JP2004092906A - 繊維複合材料 - Google Patents

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JP2004092906A
JP2004092906A JP2003177274A JP2003177274A JP2004092906A JP 2004092906 A JP2004092906 A JP 2004092906A JP 2003177274 A JP2003177274 A JP 2003177274A JP 2003177274 A JP2003177274 A JP 2003177274A JP 2004092906 A JP2004092906 A JP 2004092906A
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Eiji Fujioka
藤岡 英治
Masahito Inoue
井上 将人
Nobuo Ikuta
幾田 信生
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Du Pont Toray Co Ltd
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Du Pont Toray Co Ltd
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Abstract

【課  題】耐熱性、耐磨耗性および耐久性に優れたブレーキパッドまたはクラッチ板の提供。また、耐熱性、耐磨耗性および耐久性に優れた複合材料または前記複合材料の製造方法の提供。
【解決手段】(イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、(ロ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品または(ハ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または前記繊維製品を構成要素として含んでいる複合材料を、摩擦材料として含むことを特徴とするブレーキパッドまたはクラッチ板。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を含むブレーキパッドまたはクラッチ板に関する。また、本発明は、易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を含む複合材料とその複合材料の製造方法に関する。また、本発明は、ブレーキパッドまたはクラッチ板に好適な湿式液晶紡糸可能繊維、特にアラミド繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の性能が向上すればするほどトランスミッションシステム又はブレーキシステム等の制動装置の性能が、安全性の面から重要になる。自動車産業において、自動車の性能の向上にあわせて種々のトランスミッション又はブレーキシステム等の制動装置の性能が安全性の面から重要になる。自動車産業において、自動車の性能の向上にあわせて種々のトランスミッションシステム又はブレーキシステム等が改良されたり、新規に開発されたりしてきた(特許文献1、特許文献2、特許文献3または特許文献4等)。しかしながら、上記のようなトランスミッションシステムまたはブレーキシステムを有効に、かつ、安定に機能させるためには、これらのシステムに摩擦材料として用いられるクラッチ板またはブレーキパッドが、耐熱性、耐磨耗性および耐久性等の必要な条件を満たす必要がある。
【0003】
従来、ブレーキパッドまたはクラッチ板等の摩擦材料として用いられているフェノール樹脂等は、近年次々と開発されてきた高エネルギー伝達システム等での使用に必要とされる良好な高熱抵抗性等を有しておらず、このようなシステムにおいては摩擦材料として充分に機能しない。また、新規の摩擦材料として、アスベストと共に使用するフェノール樹脂またはフェノール変性樹脂(特許文献5)などが開発されたり、含浸用の紙または繊維材料と共に使用するフェノール樹脂またはフェノール変性樹脂などが開発されたりしてきた。しかし、このように開発された摩擦材料も、摩擦熱等のために必要な耐熱性または耐磨耗性などにおいて必ずしも満足のいくものではなかった。
【0004】
さらに、現在においてはフェノール樹脂にアラミド繊維を組み合わせて用いること等が提案されている(特許文献6、特許文献7または特許文献8等)。しかしながら、このような摩擦材料では、アラミド繊維とフェノール樹脂との接着性が必ずしも満足できるものではなく、アラミド繊維が本来有している耐熱性、耐磨耗性および耐久性などの優れた性質を十分に生かすための工夫が望まれている。そのため、摩擦材料などに対して耐熱性、耐磨耗性および耐久性等を要求するトランスミッションシステムまたはブレーキシステムを、可及的に長期間にわたり、有効に、かつ、安定に機能するブレーキパッドまたはクラッチ板が切実に待ち望まれていた。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−171507号公報
【特許文献2】
特表平09−506054号公報
【特許文献3】
特開2002−19592号公報
【特許文献4】
特開2002−12143号公報
【特許文献5】
米国特許第3,270,846号
【特許文献6】
特開2000−37804号公報
【特許文献7】
特開平07−151174号公報
【特許文献8】
