JP7477745B2 - 界磁子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、界磁子の製造方法等に関する。
高性能化や省エネルギー化等を図るため、希土類磁石を用いた電磁機器(電動機等)が多く用いられる。希土類磁石には、希土類磁石粉末を焼結させた焼結磁石と、希土類磁石粉末をバインダ樹脂で結着させたボンド磁石がある。ボンド磁石は焼結磁石よりも、成形性に優れ、形状自由度が大きい。
ボンド磁石には、主に、磁石粉末と熱可塑性樹脂の溶融混合物を筐体等のキャビティ(ロータコアのスロット等)へ射出して一体成形した射出ボンド磁石と、磁石粉末と熱硬化性樹脂の混合物または混練物を、金型や筐体等のキャビティ内で圧縮して成形した圧縮ボンド磁石とがある。圧縮ボンド磁石は、通常、バインダ樹脂に熱硬化性樹脂が用いられるため、射出ボンド磁石よりも耐熱性に優れる。このような圧縮ボンド磁石を起磁源(界磁源)としたロータ(界磁子)に関連する記載が下記の特許文献1にある。
特許第2537636号公報 特許第6025683号公報
特許文献1は、磁性板(電磁鋼板)の積層体からなるロータコアのスロットに、圧縮ボンド磁石を成形したロータ(界磁子)を提案している。その圧縮ボンド磁石は、NdFeB系磁石粉末とエポキシ樹脂(2wt%)を、126トン/cm2(=約1235MPa)で圧縮して成形されている。
特許文献1に記載はないが、通常、スロットにボンド磁石を成形する場合、そのボンド磁石がスロットから脱着しないように、種々の抜止対策がなされる。例えば、スロットの開口を閉塞するカバーを設けたり、積層鋼板やボンド磁石の一部を特殊な係止形状にしたりされる。なお、特許文献2には、圧縮ボンド磁石ではなく射出ボンド磁石を対象とした抜止対策に関する記載がある。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる手法により、界磁源となる圧縮ボンド磁石の脱着等が抑止される界磁子等を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意研究した結果、圧縮ボンド磁石を構成するバインダ樹脂を成形時に鋼板の積層間へ滲出させて固化させることを着想した。そして滲出して固化した層状の樹脂部(突出部)が、圧縮ボンド磁石の積層方向への脱着等を抑止し得ることを実際に確認した。このような成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《界磁子の製造方法》
(1)本発明は、鋼板の積層体からなる筐体と該鋼板の積層方向に延在する積層面に着接した界磁源とを有する界磁子の製造方法であって、該界磁源は、磁石粉末がバインダ樹脂で結着された圧縮ボンド磁石からなり、該圧縮ボンド磁石は、該磁石粉末と該バインダ樹脂からなるボンド磁石原料を加熱しつつ圧縮する成形工程を経て得られ、該成形工程は、該ボンド磁石原料の圧縮力(p)に対する該積層体を該積層方向へ押圧する保持力(f)の比率である圧力比(f/p)を0.05~0.4としてなされる界磁子の製造方法である。
(2)本発明の製造方法では、圧縮ボンド磁石(単に「ボンド磁石」ともいう。)の成形時に、加熱されたボンド磁石原料(単に「原料」ともいう。)へ印加される圧縮力(p)と、積層した鋼板を積層方向へ押圧する保持力(f)とを、所定範囲内で調整している。これにより、成形時に加熱されて溶融または軟化しているバインダ樹脂(単に「樹脂」ともいう。)は、ボンド磁石が着接される積層面(鋼板端面の集合面)側から、鋼板の積層間にできる僅かな隙間へ滲出し得る。滲出した樹脂は、その後、冷却または熱硬化により固化して突出部となる。
