JP2004090458A - インクジェット記録装置および予備吐出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数のノズル列がインク色別に並列に配置された記録ヘッドにおいて、予備吐出時に同時に吐出動作を行うノズル列を1列とすることで、インク吐出動作によって発生するミストにおける記録ヘッドのノズル面に移動する力が、前記記録ヘッドのノズル面に到達するには十分ではなく、発生したミストのほとんどは到達せずに別方向へと移動または落下する。また、予備吐出時に同時に吐出動作を行うノズル列を連続して並列された2列とすることで、インクの吐出動作によって発生するミストにおける記録ヘッドのノズル面に移動する力が、次の予備吐出動作で発生する気流によって押し戻され、発生したミストのほとんどは到達せずに別方向へ移動または落下する。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録媒体に対しインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関し、詳しくは、記録ヘッドの状態を回復させる予備吐出を行うインクジェット記録装置及びその予備吐出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンター、複写機、ファクシミリ等において画像等のプリント手段として用いられる記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサー等を含む複合電子機器やワークステーション等のプリント出力機器として用いられる記録装置は、画像情報(文字情報等すべての出力情報を含む)に基づいて用紙やプラスチック薄板等の記録媒体に画像等を記録するように構成されている。このような記録装置は、その記録方法により、インクジェット方式、ワイヤドット方式、サーマル方式、レーザービーム方式等に分けることができる。このうち、インクジェット方式の記録装置(以下、インクジェット記録装置と言う)は、記録ヘッドを含む記録手段から記録媒体にインクを吐出して記録を行うものであり、他の記録方式に比べて高精細化が容易でしかも高速で静粛性に優れ、かつ安価であるという、種々の利点を有している。一方、近年では、カラー画像などのカラー出力の重要性も高まり、銀塩写真に匹敵する高画質のカラーインクジェット記録装置も数多く開発されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置においては、記録速度向上のため、複数の記録素子を集積配列してなる記録ヘッドとして、インク吐出口及び液路を複数集積したものを用い、さらにカラー対応として、複数個の上記記録ヘッドを備えたものが一般的である。
【0004】
図1に示すように、インクを吐出する記録ヘッドをガイドレールに沿って走査し、その走査の際に記録を行う記録動作と、所定量の紙送り動作とを繰り返して記録媒体全体に記録を行うシリアルタイプの記録方式が多い。
【0005】
図2は記録ヘッドの吐出口面を示す模式図である。記録ヘッドの走査方向に対して垂直な方向に吐出口列が形成され、また吐出口列はインク色別に記録ヘッドの走査方向に並列に配列されている。
【0006】
また、記録ヘッドを構成するインク吐出口のそれぞれは、一定時間吐出動作を行わないと、吐出口付近のインクが増粘したり、吐出口付近に空気中に浮遊する塵埃が付着して、吐出動作時に吐出量や吐出方向が安定しないという吐出不良を起こす可能性がある。そこで、一定時間吐出動作を行わなかった後、吐出動作を開始する前や、記録動作中も定期的に回復処理の一種である予備吐出を行うことにより、常に安定した吐出を維持する必要がある。
【0007】
上述のシリアルタイプの記録方式の場合、記録領域とは別の領域に設けられた予備吐出受けまで記録ヘッドが移動し、所定発数及び所定吐出周波数の吐出を予備吐出受けに行う。予備吐出受けは、例えば、ホームポジションの記録ヘッド102に対向した位置に備えられている。
【0008】
ところで、吐出口から吐出されるインク滴は、通常、一滴のインク滴として吐出されず、吐出後、複数のインク滴に分割される。複数のインク滴の中で最も大きなインク滴を主滴、主滴の吐出方向の後方に追随する主滴よりも小さいインク滴をサテライト、その他にさらに微細な吐出速度の小さいインク滴を浮遊ミストと呼ぶ。この現象は、記録動作だけでなく予備吐出動作でも常に起きるものである。
【0009】
図3において、301はインク、302は吐出直後のインク、303はメニスカス、304は主滴、305はサテライト、306は浮遊ミストである。
【0010】
