JP2004092984A - 機械室の空調設備 - Google Patents

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Abstract

【課題】大面積・大空間内に新聞印刷機のような発熱源が存在し,そのフロアーに人が動き廻る場合の省設備・省エネルギー空調を実現する。
【解決手段】建物内に機械設備が据え付けられた機械室において,該機械室の床下に機械室の室圧より高圧の調和空気を収容する高圧室を設け,該機械室の全フロアーのうち,該機械設備の稼働中に作業員が駐停止または移動することの多い居住フロアー部分を吹出口ユニットの連接体で構成し,各々の吹出口ユニットが,フロアーの開口に取り付けた孔あき床板と,この孔あき床板と前記の高圧室の間を連通する通気部と,この通気部に設置されたモーターダンパーとからなり,その吹出口ユニットの孔あき床板上に作業員が乗っているときに該モーターダンパーを開動作して高圧室の調和空気を当該吹出口ユニットから機械室内に吹き出すことを特徴とする機械室の空調設備である。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,建物内に比較的大型の機械が据え付けられている場合の空調設備に係り,より詳しくは,新聞印刷室等のように多量の顕熱と潜熱を発生する部屋の省エネルギ−空調設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物内に比較的大型の機械が据え付けられた場合の空調設備は,機械が発生する熱の処理を行うために大掛かりとなっている。例えば,輪転機が設置された新聞印刷室では,新聞印刷用のロール紙の表面温度と湿度が適切であることが要求されるが,輪転機の稼働に伴って顕熱と潜熱が発生すると共に,印刷室自身は高い天井高さと比較的大きな床面積を有するので,その空調設備は大掛かりとならざるを得なかった。
【0003】
一般に新聞の印刷は,新聞印刷用ロ−ル紙が給紙室で輪転機にセットされ,印刷室(給紙室の上の階)では輪転機の各種印刷ロ−ルを巡回して印刷され,輪転機の最終工程において市場にみられる形状になる。印刷を完了した新聞は品質検査者の確認後,コンベアにより運ばれ(通常は,印刷室の上の階の発送準備室に運ばれる),トラックにより販売店に運ばれる。印刷室では品質検査者が時間ごとに抜取り検査を行ない,また紙面検査器で常時監視し,刷りムラ等の発生した新聞は随時排除される。そのほか,輪転機の細部を常時監視する監視者も輪転機の稼働中は印刷室に駐在する。
【0004】
印刷が良好に行われるためには,新聞印刷用ロール紙の表面の温度と湿度が長時間適当であることが要求される。そのために給紙室は,例えば乾球温度26℃,相対湿度65%の恒温・恒湿に保たれている。温度と湿度はロール紙の品質により多少異なるが大きく変わることはない。印刷室は,前記のように品質検査者と輪転機の監視人及びその他の人達が居住するため作業者向けの空調設備が必要である。
【0005】
某印刷工場の輪転機の負荷は輪転機1set当たり572kw(顕熱446.5kw,潜熱125.5kw)であった。その他の空調負荷を含めると,輪転機1set当たり648kwであった。その印刷工場では印刷室に居住する人のために乾球温度27℃,相対湿度53.0%に印刷室内が維持されている。この印刷工場の輪転機1set当たりの日刊の印刷部数は約7.5万部である。1set当たり年間で2700万部印刷することになる。輪転機1set当たりの電気使用料は149500kwである。新聞一部当たりの電気使用料は0.0055kwになる。日本での新聞発行部数は約5368万部(2001年10月現在)であり,295,240kw/日の電気を使用していることになる。
【0006】
輪転機の許容最高温度は一般電気機械と同等であり,40℃の室内温度を許容する。新聞印刷のピ−クはAM2:00〜AM4:00である。この時間帯の東京の外気の温度は33.4℃以下である。また,某印刷工場の湿度の測定結果では相対温度が75%以下では新聞印刷に障害が発生しない。相対湿度が75%を越えると輪転機の各部に結露が発生し,結露水が新聞に落下し,新聞に刷りムラが発生する。新聞の刷りムラは新聞検査器により不良新聞として排除される。すなわち,印刷室の空気調和設備は輪転機を対象とする場合は,40℃以下,相対湿度75%以下でよい事になる。
