JP2004093058A - 流動床焼却炉 - Google Patents

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竹田 航哉
Yasuki Matsushita
松下 康樹
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Abstract

【課題】燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁の真下部に形成されていた流動媒体の不動部を無くして、熱の移動を円滑に行う。
【解決手段】流動層52を備えた室を、下側のみが連通している隔壁54、並びに上側及び下側が連通している隔壁56で、供給された燃料の燃焼が行われる燃焼セル58と、収熱セルに流動媒体を流入させる循環セル60と、熱回収部を設けた収熱セル62との少なくとも3室に区分し、燃焼セルと循環セルとの間の下側のみが連通している隔壁54の真下に位置するガス分散板66に、流動化ガスを供給する吹出し部を設ける。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ごみ、RDF(ごみ固形燃料)、産業廃棄物などの可燃物(燃料)を流動層で燃焼させる流動床焼却炉の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、流動層を備えた室を仕切により燃焼セルと収熱セル(熱回収セル)とに区分し、燃焼セルの流動化ガス流速を収熱セルの流動化ガス流速よりも大きくとることにより、燃焼セルの流動物質(流動媒体)を仕切の上側通路から収熱セルへ流入させ、仕切の下側通路から収熱セルの流動物質を燃焼セルに還流するようにしたごみ等を燃焼・焼却するための流動床炉が知られている。
【0003】
また、特許第2891996号公報には、流動層を備えた室を、上側及び下側にそれぞれ通路が形成されるように第1の仕切部材で燃焼セルと収熱セルとに区分し、燃焼セルの空塔速度が収熱セルの空塔速度より大きくなるように変化させて流動物質(流動媒体)を前記通路を通して循環させる流動層燃焼方法において、第1の仕切部材に近接し、かつ平行に燃焼セル側に第2の仕切部材を設け、この第2の仕切部材の上端、又は第1の仕切部材の上側の通路のさらに上側に設けられ、かつ第2の仕切部材の先端が接続された延長仕切部材の上端を燃焼セルからの流動物質が流入しない程度に高くし、第2の仕切部材の下端を第1の仕切部材の下端よりも高くして、第1の仕切部材と第2の仕切部材との間の間隙の下部近傍に流動化兼移送用ガスを供給して燃焼セルの流動物質を収熱セルに移動させるようにした流動層の仕切方法が記載されている。
しかしながら、このような二重隔壁構造の循環流動床炉では、第1の仕切部材と第2の仕切部材との間の間隙部(循環セル)は、流動媒体が流動するものの、隔壁下部に流動媒体の流動しない部分が山の形で生じ、連通部の熱移動可能な面積を狭めてしまい、燃焼セルからの熱移動が阻害されるという問題があった。
【0004】
また、特開2000−320821号公報には、分割壁の下方のエアノズルが他のエアノズルと吐出方法や吐出速度を異にして、熱媒体(流動媒体)の循環量を変えるようにした流動層燃焼装置が記載されている。この分割壁は隣り合うセルと上下部で連通しているため、媒体の移動はセル間の密度差を駆動力とし、分割壁の下側を流動化させなくても媒体の移動は生じている。
【0005】
また、特許第2721873号公報には、流動層を上部及び下部に開口を有する仕切部材で2つの室に区分し、それぞれの室の空塔速度を変化させて流動物質(流動媒体)を循環させ、流動層内の仕切部材を風箱内の仕切部材から空塔速度の小さい室側にずらして配置している流動床炉が記載されている。しかし、この公報記載の発明の目的は、流動層仕切部材の磨耗低減にあり、熱移動の阻害を防止するためのものではない。
【0006】
図6は、前述の特許第2891996号公報記載の流動床炉と同型の流動床焼却炉を示し、図7は図6において鎖線円で囲まれた部分を拡大したものを示している。
図6において、10は流動層、12は下側のみが連通している隔壁(上記公報における第2の仕切部材)、14は上側及び下側が連通している隔壁(上記公報における第1の仕切部材)、16は燃焼セル、18は循環セル、20は収熱セル、22は伝熱管群からなる熱回収部、24はガス分散板、26は流動化ガス供給ノズル、28、30、32は風箱、34、36は仕切である。
【0007】
