JP2004103871A - 異方性希土類ボンド磁石の製造方法とその永久磁石型モータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ボンド磁石製造における3大要素技術の中のひとつと位置付けられる結合剤と成形加工との連携要素を見直し、数μmの微粉末希土類磁石粉末、不飽和ポリエステル樹脂組成物、温間圧縮と含浸という要素による連携で準備される異方性希土類ボンド磁石、並びにそれを利用した新規な効率的な永久小型磁石型モータ提供する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂組成物からなる顆粒状コンパウンド、温間圧縮と含浸を必須工程とした異方性希土類ボンド磁石の製造方法、並びにそれらを利用した効率的な永久磁石型モータに関する。例えば、1992年から2000年までの小型モータ生産台数の概算は24億から47億を既に超えた。直流モータ、ブラシレスモータ、ステッピングモータ、および無鉄心モータの生産台数の増加が特に顕著で1992年から2000年まで26億も増加した。その上、将来も年率平均で9%の成長を見積もることができる。しかしながら、小型誘導モータと小型同期モータの生産数は徐々に減少傾向にある。この傾向は、小型モータ産業における高性能磁石による効率的な小型モータの開発と、電気電子機器分野における効率的な小型モータの需要が高度であることを示唆する。小型モータの生産台数のおよそ70%は直流モータである。なお、一般の小型直流モータではフェライトゴム磁石、高性能小型直流モータではメルトスピニングによって準備されたNd−Fe−B系のフレーク状の希土類磁石粉末をエポキシ樹脂のような堅い熱硬化性樹脂で圧縮成形した環状磁石が主として利用されている。
【0002】
一方、経済産業省・資源エネルギー庁の統計では日本における電力総消費は2000年で、およそ9500億kWhであった。その資料から推計すると、モータによる消費電力は総内需の50%を超えると推定される。モータの電力消費は大容量の動力用モータとは限らない。例えば、2.5インチのHDDスピンドルモータの消費電力はアイドルの状態におけるPCの消費電力の50%を超える。(J.G.W.West,Power Engineering J.April.77,1994)。すなわち、小型モータに関しては、それ自体の電力消費は高々数10W以下が多数である。しかしながら、先端電気電子機器における需要が高度であることを勘案すれば、効率的な小型モータの広い利用と普及が環境保全や省資源の見地からも強く必要である。本発明は、上記効率的な小型モータを主体とした各種先端電気電子機器に利用されるような効率的な小型モータと、それに適応する異方性希土類ボンド磁石の新規な製造方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
各種先端電気、電子機器に利用される小型モータは、当該機器の小型軽量化に伴う更なるモータ体格の減少とともに小型、高出力、或いは高効率化が求められている。1960年代から永久磁石型モータが普及したのも、磁石の応用がモータの損失削減につながり、ひいては効率的な小型モータの作製に効果的であったからである。このような小型モータの発展は磁石粉末を結合剤で固めたボンド磁石の場合には磁石粉末、結合剤、成形加工法が3大要素技術として、それぞれ等しく重要である。
【0004】
上記、小型モータに広く使われているボンド磁石に関して、広沢、富澤らの「Recent Progress in Research and Development Related to Bonded Rare−ErathPermanent Magnets」日本応用磁気学会誌、Vol.21、No.4−1、pp.161−167(1997)が端的に解説している。したがって、引用文献に基づく図1を用いてボンド磁石作製における3大要素技術、すなわち磁石粉末、結合剤、成形加工法の連携を説明する。
【0005】
先ず、磁石粉末▲1▼としてはフェライト系▲1▼−a、アルニコ系▲1▼−b、希土類系▲1▼−c、結合剤▲2▼としてはフレキシブル系(ゴム、熱可塑性エラストマー)▲2▼−a、堅い熱可塑性樹脂▲2▼−b、堅い熱硬化性樹脂▲2▼−c、加工方法▲3▼としてはカレンダーリング/押出成形▲3▼−a、射出成形▲3▼−b、圧縮成形▲3▼−cがある。そして、それらの連携は図中の実線で示すように整理される。
【0006】
例えば、K.Ohmori,「New Era of Bonded SmFeN Magnets」,Polymer bonded magnet 2002,April,Chicago,US,2000によれば、耐候性を付与した粉末粒子径5μm以下のSm−Fe−N系希土類磁石粉末▲1▼−cは結合剤▲2▼としてフレキシブル系(ゴム、熱可塑性エラストマー)▲2▼−a、または、堅い熱可塑性樹脂▲2▼−b、また、成形加工法▲3▼としてカレンダーリング/押出成形▲3▼−a、射出成形▲3▼−bという要素で連携した異方性希土類ボンド磁石が紹介されている。そして、このような粉末粒子径5μm以下のSm−Fe−N系希土類磁石粉末やSmCo5系希土類磁石粉末は堅い熱硬化性樹脂▲2▼−cと圧縮成形▲3▼−cとの連携要素の下で工業的に使用されることは当業者の知り得る技術情報には見当たらない。それは、粉末粒子径5μm以下の希土類磁石粉末を圧縮しても得られるグリーンコンパクトの密度は射出成形等、一般に紹介されている加工技術よりも高い値が得られないという認識があったからと考えられる。このことは、ハードフェライト磁石粉末▲1▼−aでも堅い熱硬化性樹脂▲2▼−cと圧縮成形▲3▼−cとの連携要素の下で工業的に使用されることは極めて稀であることからも了解されるところである。
【0007】
【非特許文献1】
広沢 哲、外1名「Recent Progress in Research and Development Related to Bonded Rare−Erath Permanent Magnets」日本応用磁気学会誌、Vol.21、No.4−1、pp.161−167(1997)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような粉末粒子径5μm以下のSm−Fe−N系希土類磁石粉末▲1▼−c、堅い熱可塑性樹脂▲2▼−b、射出成形▲3▼−bという、よく知られた連携要素で作製したラジアル異方性希土類ボンド磁石を松岡篤、山崎東吾、川口仁らは送風機用ブラシレスモータの高効率化の手段として応用したことを電気学会回転機研究会資料、RM−01−161(2001)で報告している。表1は報告された希土類ボンド磁石の代表特性とモータ特性を示す。
【0009】
【表1】
【0010】
ただし、表1のFerriteは従来磁石の例であり、図1の連携要素で説明すると、ハードフェライト磁石粉末▲1▼−a、堅い熱可塑性樹脂▲2▼−b、射出成形▲3▼−bという要素で連携した極異方性フェライトボンド磁石である。前記、最大エネルギー積(BH)maxが16kJ/m3の異方性フェライトボンド磁石と比較して、(BH)maxが79kJ/m3のSm−Fe−N系ラジアル異方性希土類ボンド磁石をモータに応用することでモータの高出力化が実現し、効率が5%改善されている。しかしながら、前記Sm−Fe−N系磁石粉末自体の(BH)maxは323kJ/m3であるとしている。しからば、実際にモータに使用されている異方性希土類ボンド磁石は磁石粉末自体の(BH)maxの1/4程度と推定される。このように、Sm−Fe−N系希土類磁石粉末▲1▼−cを▲2▼−aまたは脂▲2▼−b、▲3▼−aまたは▲3▼−bという連携要素では(BH)maxが100kJ/m3を越える異方性希土類ボンド磁石を工業的規模で安定して作製することが困難であることが予想される。
【0011】