【0007】
しかし,実際には,従来の印刷室の空調設備は27℃,相対湿度53%に室内条件を確保するように維持されている。これは,印刷室に居住する人達の作業中の動線が明確でなく,印刷室の作業環境を良好にするためには,室内全体を不快な状態にしない程度の空調設備が設置されることが多かったからである。このために空調設備は過大な投資を必要としていたが,印刷室は,輪転機が3〜4フロー分を縦方向に突き抜けて設置される関係上,高い天井高さを有し,輪転機が数セット並設される設備では床面積も大きくなるので,高天井で比較的大きな空間を大掛かりな空調設備で全体的に温湿度調節しても,輪転機近くのフロアー上に居る作業員の居住環境は決して良好ではなく,印刷室に居住する人達は劣悪な作業環境での作業を強いられてきた。
【0008】
応急的な措置として,作業員が印刷室内の或る特定の場所に比較的長く駐在する部分だけをスポット的に空調する方式等も採られていたが,作業員が移動すれば劣悪な作業環境とならざるを得なかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
したがって,本発明の課題は,輪転機が設置されている印刷室のように,大掛かりな空調設備が稼働していても作業員の作業環境を改善することには限界があった機械室の空調を,作業員が居住する空間だけを良好な環境に維持できるように改善することにより,小規模且つ省エネルギー的に空調できる設備を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば,人の移動とともに周囲環境が移動する空調システムを構築することによって,前記課題の解決を図ったものである。すなわち,本発明によれば,建物内に機械設備が据え付けられた機械室において,該機械室の床下に機械室の室圧より高圧の調和空気を収容する高圧室を設け,該機械室の全フロアーのうち,該機械設備の稼働中に作業員が駐停止または移動することの多い居住フロアー部分を吹出口ユニットの連接体で構成し,各々の吹出口ユニットが,フロアーの開口に取り付けた孔あき床板と,この孔あき床板と前記の高圧室の間を連通する通気部と,この通気部に設置されたモーターダンパーとからなり,その吹出口ユニットの孔あき床板上に作業員が乗っているときに該モーターダンパーを開動作して高圧室の調和空気を当該吹出口ユニットから機械室内に吹き出すことを特徴とする機械室の空調設備を提供する。ここで,吹出口ユニットは,圧電スイッチを介して着座する孔あき床板と,この孔あき床板と前記の高圧室の間を連通する通気部と,この通気部に設置されたモーターダンパーとからなり,その吹出口ユニットの孔あき床板上に作業員が乗っているかまたは乗っていないかを該圧電スイッチが感知し,そのオンオフ信号により該モーターダンパーが開閉動作して高圧室の調和空気を当該吹出口ユニットから機械室内に吹き出す動作を発停するものであるのが好ましい。場合によっては,該モーターダンパーを作業員が携帯するリモコンスチッチで開閉動作してもよいし,吹出口ユニットの近傍にモーターダンパーを開閉動作するためのスイッチを設置し,作業員が移動した場所でそのスチッチを操作するようにしてもよい。
【0011】
吹出口ユニットの通気部には,さらにエアフイルターを設置することができる。機械設備は新聞印刷用の輪転機であり,機械室は印刷室,高圧室は給紙室である場合に本発明は特に有益である。この場合,印刷室の輪転機の負荷を処理するための室内全体の空調は外気の取入れと排気によって行うことができ,作業員が存在する周囲環境だけを作業員の移動と共に移動させながら空調することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に,図面を参照しながら,本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は,機械設備が新聞印刷用の輪転機である場合の,本発明に従う空調設備の要部構成を図解的に示した略断面図であり,この印刷工場は,下層階から上層階に向けて,給紙室,印刷室,発送作業室の順に形成されている。輪転機は,給紙室に設置された給紙機1と,印刷室においてに縦方向に数段にわたって設置された印刷ロール2の群とからなる。給紙機1から各印刷ロール2を経て印刷され,最終の印刷ロール2fを通過した印刷物は,紙面検査器3および品質検査者のチエックを経たあと,コンベア4によって,上層階の発送作業室に運ばれる。図1では,このように構成された1セットの輪転機が示されてるが,実際には,数セットの輪転機が(紙面の表裏方向に)隣設されるのが通常である。