同図(a)において吐出が開始される。吐出開始直後はノズルから連続的にインク302が吐出される。その後、同図(b)において気泡の収縮またはピエゾ素子の変形のために生じるメニスカス303が後退し、記録ヘッド102の内部へインク301が移動する。このインク301の移動に伴い、吐出されたインク302が記録ヘッド内部のインクから分離され、吐出されたインク302内に速度分布が生じる。同図(c)において速度分布が生じたインクは分割され、最も体積、速度とも大きいインク滴(主滴304)、主滴より体積、速度とも小さいインク滴(サテライト305)、さらに体積、速度とも小さく、予備吐出受けに到達しないインク滴(浮遊ミスト306)が生じる。
【0011】
ところで、上述したように、記録ヘッドは各色のノズル列が配列されている。予備吐出は記録ヘッド102に備えられた各色ノズル列全てについて行われるが、全てのノズル列について同時に予備吐出を行うと、予備吐出に必要な電力がインクジェット記録装置に備えられた図示しない電源から供給される最大電力を超えてしまい、正常な吐出ができない場合がある。そこで、このような状況を避けるために、予備吐出は、最大電力内に収まる様に複数ステップに分割されて行われる。
【0012】
図4に複数ステップに分割された予備吐出動作を示す。401は記録ヘッド102から吐出されたインク滴を受ける予備吐出受けを表し、402はイエローの予備吐出によるインク滴の軌跡を表し、同様に403はマゼンタ、404はシアン、405はブラックの予備吐出によるインク滴の軌跡を表す。406は浮遊ミスト及びインク滴が予備吐受けに着弾した後に跳ね返った微細なインク滴(跳ね返りミスト)が予備吐出で生じた気流によって巻き上げられた軌跡を表す。以下、浮遊ミストと跳ね返りミストを単にミストと称す。
【0013】
同図(a)は2ステップに分割された予備吐出の第1ステップを表し、マゼンタとシアンの予備吐出403、404を行う。マゼンタの予備吐出403によるインク滴は予備吐受け401に着弾すると同時にミスト406を発生し、気流によりそのミスト406を巻き上げる。シアンの予備吐出404によるインク滴も同様に着弾するとミスト406を発生し、気流により巻き上げる。マゼンタとシアンの予備吐出403、404によるインク滴が着弾して発生する跳ね返りの気流が互いにぶつかり合うことにより、さらにミスト406が記録ヘッド102側に向かって巻き上げられる。しかしながら、巻き上げられたミストの殆どは、次のマゼンタとシアンの予備吐出による気流403,404に押し戻される。結果として記録ヘッド102に到達するミスト406も僅かであり、ましてやマゼンタとシアンの記録ヘッド202、203のノズルに侵入するものは殆ど無い。
【0014】
同図(b)は2ステップに分割された予備吐出の第2ステップを表す。シアンとマゼンタの予備吐出(1ステップ目)が終了した後、イエローとブラックの予備吐出402、405が行われる。イエローとブラックの予備吐出402、405も同様に互いにミスト406を巻き上げるが、イエローとブラックの記録ヘッド間距離はマゼンタとシアンのそれより大きいため、次のイエロー及びブラックの吐出による予備吐出受け方向への気流が、巻き上げられたミストまで十分に届かない。その結果、巻き上げられたミストは押し戻されず、記録ヘッド表面102へと到達する。到達したイエローとブラックのミストはマゼンタとシアンの記録ヘッド202、203近傍の表面に付着する。この付着したミストがマゼンタとシアンのノズル内へと進入するとインクの混色が発生する。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように複数の主走査方向に並べられた複数のノズル列を備え、それらノズルの予備吐出を複数ステップで行う場合、1つのステップに同時に予備吐出を行うノズル列の選択によっては、巻き上げられたミストが記録ヘッド表面に付着してノズル内のインクとの混色が生じ、次の記録動作で所望の色が記録できない等の画像弊害が生じることがあった。また、ノズルに付着したミストが、該ノズルが吐出するインク色と同色であった場合は、混色という問題は発生しないが、ノズル面にインクが付着することによって、次の吐出動作で正しい吐出方向に吐出されないなどの問題も生じる可能性が高い。これらの問題は、同時に予備吐出を行うノズル列間の距離が所定量以上であると、発生する可能性が高まるので、このような事態を防ぐべく、同時に全てのノズル列の予備吐出を行うことも考えられる。しかしながら、全てのノズル列の予備吐出を同時に行うには高電力の電源をインクジェット記録装置本体に備えなければならず、高コストとなってしまう。
【0016】