突出部は、界磁源となるボンド磁石の本体部分と一体化しており、積層された鋼板に対する多数の係止片として機能する。その結果、ボンド磁石は、単に積層面に着接しているのみならず、多数の突出部により積層方向への移動が積極的に拘束される。こうして本発明によれば、別部材を設けたり、筐体やボンド磁石の一部を特別な形状にしたりするまでもなく、ボンド磁石の積層方向への移動、脱着、脱落等を抑止できる界磁子が得られる。
《界磁子》
本発明は、製造方法に留まらず、界磁子としても把握される。例えば、本発明は、鋼板の積層体からなる筐体と該鋼板の積層方向に延在する積層面に着接した界磁源とを有する界磁子であって、該界磁源は、磁石粉末がバインダ樹脂で結着された圧縮ボンド磁石からなり、該圧縮ボンド磁石は、該バインダ樹脂が該鋼板の積層間へ滲出してできた突出部を有する界磁子でもよい。
界磁子は、例えば、電動機の回転子(ロータ)または固定子(ステータ)である。電動機には、モータのみならず、ジェネレータが含まれる。電動機は、直流電動機でも交流電動機でもよい。界磁子がロータの場合、例えば、筐体はロータコアである。ロータは、インナーロータでもアウターロータでもよい。
《その他》
(1)ボンド磁石は、界磁子(筐体)に応じて、種々の形態をとり得る。例えば、ボンド磁石は、埋込型磁石(IPM:Interior permanent Magnet)でも、表面型磁石(SPM:Surface Permanent Magnet)でもよい。ボンド磁石が着接し得るキャビティの構成面(端部開口を除く)は、その全部が筐体の積層面でもよいし、その一部だけが筐体の積層面でもよい。後者の場合、例えば、キャビティの周側面(例えば外周側面または内周側面)の一部は筐体の積層面で構成され、他部は金型の成形面等で構成される。このようなキャビティにより、例えば、リング状の表面型ボンド磁石(SPM)が形成される。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x~y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a~b」のような範囲を新設し得る。また、特に断らない限り、本明細書でいう「x~yMPa」はxMPa~yMPaを意味する。他の単位系(μm等)についても同様である。
ロータコアへ圧縮ボンド磁石を成形する様子を示す模式断面図である。 圧縮ボンド磁石が一体成形されたロータを示す模式断面図である。 圧縮ボンド磁石の周縁近傍にある鋼板表面(図1BのA視)の一部を示す平面図である。 圧縮ボンド磁石を一体成形したIPM型モータ用ロータの外観写真である。 そのカットモデルの外観写真である。
本明細書中に記載した事項から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を上述した本発明の構成に付加し得る。製造方法に関する構成要素も物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《成形工程》
ボンド磁石原料の圧縮力(p)に対する積層体の保持力(f)の比率である圧力比(f/p)は、例えば、0.05~0.4、0.1~0.35さらには0.15~0.3である。圧力比が過大では、鋼板間へ樹脂が滲出し難くなる。圧力比が過小では、樹脂が積層体外へ漏出し得る。
圧縮力(p)と保持力(f)は、印加荷重を受圧面積で除して算出される平均圧力として求まる。圧縮力なら、原料へ印加する圧縮荷重(成形推力)を、キャビティの横断面積(通常、キャビティの端部にある開口面積)で除して求まる。保持力なら、鋼板の積層体へ印加する押圧荷重(型締め力等)を、その積層体の横断面積(積層体の端部にある鋼板の表側面積)で除して求まる。
保持力は、その加圧方向に交差(直交)する方向に関して、変化(分布)していてもよい。例えば、キャビティの外周縁から所定距離離れた積層体の領域を集中的に押圧すると、その押圧する荷重点付近の面圧は大きく、キャビティの外周縁付近の面圧は小さくなり得る。この場合、溶融等した樹脂は、積層面から滲出し易くなると共に、その滲出範囲が積層面近傍域に制限され得る。なお、樹脂の滲出は、各鋼板に係止した突出部が形成され得る程度で足る。つまり、鋼板間の奥深い領域にまで、樹脂は滲出する必要がない。