なお、(BH)maxが79kJ/m3と言う水準はメルトスパンした磁気的に等方性のNd2Fe14B系希土類磁石粉末▲1▼−c、堅い熱硬化性樹脂▲2▼−c、圧縮成形▲3▼−cの連携によって作製したボンド磁石の(BH)maxが80kJ/m3と殆ど同じである。しかも同磁石粉末自体の(BH)max値が概ね120kJ/m3であることを考慮すれば、ボンド磁石製造における3大要素の連携を見直し、平均粒子径5μm以下のSm−Fe−N系希土類磁石粉末本来の磁気特性を効率的に引き出し、モータ効率の改善に繋げる技術が求められる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、図1の太実線で示すように材料が平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末▲1▼−cと堅い熱硬化性樹脂組成物▲2▼−cとの顆粒状コンパウンド、成形加工が温間圧縮と熱硬化性樹脂組成物の含浸▲3▼−dとを必須工程とする異方性希土類ボンド磁石の製造方法。材料が平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末▲1▼−cと平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末▲1▼−c、および堅い熱硬化性樹脂組成物▲2▼−cとの顆粒状コンパウンド、成形加工が温間圧縮と熱硬化性樹脂組成物の含浸▲3▼−dとを必須工程とする異方性希土類ボンド磁石の製造方法。更には希土類磁石粉末▲1▼−cと堅い熱硬化性樹脂組成物▲2▼−cとを主成分とした顆粒状コンパウンドを温間圧縮し、得られたグリーンコンパクトと支持部材とを組立て、熱硬化性樹脂組成物を同時に含浸▲3▼−d、熱硬化して支持部材と一体的に剛体化する異方性希土類ボンド磁石の製造方法。並びに、希土類磁石粉末▲1▼−cと堅い熱硬化性樹脂組成物▲2▼−cとを主成分とした顆粒状コンパウンドを温間圧縮したグリ−ンコンパクトを熱硬化した後、支持部材と組立て、更に、熱硬化性樹脂組成物を同時に含浸▲3▼−d、熱硬化して支持部材と一体的に剛体化する異方性希土類ボンド磁石の製造方法を骨子とするものである。
【0013】
本発明は、とくに(BH)maxが300kJ/m3以上の平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末が耐候性Sm2Fe17N3系金属間化合物を主成分とする希土類磁石粉末▲1▼−cか、または(BH)maxが160kJ/m3以上の平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末がSm−Co5系金属間化合物を主成分とする希土類磁石粉末▲1▼−cを主成分とする。しかしながら、前記平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末とともに、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末が耐候性Nd2Fe(Co)14B系金属間化合物を主成分とする希土類磁石粉末▲1▼−c、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末がNd2Fe(Co)14B系金属間化合物を主成分とする磁気的に等方性の希土類磁石粉末▲1▼−c、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末がNd2Fe(Co)14B系金属間化合物とFe3B、Fe等のソフト相との磁気的に等方性のナノコンポジット磁石粉末▲1▼−c、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末がSm2Fe17N3系金属間化合物とFe等のソフト相との磁気的に等方性のナノコンポジット磁石粉末▲1▼−cの1種または2種以上を併用しても差し支えない。
【0014】
一方、堅い熱硬化性樹脂組成物▲2▼−bは不飽和ポリエステル樹脂を主成分とすることが望ましく、更に、不飽和ポリエステル樹脂を構成する不飽和ポリエステルアルキッドが室温で固体のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキッド、不飽和ポリエステル樹脂を構成する共重合性単量体がアリル基を有するアリル系共重合性単量体であり、前記、不飽和ポリエステル樹脂の重合開始温度(キックオフ温度)が110℃以上となる有機過酸化物を有効成分とすることが望ましい。とくに、前記有機過酸化物は本発明に係るか粒状コンパウンドの室温での貯蔵性や温間圧縮時の安定性確保のために室温で固体のジクミルパ−オキサイドを主成分とすることが望ましい。
【0015】
更に、上記不飽和ポリエステル樹脂に対して10PHR以上のペンタエリスリト−ルステアリン酸トリエステルを添加すると磁界印加による磁石粉末の特定方向への配列が促進され、生産性の改善に効果的である。
【0016】
なお、本発明に係るか粒状コンパウンドの作製手段としては、先ず室温で固体の不飽和ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解し、希土類磁石粉末と湿式混合する。次いで、加熱等によって有機溶媒を除去した当該混合物を解砕して顆粒状コンパウンドとすることが望ましい。とくに、粒子径75μm以上の顆粒を50wt.%以上とすると成形型キャビティへの充填性や低圧力で高密度を有する異方性希土類ボンド磁石を得るのに効果的である。また、当該コンパウンドを温間圧縮する加熱成形型よりも高融点の高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属石鹸類から選ばれる1種または2種以上の滑剤を顆粒状コンパウンドの表面に0.1wt.%以上付着せしめると1mm以下の薄肉キャビティへの顆粒状コンパウンドの充填性を改善することが可能となる。
【0017】
一方、本発明における顆粒状コンパウンドの熱硬化性樹脂組成物の割合が2wt.%以下とし、希土類磁石粉末を高充填することが希土類磁石粉末本来の(BH)maxを希土類ボンド磁石で引き出すことに効果的である。
【0018】
また、本発明では温間圧縮が▲1▼フィーダボックス内の顆粒状コンパウンドを熱硬化性樹脂組成物の軟化温度以上に加熱した成形型キャビティに充填し、顆粒状コンパウンドを非磁性上下パンチと非磁性ダイとで密閉する工程。▲2▼前記顆粒状コンパウンドに磁界を印加して希土類磁石粉末を所定の方向に配列しながら圧縮し、圧縮された成形型内のグリーンコンパクトを脱磁する工程。▲3▼グリーンコンパクトを離型する工程から構成するものであるが、前記温間圧縮工程において▲1▼と▲3▼の工程が▲2▼の工程と隔離され、▲1▼と▲2▼の工程に移動する際にフィーダボックス並びにキャビティから漏洩した希土類磁石粉末を含む顆粒状コンパウンドを非帯磁状態で回収すると帯磁した希土類磁石粉末の発生が抑制され、材料歩留まりの良好な生産を実現することができる。さらに、温間圧縮工程において0.1sec以上の磁界を印加したのち顆粒状コンパウンドを500MPa以上で圧縮することが望ましい。
【0019】
上記の工程によって作製するグリーンコンパクトは磁界印加方向に対して不等幅、不等肉厚、厚さを1mm以下とすること、或いは飽和磁化1.3T以上のFe、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Si、Fe−N、Fe−Bの群から選ばれる1種または2種以上のソフト磁性粉末を含有したグリーンコンパクトと希土類磁石粉末を含有したグリーンコンパクトを一体的に成形することは、効率的なモータを作製するための設計思想に委ねられる。
【0020】
上記、グリーンコンパクトおよび/または該熱硬化物への含浸が熱硬化性樹脂組成物への常圧浸漬であり、更に含浸する熱硬化性樹脂組成物が不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする溶剤型ワニスであることが好ましい。
【0021】
一方、グリーンコンパクトおよび/または該熱硬化物と積層電磁鋼板で構成した本発明に係る異方性希土類ボンド磁石を搭載した表面磁石回転子型ロータ、埋込磁石型ロータを有する永久磁石型モータであったり、本発明に係る希土類ボンド磁石を永久磁石界磁とした直流モータにおいては、とくに4MA/mパルス着磁後の室温における最大エネルギー積(BH)maxが140kJ/m3以上の本発明に係る異方性希土類ボンド磁石を搭載した永久磁石型モータが好ましい。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る図1の希土類磁石粉末▲1▼−cと結合剤▲2▼−dとの顆粒状コンパウンドの具備すべき条件に関して、顆粒状コンパウンドは熱硬化性樹脂の粘着力によって希土類磁石粉末を統合し、圧縮成形まえの結合剤と希土類磁石粉末の機械的分離を防ぐ役割とともに、成形型キャビティ中の顆粒状コンパウンドへの磁界印加によって希土類磁石粉末を素早く特定方向に配列する役割、できるだけ低温短時間の熱処理で希土類ボンド磁石を作製できる機能を付与することが肝要である。そのための具体的手段として、結合剤は少なくとも室温で固体の不飽和ポリエステルアルキッドと室温で液体の共重合性単量体との割合で粘着性を付与した不飽和ポリエステル樹脂、および重合開始剤、必要に応じて適宜加える添加剤から構成することが好ましい。
【0023】
不飽和ポリエステル樹脂は、不飽和ポリエステルアルキドの共重合性単量体溶液で、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸とグリコール類とを反応させたものである。不飽和多塩基酸は、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などである。飽和多塩基酸は、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸などである。グリコール類は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1−3−ブタンジオール、1−6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、ジブロムネオペンチルグリコールなどである。