本発明は上記の課題を解決する為になされたものであり、その目的とするところは、低コストでかつインクの混色が無く所望の色を印字できるインクジェット記録装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録装置は、複数のノズルが配列されたノズル列を複数配置した記録ヘッドを走査し、該記録ヘッドより記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの走査を停止した状態で前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段を具え、該予備吐出手段は、同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして前記複数のノズル列のうちの1つのノズル列に配列されたノズルを選択して予備吐出を行う手段であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のインクジェット記録装置は、複数のノズルが配列されたノズル列を複数配置した記録ヘッドから記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段を具え、該予備吐出手段は、同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして、前記複数のノズル列のうちの隣接して配置された複数のノズル列を組として選択し、この組を切り換えて順次予備吐出動作を行わせる手段であることを特徴とするものであってもよい。
【0019】
また、本発明の予備吐出方法は、複数のノズルが配列されたノズル列を複数並列に配置して記録ヘッドを走査し、該記録ヘッドより記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用い、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの走査を停止した状態で前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出の方法において、同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして前記複数のノズル列のうちの1つのノズル列に配列されたノズルを選択して予備吐出を行う工程を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の予備吐出方法は、複数のノズルが配列されたノズル列を複数配置した記録ヘッドから記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用い、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出の方法において、同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして、前記複数のノズル列のうちの隣接して配置された複数のノズル列を組として選択し、この組を切り換えて順次予備吐出動作を行わせる手段であることを特徴とするものであってもよい。
【0021】
以上の構成によれば、予備吐出時に同時に吐出動作を行うノズル列は、1列なので、インク吐出動作によって発生するミストにおける記録ヘッドのノズル面に移動する力が、前記記録ヘッドのノズル面に到達するには十分ではなく、発生したミストのほとんどは到達せずに別方向へと移動または落下する。また、予備吐出時に同時に吐出動作を行うノズル列は、連続して並列された2列なので、インクの吐出動作によって発生するミストにおける記録ヘッドのノズル面に移動する力が、次の予備吐出動作で発生する気流によって押し戻され、発生したミストのほとんどは到達せずに別方向へ移動または落下する。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。
【0023】
図1は以下の各実施形態に共通するインクジェット記録装置主要部を示す斜視図である。
【0024】
同図において、101はインクジェットカートリッジである。インクジェットカートリッジ101は、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのインクがそれぞれ貯留されたインクタンクとそれぞれのインクに対応した記録ヘッド102とから構成されている。なお、記録ヘッド102の詳細については後述する。
【0025】
103は紙送りローラであり、補助ローラ104とともに記録媒体Pを挾持しながら図の矢印方向に回転し、記録媒体Pをy方向(副走査方向)に随時搬送する。また、105は一対の給紙ローラであり、記録媒体の給紙を行う。一対のローラ105は、ローラ103および104と同様、記録媒体Pを挾持して回転するが、紙送りローラ103よりもその回転速度を小さくすることによって記録媒体に張力を作用させることができる。106はキャリッジであり、4つのインクジェットカートリッジ101を搭載している。107はガイドレールであり、キャリッジ106は、このガイドレール107に沿って記録媒体上を走査する。
【0026】
キャリッジ106は記録媒体の一方端から他方端に向かって走査し、この走査時に各記録ヘッド102よりインクを記録媒体Pに吐出して記録を行う。キャリッジ106が記録媒体Pの他方端に到達したら、紙送りローラ103等が回転し、記録媒体Pを一定量だけ搬送する。この記録動作と紙送り動作を交互に繰り返すことにより、記録媒体全体に画像が形成されることになる。
