JP2006049554A - 極異方性希土類ボンド磁石の製造方法、および永久磁石型モータ - Google Patents

極異方性希土類ボンド磁石の製造方法、および永久磁石型モータ Download PDF

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文敏 山下
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Abstract

【課題】高(BH)maxのラジアル異方性希土類ボンド磁石モータはコギングトルクが増大する。コギングトルクの増大はモータの振動や騒音の原因となるばかりか位置制御の精度に障害が発生する原因となることもある。そこで、高(BH)maxを維持しながら磁石の表面磁束密度分布を正弦波状に近づけると共に、保磁力の割に不可逆減磁の少ない磁石、並びにそれを用いた永久磁石型モータが求められる。
【解決手段】永久磁石を配向磁界発生源とする成形型キャビティに希土類磁石粉末を主成分とするグラニュール状コンパウンドを充填し、当該グラニュールを熱と磁気とで軟化、崩壊せしめ、少なくとも面に垂直方向並びに面内方向に配向せしめながら成形型キャビティの圧力軸方向投影面積15〜50MPaの低圧力で圧縮成形し、極異方性希土類ボンド磁石を製造する。
【選択図】図5

Description

本発明は中空円板状や円筒状を包含する所謂環状、或いは円弧状の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法、並びに永久磁石回転子型、或は永久磁石界磁型ブラシレスモータ、直流モ−タ、並びにステッピングモータなどで代表される永久磁石型モータに関する。
小型モータの年間生産台数は、2003年には50億台を越えると推測される。また、生産台数の増加率は永久磁石界磁小型直流モータ、ブラシレスモータ、ステッピングモータが顕著で、それらの永久磁石型モータは今後も年率約9%の平均増加率が予想される。この傾向は、永久磁石型モータの高性能化と、その普及が小型モータ産業において活発なことを示唆している。
ところで、1986年、本発明者らは、上記メルトスパンリボンを粉砕した磁気的に等方性のNd2Fe14B希土類磁石粉末を樹脂で固定した(BH))max〜72kJ/m3の小口径環状等方性希土類ボンド磁石が小口径永久磁石モ−タの高出力化に有用であることを見出し、特願昭61−38830号公報にて明らかにした(特許文献1参照)。
その後、1988年に溶湯合金をメルトスピニングで急冷凝固した等方性Nd2Fe14B希土類磁石粉末をエポキシ樹脂で固めた小口径の等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石とラジアル異方性2−17SmCo系ボンド磁石の永久磁石型モ−タ特性を比較し、前者が有用であるとT.Simodaにより報告された(非特許文献1参照)。
その後、1989年、W.Baran(非特許文献2参照)、1990年、G.X.Huang、Y.Kasai(非特許文献3、4参照)などによって等方性Nd2Fe14Bボンド磁石がフェライトボンド磁石、フェライト焼結磁石、2−17SmCo系ボンド磁石などが適用されていた永久磁石界磁型直流モータ、ブラシレスモータ、ステッピングモータなどの小型軽量化、高出力化に有用であるとの報告が相次いでなされた。よって、1990年代からOA、AV、PCおよびその周辺機器を中心とした電気電子機器類の駆動源として使用される高性能永久磁石型モータに、主として半径方向に磁化して用いる比較的小口径の環状等方性Nd2Fe14Bボンド磁石が広く普及した経緯がある。
他方では、1980年代からメルトスピニングによる磁石材料の研究が活発に行われ、Nd2Fe14B系、Sm2Fe173系、或いはそれらとαFe、Fe3B系などとの微細組織に基づく交換結合を利用したナノコンポジット材料を含め、多彩な合金組成をミクロ組織制御した材料に加え、近年ではメルトスピニング以外の急冷凝固法により、形状の異なる等方性希土類磁石粉末も工業的に利用できるようになっている(例えば、非特許文献5、6、7、8参照)。
また、等方性でありながら最大エネルギ−積(BH)maxが220kJ/m3に達するというDaviesらの報告もある(特許文献9参照)。しかし、工業的に利用可能な急冷凝固粉末の(BH)maxは〜134kJ/m3、等方性Nd2Fe14B希土類ボンド磁石の(BH)maxは略80kJ/m3と見積もられる。
上記に拘らず、本発明が対象とする永久磁石型モータに関しては電気電子機器の高性能化のもと、更なる小型軽量化、高出力化への要求が絶えない。したがって、等方性希土類ボンド磁石の改良では、もはや永久磁石型モータの高性能化に有用と言い切れなくなりつつある。よって、異方性希土類ボンド磁石の永久磁石型モータへの応用の必要性が高まっ
ている(非特許文献10参照)。
ところで、異方性希土類ボンド磁石に用いるSm−Co系希土類磁石粉末はインゴットを粉砕しても大きな保磁力HCJが得られる。これに対し、Nd2Fe14B系合金のインゴットや焼結磁石を粉砕してもHCJは小さい。このため、異方性Nd2Fe14B系希土類磁石粉末の作製に関しては、メルトスピニング材料を出発原料とする研究が先行した。
1989年、徳永はNd14Fe80-X6GaX(X=0.4〜0.5)を熱間据込加工(Die−upset)したバルクを粉砕しHCJ=1.52MA/mの異方性Nd2Fe14B粉末とし、樹脂で固めて(BH)max127kJ/m3の異方性ボンド磁石を得た(非特許文献11参照)。また、1991年、H.SakamotoらはNd14Fe79.85.2Cu1を熱間圧延し、HCJ1.30MA/mの異方性Nd2Fe14B粉末を作製した(非特許文献12参照)。このように、GaやCuの添加で熱間加工性を向上させ、Nd2Fe14B結晶粒径を制御して高HCJ化した粉末が知られた。1991年、V.Panchanathanらは熱間加工バルクの粉砕法とし、粒界から水素を侵入させNd2Fe14BHXとして崩壊させ、真空加熱で脱水素したHD(Hydrogen Decrepitation)−Nd2Fe14B粉末とし、(BH)max150kJ/m3の異方性ボンド磁石とした(非特許文献13参照)。2001年、IriyamaはNd0.137Fe0.735Co0.0670.055Ga0.006を同法で310kJ/m3異方性粉末とし、(BH)max177kJ/m3の異方性ボンド磁石に改良した(非特許文献14参照)。
一方、TakeshitaらはNd−Fe(Co)−Bインゴットを水素中熱処理し、Nd2(Fe,Co)14B相の水素化(Hydrogenation,Nd2(Fe,Co)14BHx)、650〜1000℃で相分解(De composition,NdH2+Fe+Fe2B)、脱水素(Desorpsion)、再結合(Recombination)するHDDR法を提案し(非特許文献15参照)、1999年にはHDDR−Nd2Fe14B粉末から(BH)max193kJ/m3の異方性ボンド磁石が作製された(非特許文献16参照)。
2001年には、MishimaらによってCo−freeのD−HDDR Nd2Fe14B粉末が報告され(非特許文献17参照)、N.Hamadaらは(BH)max358kJ/m3の同d−HDDR異方性Nd2Fe14B粉末を150℃、2.5Tの配向磁界中、0.9GPaで圧縮し、密度6.51Mg/m3、(BH)max213kJ/m3の立方体(7×7×7mm)異方性ボンド磁石を作製している(非特許文献18参照)。しかし、立方体磁石は、一般の永久磁石型モータには適合しない。例えば、肉厚1mm程度の環状、或いは円弧状の異方性希土類ボンド磁石として永久磁石型モータへの形状対応力を高める必要がある。
一方、2001年、RD(Reduction&Diffusion)−Sm2Fe173微粉末を用いた(BH)max〜119kJ/m3の射出成形ボンド磁石が報告された(非特許文献19参照)。2002年、Ohmoriにより(BH)max323kJ/m3の耐候性付与RD−Sm2Fe173微粉末を使用した(BH)max136kJ/m3の射出成形希土類ボンド磁石も報告された(非特許文献20参照)。このような射出成形ラジアルによる(BH)max80kJ/m3の異方性Sm2Fe173希土類ボンド磁石を応用した表面磁石(SPM)ロ−タでフェライト焼結磁石を用いた永久磁石型モータの高効率化を実現した報告もある(例えば、非特許文献21参照)。
しかし、ラジアル配向磁界は成形型リングキャビティが小口径化(或いは、長尺化)すると、起磁力の多くが漏洩磁束として消費されるため配向磁界が減少する。したがって、異方性粉末の配向度の低下により、ボンド磁石や焼結磁石に拘らず小口径化に伴って(B
