JP2004091932A - 磁性繊維の製造方法及び磁性繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】樹脂バインダーと磁性粉末とを複合化して樹脂組成物を作製する複合化工程と、前記樹脂組成物を溶融して糸状に押出す溶融紡糸工程と、得られた糸を延伸する延伸工程とを有する磁性繊維の製造方法であって、前記磁性粉末は、前記樹脂組成物中に20〜70重量%配合され、前記樹脂バインダーは、粘度平均分子量20000以上の熱可塑性樹脂と、粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂とからなり、前記粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂は、前記樹脂バインダー全量に対して1〜80重量%配合される磁性繊維の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、延伸性、強度及び平滑性に優れた磁性繊維を溶融紡糸法により連続生産できる磁性繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁性粉末を繊維の原料となる樹脂に均一に分散させて繊維自身に磁性を帯びさせる磁性繊維の製造方法としては、例えば、特許文献1において、金属フェライト粉末を樹脂バインダーに分散させた混合物を溶融混練して均一に複合化されたペレットを作製し、更に、溶融紡糸法によりペレットを押出し機で連続的に溶融押出して延伸し、紡糸する方法が開示されている。
【0003】
磁性繊維の製造においては、磁性繊維の紡糸性を重視して樹脂バインダー中に分散する磁性粉末の充填率を低く設計するのが一般的であり、このような充填率の低い範囲では、繊維の原料となる樹脂として、一般的に平均分子量の比較的高い、例えば、粘度平均分子量20000以上の樹脂が使用されていた。粘度平均分子量20000以上の樹脂を使用して磁性繊維の溶融紡糸を行うことにより、優れた延伸性、製造時にかかる引っ張りに耐え得る適度な強度等の実用的な要求を満たす磁性繊維を製造することができる。
【0004】
近年、布帛;有害物質を吸着除去するフィルター;磁性トナーを使用している複写機、プリンター用のブラシ等の用途では、磁性粉末の含有量が20〜70重量%であるような磁性繊維が必要とされている。しかし、このような高濃度の磁性粉末と樹脂とが均一に複合化された樹脂組成物の溶融粘度は、磁性粉末を含まない樹脂単体の溶融粘度に比べて非常に高いために、粘度平均分子量20000以上の樹脂を使用して磁性粉末を20〜70重量%含有する磁性繊維の溶融紡糸を行うと、押出し機の樹脂圧が不安定になって、糸の吐出が不安定になり、押し出される糸が太くなったり細くなったりして、切れてしまうことがあった。また、糸が切れなかった場合であっても細くなっていると、押出しに引き続いて行われる延伸処理において糸切れが発生するため連続紡糸ができなかった。これに対して、粘度平均分子量20000以下の樹脂を使用して磁性繊維の溶融紡糸を行うと、樹脂組成物の溶融粘度が低いので、押出し機の樹脂圧はかなり安定するものの、延伸処理に耐えられず糸切れが発生するため連続紡糸ができないという製造上の問題があった。
【0005】
また、従来の磁性繊維の製造においては、磁性粉末の充填率が低いので、磁性粉末は分散しやすく、凝集等が品質上の問題になることは少なかった。したがって、一般的に充填剤の分散性を向上させる目的で使用される界面活性剤やカップリング剤により磁性粉末に表面処理を施すことは、製造コストアップに繋がるという経済的な理由から行われていなかった。
【0006】
しかし、磁性粉末の含有量が20〜70重量%である磁性繊維の製造においては、最終的な磁性繊維の太さに対して充分に小さい粒子径の磁性粉末を使用した場合であっても、延伸処理等により磁性粉末の一部が磁性繊維の表面に露出してしまうことがある。これにより、磁性繊維の表面の一部に凹凸が生じて平滑性が損なわれてしまい、磁性繊維の手触りが悪くなって、磁性繊維を紡織して製造した磁性布の手触りが悪くなる等の品質上の不具合を引き起こす問題があった。