JP2004101772A - 弾性ローラ - Google Patents
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Abstract
【課題】弾性ローラのトナーに対する接触・押圧面を構成する筒状弾性体を高密度し、該弾性体表面に円周方向に沿って均等にスリットを形成することで、トナー搬送用ローラ等に必要とされる低い圧縮永久歪みと、該スリットの形状的作用により発現する高い柔軟性とを併有し、トナー搬送用ローラに好適に使用され得る弾性ローラを提供する。
【解決手段】主原料であるポリオールおよびイソシアネートに対して、発泡剤および整泡剤等の所要の副原料を混合して得たポリウレタン系発泡体の筒状弾性体14に所要長の芯材12を挿通してなる弾性ローラにおいて、該筒状弾性体14の密度を少なくとも60kg/m3以上に設定すると共に、その外周面14aに軸線方向に延在すると共に、軸心を指向する複数のスリット16を形成する。
【選択図】 図1
【解決手段】主原料であるポリオールおよびイソシアネートに対して、発泡剤および整泡剤等の所要の副原料を混合して得たポリウレタン系発泡体の筒状弾性体14に所要長の芯材12を挿通してなる弾性ローラにおいて、該筒状弾性体14の密度を少なくとも60kg/m3以上に設定すると共に、その外周面14aに軸線方向に延在すると共に、軸心を指向する複数のスリット16を形成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、弾性ローラに関し、更に詳細には、コピー機またはレーザープリンタ、殊にカラーのプレーン・ページコピーまたはレーザープリンタ等に代表される電子画像形成機器に好適に使用されるトナー供給ローラ、現像ローラおよびクリーニングローラ等の、所謂トナー搬送用のローラに好適に採用し得る弾性ローラと、該弾性ローラを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子複写機、電子写真機または各種プリンタ等の電子画像形成機器には、トナー供給ローラ、現像ローラおよびクリーニングローラ等の、所謂トナー搬送用のローラが数多く使用されている。前記トナーは、所要の感光体上に電気的に形成される静電潜像に対して、帯電状態で供給されることで該静電潜像を可視化する媒体である。
【0003】
前記電子画像形成機器内においてトナーは、▲1▼電子画像形成毎に、該電子画像形成機器内に備えられているカートリッジの如き所要の貯留ユニットから、前記感光体上に供給される。▲2▼次に供給された前記トナーの大部分は、電子画像の形成に使用されて、紙の如き印刷媒体上に転写され、物理的に押圧されると共に、熱的処理によって溶融・固着される。▲3▼そして、前記感光体上に残留したトナーは、次の画像形成の妨げとならないように該感光体上から除去される。前述の▲1▼、▲2▼および▲3▼の各段階において、前記トナーはトナー供給ローラおよび現像ローラといったトナー搬送用ローラやクリーニングローラにより、効率よく搬送またはクリーニングされるようされている。
【0004】
一方、前述の電子複写機、電子写真機または各種プリンタ等の電子画像形成機器には、最近の高画質化、フルカラー化、省エネルギー化および高速化といった流れへの対応が求められていた。前記高画質化およびフルカラー化に対する対応方法の1つとして、印刷最小単位をより微細なものとする方法がある。前記印刷最小単位の微細化により、高画質化の指標である解像度は、より高くなり、またフルカラー化の指標である色調の向上に影響する少なくとも三原色を共存させ得る領域は、より小さくすることが可能となる。前記電子画像形成機器において、前記印刷最小単位とは、すなわち一粒のトナー粒子である。従って、前述の高画質化およびフルカラー化は、前記トナーの大きさの微小化によって大きな影響を受け、具体的に該トナーの大きさを10μm程度にすることが望まれている。
【0005】
また、前記省エネルギー化および高速化については、静電潜像を形成する前記トナーの印刷媒体上への転写、熱的処理による溶融を、低エネルギーかつ迅速に行ない得るようにすることで達成が可能である。前記トナーの印刷媒体上へ転写・溶融を、低エネルギーかつ迅速に行なうための手段としては、該トナーの低温度での速やかな溶融が考えられ、該トナーの低分子化が最も有効である。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
しかし、前記トナーを10μm程度に微細化させ、かつ低分子化させると、以下の欠点が指摘される。すなわち、これまでのトナーに較べて、▲1▼その大きさがと非常に小さくなってしまうため、従来のトナー搬送用ローラでは好適な搬送が困難となり、印刷ムラおよびバラツキ等が発生して鮮明な印刷が困難となってしまう。また、▲2▼低分子化に伴い、その機械的強度が低下しているため、前記感光体への転写等の際の押圧により物理的に潰れてしまい、▲1▼の場合と同じく、鮮明な印刷が困難となってしまう。更に、▲3▼前述の物理的な変形、すなわち劣化だけでなく、該物理的な劣化に伴って前記トナーの帯電状態が不安定となり、例えば逆帯電による非印刷部分への該トナーが飛翔する、所謂かぶり現象が発生する問題も指摘される。
【0007】
基本的に前述の問題は、前記トナー搬送用ローラの物性を改善することで回避し得る。具体的には、10μm程度のトナーを好適に搬送し得る構造、すなわち微細なセルを有する構造と、機械的強度が低い該トナーを搬送の際に変形させない低硬度、すなわち柔軟性との双方を併有すればよい。前述の微細なセル構造は、前記トナー搬送用ローラを高密度化することで達成が可能である。また、前記トナー搬送用ローラの高密度化によって、鮮明な印刷をなし得るための重要な物性の1つである圧縮永久歪みについても改善が期待できる。一方、前記トナー搬送用ローラの柔軟化は、該ローラの高密度化とは相反する物性であり、その両立は困難であった。
【0008】
前記トナー搬送用ローラの柔軟化と、高密度化とを両立する手段として、該ローラをなす原料に可塑剤を混合する方法や、モノオール成分を混合する方法が考えられる。しかし、前者の可塑剤を混合する方法については、前記トナー搬送用ローラから、該可塑剤がブリードアウトして、所謂トナーフィルミング現象が発生してしまい、トナー搬送が不均一となってしまう。また後者のモノオール成分の混合は、前記圧縮永久歪みを著しく悪化させるものであり、やはり前記トナーの均一な搬送等が阻害され、鮮明な印刷が困難となってしまう。
【0009】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来技術に係る弾性ローラに関して内在していた欠点に鑑み、これを好適に解決すべく提案されたものであって、弾性ローラのトナーに対する接触・押圧面を構成する筒状弾性体を高密度とすると共に、該筒状弾性体の表面に円周方向に沿って均等にスリットを形成、すなわち互いに隣り合う該スリット同士の間隔が一定となるように形成することで、トナー搬送用ローラやクリーニングローラに必要とされる低い圧縮永久歪みと、該スリットの形状的作用により発現する高い柔軟性(低硬度)とを併有し、トナー搬送用ローラに好適に使用され得る弾性ローラを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の発明に係る弾性ローラは、主原料であるポリオールおよびイソシアネートに対して、発泡剤および整泡剤等の所要の副原料を混合して得たポリウレタン系発泡体の筒状弾性体に所要長の芯材を挿通してなる弾性ローラにおいて、