H)maxが減少する(例えば、非特許文献22参照)。また、均質なラジアル磁界の発生は困難で等方性ボンド磁石に比べて生産性が低い課題もある。仮に半径方向の磁気特性が形状に依存せず、均質配向が可能で、且つ高い生産性が確保できれば永久磁石型モータの高性能化に有用な異方性希土類ボンド磁石の飛躍的普及が期待される。そこで、本発明者らは、機械的な延伸可能な結合剤成分と希土類磁石粉末を固定する結合剤成分とをケミカルコンタクトで自己組織化する結合剤システムを利用し、前記結合剤システムと希土類磁石粉末とのコンパウンドを圧縮成形し、自己組織化後に結合剤成分の機械的延伸により磁石全体の可撓性を制御したラジアル異方性希土類ボンド磁石の作製技術、並びにその磁気特性を開示した(非特許文献23参照)。この技術により、半径方向の磁気特性が形状に依存せず、均質配向が可能で、且つ高い生産性が期待できる永久磁石型モータの高性能化に有用なラジアル異方性希土類ボンド磁石の製造方法が明らかになった。
特開昭62−196057号公報 T.Simoda,"Compression molding magnet made from rapid−quenched powder",PERMANENT MAGNETS 1988 UP−DATE",Wheeler Associate INC.(1988) W.Baran,"Case histories of NdFeB in the European community", The European Business and Technical Outlook for NdFeB Magnets, Wheeler Associate INC(1989) G.X.Huang,"Case histories of NdFeB in the European community",The European Business and Technical Outlook for NdFeB Magnets,Wheeler Associate INC(1989) Y.Kasai,"MQ1,2&3 magnets applied to motors and actuators", Polymer Bonded Magnets 1992, Illinois USA(1992) 入山恭彦,"高性能希土類ボンド磁石の開発動向",文部科学省イノベーション創出事業/希土類資源の有効利用と先端材料シンポジウム,東京,pp.19−26(2002) B.H.Rabin,B.M.Ma,"Recent developments in Nd−Fe−B powder",120th Topical Symposium of the Magnetic Society of Japan,pp.23−28(2001) B.M.Ma,"Recent powder development at magnequench",Polymer Bonded Magnets 2002,Chicago(2002) S.Hirasawa,H.Kanekiyo,T.Miyoshi,K.Murakami,Y.Shigemoto,T.Nishiuchi,"Structure and magnetic properties ofNd2Fe14B/FexB−type nanocomposite permanent magnets prepared by strip casting",9th Joint MMM/INTERMAG,CA(2004)FG−05 H.A.Davies,J.i.Betancourt,C.L.Harland,"Nanophase Pr and Nd/Pr based rare−earth−iron−boron alloys",Proc.of 16th Int.Workshop on Rare−Earth Magnets and Their Applications,Sendai,pp.485−495(2000) 山下文敏,"希土類磁石の電子機器への応用と展望",文部科学省イノベ−ション創出事業/希土類資源の有効利用と先端材料シンポジウム,東京,(2002) 徳永雅亮,"希土類ボンド磁石の磁気特性",粉体および粉末冶金, Vol.35,pp.3−7,(1988) H.Sakamoto,M.Fujikura and T.Mukai,"Fully−dense Nd−Fe−B magnets prepared from hot−rolled anisotropic powders",Proc.11th Int.Workshop on Rare−earth Magnets and Their Applications,Pittsburg,pp.72−84(1990) M.Doser,V.Panchanacthan,and r.K.Mishra,"Pulverizing anisotropic rapidly solidified Nd−Fe−B materials for bonded magnets",J.Appl.Phys.,Vol.70,pp.6603−6805(1991) T.Iriyama,"Anisotropic bonded NdFeB magnets made from hot−upset powders",Polymer Bonded magnet 2002,Chicago(2002) T.Takeshita,and R.Nakayama,"Magnetic properties and micro−structure of the Nd−Fe−B magnet powders produced by hydrogen treatment",Proc.10th Int.Workshop on Rare−earth Magnets and Their Applications,Kyoto,pp.551−562(1989) K.Morimoto,R.Nakayama,K.Mori,K.Igarashi,Y.Ishii,M.Itakura,N.Kuwano,K.Oki,"Nd2Fe14B−based magnetic powder with high remanence produced by modified HDDR process",IEEE.Trans.Magn.,Vol.35,pp.3253−3255(1999) C.Mishima,N.Hamada,H.Mitarai,and Y.Honkura,"Development of a Co−free NdFeB anisotropic magnet produced D−HDDR processes powder",IEEE.Trans.Magn.,Vol.37,pp.2467−2470(2001) N.Hamada,C.Mishima,H.Mitarai and Y Honkura,"Development of anisotropic bonded magnet with 27MGOe"IEEE.Trans.Magn.,Vol.39,pp.2953−2956(2003) 川本淳、白石佳代、石坂和俊、保田晋一"15MGOe級SmFeN射出成形コンパウンド",電気学会マグネティックス研究会,(2001)MAG−01−173 K.Ohmori,"New era of anisotropic bonded SmFeN magnets",Polymer Bonded magnet 2002,Chicago(2002) 松岡篤、山崎東吾、川口仁,"送風機用ブラシレスDCモ−タの高性能化検討",電気学会回転機研究会,(2001)RM−01−161 清水元治、平井伸之,"Nd−Fe−B系焼結型異方性リング磁石",日立金属技報,Vol.6,pp.33−36(1990) F.Yamashita,S.Tsutsumi,H.Fukunaga,"Radially−anisotropic RING−/arc−shaped rare−earth bonded magnets using self−organization technique",9th Joint MMM/INTERMAG,CA(2004)BP−05