【0014】
印刷室は,輪転機の印刷ロール2が上下に多段に設置されている関係上,ほぼ3フロアー分に相当する天井高さを有している。輪転機が稼働中の印刷室では,作業員が居住する関係から,従来より,温度は27℃程度,相対湿度は53%程度となるように空調されてきた。この温度と湿度を維持するには,数セットの輪転機が稼働する印刷室ではその内部発生熱が大きく且つ印刷空間が比較的大きな空間であることから,規模の大きな空調設備を必要とした。
【0015】
本発明では,そのような大掛かりな印刷室用の空調設備は省略し,これに代えて外気の取入れと排気によって,輪転機の負荷を処理することとし,作業員のための空調は,作業員の移動とともに移動する作業員の周囲だけとする。
【0016】
まず,印刷室へは,輪転機の負荷を処理するために,外気の取入れと排気を行うが,このための換気設備が換気装置室5と6に収納されている。いずれの換気装置室5と6にも,回転数を制御できる送風機7と排風機8が据え付けられ,外気は,外気取入口から送風機7の駆動によってエリミネータ9およびフイルタ10を経て送気口11から印刷室内に供給される。また,排気口12から印刷室内の空気が排風機8の駆動によって系外に排出される。外気側のダクトには風洞閉止用のモータダンパ13が介装され,排気側のダクトには温度センサーおよび湿度センサーが介装されており,これらはいずれも印刷室内の圧力と温湿度を設定範囲に維持するための制御機器として用いられる。
【0017】
この外気取入れと排気の処理により,印刷室の温度と湿度の条件を,輪転機を対象として,室内温度40℃以下,室内の相対湿度75%以下とする。つまり室内温度は40℃を超えないように,また相対湿度は75%を超えないように,送風機7による外気の取入れ量と,排風機8による排気量を制御する。この温・湿度条件では,周年を通じて外気冷房が可能であり,従来より使用されていたようなエアハンドリングユニット等の大掛かりな空気調和装置は印刷室用には不用化することができる。
【0018】
印刷室に居住する人達(品質管理者および輪転機監視者)には,作業に応じて移住する場所に快適空間が移動する空調を行う。本発明においては,快適作業空間を移動させる方式として作業員用の空気吹出口ユニット15を採用する。
【0019】
作業員用の空気吹出口ユニット15は,印刷室に居住する人達の足元に設置されるている。印刷室には約55mに一人が居住し,作業内容により移動を繰り返すが,移動した場所の空気吹出口ユニット15に作業者が乗ったときに,その体重によって,そのユニット15の圧電スイッチがオンとなり,そのユニット15から作業者に向けて調和空気が供給される。そして,このユニット15から作業者が降りたときにそのユニット15の圧電スイッチがオフとなり,そのユニット15からの調和空気の供給が停止する。
【0020】
図2は,この空気吹出口ユニット15の例を図解して示したもので,印刷室と給紙室を隔てるフロアー16(スラブ)に0.5〜2m程度の開口17を設け,この開口17に孔あき床板18を,圧電スイッチ19を介して着座させる。20は,孔あき床板18のレベル調整台を示す。印刷室のフロアー16に設けた開口17は給紙室に連通しており,このため,給紙室が印刷室より高圧であると,給紙室から印刷室に開口17および孔あき床板18を通じて空気が自然に流れ込む。この空気の流れを発停する機構として,モーターダンパー21を備えたボックス22を開口18に取付ける。そして,このモーターダンパー21の開閉動作を圧電スイッチ19のオン・オフ信号によって制御する。図2において,24はダンパーを開閉するためのモーターを示しており,このモーター24の動作は,図示しない制御盤からの操作信号によって制御される。その操作信号は,圧電スイッチ19から該制御盤に送られたオン・オフ信号に基いて送信される。
【0021】
