕
参考例2で用いられたプライマー6の塩基配列を示す。
〔配列番号:36〕
参考例2で用いられたプライマー7の塩基配列を示す。
〔配列番号:37〕
参考例2で用いられたプライマー8の塩基配列を示す。
〔配列番号:38〕
参考例2で用いられたプライマー9の塩基配列を示す。
〔配列番号:39〕
参考例2で用いられたプライマー10の塩基配列を示す。
〔配列番号:40〕
参考例2で用いられたT7 promoter primer(プロモーター プライマー)の塩基配列を示す。
〔配列番号:41〕
参考例2で用いられたM13RV primer(プライマー)の塩基配列を示す。
〔配列番号:42〕
マウスCLCA4Aタンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:43〕
配列番号:42で表されるアミノ酸配列を有するマウスCLCA4Aタンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:44〕
ラットCLCA4タンパク質の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:45〕
配列番号:44で表される部分アミノ酸配列を有するラットCLCA4タンパク質の部分アミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:46〕
参考例2で用いられたプライマー11の塩基配列を示す。
〔配列番号:47〕
参考例3で用いられたプライマー12の塩基配列を示す。
〔配列番号:48〕
参考例3で用いられたプライマー13の塩基配列を示す。
〔配列番号:49〕
参考例3で用いられたプライマー14の塩基配列を示す。
〔配列番号:50〕
ヒトCLCA1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:51〕
マウスgob−5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:52〕
ヒトCLCA2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:53〕
ヒトCLCA4タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:54〕
配列番号:50で表されるアミノ酸配列を有するヒトCLCA1タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:55〕
配列番号:51で表されるアミノ酸配列を有するマウスgob−5タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:56〕
配列番号:52で表されるアミノ酸配列を有するヒトCLCA2タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:57〕
配列番号:53で表されるアミノ酸配列を有するヒトCLCA4タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
【0046】
後述の実施例1で得られたNIM−1は、2002年6月26日から、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−8091として寄託されている。
後述の参考例1で得られた形質転換体Escherichia coli TOP10/pCR−BluntII−rCLCA1は、2002年1月9日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7846として、2001年12月18日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16742として寄託されている。
後述の参考例2で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4は、2002年2月12日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7887として、2002年1月29日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16751として寄託されている。
後述の参考例2で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4Aは、2002年3月4日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7934として、2002年2月19日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16764として寄託されている。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例および参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、Molecular cloningに記載されている方法に従った。
【0048】
参考例1
(1)ラットCLCA1遺伝子のクローニング
ヒトCLCA1遺伝子の塩基配列〔Genomics、54巻、200頁(1998)〕、マウスgob−5遺伝子の塩基配列〔Biochem. Biophys. Res. Commun.、255巻、347頁(1999)〕およびブタCLCA1遺伝子の塩基配列〔Physiol. Genomics、3巻、101頁(2000)〕の共通配列を参考にして5種のプライマー〔プライマー1(配列番号:3)、プライマー2(配列番号:4)、プライマー3(配列番号:5)、プライマー4(配列番号:6)およびプライマー5(配列番号:7)〕を設計・合成した。次に、ラット胃粘膜組織からISOGEN(和光純薬社製)を用いて全RNAを調製した。この全RNA 200ngを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて100μlの反応液中で逆転写反応によりcDNAを合成した。このcDNAを鋳型としてプライマー1とプライマー4、プライマー1とプライマー5、プライマー2とプライマー3、プライマー3とプライマー5の組み合わせでPCRを行った後、アガロース電気泳動により予想される大きさのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はTakara Ex Taq(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で1分間反応させた後、94℃で10秒、65℃で30秒、72℃で2分30秒を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpT7 Blue−T vector(Novagen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:15)、U19 primer(配列番号:21)および2種の合成プライマー〔プライマー6(配列番号:8)およびプライマー7(配列番号:9)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、ラットCLCA1遺伝子の部分塩基配列として1879個の塩基配列を決定した(配列番号:2)。配列番号:2で表される塩基配列を基に、625個のアミノ酸配列を決定した(配列番号:1)。該部分アミノ酸配列は、ヒトCLCA1の対応する配列とは75%、マウスgob−5の対応する配列とは88%の相同性を有していた。
【0049】
(2)ラットCLCA1完全長遺伝子のクローニング
上記参考例1(1)で調製したラット胃粘膜全RNAよりmRNA purification kit(amersham pharmacia biotech社製)を用いてmRNAを調製した。このmRNA 1μgを出発材料としてMarathon cDNA Amplification Kit(clontech社製)を用いてAdaptor−ligated cDNAを合成した。5’−RACEのために、このcDNAを鋳型としてプライマー10(配列番号:13)とプライマーAP1(配列番号:19)(clontech社製)の組み合わせでPCRを行った後、その反応液を鋳型にプライマー11(配列番号:14)とプライマーAP2(配列番号:20)(clontech社製)の組み合わせでnested PCRを行い、増幅してきたDNA断片をpCRII−TOPO vector(invitrogen社製)にクローニングした。T7 promoter primer(配列番号:15)、M13RV primer(配列番号:16)を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー3100(アプライドバイオシステムズ社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、ラットCLCA1 N末端アミノ酸配列に相当する塩基配列は含まれていなかったので、さらにプライマー12(配列番号:17)を合成し、Adaptor−ligated cDNAを鋳型に、プライマーAP2(clontech社製)との組み合わせでPCRを行い、増幅してきたDNA断片の塩基配列を直接、蛍光DNAシークエンサー3100(アプライドバイオシステムズ社製)で決定した。その結果、ラットCLCA1 N末端アミノ酸配列に対応する塩基配列が判明した。
また、3’−RACEのために、Adaptor−ligated cDNAを鋳型としてプライマー3とプライマーAP1(clontech社製)の組み合わせでPCRを行った後、その反応液を鋳型にプライマー13(配列番号:18)とプライマーAP2(clontech社製)の組み合わせでnested PCRを行った。続いて増幅してきたDNA断片の塩基配列を直接、蛍光DNAシークエンサー3100(アプライドバイオシステムズ社製)で決定した。その結果、ラットCLCA1 C末端アミノ酸配列に対応する塩基配列が判明した。
以上の結果、ラットCLCA1完全長遺伝子は2730個の塩基配列を有していることが判明した(配列番号:23)。配列番号:23で表される塩基配列がコードする910個のアミノ酸配列を、配列番号:22に示す。
配列番号:22で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質を、ラットCLCA1タンパク質と命名した。ラットCLCA1タンパク質は、アミノ酸レベルでヒトCLCA1と76%、マウスgob−5と89%の相同性をそれぞれ示した。
配列番号:22で表されるアミノ酸配列の第268番目から第889番目は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第4番目から第625番目のアミノ酸配列と同一であった。配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目から第3番目のTyr−Gly−Leuは、配列番号:22で表されるアミノ酸配列の第265番目から第267番目ではAsn−Gln−Argに置換されている。
配列番号:2で表される塩基配列の第1番目から第10番目の配列は、対応する配列番号:23の塩基配列ではAAAACCAACGに置換されている。また、第17番目のT、第224番目のC、第1787番目のAおよび第1868番目のCは、対応する配列番号:23の塩基配列では、それぞれC、T、CおよびGに置換されている。
これらの結果をもとに、ラット胃粘膜cDNAを鋳型としてプライマー14(配列番号:24)とプライマー15(配列番号:25)の組み合わせでPyrobest DNAPolymerase(宝酒造社製)を用いてPCRを行い、配列番号:23で表される塩基配列を有するDNA断片をpCR−BluntII−TOPO vector(invitrogen社製)にクローニングした。このプラスミドを大腸菌TOP10(invitrogen社製)に導入し、Escherichia coli TOP10/pCR−BluntII−rCLCA1と命名した。
【0050】
参考例2
(1)マウスCLCA4遺伝子のクローニング
ヒトCLCA4遺伝子の塩基配列〔FEBS Letters、455巻、295頁(1999)〕、マウスgob−5遺伝子の塩基配列〔Biochem. Biophys. Res. Commun.、255巻、347頁(1999)〕を参考にして4種のプライマー〔プライマー1(配列番号:30)、プライマー2(配列番号:31)、プライマー3(配列番号:32)およびプライマー4(配列番号:33)〕を設計・合成した。次に、マウス大腸組織からISOGEN(和光純薬社製)を用いて全RNAを調製した。さらにmRNA purification kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてmRNAを調製した。このmRNA 1μgを出発材料としてMarathon cDNA Amplification kit(Clontech社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成した。このcDNAを鋳型としてプライマー1とプライマー2、プライマー3とプライマー4の組み合わせでPCRを行った後、アガロース電気泳動により予想される大きさのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はpyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で30秒間反応させた後、94℃で10秒、60℃で30秒、72℃で2分30秒を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:40)、M13RV primer(配列番号:41)および6種の合成プライマー〔プライマー5(配列番号:34)、プライマー6(配列番号:35)、プライマー7(配列番号:36)、プライマー8(配列番号:37)、プライマー9(配列番号:38)およびプライマー10(配列番号:39)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、マウスCLCA4遺伝子の部分塩基配列としてマウスN末端配列を含有する2027個の塩基配列を挿入したクローンNo.3−1(配列番号:28)とマウスC末端配列を含有する1869個の塩基配列を挿入したクローンNo.7−3(配列番号:4)を取得した。両者の重複配列を除き、マウスCLCA4は2772個の塩基配列からなることが判明した(配列番号:27)。配列番号:27で表される塩基配列を基に、924個のアミノ酸配列を決定し(配列番号:26)、マウスCLCA4タンパク質と命名した。つづいてクローンNo.7−3をHindIIIで消化し、1.4KbのマウスCLCA4 C末端領域を含むDNA断片を切り出した。これを同じくHindIIIで消化したクローンNo.3−1のマウスCLCA4 N末端領域を含むベクター配列に連結し、マウスCLCA4完全長配列を含むプラスミドpCR−BluntII−mCLCA4を構築した。このプラスミドを含む形質転換体をエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4と命名した。
マウスCLCA4は、アミノ酸レベルで、ヒトCLCA4と68%の相同性を、マウスgob−5と51%の相同性を有していた。
【0051】
(2)マウスCLCA4A遺伝子のクローニング
マウスCLCA4遺伝子のクローニングの際、マウスCLCA4とは異なる塩基配列を有するクローンの存在が示唆された。そこで、マウス平滑筋cDNA(Mouse MTC panel II:クロンテック社製)を鋳型として、プライマー1(配列番号:30)とプライマー11(配列番号:46)の組み合わせでPCRを行い、アガロース電気泳動により2.7KbのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はpyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で30秒間反応させた後、94℃で10秒、60℃で30秒、72℃で5分を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:40)、M13RV primer(配列番号:41)および6種の合成プライマー〔プライマー5(配列番号:34)、プライマー6(配列番号:35)、プライマー7(配列番号:36)、プライマー8(配列番号:37)、プライマー9(配列番号:38)およびプライマー10(配列番号:39)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、マウスCLCA4とアミノ酸レベルで94%、ヒトCLCA4と68%の相同性を示す924個のアミノ酸からなるタンパク質(配列番号:42)がコードされていることが判明し(配列番号:43)、マウスCLCA4Aタンパク質と命名した。上記プラスミドpCR−BluntII−mCLCA4を構築した。このプラスミドpCR−BluntII−TOPOを含む形質転換体をエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4Aと命名した。
【0052】
参考例3
ラットCLCA4遺伝子のクローニング
