JP2004098439A - 通電熱転写プリンタ - Google Patents

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内藤 芳一
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Abstract

【課題】リボンフィルムと電極との接触抵抗の変動による画像濃度の変動を防止して、常に安定した濃度で画像を再現できる通電熱転写プリンタを提供する。
【解決手段】本発明は、帰路電極層13と抵抗層15の2層構造を有するリボンフィルム12の帰路電極層13上に熱溶融性インク層32を形成し、抵抗層13に接触させた多数のドット状電極40と帰路電極層13との間で抵抗層15を介して画像信号に応じて通電することにより抵抗層15の通電領域を発熱させ、この熱が帰路電極層13を介して熱溶融性インク層32に伝わって溶融したインクを記録媒体に転写して画像を記録する通電熱転写プリンタであって、抵抗層15に流れる電流を常に安定させるための電流安定化回路50を各ドット状電極40ごとに設けたことを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、通電熱転写プリンタに関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平10−278334号公報
【特許文献2】
実開平4−98145号公報
【0003】
従来、通電熱転写プリンタとして図1に示す構造のものが知られている。この通電熱転写プリンタ10は、エンドレス状のリボンフィルム12を備えている。リボンフィルム12は、駆動ローラ14、テンションローラ16、電極ヘッド18および従動ローラ20によって内面を支持された状態で、駆動ローラ14によって矢印A方向に回転駆動されるようになっている。
【0004】
電極ヘッド18の先端には、リボンフィルム12を挟んでプラテンローラ22が矢印B方向に回転駆動可能に圧接されている。このプラテンローラ22とリボンフィルム12との間を、ガイド24,26に沿って矢印C方向に移動する記録媒体であるペーパPが通過するようになっている。
【0005】
従動ローラ20と駆動ローラ14との間のリボンフィルム12の外面に接触してインクコータ30が配置されている。インクコータ30によってリボンフィルム12の表面に溶融して液状化した熱溶融性インク層が例えば数μmの厚みで均一塗布されるが、この熱溶融性インク層は塗布後の自然冷却または強制冷却によって電極ヘッド18とプラテンローラ22の対向位置に至るまでに固形化するようになっている。
【0006】
図2に示すように、リボンフィルム12は、例えばニッケル薄膜からなる外面の帰路電極層13と例えば導電性ポリイミドからなる内面の抵抗層15との2層構造を有する。熱溶融性インク層32は、上述したようにリボンフィルム12の外面すなわち帰路電極層13上に形成される。帰路電極層13は電源34に電気的に接続されている。
【0007】
リボンフィルム12の内面すなわち抵抗層15の表面に接触する電極ヘッド18の先端には、例えば400dpiの密度で多数のドット状電極40が配列されている(図2では1つのドット状電極40のみ図示する)。各ドット状電極40は、トランジスタ42のコレクタおよびエミッタを介してアースに接続されている。トランジスタ42のベースは、制御信号およびパルス状画像信号が入力されるドライブ回路44に電気的に接続されている。
【0008】
以上のような構成からなる通電熱転写プリンタ10では、或る1つのドット状電極40について見ると、ドライブ回路44に画像信号が入力されると、トランジスタ42のベースに所定電圧が印加され、これによりトランジスタ42のコレクタおよびエミッタ間が通電可能な状態になる。その結果、リボンフィルム12において、帰路電極層13から抵抗層15を介してドット状電極40に電流が流れて、抵抗層15の通電領域が発熱する。この熱が帰路電極層13を介して熱溶融性インク層32に伝わり、ドット状電極40にほぼ対応する大きさの領域でインクが溶融する。この溶融したインクがペーパPに転写されてドットが形成される。このようなドットの集合によってペーパPに画像が記録されることなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した通電熱転写プリンタ10では、リボンフィルム12の抵抗層15とこの抵抗層15に当接するドット状電極40との間の接触抵抗が大きく変化する。この接触抵抗の変化は、リボンフィルム12の回転移動に伴って抵抗層15とドット状電極40とが摺動する際に生じる圧力変動や、抵抗層15とドット状電極40との接触状態の経時的変化などに起因するもので、100Ω〜1000Ω程度の範囲で変化する。このような接触抵抗の変化の度合いは、各ドット状電極40によっても異なる。