【0024】
ビニル化合物またはアリル化合物は、例えばスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−6ヘキサンジオールジアクリレートなどを使用できる。
【0025】
以上において、耐熱性に優れるとされる室温で固体の直鎖状芳香族ポリエステルアルキドであるテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキド、および蒸気圧が高く、揮発し難いジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレートなどアリル系共重合性単量体の1種または2種以上から構成した室温で固体で、且つ柔軟な不飽和ポリエステル樹脂が好ましい。なお、前記不飽和ポリエステル樹脂とは、例えば軟化温度90−100℃のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキドに対してジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレートなどアリル系共重合性単量体の1種または2種以上を5〜50重量%とすることで任意に調整可能である。
【0026】
次に、平均粒子径が5μm以下の希土類磁石粉末としてはRD(酸化還元)処理によって準備された磁気的に異方性のSm−Fe−N系希土類磁石粉末を挙げることができるが、とくに前記粉末の表面を不活性化処理した粉末で、しかも4MA/mパルス着磁後の20℃における(BH)maxは300kJ/m3以上のものが望ましい。また、平均粒子径が5μm以下の希土類磁石粉末としてSmCo5系希土類磁石粉末を挙げることもできる。
【0027】
一方、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末としては熱間据込加工(Die−Up−Setting)によって準備されたNd−Fe−B系粉末(例えば、M.Doser,V.Panchanathan;「Pulverizinganisotropic rapidly solidified Nd−Fe−B materials for bonded magnet」;J.Appl.Phys.70(10),15,1993)。HDDR処理(水素分解/再結合)によって準備されたNd−Fe−B系希土類磁石粉末、すなわち、Nd−Fe(Co)−B系合金のNd2(Fe、Co)14B相の水素化(Hydrogenation,Nd2[Fe、Co]14BHx)、650〜1000℃での相分解(Decomposition,NdH2+Fe+Fe2B)、脱水素(Desorpsion)、再結合(Recombination)するHDDR処理(T.Takeshita and R.Nakayama:Proc.of the 10th RE Magnets and Their Applications,Kyoto,Vol.1,551 1989)した磁気的に異方性の希土類磁石粉末である。とくに、前記粉末の表面を予め光分解したZnなどで不活性化処理した粉末など(例えば、K.Machida,K.Noguchi,M.Nushimura,Y.Hamaguchi,G.Adachi,Proc.9th Int.Workshop on Rare−Earth Magnets andTtheir Applications,Sendai,Japan,II,845 2000、或いは、K.Machida,Y.Hamaguchi,K.Noguchi,G.Adachi,Digests ofthe 25th Annual conference on Magnetcs in Japan,28aC−6 2001)を挙げることができる。なお、それらの磁石粉末の4MA/mパルス着磁後の20℃における保磁力は1.1MA/m以上のものが望ましい。
【0028】
上記、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末は、例えばF.Yamashita,Y.Yamagata,H.Fukunaga,“nisotropic Nd−Fe−B Based Flexible Bonded Magnet Curled to The Ring for Small Permanent Magnet Motors”IEEE.Trans.Magn.Vol.36,No.5,pp.3366−3369(2000)に記載されているように粉末粒子径が小さくなると磁気特性の劣化が起こることが知られている。
【0029】
なお、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末がNd2Fe(Co)14B系金属間化合物を主成分とする磁気的に等方性の希土類磁石粉末、Nd2Fe(Co)14B系金属間化合物とFe3B、Fe等のソフト相との磁気的に等方性のナノコンポジット磁石粉末、Sm2Fe17N3系金属間化合物とFe等のソフト相との磁気的に等方性のナノコンポジット磁石粉末の1種または2種以上を併用しても差し支えない。
【0030】
図2は上記本発明に係る希土類ボンド磁石と積層電磁鋼板を組合わせた本発明が対象とする永久磁石型モータ(SPM、IPM)の代表的な回転子構造の例を4極構造として示す。
【0031】
ただし、(a)は環状磁石を鉄心の表面に配置した表面磁石型(SPM)ロ−タで750W以下のモータに多く見られる。(b)は極毎に磁石が独立したもので、偏肉円弧状磁石も見られる。(c)は鉄心に磁石を差し込んだInset−Magnetで表面磁石型(SPM)ながらリラクタンストルクを併用できる。表面磁石型(SPM)では磁石飛散防止のため(d)のように外周に非磁性スリーブを用いることもある。また、(d)の非磁性部を磁性体とした(e)は外周に磁性リングを配置したものと鉄心のスロットに磁石を挿入したものもあるが、リラクタンストルクは多くを期待できない。また、希土類ボンド磁石量を増した(f)もある。平板状磁石の磁化方向が軸の周方向と平行になるように配置して、鉄心で挟み込む磁石埋込型(IPM)ロータ(g)は鉄心の形状によって固定子鉄心との空隙磁束密度を更に高めることができる。磁石埋込型(IPM)ロータ(h)は軸の半径方向と平行に磁化した平板状磁石を配置した構造でリラクタンストルクの増加が可能である。また、V字に配した平板状磁石2枚で1極を構成する磁石埋込型(IPM)ロータ(i)は磁石位置や角度でモータ特性を調整でき、磁石埋込型(IPM)ロータ(j)の効果を平板状磁石で狙ったものと言える。一方、逆円弧状磁石を極幅全体にわたって配した磁石埋込型(IPM)ロータ(j)は空隙磁束密度とリラクタンストルク増加が可能である。逆円弧状磁石を多層にする磁石埋込型(IPM)ロータ(k)はリラクタンストルクがより大きく、しかも空隙磁束密度が高い。なお、本発明に係る図1で示した永久磁石モータのその他として円弧状磁石等を永久磁石界磁とした永久磁石界磁型直流モータを挙げることができる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。ただし、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0033】
[原料]
本実施例では平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末としては、5μm以下のRD(Reduction&Diffusion)法による磁気的に異方性のSm2Fe17N3系希土類磁石粉末を使用した。また、平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末としてはHDDR処理(水素分解/再結合)によって準備された磁気的に異方性のNd−Fe(Co)−B系希土類磁石粉末(Nd12.3Dy0.3Fe64.7Co12.3B6.0Ga0.6Zr0.1)を使用した。なお、それらの希土類磁石粉末の比表面積Sは比表面積計を用いて粉末を液体窒素温度まで冷却し、N2/He混合ガス(3:7vol.ratio)を吸着させ、BET−1点法で測定し、1式、2式の関係から算出した。
【0034】
(式1)
Vm=V[1−(P/Ps)]
(式2)
S(m2/g)=Vm×{(16.2×10−20×6.02×1023)/22400}