ヒトCLCA4遺伝子の塩基配列〔FEBS Letters、455巻、295頁、1999年〕、マウスCLCA4遺伝子の塩基配列(配列番号:27)およびマウスCLCA4A遺伝子の塩基配列を参考にして2種のプライマー〔プライマー12(配列番号:47)およびプライマー13(配列番号:48)〕を設計・合成した。次に、ラット腸組織からISOGEN(和光純薬社製)を用いて全RNAを調製した。さらにmRNA purificationkit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてmRNAを調製した。このmRNA 1μgを出発材料としてMarathon cDNA Amplification kit(Clontech社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成した。このcDNAを鋳型としてプライマー12とプライマー13の組み合わせでPCRを行った後、アガロース電気泳動により予想される大きさのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はpyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で30秒間反応させた後、94℃で10秒、60℃で30秒、72℃で2分を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:40)、M13RV primer(配列番号:41)および3種の合成プライマー〔プライマー12(配列番号:47)、プライマー13(配列番号:48)、プライマー14(配列番号:49)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、ラットCLCA4遺伝子の部分塩基配列として1119個の塩基配列を挿入したクローンNo.a−20(配列番号:45)を取得した。配列番号:45で表される塩基配列を基に、373個の部分アミノ酸配列を決定した(配列番号:44)。該部分アミノ酸配列は、ヒトCLCA4の対応する配列とは66%、マウスCLCA4、マウスCLCA4Aの対応する配列とは81%の相同性を有していた。
【0053】
実施例1
(1)ラット初代気道上皮細胞の分離
Wistarラット(オス、7週齢)を密封容器に入れ、炭酸ガス注入により窒息死させた後、組織培養の技術〔第2版〕132頁(日本組織培養学会編、朝倉書店)記載の方法に準じて、カニューレを気管に挿入後、気管を摘出した。取り出した気管の内外をDMEM/F12培地(インビトロジェン社製)で十分に洗浄し、付着した血液を除去した後、注射筒を用いてカニューレから充分量の1%プロテアーゼ液(Protease−Type14、シグマ社製)を気管の内部に流した。その後、気管下端を手術糸で結紮し、1% プロテアーゼ液で気管内腔を満たし、50ml遠心管内のDMEM/F12培地に浸した。37℃で1時間処理後、DMEM/F12培地+5% FBSを入れた注射筒をカニューレに連結し、内筒を数回上下させ、気管内の細胞を含んだプロテアーゼ液を気管から出し入れして細胞の分離を十分にした後、気管の下端をハサミで切開してプロテアーゼ液を押し流し、細胞を含んだプロテアーゼ液を遠心管に集めた。上記方法で得られた細胞を含んだ液を遠心(1000rpm、5分間)後、上清を捨て、ラット気道上皮細胞用培地〔アメリカン ジャーナル オブ レスピラトリーセル アンド モレキュラー バイオロジー(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.)12巻、385頁(1995)〕の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地(以下、改変ラット気道上皮細胞用培地と称する)に懸濁し、10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュ(岩城硝子社製)に播種した。
【0054】
(2)ラット気道上皮細胞株、NIM−1細胞の樹立
2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液(インビトロジェン社製)で剥がし、新たに3×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、40日間培養を継続した。その後、細胞を0.25%トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに5×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、20日間培養を継続した。その後、細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに3×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、15日間培養を継続した。その後、細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに3×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、12日間培養を継続した。その後、細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに3×103個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を行うことにより、単一細胞に由来するコロニーの出現が認められ、NIM−1細胞として樹立した。
【0055】
実施例2
抗サイトケラチン抗体、抗ムチン抗体を用いた気道上皮細胞の証明
実施例1で得られたNIM−1細胞を8穴コラーゲンコートカルチャースライド(ベクトン・ディッキンソン社製)にウェルあたり5×104個播種した。培養2日目に新鮮培地に交換し、培養4日目にPBSで洗浄後、4%パラフォルムアルデヒド(和光純薬社製)で10分間、細胞を固定した。0.1%のTriton X−100(SIGMA社製)を含むPBS溶液で洗浄後、5% BSAで30分間ブロッキングした。その後、上皮細胞を認識するための一次抗体としてウサギ由来の抗サイトケラチン抗体(ICN社製)を4℃で一晩反応させ、その検出にFITC(Fluorescein Isothiocyanate)で蛍光標識した抗ウサギIgG抗体(モレキュラープローブス社製)を室温で30分間反応させた。さらに粘液を認識するための一次抗体として、マウス由来の抗MUC5AC抗体、または抗MUC2抗体(ともにネオマーカーズ社製)を室温で30分間反応させ、その検出にTexas Redで蛍光標識した抗マウスIgG抗体(モレキュラープローブス社製)を室温で30分間反応させた。反応後、細胞核検出用のDAPIを含む封入剤VECTASHIELD(ベクターラボラトリーズ社製)にて封入し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、NIM−1細胞はサイトケラチンを発現する気道上皮細胞であり、MUC5ACタンパク質およびMUC2タンパク質を含有する粘液を産生していることが確認された。
【0056】
実施例3
NIM−1細胞におけるIL−13添加によるラットCLCA1遺伝子の発現誘導
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴コラーゲンコートプレート(ベクトン・ディッキンソン社製)にウェルあたり2×104個播種した。培養2日目に新鮮培地に交換し、培養4日目にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、添加24時間後の全RNAをRNeasy 96 Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出した。これらの全RNAを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて100μlの反応液中で逆転写反応によりcDNAを合成した。そのうちの10μlを用いてABI PRISM 7700シークエンスディテクター(アプライドバイオシステムズ社製)を用いたTaqMan PCR法により、ラットCLCA1遺伝子コピー数を測定した。
遺伝子量検出に用いたプライマー〔プライマー1(配列番号:10)、プライマー2(配列番号:11)〕およびTaqManプローブ(配列番号:12)はPrimerExpressプログラムを用いて設計した。TaqManプローブのレポーター色素には6−carboxyfluorescein(FAM)を使用した。内部標準としてラットGAPDH遺伝子のコピー数をTaqMan Rodent GAPDH Control Reagents VIC Probe(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて求めた。非特異的な増幅を除去するために逆転写酵素を含まないサンプルも同様に処理し、次式より、GAPDH遺伝子あたりのラットCLCA1遺伝子コピー数を求めた。
(逆転写酵素含有サンプル中の遺伝子コピー数)−(逆転写酵素非含有サンプル中の遺伝子コピー数)=(遺伝子コピー数)
その結果、NIM−1細胞では、ラットCLCA1がIL−13に依存して発現誘導されることがわかった(図1)。
【0057】
実施例4
NIM−1細胞におけるIL−13添加によるCa2+依存性Cl−チャネル活性の増加
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴ブラッククリアボトムプレート(コースター社製)にウェルあたり4×104個播種した。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養した。Cl−チャネル活性の測定はFLIPR Membrane Potential Assay Kit(モレキュラーデバイス社製)を使用した。20mMのHEPESを含むHBSSバッファー(Component B)で希釈した電位感受性色素(Component A)を1ウェルあたり100μl添加し、37℃で30分間反応させた。その後、プレートをFLIPR(モレキュラーデバイス社製)にセットし、終濃度10μMのイオノマイシン刺激後の膜電位変化を蛍光強度の変化として観察した。その結果、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞において、Ca2+依存性Cl−チャネル活性の増加に伴う膜電位の上昇が観察された(図2)。
【0058】
実施例5
ラット気道上皮細胞株におけるIL−13添加による粘液分泌の増加
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴コラーゲンコートプレートにウェルあたり4×104個播種した。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養した。PBSで洗浄後、DMEM/F12培地に交換し37℃、20分間反応を3回行った。その後、DMEM/F12培地に希釈した終濃度10μMのイオノマイシンを添加し、37℃で30分間反応させた。反応後、分泌された粘液を含む上清を新たな96穴プレートに移し、37℃で2時間吸着させた。上清中の粘液をプレートに吸着させた後、0.3% BSAおよび0.05% Tween20(ICN社製)を含むPBS溶液で洗浄後、3% BSAで37℃、2時間のブロッキングを行った。その後、粘液を認識するために、ビオチン化したUlex Europaeus Lectin I(UEA−I、和光純薬社製)を37℃、1時間反応させ、その検出用にHRP標識したストレプトアビジン(ベクターラボラトリーズ社製)を室温で1時間反応させた。0.3% BSAおよび0.05% Tween20を含むPBS溶液で洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)にて3分間発色反応を行い、TMB Stop Solution(KPL社製)で反応停止後、吸光光度計にて450nmの吸光度を測定した。ムチン濃度はコントロールとして使用したブタ胃ムチン(シグマ社製)の吸光度をもとに検量線を作成して算出した。
その結果、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞において、イオノマイシン刺激による粘液分泌の増加が観察された(図3)。
【0059】
実施例6
ラットCLCA1遺伝子の発現を指標としたスクリーニング
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴プレートにウェルあたり2×104個播種し、2日ごとに新鮮改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、4日間培養する。そのプレートに新鮮培地、または新鮮培地で一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり10μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、マウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに1日間培養し、実施例3に記載の方法に従い、細胞中の全RNAをRNeasy 96 Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出する。これらの全RNAを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成する。その一部を用いてABI PRISM 7700シークエンスディテクター(アプライドバイオシステムズ社製)を用いたTaqMan PCR法により、CLCA1遺伝子コピー数を測定する。試験化合物無添加の状態で、IL−13添加時のCLCA1発現量を100%、IL−13無添加時のCLCA1発現量を0%として、CLCA1発現の阻害度を評価し、CLCA1発現阻害作用を有する化合物を選択する。
【0060】
実施例7
Ca2+依存性Cl−チャネル活性を指標としたスクリーニング
実施例4で示したFLIPR Membrane Potential Assay kitを使用してCa2+依存性Cl−チャネル活性を指標としたスクリーニングを行う。
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴ブラッククリアボトムプレートにウェルあたり4×104個播種する。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養する。Component Bで希釈したComponent Aを1ウェルあたり75μl添加し、37℃で20分間反応する。そのプレートにComponent B、またはComponent Bで一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり25μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、プレートをFLIPRにセットし、ComponentBまたは終濃度2μMのイオノマイシンを含むComponent Bを1ウェルあたり50μl添加する。添加後の蛍光変化をCl−チャネル活性として観察する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のCl−チャネル活性を100%、イオノマイシン無刺激時のCl−チャネル活性を0%として、Cl−チャネル活性を評価し、Cl−イオンチャネル阻害作用を有する化合物を選択する。
【0061】
実施例8
粘液分泌を指標としたスクリーニング
実施例5で示した粘液分泌活性を指標としたスクリーニングを行う。
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴コラーゲンコートプレートにウェルあたり4×104個播種する。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養する。PBSで洗浄後、DMEM/F12培地に交換し37℃、20分間反応を3回行う。培地を除去後、新たなDMEM/F12培地またはDMEM/F12培地で一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり100μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、DMEM/F12培地またはDMEM/F12培地に希釈した終濃度10μMのイオノマイシンを1ウェルあたり100μl添加し、37℃で30分間反応させる。反応後、分泌された粘液を含む上清を回収し、新たな96穴プレートに37℃で2時間吸着させる。0.3% BSAおよび0.05% Tween20を含むPBS溶液で洗浄後、3% BSAで37℃、2時間のブロッキングを行う。その後、ビオチン化したUEA−Iを37℃、1時間反応させ、その検出用にHRP標識したストレプトアビジンを室温で1時間反応させる。0.3% BSAおよび0.05% Tween20を含むPBS溶液で洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrateにて3分間発色反応を行い、TMB Stop Solutionで反応停止後、吸光光度計にて450nmの吸光度を測定する。コントロールとして使用したブタ胃ムチンの吸光度をもとに検量線を作成し、ムチン濃度を算出する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のムチン濃度を100%、イオノマイシン無刺激時のムチン濃度を0%として、粘液分泌活性を評価し、粘液分泌阻害作用を有する化合物を選択する。
【0062】
実施例9
ラットCLCA1遺伝子の発現を指標としたスクリーニング
ラット気道上皮細胞株(SPOC1)(American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology、14巻、146頁、1996年)を96穴コラーゲンプレート(ベクトン・ディキンソン社製)に1×104 cells/wellで播種し4日間培養した。培養4日目に、リコンビナントマウスIL−13(R&D社製)および、各種濃度(1、10および100μM)のワートマンニン(Wortmannin)(CALBIOCHEM社製)を添加し、さらに24時間培養した。なお、ワートマンニンを添加していない細胞をコントロールとした。