図6に示すような構造の流動床焼却炉においては、図7に示すように、燃焼セル16と循環セル18との間の下側のみが連通している隔壁12の下側に、流動しない部分、すなわち不動部38が山の形で生じ、さらにその上側に流動が緩慢な領域40が生じて、連通部42の移動可能な面積を狭めてしまい、燃焼セル16から循環セル18への熱移動が阻害されるという欠点があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このように、流動層内を隔壁により少なくとも3室に区分された流動床焼却炉は、各セルに独立して流動化ガスを供給できるように風箱内は仕切によって区分されているが、その仕切箇所は隔壁の真下部であり、このため、隔壁の真下に位置するガス分散板に流動化ガスを供給するノズルを設置することができなかった。そのため、下側のみが連通している隔壁下部では流動しない媒体が存在し、この不動部が連通部を狭くするため熱の移動を阻害していた。
【0009】
本発明は上記の諸点に鑑みなされたもので、本発明の目的は、燃料を供給して燃焼が行われる燃焼セルと、熱回収部を設けた収熱セルに流動媒体を流入させる循環セルとの間に設けられている下側のみが連通している隔壁の真下に位置するガス分散板又はその付近に、流動化ガスが供給されるノズル又は散気管を設置することにより、隔壁下側の連通部の熱の移動を良好にするようにした流動床焼却炉を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の流動床焼却炉は、流動層を備えた室を、下側のみが連通している隔壁、並びに上側及び下側が連通している隔壁で、供給された燃料の燃焼が行われる燃焼セルと、収熱セルに流動媒体を流入させる循環セルと、熱回収部を設けた収熱セルとの少なくとも3室に区分し、燃焼セルと循環セルとの間の下側のみが連通している隔壁の真下に位置するガス分散板に、流動化ガスを供給する吹出し部を設けて構成されている(図1〜図3参照)。
【0011】
この流動床焼却炉において、吹出し部の風箱が、燃焼セル風箱と共通している構成とする場合がある(図1参照)。また、吹出し部の風箱が、循環セル風箱と共通している構成とする場合がある(図2参照)。さらに、吹出し部の風箱が、独立した風箱であるように構成する場合がある(図3参照)。
【0012】
また、本発明の流動床焼却炉は流動層を備えた室を、下側のみが連通している隔壁、並びに上側及び下側が連通している隔壁で、供給された燃料の燃焼が行われる燃焼セルと、収熱セルに流動媒体を流入させる循環セルと、熱回収部を設けた収熱セルとの少なくとも3室に区分し、燃焼セルと循環セルとの間の下側のみが連通している隔壁の真下に位置するガス分散板の上側又はその近傍に、流動化ガスを供給する散気管を設けたことを特徴としている(図4参照)。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は下記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施することができるものである。図1は、本発明の実施の第1形態による流動床焼却炉を示している。50は炉本体で水冷管構造又は耐火材構造で製作されている。
【0014】
炉本体50内の流動層52を備えた室が、下側のみが連通している隔壁54、並びに上側及び下側が連通している隔壁56で、供給された燃料の燃焼が行われる燃焼セル58と、収熱セルに流動媒体を流入させる循環セル60と、熱回収部64を設けた収熱セル62との3室に区分され、燃焼セルと循環セルとの間の下側のみが連通している隔壁54の真下に位置するガス分散板66に、流動化ガスを供給する吹出し部が設けられている。図1では吹出し部の一例として、流動化ガス供給ノズル68を設けた場合を示している。なお、隔壁54、56は水冷管70を耐火材72で被覆した構造をしている。
【0015】
燃焼セル58に可燃物供給手段から、都市ごみ、RDF、産業廃棄物などの可燃物(燃料)が供給される。燃焼セル58の下側に設けられた風箱74からガス分散板66を介して供給されるガス(例えば空気)によって流動物質(流動媒体)を流動化させて可燃物を燃焼させる。
【0016】
収熱セル62の流動層内には多数の伝熱管76が設けられて、収熱セル62の下側の風箱78からガス分散板80を介して供給されるガス(例えば、空気)によって流動物質が流動化されて伝熱管76によって熱を吸収するように構成されている。伝熱管76は過熱器管、蒸発器管、再熱器管、水冷管等である。流動物質は0.5〜1mm程度の粒子(例えば、珪砂などの砂)で構成され、必要に応じて生石灰、石灰石、ドロマイトなどが脱塩剤又は脱硫剤として供給され、燃焼セルの下側からのガスで流動化開始速度の3〜5倍程度の空塔速度で流動化して可燃物を燃焼させる。
【0017】