ただし、Vmは単分子吸着量、Pは吸着平衡圧力、Psは吸着ガスの飽和蒸気圧、6.02×1023はアボガドロ数(mol−1)、22400はガスの分子容(cm3)、16.2×10−20は1個の吸着ガスが占める面積(N2:Å)である。その結果、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末、HDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末の比表面積は、それぞれ1.6m2/g,0.007m2/gであった。また、それらの希土類磁石粉末自体の4MA/mパルス着磁後の室温における(BH)maxは、VSM(試料振動型磁力計)で反磁界補正なしで290〜310kJ/m3、室温での保磁力Hciは、それぞれ804kA/m、1180kA/mであった。ここで、HDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末に1MA/mの高保磁力材料を選択した理由は図3のように、磁気的に等方性のメルトスパン−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と同等の不可逆磁束損失を確保するためである。
【0035】
一方、本発明に係る顆粒状コンパウンドの熱硬化性樹脂組成物の構成成分として、先ず不飽和ポリエステルアルキドとして室温で固体のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキド(軟化温度90−100℃、40mesh以下の粉体)、共重合単量体としてo−ジアリルフタレート、重合開始剤としての有機過酸化物としてジクミルパーオキサイドを使用した。このような不飽和ポリエステル樹脂の調整としては、先ず80重量部の不飽和ポリエステルアルキドと20重量部のo−ジアリルフタレート、0.5重量部のジクミルパーオキサイドを秤量し、その等倍量のアセトンで50%の有機溶媒溶液とした。
【0036】
更に、本発明に係るペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルとはペンタエリスリトール1モルとステアリン酸3モルとを定法に従ってエステル化反応したもので、融点50−55℃であり、その構造は下式で示される。
【0037】
【化1】
【0038】
[顆粒状コンパウンド]
本発明に係る顆粒状コンパウンドは最初に上記、融点約50−55℃のペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルを平均粒子径5μm以下のRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末、またはHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と乾式混合した。ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルはケトン系有機溶媒や共重合性単量体には不溶であるが混合操作によって粉砕されながら、それぞれの希土類磁石粉末に均質に分散される。
【0039】
次に、60℃に加温した内容量5lのΣブレイドミキサーにペンタエリスリトールステアリン酸トリエステル化合物を分散した希土類磁石粉末5kgを仕込み、攪拌しながら、室温で固体の不飽和ポリエステル樹脂の50wt.%アセトン溶液を滴下した。ただし、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末では不飽和ポリエステル樹脂2wt.%、HDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末では不飽和ポリエステル樹脂0.5wt.%を基準として滴下した。なお、予め希土類磁石粉末と混合したペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルは不飽和ポリエステル樹脂に対して10PHRを基準とした。
【0040】
攪拌を続けると、不飽和ポリエステル樹脂50wt.%アセトン溶液滴下後、およそ5minで乾燥した不飽和ポリエステル樹脂と希土類磁石粉末との顆粒状コンパウンドとなった。このような顆粒状コンパウンドは350μmのステンレス製スクリーンで篩い分け、回収した350μm以下の顆粒状コンパウンドを本発明に係る実施例の基準とした。不飽和ポリエステル樹脂と粒子径5μm以下のRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末との350μm以下に調整した顆粒状コンパウンドの平均粒子径は約150μm、見掛密度2.2Mg/m3であり、通常の粉末成形機に供することが可能な粉末流動性を持っていた。更に、本実施例では滑剤として粒子径10μm以下のステアリン酸カルシウム粉末を顆粒状コンパウンド100重量部に対して0.2−0.4重量部を実験のために添加し、乾式混合した。
【0041】
なお、不飽和ポリエステル樹脂とHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末との顆粒状コンパウンドは樹脂成分が0.5wt.%と少ないが、希土類磁石粉末の比表面積の差の影響でRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末の顆粒状コンパウンドと同様な粉末流動性を示し、両者は互いに任意の割合で均一混合できることが判った。
【0042】
[グリーンコンパクト]
(顆粒状コンパウンドの粉末成形)
本発明に係るグリーンコンパクトは図4のような磁場配向電磁石が組み込まれたダイセットを備えた粉末成形機によって作製した。図のように粉末成形機のフィーダーカップに本発明に係るか粒状コンパウンドを仕込み、成形型キャビティに本発明に係る顆粒状コンパウンドを充填した。ただし、成形型の上下パンチとキャビティ周辺のみ50〜100℃に加熱されている。キャビティに充填した磁気的に異方性の希土類磁石粉末を含む顆粒状コンパウンドは1.4MA/mのアキシャル磁界の下で上下パンチによって圧縮され、脱磁され、グリーンコンパクトを作製した。このグリーンコンパクトは十分なハンドリング性を備えていた。
【0043】
なお、本発明では温間圧縮が▲1▼フィーダボックス内の顆粒状コンパウンドを熱硬化性樹脂組成物の軟化温度以上に加熱した成形型キャビティに充填し、顆粒状コンパウンドを非磁性上下パンチと非磁性ダイとで密閉する工程。▲2▼前記顆粒状コンパウンドに磁界を印加して希土類磁石粉末を所定の方向に配列しながら圧縮し、圧縮された成形型内のグリーンコンパクトを脱磁する工程。▲3▼グリーンコンパクトを離型する工程から構成するものであるが、前記温間圧縮工程において▲1▼と▲3▼の工程が▲2▼の工程と隔離され、▲1▼と▲2▼の工程に移動する際にフィーダボックス並びにキャビティから漏洩した希土類磁石粉末を含む顆粒状コンパウンドを非帯磁状態で回収すると帯磁した希土類磁石粉末の発生が抑制され、材料歩留まりの良好な生産を実現することができる。
【0044】
(キャビティへの充填性)
幅1.25mm、長さ70.5mm、深さ12mmのキャビティに粉末成形の定法に従ってフィーダカップからの落し込みによって本発明に係るRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末の顆粒状コンパウンドを充填した。コンパウンドの粒子径上限を250μm、150μm、105μmと次第に細かくしたり、或いはRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末を直接キャビティに充填しようとしてもキャビティへの均質充填はできず、グリーンコンパクトの密度も5Mg/m3未満であることが判った。なお、粒子径上限を350μmとしたRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末の顆粒状コンパウンドの粒子径分布を調べると75μm以上の顆粒が50wt.%以上含まれていた。そこで、75μm以上の顆粒が50wt.%以上含み粒子径上限を105μmとした顆粒状コンパウンドの充填性を調べると均質充填が可能であった。以上のように通常の粉末成形機での粉末成形性や薄肉のグリーンコンパクトを確保するには粒子径75μm以上の顆粒を50wt.%以上含む顆粒状コンパウンドとすることが望ましい。
【0045】
(温間圧縮の効果)
次に、本発明に係る顆粒状コンパウンドからグリーンコンパクトを作製する際の温間圧縮の効果について実施例にて説明する。2wt.%の不飽和ポリエステル樹脂とRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末から構成した顆粒状コンパウンドを490MPaで圧縮してグリーンコンパクトを作製したとき、当該ダイ温度に対するグリーンコンパクトの密度の関係を図5に示す。ただし、下パンチ温度はダイ温度とほぼ等しく、上パンチは10〜20℃低い状態であった。図から明らかなようにダイ温度の上昇に伴ってグリーンコンパクトの密度は上昇するが、不飽和ポリエステル樹脂が溶融する約70℃付近で該密度は飽和する。また、図のようにダイ温度70−90℃と室温(20℃)との密度差は約0.16Mg/m3であった。なお、密度0.15g/m3の差をこの系における(BH)maxに換算すると、およそ10kJ/m3の差と推定されるため、本実施例のように温間圧縮により本発明に係るグリーンコンパクトを作製することが望ましい。ただし、不飽和ポリエステル樹脂は周知のように有機過酸化物の熱分解に伴うラジカル重合で即硬化するため、温間圧縮は所謂当該樹脂のキックオフ温度以下に設定する必要がある。