特開平09−118755号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性、耐磨耗性および耐久性に優れたブレーキパッドまたはクラッチ板を提供することを主たる課題とする。また、本発明は、耐熱性、耐磨耗性および耐久性に優れた複合材料と前記複合材料の製造方法を提供することをも課題とする。さらに、本発明は、接着性、耐熱性、耐磨耗性および耐久性に優れたブレーキパッドまたはクラッチ板に好適な繊維を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、(ロ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品または(ハ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または前記繊維製品を構成要素として含んでいる複合材料を、摩擦材料として含むブレーキパッドまたはクラッチ板が、耐熱性、耐磨耗性または耐久性に優れていることを見出した。
【0008】
また、本発明者らは、上記湿式液晶紡糸可能繊維が、パラ系アラミド繊維、ヘテロ環芳香族繊維またはセルロース系繊維であることが好ましく、商品名ケブラー、トワロン、ザイロンまたはリヨセルである繊維であることがより好ましいことを知見した。上記表面処理剤が、熱硬化性樹脂、特にフェノール樹脂に対して相溶性を有することが好ましく、エポキシバインダー、ウレタン系バインダーまたはアミノ糖類を含有することも好ましく、さらにシランカップリング剤を含有することが好ましいことを知見した。また、本発明者らは、湿式液晶紡糸可能繊維がアラミド繊維であって、表面処理剤による処理前の当該アラミド繊維が水分率15%以上であり、結晶サイズ(110面)が50Å以下であることが好ましいことを見出した。上記複合材料がフェノール樹脂を構成要素として含んでいることが好ましいことを知見した。
【0009】
さらに、本発明者らは、(イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び(ロ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品と(ハ)フェノール樹脂などの合成樹脂とを構成要素として含んでいる複合材料が耐熱性、耐磨耗性または耐久性に優れていることを見出した。湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品をフェノール樹脂で処理することによって、上記複合材料を製造できることを知見した。本発明者らは、上記複合材料がガスケット、土木・建築資材など様々な一般用途に使用可能であることを見出した。
本発明者らは、かかる種々の新知見を得たのち、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1) (イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、(ロ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品または(ハ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または前記繊維製品を構成要素として含んでいる複合材料を、摩擦材料として含むことを特徴とするブレーキパッドまたはクラッチ板、
(2) 湿式液晶紡糸可能繊維がパラ系アラミド繊維、ヘテロ環芳香族繊維またはセルロース系繊維であることを特徴とする(1)に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板、
に関する。
【0011】
また、本発明は、
(3) 湿式液晶紡糸可能繊維が商品名ケブラー、トワロン、ザイロンまたはリヨセルである繊維であることを特徴とする(1)に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板、
(4) 表面処理剤がフェノール樹脂に対して相溶性を有することを特徴とする(1)に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板、
(5) 表面処理剤がエポキシバインダー、ウレタン系バインダーまたはアミノ糖類を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のブレーキパッドまたはクラッチ板、
(6) 表面処理剤がさらにシランカップリング剤を含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のブレーキパッドまたはクラッチ板、
に関する。
【0012】
また、本発明は、
(7) 湿式液晶紡糸可能繊維がアラミド繊維であって、表面処理剤による処理前の当該アラミド繊維が水分率15%以上であり、結晶サイズ(110面)が50Å以下であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のブレーキパッドまたはクラッチ板、
(8) 複合材料がフェノール樹脂を構成要素として含んでいることを特徴とする(1)に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板、
(9) (イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び(ロ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品と(ハ)フェノール樹脂とを構成要素として含んでいることを特徴とする複合材料、
(10) 湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品をフェノール樹脂に含浸させた後、加熱、加圧成形することを特徴とする複合材料の製造方法、
に関する。
また、本発明は、
(11) エポキシバインダー、ウレタンバインダー及びアミノ糖類から選ばれる少なくとも1種を含浸乾燥してなることを特徴とするアラミド繊維、