前記筒状弾性体の密度は、少なくとも60kg/m3以上に設定され、
前記筒状弾性体の外周面に、軸線方向に延在すると共に、軸心を指向する複数のスリットを形成したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る弾性ローラにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本願の発明者は、弾性ローラにおいて、トナーを接触・搬送し、押圧する筒状弾性体の密度を少なくとも60kg/m3以上に設定すると共に、該筒状弾性体の表面に円周方向に沿って均等に所定深さのスリットを形成することで、10%以下の良好な圧縮永久歪みと、機械的強度に乏しいトナーを押圧等により潰すことのない良好な柔軟性とを達成する弾性ローラが得られることを知見したものである。また、前記筒状弾性体を前述の高密度とすると共に、製造するに際して使用される発泡剤および整泡剤等を適宜選択することで、そのセル数が少なくとも60個/25mm(1inch)以上であり、微細なトナーを好適に搬送し得る弾性ローラを製造し得ることも併せて知見した。なお、本発明においては、柔軟性を表す指標として、後述([0033])するφ50mmの板状押圧板を使用し、該筒状弾性体が1mm圧縮される際に必要とされる荷重(以下、1mm圧縮荷重と云う)を用いた。
【0012】
本発明の好適な実施例に係る弾性ローラ10は、図1に示す如く、カラーコピー等の電子画像形成機器内部に軸支するため、所要の長さを有する芯材12および所要のセル数を有すると共に、該芯材12の外周に設けられる筒状弾性体14から構成される。前記筒状弾性体14の外周面14aには、該筒状弾性体14の軸線方向に延在すると共に、その軸心を指向する所定深さの複数のスリット16が形成されている。
【0013】
前記芯材12の材質としては、アルミニウムまたはステンレス等の金属或いはABS等の硬質系樹脂が所要の長さとされて好適に使用される。前記材質は、使用される弾性ローラの用途によって決定され、例えば、耐熱性が要求されるような定着ローラ近傍に位置するローラであれば、耐熱性の高い金属等の使用が好ましい。なお、本発明に採用される芯材の形状としては、軽量化等の観点から円筒状が好適であるが、中実の棒状物または角柱等の使用も可能である。
【0014】
前記筒状弾性体14は、電子画像形成機器に組み込まれて使用される際に、実際にトナーを搬送したり、該トナーを現像ローラ等へ転写・押圧するための部材である。そして使用に際して、部位によらず前記トナーを効率的に搬送し得る形状と、該トナーを潰すことのない所定の押圧力で、該トナーを感光体等に転写・押圧し得る柔軟性とを備えている。また、長時間の使用において形状的な欠陥を回避し、良好な該トナー搬送および押圧を達成し得る圧縮永久歪みも備えるように製造される。
【0015】
そして、前記トナーを好適に搬送し得る形状は、前記筒状弾性体14における外周面14aのセル数により達成され、該トナーを好適に転写・押圧する柔軟性は、該外周面14a上に形成されるスリット16により達成される。また弾性ローラ10として、前述の諸物性を長期間に亘って維持し得る圧縮永久歪みは前記筒状弾性体14の密度によって達成される。またその材質としては、主原料であるポリオールおよびイソシアネートの種類等や、発泡剤等の副原料の種類・混合量を変化させることにより、様々な物性を発現し得ると共に、一般的に軽量性、クッション性、耐久性、衝撃吸収性、断熱性、耐熱性および耐薬品性に優れるポリウレタン系発泡体が採用されている。
【0016】
前記筒状弾性体14の理解に資するため、その説明に先立ち、該筒状弾性体14の材質であるポリウレタン系発泡体の製造方法について、以下説明する。前記筒状弾性体14をなすポリウレタン系発泡体は、所要のポリオールおよびイソシアネートを重合反応させることで得られる反応生成物であり、該ポリウレタンとは、ウレタン結合を有するポリマーからなる発泡体を指す。
【0017】
前記水酸基を2個以上有する化合物は、一般にポリオールと呼ばれ、本発明においては、通常使用される縮合重合型ポリエステルポリオール、ε一カプロラクトン等の環状エステルの開環重合により得られるポリエステルポリオール、環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルポリオール、またはこれらの共重合によって得られるポリエーテルエステルポリオール等を使用することができる。
【0018】
一方、前記イソシアネートとしては、通常使用されているイソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、イソシアネート化合物を変性して得られる変性イソシアネートが使用可能であり、また該イソシアネートを2種類以上併用するようにしてもよい。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと云う)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと云う)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、P−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等の脂肪族イソシアネート類が挙げられる。また、その変性体としてはイソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体またはプレポリマー等が挙げられる。この中でも、TDIが製造コストの点で望ましいが、後述([0025])する密度またはセル数を所望の数値とする上で、前述のMDIを選択してもよい。
【0019】
前記副原料としては、通常のポリウレタン系発泡体の製造に使用される重合開始剤としての触媒、発泡剤、整泡剤および架橋剤等が挙げられ、更に必要に応じて鎖延長剤、難燃剤、酸化防止剤、老化防止剤または充填剤等が使用される。例えば鎖延長剤としては、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどの多価アミン等が、前記難燃剤としては、トリス−ジクロロプロピルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール等が夫々挙げられる。
【0020】
前記触媒としては、従来公知の物質を使用することが可能であり、例えばジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N−ジメチルベンジルアミン等の非反応型モノアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、テトラメチルプロパンジアミン、ジメチルアミノエチルモルフォリン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアゾビシクロウンデセン、2−メチル−1,4−ジアゾ(2,2,2)ビシクロオクタン等の非反応型ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン等の非反応型トリアミン、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の反応型アミンまたはこれらの有機酸塩、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、スタナスオクトエート、スタナスオレエート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレエート、オクチル酸鉛等の有機金属化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等の3量化触媒が挙げられる。