例えば、自己組織化した結合剤を含む(BH)max=162kJ/m3、厚さ0.97mmの薄板状の希土類ボンド磁石をスタンピングによって非等方的に延伸を施し、内半径3.55mm、外半径3.65mm、最大肉厚0.88mm、長さ10mmの円弧状のラジアル異方性希土類ボンド磁石とした。この磁石を4MA/mのパルス磁界で磁化したときの磁束は(BH)max=72kJ/m3の等方性Nd2Fe14B希土類ボンド磁石の磁束量に対して1.53倍となり、例えば永久磁石界磁型直流モータの電機子鉄心との空隙磁束密度を1.5倍以上高めることができる。これは、空隙磁束密度の比は略(BH)maxの比の平方根に比例することによる。しかしながら、高(BH)maxのラジアル異方性希土類ボンド磁石を実装したモ−タは一般的にモータの振動や騒音の原因となるコギングトルクが増大する。また、このようなコギングトルクの増大はモータの振動や騒音の原因となるばかりか位置制御の精度に障害が発生する原因となることもある。
上記、コギングトルクとは界磁と対向する電機子の外周表面に電機子鉄心ティ−スとスロットが存在するため、電機子の回転に伴ってパ−ミアンス係数Pcが変化することによるトルク脈動である。このようなコギングトルクの低減に関し、従来から様々な方法が提案されている。例えば、一様な厚みの薄板磁石では極間の磁極幅を狭めて空隙磁束密度を正弦波状に近づけることは周知である。しかし、例えば、極間での磁極幅を最適化した150kJ/m3以上の高(BH)maxラジアル異方性希土類ボンド磁石と(BH)max72kJ/m3の等方性Nd2Fe14B希土類ボンド磁石とを永久磁石界磁とした直流モータでコギングトルクを比較すると、高(BH)maxラジアル異方性希土類ボンド磁石のコギングトルクの大きさは等方性Nd2Fe14B希土類ボンド磁石の10倍以上に達し、モータ駆動における振動や騒音、位置制御の精度に障害が発生するなどの課題を免れない。この主な理由は、例えば、環状等方性Nd2Fe14B希土類ボンド磁石の残留磁化と保磁力は着磁界強度の関数としてバランスよく同時に増加する。加えて内外周面を半径方向に多極着磁する際には磁化パターンが異方性磁石粉末を極配向した円筒磁石と同様の磁化パターンとなる。その結果、着磁界強度が任意であっても、バランスのよいB−H曲線が極配向異方性磁石のような磁化パターンで得られる。その結果、空隙磁束密度分布が正弦波状に近づき、小さなコギングトルクが得られる。また、磁極間距離が長くなるので、パーミアンス係数が増加し、その分、磁極中心付近の表面磁束密度分布の最大値が大きくなる。
したがって、多極着磁した環状磁石を使用する永久磁石型モータにおいて(BH)max〜80kJ/m3級の等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を上回る駆動性能を有する高性能永久磁石型モータを提供するには、高(BH)max異方性希土類ボンド磁石の多極着磁における磁化パターンを少なくとも当該等方性Nd2Fe14B希土類ボンド磁石と同様にする必要がある。
以上の点に鑑み、本発明は永久磁石を配向磁界発生源とする成形型キャビティに希土類磁石粉末を主成分とするグラニュール状コンパウンドを充填し、当該グラニュールを熱と
磁気とで軟化、崩壊せしめ、少なくとも面に垂直方向並びに面内方向に配向せしめながら成形型キャビティの圧力軸方向投影面積当り15〜50MPaの低圧力で圧縮成形する極異方性希土類ボンド磁石の製造方法を骨子とする。
更に詳しくは、永久磁石とFeまたはFe基合金からなる磁極を交互に組合わせた配向磁界発生源と非磁性部材で面に垂直方向、並びに面内方向に配向磁界を形成する環状成形型キャビティを用いて直交磁界中圧縮成形した極異方性希土類ボンド磁石、或いは永久磁石とFeまたはFe基合金からなる磁極を交互に組合わせた配向磁界発生源と非磁性部材で面に垂直方向、並びに面内方向に配向磁界を形成する方形または中空円板状の成形型キャビティを用い、平行磁界中圧縮成形する板状または中空円板状極異方性希土類ボンド磁石を製造する方法である。
更に、本発明では平行磁界中圧縮成形した薄板状異方性希土類ボンド磁石では結合剤成分を等方的に一軸延伸し、可撓性を付与して環状とする。或いは、結合剤成分を非等方的に一軸延伸し、円弧状とする極異方性極異方性希土類−鉄系ボンド磁石の製造方法を包含する。したがって、永久磁石型モータの設計思想により、磁極を外周面、或いは内周面に配置した構成の環状または円弧状極異方性希土類ボンド磁石の製造方法も包含される。
以上のように、本発明は低圧圧縮成形によって作製した高(BH)maxの希土類ボンド磁石で、しかも磁極中心付近では面に垂直方向、並びに極間では面内周方向に希土類磁石粉末を配向した、所謂Halbach方式の磁化パターンを連続的に付与した配向を含む極異方性希土類ボンド磁石の製造方法である。
例えば、極異方性フェライトボンド磁石を基準として等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を多極着磁した表面磁束密度最大値の増加比は略1.4である。前記等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を基準として本発明にかかる磁石を多極着磁した表面磁束密度最大値の増加比は1.45倍に達する。従って、鉄心との空隙に強い静磁界が得られると共に、当該磁化パターンから磁束密度分布が正弦波状に近い。このため、コギングトルクが要因となるモータ駆動における振動や騒音、或いは位置制御の精度障害を抑制できる利点もある。更に、低圧での圧縮成形という本発明にかかる特徴は永久磁石型モータが高温暴露された際の駆動動作安定性にかかる当該磁石の不可逆減磁にも優れている。
したがって、1980年代後半から1990年代に多極着磁した等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を応用した永久磁石型モータがフェライト磁石に代り、当該モータの高性能化に大きく寄与した場合と同等な効果が期待できる。
以下、本発明を更に詳しく説明する。
本発明で言う極異方性とは、例えば永久磁石型モータとして磁石利用状態の多極着磁磁路に沿って異方性を付与したものである。焼結磁石に比べると希土類ボンド磁石は異方性付与による熱膨張差を結合剤が吸収する。このため薄肉環状磁石にも対応できる利点がある。また、極異方性磁石は配向磁気回路の変更によって配向分布(表面磁束密度波形形状)を使用目的に合わせて変更できるが、極間での磁化反転はなだらかである。また、本発明にかかる極異方性希土類ボンド磁石は、図1(a)示すような磁極面の反対面に逆極が生じないものばかりでなく、図1(b)に示すように、磁極中心付近では面に垂直方向(ラジアル異方性)、並びに極間では面内周方向に配向した、所謂Halbach配向パターンを連続的に付与した磁石[例えば、D.Howe,Z.Q.Zhu,“Application of halbach cylinders to electrical
machines”,Proc.16th Int.workshop on rar
e−earth magnets and their applications,pp.903−921,sendai,(2000)]が対象となる。これは、本発明が対象とする極配向異方性希土類ボンド磁石のコストパフォーマンスを高めるために磁石を薄肉設計し、極間距離に対して磁石肉厚が不足する場合に採用する。この場合は磁極面と反対面にFeまたはFe基合金からなるバックヨークを配置し、永久磁石型モータとすることが好ましい。
本発明は永久磁石を配向磁界発生源とする成形型キャビティに希土類磁石粉末を主成分とするグラニュール状コンパウンドを充填し、当該グラニュールを熱と磁気とで軟化し、崩壊せしめ、少なくとも面に垂直方向並びに面内方向に配向せしめながら成形型キャビティの圧力軸方向投影面積10〜50MPaで磁界中圧縮成形する極異方性希土類ボンド磁石の製造方法が要点となる。
先ず、本発明で言う永久磁石を配向磁界発生源とする成形型キャビティを図面により説明する。図2(a)(b)(c)は永久磁石を配向磁界発生源とする成形型キャビティの概念図である。ただし、図中1は永久磁石、2はFeまたはFe基合金、3は非磁性部材、4は成形型キャビティを示し、図2(a),(b)はリングキャビティの1/2を略している。図2(a)及び(b)は本発明にかかる筒(リング)状、(c)は中空円板状、(d)は薄板状極異方性希土類ボンド磁石の圧縮成形型の要部構成を示している。これらの成形型は加熱状態で使用される。このため、配向磁界発生源としての永久磁石1は不可逆減磁などの熱安定性と配向磁界を大きくする必要から保磁力HCJが2MA/m以上のNd2Fe14B系焼結磁石[例えば、森本仁、金子裕治、”高耐熱NEOMAX−EHシリーズの開発”住友特殊金属技法、vol.12,pp.89−92(1997)]が好適であり、直接成形型キャビティを構成する部材として非磁性部材でキャビティから隔離することなく配置し、成形型キャビティの配向磁界を0.88T以上とすることが好ましい。