(12) (11)記載のアラミド繊維を用いることを特徴とするブレーキパッド又はクラッチ板、
に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるブレーキパッドまたはクラッチ板は、易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品または前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または前記繊維製品を構成要素として含んでいる複合材料を、摩擦材料として含んでいる。
【0014】
上記ブレーキパッドは、通常摩擦材料および裏板を含んでなるものである。上記ブレーキパッドに用いられる上記摩擦材料は、易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品または前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または前記繊維製品を構成要素として含んでいる複合材料を含んでいれば、特に限定されるものではない。また、上記ブレーキパッドに用いられる上記裏板は、特に限定されず、例えば真鋳、鉄またはステンレス等の公知のものであってよい。
【0015】
上記クラッチ板は、通常摩擦材料および母材を含んでなるものである。また、上記クラッチ板は、単板で用いられてもよいし、多板で用いられてもよい。上記クラッチ板に用いられる上記摩擦材料は、易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品または前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または前記繊維製品を構成要素として含んでいる複合材料を含んでいれば、特に限定されるものではない。上記クラッチ板に用いられる上記母材は、特に限定されず、例えば真鋳、鉄またはステンレスなどの公知のものであってよい。
【0016】
上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維は、湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている繊維であれば、特に限定されるものではない。表面処理剤による処理前の上記湿式液晶紡糸可能繊維は、湿式液晶紡糸が可能な繊維であれば、特に限定されず、公知のものであってよい。本発明において、上記湿式液晶紡糸可能繊維が、パラ系アラミド繊維、ヘテロ環芳香族繊維またはセルロース系繊維であることが特に好ましい。
【0017】
本発明において用いられる上記パラ系アラミド繊維は、特に限定されず、公知のものであってよい。上記パラ系アラミド繊維として、例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維[米国デュポン社、東レ・デュポン社製の製品名ケブラー(KEVLAR デュポン社登録商標)または帝人・トワロン社製の製品名トワロン(Twaron)]等の市販品を用いることができる。本発明においては、上記パラ系アラミド繊維を、公知の方法またはそれに準ずる方法で製造して用いてもよい。
【0018】
本発明において用いられる上記ヘテロ環芳香族繊維は、特に限定されず、公知のものであってよい。上記ヘテロ環芳香族繊維として、例えば、ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(以下PBO繊維という)またはポリベンゾイミダゾール繊維等を用いることができる。本発明においては、このようなヘテロ環芳香族繊維を、公知の方法またはそれに準ずる方法で製造してもよい。本発明において、上記ヘテロ環芳香族繊維として、例えば市販のPBO繊維(東洋紡績社製の製品名ザイロン)等を用いることができる。
【0019】
本発明において用いられる上記セルロース系繊維は、特に限定されず、公知のものであってよい。本発明においては、上記セルロース系繊維として、リヨセル(レンチング・リヨセル社、ユニチカ株式会社、モリリン株式会社製)またはテンセル(テンセル社製)等の精製セルロース系繊維を用いることが特に好ましい。本発明においては、このようなセルロース系繊維を、公知の方法またはそれに準ずる方法で製造してもよい。
上記繊維の繊度は、約100〜8500dtexのものが好ましく使用される。その範囲であれば、ブレーキパッドやクラッチ板としての使用効率が向上し、繊維に処理剤を均一に付与し易くなり、接着効果にばらつきが生じにくくなる。
【0020】
上記表面処理剤は、湿式液晶紡糸可能繊維に易接着性を付与できるものであれば、特に限定されず、公知のものであってよい。また、本発明において、上記表面処理剤は、フェノール樹脂に対して相溶性を有するものであることが特に好ましい。上記表面処理剤として、好ましくはフィルムフォーマまたはフィルムフォーマとシランカップリング剤との混合物等を用いることができる。フィルムフォーマとシランカップリング剤との混合物を上記表面処理剤として用いる場合、フィルムフォーマとシランカップリング剤とが相溶性を示すことが特に好ましい。
【0021】