【0046】
次に、上記2wt.%の不飽和ポリエステル樹脂とRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末から構成した顆粒状コンパウンドを温間圧縮する際の圧縮圧力とグリーンコンパクトの密度の関係を図6に示す。ただし、ダイ温度は図5で示したように高密度グリーンコンパクトが得られる70℃での実施である。図から明らかなように、圧縮圧力P(MPa)を高めるとグリーンコンパクトの密度D(Mg/m3)は上昇するが、その関係は下式の回帰式(相関係数0.986)で表すことができる。
【0047】
(式3)
D=−5×10−7P2+0.0015P+4.3452
すなわち、約500MPaの圧縮圧力で密度5Mg/m3以上のグリーンコンパクトが得られる。この値は、例えばRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂(12PA)などとのコンパウンドを射出成形した従来の希土類ボンド磁石の密度の最高値4.9Mg/m3(K.Ohmori,「New Era of Bonded SmFeN Magnets」,Polymerbonded magnet 2002,April,Chicago,US,2002)を明らかに越える。
【0048】
以上のように、上記2wt.%の不飽和ポリエステル樹脂とRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末から構成した顆粒状コンパウンドを約500MPa以上で温間圧縮すると従来この種の射出成形磁石では得られなかった5Mg/m3以上のグリーンコンパクトが容易に作製できることが判った。なお、温間圧縮下では不飽和ポリエステル樹脂を2wt.%以下としてもグリーンコンパクトの密度は殆ど変化ない。
【0049】
(ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルの効果)
次に、ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルを希土類磁石粉末に分散することの効果について実施例を用いて説明する。本発明に係る異方性希土類ボンド磁石を作製するには、例えば、2wt.%の不飽和ポリエステル樹脂とRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末から構成した顆粒状コンパウンドをキャビティに充填し、圧縮する前に磁界を印加して当該顆粒状コンパウンドを特定の方向に配列させる必要がある。約500MPa、70−100℃で温間圧縮する際に、上パンチを一時停止し、1.4MA/mのアキシャル方向磁界を印加する時間の関数としてグリーンコンパクトの4MA/mパルス着磁後の磁束量をサーチコイルで測定した。図7はその結果を示す特性図である。
【0050】
図から明らかなように、ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルが存在しないと配列に必要な磁界印加時間が1sec以上必要であるが、不飽和ポリエステル樹脂に対して10PHRの存在で0.1secの磁界印加でRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末を特定方向に整列させることが可能となる。しかしながら、図のように40PHRに増量しても顕著な変化はなかった。従って、ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルの顆粒状コンパウンドへの添加量は不飽和ポリエステル樹脂基準で10PHRとすれば、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末の高速配列が可能となるため、本発明に係る異方性希土類ボンド磁石の生産性の改善が可能となる。
【0051】
ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルは親油性の炭素数17のアルキル基3個と、親水性のアルコール性水酸基1個を有する。したがって、親水性の12−PAとは水酸基部分が親和性を示す。アルキル基によって本実施例で用いた10PHR(per hundred resin)のペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルは不飽和ポリエステル樹脂には不溶である。したがって、本発明に係る顆粒状コンパウンドでのペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルは微粒子状態でRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との界面を中心に分散した状態で存在すると推察される。よって、温間圧縮キャビティ内で70℃以上に加熱された顆粒状コンパウンドに磁界印加すると溶融ペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルはRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との界面などから該系外に溶出し、顆粒が一旦開放され、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末は所定の方向に配列される。その後、コンパウンドが圧縮圧力を受け緻密化される際には、溶出したペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルの一部がRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末相互やダイ壁面との境界面で潤滑作用を担うものと考えられる。このような薬剤は一般に滑剤と称され炭化水素系、脂肪酸アミド系、脂肪酸エステル系、高級アルコール系などがあるが、代表的には脂肪酸系(ステアリン酸)とその金属塩類が知られている。しかし、脂肪酸系(ステアリン酸)とその金属塩類を急冷粉末と本発明に係るコンパウンドに添加してもペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルで観測したような顕著な効果は得られなかった。
【0052】
(顆粒状コンパウンドの混合効果)
HDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末との顆粒状コンパウンドは樹脂成分が0.5wt.%と少ない。従って、このコンパウンドを本発明に係る製造方法に適用しても本発明が目的とする工業的規模で安定した性能と品質を有する異方性希土類ボンド磁石を作製することは困難である。とくに、HDDR−Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石の場合は保磁力の温度係数が−0.5%/℃程度と、例えば磁気的に等方性のメルトスパン−Nd2Fe14B系希土類系磁石粉末の−0.4%/℃よりも大きく、その分、室温で4MA/mのパルス着磁後の保磁力が1.1MA/m以上であることが望ましい。このようなHDDR−Nd2Fe14B系希土類系磁石粉末から準備される本発明に掛かる異方性希土類ボンド磁石は長期間高温暴露された際の磁束損失が問題になるかも知れない。ところが、最近、HDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末への表面処理で長期間高温暴露された際の磁束損失の課題が克服できると報告される。例えば、K.Machida,K.Noguchi,M.Nushimura,Y.Hamaguchi,G.Adachi,Proc.9th Int.Workshop on Rare−Earth Magnets andTtheir Applications,Sendai,Japan,(II),845(2000)。或いは、K.Machida,Y.Hamaguchi,K.Noguchi,G.Adachi,Digests of the 25th Annualconference on Magnetcs in Japan,28aC−6(2001)などで、その技術が開示されており、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドとともに、HDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドも積極的に使用できる環境に移っている。