【0027】
キャリッジ106は、記録を行わないとき、あるいは記録ヘッド102の回復処理などを行うときには、図中の破線で示した位置のホームポジションhに移動して停止する。
【0028】
図2は記録ヘッドの吐出口面を示す模式図である。
【0029】
記録ヘッド102は記録媒体と対峙する面にインク色別の吐出口(以下、「ノズル」ともいう)を配置している。201は1インチあたりD個のノズル密度すなわちDdpiで、イエローインクを吐出するノズルが配列されたイエローのノズル列である。ノズルの配列方向は、キャリッジの走査方向、すなわち矢印x方向に垂直なy方向となっている。同様に、202はマゼンタインク、203はシアンインク、204はブラックインクに対応したノズル列である。各色のノズル列は、キャリッジの走査方向に並列に配置されている。
【0030】
各ノズルは、インクタンクとインク路を介して連通しており、インクタンクからのインクの供給によって、吐出口付近は常にインクで充填されている。各ノズルに対応する発熱ヒータが設けられている。この発熱ヒータに電気を印加し、ヒータが発する熱エネルギーによって、インク中に気泡を発生させる。そして、この気泡の生成圧力によって、ノズル内のインクを所定量だけ押し出すことにより、インク吐出が行われる。本実施形態では、このようなバブルジェット(R)方式でインクを吐出する記録ヘッドとしたが、本発明はピエゾ方式など、他の吐出方法でインクを吐出する記録ヘッドであってもよい。また、インク色毎、ノズル列毎に別筐体となった記録ヘッドであってもよい。
【0031】
図5は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。なお、本実施形態のインクジェット記録装置の機械的構成は図1に示したものと同様である。
【0032】
同図において、CPU500はメインバスライン505を介して装置各部の制御およびデータ処理を実行する。すなわち、CPU500は、ROM501に格納されるプログラムに従い、データ処理、ヘッド駆動およびキャリッジ駆動を以下の各部を介して制御する。RAM502はこのCPU500によるデータ処理等のワークエリアとして用いられ、また、これらメモリにはその他にハードディスク等がある。画像入力部503はホスト装置とのインターフェースを有し、ホスト装置から入力した画像を一時的に保持する。画像信号処理部504は、色変換、二値化等のデータ処理を実行する。
【0033】
操作部506はキー等を備え、これによりオペレータによる制御入力等を可能にする。回復系制御回路507ではRAM502に格納される回復処理プログラムに従って予備吐出等の回復動作を制御する。すなわち、回復系モータ508は、記録ヘッド513とこれに対向離間するクリーニングブレード509やキャップ510、吸引ポンプ511を駆動する。また、ヘッド駆動制御回路515は、記録ヘッド513のインク吐出用電気熱変換体の駆動を制御し、通常、予備吐出や記録のためのインク吐出を記録ヘッド513に行わせる。さらに、キャリッジ駆動制御回路516および紙送り制御回路517も同様に、プログラムに従い、それぞれ、キャリッジの移動および紙送りを制御する。
【0034】
また、記録ヘッド513のインク吐出用の電気熱変換体が設けられている基板には、保温ヒータが設けられており、記録ヘッド内のインク温度を所望設定温度に加熱調整することができる。又、サーミスタ512は、同様に上記基板に設けられているもので、実質的な記録ヘッド内部のインク温度を測定するためのものである。サーミスタ512も同様に、基板にではなく外部に設けられていても良く記録ヘッドの周囲近傍にあっても良い。
【0035】
以上の装置構成に基づく、本発明のいくつかの実施形態について以下に説明する。
【0036】
(実施例1)
本実施例に用いる記録ヘッドの模式図は図2と同様である。
【0037】
黒、カラーそれぞれのノズル列はノズルピッチ約42.4μm、128個の吐出口(128ノズル)、記録ヘッド長さ5.42mmである。また、黒のノズル列204とイエローのノズル列201のx方向の位置関係は黒のノズル列がx方向上流側(記録領域側)イエローのノズル列201が下流側(ホームポジション側)に位置する。黒のノズル列204とイエローのノズル列201の距離は、3.0mmであり、イエロー−シアン、シアン−マゼンタ、マゼンタ−ブラックのノズル列のx方向の距離は等しく1.0mmである。
【0038】
一方、ホームポジションに設けられた予備吐出受けは、x方向に5.0mmの幅をもっている。この為、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのノズル列はキャリッジを移動せず同位置で予備吐出を行うことができる。キャリッジを停止した状態で予備吐出を行うことで、ミストの装置内部への飛散を抑えることができる。
【0039】