異方性Nd2Fe14B希土類ボンド磁石などの圧縮成形では成形圧力が600〜1000MPaと高い。したがって、永久磁石を成形型キャビティ面に直接配置した構成の採用は困難である。しかしながら、本発明では成形圧力が10〜50MPaときわめて低い。したがって、Nd2Fe14B系焼結磁石のような永久磁石を非磁性部材で隔離することなく、キャビティ壁面に直接配置できる。同様の理由により、永久磁石1とともに配向磁界の必要に応じて磁気回路を担うFeまたはFe基合金2は飽和磁化Isや透磁率μが高いS55Cなどの炭素鋼やFe−Co−V系合金が使用でき、非磁性部材3は汎用のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304が使用できる。
次に、本発明にかかる成形圧力が10〜50MPaと低圧縮成形を実現するグラニュール状コンパウンドについて説明する。
本発明にかかる低圧成形性に関する第1の要件は、グラニュール状コンパウンドのマトリクスを形成する結合剤主成分の融点以上で希土類磁石粉末を溶融混練することにある。ここで、マトリクスとは不飽和ポリエステルアルキドのアリル系共重合性単量体溶液、ジアリルフタレートプレポリマーのアリル系共重合性単量体溶液を挙げることができる。また、図2(d)のような成形型キャビティを用いて板状の極異方性希土類ボンド磁石とし、当該磁石の2次加工を施して環状磁石とする場合には、マトリクスを形成する結合剤主成分を機械的延伸可能なポリマーとする。なお、溶融混練する希土類磁石粉末には予めマトリクスを形成する結合剤主成分と化学結合し得るオリゴマーの表面被覆は、溶融混練で希土類磁石粉末の分散を高める。
更に好ましくは、希土類磁石粉末を溶融混練する際、当該コンパウンドの滑りを伴う溶
融流動を発現せしめる滑剤をインテグラルブレンド(同時混練)する。すると配向性、並びに成形性とを改善することができる。なお、滑性をその作用機能により分類すると内部滑性と外部滑性がある。極性分子鎖は、絡み合ったセグメントの分子間力による結合があるため、そのままでは柔軟になりにくく流動しにくい。ここに滑剤を添加して滑性を与え、セグメントの集合を解きほぐして剛性を減じ、絡み合ったセグメントに流動性を与えるものが内部滑性である。
本発明で言う滑剤とは強い外部滑性をもつ滑剤を指す。外部滑性とはマトリクスと希土類磁石粉末、或いは成形型キャビティ壁面との境界摩擦を低減せしめるもので、その化学構造は一般に無極性の長い脂肪族炭化水素と少数の極性基からなっている。この極性基はマトリクスとの相溶性を保つのに役立ち、無極性の炭化水素は境界面で潤滑作用をなす。具体的にはペンタエリスリトールステアリン酸トリエステル(化1)を挙げることができる。
上記、本発明にかかる極異方性希土類ボンド磁石の製造工程からみると溶融混練、圧縮成形、必要に応じて行なう圧延(マトリクスの機械的延伸)の各工程で外部滑性が発現するが、とくに25MPa以下の低圧圧縮成形圧力の発現、並びに配向時間の高速化に効果がある。
なお、配向時間の高速化が好ましい理由は、成形型からの熱伝導でグラニュール状コンパウンドの温度が上昇し、マトリクスを形成する結合剤が軟化し、減粘する。しかし架橋反応の進行により結合剤は次第に増粘し、遂にはゲル化に至る。この一連のマトリクスを構成する結合剤成分の成形型キャビティでの経時的な相変化において、最も減粘したときにマトリクスと希土類磁石粉末との境界摩擦を低減せしめる外部滑性によって、高速配向することは配向度の改善のみならず、常時安定した配向が得られるからである。
次に、本発明で言うマトリクスとしての不飽和ポリエステルアルキドのアリル系共重合性単量体溶液、ジアリルフタレ−トプレポリマ−のアリル系共重合性単量体溶液について説明する。先ず、不飽和ポリエステルアルキドとは不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸とグリコール類とを反応させたものである。不飽和多塩基酸は、例えば無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などである。飽和多塩基酸は、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸などである。グリコール類は、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1−3−ブタンジオール、1−6−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、ジブロムネオペンチルグリコ−ルなどである。他方、共重合性単量体として、先ず、例えばスチレン,ビニルトルエン,ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、酢酸ビニルなどのビニル系共重合性単量体が挙げられるが、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリ
ルシアヌレート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルアクリレート、1−6ヘキサンジオールジアクリレートなどのアリル系共重合性単量体も例示できる。
以上、本発明で好ましい不飽和ポリエステル樹脂の構成としては、耐熱性に優れる室温で固体の直鎖状芳香族ポリエステルアルキドであるテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキド,および蒸気圧が高く,揮発し難いジアリルオルソフタレート,ジアリルイソフタレート,トリアリルシアヌレートなどアリル系共重合性単量体の1種または2種以上が好ましい。なお,前記不飽和ポリエステル樹脂とは,例えば軟化温度90−100℃のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキドに対してジアリルオルソフタレート、アリルイソフタレート、トリアリルシアヌレートなどアリル系共重合性単量体の1種または2種以上を5〜50重量%とすることで任意に調整可能である。更に、本発明では不飽和ポリエステルアルキドに代えてジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマーなどの前駆体のアリル系共重合性単量体溶液である所謂ジアリルフタレート樹脂などが使用できる。
一方、図2(d)に示す成形型キャビティを使用し、薄板状の極異方性希土類ボンド磁石を作製し、当該磁石を環状、或いは円弧状に形状変換する場合には結合剤成分を機械的に延伸し、延伸によって発現した可撓性を利用して環状、或いは円弧状とする。延伸可能なポリマー[C]としてはホモポリアミドとしてラクタム或はアミノカルボン酸より合成されるものと、ジアミンとジカルボン酸、或はそのエステルやハロゲン化物から合成されるで示されるポリアミド(化2)がある。
ただし、上式においてR1、R2、R3は一般にポリメチレン基であり、R1が−(CH2)m−であるものはナイロン(m+1)であり、R2が−(CH2)p−、R3が−(CH2)q−にあるものはナイロン−p・qである。尚、更に第3の単量体を加えた共重合体であっても差し支えない。例えば、本発明で使用できるポリアミドの例としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12等の結晶性ナイロン、および非晶性ナイロン、共重合ナイロン、ブレンド品等が挙げられる。より好適に用いられる低融点ポリアミドであり、当該ポリアミドとしては、例えば融点80〜150℃、酸価10以下、アミン価20以下、分子量4000〜12000のポリアミド共重合体、或いはアルコール可溶性ポリアミドがある。
上記、延伸可能な結合剤成分と反応し得るエポキシオリゴマーを希土類磁石粉末の固定のために使用することもできる。ここで、エポキシ樹脂とは1分子中に2個以上のオキシラン環を有するエポキシオリゴマーと、前記オキシラン環を開環重合し得る所謂硬化剤との混合物である。ここで、架橋密度を高めるためには分子鎖内にもエポキシ基を有するノボラック型エポキシやエピクロルヒドリンとビスフェノール類との縮合物であるジグリシジルエーテル型エポキシが好ましい。
また、上記エポキシオリゴマー、或いは延伸可能な結合剤成分と架橋し得るケミカルコンタクトとしては潜在性硬化剤として知られているジシアンジアミドおよびその誘導体、カルボン酸ジヒドラジド、ジアミノマレオニトリルおよびその誘導体のヒドラジドの群よ