細胞をPBSで洗浄し、50μl/wellのLysis Buffer(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を加え、37℃で30分間静置し細胞を溶解した。各穴に100μlのProbe Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を加えてピペッティングにより攪拌した後、100μlをサンプリングしてbDNA Capture Plate(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)に添加し、53℃で16〜24時間反応させた。Wash Buffer(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)でプレートを2回洗浄後、100μlのAmplifer Working Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を加え、46℃で2時間反応させた。さらに、Wash Bufferでプレートを2回洗浄後、Label Working Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を100μl/well添加し、46℃で2時間反応させた。プレートを室温に戻しWash Bufferでプレートを2回洗浄後、Substrate Working Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を100μl/well添加し、46℃で1時間反応させた。プレートを室温に戻した後、プレートリーダーで発光強度を測定した。ラットCLCA1の発現量に比例して発光強度が増加するので、発光強度を測定することによりラットCLCA1のmRNAを定量することができる。ワートマンニンを添加していないコントロール細胞では、IL−13によりラットCLCA1が発現誘導され発光強度が増加する。
結果を図4に示す。
これより、ワートマンニンは濃度依存的にラットCLCA1の発現を抑制することがわかる。
よって、上記スクリーニングを用いて、CLCA1の発現を抑制する化合物を選択することができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の上皮気道細胞株は、長期間、安定に本発明で用いられるタンパク質を高発現する。従って、本発明の上皮気道細胞株や、上皮気道細胞株Aおよびサイトカインを用いることにより、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩が、効率よくスクリーニングでき、上記化合物またはその塩は、例えば、肺・気道の炎症を伴う肺・胸部疾患や呼吸器疾患〔例、慢性閉塞性肺疾患(例、慢性気管支炎、肺気腫)、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、過敏性肺炎、肺線維症など〕、炎症性腸疾患、アレルギー性結膜炎、鼻炎(例、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、萎縮性鼻炎、乾燥性前鼻炎、血管運動性鼻炎、壊疽性鼻炎、副鼻腔炎など)などの予防・治療剤として有用である。
【0064】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3における、NIM−1細胞のIL−13添加時のラットCLCA1遺伝子の発現量を表す図である。図中、□はIL−13無添加培養群、■はIL−13添加培養群を示す。
【図2】実施例4における、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞のCa2+依存性Cl−チャネル活性の増加に伴う膜電位の上昇を表す図である。図中、■はIL―13添加培養・イオノマイシン刺激群、□はIL―13添加培養・イオノマイシン無刺激群、▲はIL―13無添加培養・イオノマイシン刺激群、△はIL―13無添加培養・イオノマイシン無刺激群を示す。
【図3】実施例5における、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞の、イオノマイシン刺激による粘液分泌の増加を表す図である。図中、□はIL―13無添加培養群、■はIL―13添加培養群を示す。
【図4】実施例9における、SPOC1細胞でのIL−13によるラットCLCA1遺伝子の発現誘導に対するワートマンニンの抑制作用を表す図である。図中、縦軸はコントロールの発光強度を100%としたときのワートマンニン添加時の発光強度を示す。白いバーはワートマンニン濃度100μM、灰色のバーはワートマンニン濃度10μM、黒いバーはワートマンニン濃度1μMを添加した場合のラットCLCA1遺伝子の発現量である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規気道上皮細胞株の用途に関する。さらに詳しくは、呼吸器疾患などの予防・治療剤のスクリーニング方法などに関する。
【0002】
【従来の技術】
慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫、びまん性汎細気管支炎、内因性喘息などは、喫煙世代の高齢化、平均寿命の延長等にともなって、今後、呼吸器疾患の中心的な病気になると考えられている。また、気管支喘息は気道の慢性炎症性疾患であり、気道狭窄を示し、発作性の呼吸困難、喘鳴、咳などの症状が見られる。その発症と進展には気道上皮細胞、肥満細胞、好酸球、Tリンパ球などの多くの細胞が関与している。
外界からの刺激(アレルゲン、排気物)やウイルス感染により気道の炎症反応の引き金が引かれると、気道上皮細胞や気管支周辺の毛細血管内皮細胞上にVCAM−1やICAM−1などの接着分子が発現し〔ジャーナル・オブ・アラジー・アンド・クリニカル・イムノロジー(J. Allergy Clin. Immunol.)、96巻、941頁、1995年〕、サイトカインや化学遊走物質が産生される。気管支喘息の患者はTh2型のヘルパーT細胞の機能が亢進しており、IL−3、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSFなどのTh2型のサイトカインやeotaxin、RANTESなどのケモカインの産生が増加する。IL−4やIL−13はIgEの産生誘導作用があり、IL−3やIL−4は肥満細胞の増殖誘導作用がある。さらに、IL−5、GM−CSFなどの作用により好酸球が分化増殖し、eotaxin、RANTESにより気道に浸潤してくる〔アラジー・アンド・アズマ・プロシーディング(Allergy Asthma Proc.)、20巻、141頁、1999年〕。また、サイトカインの中でも、IL−13が慢性閉塞性肺疾患の発症や気管支喘息における粘液過分泌の重要な因子であることが報告されてきている〔非特許文献1 ジャーナル オブ クリニカル インヴェスティゲーション(J. Clin. Invest.)、106巻、1081頁、2000年;ジャーナル オブ クリニカル インヴェスティゲーション(J. Clin. Invest.)、103巻、779頁、1999年〕。
気管・気管支の粘膜を覆っている上皮細胞は外界からの刺激が直接粘膜下組織に伝わるのを防ぐバリヤーの機能、分泌物や異物の排泄機能を持つだけでなく、上皮由来平滑筋弛緩因子の分泌などによって気管の収縮を制御している。この気道上皮細胞からの分泌にはクロライドチャネルが重要な働きを持ち、その異常は様々な呼吸器疾患を引き起こす。気道上皮で機能するクロライドチャネルのうちCFTRの機能不全が嚢胞性繊維症を引き起こすことや(Science、257巻、1125頁、1992年)、CICクロライドチャネルが筋緊張症と関係している(Nature、354巻、304頁、1991年)ことが報告されている。特に喘息や慢性閉塞性肺疾患など気道粘液の過分泌を伴う疾患についてはカルシウム依存性クロライドチャネル(以下、CLCAと略称することもある)の関与が報告されている〔アメリカン ジャーナル オブ レスピラトリー アンド クリティカル ケア オブ メディシン(Am. J. Respir. Crit. Care Med.)1−65巻、1132頁、2002年〕。また、CLCA1などの活性を阻害することと喘息などの治療との関連や、Gob−5遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与による気道過敏性亢進の抑制などが報告されている(特許文献1 WO 01/38530号公報)。
CLCAを発現する細胞株としてはヒトCLCA2を発現しているMCF10A細胞(非特許文献2 Cancer Research、59巻、5488頁、1999年)、マウスCLCA1を発現しているHC11細胞(非特許文献3 J. Biol. Chem.、276巻、40510頁、2001年)などが報告されているが、これらはいずれも胸部上皮細胞株で、機能的にもガンやアポトーシスとの関連が示唆されており、粘液の過分泌との関連についての報告はない。また粘液を分泌する気道上皮細胞株としては、正常ヒト気道上皮細胞株のNHTBE細胞〔アメリカン ジャーナル オブ フィジオロジカル ラング セル モレキュラー フィジオロジー(Am. J. Physiol. Lung. Cell Mol. Physiol)、278巻、L1118頁、2000年〕、ハムスター初代気道上皮細胞のHTE細胞〔ジャーナル オブ セルラー フィジオロジー(J. Cellular Physiology)、125巻、167頁、1985年〕などが報告されている。
【特許文献1】
WO 01/38530号公報
【非特許文献1】
J. Clin. Invest.、106巻、1081頁、2000年
【非特許文献2】
Cancer Research、59巻、5488頁、1999年
【非特許文献3】
J. Biol. Chem.、276巻、40510頁、2001年
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
気道過敏性や気道粘液の過分泌を伴う疾患については、CLCAの関与が報告されており、CLCAの発現を抑制する薬剤、CLCAの活性を阻害する薬剤は、喘息や慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患の有効な治療薬となりうる。しかしながら、CLCAは、疾患の発症に伴って発現が誘導される遺伝子であるため、呼吸器由来の細胞でCLCAを発現する細胞株は報告されておらず、また、ある種の刺激でCLCAを発現誘導しうる細胞株についても報告されていない。副作用の少ない優れた慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息の予防・治療剤を開発するために、CLCAを発現または発現誘導しうる細胞株の取得が切望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、初代気道上皮細胞株をIL−13で刺激することにより、CLCA1を高発現する気道上皮細胞株を見出した。この知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する気道上皮細胞株、
(2) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(3) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(4) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(4a) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:22で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(5) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を高発現する上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(5a) ハウスキーピング遺伝子に対して約0.01%以上のカルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質遺伝子を発現する上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(6) 粘液を分泌する能力を有する上記(1)記載の気道上皮細胞株、
(7) 粘液がMUC2タンパク質および(または)MUC5ACタンパク質である上記(6)記載の気道上皮細胞株、
(8) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株に、サイトカインを接触させることを特徴とする、上記(1)記載の気道上皮細胞株の製造法、
(9) サイトカインがIL−13である上記(8)記載の製造法、
(9a) サイトカインを約0.01ng/ml以上用いる上記(8)記載の製造法、
(10) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞である上記(8)記載の製造法、
(11) NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞、
(12) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(12a)(i)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを、カルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株、サイトカインおよび試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合における、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性をそれぞれ測定し、比較を行う上記(12)記載のスクリーニング方法、
(13) 上記(1)記載の気道上皮細胞株を用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(13a) (i)上記(1)記載の気道上皮細胞株をカルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii)上記(1)記載の気道上皮細胞株および試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合におけるカルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性をそれぞれ測定し、比較を行うことにより、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を選択する上記(13)記載のスクリーニング方法、
(14) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(12)または(13)記載のスクリーニング方法、
(15) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性が、クロライドチャネル様活性または粘液分泌活性である上記(12)または(13)記載のスクリーニング方法、
(15a) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性が、クロライドチャネル様活性または粘液分泌活性である上記(12a)または(13a)記載のスクリーニング方法、
(16) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインまたは上記(1)記載の気道上皮細胞株を含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(17) 上記(12)もしくは(13)記載のスクリーニング方法または上記(16)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(18) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(18a) (i)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを培養した場合と(ii)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株、サイトカインおよび試験化合物の混合物を培養した場合における、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質遺伝子の発現量をそれぞれ測定し、比較することにより、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩を選択する上記(18)記載のスクリーニング方法、
(18b) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、哺乳動物(ヒト、ラット、マウスなど)の初代気道上皮細胞が株化された細胞株である上記(18)または上記(18a)記載のスクリーニング方法、
(18c) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株がラット気道上皮細胞株である上記(18)または(18a)記載のスクリーニング方法、
(18d) ラット気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞またはSPOC1(American Journal of Respiratory Celland Molecular Biology、14巻、146頁、1996年)細胞である上記(18c)記載のスクリーニング方法、
(19) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(18)記載のスクリーニング方法、