【0053】
本発明に係るRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドはHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドと任意の割合で混合しても本発明に係る温間圧縮粉末成形で配向した高密度グリーンコンパクトを作製することができる。しかし、両者を特定の割合で混合することにより、更に高密度のグリーンコンパクトとすることができる。図8はRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と2wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドへのHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と0.5wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドの混合割合を関数とし、グリーンコンパクトの密度と4MA/mバルス着磁後の磁束を示す特性図である。ただし、温間圧縮でのダイ温度は70℃、磁界印加は1sec、圧縮は500MPaである。
【0054】
図のように、密度はHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドの混合割合に応じて変化するが、その割合が50−60wt.%付近で極大が観測される。また、得られる磁束は、ほぼ密度変化に連動するが、回帰式での極大点は概ね50wt.%付近となっている。これは、ほぼ同じ密度ならば、粒子径の大きいHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末の割合が高いと当該粉末が緻密化の際に破損して配向が乱れるためと推察される。従って、本発明に係るHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末の混合割合は、当該粉末が破損し難い範囲。すなわち、50wt.%以下とすることが望ましい。
【0055】
(顆粒状コンパウンドの連続成形性)
以上のように、本発明では、例えば、2wt.%の不飽和ポリエステル樹脂とRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末から構成した顆粒状コンパウンドをダイ温度70−100℃のキャビティに充填し、圧縮する前に1.4MA/m程度の磁界を印加して当該顆粒状コンパウンドを特定の方向に配列させ、500MPa以上の圧力で温間圧縮して密度5Mg/m3を越えるグリーンコンパクトを作製することが望ましい。そこで、外半径25.15mm、内半径23.15mm、肉厚2mmの円弧状グリーンコンパクトを連続30個成形した。得られたグリーンコンパクトの厚さ平均値は2.037mm、標準偏差0.118mm、密度5.385Mg/m3、標準偏差0.055Mg/m3で作製における障害はなかった。
【0056】
なお、図9はRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と2wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンド、および前記コンパウンドとHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と0.5wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドの混合割合を50wt.%としたものを使用して温間圧縮のダイ温度と異方性ボンド磁石の4MA/mパルス着磁後の磁束との関係を示す特性図である。ただし、図中1はRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と2wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドから作製した異方性希土類ボンド磁石、2は前記コンパウンドに対してHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と0.5wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドの混合割合を50wt.%としたものから作成した異方性希土類ボンド磁石を示す。ダイ温度が高くなると1と2との磁束の比は狭まるが不飽和ポリエステル樹脂のキックオフ温度(この場合は約120℃)では1.06倍程度の差がある。
【0057】
(不飽和ポリエステル樹脂の含浸効果)
以上、本発明に係るRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドはHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドと任意の割合で混合しても本発明に係る温間圧縮粉末成形で配向した高密度グリーンコンパクトを作製することができる。しかし、両者を特定の割合で混合することにより、更に高密度のグリーンコンパクトとすることができる。しかしながら、このグリーンコンパクトを加熱して、不飽和ポリエステル樹脂を硬化しても堅い鉛筆の芯のような状態の異方性ボンド磁石となる。したがって、例えば紙と摩擦摺動するとRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末が紙面に移着して、その軌跡を描く。したがって、永久磁石型モータとして使用するには機械強度を改善する必要がある。そこで、溶剤型不飽和ポリエステル樹脂ワニスに浸漬して、ワニス1.5−2.0wt.%含浸し、当該ワニスを硬化した。すると、恰も鉛筆のような性状は解消し、通常の希土類ボンド磁石と同等の28.9MPaの抗折力を示した。以上の含浸処理はバッチ処理で大量に処理できるので、生産性が極めて高く、得られた本発明に係る異方性ボンド磁石は40℃、97.5%RHの環境下に1000hrs暴露しても磁束の低下や目視による際立つ発錆は観測されなかった。
【0058】
以上のような含浸処理は本発明に係るグリーンコンパクト、或いはそれを熱処理し、不飽和ポリエステル樹脂を硬化した後でも差支えない。また、例えば積層鉄心の磁石スロットに前記グリーンコンパクト、或いはその不飽和ポリエステル樹脂硬化物を挿入、或いは冶具をもちいて貼付した後に含浸処理を行って、当該積層鉄心と一体的に剛体化しても差支えない。本発明に係る異方性ボンド磁石とワニス処理によって積層鉄心等の支持部材を一体的に剛体化すれば、永久磁石型モータとして運転時の騒音や振動を低減する効果も生まれる。
【0059】
【磁気特性とモータの基本特性】
(磁気特性)
図10は本発明に係るRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と2wt.%の不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドをダイ温度70−100℃のキャビティに充填し、圧縮する前に1.4MA/m程度の磁界を印加して当該顆粒状コンパウンドを特定の方向に配列させ、500MPa以上の圧力で温間圧縮して密度5Mg/m3を越えるグリーンコンパクトを作製し、該グリーンコンパクトに溶剤型不飽和ポリエステル樹脂ワニスを含浸し、150℃15min熱硬化した異方性希土類ボンド磁石の4MA/mパルス着磁後の(BH)maxを密度に対して示した特性図である。ただし、図中に示した従来例とはRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と12−PAとのコンパウンドを磁界中射出成形して得られた異方性希土類ボンド磁石の密度と(BH)maxの関係を示す。図1で既に説明したように、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末のような粉末粒子径5μm以下の微細な粉末は、磁石作製のプロセスとして従来、押出やカレンダリング▲3▼−aや射出成形▲3▼−bの方法しか開示されていなかった。したがって、得られる異方性希土類ボンド磁石も密度5Mg/m3に到達することはなかった。しかしながら、本発明に係る異方性希土類ボンド磁石はRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末のような粉末粒子径5μm以下の微細な粉末を使用しても、粉末成形が可能な顆粒状コンパウンドに調整し、不飽和ポリエステル樹脂の軟化状態で顆粒を一旦崩壊せしめ、磁界印加によって短時間に磁石粉末を特定方向に配列したのち、圧縮するため比較的低圧で密度5Mg/m3を越えるグリーンコンパクトが得られる。そして、明らかに高い磁気特性を確保できるのである。