上記フィルムフォーマは、通常水分散してなるオリゴマー(分子量10,000未満)程度の樹脂であるが、本発明においては、特に限定されず、公知のものであってよい。上記フィルムフォーマとして、例えば、ビスフェノールA型、エポキシノボラック樹脂、臭素化型、ポリグリコール型、アクリル型、ポリアミド併用型、シリコーン変性、アミノ樹脂併用型またはアルキッド樹脂併用型等のエポキシバインダー、例えばエーテル系、エステル系または脂肪族系等のウレタンまたは前記ウレタンとシリコーン系ポリオールまたはフッ素系ポリオールとの共重合体などのウレタン系バインダー、または、シアル酸、ムラミン酸、グルコサミン類{例えば、グルコサミンなど}、これらグルコサミン類の塩類{例えば、グルコサミン塩類(塩酸塩、硫酸塩などの生理学的に許容できる塩、または、グルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩、グルコサミンリン酸塩などの無機酸塩など)}、そのグルコサミンの誘導体{例えば、グルコサミン誘導体(N−アセチルグルコサミンまたはN−メチル−L−グルコサミンなど)}または天然系糊剤(デンプン系或いはタンパク質系)あるいはキチンキトサンなどのアミノ糖類などを用いることができる。また、上記フィルムフォーマとして、大日本インキ化学工業株式会社製の製品名ボンディック、竹本油脂株式会社製の製品名AEA−127または日本化学フードテクノ株式会社製の製品名キトサミン等の市販品を用いることもできる。
【0022】
上記シランカップリング剤は、一般に式
X−Si(OR’) ・・・(1)
(Xはアミノ基、ビニル基またはエポキシ基、OR’はメトキシ基またはエトキシ基などである。)
で表わされる化合物であるが、本発明においては、特に限定されず、公知のものであってよい。上記シランカップリング剤として、例えばアミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランまたはビニルトリエトキシシラン等を用いることができる。また、上記シランカップリング剤として、日本ユニカー株式会社製の製品名C50752または信越化学工業株式会社製の製品名KBE−903または製品名KBM−573等の市販品を用いることもできる。
【0023】
上記フィルムフォーマとシランカップリング剤とを併用する場合は、フィルムフォーマ/シランカップリング剤を重量比で約5/3〜5/1の比率で使用することが好ましく、より好ましくは約5/2〜5/1の比率で使用する。
【0024】
本発明において、上記湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造を、上記表面処理剤で処理し、さらに熱処理することでもって、湿式液晶紡糸可能繊維の接着性を向上させることができる。接着性を向上させることができる理由は、次の通りと推測される。以下、図1〜図4を参照しながら説明する。
図1は本発明で用いられる湿式液晶紡糸可能繊維の断面説明図である。湿式液晶紡糸可能繊維結晶1の間に湿式液晶紡糸可能繊維結晶間間隙2が存在していて、湿式液晶紡糸可能繊維の内部はオープン構造をとっている。本発明において、内部オープン構造は、繊維内部の繊維結晶間間隙だけでなく、その繊維結晶表面などの繊維結晶周辺なども含んでいる。湿式液晶紡糸可能繊維外表面3と湿式液晶紡糸可能繊維の内部オープン構造における湿式液晶紡糸可能繊維の表面4が表面処理剤によって処理される。上記表面処理剤で処理する前の湿式液晶紡糸可能繊維の表面は、図2のように水分5が内部オープン構造の繊維結晶間間隙に付着している。この図2に示されている湿式液晶紡糸可能繊維に上記表面処理剤を浸透・含浸させると図3のような湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造に表面処理剤6が入り混じった状態となる。ついで、その浸透・含浸させた湿式液晶紡糸可能繊維を熱処理すると、その熱処理でもって湿式液晶紡糸可能繊維の繊維結晶が大きくなり、上記繊維結晶間間隙を狭くすることができる。そして、図4に示すように結晶間間隙の表面処理剤が結晶にはさまれ固着し、その結果、上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を得ることができる。なお、図4においては図3における表面処理剤6をより詳しく説明していて、これが、エポキシバインダー、ウレタン系バインダー又はアミノ糖類6aとシランカップリング剤6bとの混合であることを表わす。このようにして得られる易接着性湿式液晶紡糸可能繊維は種々の樹脂、特にフェノール樹脂と良好な接着性を示す。
【0025】
上記湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造を、上記表面処理剤で処理する方法は、特に限定されず、該方法として、例えば上記表面処理剤を上記湿式液晶紡糸可能繊維に浸透・含浸させる等の公知の方法を適宜用いることができる。上記表面処理剤を上記湿式液晶紡糸可能繊維に浸透・含浸させるには、例えば、表面処理剤の水媒体溶液またはエマルジョンを用いて、上記表面処理剤の水溶液またはエマルジョンに上記湿式液晶紡糸可能繊維を浸漬すること等が挙げられる。あるいは表面処理剤の水媒体溶液またはエマルジョンを上記湿式液晶紡糸可能繊維にスプレーする方式でもよい。この場合、表面処理剤を水に分散あるいは溶解し、固形分濃度約0.05〜5重量%に調整した水溶液あるいは水分散溶液を用いることが好ましい。前記濃度範囲とすることにより、表面処理剤が繊維に浸透しやすくなり、繊維の耐磨耗性、耐久性が向上し得る。表面処理剤の浸透性、有効利用の観点からは固形分濃度約0.1〜10重量%の水溶液とするのが好ましく、より好ましくは約0.1〜5重量%である。この処理に際しては、超臨界流体を用いてもよい。超臨界を用いる方法では、特に限定されず、公知の方法(例えば、特開2001−303456号公報に記載の方法など)、公知の超臨界装置を用いることができる。通常、超臨界流体は高温高圧のため、上記表面処理剤の分子運動が活発になり、上記表面処理剤の上記表面処理剤の上記湿式液晶紡糸可能繊維への浸透・含浸を促進させることができる。
【0026】