なお、インクジェット記録装置に備えられた電源は全記録ヘッドの予備吐出を同時に行うことができる程の電力を供給できない。このため、同時に全ノズルの予備吐出を行うのではなく、予備吐出はノズル列単位で選択的に複数ステップに分割されて行われる。
【0040】
図6に本実施例における4ステップに分割された予備吐出を行った場合の予備吐出順序を図示する。
【0041】
本実施例では、並び順で端のイエローから順にノズル列を選択し予備吐出を行う。なお、図6において201〜204、401〜406は前述の図と同様である。
【0042】
図6(a)は4ステップに分割された予備吐出の第1ステップの予備吐出を表す模式図である。第1ステップにおいてイエローの予備吐出402のみを行う。予備吐出受けに予備吐出することにより気流が発生しミスト406が舞い上がる。しかしながら予備吐出を行っているのはイエローのみなので、図4(b)の様に他色のノズル列からの予備吐出との気流の衝突は発生せず、舞い上がったミスト406も記録ヘッド102表面に到達するほどの上昇力を有していないので、記録ヘッド102表面に到達するミストは殆どなく、大部分のミストはx方向に流される。
【0043】
同じように、第2ステップでマゼンタ(同図(b)参照)、第3ステップでシアン(同図(c)参照)、第4ステップでブラック(同図(d))の予備吐出をそれぞれ行う。第2〜第4ステップにおいても、同時に異なる2つ以上のノズル列が吐出動作を行っているわけではなく、常に吐出動作を行うノズル列は1つだけであるので、予備吐出による気流の衝突は発生せず、記録ヘッド表面102に到達するミストは殆どない。
【0044】
以上のように複数の主走査方向に並べられた複数の記録ヘッドを備え複数の予備吐ステップを持つインクジェット記録装置において、1ステップに1記録ヘッドずつ予備吐出を行えば、ミストが記録ヘッド表面に付着せず、インクの混色なく所望の色を記録できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0045】
(実施例2)
本実施例に用いる記録ヘッドは実施例1に用いた図2の記録ヘッドと同様である。
【0046】
実施例1においては予備吐出を1ステップに1ノズル列ずつ行う場合について説明したが、全ノズル列を同時に予備吐出する場合と予備吐出時間を比較すると4倍(4ステップ)の時間が必要となる。本実施例では、予備吐出に要する時間を短縮するよう、予備吐出を2ステップで行う場合について説明する。
【0047】
図7に本実施例における2ステップに分割された予備吐出を行った場合の予備吐出順序を図示する。
【0048】
同図(a)は2ステップに分割された予備吐出の第1ステップの予備吐出を表す模式図である。
【0049】
第1ステップにおいて隣接するイエローとマゼンタの予備吐出402、403を行う。予備吐出受け401に予備吐出することにより気流が発生しミスト406が舞い上がる。さらに、同時に二つのノズル列から予備吐出を行っているため、双方の気流がぶつかり合って、ミスト406は巻き上げられ、記録ヘッド面に到達可能な勢いをもっている。しかしながら図4(a)で説明したように、巻き上げられたミスト406のほとんどは次のマゼンタとシアンの予備吐出に押し戻され、記録ヘッドに到達することはない。そして、記録ヘッドに到達する僅かなミストもマゼンタとシアンの記録ヘッドのノズルに侵入するものは殆ど無い。したがって、ミストの記録ヘッド表面への到達によるインクの混色は発生しない。
【0050】
同じく、同図(b)に示す2ステップにおいても、隣接するシアンとブラックの予備吐出を行うと、ミストが舞い上がるが、次のシアンとブラックの予備吐出における予備吐出受け方向に向かう気流の流れに、前回の予備吐出で巻き上げられたミストは押し戻され、記録ヘッドに到達するミストは殆どない。
【0051】
本実施例では記録ヘッドをx方向下流側から2記録ヘッド、上流側2記録ヘッドに分割した2ステップで予備吐出を行ったが、x方向下流側から3記録ヘッド、上流側1記録ヘッドに分割した2ステップの予備吐出でも同様の効果が得られる。
【0052】
なお、予備吐出による予備吐出受け方向に向かう気流によって、ミストが押し戻される現象は、ノズル列間の距離がある適度短い場合に限られ、隣接するノズル列間ではこの現象が起きる確率が高い。なお、ミストを確実に押し戻すためには、吐出動作におけるインクの吐出速度を適正にする必要がある。このため、本発明者は、実験によってミストの押し戻しに有効なインクの吐出速度および該吐出速度を達成するための駆動周波数を求めた。なお、これらは、インクの吐出量、ノズル列間の距離、ノズルピッチなどによっても変化するものであるため、適宜、実験などによって決定されるものとする。
【0053】
以上のように複数の主走査方向に並べられた複数の記録ヘッドを備え2つの予備吐ステップを持つインクジェット記録装置において、主走査方向に2分割した隣接配置された記録ヘッド群毎に予備吐出を行えば、ミストが記録ヘッド表面に付着せず、インクの混色無く所望の色を印字できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0054】