更に、磁性粉末の一部が磁性繊維の表面に露出してしまうと、磁性粉末の表面硬度が樹脂に比べて非常に高いことから、撚糸、紡織等の磁性繊維の後加工工程において設備の摩耗が著しく大きくなり、例えば、磁性繊維が通過する際に接触するガイドとの接触抵抗が大きくなって、ガイドの摩耗量が増加したり、糸切れ、糸同士のもつれを引き起こしたりする等の製造上の問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開昭55−30453号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、延伸性、強度及び平滑性に優れた磁性繊維を溶融紡糸法により連続生産できる磁性繊維の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、樹脂バインダーと磁性粉末とを複合化して樹脂組成物を作製する複合化工程と、前記樹脂組成物を溶融して糸状に押出す溶融紡糸工程と、得られた糸を延伸する延伸工程とを有する磁性繊維の製造方法であって、前記磁性粉末は、前記樹脂組成物中に20〜70重量%配合され、前記樹脂バインダーは、粘度平均分子量20000以上の熱可塑性樹脂と、粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂とからなり、前記粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂は、前記樹脂バインダー全量に対して1〜80重量%配合される磁性繊維の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明の磁性繊維の製造方法は、複合化工程、溶融紡糸工程及び延伸工程を有し、樹脂バインダー及び磁性粉末を含有し、上記磁性粉末の含有量が20〜70重量%である磁性繊維を製造する方法である。
上記樹脂バインダーは、粘度平均分子量20000以上の熱可塑性樹脂(以下、ベース樹脂ともいう)と、粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂(以下、低分子量樹脂ともいう)とからなる。
【0011】
上記ベース樹脂は、磁性繊維の延伸性、強度等を高めるために配合される。粘度平均分子量が20000未満であると、溶融紡糸工程において糸切れを生じたり、磁性繊維の強度低下を引き起こしたりする。
上記ベース樹脂としては溶融紡糸が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテル等が挙げられる。なかでも、強度等の実用的観点からポリアミド系樹脂が好ましく、例えば、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、各種ナイロンの共重合体;ポリアミド系エラストマー等の一部変性されたもの等が挙げられる。なお、上記ベース樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0012】
上記低分子量樹脂は、磁性繊維の溶融紡糸工程における押出し安定性を高めるために配合される。粘度平均分子量が7000未満であると、複合化工程及び溶融紡糸工程において樹脂バインダーの分解等により発生する気体の量が多くなって磁性繊維への気泡の巻き込みを引き起こしたり、磁性繊維の延伸性が低下して溶融紡糸工程において糸切れを生じたり、磁性繊維の強度が低下したりする問題があり、製造上又は品質上好ましくない。粘度平均分子量が15000を超えると、磁性繊維の溶融紡糸工程における押出し安定性を高める効果が充分に得られない。上記低分子量樹脂は、粘度平均分子量が7000〜15000であることが好ましく、更には7000〜11000であることがより好ましい。この範囲であれば、溶融紡糸工程における押出し安定性と強度等とのバランスに優れた磁性繊維を製造することができる。
【0013】
上記低分子量樹脂としては溶融紡糸が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン、ポリエーテル等が挙げられる。なかでも、強度等の実用的観点からポリアミド系樹脂が好ましく、例えば、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、各種ナイロンの共重合体;ポリアミド系エラストマー等の一部変性されたもの等が挙げられる。なお、ベース樹脂と低分子量樹脂とは、必ずしも同一の樹脂でなくてもよいが、相溶性が高い方が好ましく、必要に応じて相溶化剤等を添加して相溶性を高めてもよい。また、上記低分子量樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0014】
上記低分子量樹脂の配合量は、溶融紡糸工程の条件に応じて選択されるが、樹脂バインダー全量に対して1〜80重量%である。1重量%未満であると、低分子量樹脂を配合することによる効果を充分に得ることができない。80重量%を超えると、磁性繊維の強度が低下し、延伸性が低下してしまうために、紡糸性が低下したり、撚糸、紡織等の後加工工程における糸切れが多くなったりする。例えば、50μm程度の繊維径で紡糸するには、60重量%以下であることが好ましい。