上記表面処理剤を上記湿式液晶紡糸可能繊維により好適に浸透・含浸するために、結晶間間隙が広く、結晶サイズが小さい上記湿式液晶紡糸可能繊維を用いることが好ましい。なかでも加熱収縮が小さく、高耐熱性、高強度であるパラ系アラミド繊維が好ましい。本発明においては、上記湿式液晶紡糸可能繊維がアラミド繊維である場合、結晶サイズ(110面)が50Å未満であり、上記アラミド繊維の水分率15重量%以上であるのがより好ましい。結晶サイズが50Å未満であると、結晶間間隙が広くなり、フィルムフォーマ分子の結晶間間隙への浸透量が増大するので、耐磨耗性、耐久性が向上し得る。好ましくは結晶サイズが約35〜45Åである。
このように結晶間間隙の広い湿式液晶紡糸可能繊維を用いることにより、オリゴマー程度(分子量10,000未満)のフィルムフォーマ分子を結晶間間隙により好適に浸透させることができる。超臨界流体を用いれば、上記シランカップリング剤および上記フィルムフォーマは流体側に若干溶けるとともに、上記結晶間間隙の表面近傍にある水分を含む雰囲気に浸透させることができるので、水媒体を用いる方法よりも表面処理剤を、分配則にしたがって多量に、上記結晶間間隙の奥まで浸透させることができる。
【0027】
本発明において、上記表面処理剤で処理された湿式液晶紡糸可能繊維の熱処理は、時間または温度等の条件または加熱方法など特に限定されず、公知の方法を適宜用いることができる。上記熱処理における熱処理温度は、湿式液晶紡糸可能繊維の結晶サイズが拡大する温度であればそれでよく、特に限定されるものではないが、本発明においては、80℃〜200℃程度であることが好ましく、より好ましくは約150℃〜170℃である。熱処理温度が約80℃〜200℃であれば、水分の除去がより容易となり、繊維結晶間に表面処理剤をより好適に固着し得る。また、熱処理時間が約0.5〜60分間であるのが好ましく、約1〜30分間であるのがより好ましい。
本発明においては、熱処理によって、上記湿式液晶紡糸可能繊維の水分含有率を低くするとともに、結晶サイズを拡大して、結晶間間隙を狭くすることができる(特開平11−181622号公報参照)。
【0028】
上記繊維製品は、上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいれば、特に限定されるものではない。上記繊維製品として、例えば、糸、綿状物、織物、編物、フェルトまたは紙等を含む広義の不織布、または、ロープまたはコード類等を挙げることができる。さらに、これら上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維から製造される加工品を単独に、あるいは組み合わせて、さらには樹脂や金属など他の素材を含む組合せでもって加工される2次加工品から繊維製品として市場にある最終製品等も上記繊維製品として用いることができる。上記繊維製品は上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維から織物、編物又は不織布を製造し、これを上記表面処理剤で処理し、熱処理したものであってもよい。本発明においては、上記繊維製品を、摩擦材料としてブレーキパッドまたはクラッチ板に用いることが好ましい。
本発明では、上記繊維または繊維製品は、ブレーキパッド又はクラッチ板の全組成中に対して約3〜50体積%とするのが好ましい。
【0029】
本発明にかかる複合材料は、(イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理されている上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または/および(ロ)上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる上記繊維製品と(ハ)合成樹脂、好ましくは熱硬化性樹脂とを構成要素として含んでいる材料である。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂又はエポキシ樹脂などが挙げられる。複合材料のための合成樹脂としては、耐熱性の点からフェノール樹脂が好ましい。
【0030】
上記フェノール樹脂は、通常、フェノール類にアルデヒド類を縮合させて得られる樹脂であるが、本発明においては、特に限定されず、公知のものであってよい。上記フェノール樹脂として、例えばフェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・ホルマリン樹脂またはレゾルシノール樹脂などが挙げられる。上記フェノール類として、たとえばフェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ブチルフェノール、ノニルフェノールまたはオクチルフェノールなどのアルキルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシンまたはカテコールなどの多価フェノール類、ハロゲン化フェノール、フェニルフェノール、アミノフェノールまたはナフトールなどが挙げられる。上記アルデヒド類として、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラールまたはトリオキサン等が挙げられる。
【0031】
また、上記フェノール樹脂として、例えば旭有機材工業株式会社製のAVライト、オタライト株式会社製のオタライト、新神戸電機株式会社製のコウベライト、住友ベークライ卜株式会社製のスミライトレジン、東芝ケミカル株式会社製の東芝テコライト、日本合成化工株式会社製のニッカライト、日立化成工業株式会社製のスタンドライト、フドー株式会社製のフドウライト、松下電工株式会社製のNAISフェノール樹脂成形材料、明和化成株式会社製のメイコンまたはユニチカ株式会社製のユニベックス樹脂などの市販品を用いることもできる。
【0032】