り選ばれた1種または2種以上などを挙げることができる。これ等は一般に有機溶媒に難溶の高融点有機化合物であるが、粒子径を数ないし数十μm以下に調整し、マトリクスを形成する結合剤成分と希土類磁石粉末、或いは他の結合剤構成成分とで構成したグラニュールへの付着力が強いものが好ましい。なお、ジシアンジアミド誘導体としては、例えばo−トリルビグアニド、α−2・5−ジメチルビクアニド、α−ω−ジフェニルビグアニド、5−ヒドロキシブチル−1−ビグアニド、フェニルビグアニド、α−,ω−ジメチルビクアニドなどを挙げることができる。更に、カルボン酸ジヒドラジドとしてはコハク酸ヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、p−アキシ安息香酸ヒドラジドなどを挙げることができる。
以上のようなグラニュール状コンパウンドを図1(a)〜(d)に示したような成形型キャビティ4で圧縮成形する場合、滑りを伴う溶融流動条件下でコンパウンドを圧縮成形する。すると、25MPa以下でも充分に高密度な極異方性ボンド磁石が得られる。滑りを伴う溶融流動の発現は平均粒子径5μm以下のSm2Fe17x(x≒3)、或いはSmCo5系など、単磁区粒子型異方性希土類磁石微粉末でマトリクスを形成する結合剤主成分を増粘することが必要である。
また、本発明にかかる極異方性希土類ボンド磁石の磁石粉末の割合を増すために、平均粒子径50μm以上のNd2Fe14B系希土類磁石粉末を併用することが好ましい。もちろん、平均粒子径50μm以上の2−17SmCo系希土類磁石粉末を併用することもできる。このような平均粒子径50μm以上の希土類磁石粉末はマトリクスを形成する結合剤成分への増粘作用は少ない。したがって、Sm2Fe17x(x≒3)系希土類磁石微粉末とNd2Fe14B系希土類磁石粉末との混合系におけるSm2Fe17x(x≒3)系希土類磁石微粉末の割合を40wt.%以上とすることが好ましい。
上記、本発明にかかるSm2Fe173系希土類磁石微粉末とは、例えば、特開平2−57663号公報に記載される溶解鋳造法、特許第17025441号や特開平9−157803号公報などに開示される還元拡散法より、R−Fe系合金又はR−(Fe、Co)系合金を製造し、これを窒化した後、微粉砕して得られる。微粉砕はジェットミル、振動ボールミル、回転ボールミルなど、公知の技術で実施することができ、フィッシャー平均粒径で1.5μm以下、好ましくは1.2μm以下となるように微粉砕したものを言う。なお、希土類磁石微粉末は、発火防止などハンドリング性を向上させるため、例えば特開昭52−54998号公報、特開昭59−170201号公報、特開昭60−128202号公報、特開平3−211203号公報、特開昭46−7153号公報、特開昭56−55503号公報、特開昭61−154112号公報、特開平3−126801号公報等に開示されているような、湿式ないし乾式処理による徐酸化皮膜を表面に形成することが望ましい。また、特開平5−230501号公報、特開平5−234729号公報、特開平8−143913号公報、特開平7−268632号公報や、日本金属学会講演概要(1996年春期大会、No.446、p184)などに開示されているような金属皮膜を形成する方法や、特公平6−17015号公報、特開平1−234502号公報、特開平4−217024号公報、特開平5−213601号公報、特開平7−326508号公報、特開平8−153613号公報、特開平8−183601号公報等による無機皮膜を形成する方法など、1種以上の表面処理Sm2Fe173微粉末であっても差支えない。
一方、本発明にかかるNd2Fe14B系希土類磁石粉末としては熱間据込加工(Die−Upset)によって準備された平均粒子径50μm以上の多結晶集合型Nd2Fe14B系希土類磁石粉末[例えば、M.Doser,V.Panchanathan,“Pulverizing anisotropic rapidly solidified
Nd−Fe−B materials for bonded magnet”,J.Appl.Phys.70(10),15,(1993)]。HDDR処理(水素分解/
再結合)、すなわち、Nd−Fe(Co)−B系合金のNd2(Fe,Co)14B相の水素化(Hydrogenation,Nd2[Fe,Co]14BHx)、650〜1000(℃)での相分解(Decomposition,NdH2+Fe+ Fe2B)、脱水素(Desorpsion)、再結合(Recombination)する所謂HDDR処理で準備した多結晶集合型Nd2Fe14B粉末などがある[T.Takeshita and R.Nakayama:Proc.of the 10th RE Magnets and Their Applications,Kyoto,Vol.1,551(1989)]。なお、前記希土類磁石粉末の表面を予め光分解したZnなど不活性化処理した希土類−鉄系磁石粉末など[例えば,K.Machida,K.Noguchi,M.Nushimura,Y.Hamaguchi,G.Adachi,Proc.9th Int.Workshop on Rare−Earth Magnets and Ttheir Applications,Sendai,Japan,845(2000)],或いは[K.Machida,Y.Hamaguchi,K.Noguchi,G.Adachi,Digests of the 25th Annual conference on Magnetcs in Japan,28aC−6(2001)]を挙げることもできる。なお、それら多結晶集合型Nd2Fe14B系希土類磁石粉末の4MA/mパルス着磁後の20℃における保磁力HCJは1MA/m以上のものが望ましい。
なお、本発明にかかる極異方性希土類ボンド磁石は1種または2種以上の希土類磁石粉末を特定方向へ配向せしめた異方性グラニュールから成るコンパウンドを用いることもでき。とくに、配向磁界強度1.4MA/m以上で作製した異方性グラニュールから成るコンパウンドを用いると磁石の表面磁束密度を一層高めることができる。また、磁石の形状によっては、本発明にかかるグラニュール状コンパウンドの成形型キャビティへの充填性が低下する場合も考えられる。この場合には、例えば、グラニュール状コンパウンドから作製したグリーンコンパクト、或いはそれを磁化した後に成形型キャビティに装填することもできる。
以上、1.4MA/mのアキシャル配向磁界で作製した磁石の最大エネルギ−積(BH)maxが137kJ/m3以上であるグラニュール状コンパウンドを用いて本発明にかかる環状、円弧状、中空円板状極異方性希土類ボンド磁石とする。すると、多極着磁した磁石の表面磁束密度分布の最大値は等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石の1.4倍以上の値がえられる。この水準は、極異方性フェライトボンド磁石を基準として等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を多極着磁した表面磁束密度最大値の増加比略1.4と同等である。したがって、このような本発明にかかる多極着磁した磁石の1種または2種以上を用いた永久磁石型直流モータ、ブラシレスモ−タ、ステッピングモータとする。
すなわち、1980年代後半から1990年代にかけて、多極着磁した等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石がフェライト磁石に代り、高性能永久磁石型モータに広く貢献したように、等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石に代り、本発明にかかる多極着磁した磁石が今後の永久磁石型モータの高性能化に貢献できる。
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。ただし、本発明は実施例によって限定されるものではない。
1.原料およびグラニュール状コンパウンドの調整
本実施例で使用した希土類磁石粉末は、RD(酸化還元)法により作製された平均粒子径3μm、残留磁化Jr=1.28T、保磁力HCJ=0.87MA/m、(BH)max=302kJ/m3のSm2Fe173系希土類磁石微粉末、及びHDDR処理(水素分解
/再結合)によって作製された平均粒子径140μm、残留磁化Jr=1.34T、保磁力HcJ=0.97MA/m、(BH)max=292kJ/m3のNd2Fe14B系希土類磁石粉末(Nd12.3Dy0.3Fe64.7Co12.36.0Ga0.6Zr0.1)を使用した。また、比較例として、メルトスピニング法により作製された厚さ約30μm、平均粒子径150μm、残留磁化Jr=0.83T、保磁力HCJ=0.78MA/m、(BH)max=134kJ/m3の等方性Nd2Fe14B系希土類磁石粉末(商品名MQP−B)を使用した。