【0060】
(モータ特性)
2wt.%の不飽和ポリエステル樹脂とRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末から構成した顆粒状コンパウンドをダイ温度70−100℃のキャビティに充填し、圧縮する前に1.4MA/m程度の磁界を印加して当該顆粒状コンパウンドを特定の方向に配列させ、500MPa以上の圧力で温間圧縮して密度5Mg/m3を越えるグリーンコンパクトを作製することが望ましい。そこで、外半径25.15mm、内半径23.15−23.73mm、肉厚2−1.4mm、密度5.0−5.1Mg/m3、(BH)max128kJ/m3の円弧状グリーンコンパクトを作製し、積厚24mmの積層鉄心に貼付た。次いで、溶剤型不飽和ポリエステル樹脂ワニスを含浸処理・熱硬化して鉄心と磁石とを一体的に剛体化した。最終的に回転軸を挿入して8極表面磁石(SPM)ロータとした。図11(a)は本発明に係る磁石ロータの斜視外観図であり、ロータの直径は50.3mmである。また、図11(b)はハードフェライトとPAとのコンパウンドから射出成形した(BH)max17kJ/m3の表面磁石(SPM)ロータで、その直径は(a)に等しい。一方、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と2wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドへのHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と0.5wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドの混合割合を50wt.%としたものから図11(a)の磁石ロータを作製した。ただし、この磁石ロータの本発明に係る磁石の(BH)maxは142kJ/m3である。
【0061】
上記、磁石ロータを固定子に組込み、永久磁石型モータとした。次いで、永久磁石型モータの誘起電圧を図11(b)の従来型モータ基準で比較した特性図を図12に示す。ただし、図中1はRD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と2wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドから作製した異方性希土類ボンド磁石ロータ、2は前記コンパウンドに対してHDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と0.5wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドの混合割合を50wt.%としたものから作成した異方性希土類ボンド磁石ロータを示す。図から明らかなように、従来のハードフェライト磁石モータを基準とした場合の本発明に係る永久磁石型モータの誘起電圧の増加は顕著である。例えば、RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末と2wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドから作製した異方性希土類ボンド磁石ロータの場合であっても、円弧状磁石の肉厚が1.4−2.0mmの範囲で1.5−1.6倍の高出力化が見込まれる。また、HDDR−Nd2Fe14B系希土類磁石粉末と0.5wt.%不飽和ポリエステル樹脂との顆粒状コンパウンドの混合割合を50wt.%としたものから作成した異方性希土類ボンド磁石ロータでは2倍以上の高出力化が見込まれる。
ところで、モータの効率ηは機械出力P、損失をWとすると
(式4)
n=[P/(P+W)]
である。したがって、本発明の目的のひとつである高出力化によるモータの高効率化が実現できると結論づけることができる。
ところで、本発明に掛かる永久磁石型モータのように電機子鉄心と界磁磁石との空隙磁束密度を増加させると一般的にコギングトルクの増大を招くことがある。ここで言うコギングトルクとはロータと対向する固定子鉄心の外周表面に固定子鉄心ティースとスロットが存在するため、ロータの回転に伴ってパーミアンス係数Pcが変化することにより発生するトルク脈動である。本発明に掛かる磁石のように高い(BH)maxの磁石を実装したモータではコギングトルクが増大するため、モータの振動や騒音の増加要因となったり、位置制御の精度に障害が発生する原因となることがある。コギングトルクについては、当該モータの設計思想に委ねるところである。しかし、本発明に掛かる異方性希土類ボンド磁石は最終的に用いる効率的なモータのコギングトルク低減のために、予めグリーンコンパクトを不等幅としたり、不等肉厚とすることで、固定子鉄心と磁石ロータとの空隙を正弦波状に近づけ、コギングトルクの増加を抑制する手段を容易に採用することができる。なお、本発明に掛かる粉末状のコンパウンドにおいて、希土類磁石粉末に代えて飽和磁化1.3T以上のFe、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Si、Fe−N、Fe−Bの群から選ばれる1種または2種以上のソフト磁性粉末の顆粒状コンパウンドを調整し、グリーンコンパクトとしたものを成形型キャビティに装填し、然る後、本発明に掛かる顆粒状コンパウンドをキャビティに充填して温間圧縮する。すると、異種機能をもったグリーンコンパクトの複合体が得られる。この複合体を含浸処理するとバックヨーク付きの異方性希土類ボンド磁石が得られる。
【0062】
【発明の効果】
以上のように、新規な概念の導入により鋭意研究した結果、本発明は平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末と堅い熱硬化性樹脂組成物との顆粒状コンパウンドを温間圧縮と熱硬化性樹脂組成物の含浸とを必須工程とする異方性希土類ボンド磁石の製造方法を骨子とするものである。とくに、本発明の5μm以下の希土類磁石粉末を使用した希土類ボンド磁石は、従来の成形加工方法(カレンダーリング、押出成形、射出成形)などのように200℃を越える成形加工が不要で、希土類磁石粉末本来の高い磁気性能をモータ性能に反映させることができる。したがって、フェライト磁石や磁気的に等方性のメルトスパン−Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を搭載した従来の小型モータの出力を顕著に上回るため、高出力化によるモータの高効率化が実現できる。よって、電気電子機器への小型・高出力化に関する寄与ばかりか、幅広い普及によって電力消費削減や省資源化に効果を奏することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ボンド磁石作製における3大要素技術、すなわち磁石粉末、結合剤システム、成形加工方法の連携を示す概念図
【図2】永久磁石型モータのロータ構造を示す概念図
【図3】保磁力と不可逆磁束損失の関係を示す特性図
【図4】粉末成形動作を示す概念図
【図5】温間圧縮におけるダイ温度と密度の関係を示す特性図
【図6】温間圧縮における圧力と密度の関係を示す特性図
【図7】磁界印加時間と磁束の関係を示す特性図
【図8】顆粒状コンパウンドの混合割合と密度、磁束の変化を示す特性図
【図9】温間圧縮におけるダイ温度と磁束の関係を示す特性図
【図10】RD−Sm2Fe17N3系希土類磁石粉末のような粉末粒子径5μm以下の微細な粉末から従来法により作製した磁石と本発明例による磁石の密度と(BH)maxの関係を示す特性図
【図11】(a)本発明に係る永久磁石型ロータの斜視外観を示す特性図(a)従来ロータの斜視外観を示す特性図
【図12】永久磁石型モータの高出力化を誘起電圧で示した特性図
【符号の説明】
▲1▼−a フェライト系磁石粉末
▲1▼−b アルニコ系磁石粉末
▲1▼−c 希土類磁石粉末(本発明に掛かる)
▲2▼−a 柔軟な結合剤(ゴム、熱可塑性エラストマー)
▲2▼−b 堅い熱可塑性樹脂結合剤
▲2▼−c 堅い熱硬化性樹脂結合剤(本発明に掛かる)
▲3▼−a カレンダーリングまたは/および押出成形
▲3▼−b 射出成形
▲3▼−c 圧縮成形
▲3▼−d 温間圧縮と含浸(本発明に掛かる)
▲4▼ 効率的な小型モータ(本発明に掛かる)
Claims (34)