すなわち,空気吹出口ユニット15ごとに,圧電スイッチ19とモーターダンパー21を備えることによって,そのユニット15の孔あき床板18の上に作業員23が乗ったらその圧電スイッチ19が入ってそのモーターダンパー21が開き,降りたら圧電スイッチ19が切れてモーターダンパー21が閉じるという動作が行われることにより,高圧側の給紙室から,孔あき床板18上の作業員23の周囲に空気が吹き出されることになる。そのさい,このユニット15の空気通路にフイルター25を介装させておくことにより,輪転機の稼働中に発生する紙クズやインクミストを補足することができる。補足された紙クズやインクミストは粘性があるから,ユニット15から吹き出される空気によって再飛散する恐れは少ない。
【0022】
このように構成された空気吹出口ユニット15を,輪転機の稼働中に作業員が駐停止または移動することの多いフロアー部分に連接することにより,作業員の移動とともに,給気室から作業員に向けて空気が吹き出す動作も移動する。そして,この吹き出し空気を温湿度調節された調和空気とすれば,この空気吹出口ユニット15から供給された調和空気が作業員の周囲をおおい,快適な作業環境が作業員の周りに形成される。そして,この快適な作業環境が作業員の移動と共に移動する。
【0023】
図3は,輪転機回りのフロアーに形成した空気吹出口ユニット15の連接態様を示した平面図であり,図1のX−Y矢視断面の部分に相当している。輪転機ローラ2に面して品質検査者が居住する前フロアー部分と,輪転機ローラ2の側方に輪転機監視者が移動することが多い側方フロアー部分に,空気吹出口ユニット15が連接して設置され,これらの空気吹出口ユニット15の連接体によって,印刷室フロアーの一部において,作業者がその上に居住または移動する通路が形成されている。
【0024】
図4は,複数セットの輪転機が隣接して据え付けられる場合の空気吹出口ユニット15の連接態様を示したものであり,複数セットの場合にも,図3のものと同じように,各輪転機回りのフロアーに,空気吹出口ユニット15の連接体によって作業者がその上に居住または移動する通路が形成される。
【0025】
図5は,5セットの輪転機が据え付けられた印刷室フロアー26の平面図であり,斜線域で示した部分27が,空気吹出口ユニットの連接体によって作業者がその上に居住または移動する通路を示している。この図に見られるように,作業者の居住または移動する通路部分27は,印刷室フロアー26の全面積から見ればほんの一部である。しかも,その通路部分27のうち,作業者が実際にその上に乗っている空気吹出口ユニットは数個である。作業者がその上に乗っているユニットの部分を28で示した。作業者が乗っているユニット部分28の面積は,印刷室フロアー26の全面積から極めて僅かであり,例えば全面積の1/200以下,場合によっては1/100以下である(実例では1/110程度である)。この作業者が居住または移動している極めて僅かな部分だけが,快適な環境に維持される。高い天井の空間内において,この快適環境に維持される空間は微小であり,例えば,全室内空間の1/300以下,場合によっては1/200以下の空間だけに給気すればよいから,その調和空気を製造するには僅かの電力消費で済むことになる。
【0026】
前記の実施例では,作業員が乗っている空気吹出口ユニットだけから調和空気を吹き出すために,作業員の体重で圧電スイッチ19が作動する例を挙げたが,この圧電スイッチ19に代えて,作業員がリモコンスイッチを携帯し,移動した場所でそのスイッチを操作することにより,その場所のモーターダンパー21を開閉動作するようにしてもよい。また,各空気吹出口ユニット15の近傍にそのモーターダンパー21を開閉動作するためのスイッチを取付け,このスイッチを作業員が操作することにより(例えば移動した場所でそのスイッチを踏むことにより),その場所のモーターダンパー21を開閉動作するようにしてもよい。
【0027】
作業員が乗っている空気吹出口ユニットだけから調和空気を自然に吹き出すために,本発明においては,印刷室の下の給紙室を調和空気の給気室として利用する。すなわち,給紙室と印刷室の間に室内圧に差圧をつけ,この差圧を利用して,給紙室から,給気室内の調和空気を,作業員が乗っている空気吹出口ユニットを経て作業員の周囲に供給する。給紙室は輪転機稼働中は一般に無人になる。また,輪転機では自動的に給紙が行われるから室圧を高くしても支障はない。
【0028】
以下に,この給紙室を調和空気の給気室として利用する場合の設備構成を図1を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
