JPH111566A - 湿式摩擦材料の製造方法 - Google Patents

湿式摩擦材料の製造方法

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JPH111566A
JPH111566A JP17326497A JP17326497A JPH111566A JP H111566 A JPH111566 A JP H111566A JP 17326497 A JP17326497 A JP 17326497A JP 17326497 A JP17326497 A JP 17326497A JP H111566 A JPH111566 A JP H111566A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高負荷条件での使用環境下において、優れた
動摩擦係数を備え、高度の耐久性を有する湿式摩擦材料
の製造方法を提供する。 【解決手段】 補強用の繊維成分の表面に熱硬化性樹脂
を均一に被着したのち、合成繊維及び充填材とともに水
中に入れて均一に分散させ、該分散液を抄紙して得られ
たシートを乾燥した後熱硬化性樹脂を含浸し、次いで硬
化成形する。繊維成分と含浸した熱硬化性樹脂とが強固
に結着して一体化するので、優れた摩擦性能を付与する
ことができる。好ましくは、被着した熱硬化性樹脂と同
一の熱硬化性樹脂を含浸する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブレーキパッドや
クラッチフェーシングとして好適な、特に高負荷での使
用環境下においても優れた摩擦性能を発揮する湿式摩擦
材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】相対する摩擦面間に潤滑油などの油液が
介在する状態で使用される湿式摩擦材料はブレーキパッ
ドやクラッチフェーシング等として有用されており、従
来からペーパー系、ゴム系、焼結金属系など各種の摩擦
材料が知られている。近時、これらの摩擦材料に要求さ
れる摩擦性能はますます高度化し、特に高負荷条件での
使用環境下において優れた耐久性を有する摩擦材料が望
まれており、ペーパー系摩擦材料の適用が検討されてい
る。
【0003】従来から摩擦材を構成する繊維成分として
芳香族ポリアミド繊維が使用されており、特定の構造単
位を有する芳香族ポリアミド繊維から得た繊維を用いる
摩擦材(特開昭57−85877 号公報)、無機質繊維及び/
又は無機質粒子5〜70重量%、パラ配向芳香族ポリア
ミド系重合体5〜70重量%、固体潤滑剤1〜30重量
%を主たる配合成分とし、かつ芳香族ポリアミド繊維を
実質的に含まない摩擦材用組成物(特公平2−41559 号
公報)、あるいは芳香族ポリアミド繊維を含む繊維成分
と粉体成分に結合剤を含浸成形したクラッチフェーシン
グにおいて、フェノール系樹脂とポリイミド樹脂とから
構成され、ポリイミド系樹脂が全体に対し1〜5重量%
含まれている結合剤を含浸したクラッチフェーシング
(特開平4−95622 号公報)などが提案されている。
【0004】しかしながら、これらの有機質繊維と樹脂
とをマトリックスとするペーパー系摩擦材料では高負荷
条件での使用時に、樹脂の熱分解により摩擦材料表面に
塑性流動が生じて摩擦係数が低下する問題がある。ま
た、パルプなどのセルロース繊維を主成分とするペーパ
ー系摩擦材料では使用時の加圧変形に対する復元力が低
く、また動摩擦係数の低下や摩耗量が大きいという問題
点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、これらの
問題点を解消するために鋭意研究を進めた結果、補強用
の繊維成分とバインダーとなる熱硬化性樹脂とを強固に
結着させることが有効であることを確認した。
【0006】本発明は、この知見に基づいて開発された
ものであり、その目的とする解決課題は、高負荷条件で
の使用においても優れた動摩擦係数を備え、高度の耐久
性を有する湿式摩擦材料の製造方法を提供することにあ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による湿式摩擦材料の製造方法は、補強用の
繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を均一に被着したのち、
合成繊維及び充填材とともに水中に入れて均一に分散さ
せ、該分散液を抄紙して得られたシートを乾燥した後熱
硬化性樹脂を含浸し、次いで硬化成形することを構成上
の特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の湿式摩擦材料を構成する