【0021】
前記架橋剤としては、従来公知のエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類が挙げられる。
【0022】
前記発泡剤としては、水、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−245faまたはHFC−365mfc等のハロゲン化炭化水素、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の炭化水素類、ノナフロロブチルメチルエーテル、ノナフロロイソブチルメチルエーテル、ノナフロロブチルエチルエーテル、ノナフロロイソブチルエチルエーテル、ペンタフロロエチルメチルエーテルまたはヘプタフロロイソプロピルメチルエーテル等のハイドロフルオロカーボン類或いは液化炭酸ガス等が用いられる。前記整泡剤については、通常の発泡体の製造にて通常使用されている物質が使用可能である。例えば、ジメチルシロキサン系、ポリエーテルジメチルシロキサン系またはフェニルメチルシロキサン系等の各種整泡剤が挙げられる。
【0023】
前記筒状弾性体14の密度は、該弾性体14の全てに影響を与える最も重要な物性の1つであり、本発明においては前述の10%以下の圧縮永久歪みを達成するために、少なくとも60kg/m3以上の密度に設定される。前記密度を、60kg/m3以上とするためには、基本的に主原料であるポリオールおよびイソシアネートを混合することで得られるポリウレタン系樹脂を発泡させる発泡剤等の量を調整して、該発泡の度合い、すなわち発泡倍率を制御すればよい。具体的には、前記発泡倍率を20倍以下とすることで達成される。
【0024】
そして、前記発泡倍率を20倍以下とするために、前記発泡剤の混合量は、ポリオール100重量部に対して、1.0〜2.0重量部の範囲に設定される。この混合量が、1.0重量部未満であると、正常な発泡体とならないため後述([0028])のスリット16を形成しても、所要の柔軟性が達成されない。一方、前記発泡剤の混合量が2.0重量部以上となると、前記発泡倍率が20倍を下回って60kg/m3以上の密度を達成できなくなる。また前記発泡倍率は、主原料の1つであるイソシアネートの混合量を示すイソシアネートインデックスを適宜変更することで制御可能である。具体的には、前記イソシアネートインデックスを100以上に設定することで、前述の発泡倍率20倍は達成される。
【0025】
更に前記密度は、主原料の1つであるイソシアネートとして、MDIを使用することでも向上させ得る。これはMDIが、その分子構造上、ポリウレタン系発泡体を得る主原料の1つであるポリオールとの反応性に富み、更に水との反応性が低いために樹脂化反応が泡化反応に較べて優勢となっており、この優勢な樹脂化により高い、具体的には70kg/m3以上の高密度が達成される。また、MDIの使用により、ミクロ構造的に細かい気泡が多量に発生するため、TDIを原料として得られる発泡体に較べて、後述([0026])するセル数の増加も期待できる。
【0026】
前記トナーを好適に搬送するためには、前記筒状弾性体14を構成する発泡体の緻密さを表すセル数が、少なくとも60個/25mm以上に設定されればよい。このセル数に設定されることで、最近の電子画像形成機器に解像度等を向上させるために好適に使用されている10μm程度のトナーの好適な搬送をなし得る。このセル数が、前述の値を下回ると、充分な量のトナーを搬送できなかったりして、鮮明な印刷がなされなくなってしまう。このセル数の制御は、前記筒状弾性体14の材質であるポリウレタン系発泡体を製造する際に使用される発泡剤・整泡剤の種類によって制御し得る。また、前述([0025])した如く、主原料の1つであるイソシアネートをMDIとすることでも、前記セル数を大きな数値とし得る。なお、このセル数は、前記筒状弾性体14の密度を高めることでも、大きな数値とし得る。
【0027】
前記整泡剤は、ポリオールを100重量部に対して、0.5〜3.0重量部の範囲に設定される。この混合量が、0.5重量部未満であると、高い発泡作用によっても、所謂きめの細かいセルとならず、その結果、セルが大きく、すなわちセル数が減少してしまう。一方、前記整泡剤の混合量が3.0重量部以上となると、発泡時のガスの保持力が過剰となり、その結果、泡化反応により発生するガスが発泡体外部に排出され難く、すなわち発泡性を阻害してしまい、セル数60個/25mm以上とし得なくなると共に、原料コストが嵩むといった問題が顕在化してしまう。
【0028】
前記スリット16は、前記筒状弾性体14が材質的に有する60kg/m3以上の密度より発現してしまう高い硬度を、形状的に緩和して前記外周面14aの柔軟性、ここでは1mm圧縮荷重200g以下を確保するために形成されている。また、前記トナーの押圧には、前記筒状弾性体14の全体には関係がなく、その円周面である前記外周面14a近傍において、1mm圧縮荷重が200g以下に設定されればよい。
【0029】
前記外周面14aの柔軟性は、前記スリット16の形成数の増加に伴って良好となることは、形状的に明らかである。しかし、前記筒状弾性体14を有する弾性ローラ10は、その外周面14aの全体でトナー搬送等の役割を果たすため、その柔軟性が該外周面14aの部位によらず均一であることが必要とされる。このため、前記スリット16が周方向に相互に隣接する間隔は、一定となるように設定されている。
【0030】
このときの間隔としては、1〜7mmの範囲が好適である。この寸法が1mm未満であると、柔軟性を表す1mm圧縮荷重が良好となる一方で、後述する圧縮永久歪みが悪化する問題が生じる。また7mm以上であると、形成された前記スリット16近傍における柔軟性は問題のない水準となるが、図2に示す如く、2つのスリット16,18間で最も該2つのスリット16,18から離れている部位において、所要の柔軟性、すなわち1mm圧縮荷重200g以下を達成できなくなり、前記外周面14aにおける柔軟性の部位差が大きくなり、好適な使用には適さなくなってしまう。この柔軟性の部位による差は、一般には前記1mm圧縮強度の標準偏差で評価され、該標準偏差が7.5(スリット数0のデータから推論)以下となれば、弾性ローラ10として問題のない良好な使用をなし得る。なお前述の標準偏差7.5は、スリット16を全く形成しない場合を基準として設定した。
【0031】
また、前記スリット16の深さは、前記外周面14aから0.5〜3mmの寸法に設定されている。前記スリット16をこの範囲の寸法とすることで、1mm圧縮荷重が200g以下となる柔軟性を達成し得る。この寸法が0.5mm未満であると、前述の間隔でスリット16が形成された場合であっても、1mm圧縮荷重200g以下となる柔軟性を達成し得なくなってしまう。一方3mmを越えると、前記柔軟性はその深さに伴い良化するが、前記弾性ローラ10の使用に伴う回転により加わる応力により、図3に示す如く、千切れる等の形状的な欠陥を発生させる原因となってしまう。
【0032】
なお、前記スリット16の形成により、1mm圧縮荷重200g以下となる柔軟性を発現させる部位は、前記外周面14a近傍だけであり、その内部まで該柔軟性を備える必要はない。しかし、前記密度が90kg/m3以上と高くなり過ぎると、前記圧縮永久歪みは向上する一方で、前記外周面14a近傍においても、所定の柔軟性を確保するために必要とされる前記スリット16の深さ寸法は大きくなってしまう。この場合、前記1mm圧縮荷重を200g以下とするために、必要とされる前記スリット16の深さ寸法が3mmを越えてしまい、その結果、前述した千切れる等の構造欠陥を引き起こす原因となるので、注意が必要である。