なお、本実施例においては隣接する2つのノズル列を組として、この組を順に切り換え選択して予備吐出を行う例を説明したが、これに限らず、全ノズル列が6列の場合などでは隣接する3列を組として予備吐出を行うなど、全ノズル列を隣接する複数のノズル列で分割して組として予備吐出動作を行ってもよい。
【0055】
(実施例3)
実施例1、2においては各記録ヘッドの吐出量は一定の場合について説明したが、本実施例では大小異なることなる吐出量(大ドット、小ドット)の記録ヘッドを用いた場合について説明する。
【0056】
本実施例に用いる記録ヘッドを図8に示す。
【0057】
図8において801はイエローの大ドットを吐出するノズル列、802、803はそれぞれマゼンタ、シアンの大ドットを吐出するノズル列、804はマゼンタの小ドットを吐出するノズル列、805はシアンの小ドットを吐出するノズル列である。イエローの大ドットを吐出する2つのノズル列間の距離は0.3 mm、803−802間、802−801間の大ドットを吐出する各ノズル列間の距離は1.0mmであり、804−小ドットを吐出するノズル列と同色の隣接する大ドットを吐出するノズル列間の距離は0.3 mmである。また、ノズル列の配置は中央のイエローインクをもとに左右対称となっており、向かって左側のノズル列を示す番号には沿え字aを、向かって右側のノズル列を示す番号には沿え字bを添えることにより、双方を区別するものとする。なお、本実施例ではブラックのノズル列(記録ヘッド)は用いない。
【0058】
大ドットの吐出で発生する主滴以外のインク滴の大きさと、小ドットのそれとを比較すると、小ドットの主滴以外のインク滴は小さく、気流によって巻き上げられやすい。すなわち、大ドットの吐出と小ドットの吐出とでは小ドットの方が発生するミストの数は多くなり、記録ヘッド表面に到達するミストの数も多くなる。
【0059】
大ドット、小ドットにかかわらず、ミストが記録ヘッド表面に到達することを確実に防ぐためには、本実施例においても実施例1と同様に記録ヘッドの数だけ予備吐出のステップを設け、1記録ヘッド毎に予備吐出を行うのが有効ではあるが、本実施例に用いる記録ヘッドではノズル列の並びが10列になるため、1列ずつ予備吐出を行う形態を採用すると、同時に全ノズル列の予備吐出を行う場合に比べ、単純に10倍もの時間が必要となる。そこで、予備吐出に要する時間を短縮するとともに、より確実にミストが記録ヘッド表面に到達することを防ぐために、本実施例では大ドット、及び小ドットの吐出による発生するミスト量を考慮した予備吐出を行う。
【0060】
図9に本実施例における5ステップに分割された予備吐出を行った場合の予備吐出順序を図示する。
【0061】
図9において901、902、903はそれぞれイエロー、マゼンタ、シアンにおける大ドット用ノズル列の予備吐出の軌跡を表し、905、908はシアンの小ドット用ノズル列の予備吐出の軌跡を表し、906、907はマゼンタの小ドット用ノズル列の予備吐出の軌跡を表す。また909は各インクの大ドット用ノズル列の予備吐出で生じた気流によって巻き上げられたミストの軌跡を表す。
【0062】
図9(a)は5ステップに分割された予備吐出の第1ステップの予備吐出を表す模式図である。
【0063】
第1ステップにおいて大ドット用ノズル列全ての予備吐出を行う。各インク色の大ドット用ノズル列はイエローを除き、小ドット用ノズル列と隣接しているが、さらにもっとも近い大ドット用ノズル列との距離は、上述したように1.0mmとなっている。予備吐出を行うと気流が発生し、ミストが舞い上がり、さらにそのミストは同時に吐出されたほかのノズル列からの気流とぶつかりあって、記録ヘッド表面方向に巻き上げられる。しかしながら、同時に吐出するノズル列同士の距離が1.0mmで短いので、例えば、シアン−マゼンタ、マゼンタ−イエロー間に発生したミストは、次の予備吐出による予備吐出受け方向に向かう気流によって押し戻される。また、小ドットのインク滴とともに発生するミストと比較して、ミスト自体も少ないし、ミストとなるインク滴の大きさも小さい。そのため気流により巻き上げられるミストの数も少なく、ほとんどが記録ヘッド表面に達することがない。
【0064】
また、第1ステップ終了後、第2ステップで小ドット用のノズル列全ての予備吐出を行うのは電力的には可能であり、インクジェット記録装置本体内の電源から供給することはできる。しかしながら、イエローインクに関しては、ノズル列801a、801bはいずれも大ドット用であり、小ドット用のノズル列をもたない為、マゼンタの小ドット用ノズル列804a、804b間の距離が1.0mm以上あるので、その間に巻き上げられたミストは、次の予備吐出による予備吐出受け方向の気流に押し戻されることなく、イエローのノズル列801に到達してしまう可能性が高い。そこで、本実施形態では、小ドット用のノズル列に関しては1ノズル列ずつ予備吐出を行う4ステップ構成とする。