一方、本実施例で使用した結合剤の第1の例として軟化点90−100℃のテレフタル酸系不飽和ポリエステルアルキッドのジアリルオルソフタレ−ト20%溶液、重合開始剤としてジクミルパ−オキサイド、滑剤としてペンタエリスリト−ルC17トリエステルを使用した。また、結合剤の第2の例として融点80℃、アミン価20以下のアルコール可溶性ポリアミド、エポキシ当量205〜220g/eq,融点70−76℃のポリグリシジルエーテル−o−クレゾールノボラック型エポキシオリゴマー、並びに平均粒子径3μm、融点80−100℃のイミダゾール誘導体(化3)を使用した。
ただし、式中、R1,R2は水素またはアルキル残基で、例えばヒダントイン化合物1モルと式CH2=CHCOOR′(R′はアルキル)のアクリル酸エステル2モルとの付加物、或は該ヒダントイン1モルと式CH3=C(CH3)COOR′のメタクリル酸エステル1モル並びにアクリ酸エステル1モルとの付加物に抱水ヒドラジンを反応させて得られる。
また、比較例として使用した等方性Nd2Fe14B系希土類磁石粉末(商品名:MQP−B)の結合剤にはエポキシ当量450〜500g/eq、融点65−75℃のジグリシジルエーテルビスフェノールA型エポキシオリゴマー、メチルエチルケトンオキシムでブロックした4−4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートを使用した。
次に、本発明にかかるグラニュール状コンパウンドはSm2Fe173系希土類磁石微粉末とNd2Fe14B系希土類磁石粉末との割合を重量比4:6を基準とし、実施例で示す第1の結合剤である不飽和ポリエステル樹脂の場合には、3wt.%の不飽和ポリエステルアルキド、ジアリルフタレートモノマー、ジクミルパーオキサイドとペンタエリスリト−ルC17トリエステルとを室温で混合したのち、100〜110℃に加熱したロールミルで一括して溶融混錬した。
一方、実施例で示す第2の結合剤では、予めSm2Fe173系希土類磁石微粉末とNd2Fe14B系希土類磁石粉末とを0.5wt%のエポキシオリゴマーで表面被覆し、当該表面被覆粉末と3wt.%のポリアミド粉末とペンタエリスリト−ルC17トリエステル
とを室温で混合したのち、110〜120℃に加熱したロールミルで一括して溶融混合した。ただし、ペンタエリスリト−ルC17トリエステルはマトリクスを形成する結合剤成分100重量部に対して10重量部を基準とした。
次に、室温まで冷却した溶融混錬物を250μm以下に粗粉砕してグラニュールとし、不飽和ポリエステル樹脂を結合剤とした場合は、そのままグラニュール状コンパウンドとした。また、ポリアミド樹脂を結合剤とした場合は粗粉砕したグラニュール100重量部に0.03重量部のイミダゾール誘導体を混合してグラニュール状コンパウンドとした。
比較例としての等方性Nd2Fe14B系希土類磁石粉末の場合には、3wt.%となる量のエポキシオリゴマーとブロックイソシアネートとの有機溶媒溶液を調整後、湿式混合したのち、脱溶媒、粗粉砕して250μm以下のグラニュールとした。次に、当該グラニュール100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム粉末0.5重量部を混合し、グラニュール状コンパウンドとした。
一方、マトリクスを形成する結合剤成分を不飽和ポリエステル樹脂としたグラニュール状コンパウンドを成形型温度120℃、1.4MA/m直交磁界中圧縮成形し、脱磁後に250μm以下のグラニュールに粗粉砕し、配向したグラニュール状コンパウンドを用意した。
上記のような本発明にかかる15〜50MPaの低圧力で圧縮成形可能なグラニュール状コンパウンドを直交磁界中圧縮成形(成形温度150℃、成形圧力50MPa、配向磁界1.5MA/m)し、1辺が8mmの立方体磁石とした。当該磁石を4MA/mでバルス着磁したときの室温における(BH)maxは137kJ/m3、配向したグラニュール状コンパウンドから作製した磁石の(BH)maxは146kJ/m3であった。
図3は、2MA/mの直交磁界中圧縮成形した上記磁石の残留磁化Jrを1とし、規格化した残留磁化の配向磁界依存性を示す特性図である。
図から明らかなように、本発明にかかる磁石は配向磁界約0.88Tで98%以上の配向が可能である。また、予め4MA/mのパルス磁界で本発明にかかるコンパウンドを磁化したとき、0.88Tで約98.5%の配向が得られた。例えば、磁化したコンパウンドを環状成形型キャビティへ均質に充填することは困難な場合がある。その際には必要に応じて適宜タブレットとし、これをそのまま直接、或いは磁化したのちにキャビティに投入することもできる。
2.低圧成形性
図4は直径19mm、高さ約6mmの円柱磁石の密度の成形圧力依存性を示す特性図である。ただし、比較例1の成形温度は20℃、他は全て150℃であり、密度はアルキメデス法により求めた。図において、比較例1は等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を示す。図から明らかなように、磁石粉末を破砕しながら緻密化するため1000MPa近い圧力を要する。
しかしながら、本発明例3のように希土類磁石粉末とマトリクスを形成する結合剤成分、すなわち不飽和ポリエステル、ポリアミドとを一括して溶融混練し、溶融流動性が発現する150℃付近で圧縮すると50MPa以下の低圧力で、1000MPaで圧縮した比較例1と同等の密度の磁石が得られる。
なお、図中、比較例2は希土類磁石粉末とポリアミドと溶融混練せずに、乾式混合したものである。すなわち、低圧成形性を確保するには溶融混練が必須である。また、マトリ
クスを形成する結合剤成分とSm2Fe173系希土類磁石微粉末との親和性が乏しく、当該微粉末が増粘剤として作用しない場合には比較例2のようになり、本発明にかかる低圧成形性は得られない。
なお、図中の本発明例1,2のようにマトリクスを形成する結合剤成分、すなわち不飽和ポリエステル、ポリアミドなどと共にペンタエリスリトールC17トリエステルを希土類−鉄系磁石粉末と一括して溶融混練すると、滑りを伴う溶融流動の発現によって、とくに25MPa以下の圧力で圧縮成形した磁石の密度が大きく改善される。その結果、15〜50MPaの低圧力で高い密度の本発明にかかる磁石が得られる
3.極異方性希土類ボンド磁石の作製とそれらの比較
配向磁界発生源としての永久磁石は20℃における残留磁化Jr=1.15T、保磁力HCJ=2.5MA/m、(BH)max=255kJ/m3のNd2Fe14B系希土類磁石、軟磁性材料はB50=2.28TのFe−Co−V合金、非磁性部材はSUS304を使用した反発磁気回路のモールドダイ(内径41mm、外計90mm)、並びに直径37mmの非磁性コアで構成した図2(a)のような環状成形型キャビティをもつ圧縮成形型を用意した。なお、磁極数は14、配向磁界は磁極中心部分から1mm、圧縮方向中央部分のキャビティ空間で0.94Tであった。
マトリクスを形成する結合剤成分を不飽和ポリエステル樹脂としたグラニュール状コンパウンドを150℃に加熱した成形型キャビティに充填した。すると、コンパウンドは成形型からの熱伝導で軟化溶融し、熱と磁気とで崩壊しすると同時に配向磁界に沿って再配列した。崩壊と再配列とを目視確認したのち、一対の非磁性パンチをキャビティに挿入し、圧力15MPaで圧縮成形を行なった。この場合は圧力保持時間を約80secとすると、結合剤成分のラジカル重合硬化は完了した。
次に、成形型キャビティから本発明にかかるリジッドな環状の極異方性希土類ボンド磁石を離型し、室温まで冷却した。得られた本発明例4にかかる外径41mm、内径37mm、高さ約5mm、極間距離9.2mmの磁石の密度をアルキメデス法により測定したところ、5.97Mg/m3であった。この値は直径19mm、高さ約6mmの円柱磁石の密度6.0Mg/m3の99.5%であり、薄肉環状磁石の圧縮成形においても低圧成形性を有する。
一方、予め配向したグラニュール状コンパウンドを用いて本発明例5となる極異方性希土類ボンド磁石を圧縮成形した。密度は本発明例3と略同じであった。