補強用の繊維としては、無機繊維、パルプ、合成繊維の
各種繊維が用いられる。無機繊維としては、カーボン繊
維、アルミナ繊維、チタン酸カリウム繊維、ケイ酸カル
シウム繊維、シリカ繊維、ガラス繊維等が挙げられ、パ
ルプとしてはリンターパルプが、合成繊維としてはポリ
アミド繊維、アラミド繊維、フェノール繊維、レーヨン
繊維等が用いられる。このうち無機繊維およびパルプ
(以下、無機繊維およびパルプを「繊維成分」とい
う。)は、バインダーとしての樹脂との濡れ性が合成繊
維に比べて劣る傾向がある。そのため、これらの繊維成
分は、長さ1〜20mmに裁断した短繊維状のものが好ま
しく、その表面に熱硬化性樹脂を均一に被着する。被着
する熱硬化性樹脂にはフェノール系樹脂、フラン系樹
脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、メラミン系樹脂等
の熱硬化性樹脂が適用される。
【0009】繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着する
方法は、例えばアルコール系、エーテル系等の有機溶媒
に熱硬化性樹脂を溶解した溶液中に繊維成分を入れて、
撹拌混合し、均質な分散液としたのち濾過、乾燥して有
機溶媒を除去することにより被着することができる。な
お、熱硬化性樹脂は繊維成分の表面に均一に被着するこ
と及び被着量を制御することが必要であり、これらは有
機溶媒中の熱硬化性樹脂の濃度や溶液の粘度、分散液中
の繊維成分の量比、分散時間等を調節することにより行
うことができる。
【0010】熱硬化性樹脂を被着した繊維成分は、合成
繊維及び充填材とともに水中に入れて撹拌混合し、均一
な分散液を調製する。合成繊維は抄紙時に繋ぎ材として
機能するもので、例えば、長さ0.5〜5mmのアラミド
繊維、フェノール繊維等が用いられる。充填材として
は、常用される黒鉛、二硫化モリブデン、カシューダス
ト、珪藻土等が使用される。これらの湿式摩擦材料を構
成する繊維成分、合成繊維ならびに充填材は目的に応じ
て所定の組成割合で混合されるが、通常、繊維成分35
〜65重量部、合成繊維5〜20重量部、残部充填材の
重量割合に制御される。
【0011】繊維成分、合成繊維及び充填材が均一に分
散した分散液は、常用の抄紙装置を用いて抄紙した後、
乾燥して所望形状のシートを得る。このシートに熱硬化
性樹脂を含浸して、硬化成形することにより湿式摩擦材
料が製造される。シートに含浸する熱硬化性樹脂はバイ
ンダーとして機能するものであり、フェノール系樹脂、
フラン系樹脂、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、メラミ
ン系樹脂などの樹脂類が用いられる。これらの樹脂は、
繊維成分の表面に被着した熱硬化性樹脂との濡れ性が良
好なために繊維成分と容易かつ強く接合し、加熱硬化さ
れる際に繊維成分相互及び繊維成分とバインダー樹脂部
とを強固に結着することができる。この場合に、繊維成
分の表面に被着した熱硬化性樹脂と同一の熱硬化性樹脂
を含浸すると、相互の濡れ性が向上するので、より一層
強固に結着することができる。
【0012】熱硬化性樹脂をシートに含浸する場合、均
一に含浸することが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂を
アルコール系やエーテル系等の適宜な有機溶媒に溶解し
た熱硬化性樹脂溶液中にシートを浸漬する、あるいは熱
硬化性樹脂溶液をシートに塗布する、等の方法で含浸す
ることができる。なお、含浸後のシートは加熱乾燥して
有機溶媒が除去される。次いで、シートを加熱して熱硬
化性樹脂を硬化成形することにより繊維成分、合成繊維
及び充填材が強固に結着して一体化した摩擦材料が製造
される。このようにして製造された摩擦材料は、鉄板の
ような金属支持板に熱圧接合することにより摩擦材が得
られる。
【0013】このように本発明の湿式摩擦材料の製造方
法によれば、補強用の有機質あるいは無機質の繊維成分
の表面に均一に被着した熱硬化性樹脂と、バインダーと
なる含浸した熱硬化性樹脂との界面濡れ性が大きいため
に、加熱して硬化成形した際に繊維間が強固に接合して
結着する。また、繊維間や内部に生じる空隙も減少し、
更に均一な空隙が形成される。したがって、高い強度を
有し、摩擦性能に優れた、特に動摩擦係数の優れた湿式
摩擦材料を製造することが可能となる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して具
体的に説明する。