ちなみに、圧縮力は、溶融等した樹脂を介して積層面に作用する。このため、原料への圧縮荷重の印加形態に拘わらず、圧縮力は積層面(鋼板の積層間)へ略均一的に作用し得る。
圧縮力は、従来のように高圧でもよいし、例えば、5~50MPaさらには10~40MPa程度の低圧でもよい。圧縮力の低減により、磁石粒子の割れ、キャビティを構成する筐体の変形等が抑制され得る。
圧縮力は成形中に変化してもよい。その場合、少なくとも樹脂の粘度が極小となる付近で、圧力比が上述した範囲内となればよい。
成形工程中の加熱温度は、バインダ樹脂の特性に応じて調整される。加熱温度が過小では、樹脂の軟化または溶融が不十分となり、樹脂は鋼板間へ滲出し難くなる。加熱温度が過大では、磁石粒子の酸化劣化等を招く。バインダ樹脂が熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)の場合なら、加熱温度は、例えば、120~200℃さらには130~170℃とするとよい。
成形工程に配向磁場が印加されてもよい。配向磁場の起磁源として、電磁石の他、希土類永久磁石を用いてもよい。配向磁場の大きさは、例えば、0.5~3Tさらには1~2Tである。配向磁場は、例えば、ボンド磁石原料の圧縮方向に交差(さらには直交)する方向に印加される。なお、配向磁場は、ボンド磁石が成形されるキャビティの内周面における磁束密度である。
《ボンド磁石原料》
ボンド磁石原料は、コンパウンドでも、コンパウンドの予成形体でもよい。
コンパウンドは、磁石粉末とバインダ樹脂を、混合または混練(「混合等」という。)した顆粒からなる。混合等は、少なくともバインダ樹脂が軟化する温度(軟化点)以上でなされるとよい。バインダ樹脂に熱硬化性樹脂が含まれるとき、その熱硬化性樹脂が急激に硬化する温度未満の温度で混合等がなされるとよい。バインダ樹脂(特に熱硬化性樹脂)の種類や配合にも依るが、その温度は、例えば、40~120℃さらには80~100℃である。
ボンド磁石原料は、磁石粒子にクラック等の損傷が生じ難い条件下で、混合されるとよい。具体的にいうと、磁石粉末とバインダ樹脂は、加圧力(せん断応力)があまり作用しない状況で混合されるとよい。例えば、バッチ式の混練機を用いる場合、先ず、その処理槽への原料(磁石粉末とバインダ樹脂)の投入量を、その処理容積全体に対して10~75%さらには30~65%とする。次に、その原料を加圧しない状態でブレードを回転させて加熱混合するとよい。
予成形体は、上述したコンパウンドを所定の形態(形状、大きさ)にしたブロックからなる。予成形体は、ボンド磁石に類似した形態であると、キャビティへ効率的に収容(投入)できる。予成形体は、ボンド磁石に非類似な形態でもよい。例えば、キャビティに充填、装填等できる範囲内で、細分化された分割体(ペレット等)でもよい。この場合、ボンド磁石毎に専用の予成形体を用意する必要がなく、予成形体の汎用性が高まる。
予成形(工程)も、磁石粒子にクラック等の損傷が生じ難い条件下でなされるとよい。例えば、コンパウンドを2MPa以下さらには0.5MPa以下で加圧して予成形体を得るとよい。理論密度(ρ)に対する実密度(ρ)の比である予成形体の相対密度(ρ/ρ)は、例えば、40~75%さらには55~70%である。理論密度は、磁石粉末とバインダ樹脂に係る各真密度と配合量から求まる。
予成形は、通常、ボンド磁石を圧縮成形するキャビティとは別に設けたキャビティへ、充填したコンパウンドを加圧してなされる。このときの温度(予成形温度)は、常温でもよいし、例えば、40~100℃さらには60~90℃程度に加熱してなされてもよい。なお、本明細書でいう温度(混合温度、予成形温度、成形温度等)は、原料が接するキャビティまたは容体の壁面(近傍)温度である。
