JP3564627B2 - 湿式摩擦材料の製造方法 - Google Patents
湿式摩擦材料の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3564627B2 JP3564627B2 JP17326497A JP17326497A JP3564627B2 JP 3564627 B2 JP3564627 B2 JP 3564627B2 JP 17326497 A JP17326497 A JP 17326497A JP 17326497 A JP17326497 A JP 17326497A JP 3564627 B2 JP3564627 B2 JP 3564627B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- thermosetting resin
- fiber
- friction material
- fibers
- resin
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Braking Arrangements (AREA)
- Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキパッドやクラッチフェーシングとして好適な、特に高負荷での使用環境下においても優れた摩擦性能を発揮する湿式摩擦材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
相対する摩擦面間に潤滑油などの油液が介在する状態で使用される湿式摩擦材料はブレーキパッドやクラッチフェーシング等として有用されており、従来からペーパー系、ゴム系、焼結金属系など各種の摩擦材料が知られている。近時、これらの摩擦材料に要求される摩擦性能はますます高度化し、特に高負荷条件での使用環境下において優れた耐久性を有する摩擦材料が望まれており、ペーパー系摩擦材料の適用が検討されている。
【0003】
従来から摩擦材を構成する繊維成分として芳香族ポリアミド繊維が使用されており、特定の構造単位を有する芳香族ポリアミド繊維から得た繊維を用いる摩擦材(特開昭57−85877 号公報)、無機質繊維及び/又は無機質粒子5〜70重量%、パラ配向芳香族ポリアミド系重合体5〜70重量%、固体潤滑剤1〜30重量%を主たる配合成分とし、かつ芳香族ポリアミド繊維を実質的に含まない摩擦材用組成物(特公平2−41559 号公報)、あるいは芳香族ポリアミド繊維を含む繊維成分と粉体成分に結合剤を含浸成形したクラッチフェーシングにおいて、フェノール系樹脂とポリイミド樹脂とから構成され、ポリイミド系樹脂が全体に対し1〜5重量%含まれている結合剤を含浸したクラッチフェーシング(特開平4−95622 号公報)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの有機質繊維と樹脂とをマトリックスとするペーパー系摩擦材料では高負荷条件での使用時に、樹脂の熱分解により摩擦材料表面に塑性流動が生じて摩擦係数が低下する問題がある。また、パルプなどのセルロース繊維を主成分とするペーパー系摩擦材料では使用時の加圧変形に対する復元力が低く、また動摩擦係数の低下や摩耗量が大きいという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、これらの問題点を解消するために鋭意研究を進めた結果、補強用の繊維成分とバインダーとなる熱硬化性樹脂とを強固に結着させることが有効であることを確認した。
【0006】
本発明は、この知見に基づいて開発されたものであり、その目的とする解決課題は、高負荷条件での使用においても優れた動摩擦係数を備え、高度の耐久性を有する湿式摩擦材料の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による湿式摩擦材料の製造方法は、補強用の繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を均一に被着したのち、合成繊維及び充填材とともに水中に入れて均一に分散させ、該分散液を抄紙して得られたシートを乾燥した後熱硬化性樹脂を含浸し、次いで硬化成形することを構成上の特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の湿式摩擦材料を構成する補強用の繊維としては、無機繊維、パルプ、合成繊維の各種繊維が用いられる。無機繊維としては、カーボン繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、シリカ繊維、ガラス繊維等が挙げられ、パルプとしてはリンターパルプが、合成繊維としてはポリアミド繊維、アラミド繊維、フェノール繊維、レーヨン繊維等が用いられる。このうち無機繊維およびパルプ(以下、無機繊維およびパルプを「繊維成分」という。)は、バインダーとしての樹脂との濡れ性が合成繊維に比べて劣る傾向がある。そのため、これらの繊維成分は、長さ1〜20mmに裁断した短繊維状のものが好ましく、その表面に熱硬化性樹脂を均一に被着する。被着する熱硬化性樹脂にはフェノール系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、メラミン系樹脂等の熱硬化性樹脂が適用される。