【0015】実施例1 補強用の繊維成分として、直径7〜30μm 、長さ1〜
20mmのリンターパルプ、チタン酸カリウム繊維、カー
ボン繊維及びケイ酸カルシウム繊維を混合して用いた。
この繊維成分を、フェノール樹脂をエタノールに1重量
%の割合で溶解した溶液中に入れ、充分に撹拌混合して
均一に分散させたのち濾過分離し、次いで乾燥してエタ
ノールを除去した。このようにしてフェノール樹脂が均
一に被着した繊維成分を得た。
【0016】この繊維成分を、合成繊維としてアラミド
繊維とカイノール繊維、充填材として黒鉛、カシューダ
スト、珪藻土を用い、これらを所定の量比で水中に入れ
て充分に撹拌混合し、分散液をST型抄紙装置〔(株)
東洋精機製作所製〕により抄紙してシートを作成した。
このシートを圧搾したのち乾燥し、次いで、外径133
mm、内径99mm、厚さ1mmのリング状に打ち抜き加工し
た。このリング状シートを、フェノール樹脂をエタノー
ルに溶解した39重量%溶液中に浸漬して含浸し、乾燥
してエタノールを除去した後、160℃の温度に5分間
保持して半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0017】実施例2〜3 繊維成分の表面に被着する熱硬化性樹脂、及びシートに
含浸する熱硬化性樹脂を変えた他は、実施例1と同一の
繊維成分、合成繊維及び充填材を用いて実施例1と同一
の方法によりシートを作成した。これらのリング状シー
トを、実施例1と同一の温度で保持時間を変えて半硬化
して湿式摩擦材料を製造した。
【0018】比較例1〜3 繊維成分の表面に熱硬化性樹脂を被着せずにシートを作
成して、該シートに含浸する熱硬化性樹脂を変えた他
は、実施例1と同一の繊維成分、合成繊維及び充填材を
用いて実施例1と同一の方法によりシートを作成した。
これらのリング状シートを、実施例1と同一の温度で保
持時間を変えて半硬化して湿式摩擦材料を製造した。
【0019】このようにして製造した湿式摩擦材料の製
造条件を対比して表1に示した。
【0020】
【表1】 (注) *1 F;フェノール樹脂、I;イミド樹脂、Fu ;フラン樹脂
【0021】これらの湿式摩擦材料を、ショットブラス
トした鉄製の金属支持板にフェノール樹脂初期縮合物を
バインダーとして、圧力100Kgf/cm2 、温度250℃
で20分間保持して熱圧硬化接合し、試験用の湿式摩擦
材を作製した。
【0022】このようにして作製した湿式摩擦材につい
て、摺速6.8m/s 、吸収エネルギー18.3kgfm/c
m2、慣性モーメント0.21kgfms2の条件下で摩擦試験
を行った。1000サイクルまでの摩擦試験における動
摩擦係数を測定して、その結果を表2に示した。
【0023】
【表2】 (注) *2 摩擦試験サイクル数
【0024】表1、2から、補強用の繊維成分の表面に
熱硬化性樹脂を被着した実施例の摩擦材料は、繊維成分
とバインダーとなる熱硬化性樹脂との界面濡れ性が向上
するために繊維成分間が強く接合し、繊維成分、合成繊
維、充填材がバインダー樹脂によって強固に結着して一
体化する。その結果、この摩擦材料を用いて作製した摩
擦材は摩擦試験時の動摩擦係数の低下が少なく、安定し
ていることが判る。これに対して、繊維成分の表面に熱
硬化性樹脂を被着しない比較例の摩擦材料は摩擦試験の
サイクル数とともに動摩擦係数が低下し、いずれも10
00サイクルまでの試験において焼損した。
【0025】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば表面に均
一に熱硬化性樹脂を被着した繊維成分を用いて、合成繊
維及び充填材とともに抄紙し、得られたシートに熱硬化
性樹脂を含浸して硬化成形することにより、これら成分
を強固に結着して一体化することができる。その結果、
優れた摩擦性能を有し、高負荷条件での使用においても
優れた動摩擦係数を備え、高度の耐久性を有する湿式摩
擦材料を製造することが可能となる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 補強用の繊維成分の表面に熱硬化性樹脂
    を均一に被着したのち、合成繊維及び充填材とともに水
    中に入れて均一に分散させ、該分散液を抄紙して得られ
    たシートを乾燥した後熱硬化性樹脂を含浸し、次いで硬
    化成形することを特徴とする湿式摩擦材料の製造方法。
  2. 【請求項2】 被着した熱硬化性樹脂と同一の熱硬化性
    樹脂を含浸する、請求項1記載の湿式摩擦材料の製造方
    法。
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