(20) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(21) 上記(18)記載のスクリーニング方法または上記(20)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(22) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(22a) (i)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを培養した場合と(ii)カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株、サイトカインおよび試験化合物の混合物を培養した場合における、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生量を、それぞれ測定し、比較することにより、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩を選択する上記(22)記載のスクリーニング方法、
(23) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である上記(22)記載のスクリーニング方法、
(24) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(25) 上記(22)記載のスクリーニング方法または上記(24)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩、
(26) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞である上記(12)、(18)または(22)記載のスクリーニング方法、
(27) 上記(17)、(21)または(25)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(28) 呼吸器疾患の予防・治療剤である上記(27)記載の医薬、
(29) 呼吸器疾患が慢性閉塞性肺疾患または気管支喘息である上記(28)記載の医薬、
(30) 鼻炎の予防・治療剤である上記(27)記載の医薬、
(31) カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(32) 上記(1)記載の気道上皮細胞株を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(33) 上記(11)記載の細胞およびIL−13を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(34) 哺乳動物に対し、上記(17)、(21)または(25)記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療方法、
(35) 呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤の製造のための、上記(17)、(21)または(25)記載の化合物またはその塩の使用などを提供する。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるカルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質(以下、本発明で用いられるタンパク質または本発明のタンパク質と称することもある)としては、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質ファミリーに属するタンパク質などが用いられ、例えば、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0006】
配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表わされるアミノ酸配列と約40%以上、好ましくは約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、クロライドチャネル様活性(例、カルシウム依存性クロライドチャネル様活性)、粘液分泌活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、クロライドチャネル様活性、粘液分泌活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
クロライドチャネル様活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、ジェノミクス(Genomics)、54巻、200頁(1998)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
粘液分泌活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、バイオケミカル ジャーナル(Biochem. J)、316巻、943頁(1996)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
【0007】
また、本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、▲1▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、▲4▼配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲5▼それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
【0008】
本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明で用いられるタンパク質は、C末端が、カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:22で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:26で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:42で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:44で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:50で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:51で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:52で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質、マウスCLCA1(J Biol Chem, 273巻、32096頁、1998年)、マウスCLCA2(Biochem Biophys Res Commun, 264巻、933頁、1999年)などがあげられる。
【0009】
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
【0010】
また、本発明で用いられる部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明で用いられる部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
さらに、本発明で用いられる部分ペプチドには、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様に、C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有しているもの、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられる部分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いることができる。
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0011】
本発明で用いられるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、タンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0012】
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0013】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0014】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0015】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0016】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
【0017】
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法が挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0018】
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明で用いられるタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列と約40%以上、好ましくは約50%以上、好ましくは約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
【0019】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行うことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:22で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:23で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:26で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:27で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:42で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:43で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:44で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:45で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:50で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:54で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:51で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:55で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:52で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:56で表される塩基配列を含有するDNAが、配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:57で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0020】
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(例、DNA)としては、前述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列を含有するDNAの一部分を有するDNA、または配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:2、配列番号:23、配列番号:27、配列番号:43、配列番号:45、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56または配列番号:57で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質、部分ペプチド(以下、これらをコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0021】
DNAの塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法やGapped duplex法やKunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行うことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0022】
本発明のタンパク質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
【0023】
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
【0024】
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of MolecularBiology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
【0025】
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行うことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行うことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行うことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6, 47−55(1988))などに記載の方法に従って行うことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行うことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0026】
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Miller,Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G.A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明のタンパク質を生成せしめることができる。
【0027】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行うことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当なタンパク修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。タンパク修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
【0028】
かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより測定することができる。本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0029】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウイルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行うことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行うことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行うことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0030】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行うことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行うことができる。
【0031】
(1)本発明の気道上皮細胞株
カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する気道上皮細胞株(以下、本発明の気道上皮細胞株と略記することもある)としては、本発明で用いられるタンパク質を発現する、ヒトなどの哺乳動物由来の気道上皮細胞株である。
本発明の気道上皮細胞株としては、粘液を分泌する能力を有するものが好ましい。粘液としては、例えば、MUC5ACタンパク質、MUC2タンパク質などが挙げられる。
本発明の気道上皮細胞株の気道上皮細胞株であるか否かの確認は、公知の方法を用いて、例えばサイトケラチンの発現の測定によって行えばよい。
本発明の気道上皮細胞株としては、本発明で用いられるタンパク質を高発現するものが好ましい。例えば、ハウスキーピング遺伝子(例、GAPDH遺伝子)に対して約0.01%以上、好ましくは約0.1%以上、より好ましくは約1%以上の該タンパク質の遺伝子を発現する気道上皮細胞株などが用いられる。
本発明の気道上皮細胞株は、本発明で用いられるタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株(以下、気道上皮細胞株Aと略記することもある)に、サイトカインを接触させることにより得られる。