【0033】
基本的に本発明で云う柔軟性は、図4に示す方法により硬度として測定される。ここで柔軟性を測定される筒状弾性体14は、該筒状弾性体14に所定の芯材12を挿通し、製品たる弾性ローラ10の形状とされて測定に供される。そして前記筒状弾性体14の部分を、幅50mm幅、厚さ7mmの板状押圧板30にて、速度10mm/minの条件で押圧したときの、1mm圧縮時の荷重(g)を前述の柔軟性として用いている。また、測定ポイントは、前記筒状弾性体14における軸方向の2ヶ所×周方向の90度毎に4ヶ所の計8ヶ所(図4参照)とされ、その平均値が測定値として採用される。そして、1mm圧縮されたときに掛かっている荷重が小さくなる程、高い柔軟性を有しているといえる。
【0034】
また前記スリット16が形成されていない弾性ローラの場合、トナーを供給するローラと、該トナーを供給されるローラとが同方向に摺動的に回動することで、該トナーを移送する仕組みとなっているため、該両ローラの摺動により該トナーの円滑な搬送が阻害されることが知られていた。しかし、本発明に係る如きスリット16を形成した弾性ローラ10の場合、摺動による前述の挙動が低減され、その結果、前記トナーの円滑な供給が達成される効果も期待できる。
【0035】
【実験例】
以下に、本発明に係る弾性ローラをトナー搬送ローラとして使用することを想定し、好適な使用をなし得るか否かを確認すると共に、その際の各物性値を測定した実験例を示す。なお、本発明に係る弾性ローラは、この実験例に限定されるものではない。また、以下の各実験例において製造される弾性ローラは、外径φ5mm×長さ220mmの芯材と、予め別工程で外径φ16mm×長さ200mmとした筒状弾性体とから製造される。
【0036】
(実験1) 密度、セル数、柔軟性および圧縮永久歪みについて
前記筒状弾性体をなすポリウレタン系発泡体を、以下の表1に記載の割合で混合して所定の密度となるようにされた実験例1−1〜1−4として製造した。そして、得られた筒状弾性体について、その密度、セル数、柔軟性および圧縮永久歪みを測定した。なお、使用した各原料および測定方法は、以下に述べる。
【0037】
使用した各原料および測定方法は以下の通りである。
(原料)
・ポリオール:ポリエステルポリオール(商品名 N−101;日本ポリウレタン製)
・イソシアネート:トリレンジイソシアネート(商品名 TDI−65;三井東圧化学製)
・触媒:アミン触媒(商品名 DABCO;三井エアープロダクツ製)
・発泡剤:水道水
・整泡剤:シリコーン整泡剤(商品名 L−532;日本ユニカー製)
(測定方法)
・密度:得られた筒状弾性体の重量を体積で除することで算出した。
・セル数および圧縮永久歪み:JIS K 6400に準拠の方法により算出した。
・柔軟性:前述([0033])の測定方法により算出した。
【0038】
【表1】
【0039】
(実験1の結果)
実験1から得られる結果を上記の表1に併記する。この表1に記載の結果から、発泡剤の混合量をポリオール100重量部に対して、2.2重量部以上とすることで、筒状弾性体の密度を60kg/m3以上となし得ることが確認された。但し、発泡剤が0.9重量部以下では、筒状弾性体を形成し得なかった。そして、筒状弾性体の密度を60kg/m3とすることで、そのセル数および圧縮永久歪みを、夫々60個/25mm以上および10%以下とし得ることも併せて確認した。その一方で、柔軟性を示す1mm圧縮荷重が200gを越えてしまうことも確認された。
【0040】
(実験2) スリットの深さ寸法と、柔軟性との関係について
前記筒状弾性体に対して、表2に示す深さ寸法(スリットの数(間隔)は、8個(6.29mm)と、15個(3.35mm))でスリットを形成した実施例1〜9と、比較例1および2とに係る弾性ローラを製造した。そして、得られた前記弾性ローラについて、柔軟性を表す1mm圧縮荷重を測定し、該弾性ローラを実際のプリンタに組み込んだ状態で印刷用紙を10,000枚通紙した後の状態を目視で確認し、この確認された状態を、○:問題なし、×:表面に千切れ有りで確認した。なお、参考例としてスリットを形成せず、かつ前記実験1において良好な結果を示した実験例1−2の結果を記載した。
【0041】
【表2】
【0042】
(実験2の結果)
実験2から得られる結果を上記の表2に併記する。この表2に記載の結果から、筒状弾性体の外周面に設けられるスリットの深さ寸法は、0.5〜3mmの範囲で1mm圧縮荷重が200g以下で、かつ通常の使用に充分耐久性を有することが確認された。
【0043】
(実験3) スリットの数(スリット間隔)と、柔軟性の標準偏差との関係について
前記筒状弾性体に対して、表3に示す間隔でスリットを形成した実施例10〜16と、比較例3〜7に係る弾性ローラを製造した。そして、得られた前記弾性ローラについて、柔軟性を表す1mm圧縮荷重の標準偏差と、圧縮永久歪み(10%以上を○、10%未満を×として夫々表す)とを測定した。なお、実験2と同様に、参考例としてスリットが形成されず、かつ前記実験1において良好な結果を示した実験例1−2の結果を記載した。
【0044】
【表3】
【0045】
(実験3の結果)
実験3から得られる結果を上記の表3に併記する。この表3に記載の結果から、筒状弾性体の外周面に設けられるスリットの数(スリット間隔)は、φ16mmの場合で8個(6.29mm)〜24個(2.09mm)の範囲で良好な標準偏差となり、かつ10%以上の圧縮永久歪みを有することが確認された。
ことが確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る弾性ローラによれば、弾性ローラのトナーに対する接触・押圧面を構成する筒状弾性体を高密度とすると共に、該筒状弾性体の表面に円周方向に沿って均等にスリットを形成、すなわち互いに隣り合う該スリット同士の間隔が一定となるように形成することで、該筒状弾性体の物性的作用および該スリットの形状的作用を有し、これによりトナー搬送用ローラやクリーニングローラに必要とされる低い圧縮永久歪みと、該スリットの形状的作用により発現する高い柔軟性(低硬度)とを発現し得るふ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る弾性ローラを示す概略斜視図である。
【図2】実施例に係る弾性ローラの外周面におけるスリットの形成が、周方向に相互に隣接する一定の間隔が7mmを越えた場合の該外周面における1mm圧縮荷重の差を概略的に示す説明図である。
【図3】実施例に係る弾性ローラの外周面に形成されるスリットの深さ寸法が、3mmを越えた場合の該外周面の変化を概略的に示す説明図である。
【図4】本発明で1mm圧縮荷重として定義する値を測定する測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
12 芯材
14 筒状弾性体
14a 外周面
16 スリット
【発明の属する技術分野】