【0009】
繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着する方法は、例えばアルコール系、エーテル系等の有機溶媒に熱硬化性樹脂を溶解した溶液中に繊維成分を入れて、撹拌混合し、均質な分散液としたのち濾過、乾燥して有機溶媒を除去することにより被着することができる。なお、熱硬化性樹脂は繊維成分の表面に均一に被着すること及び被着量を制御することが必要であり、これらは有機溶媒中の熱硬化性樹脂の濃度や溶液の粘度、分散液中の繊維成分の量比、分散時間等を調節することにより行うことができる。
【0010】
熱硬化性樹脂を被着した繊維成分は、合成繊維及び充填材とともに水中に入れて撹拌混合し、均一な分散液を調製する。合成繊維は抄紙時に繋ぎ材として機能するもので、例えば、長さ0.5〜5mmのアラミド繊維、フェノール繊維等が用いられる。充填材としては、常用される黒鉛、二硫化モリブデン、カシューダスト、珪藻土等が使用される。これらの湿式摩擦材料を構成する繊維成分、合成繊維ならびに充填材は目的に応じて所定の組成割合で混合されるが、通常、繊維成分35〜65重量部、合成繊維5〜20重量部、残部充填材の重量割合に制御される。
【0011】
繊維成分、合成繊維及び充填材が均一に分散した分散液は、常用の抄紙装置を用いて抄紙した後、乾燥して所望形状のシートを得る。このシートに熱硬化性樹脂を含浸して、硬化成形することにより湿式摩擦材料が製造される。シートに含浸する熱硬化性樹脂はバインダーとして機能するものであり、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂類が用いられる。これらの樹脂は、繊維成分の表面に被着した熱硬化性樹脂との濡れ性が良好なために繊維成分と容易かつ強く接合し、加熱硬化される際に繊維成分相互及び繊維成分とバインダー樹脂部とを強固に結着することができる。この場合に、繊維成分の表面に被着した熱硬化性樹脂と同一の熱硬化性樹脂を含浸すると、相互の濡れ性が向上するので、より一層強固に結着することができる。
【0012】
熱硬化性樹脂をシートに含浸する場合、均一に含浸することが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂をアルコール系やエーテル系等の適宜な有機溶媒に溶解した熱硬化性樹脂溶液中にシートを浸漬する、あるいは熱硬化性樹脂溶液をシートに塗布する、等の方法で含浸することができる。なお、含浸後のシートは加熱乾燥して有機溶媒が除去される。次いで、シートを加熱して熱硬化性樹脂を硬化成形することにより繊維成分、合成繊維及び充填材が強固に結着して一体化した摩擦材料が製造される。このようにして製造された摩擦材料は、鉄板のような金属支持板に熱圧接合することにより摩擦材が得られる。
【0013】
このように本発明の湿式摩擦材料の製造方法によれば、補強用の有機質あるいは無機質の繊維成分の表面に均一に被着した熱硬化性樹脂と、バインダーとなる含浸した熱硬化性樹脂との界面濡れ性が大きいために、加熱して硬化成形した際に繊維間が強固に接合して結着する。また、繊維間や内部に生じる空隙も減少し、更に均一な空隙が形成される。したがって、高い強度を有し、摩擦性能に優れた、特に動摩擦係数の優れた湿式摩擦材料を製造することが可能となる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0015】
実施例1
補強用の繊維成分として、直径7〜30μm 、長さ1〜20mmのリンターパルプ、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維及びケイ酸カルシウム繊維を混合して用いた。この繊維成分を、フェノール樹脂をエタノールに1重量%の割合で溶解した溶液中に入れ、充分に撹拌混合して均一に分散させたのち濾過分離し、次いで乾燥してエタノールを除去した。このようにしてフェノール樹脂が均一に被着した繊維成分を得た。
【0016】
この繊維成分を、合成繊維としてアラミド繊維とカイノール繊維、充填材として黒鉛、カシューダスト、珪藻土を用い、これらを所定の量比で水中に入れて充分に撹拌混合し、分散液をST型抄紙装置〔(株)東洋精機製作所製〕により抄紙してシートを作成した。このシートを圧搾したのち乾燥し、次いで、外径133mm、内径99mm、厚さ1mmのリング状に打ち抜き加工した。このリング状シートを、フェノール樹脂をエタノールに溶解した39重量%溶液中に浸漬して含浸し、乾燥してエタノールを除去した後、160℃の温度に5分間保持して半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0017】
実施例2〜3
繊維成分の表面に被着する熱硬化性樹脂、及びシートに含浸する熱硬化性樹脂を変えた他は、実施例1と同一の繊維成分、合成繊維及び充填材を用いて実施例1と同一の方法によりシートを作成した。これらのリング状シートを、実施例1と同一の温度で保持時間を変えて半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0018】