【0010】
抵抗層15とドット状電極40との間での接触抵抗が変動すると、それに応じて抵抗層15を流れる電流も変化し、抵抗層15での発熱量が異なってくる。このことは、熱溶融性インク層323の溶融状態が均一でなくなることを意味し、画像濃度が変動するという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、リボンフィルムと電極との接触抵抗の変動による画像濃度の変動を防止して、常に安定した濃度で画像を再現できる通電熱転写プリンタを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明は、帰路電極層と抵抗層の2層構造を有するリボンフィルムの前記帰路電極層上にインク層を形成し、前記抵抗層に接触させた多数のドット状電極と前記帰路電極層との間で前記抵抗層を介して画像信号に応じて通電することにより前記抵抗層の通電領域を発熱させ、この熱が前記帰路電極層を介して前記インク層に伝わって溶融または昇華したインクを記録媒体に転写して画像を記録する通電熱転写プリンタであって、前記抵抗層に流れる電流を常に安定させるための電流安定化回路を前記各ドット状電極ごとに設けたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の通電熱転写プリンタにおいて前記電流安定化回路は、電源に接続されたツェナーダイオードを、前記ドット状電極にドレインまたはソースが接続されたFETのゲートに接続して構成されてもよい。
【0014】
また、本発明の通電熱転写プリンタでは、或るドット状電極について、隣接するドット状電極のオン・オフ状態に応じて電圧印加時間を変えるように、画像信号のパルス幅を制御する制御手段を設けてもよい。
【0015】
さらに、本発明の通電熱転写プリンタでは、前記ドット状電極の周囲温度を検出する検出器を設け、前記検出器の検出結果に基づいて前記ドット状電極への電圧印加時間を変えるように画像信号のパルス幅を制御する制御手段を設けてもよい。
【0016】
【発明の効果】
本発明の通電熱転写プリンタによれば、前記抵抗層に流れる電流を常に安定させるための電流安定化回路を前記各ドット状電極ごとに設けたため、抵抗層とドット状電極間の接触抵抗が変化しても抵抗層を流れる電流を一定に保つことができる。これにより、抵抗層の通電領域における発熱量が各ドット状電極間で一定になり、その結果、インク層の溶融状態または昇華状態も各ドット状電極間で均一になるため、常に安定した濃度の画像を得ることができる。
【0017】
また、本発明の通電熱転写プリンタにおいて前記電流安定化回路が、電源に接続されたツェナーダイオードを、前記ドット状電極にドレインまたはソースが接続されたFETのゲートに接続して構成されれば、ドライブ回路は通常トランジスタまたはFETで構成されているため、ドライバICの製造プロセス自体を変更する必要がなく、IC製造時のマスクの変更のみで前記電流安定化回路を形成することができる。これにより、回路構成が複雑にならず、コスト増大を招くこともない。
【0018】
また、本発明の通電熱転写プリンタにおいて、或るドット状電極について、隣接するドット状電極のオン・オフ状態に応じて電圧印加時間を変えるように、画像信号のパルス幅を制御する制御手段を設ければ、隣接するドット状電極による抵抗層の通電発熱がある場合には或るドット状電極による抵抗層の通電発熱量を抑えるように制御することができる。これにより、或るドット状電極により形成されるドットの大径化や高濃度化を抑えることができ、安定した画像濃度が得られる。
【0019】
さらに、本発明の通電熱転写プリンタにおいて、前記ドット状電極の周囲温度を検出する検出器を設け、前記検出器の検出結果に基づいて前記ドット状電極への電圧印加時間を変えるように画像信号のパルス幅を制御する制御手段を設ければ、周囲温度の変化にかかわらず安定した濃度の画像が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