本発明の気道上皮細胞株には、気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させることにより得られる、本発明で用いられるタンパク質を発現する細胞も含まれる。
上記気道上皮細胞株Aとしては、例えば、ヒトなどの哺乳動物の初代気道上皮細胞(例、ラット初代気道上皮細胞など)が株化されたもの、SPOC1細胞〔アメリカン ジャーナル オブ レスピラトリー セル アンド モレキュラーバイオロジー(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.)、14巻、146頁、1996年〕などが挙げられる。具体例としては、ラットの気管から細胞を分離し、培地(例、ラット気道上皮細胞用培地〔Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 12巻、385頁、1995年〕の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地など)で、単一細胞に由来するコロニーの出現が認められるまで培養を継続した細胞などが挙げられる。好ましくは、後述の実施例で得られたNIM−1などが用いられる。
サイトカインとしては、例えば、IL−13、IL−1、IL−4、IL−6、IL−8、IL−9、TNF−α、TGF−α、EGF、bFGFなどが挙げられる。好ましくはIL−13である。
サイトカインの使用量としては、例えば、約0.01ng/ml以上、好ましくは約0.1ng/ml以上、約1ng/ml以上が用いられる。
気道上皮細胞株Aに、サイトカインを接触させる方法は特に限定されず、例えば、プレートに播種された気道上皮細胞株Aに、サイトカインを添加し、培養する方法などが挙げられる。
【0032】
(2)気道上皮細胞株Aまたは本発明の気道上皮細胞株を用いるスクリーニング方法
本発明のタンパク質は、肺・気道の炎症に先立ち発現が増加し、本発明のタンパク質遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは気道過敏性亢進を抑制するので、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩などは、肺・気道の炎症を伴う肺・胸部疾患や呼吸器疾患〔例、慢性閉塞性肺疾患(例、慢性気管支炎、肺気腫)、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、過敏性肺炎、肺線維症など〕、炎症性腸疾患、アレルギー性結膜炎などの予防・治療剤などの医薬として使用できる。
さらに、本発明のタンパク質は、鼻炎時に発現が増加するので、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩などは、例えば、鼻炎(例、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、萎縮性鼻炎、乾燥性前鼻炎、血管運動性鼻炎、壊疽性鼻炎、副鼻腔炎など)などの予防・治療剤として使用することができる。
したがって、本発明の気道上皮細胞株および気道上皮細胞株Aは、上記化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
本発明は、本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のタンパク質の活性(例えば、クロライドチャネル様活性、粘液分泌活性など)を阻害する化合物またはその塩(以下、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、例えば、(a)(i)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインをカルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii)気道上皮細胞株A、サイトカインおよび試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法、(b)(i’)本発明の気道上皮細胞株をカルシウム賦活剤で活性化した場合と(ii’)本発明の気道上皮細胞株および試験化合物の混合物をカルシウム賦活剤で活性化した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法が挙げられる。
上記スクリーニング方法においては、例えば、(i)と(ii)または(i’)と(ii’)の場合における、本発明のタンパク質のクロライドチャネル様活性、粘液分泌活性などを測定して、比較する。
クロライドチャネル様活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、ジェノミクス(Genomics)、54巻、200頁(1998)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
粘液分泌活性の測定は、公知の方法に準じて行うことができ、例えば、バイオケミカル ジャーナル(Biochem.J)、316巻、943頁(1996)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
カルシウム賦活剤としては、例えば、イオノマイシン、A23187(カルシマイシン)などが用いられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0033】
気道上皮細胞株A、サイトカインおよび試験化合物の混合は、(1)気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させ、カルシウム賦活剤で活性化する前に試験化合物と混合する、(2)気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させ、カルシウム賦活剤で活性化した後に試験化合物と混合する、(3)気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触させ、カルシウム賦活剤と試験化合物の混合物を添加するなど、気道上皮細胞株Aにカルシウム賦活剤を接触させる前に、気道上皮細胞株Aにサイトカインを接触される順序であれば、いずれの順序で行ってもよい。
本発明の気道上皮細胞株と試験化合物との混合は、本発明の気道上皮細胞株をカルシウム賦活剤で活性化する前または後の何れであってもよく、また本発明の気道上皮細胞株に試験化合物とカルシウム賦活剤の混合物を添加してもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、気道上皮細胞株Aまたは本発明の気道上皮細胞株をスクリーニングに適したバッファーに浮遊して調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、ほう酸バッファーなどの、本発明のタンパク質の活性を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
例えば、上記(ii)または(ii’)の場合におけるクロライドチャネル活性または粘液分泌活性などを、上記(i)または(i’)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0034】
以下に、スクリーニングの具体例を記載する。
(A)気道上皮細胞株Aを96穴ブラッククリアボトムプレートにウェルあたり4×104個播種する。2日ごとに新鮮な培地〔例、ラット気道上皮細胞用培地(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、12巻、385頁、1995年)の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地など〕に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養する。Cl−チャネル活性の測定はFLIPR Membrane Potential Assay Kit(モレキュラーデバイス社製)を使用する。20mMのHEPESを含むHBSSバッファー(Component B)で希釈した電位感受性色素(Component A)を1ウェルあたり75μl添加し、37℃で20分間反応する。そのプレートにComponent B、またはComponent Bで一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり25μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、プレートをFLIPRにセットし、Component Bまたは終濃度10μMのイオノマイシンを含むComponent Bを1ウェルあたり50μl添加する。添加後の蛍光変化をCl−チャネル活性として観察する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のCl−チャネル活性を100%、イオノマイシン無刺激時のCl−チャネル活性を0%として、Cl−チャネル活性を評価し、Cl−イオンチャネル阻害作用を有する化合物を選択する。
【0035】
(B)本発明の気道上皮細胞株を96穴ブラッククリアボトムプレートにウェルあたり4×105個播種し一晩培養する。20mMのHEPESを含むHBSSバッファー(Component B)で希釈した電位感受性色素(Component A)を1ウェルあたり75μl添加し、37℃で20分間反応する。そのプレートにComponent B、またはComponent Bで一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり25μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、プレートをFLIPRにセットし、Component Bまたは終濃度10μMのイオノマイシンを含むComponent Bを1ウェルあたり50μl添加する。添加後の蛍光変化をCl−チャネル活性として観察する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のCl−チャネル活性を100%、イオノマイシン無刺激時のCl−チャネル活性を0%として、Cl−チャネル活性を評価し、Cl−イオンチャネル阻害作用を有する化合物を選択する。
【0036】
さらに、本発明は、気道上皮細胞株Aを用いることを特徴とする本発明のタンパク質遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩(以下、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法も提供する。より具体的には、例えば、
(iii)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを培養した場合と(iv)気道上皮細胞株A、サイトカインおよび試験化合物の混合物を培養した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法においては、例えば、(iii)と(iv)の場合における、本発明のタンパク質遺伝子の発現量(具体的には、本発明のタンパク質量または前記タンパク質をコードするmRNA量)を測定して、比較する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、気道上皮細胞株Aをスクリーニングに適したバッファーに浮遊して調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、ほう酸バッファーなどの、本発明のタンパク質の発現を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
本発明のタンパク質量の測定は、公知の方法、例えば、本発明のタンパク質を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
本発明のタンパク質遺伝子の発現量は、公知の方法、例えば、ノーザンブロッティングやReverse transcription−polymerase chain reaction(RT−PCR)、リアルタイムPCR解析システム(ABI社製、TaqMan polymerase chain reaction)などの方法あるいはそれに準じる方法にしたがって測定することができる。
例えば、上記(iv)の場合における本発明のタンパク質遺伝子の発現を、上記(iii)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のタンパク質遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0037】
以下に、スクリーニングの具体例を記載する。
気道上皮細胞株Aを96穴プレートにウェルあたり2×104個播種し、2日ごとに新鮮培地〔例、ラット気道上皮細胞用培地(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.、12巻、385頁、1995年)の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地など〕に交換しながら、4日間培養する。そのプレートに新鮮培地、または新鮮培地で一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり10μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、IL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに1日間培養し、細胞中の全RNAをRNeasy 96 Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出する。これらの全RNAを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成する。その一部を用いてABI PRISM 7700シークエンスディテクター(アプライドバイオシステムズ社製)を用いたTaqMan PCR法により、本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)のコピー数を測定する。試験化合物無添加の状態で、IL−13添加時の本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現量を100%、IL−13無添加時の本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現量を0%として、本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現の阻害度を評価し、本発明で用いられるタンパク質の遺伝子(例、CLCA1遺伝子など)の発現を阻害する作用を有する化合物を選択する。
【0038】
本発明は、気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを用いることを特徴とする本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩(以下、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法も提供する。より具体的には、例えば、
(v)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを培養した場合と(vi)気道上皮細胞株Aおよびサイトカインと試験化合物の混合物を培養した場合との比較を行うことを特徴とする阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法においては、例えば、本発明のタンパク質に対する抗体などを用いて(v)と(vi)の場合における、本発明のタンパク質の産生量(本発明のタンパク質量)を測定(例、本発明のタンパク質の発現を検出、本発明のタンパク質の発現量を定量等)して、比較する。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、気道上皮細胞株Aをスクリーニングに適したバッファーに浮遊して調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、ほう酸バッファーなどの、本発明のタンパク質の活性を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
本発明のタンパク質量の測定は、公知の方法、例えば、本発明のタンパク質を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
例えば、上記(vi)の場合における本発明のタンパク質の産生を、上記(v)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のタンパク質の産生(発現)を阻害する化合物またはその塩として選択することができる。
【0039】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明の気道上皮細胞株、または気道上皮細胞株Aおよびサイトカインを含有するものである。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物またはその塩であり、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物もしくはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物もしくはその塩、または本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物もしくはその塩である。
該化合物の塩としては、前記した本発明のタンパク質の塩と同様のものが用いられる。
【0040】