別に、比較例としてSKD−11を用いた圧縮成形型で1000MPaで圧縮した密度5.85Mg/m3、(BH)max72kJ/m3の等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石(比較例1)、直交磁界射出成形で(BH)max96kJ/m3のSm2Fe173/12−PA(ポリアミド)射出成形用ペレットを250μm以下のグラニュールとし、240℃に加熱後、成形型に充填し、800MPaで圧縮しながら100℃以下まで冷却した密度4.80Mg/m3の極異方性Sm2Fe173系希土類ボンド磁石(比較例3)、密度5.0Mg/m3、(BH)max31kJ/m3の極異方性フェライト焼結磁石(比較例4)、密度2.6Mg/m3、(BH)max17kJ/m3の極異方性フェライト射出成形ボンド磁石(比較例5)を用意した。ただし、比較例3、4、5は外径23mm、肉厚2mmまたは外径18mm、肉厚1.5mmで極間距離は3〜11mmの範囲である。
以上、本発明例4、5、並びに比較例1、3、4、5の外周面を1000μF、2000V、16kA(2turn/coil)で14極パルス着磁した。その後、当該磁極面と反対面(ここでは内周面)に積層電磁鋼板を配置し、磁極面の表面磁束密度分布を測定
した。
図5はパルス着磁後の表面磁束密度分布の最大値を、もとの磁石の(BH)maxに対してプロットした特性図である。
図から明らかなように、極間距離と磁石の肉厚とがほぼ同一条件下であれば、極異方性磁石の表面磁束密度の最大値は、概ね当該磁石が有する(BH)maxに依存する。本発明例4、5は希土類磁石粉末を高充填できる低圧圧縮成形による極異方性希土類ボンド磁石であり、何れの比較例1、3、4、5と同様な正弦波状に近い表面磁束密度分布が得られる。
更に、本発明例4、5を比較例1(等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石)の表面磁束密度最大値と比較すると、1.48から1.62倍に達する。なお、この比は比較例5(極異方性フェライトボンド磁石)を基準とした比較例1(等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石)の表面磁束密度最大値の増加比1.41以上に相当する。
したがって、1980年代後半から1990年代に多極着磁した等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を応用した永久磁石型モータがフェライト磁石に代り、当該モータの高性能化に大きく寄与したケースと同等なインパクトを与えることが期待される。
4.極異方性とラジアル異方性希土類ボンド磁石の作製と比較
配向磁界発生源としての永久磁石は20℃における残留磁化Jr=1.15T、保磁力HCJ=2.5MA/m、(BH)max=255kJ/m3のNd2Fe14B系希土類磁石、軟磁性材料はB50=2.28TのFe−Co−V合金、非磁性部材はSUS304を使用した反発磁気回路の圧縮成形下パンチ(幅15mm、長さ123mm)、並びに非磁性上パンチ(幅15mm、長さ123mm)で構成した図2(d)のような方形成形型キャビティをもつ圧縮成形型を用意した。なお、磁極数は14、配向磁界は磁極中心部分から1mm、圧縮方向中央部分のキャビティ空間で0.90Tであった。
マトリクスを形成する結合剤成分を延伸可能なポリアミドとし、予め150℃、1.4MA/mで配向したグラニュールにイミダゾール誘導体粉末を添加したコンパウンドを180℃に加熱した成形型キャビティに充填した。すると、コンパウンドは成形型からの熱伝導で軟化溶融し、熱と磁気とで崩壊しすると同時に配向磁界に沿って再配列した。崩壊と再配列とを目視確認したのち、非磁性上パンチをキャビティに挿入し、圧力15MPaで圧縮成形を行なった。この場合は圧力保持時間を約10secとし、その後、モールドダイから上下パンチに挟まれた厚さ1.05mmの薄板状磁石を離型した。続いて、希土類磁石粉末に被覆したエポキシオリゴマー、マトリクスを形成するポリアミド、並びにイミダゾール誘導体を180℃で20min硬化した。得られた磁石を100℃に加熱した等速ロールを用いて圧延し、ポリアミド成分を機械的に延伸した。これにより、長さ123mmから128mm、厚さ1mm、密度5.90Mg/m3の磁石とし、直径37mmの積層電磁鋼板に巻きつけ、接着固定し、本発明にかかる極配向希土類ボンド磁石(本発明例6)とした。
一方、上記本発明例6と配向したグラニュール状コンパウンドを150℃、1.4MA/mの平行磁界中、50MPaで圧縮成形し、離型後180℃で20min加熱硬化した。得られた板厚方向に配向した幅15mm、長さ123mmの薄板状異方性希土類ボンド磁石を100℃に加熱した等速ロールを用いて圧延し、ポリアミド成分を機械的に延伸した。次いで、前記磁石を直径37mmの積層電磁鋼板に巻きつけ、接着固定した。このラジアル異方性希土類ボンド磁石(比較例6)とした。
以上、本発明例6、並びに比較例6の外周面を1000μF、2000V、16kA(2turn/coil)で14極パルス着磁した。その後、当該磁極面と反対面(ここでは内周面)に積層電磁鋼板を配置し、磁極面の表面磁束密度分布を測定した。本発明例6は図4で示した本発明例4とほぼ同等の3500mTの表面磁束密度最大値を示し、表面磁束密度分布は正弦波状に近い。一方、比較例6の表面磁束密度最大値は2700mTで磁極中心部分が窪んだ典型的なラジアル異方性磁石の表面磁束密度分布を示した。なお、比較例6の表面磁束密度最大値は図4の比較例1(等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石)の2400mTを基準とすると1.125倍に過ぎない。しかしながら、本発明例6は1.45倍に達する。なお、この比は比較例5(極異方性フェライトボンド磁石)を基準とした比較例1(等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石)の表面磁束密度最大値の増加比1.41以上に相当する。したがって、1980年代後半から1990年代に多極着磁した等方性Nd2Fe14B系希土類ボンド磁石を応用した永久磁石型モータがフェライト磁石に代り、当該モータの高性能化に大きく寄与したケースと同等なインパクトを与えることが期待される。
なお、図6(a)はアウター型磁石ロータを示す。ただし、図において51は内周面を多極着磁した環状磁石、52は回転軸を備えたFeフレームを示している。このようなモータでは図2(a)、(b)に示した非磁性部材3のコア側に配向磁界発生源としての永久磁石を配置する必要がある。しかし、モータの小口径化によって、永久磁石1、或いは永久磁石1とFeまたはFe基合金2とで構成する配向磁界部分の寸法が制約され、充分な配向磁界が得られない場合がある。しかしながら、図6(b)に示す本発明例6のような薄板状の極配向希土類ボンド磁石であれば、図2(d)のように、一対のパンチの片側に配向磁界部分を設ける構成となるため、配向磁界に基づく成形型設計は磁石形状からの寸法上の制約を受けない。このような、本発明にかかる薄板状の極配向希土類ボンド磁石を圧延して可撓性を付与すると、例えばフレーム52に挿入し接着固定することにより図6(a)にかかる永久磁石型モータとすることができる
5.低圧成形と磁気安定性
本発明は低圧圧縮成形によって作製した高(BH)maxの希土類ボンド磁石で、しかも、当該圧縮成形時に、永久磁石を配向磁界発生源とする成形型を用い、磁極中心付近では面に垂直方向、並びに極間では面内周方向に希土類磁石粉末を配向した、所謂Halbach方式の磁化パターンを連続的に付与した磁石、並びに永久磁石型モータである。従って、鉄心との空隙に強い静磁界が得られると共に、当該磁化パターンから磁束密度分布が正弦波状に近い。このため、コギングトルクが要因となるモータ駆動における振動や騒音、或いは位置制御の精度に障害が発生するという課題を抑制できる利点もある。
更に、上記の利点と共に、低圧圧縮成形という本発明にかかる特徴は永久磁石型モータが高温暴露された際の駆動動作安定性に関わる当該磁石の不可逆減磁に代表される磁気安定性にも優れている。例えば、マトリクスを形成する結合剤成分を不飽和ポリエステル樹脂とし、予め配向したグラニュール状コンパウンドを150℃に加熱した成形型キャビティに充填し、1.4MA/mの直交磁界中、50MPaで圧縮成形した7×7×6.7mm(B/μoH=3)、4MA/mパルス着磁後のHCJ1.01MA/m、(BH)max143kJ/m3の異方性希土類ボンド磁石(本発明例7)、同じく600MPaで圧縮成形したHCJ0.98MA/m、(BH)max147kJ/m3の異方性希土類ボンド磁石(比較例7)を用意した。
次いで、図7のように、それらの磁石を4MA/mでパルス着磁し、100℃の高温暴露時間に対する不可逆減磁を比較した。
図7の比較例7で示すように、600MPaで圧縮成形した磁石の1000時間高温暴露後の不可逆減磁は略25%に達しているのに比べ、同じ希土類磁石粉末が含まれるもの