【0065】
図9(b)に示すように、まず、シアンの小ドット用ノズル列805aのみが予備吐出を行う。他に予備吐出を行うノズル列はないので、双方の相乗効果によるミストの巻き上げ現象は発生せず、ミスト910は記録ヘッド102の表面に到達することはなく、予備吐出受けへ落ちる。
【0066】
同じようにして、次にマゼンタの小ドット用ノズル列804aのみが予備吐出を行う(同図(c)参照)。次にマゼンタの小ドット用ノズル列804bのみが予備吐出を行う(同図(d)参照)。そして、最後にシアンの小ドット用ノズル列805bのみが予備吐出を行う(同図(e)参照)。これらはいずれも単独での予備吐出であるから、ミスト910の巻き上げ現象が発生せず、記録ヘッド表面に到達するミストは殆ど無い。
【0067】
以上のように複数の主走査方向に並べられた複数の大ドット及び小ドットを吐出する記録ヘッドを備え複数の予備吐ステップを持つインクジェット記録装置において、大ドットを吐出する記録ヘッドは1ステップの予備吐出、小ドットを吐出する記録ヘッドは1記録ヘッドづつの吐出するステップを設ける予備吐出を行えば、ミストが記録ヘッド表面に付着せず、インクの混色なく所望の色を印字できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0068】
なお、実施例1〜3を通じて、同時に予備吐出を行う2つのノズル列間の距離が1.0mm程度であれば、双方の気流がぶつかって巻き上がったミストは、次の予備吐出による予備吐出受け方向への気流によって押し戻されることが可能であるが、ノズル列間の距離が1.0mm以上であると、押し戻されずに記録ヘッド表面まで到達するミストが発生する確率が高くなるとしている。これは本願発明者が行った実験によって得られた数値であり、ノズル列の長さや予備吐出の吐出速度によっても変わるものであると考えられる。
【0069】
しかしながら、仮に、隣接する2つのノズル列間の距離が1.0mm以上であり、発生したミストが十分に押し戻されなかったとしても、ミストは記録ヘッド表面の2つのノズル列の間の中間部分に多く付着することになり、その部分にノズル列がなければ、たとえミストが付着したとしても混色などの問題は発生しない。したがって、ノズル列の配置間隔がいかなる間隔であろうとも、隣接する2つのノズル列では同時に予備吐出を行うという実施例2および実施例3の方式は、ミストによる混色を防ぐ上では有効な手段であるといえる。また、実施例1に示す1ノズル列ごとに予備吐出を行う方式は、ミストの巻き上がり自体が発生しないので、ノズル列間の距離がいかなるものであっても有効な手段であるといえる。
【0070】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明を用いることにより、インク吐出動作によって発生するミストにおける記録ヘッドのノズル面に移動する力が、前記記録ヘッドのノズル面に到達するには十分ではないか、あるいは次の予備吐出動作で発生する気流によって押し戻され、発生したミストのほとんどは到達せずに別方向へ移動または落下する。したがって、ミストがノズル面に付着することを防ぐことができ、さらに付着したインクがノズル内に流れ込んで起きる混色を防ぐことができる。したがって、混色が原因の画像劣化を防ぐことができる。さらに、同時に吐出動作を行うノズル列を制限するので、予備吐出時に必要とする消費電力量を電源から供給可能範囲に抑えることができ、低コストな装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるインクジェット記録装置の記録部分を示す斜視図である。
【図2】記録ヘッドの吐出口面を示す模式図である。
【図3】インクの吐出の様子とサテライト滴、ミストを示す模式図である。
【図4】2ステップに分かれた従来の予備吐出処理の一例を示す図である。
【図5】本実施形態のインクジェット記録装置における電気的構成を示すブロック図である。
【図6】実施例1の予備吐出処理を示す図である。
【図7】実施例2の予備吐出処理を示す図である。
【図8】実施例3における記録ヘッドの吐出口面を示す模式図である。
【図9】実施例3の予備吐出処理を示す図である。
【符号の説明】
101 インクジェットカートリッジ
102 記録ヘッド
103 紙送りローラ
104 補助ローラ
105 給紙ローラ
106 キャリッジ
107 ガイドレール
Claims (10)
- 複数のノズルが配列されたノズル列を複数配置した記録ヘッドを走査し、該記録ヘッドより記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、
前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの走査を停止した状態で前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段を具え、