本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物もしくはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物もしくはその塩、または本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物もしくはその塩は、例えば、肺・気道の炎症を伴う肺・胸部疾患や呼吸器疾患〔例、慢性閉塞性肺疾患(例、慢性気管支炎、肺気腫)、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、過敏性肺炎、肺線維症など〕、炎症性腸疾患、アレルギー性結膜炎に対する予防・治療剤などの医薬として有用である。さらには鼻炎(例、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、萎縮性鼻炎、乾燥性前鼻炎、血管運動性鼻炎、壊疽性鼻炎、副鼻腔炎など)などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
上記化合物またはその塩を上述の予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。
例えば、上記化合物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
【0041】
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、慢性閉塞性肺疾患治療の目的で本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物またはその塩の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、慢性閉塞性肺疾患治療の目的で本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物またはその塩を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0042】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0043】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0044】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2−Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0045】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ラットCLCA1タンパク質の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するラットCLCA1タンパク質部分アミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
参考例1で用いられたプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
参考例1で用いられたプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
参考例1で用いられたプライマー3の塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
参考例1で用いられたプライマー4の塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
参考例1で用いられたプライマー5の塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
参考例1で用いられたプライマー6の塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
参考例1で用いられたプライマー7の塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
実施例3で用いられたプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
実施例3で用いられたプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
実施例3で用いられたTaqManプローブの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
参考例1で用いられたプライマー10の塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
参考例1で用いられたプライマー11の塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
参考例1で用いられたT7 promoter primerの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
参考例1で用いられたM13RV primerの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
参考例1で用いられたプライマー12の塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕
参考例1で用いられたプライマー13の塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
参考例1で用いられたプライマーAP1の塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
参考例1で用いられたプライマーAP2の塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
参考例1で用いられたU19 primerの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
ラットCLCA1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:23〕
配列番号:22で表されるアミノ酸配列を有するラットCLCA1タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:24〕
参考例1で用いられたプライマー14の塩基配列を示す。
〔配列番号:25〕
参考例1で用いられたプライマー15の塩基配列を示す。
〔配列番号:26〕
マウスCLCA4タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:27〕
配列番号:26で表されるアミノ酸配列を有するマウスCLCA4タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:28〕
マウスCLCA4遺伝子5’側の塩基配列を示す。
〔配列番号:29〕
マウスCLCA4遺伝子3’側の塩基配列を示す。
〔配列番号:30〕
参考例2で用いられたプライマー1の塩基配列を示す。
〔配列番号:31〕
参考例2で用いられたプライマー2の塩基配列を示す。
〔配列番号:32〕
参考例2で用いられたプライマー3の塩基配列を示す。
〔配列番号:33〕
参考例2で用いられたプライマー4の塩基配列を示す。
〔配列番号:34〕
参考例2で用いられたプライマー5の塩基配列を示す。
〔配列番号:35〕
参考例2で用いられたプライマー6の塩基配列を示す。
〔配列番号:36〕
参考例2で用いられたプライマー7の塩基配列を示す。
〔配列番号:37〕
参考例2で用いられたプライマー8の塩基配列を示す。
〔配列番号:38〕
参考例2で用いられたプライマー9の塩基配列を示す。
〔配列番号:39〕
参考例2で用いられたプライマー10の塩基配列を示す。
〔配列番号:40〕
参考例2で用いられたT7 promoter primer(プロモーター プライマー)の塩基配列を示す。
〔配列番号:41〕
参考例2で用いられたM13RV primer(プライマー)の塩基配列を示す。
〔配列番号:42〕
マウスCLCA4Aタンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:43〕
配列番号:42で表されるアミノ酸配列を有するマウスCLCA4Aタンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:44〕
ラットCLCA4タンパク質の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:45〕
配列番号:44で表される部分アミノ酸配列を有するラットCLCA4タンパク質の部分アミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:46〕
参考例2で用いられたプライマー11の塩基配列を示す。
〔配列番号:47〕
参考例3で用いられたプライマー12の塩基配列を示す。
〔配列番号:48〕
参考例3で用いられたプライマー13の塩基配列を示す。
〔配列番号:49〕
参考例3で用いられたプライマー14の塩基配列を示す。
〔配列番号:50〕
ヒトCLCA1タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:51〕
マウスgob−5タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:52〕
ヒトCLCA2タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:53〕
ヒトCLCA4タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:54〕
配列番号:50で表されるアミノ酸配列を有するヒトCLCA1タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:55〕
配列番号:51で表されるアミノ酸配列を有するマウスgob−5タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:56〕
配列番号:52で表されるアミノ酸配列を有するヒトCLCA2タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:57〕
配列番号:53で表されるアミノ酸配列を有するヒトCLCA4タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
【0046】
後述の実施例1で得られたNIM−1は、2002年6月26日から、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに受託番号FERM BP−8091として寄託されている。
後述の参考例1で得られた形質転換体Escherichia coli TOP10/pCR−BluntII−rCLCA1は、2002年1月9日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7846として、2001年12月18日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16742として寄託されている。
後述の参考例2で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4は、2002年2月12日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7887として、2002年1月29日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16751として寄託されている。
後述の参考例2で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4Aは、2002年3月4日から茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託番号FERM BP−7934として、2002年2月19日から大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号(郵便番号532−8686)の財団法人発酵研究所(IFO)に受託番号IFO 16764として寄託されている。
【0047】
【実施例】
以下に、実施例および参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、Molecular cloningに記載されている方法に従った。
【0048】
参考例1
(1)ラットCLCA1遺伝子のクローニング
ヒトCLCA1遺伝子の塩基配列〔Genomics、54巻、200頁(1998)〕、マウスgob−5遺伝子の塩基配列〔Biochem. Biophys. Res. Commun.、255巻、347頁(1999)〕およびブタCLCA1遺伝子の塩基配列〔Physiol. Genomics、3巻、101頁(2000)〕の共通配列を参考にして5種のプライマー〔プライマー1(配列番号:3)、プライマー2(配列番号:4)、プライマー3(配列番号:5)、プライマー4(配列番号:6)およびプライマー5(配列番号:7)〕を設計・合成した。次に、ラット胃粘膜組織からISOGEN(和光純薬社製)を用いて全RNAを調製した。この全RNA 200ngを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて100μlの反応液中で逆転写反応によりcDNAを合成した。このcDNAを鋳型としてプライマー1とプライマー4、プライマー1とプライマー5、プライマー2とプライマー3、プライマー3とプライマー5の組み合わせでPCRを行った後、アガロース電気泳動により予想される大きさのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はTakara Ex Taq(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で1分間反応させた後、94℃で10秒、65℃で30秒、72℃で2分30秒を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpT7 Blue−T vector(Novagen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:15)、U19 primer(配列番号:21)および2種の合成プライマー〔プライマー6(配列番号:8)およびプライマー7(配列番号:9)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、ラットCLCA1遺伝子の部分塩基配列として1879個の塩基配列を決定した(配列番号:2)。配列番号:2で表される塩基配列を基に、625個のアミノ酸配列を決定した(配列番号:1)。該部分アミノ酸配列は、ヒトCLCA1の対応する配列とは75%、マウスgob−5の対応する配列とは88%の相同性を有していた。
【0049】
(2)ラットCLCA1完全長遺伝子のクローニング
上記参考例1(1)で調製したラット胃粘膜全RNAよりmRNA purification kit(amersham pharmacia biotech社製)を用いてmRNAを調製した。このmRNA 1μgを出発材料としてMarathon cDNA Amplification Kit(clontech社製)を用いてAdaptor−ligated cDNAを合成した。5’−RACEのために、このcDNAを鋳型としてプライマー10(配列番号:13)とプライマーAP1(配列番号:19)(clontech社製)の組み合わせでPCRを行った後、その反応液を鋳型にプライマー11(配列番号:14)とプライマーAP2(配列番号:20)(clontech社製)の組み合わせでnested PCRを行い、増幅してきたDNA断片をpCRII−TOPO vector(invitrogen社製)にクローニングした。T7 promoter primer(配列番号:15)、M13RV primer(配列番号:16)を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー3100(アプライドバイオシステムズ社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、ラットCLCA1 N末端アミノ酸配列に相当する塩基配列は含まれていなかったので、さらにプライマー12(配列番号:17)を合成し、Adaptor−ligated cDNAを鋳型に、プライマーAP2(clontech社製)との組み合わせでPCRを行い、増幅してきたDNA断片の塩基配列を直接、蛍光DNAシークエンサー3100(アプライドバイオシステムズ社製)で決定した。その結果、ラットCLCA1 N末端アミノ酸配列に対応する塩基配列が判明した。
また、3’−RACEのために、Adaptor−ligated cDNAを鋳型としてプライマー3とプライマーAP1(clontech社製)の組み合わせでPCRを行った後、その反応液を鋳型にプライマー13(配列番号:18)とプライマーAP2(clontech社製)の組み合わせでnested PCRを行った。続いて増幅してきたDNA断片の塩基配列を直接、蛍光DNAシークエンサー3100(アプライドバイオシステムズ社製)で決定した。その結果、ラットCLCA1 C末端アミノ酸配列に対応する塩基配列が判明した。
以上の結果、ラットCLCA1完全長遺伝子は2730個の塩基配列を有していることが判明した(配列番号:23)。配列番号:23で表される塩基配列がコードする910個のアミノ酸配列を、配列番号:22に示す。
配列番号:22で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質を、ラットCLCA1タンパク質と命名した。ラットCLCA1タンパク質は、アミノ酸レベルでヒトCLCA1と76%、マウスgob−5と89%の相同性をそれぞれ示した。