燃焼セル58の温度は一般的に550〜900℃程度であり、その目的、例えば脱塩を実施する条件では550〜700℃、脱硫を実施する条件では750〜850℃程度など所定の温度になるように設計、運転される。可燃物の発熱量が高いと燃焼セル58の流動層温度が高くなるので、燃焼によって発生した熱の一部を収熱セル62の伝熱管76で収熱して所定の燃焼温度になるように制御する。
【0018】
収熱セル62の流動層の空塔速度は、流動化開始速度から流動化開始の4倍程度の範囲であり、燃焼セル58から、隔壁56の上側の通路82を通って高温の流動物質が収熱セル62に移動し、伝熱管76によって熱回収され、冷却された流動物質は隔壁56の下側の通路84から循環セル60に循環される。86は循環セルのガス分散板、88は循環セルの風箱、90、92は仕切、94、98、100は流動化ガス供給管、102、106、108は流動化ガス流量調節弁(例えば、ダンパー)で、流動化ガス供給管と流動化ガス流量調節弁とで独立した流動化ガス吹込量調節機構を構成している。
【0019】
燃焼セル58と循環セル60とを区分する隔壁54の上端は、燃焼セル58からの流動物質が循環セル60及び収熱セル62に混入しない程度に高くなっており、この隔壁54の下端は他の隔壁56の下端より高くなっている。すなわち、燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁54の下端は循環セルと収熱セルとを区分する隔壁56下側の通路高さよりも高くなるように開口させている。110は開口である。
【0020】
上記のように、本実施形態では、燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁54の真下部の吹出し部、すなわち隔壁54の真下部の流動化ガス供給ノズル68の風箱が、燃焼セルの風箱74と共通している。なお、流動化ガス供給ノズル68は、キャップ型でもマッシュルーム型でもよい。また、燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁54の下端の形状は、平面でもよく、縦断面半円形等の曲面でもよい。本実施形態では、炉を3室に区分する場合について説明したが、燃焼セル、循環セル及び収熱セルに区分する構造であれば、4室以上に区分する構造の炉にも適用することができる。
【0021】
つぎに、本実施形態による流動床焼却炉の作用について説明する。循環セル60の下部近傍に流動化ガス(例えば、空気)が供給されると、燃焼セル58の流動層の下部の流動物質が矢印で示されるように、隔壁56の上側の通路82を通って収熱セル62に移送される。燃焼セル58の流動層の下部は、ごみ等の可燃分の含有量が少なく、かつ灰分濃度が低いので、流動物質(例えば、珪砂)を主とするものが収熱セル62にスムーズに移動することになる。このため、収熱セル62では、ごみ等の可燃物に含まれる塩素系化合物によるHClの発生はきわめて少なく、伝熱面の腐食は防止され、かつ、灰分中のNa、K、Caなどの化合物によるコーチングも防止される。また、RDFを燃焼させる場合でも、RDFが収熱セルに流入しないので、RDFに含まれるCa化合物によるコーチングを防止することができる。
【0022】
以下に実験例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。まず、図6に示す従来構造の流動床焼却炉を用いて実験を行った。
層内を区分する隔壁12は、主として水冷管を耐火材で覆っている構造であり厚さ100〜150mm程度のものが一般的に用いられる。ここでは、100mmの厚さを持つ隔壁12を用いて、隔壁12下方における燃焼セル16から循環セル18への時間当たりの熱移動について実験を行った。燃焼セル16と循環セル18はそれぞれ流動化ガスの流速を変化させるため、隔壁12中心部の真下にあたる部分に風箱内仕切34を設ける構造とした。この結果、燃焼セル16のノズル26と循環セル18のノズル26との間隔は、それぞれのセル内におけるノズル間隔の2倍近くになった。この時の時間当たりの熱移動量を、図5において破線で示した。これは、不動部分及び流動が緩慢な部分が生じていることを示している。
【0023】
そこで、図1に示す流動床焼却炉のように、隔壁54の真下にノズル68を設置し、同様な条件で実験を行ったところ、不動部分及び緩慢な流動部分がほとんどなくなり、また、時間当たりの熱移動量は図5における実線の通りとなった。なお、図5における破線は隔壁真下からの吹込み無の場合、実線は隔壁真下からの吹込み有の場合である。また、隔壁54の構造及び厚さは、図6の場合と同様であった。
この結果から、隔壁直下から流動化空気を吹き込むことで、燃焼セルからの時間当たりの熱移動量が30%程度上昇することが分かった。時間当たりの熱移動量の増加は熱の無駄を低減化し、燃料(エネルギー)のより効率的な活用を可能にしている。
【0024】