この発明は、弾性ローラに関し、更に詳細には、コピー機またはレーザープリンタ、殊にカラーのプレーン・ページコピーまたはレーザープリンタ等に代表される電子画像形成機器に好適に使用されるトナー供給ローラ、現像ローラおよびクリーニングローラ等の、所謂トナー搬送用のローラに好適に採用し得る弾性ローラと、該弾性ローラを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子複写機、電子写真機または各種プリンタ等の電子画像形成機器には、トナー供給ローラ、現像ローラおよびクリーニングローラ等の、所謂トナー搬送用のローラが数多く使用されている。前記トナーは、所要の感光体上に電気的に形成される静電潜像に対して、帯電状態で供給されることで該静電潜像を可視化する媒体である。
【0003】
前記電子画像形成機器内においてトナーは、▲1▼電子画像形成毎に、該電子画像形成機器内に備えられているカートリッジの如き所要の貯留ユニットから、前記感光体上に供給される。▲2▼次に供給された前記トナーの大部分は、電子画像の形成に使用されて、紙の如き印刷媒体上に転写され、物理的に押圧されると共に、熱的処理によって溶融・固着される。▲3▼そして、前記感光体上に残留したトナーは、次の画像形成の妨げとならないように該感光体上から除去される。前述の▲1▼、▲2▼および▲3▼の各段階において、前記トナーはトナー供給ローラおよび現像ローラといったトナー搬送用ローラやクリーニングローラにより、効率よく搬送またはクリーニングされるようされている。
【0004】
一方、前述の電子複写機、電子写真機または各種プリンタ等の電子画像形成機器には、最近の高画質化、フルカラー化、省エネルギー化および高速化といった流れへの対応が求められていた。前記高画質化およびフルカラー化に対する対応方法の1つとして、印刷最小単位をより微細なものとする方法がある。前記印刷最小単位の微細化により、高画質化の指標である解像度は、より高くなり、またフルカラー化の指標である色調の向上に影響する少なくとも三原色を共存させ得る領域は、より小さくすることが可能となる。前記電子画像形成機器において、前記印刷最小単位とは、すなわち一粒のトナー粒子である。従って、前述の高画質化およびフルカラー化は、前記トナーの大きさの微小化によって大きな影響を受け、具体的に該トナーの大きさを10μm程度にすることが望まれている。
【0005】
また、前記省エネルギー化および高速化については、静電潜像を形成する前記トナーの印刷媒体上への転写、熱的処理による溶融を、低エネルギーかつ迅速に行ない得るようにすることで達成が可能である。前記トナーの印刷媒体上へ転写・溶融を、低エネルギーかつ迅速に行なうための手段としては、該トナーの低温度での速やかな溶融が考えられ、該トナーの低分子化が最も有効である。
【0006】
【発明が解決すべき課題】
しかし、前記トナーを10μm程度に微細化させ、かつ低分子化させると、以下の欠点が指摘される。すなわち、これまでのトナーに較べて、▲1▼その大きさがと非常に小さくなってしまうため、従来のトナー搬送用ローラでは好適な搬送が困難となり、印刷ムラおよびバラツキ等が発生して鮮明な印刷が困難となってしまう。また、▲2▼低分子化に伴い、その機械的強度が低下しているため、前記感光体への転写等の際の押圧により物理的に潰れてしまい、▲1▼の場合と同じく、鮮明な印刷が困難となってしまう。更に、▲3▼前述の物理的な変形、すなわち劣化だけでなく、該物理的な劣化に伴って前記トナーの帯電状態が不安定となり、例えば逆帯電による非印刷部分への該トナーが飛翔する、所謂かぶり現象が発生する問題も指摘される。
【0007】
基本的に前述の問題は、前記トナー搬送用ローラの物性を改善することで回避し得る。具体的には、10μm程度のトナーを好適に搬送し得る構造、すなわち微細なセルを有する構造と、機械的強度が低い該トナーを搬送の際に変形させない低硬度、すなわち柔軟性との双方を併有すればよい。前述の微細なセル構造は、前記トナー搬送用ローラを高密度化することで達成が可能である。また、前記トナー搬送用ローラの高密度化によって、鮮明な印刷をなし得るための重要な物性の1つである圧縮永久歪みについても改善が期待できる。一方、前記トナー搬送用ローラの柔軟化は、該ローラの高密度化とは相反する物性であり、その両立は困難であった。
【0008】
前記トナー搬送用ローラの柔軟化と、高密度化とを両立する手段として、該ローラをなす原料に可塑剤を混合する方法や、モノオール成分を混合する方法が考えられる。しかし、前者の可塑剤を混合する方法については、前記トナー搬送用ローラから、該可塑剤がブリードアウトして、所謂トナーフィルミング現象が発生してしまい、トナー搬送が不均一となってしまう。また後者のモノオール成分の混合は、前記圧縮永久歪みを著しく悪化させるものであり、やはり前記トナーの均一な搬送等が阻害され、鮮明な印刷が困難となってしまう。
【0009】
【発明の目的】
この発明は、前述した従来技術に係る弾性ローラに関して内在していた欠点に鑑み、これを好適に解決すべく提案されたものであって、弾性ローラのトナーに対する接触・押圧面を構成する筒状弾性体を高密度とすると共に、該筒状弾性体の表面に円周方向に沿って均等にスリットを形成、すなわち互いに隣り合う該スリット同士の間隔が一定となるように形成することで、トナー搬送用ローラやクリーニングローラに必要とされる低い圧縮永久歪みと、該スリットの形状的作用により発現する高い柔軟性(低硬度)とを併有し、トナー搬送用ローラに好適に使用され得る弾性ローラを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の発明に係る弾性ローラは、主原料であるポリオールおよびイソシアネートに対して、発泡剤および整泡剤等の所要の副原料を混合して得たポリウレタン系発泡体の筒状弾性体に所要長の芯材を挿通してなる弾性ローラにおいて、
前記筒状弾性体の密度は、少なくとも60kg/m3以上に設定され、
前記筒状弾性体の外周面に、軸線方向に延在すると共に、軸心を指向する複数のスリットを形成したことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る弾性ローラにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本願の発明者は、弾性ローラにおいて、トナーを接触・搬送し、押圧する筒状弾性体の密度を少なくとも60kg/m3以上に設定すると共に、該筒状弾性体の表面に円周方向に沿って均等に所定深さのスリットを形成することで、10%以下の良好な圧縮永久歪みと、機械的強度に乏しいトナーを押圧等により潰すことのない良好な柔軟性とを達成する弾性ローラが得られることを知見したものである。また、前記筒状弾性体を前述の高密度とすると共に、製造するに際して使用される発泡剤および整泡剤等を適宜選択することで、そのセル数が少なくとも60個/25mm(1inch)以上であり、微細なトナーを好適に搬送し得る弾性ローラを製造し得ることも併せて知見した。なお、本発明においては、柔軟性を表す指標として、後述([0033])するφ50mmの板状押圧板を使用し、該筒状弾性体が1mm圧縮される際に必要とされる荷重(以下、1mm圧縮荷重と云う)を用いた。
【0012】
本発明の好適な実施例に係る弾性ローラ10は、図1に示す如く、カラーコピー等の電子画像形成機器内部に軸支するため、所要の長さを有する芯材12および所要のセル数を有すると共に、該芯材12の外周に設けられる筒状弾性体14から構成される。前記筒状弾性体14の外周面14aには、該筒状弾性体14の軸線方向に延在すると共に、その軸心を指向する所定深さの複数のスリット16が形成されている。
【0013】