配列番号:22で表されるアミノ酸配列の第268番目から第889番目は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第4番目から第625番目のアミノ酸配列と同一であった。配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第1番目から第3番目のTyr−Gly−Leuは、配列番号:22で表されるアミノ酸配列の第265番目から第267番目ではAsn−Gln−Argに置換されている。
配列番号:2で表される塩基配列の第1番目から第10番目の配列は、対応する配列番号:23の塩基配列ではAAAACCAACGに置換されている。また、第17番目のT、第224番目のC、第1787番目のAおよび第1868番目のCは、対応する配列番号:23の塩基配列では、それぞれC、T、CおよびGに置換されている。
これらの結果をもとに、ラット胃粘膜cDNAを鋳型としてプライマー14(配列番号:24)とプライマー15(配列番号:25)の組み合わせでPyrobest DNAPolymerase(宝酒造社製)を用いてPCRを行い、配列番号:23で表される塩基配列を有するDNA断片をpCR−BluntII−TOPO vector(invitrogen社製)にクローニングした。このプラスミドを大腸菌TOP10(invitrogen社製)に導入し、Escherichia coli TOP10/pCR−BluntII−rCLCA1と命名した。
【0050】
参考例2
(1)マウスCLCA4遺伝子のクローニング
ヒトCLCA4遺伝子の塩基配列〔FEBS Letters、455巻、295頁(1999)〕、マウスgob−5遺伝子の塩基配列〔Biochem. Biophys. Res. Commun.、255巻、347頁(1999)〕を参考にして4種のプライマー〔プライマー1(配列番号:30)、プライマー2(配列番号:31)、プライマー3(配列番号:32)およびプライマー4(配列番号:33)〕を設計・合成した。次に、マウス大腸組織からISOGEN(和光純薬社製)を用いて全RNAを調製した。さらにmRNA purification kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてmRNAを調製した。このmRNA 1μgを出発材料としてMarathon cDNA Amplification kit(Clontech社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成した。このcDNAを鋳型としてプライマー1とプライマー2、プライマー3とプライマー4の組み合わせでPCRを行った後、アガロース電気泳動により予想される大きさのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はpyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で30秒間反応させた後、94℃で10秒、60℃で30秒、72℃で2分30秒を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:40)、M13RV primer(配列番号:41)および6種の合成プライマー〔プライマー5(配列番号:34)、プライマー6(配列番号:35)、プライマー7(配列番号:36)、プライマー8(配列番号:37)、プライマー9(配列番号:38)およびプライマー10(配列番号:39)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、マウスCLCA4遺伝子の部分塩基配列としてマウスN末端配列を含有する2027個の塩基配列を挿入したクローンNo.3−1(配列番号:28)とマウスC末端配列を含有する1869個の塩基配列を挿入したクローンNo.7−3(配列番号:4)を取得した。両者の重複配列を除き、マウスCLCA4は2772個の塩基配列からなることが判明した(配列番号:27)。配列番号:27で表される塩基配列を基に、924個のアミノ酸配列を決定し(配列番号:26)、マウスCLCA4タンパク質と命名した。つづいてクローンNo.7−3をHindIIIで消化し、1.4KbのマウスCLCA4 C末端領域を含むDNA断片を切り出した。これを同じくHindIIIで消化したクローンNo.3−1のマウスCLCA4 N末端領域を含むベクター配列に連結し、マウスCLCA4完全長配列を含むプラスミドpCR−BluntII−mCLCA4を構築した。このプラスミドを含む形質転換体をエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4と命名した。
マウスCLCA4は、アミノ酸レベルで、ヒトCLCA4と68%の相同性を、マウスgob−5と51%の相同性を有していた。
【0051】
(2)マウスCLCA4A遺伝子のクローニング
マウスCLCA4遺伝子のクローニングの際、マウスCLCA4とは異なる塩基配列を有するクローンの存在が示唆された。そこで、マウス平滑筋cDNA(Mouse MTC panel II:クロンテック社製)を鋳型として、プライマー1(配列番号:30)とプライマー11(配列番号:46)の組み合わせでPCRを行い、アガロース電気泳動により2.7KbのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はpyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で30秒間反応させた後、94℃で10秒、60℃で30秒、72℃で5分を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:40)、M13RV primer(配列番号:41)および6種の合成プライマー〔プライマー5(配列番号:34)、プライマー6(配列番号:35)、プライマー7(配列番号:36)、プライマー8(配列番号:37)、プライマー9(配列番号:38)およびプライマー10(配列番号:39)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、マウスCLCA4とアミノ酸レベルで94%、ヒトCLCA4と68%の相同性を示す924個のアミノ酸からなるタンパク質(配列番号:42)がコードされていることが判明し(配列番号:43)、マウスCLCA4Aタンパク質と命名した。上記プラスミドpCR−BluntII−mCLCA4を構築した。このプラスミドpCR−BluntII−TOPOを含む形質転換体をエシェリヒア・コリ(Escherichia coli)TOP10/pCR−BluntII−mCLCA4Aと命名した。
【0052】
参考例3
ラットCLCA4遺伝子のクローニング
ヒトCLCA4遺伝子の塩基配列〔FEBS Letters、455巻、295頁、1999年〕、マウスCLCA4遺伝子の塩基配列(配列番号:27)およびマウスCLCA4A遺伝子の塩基配列を参考にして2種のプライマー〔プライマー12(配列番号:47)およびプライマー13(配列番号:48)〕を設計・合成した。次に、ラット腸組織からISOGEN(和光純薬社製)を用いて全RNAを調製した。さらにmRNA purificationkit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いてmRNAを調製した。このmRNA 1μgを出発材料としてMarathon cDNA Amplification kit(Clontech社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成した。このcDNAを鋳型としてプライマー12とプライマー13の組み合わせでPCRを行った後、アガロース電気泳動により予想される大きさのDNA断片が増幅されることを認めた。反応はpyrobest DNA polymerase(宝酒造社製)を用いてサーマルサイクラーGene Amp PCR System 9700(パーキンエルマー社製)にて、最初94℃で30秒間反応させた後、94℃で10秒、60℃で30秒、72℃で2分を1反応サイクルとして35サイクル繰り返し、最後は72℃で10分間反応させた。得られたDNA断片はpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen社製)にクローニングした。さらにT7 promoter primer(配列番号:40)、M13RV primer(配列番号:41)および3種の合成プライマー〔プライマー12(配列番号:47)、プライマー13(配列番号:48)、プライマー14(配列番号:49)〕を用いてサイクルシークエンス反応を行い、蛍光DNAシークエンサー377(パーキンエルマー社製)で得られた反応物の塩基配列を決定した。その結果、ラットCLCA4遺伝子の部分塩基配列として1119個の塩基配列を挿入したクローンNo.a−20(配列番号:45)を取得した。配列番号:45で表される塩基配列を基に、373個の部分アミノ酸配列を決定した(配列番号:44)。該部分アミノ酸配列は、ヒトCLCA4の対応する配列とは66%、マウスCLCA4、マウスCLCA4Aの対応する配列とは81%の相同性を有していた。
【0053】
実施例1
(1)ラット初代気道上皮細胞の分離
Wistarラット(オス、7週齢)を密封容器に入れ、炭酸ガス注入により窒息死させた後、組織培養の技術〔第2版〕132頁(日本組織培養学会編、朝倉書店)記載の方法に準じて、カニューレを気管に挿入後、気管を摘出した。取り出した気管の内外をDMEM/F12培地(インビトロジェン社製)で十分に洗浄し、付着した血液を除去した後、注射筒を用いてカニューレから充分量の1%プロテアーゼ液(Protease−Type14、シグマ社製)を気管の内部に流した。その後、気管下端を手術糸で結紮し、1% プロテアーゼ液で気管内腔を満たし、50ml遠心管内のDMEM/F12培地に浸した。37℃で1時間処理後、DMEM/F12培地+5% FBSを入れた注射筒をカニューレに連結し、内筒を数回上下させ、気管内の細胞を含んだプロテアーゼ液を気管から出し入れして細胞の分離を十分にした後、気管の下端をハサミで切開してプロテアーゼ液を押し流し、細胞を含んだプロテアーゼ液を遠心管に集めた。上記方法で得られた細胞を含んだ液を遠心(1000rpm、5分間)後、上清を捨て、ラット気道上皮細胞用培地〔アメリカン ジャーナル オブ レスピラトリーセル アンド モレキュラー バイオロジー(Am. J. Respir. Cell Mol. Biol.)12巻、385頁(1995)〕の基礎培地をDMEM/F12培地に変更し、CaCl2を除いた培地(以下、改変ラット気道上皮細胞用培地と称する)に懸濁し、10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュ(岩城硝子社製)に播種した。
【0054】
(2)ラット気道上皮細胞株、NIM−1細胞の樹立
2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液(インビトロジェン社製)で剥がし、新たに3×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、40日間培養を継続した。その後、細胞を0.25%トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに5×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、20日間培養を継続した。その後、細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに3×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、15日間培養を継続した。その後、細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに3×104個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、12日間培養を継続した。その後、細胞を0.25% トリプシン・1mM EDTA液で剥がし、新たに3×103個の細胞を10cm2φ TypeIコラーゲンコートディッシュに播種した。さらに2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を行うことにより、単一細胞に由来するコロニーの出現が認められ、NIM−1細胞として樹立した。
【0055】
実施例2
抗サイトケラチン抗体、抗ムチン抗体を用いた気道上皮細胞の証明
実施例1で得られたNIM−1細胞を8穴コラーゲンコートカルチャースライド(ベクトン・ディッキンソン社製)にウェルあたり5×104個播種した。培養2日目に新鮮培地に交換し、培養4日目にPBSで洗浄後、4%パラフォルムアルデヒド(和光純薬社製)で10分間、細胞を固定した。0.1%のTriton X−100(SIGMA社製)を含むPBS溶液で洗浄後、5% BSAで30分間ブロッキングした。その後、上皮細胞を認識するための一次抗体としてウサギ由来の抗サイトケラチン抗体(ICN社製)を4℃で一晩反応させ、その検出にFITC(Fluorescein Isothiocyanate)で蛍光標識した抗ウサギIgG抗体(モレキュラープローブス社製)を室温で30分間反応させた。さらに粘液を認識するための一次抗体として、マウス由来の抗MUC5AC抗体、または抗MUC2抗体(ともにネオマーカーズ社製)を室温で30分間反応させ、その検出にTexas Redで蛍光標識した抗マウスIgG抗体(モレキュラープローブス社製)を室温で30分間反応させた。反応後、細胞核検出用のDAPIを含む封入剤VECTASHIELD(ベクターラボラトリーズ社製)にて封入し、蛍光顕微鏡で観察した。その結果、NIM−1細胞はサイトケラチンを発現する気道上皮細胞であり、MUC5ACタンパク質およびMUC2タンパク質を含有する粘液を産生していることが確認された。
【0056】
実施例3
NIM−1細胞におけるIL−13添加によるラットCLCA1遺伝子の発現誘導
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴コラーゲンコートプレート(ベクトン・ディッキンソン社製)にウェルあたり2×104個播種した。培養2日目に新鮮培地に交換し、培養4日目にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、添加24時間後の全RNAをRNeasy 96 Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出した。これらの全RNAを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて100μlの反応液中で逆転写反応によりcDNAを合成した。そのうちの10μlを用いてABI PRISM 7700シークエンスディテクター(アプライドバイオシステムズ社製)を用いたTaqMan PCR法により、ラットCLCA1遺伝子コピー数を測定した。
遺伝子量検出に用いたプライマー〔プライマー1(配列番号:10)、プライマー2(配列番号:11)〕およびTaqManプローブ(配列番号:12)はPrimerExpressプログラムを用いて設計した。TaqManプローブのレポーター色素には6−carboxyfluorescein(FAM)を使用した。内部標準としてラットGAPDH遺伝子のコピー数をTaqMan Rodent GAPDH Control Reagents VIC Probe(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて求めた。非特異的な増幅を除去するために逆転写酵素を含まないサンプルも同様に処理し、次式より、GAPDH遺伝子あたりのラットCLCA1遺伝子コピー数を求めた。
(逆転写酵素含有サンプル中の遺伝子コピー数)−(逆転写酵素非含有サンプル中の遺伝子コピー数)=(遺伝子コピー数)
その結果、NIM−1細胞では、ラットCLCA1がIL−13に依存して発現誘導されることがわかった(図1)。
【0057】
実施例4
NIM−1細胞におけるIL−13添加によるCa2+依存性Cl−チャネル活性の増加
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴ブラッククリアボトムプレート(コースター社製)にウェルあたり4×104個播種した。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養した。Cl−チャネル活性の測定はFLIPR Membrane Potential Assay Kit(モレキュラーデバイス社製)を使用した。20mMのHEPESを含むHBSSバッファー(Component B)で希釈した電位感受性色素(Component A)を1ウェルあたり100μl添加し、37℃で30分間反応させた。その後、プレートをFLIPR(モレキュラーデバイス社製)にセットし、終濃度10μMのイオノマイシン刺激後の膜電位変化を蛍光強度の変化として観察した。その結果、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞において、Ca2+依存性Cl−チャネル活性の増加に伴う膜電位の上昇が観察された(図2)。
【0058】
実施例5
ラット気道上皮細胞株におけるIL−13添加による粘液分泌の増加