【0015】
上記樹脂バインダーの粘度平均分子量は特に限定されないが、得られる磁性繊維に高い延伸性を与えるためには15000以上であることが好ましい。15000未満であると、溶融紡糸工程における連続紡糸の安定性が低下したり、紡糸された磁性繊維の後加工工程における糸切れ等のトラブルの発生頻度が増加したり、磁性繊維の品質が低下したりすることがある。
【0016】
上記樹脂バインダーには、本発明の趣旨を逸脱しない限り、一般的な添加剤が添加されていてもよく、例えば、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、分散剤、潤滑剤、難燃剤、着色剤、安定化剤等が添加されていてもよい。
【0017】
上記磁性粉末としては特に限定されず、例えば、フェライト、サマリウムコバルト、サマリウム鉄窒素、ネオジウム鉄ボロン等からなる粉末が挙げられる。なかでも、錆びが発生しにくい磁性材料からなる粉末が好ましく、例えば、フェライト、サマリウム鉄窒素等からなる粉末が挙げられる。
上記磁性粉末の平均粒子径は特に限定されないが、製造される磁性繊維の繊維径よりも充分に小さいことが好ましく、必要に応じて磁性粉末を粉砕して用いることが好ましい。例えば、製造される磁性繊維の繊維径が50μm程度であれば、平均粒子径は3μm以下であることが好ましく、より好ましくは1μm以下である。
【0018】
上記磁性粉末には、樹脂バインダーに対する濡れ性を向上させる表面処理を施すことが好ましい。
上記表面処理の方法としては、一般的な方法でよく、例えば、表面処理剤を希釈溶剤により希釈してから磁性粉末に添加し、万能混合機又は一般的なミキサーで充分に攪拌して分散させた後に希釈溶剤を乾燥させる方法等が挙げられる。
【0019】
上記表面処理剤としては樹脂バインダーに対する濡れ性を向上できる処理剤であれば特に限定されず、例えば、チタネート系カップリング剤、シラン系カップリング剤、相溶化剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。上記表面処理剤は、上記磁性粉末の表面性状と上記樹脂バインダーとの組み合わせによって適宜選択され、例えば、フェライトからなる粉末及び/又はサマリウム鉄窒素からなる粉末とポリアミド系樹脂とを複合化させる場合には、アミノシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤が好適である。
【0020】
上記希釈溶剤としては特に限定されず、例えば、水、アルコール等が挙げられるが、上記磁性粉末が酸化しやすい場合には、水、又は、極性が大きく吸湿性のある有機溶剤は磁性粉末の酸化を促進させるので用いない方がよい。
上記希釈溶剤を乾燥させる方法としては特に限定されず、例えば、高温に加熱して乾燥させてもよく、減圧してもよい。また、加熱乾燥する際には必要に応じて不活性ガスで置換してから加熱してもよい。
【0021】
本発明の磁性繊維の製造方法は、磁性粉末の含有量が20〜70重量%である磁性繊維を製造するのに好適に使用される。本発明の磁性繊維の製造方法は、磁性粉末の含有量が20重量%未満である磁性繊維の製造にも用いることができるが、特に従来の製造方法では実質的に溶融紡糸が不可能であった磁性粉末の含有量が20〜70重量%である磁性繊維を製造するのに有用である。磁性粉末の含有量が70重量%を超える磁性繊維は、溶融紡糸が不可能であったり、溶融紡糸ができたとしても、紡糸後の撚糸、紡織等の後加工工程における加工性に劣っていたり、磁性繊維を紡織して得られる磁性布の手触り等の質感に劣っていたりする。より好ましくは、磁性粉末の含有量が40〜60重量%である磁性繊維を製造するのに使用される。
【0022】
本発明の磁性繊維の製造方法は、複合化工程、溶融紡糸工程及び延伸工程を有する。
上記複合化工程では、樹脂バインダーと磁性粉末とを複合化して樹脂組成物を作製するが、この際、上記磁性粉末は、上記樹脂組成物中に20〜70重量%配合される。例えば、樹脂バインダー中に、得られる樹脂組成物全量に対して20〜70重量%の磁性粉末を機械的に充分に分散させて均一な混合物とし、得られた混合物を混練機で溶融混練することにより、磁性粉末と樹脂バインダーとが均一に複合化された樹脂組成物のペレットを作製できる。上記複合化工程において、樹脂バインダー中に磁性粉末を予め均一に複合化させておくことにより、溶融紡糸工程における押出し性が向上し、連続紡糸が可能となる。
上記混練機としては樹脂バインダーを溶融して樹脂バインダー中に磁性粉末を充分に分散させることができるものであれば特に限定されず、例えば、バッチ式のニーダー、単軸又は2軸の連続押出し機等が挙げられる。