本実施形態の通電熱転写プリンタの概略構成は、図1を参照して上述した通電熱転写プリンタ10と同様であるため、同一部材には同一符号を使用することとしてここでの繰り返しの説明は省略し、前記通電熱転写プリンタ10と異なる点を主として説明する。
【0021】
図3に示すように、本実施形態の通電熱転写プリンタのリボンフィルム12もまた、例えばニッケル薄膜からなる外面の帰路電極層13と例えば導電性ポリイミドからなる内面の抵抗層15との2層構造を有する。熱溶融性インク層32は、リボンフィルム12の外面すなわち帰路電極層13上に形成される。帰路電極層13は電源34に電気的に接続されている。
【0022】
リボンフィルム12の内面すなわち抵抗層15の表面に接触する電極ヘッド18の先端には、例えば400dpiの密度で多数のドット状電極40が整列配置されている(図3では1つのドット状電極40のみ図示する)。各ドット状電極40は、トランジスタ42のコレクタおよびエミッタを介して電流安定化回路50にそれぞれ接続されている。電流安定化回路50は、電源52に抵抗54を介して接続されたツェナーダイオード56を、ドット状電極40にトランジスタ42を介してドレインが接続されたFET58のゲートに接続して構成される。なお、ツェナーダイオード56のアノードおよびFET58のソースは、それぞれアースに接続されている。
【0023】
トランジスタ42のベースは、ドライブ回路44に電気的に接続されている。ドライブ回路44には、CPU(制御手段)46から制御信号およびパルス状画像信号が入力されるようになっている。CPU46には、ドット状電極40の周囲温度を検出する検出器48が接続されている。
【0024】
このような構成を有する本実施形態の通電熱転写プリンタでは、或る1つのドット状電極40について見ると、CPU46からドライブ回路44に画像信号および制御信号が入力されると、トランジスタ42のベースに所定電圧が印加され、これによりトランジスタ42のコレクタおよびエミッタ間が通電可能な状態になる。
【0025】
また、電流安定化回路50では、ツェナーダイオード56によってFET58のゲートに一定の電圧が印加されることにより、FET58のドレインとソース間の電流を一定に保つことができる。これにより、リボンフィルム15が矢印A方向に走行する際に発生する抵抗層15とドット状電極40間の圧力変動や、抵抗層15とドット状電極40の接触状態の経時的変化などに起因して抵抗層15とドット状電極40間の接触抵抗が変化しても、帰路電極層13から抵抗層15を介してドット状電極40に常に安定した一定電流が流れることになる。このことは、電流安定化回路50が各ドット状電極40ごとにそれぞれ設けてあるため、すべてのドット状電極40について同様である。
【0026】
リボンフィルム12では、帰路電極層13から抵抗層15を介してドット状電極40に電流が流れて、抵抗層15の通電領域が発熱する。このときの通電電流は、上述したように電流安定化回路によって常に安定した一定電流に保たれるため、抵抗層15の発熱量が安定する。
【0027】
抵抗層15の通電領域で発生して熱は帰路電極層13を介して熱溶融性インク層32に伝わり、ドット状電極40にほぼ対応する大きさの領域でインクが溶融する。このとき、上述したように抵抗層15の通電領域での発熱量が安定するために、インクの溶融状態が常に均一なものになる。この溶融したインクがペーパPに転写されてドットが形成され、このようなドットの集合によってペーパPに画像が記録されるが、熱溶融性インク層32におけるインク溶融状態が常に均一であるために全ドットについて常に安定した濃度の画像が得られる。
【0028】
このように本実施形態の通電熱転写プリンタによれば、抵抗層15に流れる電流を常に安定させるための電流安定化回路50を各ドット状電極40ごとに設けたため、抵抗層15とドット状電極40間の接触抵抗が変化しても抵抗層15を流れる電流を一定に保つことができる。これにより、抵抗層15の通電領域における発熱量が各ドット状電極40間で一定になり、その結果、熱溶融性インク層32の溶融状態も各ドット状電極40間で均一になるため、常に安定した濃度の画像を得ることができる。
【0029】
また、電流安定化回路50が、電源52に接続されたツェナーダイオード56を、ドット状電極40にドレインが接続されたFET58のゲートに接続して構成されていることで、ドライブ回路は通常トランジスタまたはFETで構成されているため、ドライバICの製造プロセス自体を変更する必要がなく、IC製造時のマスクの変更のみで電流安定化回路50を形成することができる。これにより、回路構成が複雑にならず、コスト増大を招くこともない。