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴コラーゲンコートプレートにウェルあたり4×104個播種した。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養した。PBSで洗浄後、DMEM/F12培地に交換し37℃、20分間反応を3回行った。その後、DMEM/F12培地に希釈した終濃度10μMのイオノマイシンを添加し、37℃で30分間反応させた。反応後、分泌された粘液を含む上清を新たな96穴プレートに移し、37℃で2時間吸着させた。上清中の粘液をプレートに吸着させた後、0.3% BSAおよび0.05% Tween20(ICN社製)を含むPBS溶液で洗浄後、3% BSAで37℃、2時間のブロッキングを行った。その後、粘液を認識するために、ビオチン化したUlex Europaeus Lectin I(UEA−I、和光純薬社製)を37℃、1時間反応させ、その検出用にHRP標識したストレプトアビジン(ベクターラボラトリーズ社製)を室温で1時間反応させた。0.3% BSAおよび0.05% Tween20を含むPBS溶液で洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL社製)にて3分間発色反応を行い、TMB Stop Solution(KPL社製)で反応停止後、吸光光度計にて450nmの吸光度を測定した。ムチン濃度はコントロールとして使用したブタ胃ムチン(シグマ社製)の吸光度をもとに検量線を作成して算出した。
その結果、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞において、イオノマイシン刺激による粘液分泌の増加が観察された(図3)。
【0059】
実施例6
ラットCLCA1遺伝子の発現を指標としたスクリーニング
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴プレートにウェルあたり2×104個播種し、2日ごとに新鮮改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら、4日間培養する。そのプレートに新鮮培地、または新鮮培地で一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり10μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、マウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに1日間培養し、実施例3に記載の方法に従い、細胞中の全RNAをRNeasy 96 Kit(QIAGEN社製)を用いて抽出する。これらの全RNAを出発材料としてTaqMan Gold RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成する。その一部を用いてABI PRISM 7700シークエンスディテクター(アプライドバイオシステムズ社製)を用いたTaqMan PCR法により、CLCA1遺伝子コピー数を測定する。試験化合物無添加の状態で、IL−13添加時のCLCA1発現量を100%、IL−13無添加時のCLCA1発現量を0%として、CLCA1発現の阻害度を評価し、CLCA1発現阻害作用を有する化合物を選択する。
【0060】
実施例7
Ca2+依存性Cl−チャネル活性を指標としたスクリーニング
実施例4で示したFLIPR Membrane Potential Assay kitを使用してCa2+依存性Cl−チャネル活性を指標としたスクリーニングを行う。
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴ブラッククリアボトムプレートにウェルあたり4×104個播種する。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養する。Component Bで希釈したComponent Aを1ウェルあたり75μl添加し、37℃で20分間反応する。そのプレートにComponent B、またはComponent Bで一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり25μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、プレートをFLIPRにセットし、ComponentBまたは終濃度2μMのイオノマイシンを含むComponent Bを1ウェルあたり50μl添加する。添加後の蛍光変化をCl−チャネル活性として観察する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のCl−チャネル活性を100%、イオノマイシン無刺激時のCl−チャネル活性を0%として、Cl−チャネル活性を評価し、Cl−イオンチャネル阻害作用を有する化合物を選択する。
【0061】
実施例8
粘液分泌を指標としたスクリーニング
実施例5で示した粘液分泌活性を指標としたスクリーニングを行う。
実施例1で得られたNIM−1細胞を96穴コラーゲンコートプレートにウェルあたり4×104個播種する。2日ごとに新鮮な改変ラット気道上皮細胞用培地に交換しながら培養を継続し、コンフルエントになった細胞にマウスIL−13を終濃度10ng/mlで添加し、さらに2日間培養する。PBSで洗浄後、DMEM/F12培地に交換し37℃、20分間反応を3回行う。培地を除去後、新たなDMEM/F12培地またはDMEM/F12培地で一定濃度に希釈した試験化合物を1ウェルあたり100μl添加し、37℃で10分間反応する。その後、DMEM/F12培地またはDMEM/F12培地に希釈した終濃度10μMのイオノマイシンを1ウェルあたり100μl添加し、37℃で30分間反応させる。反応後、分泌された粘液を含む上清を回収し、新たな96穴プレートに37℃で2時間吸着させる。0.3% BSAおよび0.05% Tween20を含むPBS溶液で洗浄後、3% BSAで37℃、2時間のブロッキングを行う。その後、ビオチン化したUEA−Iを37℃、1時間反応させ、その検出用にHRP標識したストレプトアビジンを室温で1時間反応させる。0.3% BSAおよび0.05% Tween20を含むPBS溶液で洗浄後、TMB Microwell Peroxidase Substrateにて3分間発色反応を行い、TMB Stop Solutionで反応停止後、吸光光度計にて450nmの吸光度を測定する。コントロールとして使用したブタ胃ムチンの吸光度をもとに検量線を作成し、ムチン濃度を算出する。試験化合物無添加の状態で、イオノマイシン刺激時のムチン濃度を100%、イオノマイシン無刺激時のムチン濃度を0%として、粘液分泌活性を評価し、粘液分泌阻害作用を有する化合物を選択する。
【0062】
実施例9
ラットCLCA1遺伝子の発現を指標としたスクリーニング
ラット気道上皮細胞株(SPOC1)(American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology、14巻、146頁、1996年)を96穴コラーゲンプレート(ベクトン・ディキンソン社製)に1×104 cells/wellで播種し4日間培養した。培養4日目に、リコンビナントマウスIL−13(R&D社製)および、各種濃度(1、10および100μM)のワートマンニン(Wortmannin)(CALBIOCHEM社製)を添加し、さらに24時間培養した。なお、ワートマンニンを添加していない細胞をコントロールとした。
細胞をPBSで洗浄し、50μl/wellのLysis Buffer(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を加え、37℃で30分間静置し細胞を溶解した。各穴に100μlのProbe Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を加えてピペッティングにより攪拌した後、100μlをサンプリングしてbDNA Capture Plate(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)に添加し、53℃で16〜24時間反応させた。Wash Buffer(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)でプレートを2回洗浄後、100μlのAmplifer Working Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を加え、46℃で2時間反応させた。さらに、Wash Bufferでプレートを2回洗浄後、Label Working Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を100μl/well添加し、46℃で2時間反応させた。プレートを室温に戻しWash Bufferでプレートを2回洗浄後、Substrate Working Reagent(QuantiGene High Volume Kit、Bayer社製)を100μl/well添加し、46℃で1時間反応させた。プレートを室温に戻した後、プレートリーダーで発光強度を測定した。ラットCLCA1の発現量に比例して発光強度が増加するので、発光強度を測定することによりラットCLCA1のmRNAを定量することができる。ワートマンニンを添加していないコントロール細胞では、IL−13によりラットCLCA1が発現誘導され発光強度が増加する。
結果を図4に示す。
これより、ワートマンニンは濃度依存的にラットCLCA1の発現を抑制することがわかる。
よって、上記スクリーニングを用いて、CLCA1の発現を抑制する化合物を選択することができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明の上皮気道細胞株は、長期間、安定に本発明で用いられるタンパク質を高発現する。従って、本発明の上皮気道細胞株や、上皮気道細胞株Aおよびサイトカインを用いることにより、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、本発明のタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩が、効率よくスクリーニングでき、上記化合物またはその塩は、例えば、肺・気道の炎症を伴う肺・胸部疾患や呼吸器疾患〔例、慢性閉塞性肺疾患(例、慢性気管支炎、肺気腫)、びまん性汎細気管支炎、気管支喘息、嚢胞性線維症、過敏性肺炎、肺線維症など〕、炎症性腸疾患、アレルギー性結膜炎、鼻炎(例、アレルギー性鼻炎、花粉症、急性鼻炎、慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、萎縮性鼻炎、乾燥性前鼻炎、血管運動性鼻炎、壊疽性鼻炎、副鼻腔炎など)などの予防・治療剤として有用である。
【0064】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3における、NIM−1細胞のIL−13添加時のラットCLCA1遺伝子の発現量を表す図である。図中、□はIL−13無添加培養群、■はIL−13添加培養群を示す。
【図2】実施例4における、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞のCa2+依存性Cl−チャネル活性の増加に伴う膜電位の上昇を表す図である。図中、■はIL―13添加培養・イオノマイシン刺激群、□はIL―13添加培養・イオノマイシン無刺激群、▲はIL―13無添加培養・イオノマイシン刺激群、△はIL―13無添加培養・イオノマイシン無刺激群を示す。
【図3】実施例5における、IL−13を添加して培養したNIM−1細胞の、イオノマイシン刺激による粘液分泌の増加を表す図である。図中、□はIL―13無添加培養群、■はIL―13添加培養群を示す。
【図4】実施例9における、SPOC1細胞でのIL−13によるラットCLCA1遺伝子の発現誘導に対するワートマンニンの抑制作用を表す図である。図中、縦軸はコントロールの発光強度を100%としたときのワートマンニン添加時の発光強度を示す。白いバーはワートマンニン濃度100μM、灰色のバーはワートマンニン濃度10μM、黒いバーはワートマンニン濃度1μMを添加した場合のラットCLCA1遺伝子の発現量である。
Claims (35)
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する気道上皮細胞株。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項1記載の気道上皮細胞株。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22、配列番号:26、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:50、配列番号:51、配列番号:52または配列番号:53で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項1記載の気道上皮細胞株。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項1記載の気道上皮細胞株。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を高発現する請求項1記載の気道上皮細胞株。
- 粘液を分泌する能力を有する請求項1記載の気道上皮細胞株。
- 粘液がMUC2タンパク質および(または)MUC5ACタンパク質である請求項6記載の気道上皮細胞株。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株に、サイトカインを接触させることを特徴とする、請求項1記載の気道上皮細胞株の製造法。
- サイトカインがIL−13である請求項8記載の製造法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞である請求項8記載の製造法。
- NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- 請求項1記載の気道上皮細胞株を用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項12または請求項13記載のスクリーニング方法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性が、クロライドチャネル様活性または粘液分泌活性である請求項12または請求項13記載のスクリーニング方法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインまたは請求項1記載の気道上皮細胞株を含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
- 請求項12もしくは請求項13記載のスクリーニング方法または請求項16記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項18記載のスクリーニング方法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
- 請求項18記載のスクリーニング方法または請求項20記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを用いることを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質が、配列番号:1、配列番号:22または配列番号:50で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩である請求項22記載のスクリーニング方法。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株およびサイトカインを含有することを特徴とする、カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質の産生を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
- 請求項22記載のスクリーニング方法または請求項24記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株が、NIM−1(FERM BP−8091)で標示される細胞である請求項12、請求項18または請求項22記載のスクリーニング方法。
- 請求項17、請求項21または請求項25記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
- 呼吸器疾患の予防・治療剤である請求項27記載の医薬。
- 呼吸器疾患が慢性閉塞性肺疾患または気管支喘息である請求項28記載の医薬。
- 鼻炎の予防・治療剤である請求項27記載の医薬。
- カルシウム依存性クロライドチャネルタンパク質を発現する能力を有する気道上皮細胞株を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
- 請求項1記載の気道上皮細胞株を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
- 請求項11記載の細胞およびIL−13を用いることを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤のスクリーニング方法。
- 哺乳動物に対し、請求項17、請求項21または請求項25記載の化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療方法。
- 呼吸器疾患または鼻炎の予防・治療剤の製造のための、請求項17、請求項21または請求項25記載の化合物またはその塩の使用。
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WO2015105112A1 (ja) * | 2014-01-09 | 2015-07-16 | 味の素株式会社 | 改質された蛋白質含有食品の製造方法及び蛋白質含有食品改質用の製剤 |
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2003
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