該予備吐出手段は、同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして前記複数のノズル列のうちの1つのノズル列に配列されたノズルを選択して予備吐出を行う手段であることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 複数のノズルが配列されたノズル列を複数配置した記録ヘッドから記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、
前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段を具え、
該予備吐出手段は、同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして、前記複数のノズル列のうちの隣接して配置された複数のノズル列を組として選択し、この組を切り換えて順次予備吐出動作を行わせる手段であることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記予備吐出手段において、前記ノズル列の組による予備吐出動作は複数回行われ、このノズル列の組から吐出され着弾したインク滴から発生する、前記記録ヘッドのノズル面方向へ移動するミストが、次のノズル列の組の予備吐出動作によって発生する吐出方向への気流によって前記ノズル面側から押し戻されるような予備吐出を実行することを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
- 前記複数のノズル列の各列は、吐出するインク色別に構成されたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記記録ヘッドは、一回の吐出動作における吐出量が相対的に多い大ノズルを配列した複数の大ノズル列と、一回の吐出動作における吐出量が相対的に少ない小ノズルを配列した複数の小ノズル列とを具え、
前記予備吐出手段は、複数の大ノズル列の予備吐出動作を同時に実行させる工程と、前記複数の小ノズル列の吐出動作を1ノズル列ずつ実行させる工程とを含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。 - 前記記録ヘッドが前記記録媒体上を、前記複数のノズル列の配置方向に走査し、該走査時に前記各ノズルよりインクを吐出する記録動作と、前記記録媒体と前記記録ヘッドとの相対的な移動により前記記録媒体が前記記録ヘッドの走査方向と異なる方向に所定量だけ移動する紙送り動作とを交互に繰り返すことにより、前記記録媒体上に画像が形成されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 前記ノズルは、熱エネルギーによってインクに気泡を発生させ、該気泡の生成圧力によってインクを滴として吐出することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 複数のノズルが配列されたノズル列を複数並列に配置して記録ヘッドを走査し、該記録ヘッドより記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用い、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの走査を停止した状態で前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出の方法において、
同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして前記複数のノズル列のうちの1つのノズル列に配列されたノズルを選択して予備吐出を行う工程を含むことを特徴とする予備吐出方法。 - 複数のノズルが配列されたノズル列を複数配置した記録ヘッドから記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用い、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出の方法において、
同時に吐出動作を実行させる前記ノズルとして、前記複数のノズル列のうちの隣接して配置された複数のノズル列を組として選択し、この組を切り換えて順次予備吐出動作を行わせる手段であることを特徴とする予備吐出方法。 - 一回の吐出動作における吐出量が相対的に多い大ノズルを配列した大ノズル列に関しての予備吐出動作として、複数の前記大ノズル列の吐出動作を同時に実行させる工程と、一回の吐出動作における吐出量が相対的に少ない小ノズルを配列した複数の小ノズル列に関しての予備吐出動作として、複数の前記小ノズル列の吐出動作を1ノズル列ずつ実行させる工程とを具えることを特徴とする請求項8または9に記載の予備吐出方法。
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