比較例1〜3
繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着せずにシートを作成して、該シートに含浸する熱硬化性樹脂を変えた他は、実施例1と同一の繊維成分、合成繊維及び充填材を用いて実施例1と同一の方法によりシートを作成した。これらのリング状シートを、実施例1と同一の温度で保持時間を変えて半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0019】
このようにして製造した湿式摩擦材料の製造条件を対比して表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
これらの湿式摩擦材料を、ショットブラストした鉄製の金属支持板にフェノール樹脂初期縮合物をバインダーとして、圧力100Kgf/cm2 、温度250℃で20分間保持して熱圧硬化接合し、試験用の湿式摩擦材を作製した。
【0022】
このようにして作製した湿式摩擦材について、摺速6.8m/s 、吸収エネルギー18.3kgfm/cm2、慣性モーメント0.21kgfms2の条件下で摩擦試験を行った。1000サイクルまでの摩擦試験における動摩擦係数を測定して、その結果を表2に示した。
【0023】
【表2】
【0024】
表1、2から、補強用の繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着した実施例の摩擦材料は、繊維成分とバインダーとなる熱硬化性樹脂との界面濡れ性が向上するために繊維成分間が強く接合し、繊維成分、合成繊維、充填材がバインダー樹脂によって強固に結着して一体化する。その結果、この摩擦材料を用いて作製した摩擦材は摩擦試験時の動摩擦係数の低下が少なく、安定していることが判る。これに対して、繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着しない比較例の摩擦材料は摩擦試験のサイクル数とともに動摩擦係数が低下し、いずれも1000サイクルまでの試験において焼損した。
【0025】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば表面に均一に熱硬化性樹脂を被着した繊維成分を用いて、合成繊維及び充填材とともに抄紙し、得られたシートに熱硬化性樹脂を含浸して硬化成形することにより、これら成分を強固に結着して一体化することができる。その結果、優れた摩擦性能を有し、高負荷条件での使用においても優れた動摩擦係数を備え、高度の耐久性を有する湿式摩擦材料を製造することが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブレーキパッドやクラッチフェーシングとして好適な、特に高負荷での使用環境下においても優れた摩擦性能を発揮する湿式摩擦材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
相対する摩擦面間に潤滑油などの油液が介在する状態で使用される湿式摩擦材料はブレーキパッドやクラッチフェーシング等として有用されており、従来からペーパー系、ゴム系、焼結金属系など各種の摩擦材料が知られている。近時、これらの摩擦材料に要求される摩擦性能はますます高度化し、特に高負荷条件での使用環境下において優れた耐久性を有する摩擦材料が望まれており、ペーパー系摩擦材料の適用が検討されている。
【0003】
従来から摩擦材を構成する繊維成分として芳香族ポリアミド繊維が使用されており、特定の構造単位を有する芳香族ポリアミド繊維から得た繊維を用いる摩擦材(特開昭57−85877 号公報)、無機質繊維及び/又は無機質粒子5〜70重量%、パラ配向芳香族ポリアミド系重合体5〜70重量%、固体潤滑剤1〜30重量%を主たる配合成分とし、かつ芳香族ポリアミド繊維を実質的に含まない摩擦材用組成物(特公平2−41559 号公報)、あるいは芳香族ポリアミド繊維を含む繊維成分と粉体成分に結合剤を含浸成形したクラッチフェーシングにおいて、フェノール系樹脂とポリイミド樹脂とから構成され、ポリイミド系樹脂が全体に対し1〜5重量%含まれている結合剤を含浸したクラッチフェーシング(特開平4−95622 号公報)などが提案されている。
【0004】
しかしながら、これらの有機質繊維と樹脂とをマトリックスとするペーパー系摩擦材料では高負荷条件での使用時に、樹脂の熱分解により摩擦材料表面に塑性流動が生じて摩擦係数が低下する問題がある。また、パルプなどのセルロース繊維を主成分とするペーパー系摩擦材料では使用時の加圧変形に対する復元力が低く、また動摩擦係数の低下や摩耗量が大きいという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、これらの問題点を解消するために鋭意研究を進めた結果、補強用の繊維成分とバインダーとなる熱硬化性樹脂とを強固に結着させることが有効であることを確認した。
【0006】