前記芯材12の材質としては、アルミニウムまたはステンレス等の金属或いはABS等の硬質系樹脂が所要の長さとされて好適に使用される。前記材質は、使用される弾性ローラの用途によって決定され、例えば、耐熱性が要求されるような定着ローラ近傍に位置するローラであれば、耐熱性の高い金属等の使用が好ましい。なお、本発明に採用される芯材の形状としては、軽量化等の観点から円筒状が好適であるが、中実の棒状物または角柱等の使用も可能である。
【0014】
前記筒状弾性体14は、電子画像形成機器に組み込まれて使用される際に、実際にトナーを搬送したり、該トナーを現像ローラ等へ転写・押圧するための部材である。そして使用に際して、部位によらず前記トナーを効率的に搬送し得る形状と、該トナーを潰すことのない所定の押圧力で、該トナーを感光体等に転写・押圧し得る柔軟性とを備えている。また、長時間の使用において形状的な欠陥を回避し、良好な該トナー搬送および押圧を達成し得る圧縮永久歪みも備えるように製造される。
【0015】
そして、前記トナーを好適に搬送し得る形状は、前記筒状弾性体14における外周面14aのセル数により達成され、該トナーを好適に転写・押圧する柔軟性は、該外周面14a上に形成されるスリット16により達成される。また弾性ローラ10として、前述の諸物性を長期間に亘って維持し得る圧縮永久歪みは前記筒状弾性体14の密度によって達成される。またその材質としては、主原料であるポリオールおよびイソシアネートの種類等や、発泡剤等の副原料の種類・混合量を変化させることにより、様々な物性を発現し得ると共に、一般的に軽量性、クッション性、耐久性、衝撃吸収性、断熱性、耐熱性および耐薬品性に優れるポリウレタン系発泡体が採用されている。
【0016】
前記筒状弾性体14の理解に資するため、その説明に先立ち、該筒状弾性体14の材質であるポリウレタン系発泡体の製造方法について、以下説明する。前記筒状弾性体14をなすポリウレタン系発泡体は、所要のポリオールおよびイソシアネートを重合反応させることで得られる反応生成物であり、該ポリウレタンとは、ウレタン結合を有するポリマーからなる発泡体を指す。
【0017】
前記水酸基を2個以上有する化合物は、一般にポリオールと呼ばれ、本発明においては、通常使用される縮合重合型ポリエステルポリオール、ε一カプロラクトン等の環状エステルの開環重合により得られるポリエステルポリオール、環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルポリオール、またはこれらの共重合によって得られるポリエーテルエステルポリオール等を使用することができる。
【0018】
一方、前記イソシアネートとしては、通常使用されているイソシアネート基を2個以上有する芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、イソシアネート化合物を変性して得られる変性イソシアネートが使用可能であり、また該イソシアネートを2種類以上併用するようにしてもよい。具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIと云う)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと云う)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、P−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等の芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等の脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等の脂肪族イソシアネート類が挙げられる。また、その変性体としてはイソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体またはプレポリマー等が挙げられる。この中でも、TDIが製造コストの点で望ましいが、後述([0025])する密度またはセル数を所望の数値とする上で、前述のMDIを選択してもよい。
【0019】
前記副原料としては、通常のポリウレタン系発泡体の製造に使用される重合開始剤としての触媒、発泡剤、整泡剤および架橋剤等が挙げられ、更に必要に応じて鎖延長剤、難燃剤、酸化防止剤、老化防止剤または充填剤等が使用される。例えば鎖延長剤としては、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどの多価アミン等が、前記難燃剤としては、トリス−ジクロロプロピルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール等が夫々挙げられる。
【0020】
前記触媒としては、従来公知の物質を使用することが可能であり、例えばジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルフォリン、N−エチルモルフォリン、N−ジメチルベンジルアミン等の非反応型モノアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビスジメチルアミノエチルエーテル、テトラメチルプロパンジアミン、ジメチルアミノエチルモルフォリン、テトラメチルエチレンジアミン、ジアゾビシクロウンデセン、2−メチル−1,4−ジアゾ(2,2,2)ビシクロオクタン等の非反応型ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン等の非反応型トリアミン、ジメチルエタノールアミン、N−トリオキシエチレン−N,N−ジメチルアミン、N,N−ジメチル−N−ヘキサノールアミン等の反応型アミンまたはこれらの有機酸塩、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−ブチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、スタナスオクトエート、スタナスオレエート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジマレエート、オクチル酸鉛等の有機金属化合物、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン、酢酸カリウム、オクチル酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等の3量化触媒が挙げられる。
【0021】
前記架橋剤としては、従来公知のエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミノアルコール類が挙げられる。
【0022】
前記発泡剤としては、水、HCFC−141b、HFC−134a、HFC−245faまたはHFC−365mfc等のハロゲン化炭化水素、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の炭化水素類、ノナフロロブチルメチルエーテル、ノナフロロイソブチルメチルエーテル、ノナフロロブチルエチルエーテル、ノナフロロイソブチルエチルエーテル、ペンタフロロエチルメチルエーテルまたはヘプタフロロイソプロピルメチルエーテル等のハイドロフルオロカーボン類或いは液化炭酸ガス等が用いられる。前記整泡剤については、通常の発泡体の製造にて通常使用されている物質が使用可能である。例えば、ジメチルシロキサン系、ポリエーテルジメチルシロキサン系またはフェニルメチルシロキサン系等の各種整泡剤が挙げられる。
【0023】