上記複合材料は、湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品を熱硬化性樹脂で処理することによって製造され得る。上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び上記繊維製品を熱硬化性樹脂、特にフェノール樹脂で処理するには、所望により熱硬化性樹脂を例えば、水、アルコール、キシレン等の有機溶媒に溶解し、通常上記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維に上記熱硬化性樹脂を含浸させ、次いで、その熱硬化性樹脂を硬化すればよく、例えばハンドレイアップ法、スプレーアップ法、プリフォームドマッチドダイ成形法、コールドプレス法、レジンインジェクション法、フィラメントワインディング法またはプルトルージョン法などの公知の方法を用いることができる。
【0033】
上記のようにして製造される易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、易接着性湿式液晶紡糸可能繊維製品又は複合材料を用いて、公知の方法に従って、ブレーキパッド又はクラッチ板が容易に製造される。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
下記の評価は次のように行った。
下記実施例で製造した処理繊維とフェノール樹脂から複合材料を以下の方法で作製した。まず、1本が1670dtexの下記実施例で製造した処理繊維を金枠に26往復(52本)巻き付けた。次に幅6mm×長さ200mm×厚さ10mm金型の下型にメタノール溶媒に溶解したフェノール樹脂を流し込み、その後金枠に取り付けた繊維束をフェノール樹脂層に含浸した。その後、金型の上型を取り付け60トンプレス機で圧力25kgf/cmかけながら150℃、30分保持し硬化した。その後乾燥機で170℃、1時間ホストキュアし複合材料を作製した。
【0036】
上記で作製した複合材料を幅6mm×長さ20mm×厚さ2.5mmにカットして層間せん断強度(ILSS)を測定した。また幅6mm×長さ100mm×厚さ2.5mmにカットして曲げ強度を測定した。なお、このときの繊維含有率は40体積%、樹脂の含有率は60体積%である。
ILSSの測定方法はASTM D3840に準じて行った。また曲げ強度の測定方法はASTM D790に準じて行った。
【0037】
以下は複合材料に用いる繊維の処理方法について説明する。なお、ILSSと曲げ強度のデータは表にして説明する。
[比較例1]
オープン構造のアラミド繊維(東レ・デュポン製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を下記の溶液処理することなく、170℃、60秒乾燥して処理糸を作製した。
【0038】
[実施例1]
ウレタンバインダー(大日本インキ化学工業株式会社製 ボンディック 1310NSA)を1.25w/w%とアミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー製 C50752)を0.25w/w%含有する水溶液で、オープン構造のアラミド繊維(東レ・デュポン製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を浸漬処理した。処理後170℃、60秒乾燥して処理糸を作製した。
【0039】
[実施例2]
ウレタンバインダー(大日本インキ化学工業株式会社製 ボンディック 1310NSA)を1.25w/w%とアミノプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー製 C50752)を0.5w/w%含有する水溶液で、実施例1と同様にしてオープン構造のアラミド繊維(東レ・デュポン製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を浸漬処理した。処理後170℃、60秒乾燥して処理糸を作製した。
【0040】
[実施例3]
エポキシバインダー(竹本油脂株式会社製 AEA−127)を1.25w/w%含有する水溶液で、実施例1と同様にしてオープン構造のアラミド繊維(東レ・デュポン製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を浸漬処理した。処理後170℃、60秒乾燥して処理糸を作製した。
【0041】
[実施例4]
キチンキトサン(日本化学フードテクノ株式会社製 キトサミン)を0.1w/w%と酢酸溶液(半井化学株式会社製)を0.1w/w%含有する水溶液で、実施例1と同様にしてオープン構造のアラミド繊維(東レ・デュポン製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を浸漬処理した。処理後170℃、60秒乾燥して処理糸を作製した。
各々の処理糸を用いた複合材料の層間せん断強度(ILSS)と曲げ強度は次の表1に示す結果となった。
【0042】
【表1】
Figure 2004092906
上記結果から比較例1で示す未処理のアラミド繊維の複合材料に対して実施例1〜4に記載の表面処理したアラミド繊維の複合材料の物性が高くなっている。
【0043】
(比較例2〜3及び実施例5〜10)
各水準アラミド繊維をベースとした紙を作製し、フェノール樹脂を含浸させ、ペーパーコンポジットを作製した。そのペーパーコンポジットの引張強度を測定して、繊維と樹脂との接着力の違いを計った。
【0044】
[比較例2]
オープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を溶液処理することなく、170℃、60秒間乾燥した。乾燥した糸を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。25cm角の紙を作製した後、100℃で乾燥し、さらにカレンダー加工を行った。その条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cm、17トン/cmを各1回ずつである。