《磁石粉末》
磁石粉末は、例えば、ボンド磁石原料(ボンド磁石)の全体(磁石粉末とバインダ樹脂の合計)に対して、例えば、60~80体積%、65~75体積%さらには68~73体積%含まれるとよい。磁石粉末が過少ではボンド磁石の磁気特性が低下し、磁石粉末が過多になると、配向度または密度が低下し得る。
磁石粉末は、単種の粉末でも、複数種の粉末の混合粉末でもよい。混合粉末は、例えば、形態(特に粒径)、成分組成または磁気特性(不可逆減磁性を含む)の少なくともいずれかが異なる粉末からなるとよい。磁石粉末は、等方性磁石粉末でも、異方性磁石粉末(粒子)でも、それらの混合粉末でもよい。磁石粉末が異方性磁石粉末を含む場合、配向磁場中で成形されると、高磁気特性なボンド磁石、ひいては高性能な界磁子が得られる。
磁石粉末の一例として、平均粒径の異なる粗粉末と微粉末を含む混合粉末がある。粗粉末の平均粒径は、例えば、40~200μmさらには80~160μmである。微粉末の平均粒径は、例えば、1~10μmさらには2~6μmである。本明細書でいう平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置(日本レーザー製 HELOS)で測定して定まる。
粗粉末と微粉末の合計(または磁石粉末全体)に対する粗粉末の体積割合は、例えば、60~90体積%さらには75~85体積%である。換言すると、その合計に対する微粉末の体積割合は、例えば、10~40体積%さらには15~25体積%である。
粗粉末と微粉末の各粒径や割合、ボンド磁石原料(ボンド磁石)全体に対する磁石量(樹脂量)を所定範囲内とすると、低圧成形したときでも、高密度なボンド磁石が得られる。
磁石粉末には、例えば、水素処理された希土類異方性磁石粉末が用いられる。水素処理は、主に、吸水素による不均化反応(Hydrogenation-Disproportionation/単に「HD反応」ともいう。)と、脱水素による再結合反応(Desorption-Recombination/単に「DR反応」ともいう。)を伴う。HD反応とDR反応を併せて単に「HDDR反応」という。また、HDDR反応を生じる水素処理を、単に「HDDR(処理)」という。
なお、本明細書でいうHDDRには、特に断らない限り、改良型であるd―HDDR(dynamic-Hydrogenation-Disproportionation-Desorption-Recombination)も含まれる。d―HDDRについては、例えば、国際公開公報(WO2004/064085)等で詳述されている。
粗粉末の一例として、NdとFeとBを基成分とするNdFeB系異方性磁石粉末がある。微粉末の一例として、SmとFeとNを基成分とするSmFeN系異方性磁石粉末またはSmとCoを基成分とするSmCo系異方性磁石粉末がある。微粉末(一部)として、粒度調整がされたNdFeB系異方性磁石粉末を用いてもよい。
磁石粉末は、希土類異方性磁石粉末と共に、希土類等方性磁石粉末やフェライト磁石粉末等を磁石粉末の一部として含んでもよい。なお、本明細書でいう基成分は、必須成分または主成分と換言できる。基成分となる元素の合計量は、通常、対象物(磁石粒子)全体に対して80原子%以上さらには90原子%以上である。なお、希土類磁石粉末は、その保磁力や耐熱性等を高める元素(Dy、Tb等の重希土類元素、Cu、Al、Co、Nb等)を含んでもよい。
《バインダ樹脂》
バインダ樹脂は、熱可塑性樹脂でも、熱硬化性樹脂でも、それら両方の樹脂を含んでもよい。圧縮ボンド磁石には、通常、バインダ樹脂(少なくとも一部)として熱硬化性樹脂が用いられる。
熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂 、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。代表的なエポキシ樹脂は、通常、プレポリマーと硬化剤の混合物であり、エポキシ基による架橋ネットワーク化により硬化する。エポキシ樹脂のプレポリマーとして、例えば、ノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、脂肪族型、グリシジルアミン型等が用いられる。エポキシ樹脂の硬化剤として、例えば、アミン系、フェノール系、酸無水物系が用いられる。
一液性エポキシ樹脂を用いると、熱硬化時期をキュア処理(熱硬化工程)により調整でき、効率的なバッチ処理等が可能となる。キュア処理は、例えば、成形工程後のボンド磁石を130~250℃さらには150~230℃に加熱してなされる。
ちなみに、各磁石粒子は、使用する樹脂に適した界面活性剤で被覆処理されているとよい。これにより、軟化または溶融した樹脂中における磁石粒子の姿勢変動性、磁石粒子と樹脂との結合性等が向上し得る。この傾向は、配向磁場中で成形する際に顕著である。エポキシ樹脂を用いる場合なら、界面活性剤として、例えば、チタネート系カップリング剤やシラン系カップリング剤を用いるとよい。なお、界面活性剤層の厚さは0.1~2μm程度でよい。
《ボンド磁石》
ボンド磁石は、例えば、相対密度が90%以上、95%以上さらには98%以上であるとよい。相対密度の上限値は、99%さらには100%である。なお、相対密度(ρ/ρ)は、理論密度(ρ)に対する実密度(ρ)の比(百分率)である。理論密度(ρ)は、ボンド磁石を構成する磁石粉末とバインダ樹脂の各真密度とそれらの配合量から求まる。実密度(ρ)は、成形(さらにはキュア処理)したボンド磁石を測定して得られた質量と体積から求まる。体積は、アルキメデス法により求めても、成形体の形状(寸法)から算出してもよい。
ボンド磁石は、キュア処理前またはキュア処理後に、着磁(着磁磁場:2~6T)がなされてもよい。ボンド磁石は、例えば、0.7T以上、0.75T以上さらには0.8T以上という高い残留磁束密度(Br)を発揮し得る。ボンド磁石は、耐熱性または耐久性の指標となる不可逆減磁率(100℃×1000時間後)が、例えば、-3%以内、-2%以内さらには-1.5%以内であるとよい。
《筐体》
筐体は、界磁子の仕様に応じて、所望形状に加工(打抜き等)された鋼板が積層された積層体からなる。各鋼板の固定(積層体の形状維持)は、カシメ、溶着、締結具(例えばネジ)等を用いてなされる。
なお、成形工程は、通常、カシメ等により所定形態を維持した積層体に対してなされる。但し、鋼板の暫定的な積層体に対して成形工程を行った後、鋼板のカシメ等がなされてもよい。
鋼板は軟磁性材からなる。鋼板は、少なくとも一方の表面が絶縁被覆された電磁鋼板であるとよい。軟磁性材は、例えば、ケイ素鋼、合金鋼、純鉄等の鉄基材である。特に、ケイ素鋼からなる電磁鋼板を用いると、鉄損(渦電流損やヒステリシス損)の低減を図れる。
鋼板の厚さは問わないが、通常、0.1~5mmさらには0.3~3mmである。積層枚数も問わないが、通常、5~300枚さらには10~150枚である。
《界磁子》
ボンド磁石を低圧成形すると、キャビティを構成する筐体の変形を抑制できる。これにより、界磁子(筐体)の設計自由度の増大や精度の向上が図られる。このような界磁子の代表例として、電動機(車両駆動用モータ、エアコン、家電製品用モータ等)のロータがある。
[概要]
成形工程と、それにより得られる界磁子の概要を、図1A~図1C(これらを併せて単に「図1」という。)を用いて説明する。なお、本実施例では、電磁鋼板を積層したロータコア(筐体)のスロット(キャビティ)に、圧縮ボンド磁石(界磁源)を成形したIPM型モータ用のロータ(界磁子)を例示しつつ説明する。
図1Aに示すように、所望形状に予め打ち抜かれている多数の電磁鋼板1(単に「鋼板1」という。)を積層し、両端面をかしめて固定した積層体Lを成形型(図略)にセットする。