前記筒状弾性体14の密度は、該弾性体14の全てに影響を与える最も重要な物性の1つであり、本発明においては前述の10%以下の圧縮永久歪みを達成するために、少なくとも60kg/m3以上の密度に設定される。前記密度を、60kg/m3以上とするためには、基本的に主原料であるポリオールおよびイソシアネートを混合することで得られるポリウレタン系樹脂を発泡させる発泡剤等の量を調整して、該発泡の度合い、すなわち発泡倍率を制御すればよい。具体的には、前記発泡倍率を20倍以下とすることで達成される。
【0024】
そして、前記発泡倍率を20倍以下とするために、前記発泡剤の混合量は、ポリオール100重量部に対して、1.0〜2.0重量部の範囲に設定される。この混合量が、1.0重量部未満であると、正常な発泡体とならないため後述([0028])のスリット16を形成しても、所要の柔軟性が達成されない。一方、前記発泡剤の混合量が2.0重量部以上となると、前記発泡倍率が20倍を下回って60kg/m3以上の密度を達成できなくなる。また前記発泡倍率は、主原料の1つであるイソシアネートの混合量を示すイソシアネートインデックスを適宜変更することで制御可能である。具体的には、前記イソシアネートインデックスを100以上に設定することで、前述の発泡倍率20倍は達成される。
【0025】
更に前記密度は、主原料の1つであるイソシアネートとして、MDIを使用することでも向上させ得る。これはMDIが、その分子構造上、ポリウレタン系発泡体を得る主原料の1つであるポリオールとの反応性に富み、更に水との反応性が低いために樹脂化反応が泡化反応に較べて優勢となっており、この優勢な樹脂化により高い、具体的には70kg/m3以上の高密度が達成される。また、MDIの使用により、ミクロ構造的に細かい気泡が多量に発生するため、TDIを原料として得られる発泡体に較べて、後述([0026])するセル数の増加も期待できる。
【0026】
前記トナーを好適に搬送するためには、前記筒状弾性体14を構成する発泡体の緻密さを表すセル数が、少なくとも60個/25mm以上に設定されればよい。このセル数に設定されることで、最近の電子画像形成機器に解像度等を向上させるために好適に使用されている10μm程度のトナーの好適な搬送をなし得る。このセル数が、前述の値を下回ると、充分な量のトナーを搬送できなかったりして、鮮明な印刷がなされなくなってしまう。このセル数の制御は、前記筒状弾性体14の材質であるポリウレタン系発泡体を製造する際に使用される発泡剤・整泡剤の種類によって制御し得る。また、前述([0025])した如く、主原料の1つであるイソシアネートをMDIとすることでも、前記セル数を大きな数値とし得る。なお、このセル数は、前記筒状弾性体14の密度を高めることでも、大きな数値とし得る。
【0027】
前記整泡剤は、ポリオールを100重量部に対して、0.5〜3.0重量部の範囲に設定される。この混合量が、0.5重量部未満であると、高い発泡作用によっても、所謂きめの細かいセルとならず、その結果、セルが大きく、すなわちセル数が減少してしまう。一方、前記整泡剤の混合量が3.0重量部以上となると、発泡時のガスの保持力が過剰となり、その結果、泡化反応により発生するガスが発泡体外部に排出され難く、すなわち発泡性を阻害してしまい、セル数60個/25mm以上とし得なくなると共に、原料コストが嵩むといった問題が顕在化してしまう。
【0028】
前記スリット16は、前記筒状弾性体14が材質的に有する60kg/m3以上の密度より発現してしまう高い硬度を、形状的に緩和して前記外周面14aの柔軟性、ここでは1mm圧縮荷重200g以下を確保するために形成されている。また、前記トナーの押圧には、前記筒状弾性体14の全体には関係がなく、その円周面である前記外周面14a近傍において、1mm圧縮荷重が200g以下に設定されればよい。
【0029】
前記外周面14aの柔軟性は、前記スリット16の形成数の増加に伴って良好となることは、形状的に明らかである。しかし、前記筒状弾性体14を有する弾性ローラ10は、その外周面14aの全体でトナー搬送等の役割を果たすため、その柔軟性が該外周面14aの部位によらず均一であることが必要とされる。このため、前記スリット16が周方向に相互に隣接する間隔は、一定となるように設定されている。
【0030】
このときの間隔としては、1〜7mmの範囲が好適である。この寸法が1mm未満であると、柔軟性を表す1mm圧縮荷重が良好となる一方で、後述する圧縮永久歪みが悪化する問題が生じる。また7mm以上であると、形成された前記スリット16近傍における柔軟性は問題のない水準となるが、図2に示す如く、2つのスリット16,18間で最も該2つのスリット16,18から離れている部位において、所要の柔軟性、すなわち1mm圧縮荷重200g以下を達成できなくなり、前記外周面14aにおける柔軟性の部位差が大きくなり、好適な使用には適さなくなってしまう。この柔軟性の部位による差は、一般には前記1mm圧縮強度の標準偏差で評価され、該標準偏差が7.5(スリット数0のデータから推論)以下となれば、弾性ローラ10として問題のない良好な使用をなし得る。なお前述の標準偏差7.5は、スリット16を全く形成しない場合を基準として設定した。
【0031】
また、前記スリット16の深さは、前記外周面14aから0.5〜3mmの寸法に設定されている。前記スリット16をこの範囲の寸法とすることで、1mm圧縮荷重が200g以下となる柔軟性を達成し得る。この寸法が0.5mm未満であると、前述の間隔でスリット16が形成された場合であっても、1mm圧縮荷重200g以下となる柔軟性を達成し得なくなってしまう。一方3mmを越えると、前記柔軟性はその深さに伴い良化するが、前記弾性ローラ10の使用に伴う回転により加わる応力により、図3に示す如く、千切れる等の形状的な欠陥を発生させる原因となってしまう。
【0032】
なお、前記スリット16の形成により、1mm圧縮荷重200g以下となる柔軟性を発現させる部位は、前記外周面14a近傍だけであり、その内部まで該柔軟性を備える必要はない。しかし、前記密度が90kg/m3以上と高くなり過ぎると、前記圧縮永久歪みは向上する一方で、前記外周面14a近傍においても、所定の柔軟性を確保するために必要とされる前記スリット16の深さ寸法は大きくなってしまう。この場合、前記1mm圧縮荷重を200g以下とするために、必要とされる前記スリット16の深さ寸法が3mmを越えてしまい、その結果、前述した千切れる等の構造欠陥を引き起こす原因となるので、注意が必要である。
【0033】
基本的に本発明で云う柔軟性は、図4に示す方法により硬度として測定される。ここで柔軟性を測定される筒状弾性体14は、該筒状弾性体14に所定の芯材12を挿通し、製品たる弾性ローラ10の形状とされて測定に供される。そして前記筒状弾性体14の部分を、幅50mm幅、厚さ7mmの板状押圧板30にて、速度10mm/minの条件で押圧したときの、1mm圧縮時の荷重(g)を前述の柔軟性として用いている。また、測定ポイントは、前記筒状弾性体14における軸方向の2ヶ所×周方向の90度毎に4ヶ所の計8ヶ所(図4参照)とされ、その平均値が測定値として採用される。そして、1mm圧縮されたときに掛かっている荷重が小さくなる程、高い柔軟性を有しているといえる。
【0034】
また前記スリット16が形成されていない弾性ローラの場合、トナーを供給するローラと、該トナーを供給されるローラとが同方向に摺動的に回動することで、該トナーを移送する仕組みとなっているため、該両ローラの摺動により該トナーの円滑な搬送が阻害されることが知られていた。しかし、本発明に係る如きスリット16を形成した弾性ローラ10の場合、摺動による前述の挙動が低減され、その結果、前記トナーの円滑な供給が達成される効果も期待できる。