給紙室内の空気の圧力と温度・湿度を調節するための空調機械室30aと30bを設ける。図1では空調機械室30aと30bが左右に2個所描かれているが,両方ともその中に設置する設備は実質的に同じものである。ただし,右側の空調機械室30aは,給紙室のみならず差圧調整室31に対しても給排気できるように施設されている。差圧調整室31は,給紙室への出入口32を囲うように設置されている。
【0030】
空調機械室30a,30bには,空調機としてのエアーハンドリングユニット33(空調機33という)が設置され,この空調機33で製造された調和空気が給気口34より給紙室に送気される。他方,給紙室内の空気は排気口35より排風機36によって系外に排出され,その一部は,空調機33に還気として戻される。空調機33にはこの還気のほか,外気がフアン37によって取入れられる。排気口35近傍の排気ダクトにはモーターダンパー38が介装される。そのほか,外気ダクトや排気ダクトには風量調整ダンパー39が介装される。
【0031】
これらのモーターダンパー38と風量調整ダンパー39は給紙室の室圧を高くするために利用される。設備始動時は風量調整ダンパー39によって給気風量が排気風量より多くなるように調整して給紙室の室圧を高くする。給紙室と印刷室間の差圧を差圧検出器40によって検出し続け,給紙室の室圧が設定値範囲より高くなったときには,モーターダンパー38を開方向に開き,設定値範囲より低くなったときには,閉方向に閉じて,給紙室の室圧を設定範囲に維持する。
【0032】
印刷室と給紙室との間には室圧調整ダンパー41が設置されている。この室圧調整ダンパー41は両室間の微差圧を調節する機能を果たすと共に,モーターダンパー38による室圧制御になんらかのトラブルを生じた場合の安全装置としても機能する。
【0033】
給紙室の自動給紙装置に異常が生じた場合,給紙室に保守員が入ることになるが,その出入口32の扉が室内圧のために開閉に支障を来すことになる。このために,この出入口32から給紙室に入る前までの間に圧力調整室31を設けてある。この圧力調整室31と印刷室との間の圧力差を差圧検出器42が検出し,差圧が設定範囲となるように,すなわち,給紙室よりは室圧が低いが印刷室よりは高い圧力となるように,この圧力調整室31に吹き出す給気量と,圧力調整室31から排出する排気量を前記同様に制御する。圧力調整室31と給紙室との間には室圧調整ダンパー43を設置して両室間の微差圧調整と,差圧制御になんらかのトラブルが生じた場合の安全性を高める。また,圧力調整室31と空調機械室30aとの間にも室圧調整ダンパー44を設置しておくのがよい。
【0034】
このようにして,輪転機の稼働中は,給紙室には空調機33から調和空気が供給されると共に,その調和空気による給紙室内の圧力が印刷室よりも例えば4〜6mmHgだけ高い圧力に常時維持される結果,作業員が乗った空気吹出口ユニット15だけから調和空気が印刷室内の作業員の周囲に吹き出されるので,作業員の動きに合わせて調和空気による快適環境を印刷室内で移動させることができる。そして,給紙室への作業員の出入口に対しても,印刷室よりは圧力が例えば2〜3mmHgだけ高く,給紙室よりは圧力が例えば2〜3mmHgだけ低い室圧調整室42を設けることにより,作業員の出入りに支障がなくなり且つ作業員の出入りによる給紙室の圧力変動も回避することができる。
【0035】
某新聞印刷工場では,新聞1部当たりの空調設備に使用する電気量は約0.0055kwである。新聞は我が国では約53,680,000部/日(2001年10月現在)が発行されているので,1日当りの電気使用量は全国で約259,240kwである。本発明の空調設備を適用した場合には,新聞1部当たり約0.0026kwの動力の消費でよいことになり,1日当りの電気使用量は全国で約139,568kwとなるから,前者に比べて1日当りの155,672kwの電気量を節約できる。また,本発明に従う空調設備は,その規模が小さくなるので,従来の空調設備を導入している某新聞印刷工場のもので試算すると,その設備費は従来のものに比べ約52%減少することができる。
【0036】