カレンダー加工を行った紙をフェノール樹脂で含浸した。フェノール樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製 フェノライト5592)をメチルエチルケトンと1:1で希釈し、希釈溶液に紙を含浸させた。樹脂を含浸した後、マングルで絞り、樹脂含浸率を5〜10%の範囲内になるように調整した。含浸したペーパーを乾燥機の中で150℃、90分間、160℃、90分間樹脂を硬化させてペーパーコンポジットを作製した。
【0045】
[比較例3]
オープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。25cm角の紙を作製した後、100℃で乾燥し、さらにカレンダー加工を行った。その加工条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cm、17トン/cmを各1回ずつである。カレンダー加工を行った紙を比較例2と同様にしてペーパーコンポジットを作製した。
【0046】
[実施例5]
エポキシバインダー(竹本油脂株式会社製 AEA−127)を1.25w/w%含有する水溶液で実施例1と同様にしてオープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を処理した。処理後、170℃、60秒間乾燥して処理糸を作製した。処理糸を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。
25cm角の紙を作製した後、100℃で乾燥し、さらにカレンダー加工を行った。その加工条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cm、17トン/cmを各1回ずつである。カレンダー加工を行った紙を比較例2と同様にしてペーパーコンポジットを作製した。
【0047】
[実施例6]
キチンキトサン(日本化学フードテクノ株式会社製 キトサミン)を0.1w/w%と酢酸(半井化学株式会社製)を0.1w/w%含有する水溶液で実施例1と同様にしてオープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を処理した。処理後、170℃、60秒間乾燥して処理糸を作製した。処理糸を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。25cm角の紙を作製した後、100℃で乾燥し、さらにカレンダー加工を行った。その加工条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cmを2回である。
カレンダー加工を行った紙を比較例2と同様にしてペーパーコンポジットを作製した。
【0048】
[実施例7]
オープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。25cm角の紙を作製した後、乾燥せずにエポキシバインダー(竹本油脂株式会社製 AEA−127)を1.25w/w%含有する水溶液に含浸させた後、マングルで絞り付着量を調整した(しぼり圧3kgf/cm)。100℃で乾燥した後、さらにカレンダー加工を行った。その加工条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cm、17トン/cmを各1回ずつである。カレンダー加工を行った紙を比較例2と同様にしてペーパーコンポジットを作製した。
【0049】
[実施例8]
オープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。25cm角の紙を作製した後、乾燥せずにエポキシバインダー(竹本油脂株式会社製 AEA−127)を4.0w/w%含有する水溶液に含浸させた後、マングルで絞り付着量を調整した(しぼり圧3kgf/cm)。100℃で乾燥した後、さらにカレンダー加工を行った。その加工条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cm、17トン/cmを各1回ずつである。カレンダー加工を行った紙を比較例2と同様にしてペーパーコンポジットを作製した。
【0050】
[実施例9]
オープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。25cm角の紙を作製した後、乾燥せずにキチンキトサン(日本化学フードテクノ株式会社製 キトサミン)を0.1w/w%と酢酸(半井化学株式会社製)を0.1w/w%含有する水溶液に含浸させた後、マングルで絞り付着量を調整した(しぼり圧3kgf/cm)。100℃で乾燥した後、さらにカレンダー加工を行った。その加工条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cm、17トン/cmを各1回ずつである。カレンダー加工を行った紙を比較例2と同様にしてペーパーコンポジットを作製した。
【0051】
[実施例10]
オープン構造のパラ系アラミド繊維(東レ・デュポン社製 KEVLAR(R) 水含有量40重量%、結晶サイズ(110面)50Å)を3mmにカットした後、紙を作製するためバインダーにメタ系アラミド繊維(デュポン社製 NOMEX(R) 水分率約80%)のパルプを用いた。紙の目付は80g/mに設定し、処理したパラ系アラミド繊維3mmカット糸とメタ系アラミド繊維の割合を9:1に設定した。25cm角の紙を作製した後、乾燥せずにキチンキトサン(日本化学フードテクノ株式会社製 キトサミン)0.25w/w%と酢酸(半井化学株式会社製)0.25w/w%とを含有する水溶液に含浸させた後、マングルで絞り付着量を調整した(しぼり圧3kgf/cm)。100℃で乾燥した後、さらにカレンダー加工を行った。その加工条件は、ローラー温度100℃で、線圧13トン/cm、17トン/cmを各1回ずつである。カレンダー加工を行った紙を比較例2と同様にしてペーパーコンポジットを作製した。