- 材料が平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂組成物との顆粒状コンパウンドで、成形加工に少なくとも温間圧縮と熱硬化性樹脂組成物の含浸の工程を有する異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 材料が平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末と平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末、および熱硬化性樹脂組成物との顆粒状コンパウンドで、成形加工に少なくとも温間圧縮と熱硬化性樹脂組成物の含浸の工程を有する異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂組成物とを主成分とした顆粒状コンパウンドを温間圧縮し、得られたグリーンコンパクトと支持部材とを組立て、熱硬化性樹脂組成物を同時に含浸、熱硬化して支持部材と一体的に剛体化する異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 希土類磁石粉末と熱硬化性樹脂組成物とを主成分とした顆粒状コンパウンドを温間圧縮したグリーンコンパクトを熱硬化した後、支持部材と組立て、更に、熱硬化性樹脂組成物を同時に含浸、熱硬化して支持部材と一体的に剛体化する異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末が耐候性Sm2Fe17N3系金属間化合物を主成分とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 平均粒子径5μm以下の希土類磁石粉末がSm−Co5系金属間化合物を主成分とする請求項1または請求項2記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末が耐候性Nd2Fe(Co)14B系金属間化合物を主成分とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末がNd2Fe(Co)14B系金属間化合物を主成分とする磁気的に等方性の材料である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末がNd2Fe(Co)14B系金属間化合物とFe3B、Fe等のソフト相との磁気的に等方性のナノコンポジット材料である請求項1または請求項2記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末がSm2Fe17N3系金属間化合物とFe等のソフト相との磁気的に等方性のナノコンポジット材料である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 熱硬化性樹脂組成物が不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 不飽和ポリエステル樹脂を構成する不飽和ポリエステルアルキッドが室温で固体のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキッドである請求項11記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 不飽和ポリエステル樹脂を構成する共重合性単量体がアリル基を有するアリル系共重合性単量体である請求項11記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 不飽和ポリエステル樹脂が重合開始温度(キックオフ温度)110℃以上となる有機過酸化物を有効成分とする請求項11記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 有機過酸化物が室温で固体のジクミルパーオキサイドを主成分とする請求項13記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 不飽和ポリエステル樹脂に対して10PHR以上のペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルを添加した請求項11記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 顆粒状コンパウンドは室温で固体の不飽和ポリエステル樹脂を有機溶媒に溶解して希土類磁石粉末と湿式混合し、溶媒を除去した当該混合物を解砕し、粒子径75μm以上の顆粒を50wt.%以上とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 成形型よりも高融点の高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属石鹸類から選ばれる1種または2種以上の滑剤を顆粒状コンパウンドの表面に0.1wt.%以上付着せしめる請求項17記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 顆粒状コンパウンドの熱硬化性樹脂組成物の割合が2wt.%以下である請求項17記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 温間圧縮が▲1▼フィーダボックス内の顆粒状コンパウンドを熱硬化性樹脂組成物の軟化温度以上に加熱した成形型キャビティに充填し、顆粒状コンパウンドを非磁性上下パンチと非磁性ダイとで密閉する工程。▲2▼前記顆粒状コンパウンドに磁界を印加して希土類磁石粉末を所定の方向に配列しながら圧縮し、圧縮された成形型内のグリーンコンパクトを脱磁する工程。▲3▼グリーンコンパクトを離型する工程である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 温間圧縮工程において▲1▼と▲3▼の工程が▲2▼の工程と隔離され、▲1▼と▲2▼の工程に移動する際にフィーダボックス並びにキャビティから漏洩した希土類磁石粉末を含む顆粒状コンパウンドを非帯磁状態で回収する請求項20記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 温間圧縮工程において0.1sec以上の磁界を印加したのち顆粒状コンパウンドを圧縮する請求項20記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 顆粒状コンパウンドの温間圧縮が500MPa以上である請求項20記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- グリーンコンパクトが磁界印加方向に対して不等幅である請求項20記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- グリーンコンパクトが磁界印加方向に対して不等肉厚である請求項20記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 飽和磁化1.3T以上のFe、Fe−Ni、Fe−Co、Fe−Si、Fe−N、Fe−Bの群から選ばれる1種または2種以上のソフト磁性粉末を含有したグリーンコンパクトと希土類磁石粉末を含有したグリーンコンパクトを一体的に成形する請求項20記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- グリーンコンパクトの厚さが2mm以下である請求項20記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- グリーンコンパクトおよび/または該熱硬化物への含浸が熱硬化性樹脂組成物への常圧浸漬である請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 含浸する熱硬化性樹脂組成物が不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする溶剤型ワニスである請求項28記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- グリーンコンパクトおよび/または該熱硬化物の支持部材が積層電磁鋼板である請求項3または請求項4記載の異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石と積層電磁鋼板とから構成した表面磁石回転子型ロータを有する永久磁石型モータ。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石と積層電磁鋼板とから構成した埋込磁石型ロータを有する永久磁石型モータ。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石を永久磁石界磁とした直流モータ。
- 4MA/mパルス着磁後の室温における最大エネルギー積(BH)maxが130kJ/m3以上の請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の異方性希土類ボンド磁石を搭載した永久磁石型モータ。
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