積層体Lの上端面に押圧荷重Fを印加して、積層体Lに保持力fを作用させる。この積層体Lを、バインダ樹脂の溶融温度まで十分に加熱する。
加熱された積層体LのキャビティCに、ボンド磁石原料M(単に「原料M」という。)を充填する。原料Mは、磁石粉末とバインダ樹脂(熱硬化性樹脂)からなるコンパウンドまたはその予成形体である。その後、配向磁場を印加したキャビティC内の原料Mへ圧縮荷重Pを付与する。こうしてキャビティC内で溶融した原料Mに圧縮力pが作用する。
バインダ樹脂が固化(硬化)すると、キャビティCに圧縮ボンド磁石B(単に「ボンド磁石B」という。)が形成されたロータRが得られる。ロータRは、図1Bに示すように、圧縮ボンド磁石Bの本体から各鋼板1間に延出した層状(薄膜状)の突出部2を有する。突出部2は、キャビティC内で溶融していた樹脂が、キャビティCの内壁1c(積層面)から積層されていた鋼板1間の隙間へ滲出して、固化(または硬化)して形成される。このような樹脂の滲出は、保持力fと圧縮力pが所定の圧力比(f/p)を満たすときに生じる。
ロータRの一部をカットした断面(図1BのA視)を観ると、突出部2は図1Cに示すようになっている。つまり、突出部2は、キャビティCの外周縁に沿った近傍領域に、ボンド磁石Bと一体化して形成されている。
[実験]
ボンド磁石の軸方向への抜出力に及ぼす突出部の影響を評価するため、次のような成形工程と測定を行った。
《成形》
(1)積層体(筐体)とキャビティ
環状(外径:φ85mm×内径:φ75mm)に打ち抜いた電磁鋼板(JFEスチール株式会社製35H440/板厚:0.5mm)を同心円状に40枚積層した。こうして円筒状の積層体(高さ:20.1mm)を形成した。その積層体の中心部に円柱状の金型(外径:φ69mm)を配設して、環状のキャビティ(外径:φ75mm×内径:φ69mm)を形成した。
(2)ボンド磁石原料
磁石粉末として、水素処理(d-HDDR)して製造された粗粉末である市販のNdFeB系異方性磁石粉末(愛知製鋼株式会社製マグファイン/Br:1.28T、iHc:1313kA/m、平均粒径:125μm)と、微粉末である市販のSmFeN系異方性磁石粉末(住友金属鉱山株式会社製SmFeN合金微粉D /Br:1.35T、iHc:875kA/m、平均粒径:3μm)を用意した。
バインダ樹脂として、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(日本化薬株式会社製NC-3000L)を用意した。この樹脂の軟化点は60℃であった。
粗粉末と微粉末を8:2(質量割合/体積割合でもほぼ同様)に秤量した磁石粉末と、バインダ樹脂とを混合したボンド磁石原料を調製した。磁石粉末(粗粉末および微粉末)は、バインダ樹脂との混合物(ボンド磁石原料)全体に対して70体積%(バインダ樹脂:30体積%)とした。
磁石粉末とバインダ樹脂の混合は、ニーダを低速回転(10rpm)させ、非加圧状態で5分間行った。このとき、ニーダの容体を90℃に保持した。こうして、磁石粉末とバインダ樹脂を溶融混合したコンパウンドを得た(溶融混合工程)。
コンパウンドを別の金型のキャビティに充填して加圧し、円筒状(外径:φ74.9mm、内径:φ69.1mm、高さ:30mm)の予成形体を得た(予成形工程)。このとき、金型(キャビティ内壁面)の温度:70~80℃、加圧力:0.1MPaとした。
(3)成形
予成形を既述したキャビティへ装填した(収容工程)。キャビティ内壁面の温度は、成形開始(充填前)から成形終了まで150℃(一定)に保持した。
キャビティ内の原料をパンチで加圧して圧縮成形した。このとき、積層体の保持力(f)とキャビティ内にある原料の圧縮力(p)は表1に示す通りとした。保持力(f)は、積層体の押圧荷重(F)を環状端面の面積で除して求めた。圧縮力(p)は、成形推力(P)をキャビティの環状面積(開口面積)で除して求めた。なお、圧縮成形は、圧縮方向(軸方向)に直交する方向(径方向)へ配向磁場(1.2T)を印加しつつ行った。^