【0023】
上記溶融紡糸工程では、上記樹脂組成物を溶融して糸状に押出す。例えば、磁性粉末と樹脂バインダーとからなる樹脂組成物のペレットを押出し機内で溶融した後に押出しを行って糸を製造する。
上記押出し機としては特に限定されず、例えば、樹脂の溶融紡糸に一般的に使用する押出し機を用いることができる。なお、上記押出し機内にスクリーンを設置することにより、樹脂組成物中の凝集粒子の除去等を行うことができ、連続紡糸等の生産安定性を向上することができる。
【0024】
上記延伸工程では、上記溶融紡糸工程で得られた糸を延伸する。上記糸を延伸することにより所望の繊維径の磁性繊維を製造できる。
上記延伸工程で用いられる延伸機としては特に限定されず、例えば、押し出機から得られた糸の延伸に一般的に使用する延伸機を用いることができる。
なお、上記押出し機により磁性粉末と樹脂バインダーとを充分に均一に複合化し、連続的に安定して押し出すことが可能であれば、磁性粉末、樹脂バインダー及び添加剤等を直接押出し機に投入して複合化工程、溶融紡糸工程及び延伸工程を連続的に行ってもよい。
【0025】
本発明の磁性繊維の製造方法では、一般的な繊維に使用される樹脂よりも平均分子量の低い樹脂を一定の割合で配合した樹脂バインダーを用いることにより、磁性繊維の延伸性を損なうことなく、磁性粉末と樹脂バインダーとからなる樹脂組成物の溶融粘度を低下させることができる。これにより、磁性粉末の含有量が20〜70重量%である磁性繊維を製造する場合であっても、溶融紡糸法において優れた紡糸性を発現し、押し出機からの溶融糸の押出しを安定した圧力で行うことができる。
更に、磁性粉末に対して樹脂バインダーへの濡れ性を向上させる表面処理を施し、安定で均一な樹脂バインダー層を磁性粉末の表面に形成させることにより、磁性繊維の表面近傍に含有される磁性粉末が直接磁性繊維の表面に露出することを防止して、磁性繊維の表面を平滑にし、摩擦抵抗を低下させることができる。これにより、設備への引っかかりにより引き起こされる糸切れ等の生産上のトラブルを防いで撚糸性を向上し、磁性繊維が接触することによるガイド等の設備の摩耗量を低減し、かつ、磁性繊維を紡織して得られる磁性布の手触り等の質感を向上することができる。
【0026】
本発明の磁性繊維の製造方法により製造された磁性繊維は、磁性粉末を20〜70重量%含有することから、紡糸後の撚糸、紡織等の後加工工程における、糸切れ、糸同士のもつれ等のトラブルの少ないものである。このような本発明の磁性繊維の製造方法により製造された磁性繊維もまた本発明の1つである。
本発明の磁性繊維の用途としては特に限定されないが、例えば、布帛;有害物質を吸着除去するフィルター;磁性トナーを使用している複写機、プリンター用のブラシ等が好適である。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
平均粒子径0.8μmのフェライト粉末100重量部と、粘度平均分子量10000のナイロン6の50重量部と、粘度平均分子量20000のナイロン66の50重量部とを万能混合機で3分間攪拌し、充分に均一な混合物を作製した。この混合物を2軸押出し機へ投入し、2軸押出し機内で溶融混練することで複合化し、連続的に押出して、更に小さくカッティングすることで磁性粉末と樹脂バインダーとからなる樹脂組成物のペレットを得た。
【0029】
得られた樹脂組成物のペレットを紡糸用の押出し機へ投入し、100時間連続的に溶融紡糸を行った。押出し機には100メッシュのスクリーンを設置した。ノズルから押し出された溶融した糸を延伸倍率2.8倍で延伸して最終的に直径約50μmの磁性繊維を製造した。この磁性繊維について撚糸装置により1000時間連続的に撚糸を行った。
【0030】
(実施例2)
平均粒子径0.8μmのフェライト粉末100重量部に対して、アミノシラン系カップリング剤1重量部をイソプロピルアルコール10重量部で希釈した希釈溶液を添加し、万能混合機で3分間攪拌して充分にフェライト粉末を分散させた。この分散液を攪拌しながら減圧し、80℃に加熱して加熱乾燥を行い、樹脂バインダーに対する濡れ性を向上させる表面処理が施されたフェライト粉末を得た。表面処理されていないフェライト粉末の代りに、得られた樹脂バインダーに対する濡れ性を向上させる表面処理が施されたフェライト粉末を用いたこと以外は、実施例1と同様にして磁性繊維を製造し、撚糸装置により1000時間連続的に撚糸を行った。
【0031】
(比較例1)