【0030】
また、本実施形態の通電熱転写プリンタでは、或るドット状電極40について、隣接するドット状電極40のオン・オフ状態に応じて電圧印加時間を変えるように、CPU46によって画像信号のパルス幅を制御することができる。このようにすれば、隣接するドット状電極40による抵抗層15の通電発熱がある場合には或るドット状電極40による抵抗層15の通電発熱量を抑えるように制御することができる。これにより、或るドット状電極40により形成されるドットの大径化や高濃度化を抑えることができ、安定した画像濃度が得られる。
【0031】
さらに、本実施形態の通電熱転写プリンタでは、ドット状電極40の周囲温度を検出器48で検出し、その検出結果に基づいてドット状電極40への電圧印加時間を変えるようにCPU46によって画像信号のパルス幅を制御することができる。これにより、周囲温度の変化にかかわらず安定した濃度の画像が得られる。具体的には、室温20℃のときドット状電極40の周囲温度は20〜50℃の範囲で変化するが、検出器48による検出温度が例えば50℃のときの画像信号のパルス幅を20℃のときの画像信号のパルス幅の70%とする。
【0032】
なお、本実施形態の電流安定化回路50はツェナーダイオード56とFET58で構成されるようにしたが、抵抗層15の通電電流を安定化させる手段はこれに限らず、種々の構成を採用することができる。例えば、抵抗層電流を検出する直列抵抗を設けて、その抵抗層電流の変化をドライブ回路44またはCPU46にフィードバックすることにより抵抗層電流を一定にする方式としてもよい。
【0033】
また、本実施形態の通電熱転写プリンタでは、帰路電極層13からドット状電極40に電流を流すようにしたが、これとは逆に、ドット状電極40から帰路電極層13に電流を流すようにドット状電極40側に電源を設けてもよい。この場合には、トランジスタ42のコレクタとエミッタ、および、FET58のドレインとソースのそれぞれの接続関係が逆になる。
【0034】
さらに、本実施形態では熱溶融性インクを用いた通電熱転写プリンタについて説明したが、本発明はリボンフィルムにおける発熱によって昇華する熱昇華性インクをリボンフィルム上に層状に形成または塗布した通電熱転写プリンタにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】通電熱転写プリンタの概略構成図。
【図2】従来の電圧印加回路を示す図。
【図3】本実施形態の電圧印加回路を示す図。
【符号の説明】
10…通電熱転写プリンタ、12…リボンフィルム、13…帰路電極、15…抵抗層、18…電極ヘッド、30…インクコータ、32…熱溶融性インク層、40…ドット状電極、44…ドライブ回路、46…CPU(制御手段)、48…検出器、50…電流安定化回路、52…電源、54…抵抗、56…ツェナーダイオード、58…FET。

Claims (4)

  1. 帰路電極層と抵抗層の2層構造を有するリボンフィルムの前記帰路電極層上にインク層を形成し、前記抵抗層に接触させた多数のドット状電極と前記帰路電極層との間で前記抵抗層を介して画像信号に応じて通電することにより前記抵抗層の通電領域を発熱させ、この熱が前記帰路電極層を介して前記インク層に伝わって溶融または昇華したインクを記録媒体に転写して画像を記録する通電熱転写プリンタであって、前記抵抗層に流れる電流を常に安定させるための電流安定化回路を前記各ドット状電極ごとに設けたことを特徴とする通電熱転写プリンタ。
  2. 前記電流安定化回路は、電源に接続されたツェナーダイオードを、前記ドット状電極にドレインまたはソースが接続されたFETのゲートに接続して構成されることを特徴とする請求項1に記載の通電熱転写プリンタ。
  3. 或るドット状電極について、隣接するドット状電極のオン・オフ状態に応じて電圧印加時間を変えるように、画像信号のパルス幅を制御する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の通電熱転写プリンタ。
  4. 前記ドット状電極の周囲温度を検出する検出器を設け、前記検出器の検出結果に基づいて前記ドット状電極への電圧印加時間を変えるように画像信号のパルス幅を制御する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通電熱転写プリンタ。
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