図2は、本発明の実施の第2形態による流動床焼却炉を示している。本実施形態は、燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁54の真下部の吹出し部、すなわち隔壁54の真下部の流動化ガス供給ノズル68の風箱が、循環セルの風箱88と共通するように構成したものである。90a、92は風箱の仕切である。他の構成及び作用は実施の第1形態の場合と同様である。
【0025】
図3は、本発明の実施の第3形態による流動床焼却炉を示している。本実施形態は、燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁54の真下部の吹出し部、すなわち隔壁54の真下部の流動化ガス供給ノズル68の風箱が、他の風箱、すなわち、燃焼セルの風箱74、循環セルの風箱88、収熱セルの風箱78と独立した風箱112であるように構成したものである。独立した風箱112は仕切90、90aで形成されている。他の構成及び作用は実施の第1形態の場合と同様である。
【0026】
図4は、本発明の実施の第4形態による流動床焼却炉を示している。本実施形態は、燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁54の真下部の吹出し部、すなわち隔壁54の真下部のガス分散板の上側又はその近傍に、流動化ガスを供給する散気管114を設けて構成したものである。90b、92は風箱の仕切で、図6に示す従来構造の流動床焼却炉におけるものと同じである。なお、図4においては、隔壁54の下面を縦断面半円形に示しているが、この形状に限定されることなく、平面状のものでも差し支えない。他の構成及び作用は実施の第1形態の場合と同様である。
【0027】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) 燃焼セルと循環セルとを区分する隔壁の真下に位置する部分に流動化ガスを吹き込む構成とすることにより、従来、この部分に形成されていた流動媒体の不動部が無くなり、このため、連通部が広くなって熱の移動を円滑に行うことができる。
(2) 上記(1)により、熱(エネルギー)の無駄を少なくすることができ、熱(エネルギー)を効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態による流動床焼却炉を示す縦断面概略構成図である。
【図2】本発明の実施の第2形態による流動床焼却炉を示す縦断面概略構成図である。
【図3】本発明の実施の第3形態による流動床焼却炉を示す縦断面概略構成図である。
【図4】本発明の実施の第4形態による流動床焼却炉を示す縦断面概略構成図である。
【図5】実験例における流動化ガスの流速と燃焼セルから循環セルへの熱移動量との関係を示すグラフである。
【図6】従来の流動床焼却炉の一例を示す縦断面概略構成図である。
【図7】図6において鎖線円で囲まれた部分の拡大詳細説明図である。
【符号の説明】
50 炉本体
52 流動層
54、56 隔壁
58 燃焼セル
60 循環セル
62 収熱セル
64 熱回収部
66、80、86 ガス分散板
68 流動化ガス供給ノズル
70 水冷管
72 耐火材
74、78、88、112 風箱
76 伝熱管
82、84 通路
90、90a、90b、92 仕切
94、98、100 流動化ガス供給管
102、106、108 流動化ガス流量調節弁
110 開口
114 散気管

Claims (5)

  1. 流動層を備えた室を、下側のみが連通している隔壁、並びに上側及び下側が連通している隔壁で、供給された燃料の燃焼が行われる燃焼セルと、収熱セルに流動媒体を流入させる循環セルと、熱回収部を設けた収熱セルとの少なくとも3室に区分し、燃焼セルと循環セルとの間の下側のみが連通している隔壁の真下に位置するガス分散板に、流動化ガスを供給する吹出し部を設けたことを特徴とする流動床焼却炉。
  2. 吹出し部の風箱が、燃焼セル風箱と共通している請求項1記載の流動床焼却炉。
  3. 吹出し部の風箱が、循環セル風箱と共通している請求項1記載の流動床焼却炉。
  4. 吹出し部の風箱が、独立した風箱である請求項1記載の流動床焼却炉。
  5. 流動層を備えた室を、下側のみが連通している隔壁、並びに上側及び下側が連通している隔壁で、供給された燃料の燃焼が行われる燃焼セルと、収熱セルに流動媒体を流入させる循環セルと、熱回収部を設けた収熱セルとの少なくとも3室に区分し、燃焼セルと循環セルとの間の下側のみが連通している隔壁の真下に位置するガス分散板の上側又はその近傍に、流動化ガスを供給する散気管を設けたことを特徴とする流動床焼却炉。
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