平均粒子径0.8μmのフェライト粉末100重量部と粘度平均分子量20000のナイロン66の100重量部とを万能混合機で3分間攪拌し、充分に均一な混合物を作製した。この混合物を紡糸用の押出し機へ投入し、100時間連続的に溶融紡糸を行った。押出し機には100メッシュのスクリーンを設置した。ノズルから押し出された溶融した糸を延伸倍率2.8倍で延伸して最終的に直径約50μmの磁性繊維を製造した。この磁性繊維について撚糸装置により1000時間連続的に撚糸を行った。
【0032】
(比較例2)
粘度平均分子量20000のナイロン66の100重量部の代りに、粘度平均分子量14000のナイロン66の100重量部を用いたこと以外は比較例1と同様にして磁性繊維を製造し、撚糸装置により1000時間連続的に撚糸を行った。
【0033】
(評価)
実施例1、2及び比較例1、2について、それぞれ以下の方法により、紡糸性及び撚糸性を評価し、結果を表1に示した。
紡糸性は、100時間の連続的な溶融紡糸における糸切れ回数を計測して評価した。
撚糸性は、1000時間の連続的な撚糸における、糸切れ及びもつれ等により設備が停止した回数を計測して評価した。
また、1000時間の連続的な撚糸の後に、撚糸装置に設置されている磁性繊維が通過するガイドの外観変化を目視で確認し、磁性繊維がガイドを通過することによりついた傷の度合いからガイドの摩耗度合いを評価した。摩耗度合いの評価基準は、ガイド表面に傷が全くない状態を◎とし、ガイド表面にこすれた跡が見られるが実質的に摩耗がない状態を○とし、ガイド表面に傷が付き一部摩耗が見られる状態を△とし、ガイド表面に傷がかなり深く付き摩耗が激しい状態を×とした。
【0034】
【表1】
【0035】
表1より、ベース樹脂に一定の割合で低分子量樹脂を添加した樹脂バインダーを用いた実施例1及び2では、連続溶融紡糸中に糸切れが全く生じず、押出しの際の樹脂圧も非常に安定しており、非常に優れた紡糸性を有していた。
一方、比較例1では、連続溶融紡糸を開始して30分後くらいから、押出しの際の樹脂圧の変動幅が急激に大きくなり、吐出不良による糸切れが頻繁に起ったために連続紡糸ができなかった。また、比較例2では、比較例1に比べて樹脂の押出し性に優れ、安定して連続的に溶融糸を押し出すことができたが、引き続き行われた糸の延伸処理により糸切れが頻繁に発生したため、結果的に糸切れ回数が多くなった。
また、実施例1及び2では、樹脂バインダーを構成する2種の熱可塑性樹脂の粘度平均分子量を算術平均した値が15000であり、比較例2で製造された磁性繊維の樹脂バインダーの粘度平均分子量14000よりも高かったが、優れた紡糸性を有していた。これは単に平均分子量の低い樹脂バインダーを使用するだけでは磁性繊維の紡糸性が改善しないことを示している。
【0036】
1000時間の連続撚糸後におけるガイドの磨耗度合いを比較すると、実施例1では、ガイド表面にこすれた跡は見られたが実質的に磨耗はほとんどない状態、実施例2では、ガイド表面に傷が全くない状態であった。
また、1000時間の連続撚糸における設備停止回数を比較すると、実施例1では6回、実施例2では1回であり、比較例2の48回と比べて、撚糸工程での設備停止回数は極めて少なかった。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、延伸性、強度及び平滑性に優れた磁性繊維を溶融紡糸法により連続生産できる磁性繊維の製造方法を提供することができる。
Claims (4)
- 樹脂バインダーと磁性粉末とを複合化して樹脂組成物を作製する複合化工程と、前記樹脂組成物を溶融して糸状に押出す溶融紡糸工程と、得られた糸を延伸する延伸工程とを有する磁性繊維の製造方法であって、
前記磁性粉末は、前記樹脂組成物中に20〜70重量%配合され、
前記樹脂バインダーは、粘度平均分子量20000以上の熱可塑性樹脂と、粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂とからなり、前記粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂は、前記樹脂バインダー全量に対して1〜80重量%配合される
ことを特徴とする磁性繊維の製造方法。 - 樹脂バインダーに対する濡れ性を向上させる表面処理を磁性粉末に施す請求項1記載の磁性繊維の製造方法。
- 粘度平均分子量20000以上の熱可塑性樹脂、及び、粘度平均分子量7000〜15000の熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂である請求項1又は2記載の磁性繊維の製造方法。
- 請求項1、2又は3記載の磁性繊維の製造方法により製造された磁性繊維。
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