(4)キュア処理
圧縮成形されたボンド磁石を積層体と共に、大気中で150℃×30分間加熱した。これによりバインダ樹脂をほぼ完全に熱硬化した。
《抜出力の測定》
リング状のボンド磁石の軸方向一端面側を円柱状パンチで押圧した。ボンド磁石を積層体から抜き出す際に要した荷重(抜出荷重)を精密万能試験機(オートグラフ)により測定した。抜出最大荷重を積層体とボンド磁石の接触面積(せん断面積)で除して算出した抜出力を表1に併せて示した。
《評価》
表1に示す結果から明らかなように、圧力比(f/p)を所定範囲内として圧縮成形すると、ボンド磁石の抜出力を大幅に高められることがわかった(試料1・2)。なお、圧力比が過小では、溶融した樹脂が積層体の外周面から漏出した(試料C1)。逆に圧力比が過大では、樹脂が積層体の内周面(積層面)から滲出しなかった(試料C2)。
《ロータ》
上述した圧縮成形により、ロータコア(筐体)のスロット(キャビティ)にボンド磁石を一体成形した永久磁石内包型同期モータ(IPM型モータ)のロータ(界磁子)を製作した。その外観を図2Aに示した。
また、そのロータのカットモデルを図2Bに示した。図2Bから明らかなように、鋼板表面上には、ボンド磁石(スロット)の外周縁に沿う約2mm程度の環状域に樹脂痕(突出部)が確認された。ちなみに、上述した圧縮力は比較的小さかったため、ロータの外周縁にある薄肉部でも、殆ど変形は生じていなかった。
Figure 0007477745000001

Claims (9)

  1. 鋼板の積層体からなる筐体と該鋼板の積層方向に延在する積層面に着接した界磁源とを有する界磁子の製造方法であって、
    該界磁源は、磁石粉末がバインダ樹脂で結着された圧縮ボンド磁石からなり、
    該圧縮ボンド磁石は、該磁石粉末と該バインダ樹脂からなるボンド磁石原料全体を加熱しつつ圧縮する成形工程を経て得られ、
    該成形工程は、該ボンド磁石原料の圧縮力(p)に対する、該積層体を該積層方向へ押圧する保持力(f)の比率である圧力比(f/p)を0.05~0.4として、加熱により全体的に溶融または軟化させた該バインダ樹脂の一部を、積層された該鋼板の対面間である積層間へ滲み出させる界磁子の製造方法。
  2. 前記圧縮力は、5~50MPaである請求項1に記載の界磁子の製造方法。
  3. 前記ボンド磁石原料は、前記磁石粉末と前記バインダ樹脂の合計に対する該磁石粉末の体積割合が60~75体積%である請求項1または2に記載の界磁子の製造方法。
  4. 前記磁石粉末は、異方性磁石粉末を含み、
    前記成形工程は、前記ボンド磁石原料へ配向磁場を印可してなされる請求項1~3のいずれかに記載の界磁子の製造方法。
  5. 前記バインダ樹脂は、熱硬化性樹脂を含む請求項1~4のいずれかに記載の界磁子の製造方法。
  6. 前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂である請求項5に記載の界磁子の製造方法。
  7. 前記ボンド磁石原料は、前記積層体に形成された環状のキャビティに充填または収容される請求項1~6のいずれかに記載の界磁子の製造方法。
  8. 鋼板の積層体からなる筐体と該鋼板の積層方向に延在する積層面に着接した界磁源とを有する界磁子であって、
    該界磁源は、磁石粉末がバインダ樹脂で結着された圧縮ボンド磁石からなり、
    該圧縮ボンド磁石は、該バインダ樹脂が、積層された該鋼板の対面間である積層間へ滲出してできた突出部を有する界磁子。
  9. 前記筐体は、ロータコアであり、
    前記圧縮ボンド磁石は、該ロータコアに内包されている請求項8に記載の界磁子。
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