本発明は、この知見に基づいて開発されたものであり、その目的とする解決課題は、高負荷条件での使用においても優れた動摩擦係数を備え、高度の耐久性を有する湿式摩擦材料の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明による湿式摩擦材料の製造方法は、補強用の繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を均一に被着したのち、合成繊維及び充填材とともに水中に入れて均一に分散させ、該分散液を抄紙して得られたシートを乾燥した後熱硬化性樹脂を含浸し、次いで硬化成形することを構成上の特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の湿式摩擦材料を構成する補強用の繊維としては、無機繊維、パルプ、合成繊維の各種繊維が用いられる。無機繊維としては、カーボン繊維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、シリカ繊維、ガラス繊維等が挙げられ、パルプとしてはリンターパルプが、合成繊維としてはポリアミド繊維、アラミド繊維、フェノール繊維、レーヨン繊維等が用いられる。このうち無機繊維およびパルプ(以下、無機繊維およびパルプを「繊維成分」という。)は、バインダーとしての樹脂との濡れ性が合成繊維に比べて劣る傾向がある。そのため、これらの繊維成分は、長さ1〜20mmに裁断した短繊維状のものが好ましく、その表面に熱硬化性樹脂を均一に被着する。被着する熱硬化性樹脂にはフェノール系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、メラミン系樹脂等の熱硬化性樹脂が適用される。
【0009】
繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着する方法は、例えばアルコール系、エーテル系等の有機溶媒に熱硬化性樹脂を溶解した溶液中に繊維成分を入れて、撹拌混合し、均質な分散液としたのち濾過、乾燥して有機溶媒を除去することにより被着することができる。なお、熱硬化性樹脂は繊維成分の表面に均一に被着すること及び被着量を制御することが必要であり、これらは有機溶媒中の熱硬化性樹脂の濃度や溶液の粘度、分散液中の繊維成分の量比、分散時間等を調節することにより行うことができる。
【0010】
熱硬化性樹脂を被着した繊維成分は、合成繊維及び充填材とともに水中に入れて撹拌混合し、均一な分散液を調製する。合成繊維は抄紙時に繋ぎ材として機能するもので、例えば、長さ0.5〜5mmのアラミド繊維、フェノール繊維等が用いられる。充填材としては、常用される黒鉛、二硫化モリブデン、カシューダスト、珪藻土等が使用される。これらの湿式摩擦材料を構成する繊維成分、合成繊維ならびに充填材は目的に応じて所定の組成割合で混合されるが、通常、繊維成分35〜65重量部、合成繊維5〜20重量部、残部充填材の重量割合に制御される。
【0011】
繊維成分、合成繊維及び充填材が均一に分散した分散液は、常用の抄紙装置を用いて抄紙した後、乾燥して所望形状のシートを得る。このシートに熱硬化性樹脂を含浸して、硬化成形することにより湿式摩擦材料が製造される。シートに含浸する熱硬化性樹脂はバインダーとして機能するものであり、フェノール系樹脂、フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂類が用いられる。これらの樹脂は、繊維成分の表面に被着した熱硬化性樹脂との濡れ性が良好なために繊維成分と容易かつ強く接合し、加熱硬化される際に繊維成分相互及び繊維成分とバインダー樹脂部とを強固に結着することができる。この場合に、繊維成分の表面に被着した熱硬化性樹脂と同一の熱硬化性樹脂を含浸すると、相互の濡れ性が向上するので、より一層強固に結着することができる。
【0012】
熱硬化性樹脂をシートに含浸する場合、均一に含浸することが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂をアルコール系やエーテル系等の適宜な有機溶媒に溶解した熱硬化性樹脂溶液中にシートを浸漬する、あるいは熱硬化性樹脂溶液をシートに塗布する、等の方法で含浸することができる。なお、含浸後のシートは加熱乾燥して有機溶媒が除去される。次いで、シートを加熱して熱硬化性樹脂を硬化成形することにより繊維成分、合成繊維及び充填材が強固に結着して一体化した摩擦材料が製造される。このようにして製造された摩擦材料は、鉄板のような金属支持板に熱圧接合することにより摩擦材が得られる。
【0013】
このように本発明の湿式摩擦材料の製造方法によれば、補強用の有機質あるいは無機質の繊維成分の表面に均一に被着した熱硬化性樹脂と、バインダーとなる含浸した熱硬化性樹脂との界面濡れ性が大きいために、加熱して硬化成形した際に繊維間が強固に接合して結着する。また、繊維間や内部に生じる空隙も減少し、更に均一な空隙が形成される。したがって、高い強度を有し、摩擦性能に優れた、特に動摩擦係数の優れた湿式摩擦材料を製造することが可能となる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して具体的に説明する。