【0035】
【実験例】
以下に、本発明に係る弾性ローラをトナー搬送ローラとして使用することを想定し、好適な使用をなし得るか否かを確認すると共に、その際の各物性値を測定した実験例を示す。なお、本発明に係る弾性ローラは、この実験例に限定されるものではない。また、以下の各実験例において製造される弾性ローラは、外径φ5mm×長さ220mmの芯材と、予め別工程で外径φ16mm×長さ200mmとした筒状弾性体とから製造される。
【0036】
(実験1) 密度、セル数、柔軟性および圧縮永久歪みについて
前記筒状弾性体をなすポリウレタン系発泡体を、以下の表1に記載の割合で混合して所定の密度となるようにされた実験例1−1〜1−4として製造した。そして、得られた筒状弾性体について、その密度、セル数、柔軟性および圧縮永久歪みを測定した。なお、使用した各原料および測定方法は、以下に述べる。
【0037】
使用した各原料および測定方法は以下の通りである。
(原料)
・ポリオール:ポリエステルポリオール(商品名 N−101;日本ポリウレタン製)
・イソシアネート:トリレンジイソシアネート(商品名 TDI−65;三井東圧化学製)
・触媒:アミン触媒(商品名 DABCO;三井エアープロダクツ製)
・発泡剤:水道水
・整泡剤:シリコーン整泡剤(商品名 L−532;日本ユニカー製)
(測定方法)
・密度:得られた筒状弾性体の重量を体積で除することで算出した。
・セル数および圧縮永久歪み:JIS K 6400に準拠の方法により算出した。
・柔軟性:前述([0033])の測定方法により算出した。
【0038】
【表1】
【0039】
(実験1の結果)
実験1から得られる結果を上記の表1に併記する。この表1に記載の結果から、発泡剤の混合量をポリオール100重量部に対して、2.2重量部以上とすることで、筒状弾性体の密度を60kg/m3以上となし得ることが確認された。但し、発泡剤が0.9重量部以下では、筒状弾性体を形成し得なかった。そして、筒状弾性体の密度を60kg/m3とすることで、そのセル数および圧縮永久歪みを、夫々60個/25mm以上および10%以下とし得ることも併せて確認した。その一方で、柔軟性を示す1mm圧縮荷重が200gを越えてしまうことも確認された。
【0040】
(実験2) スリットの深さ寸法と、柔軟性との関係について
前記筒状弾性体に対して、表2に示す深さ寸法(スリットの数(間隔)は、8個(6.29mm)と、15個(3.35mm))でスリットを形成した実施例1〜9と、比較例1および2とに係る弾性ローラを製造した。そして、得られた前記弾性ローラについて、柔軟性を表す1mm圧縮荷重を測定し、該弾性ローラを実際のプリンタに組み込んだ状態で印刷用紙を10,000枚通紙した後の状態を目視で確認し、この確認された状態を、○:問題なし、×:表面に千切れ有りで確認した。なお、参考例としてスリットを形成せず、かつ前記実験1において良好な結果を示した実験例1−2の結果を記載した。
【0041】
【表2】
【0042】
(実験2の結果)
実験2から得られる結果を上記の表2に併記する。この表2に記載の結果から、筒状弾性体の外周面に設けられるスリットの深さ寸法は、0.5〜3mmの範囲で1mm圧縮荷重が200g以下で、かつ通常の使用に充分耐久性を有することが確認された。
【0043】
(実験3) スリットの数(スリット間隔)と、柔軟性の標準偏差との関係について
前記筒状弾性体に対して、表3に示す間隔でスリットを形成した実施例10〜16と、比較例3〜7に係る弾性ローラを製造した。そして、得られた前記弾性ローラについて、柔軟性を表す1mm圧縮荷重の標準偏差と、圧縮永久歪み(10%以上を○、10%未満を×として夫々表す)とを測定した。なお、実験2と同様に、参考例としてスリットが形成されず、かつ前記実験1において良好な結果を示した実験例1−2の結果を記載した。
【0044】
【表3】
【0045】
(実験3の結果)
実験3から得られる結果を上記の表3に併記する。この表3に記載の結果から、筒状弾性体の外周面に設けられるスリットの数(スリット間隔)は、φ16mmの場合で8個(6.29mm)〜24個(2.09mm)の範囲で良好な標準偏差となり、かつ10%以上の圧縮永久歪みを有することが確認された。
ことが確認された。
【0046】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係る弾性ローラによれば、弾性ローラのトナーに対する接触・押圧面を構成する筒状弾性体を高密度とすると共に、該筒状弾性体の表面に円周方向に沿って均等にスリットを形成、すなわち互いに隣り合う該スリット同士の間隔が一定となるように形成することで、該筒状弾性体の物性的作用および該スリットの形状的作用を有し、これによりトナー搬送用ローラやクリーニングローラに必要とされる低い圧縮永久歪みと、該スリットの形状的作用により発現する高い柔軟性(低硬度)とを発現し得るふ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る弾性ローラを示す概略斜視図である。
【図2】実施例に係る弾性ローラの外周面におけるスリットの形成が、周方向に相互に隣接する一定の間隔が7mmを越えた場合の該外周面における1mm圧縮荷重の差を概略的に示す説明図である。
【図3】実施例に係る弾性ローラの外周面に形成されるスリットの深さ寸法が、3mmを越えた場合の該外周面の変化を概略的に示す説明図である。
【図4】本発明で1mm圧縮荷重として定義する値を測定する測定方法を示す概略図である。
【符号の説明】
12 芯材
14 筒状弾性体
14a 外周面
16 スリット
Claims (7)
- 主原料であるポリオールおよびイソシアネートに対して、発泡剤および整泡剤等の所要の副原料を混合して得たポリウレタン系発泡体の筒状弾性体(14)に所要長の芯材(12)を挿通してなる弾性ローラにおいて、
前記筒状弾性体(14)の密度は、少なくとも60kg/m3以上に設定され、
前記筒状弾性体(14)の外周面(14a)に、軸線方向に延在すると共に、軸心を指向する複数のスリット(16)を形成した
ことを特徴とする弾性ローラ。 - 前記筒状弾性体(14)は、JIS K 6400に規定される圧縮永久歪みが10%以下に設定される請求項1記載の弾性ローラ。
- 前記筒状弾性体(14)は、芯材(12)を挿通した弾性ローラの状態とし、該ローラの所定部分に幅50mm幅、厚さ7mmの板状押圧板(30)を、速度10mm/minの条件で押圧したときに1mm圧縮される際に必要とされる荷重の平均値が200g以下に設定される請求項1または2記載の弾性ローラ。
- 前記スリット(16)が周方向に相互に隣接する間隔は、一定に設定される請求項1〜3の何れかに記載の弾性ローラ。
- 前記スリット(16)が周方向に相互に隣接する一定の間隔は、1〜7mmに設定される請求項4記載の弾性ローラ。
- 前記スリット(16)の深さは、前記外周面(14a)から0.5〜3mmの寸法に設定される請求項1〜5の何れかに記載の弾性ローラ。
- 前記筒状弾性体(14)のセル数は、少なくとも60個/25mm以上に設定される請求項1〜6の何れかに記載の弾性ローラ。
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2002
- 2002-09-06 JP JP2002262140A patent/JP2004101772A/ja active Pending
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