【0052】
比較例2〜3及び実施例5〜10で得られたペーパーコンポジットの引張試験を下記の通り行った。
ペーパーコンポジットを幅15mm、長さ150mmにカットして、サンプルを作製した。引張試験条件は、チャック間距離100mm、試験速度10mm/minで行い、引張強力を測定した。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
Figure 2004092906
【0054】
【発明の効果】
本発明によって、摩擦材料の機械的特性または寸法変動等の構造安定性を損なうこともなく、耐熱性、耐磨耗性および耐久性に優れたブレーキパッドまたはクラッチ板を提供することができる。本発明にかかるブレーキパッドまたはクラッチ板を用いることによって、摩擦材料などに対して耐熱性、耐磨耗性および耐久性を要求するトランスミッションシステムまたはブレーキシステムを、有効に、かつ、安定に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】湿式液晶紡糸可能繊維の模式的断面図であって、本発明における内部オープン構造を示す。
【図2】湿式液晶紡糸可能繊維の模式的断面図であって、本発明における表面処理剤で処理する前の水分を含んだ状態の湿式液晶紡糸可能繊維を示す。
【図3】湿式液晶紡糸可能繊維の模式的断面図であって、湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理された状態を示す。
【図4】湿式液晶紡糸可能繊維の模式的断面図であって、図3の湿式液晶紡糸可能繊維と表面処理剤とが熱処理された状態を示す。
【符号の説明】
1  湿式液晶紡糸可能繊維結晶
2  湿式液晶紡糸可能繊維結晶間間隙
3  湿式液晶紡糸可能繊維の外表面
4  湿式液晶紡糸可能繊維の内部オープン構造における湿式液晶紡糸可能繊維の表面
5  水分
6  表面処理剤
6a エポキシバインダー、ウレタンバインダー又はアミノ糖類
6b シランカップリング剤

Claims (12)

  1. (イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維、(ロ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品または(ハ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維または前記繊維製品を構成要素として含んでいる複合材料を、摩擦材料として含むことを特徴とするブレーキパッドまたはクラッチ板。
  2. 湿式液晶紡糸可能繊維がパラ系アラミド繊維、ヘテロ環芳香族繊維またはセルロース系繊維であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板。
  3. 湿式液晶紡糸可能繊維が商品名ケブラー、トワロン、ザイロンまたはリヨセルである繊維であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板。
  4. 表面処理剤がフェノール樹脂に対して相溶性を有することを特徴とする請求項1に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板。
  5. 表面処理剤がエポキシバインダー、ウレタン系バインダーまたはアミノ糖類を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブレーキパッドまたはクラッチ板。
  6. 表面処理剤がさらにシランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のブレーキパッドまたはクラッチ板。
  7. 湿式液晶紡糸可能繊維がアラミド繊維であって、表面処理剤による処理前の当該アラミド繊維が水分率15%以上であり、結晶サイズ(110面)が50Å以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のブレーキパッドまたはクラッチ板。
  8. 複合材料がフェノール樹脂を構成要素として含んでいることを特徴とする請求項1に記載のブレーキパッドまたはクラッチ板。
  9. (イ)湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び(ロ)前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品と(ハ)フェノール樹脂などの合成樹脂とを構成要素として含んでいることを特徴とする複合材料。
  10. 湿式液晶紡糸可能繊維の外表面及びその内部オープン構造が、表面処理剤で処理され、さらに熱処理されている易接着性湿式液晶紡糸可能繊維又は/及び前記易接着性湿式液晶紡糸可能繊維を構成要素として含んでいる繊維製品をフェノール樹脂に含浸させた後、加熱、加圧成形することを特徴とする複合材料の製造方法。
  11. エポキシバインダー、ウレタンバインダー及びアミノ糖類から選ばれる少なくとも1種を含浸乾燥してなることを特徴とするアラミド繊維。
  12. 請求項11記載のアラミド繊維を用いることを特徴とするブレーキパッド又はクラッチ板。
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