【0015】
実施例1
補強用の繊維成分として、直径7〜30μm 、長さ1〜20mmのリンターパルプ、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維及びケイ酸カルシウム繊維を混合して用いた。この繊維成分を、フェノール樹脂をエタノールに1重量%の割合で溶解した溶液中に入れ、充分に撹拌混合して均一に分散させたのち濾過分離し、次いで乾燥してエタノールを除去した。このようにしてフェノール樹脂が均一に被着した繊維成分を得た。
【0016】
この繊維成分を、合成繊維としてアラミド繊維とカイノール繊維、充填材として黒鉛、カシューダスト、珪藻土を用い、これらを所定の量比で水中に入れて充分に撹拌混合し、分散液をST型抄紙装置〔(株)東洋精機製作所製〕により抄紙してシートを作成した。このシートを圧搾したのち乾燥し、次いで、外径133mm、内径99mm、厚さ1mmのリング状に打ち抜き加工した。このリング状シートを、フェノール樹脂をエタノールに溶解した39重量%溶液中に浸漬して含浸し、乾燥してエタノールを除去した後、160℃の温度に5分間保持して半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0017】
実施例2〜3
繊維成分の表面に被着する熱硬化性樹脂、及びシートに含浸する熱硬化性樹脂を変えた他は、実施例1と同一の繊維成分、合成繊維及び充填材を用いて実施例1と同一の方法によりシートを作成した。これらのリング状シートを、実施例1と同一の温度で保持時間を変えて半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0018】
比較例1〜3
繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着せずにシートを作成して、該シートに含浸する熱硬化性樹脂を変えた他は、実施例1と同一の繊維成分、合成繊維及び充填材を用いて実施例1と同一の方法によりシートを作成した。これらのリング状シートを、実施例1と同一の温度で保持時間を変えて半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0019】
このようにして製造した湿式摩擦材料の製造条件を対比して表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
これらの湿式摩擦材料を、ショットブラストした鉄製の金属支持板にフェノール樹脂初期縮合物をバインダーとして、圧力100Kgf/cm2 、温度250℃で20分間保持して熱圧硬化接合し、試験用の湿式摩擦材を作製した。
【0022】
このようにして作製した湿式摩擦材について、摺速6.8m/s 、吸収エネルギー18.3kgfm/cm2、慣性モーメント0.21kgfms2の条件下で摩擦試験を行った。1000サイクルまでの摩擦試験における動摩擦係数を測定して、その結果を表2に示した。
【0023】
【表2】
【0024】
表1、2から、補強用の繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着した実施例の摩擦材料は、繊維成分とバインダーとなる熱硬化性樹脂との界面濡れ性が向上するために繊維成分間が強く接合し、繊維成分、合成繊維、充填材がバインダー樹脂によって強固に結着して一体化する。その結果、この摩擦材料を用いて作製した摩擦材は摩擦試験時の動摩擦係数の低下が少なく、安定していることが判る。これに対して、繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着しない比較例の摩擦材料は摩擦試験のサイクル数とともに動摩擦係数が低下し、いずれも1000サイクルまでの試験において焼損した。
【0025】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明によれば表面に均一に熱硬化性樹脂を被着した繊維成分を用いて、合成繊維及び充填材とともに抄紙し、得られたシートに熱硬化性樹脂を含浸して硬化成形することにより、これら成分を強固に結着して一体化することができる。その結果、優れた摩擦性能を有し、高負荷条件での使用においても優れた動摩擦係数を備え、高度の耐久性を有する湿式摩擦材料を製造することが可能となる。
Claims (2)
- 補強用の繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を均一に被着したのち、合成繊維及び充填材とともに水中に入れて均一に分散させ、該分散液を抄紙して得られたシートを乾燥した後熱硬化性樹脂を含浸し、次いで硬化成形することを特徴とする湿式摩擦材料の製造方法。