の50MPaで圧縮成形した磁石、本発明例7は僅か7.4%に過ぎない。このように、本発明にかかる50MPa以下の低圧力で圧縮成形した磁石は成形加工における希土類磁石粉末のマイクロクラックの発生や破砕など表面損傷や損壊が抑制されるため、酸化による組織変化に基づく永久劣化分が大きく抑制されるため、高充填した希土類磁石粉末本来の磁気特性を永久磁石型モータに反映させることができる。
本発明の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法は永久磁石型直流モータ、ブラシレスモ−タ、ステッピングモータに用いる極異方性希土類ボンド磁石の製造に有用である。
配向パターンの概念図 配向磁界発生源とする成形型キャビティの概念図 残留磁化の配向磁界依存性を示す特性図 圧力と密度の関係を示す概念図 (BH)maxと極配向磁石の表面磁束密度の関係を示す概念図 モータへの適用例を示す磁石の概念図 高温暴露時間に対する不可逆減磁の特性図
符号の説明
1 永久磁石
2 FeまたはFe基合金
3 非磁性部材
4 成形型キャビティ
51 内周面を多極着磁した環状磁石
52 回転軸を備えたFeフレーム

Claims (26)

  1. 永久磁石を配向磁界発生源とする成形型キャビティに希土類磁石粉末を主成分とするグラニュール状コンパウンドを充填し、熱と磁気とで軟化、崩壊せしめ、少なくとも面に垂直方向並びに面内周方向に配向せしめながら成形型キャビティの圧力軸方向投影面積15〜50MPaで磁界中圧縮成形した極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  2. 永久磁石とFeまたはFe基合金からなる磁極を交互に組合わせた配向磁界発生源と非磁性部材で構成した環状成形型キャビティを用い、直交磁界中圧縮成形した請求項1記載の環状極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  3. 永久磁石とFeまたはFe基合金からなる磁極を交互に組合わせた配向磁界発生源と非磁性部材で構成した方形または中空円板状の成形型キャビティを用い、平行磁界中圧縮成形した請求項1記載の板状または中空円板状極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  4. 平行磁界中圧縮成形した薄板状極異方性希土類ボンド磁石の結合剤成分を等方的に一軸延伸し、可撓性を付与し、環状に形状変換した請求項1、3記載の環状極異方性極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  5. 平行磁界中圧縮成形した薄板状極異方性希土類ボンド磁石の結合剤成分を非等方的に一軸延伸し、円弧状に形状変換する請求項1、4記載の円弧状極異方性極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  6. 磁極を外周面に配置した構成の請求項1、3、4、5記載の環状または円弧状極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  7. 磁極を内周面に配置した構成の請求項1、3、4、5記載の環状または円弧状極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  8. グラニュール状コンパウンドがマトリクスを形成する結合剤主成分の融点以上で希土類磁石粉末を溶融混練し、粗粉砕したグラニュールと粉体架橋剤とを必須の構成成分とした請求項1記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  9. マトリクスを形成する結合剤主成分を不飽和ポリエステルアルキドのアリル系共重合性単量体溶液とした請求項1、2、3、8記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  10. 結合剤の主成分をジアリルフタレ−トプレポリマ−のアリル系共重合性単量体溶液とした請求項1、2、3、8記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  11. マトリクスを形成する結合剤主成分を機械的延伸可能なポリマーとした請求項1、3、4、5記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  12. マトリクスを形成する結合剤主成分と化学結合し得るオリゴマーで表面処理した希土類磁石粉末を用いた請求項1、8、11記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  13. 希土類磁石粉末を溶融混練する際、前記コンパウンドの滑りを伴う溶融流動を発現せしめる滑剤をインテグラルブレンドした請求項1、8、9、10、11、12記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  14. 滑剤をペンタエリスリトールステアリン酸トリエステルとした請求項1,8、9、10、11、12記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  15. コンパウンドの滑りを伴う溶融流動条件下で圧縮成形する請求項1記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  16. 平均粒子径5μm以下のSm2Fe17Nx(x≒3)系希土類磁石粉末でマトリクスを形成する結合剤主成分を増粘せしめた請求項1、8、9、10、11、12、13、14記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  17. 平均粒子径5μm以下のSmCo5系希土類磁石粉末でマトリクスを形成する結合剤主成分を増粘せしめた請求項1、8、9、10、11、12、13、14記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  18. 平均粒子径50μm以上のNd2Fe14B系希土類磁石粉末で磁石粉末成分を増量せしめた請求項1、16、17記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  19. Sm2Fe17Nx(x≒3)とNd2Fe14B系希土類磁石粉末との混合系におけるSm2Fe17Nx(x≒3)の割合を40wt.%以上とした請求項1,18記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  20. 1種または2種以上の希土類磁石粉末を特定方向へ配向せしめた異方性グラニュールから成るコンパウンドを用いた請求項1記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  21. 配向磁界強度1.4MA/m以上で作製した異方性グラニュールから成るコンパウンドを用いた請求項1、20記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  22. グラニュール状コンパウンドから作製したグリーンコンパクトを成形型キャビティに装填する請求項1記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  23. 磁化したグリーンコンパクトを成形型キャビティに装填する請求項1記載の極異方性希土類ボンド磁石の製造方法。
  24. 1.4MA/mのアキシャル配向磁界で作製した磁石の最大エネルギ−積(BH)maxが137kJ/m3以上であるグラニュール状コンパウンドを用いた請求項1、2、3、4、5記載の環状、円弧状、中空円板状極異方性希土類ボンド磁石の1種または2種以上を用いた永久磁石型直流モータ。
  25. 1.4MA/mのアキシャル配向磁界で作製した磁石の最大エネルギ−積(BH)maxが137kJ/m3以上であるグラニュール状コンパウンドを用いた請求項1、2、3、4、5記載の環状、円弧状、中空円板状極異方性希土類ボンド磁石の1種または2種以上を用いた永久磁石型ブラシレスモ−タ。
  26. 1.4MA/mのアキシャル配向磁界で作製した磁石の最大エネルギ−積(BH)maxが137kJ/m3以上であるグラニュール状コンパウンドを用いた請求項1、2、3、4、5記載の環状、円弧状、中空円板状極異方性希土類ボンド磁石の1種または2種以上を用いた永久磁石型ステッピングモータ。

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