新聞印刷工場に本発明の空調設備を適用した場合に,前記のようにその設備費用と運転費用を大きく低減することができるが,同様のことは,大面積に作業員が少人数居り,しかも動き廻ることが多い空間や工場,例えば,ホテルのロビー,アトリウム,室内競技場や,製鉄所,自動車組み立て工場,その他の工場等に本発明を適用した場合にも,空調のための設備費用の運転費用を大きく低減することが可能である。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によると,輪転機のように顕熱と潜熱を発生する機械等が存在する大面積・大空間において,その中に居住する人の動きに合わせて,その人の周囲の環境だけを移動させることができる。このために,居住する人に対する空調負荷は空間全体から見れば極めて僅かとなり,空調のための設備費用と運転費用を著しく低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う空調設備を新聞工場に適用した場合の機器配置系統図である。
【図2】本発明に従う空気吹出口ユニットの例を示す略断面図である。
【図3】本発明に従う空気吹出口ユニットをフロアーに連接する態様を示した略平面図である。
【図4】本発明に従う空気吹出口ユニットをフロアーに連接する他の態様を示した略平面図である。
【図5】本発明に従う空気吹出口ユニットで印刷室の作業員の移動通路を形成する例を示した平面図である。
【符号の説明】
1 給紙機
2 印刷ロール
3 紙面検査器
4 コンベア
5,6 換気装置室
7 送風機
8 排風機
9 エリミネータ
10 フイルタ
11 送気口
12 排気口
13 風洞閉止用のモータダンパ
15 空気吹出口ユニット
16 フロアー16(スラブ)
17 フロアーの開口
18 孔あき床板
19 圧電スイッチ
21 モーターダンパー
22 ボックス
25 フイルター
30 空調機械室
31 差圧調整室
32 給紙室への出入口
33 エアーハンドリングユニット(空調機)
34 給気口
35 排気口
36 排風機
37 フアン
38 モーターダンパー
39 風量調整ダンパー
40,42 差圧検出器
41,43,44 室圧調整ダンパー

Claims (9)

  1. 建物内に機械設備が据え付けられた機械室において,該機械室の床下に機械室の室圧より高圧の調和空気を収容する高圧室を設け,該機械室の全フロアーのうち,該機械設備の稼働中に作業員が駐停止または移動することの多い居住フロアー部分を吹出口ユニットの連接体で構成し,各々の吹出口ユニットが,フロアーの開口に取り付けた孔あき床板と,この孔あき床板と前記の高圧室の間を連通する通気部と,この通気部に設置されたモーターダンパーとからなり,その吹出口ユニットの孔あき床板上に作業員が乗っているときに該モーターダンパーを開動作して高圧室の調和空気を当該吹出口ユニットから機械室内に吹き出すことを特徴とする機械室の空調設備。
  2. 吹出口ユニットは,圧電スイッチを介して着座する孔あき床板と,この孔あき床板と前記の高圧室の間を連通する通気部と,この通気部に設置されたモーターダンパーとからなり,その吹出口ユニットの孔あき床板上に作業員が乗っているかまたは乗っていないかを該圧電スイッチが感知し,そのオンオフ信号により該モーターダンパーが開閉動作して高圧室の調和空気を当該吹出口ユニットから機械室内に吹き出す動作を発停する請求項1に記載の機械室の空調設備。
  3. モーターダンパーは,作業員が携帯するリモコンスイッチで開閉動作する請求項1に記載の機械室の空調設備。
  4. 吹出口ユニットの近傍にモーターダンパーを開閉動作するためのスイッチが設置される請求項1に記載の機械室の空調設備。
  5. 吹出口ユニットの通気部には,さらにエアフイルターが設置されている請求項1ないし4のいずれかに記載の機械室の空調設備。
  6. 機械設備は新聞印刷用の輪転機であり,機械室は印刷室,高圧室は給紙室である請求項1ないし5のいずれかに記載の機械室の空調設備。
  7. 印刷室の室内全体の空調は外気の取入れと排気によって行う請求項6に記載の機械室の空調設備。
  8. 給紙室への作業員の出入りは圧力調節室を介して行われ,この圧力調節室と給紙室とは室圧調整ダンパーを介して差圧が調節される請求項6または7に記載の機械室の空調設備。
  9. 印刷室と給紙室とは所定の差圧範囲に制御される請求項6,7または8に記載の機械室の空調設備。
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