- 被着した熱硬化性樹脂と同一の熱硬化性樹脂を含浸する、請求項1記載の湿式摩擦材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17326497A JP3564627B2 (ja) | 1997-06-13 | 1997-06-13 | 湿式摩擦材料の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17326497A JP3564627B2 (ja) | 1997-06-13 | 1997-06-13 | 湿式摩擦材料の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH111566A JPH111566A (ja) | 1999-01-06 |
JP3564627B2 true JP3564627B2 (ja) | 2004-09-15 |
Family
ID=15957232
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP17326497A Expired - Fee Related JP3564627B2 (ja) | 1997-06-13 | 1997-06-13 | 湿式摩擦材料の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3564627B2 (ja) |
-
1997
- 1997-06-13 JP JP17326497A patent/JP3564627B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH111566A (ja) | 1999-01-06 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100380874B1 (ko) | 보다덜피브릴화된아라미드섬유와합성흑연을포함하는섬유질기재,이로부터마찰라이닝재료를제조하는방법및마찰라이닝재료 | |
KR100571526B1 (ko) | 비-석면,비-금속마찰재료에사용되는섬유베이스재료,비-석면마찰재료,비-석면,비-금속마찰재료,및비-석면,비-금속마찰재료의제조방법 | |
JP4074364B2 (ja) | 高性能二層摩擦材料 | |
KR100350332B1 (ko) | 분말실리콘수지와분말페놀수지를포함하는불포화마찰재료및이의제조방법 | |
JP4166844B2 (ja) | 二層摩擦材料 | |
DE3046963C2 (de) | Reibmaterial und seine Verwendung | |
US4045608A (en) | Friction facing with porous sheet base | |
US8222317B2 (en) | Wet friction material | |
JPH0783258A (ja) | 粉末フェノール樹脂を含む摩擦材料およびそれを製造する方法 | |
JP2000037804A (ja) | 高性能2プライ摩擦材料 | |
JP2005133935A (ja) | 繊維含量の高い弾性多孔質の摩擦材料 | |
US10655687B2 (en) | Paper friction material and method of manufacturing the same | |
JP2004217790A (ja) | 湿式摩擦材 | |
JPH0959599A (ja) | 湿式摩擦材 | |
JP3524015B2 (ja) | 湿式摩擦材 | |
EP0129022A2 (en) | Process for making dry friction material | |
JP3564627B2 (ja) | 湿式摩擦材料の製造方法 | |
JP2004256560A (ja) | 湿式摩擦材 | |
US3554860A (en) | Organic fiber-anthophyllite fiber sheet as a friction material | |
JP4373346B2 (ja) | 湿式摩擦材およびその製造方法 | |
EP0123312A2 (en) | Process for making dry friction material | |
JPH1060414A (ja) | 湿式摩擦材料およびその製造方法 | |
JPH0712158A (ja) | 摩擦材 | |
JP2002173666A (ja) | 湿式摩擦材 | |
JPH0776683A (ja) | 摩擦材用混和物及びこれを用いた摩擦材の製造法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Effective date: 20040518 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Effective date: 20040524 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
R150 | Certificate of patent (=grant) or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Effective date: 20040526 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |