JP2004088589A - スピーカ用磁気回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボイスコイルの振幅の際に生ずる交流磁界を遮断し、もって高音域でのインピーダンスを打ち消し、音圧の維持ができるスピーカ用磁気回路を提供する。
【解決手段】センターポール2を有するボトムヨーク3と、リング状のマグネット4およびトッププレート5からなる磁気回路7において、トッププレート5の内径部側の下面に、ボイスコイル11に近接させた状態で、トッププレート5とボトムヨーク3との高さと同じ長さを有する円筒状のショートリング15を、ボイスコイル11と平行に垂設してスピーカ用磁気回路を構成する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、各種音響機器に使用されるスピーカ、特にコーン型スピーカの磁気回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コーン型スピーカにおいて、低音域の大振幅の際に生ずるボイスコイルのギャップに対する相対位置の変化、あるいは磁気回路を形成する磁性材料に起因して生ずる電流歪みに対応する手段の一つとして、ポールピースやマグネットの内径部に銅製ないしアルミ製のショートリングを装着し、これをショートさせることによってボイスコイルのインダクタンスをゼロに近付けることは周知である。
【0003】
このようなショートリングの例として、たとえば、特許第2737273号公報においては、銅板を筒状に成形した銅リングを、ボイスコイル線輪と平行になるようセンターポールに装着し、ボイスコイルに流れた音声電流によってセンターポールを流れる渦電流をショートさせ、もって高域の出力音圧レベルの上昇を図ることが開示されている。
【0004】
また、実公昭63−29358号公報では、センターポールに装着するショートリングとして、縦方向にスリットを形成したショートリングが、さらに実用新案登録第2586414号公報では、センターポールのギャップ部分を除く側面に、多数本の導電体細線を伸縮可能に円柱状に網組みした電気良導体からなる網ショートリングを装着したスピーカ用磁気回路が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ボイスコイルの2次巻線としてショートリングを使用し、これをショートさせてボイスコイルのインダクタンスを低減させ、第2次高調波歪みを抑えるに際して、センターポールの外周部又はマグネットの内径部にショートリングを装着させる従来の手段は、ギャップの拡大に繋がり、磁束密度の低減を招くおそれがあるとともに、マグネット付近へのショートリングの装着は、高域のインピーダンスにあまり変化が見られず、それほどの効果が期待できない。
【0006】
そのため、たとえば、特公平7−32514号公報で開示されるように、ショートリングを用いることなく、ボイスコイルのインダクタンスを低減させる手段として、磁気回路を構成するマグネットを、2価の鉄を含む導電性フェライトで形成したスピーカ装置も提案されているが、マグネット自体の価格の上昇を招くもので、実用性に問題がある。
【0007】
この発明はかかる現状に鑑み、鋭意検討の結果、ボイスコイル付近にショートリングを設置することによって、ボイスコイルの振幅の際に生ずる交流磁界を遮断し、もって高音域でのインピーダンスを打ち消し、音圧の維持ができるスピーカ用磁気回路を提供せんとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
センターポールを有するボトムヨークと、リング状のマグネットおよびトッププレートからなる磁気回路において、
前記トッププレートの内径部側の下面に、ボイスコイルに近接させた状態で円筒状のショートリングを、ボイスコイルと平行に設したこと
を特徴とするスピーカ用磁気回路である。
【0009】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のスピーカ用磁気回路において、
前記ショートリングは、
その高さが、少なくとも前記ボイスコイルの振幅幅と同じか、もしくは幅広であること
を特徴とするものである。
【0010】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載のスピーカ用磁気回路において、
前記ショートリングは、
その高さが、前記ボトムヨークの上面部から前記トッププレートの下面部の高さと同一であること
を特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、
請求項1乃至3のいずれかに記載のスピーカ用磁気回路において、
前記ショートリングは、
アルミ製又は銅製であること
を特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明にかかるスピーカ用磁気回路の好ましい実施の形態について、添付の図面に基づいて具体的に説明する。
【0013】
図1は、この発明のスピーカ用磁気回路を使用したスピーカの概略説明図であって、スピーカ1は、上面中央部にセンターポール2を有するボトムヨーク3、このボトムヨーク3上に固定されるリング状のマグネット4、このマグネットの上面に固定されるトッププレート5からなる磁気回路7と、トッププレート5の上面部にビスで固着されるフレーム9と、ダンパー10によって磁気回路7のギャップに保持される、巻幅の長いロングタイプのボイスコイル11と、外周部がエッジ13を介してフレーム9の先端開口部に、内周部がボイスコイル11の上部にそれぞれ固着されたコーン型の振動板12と、ボイスコイル11を被うダストキャップ14から構成されたものである。
【0014】
なお、図中、6は前記マグネット4と反対方向に着磁され、ボトムヨーク3の底部に配置され、ボトムヨーク3底から漏れる磁束を防ぐとともに、ギャップの磁束を向上させるためのキャンセルマグネット6、8は磁気回路7から漏洩する磁束を防ぐためのヨークカバー8である。
【0015】
前記構成のスピーカにおいて、この発明のスピーカ用磁気回路7は、図1で明らかなように、トッププレート5の下面と、マグネット4の内周部及びボトムヨーク3の上面部とで形成される空隙X内において、トッププレート5の内径部側の下面に、導電性のショートリング15をボイスコイル11に近接させて、かつ平行にして設したものである。
【0016】
具体的には、トッププレート5の内径部側の下面に、少なくともボイスコイル11の振幅幅と同じ長さ、もしくは振幅幅よりも長い導電性のショートリング15をボイスコイル11に近接させて、かつ平行にして設したものである。
【0017】
より具体的には、高さが、トッププレート5の下面とボトムヨーク3の上面部の高さとほぼ同じで、かつ内径がボイスコイル11の外径よりもやや大きくなるように形成したアルミ製の円筒体からなるショートリング15を、トッププレート5の下面とボトムヨーク3の上面部間に、その内径部を可能な限りボイスコイル11に近付けて、かつボイスコイル11と平行になるように配置して固定したものである。
【0018】
このショートリング15の磁気回路7への固定は、たとえば、上下の開口縁部に接着剤を塗布し、上部開口縁部をトッププレート5の下面の所定部位に、下部開口縁部をボトムヨーク3の上面の所定部位に接着することによって達成することができるが、図2に示すように、トッププレート5の下面とボトムヨーク3の上面の、互いに相対する部位に凹状の係合溝16,16をそれぞれ形成し、この係合溝16内に、ショートリング15の上部開口縁部と、下部開口縁部を嵌め込むことによっても固定することができる。
【0019】
かかる磁気回路7を装着したスピーカ1のボイスコイル11に音声電流がながれ、ボイスコイル11が上下方向に振幅し、ボイスコイル11周辺のセンターポール2及びトッププレート5に磁束が流れると、一般的に第3次高調波歪みが多く、マグネット4を通る磁束が増えると、第2次高調波歪みが多く生ずるが、この発明においては、少なくともボイスコイル11の振幅幅と同じ長さの導電性のショートリング15を、ボイスコイル11に近接し、かつ平行になるようにトッププレート5の下面に設しているので、ボイスコイル11の振幅に際して生ずる交流磁界をショートリング15が遮断し、前記高調波歪みを低減させるとともに、高音域でのインピーダンスが打ち消され、音圧が維持される。
【0020】
【実施例】
<実施例1>
図1に示す磁気回路を有する口径150mmのダイナミックコーン型のウーファを製作した。使用したショートリングは、アルミ製で、長さ19mm、厚さ2mmで、ボイスコイル・インピーダンスは4Ω仕様である。
このウーファの、アドミタンスカーブ(電気インピーダンス曲線)と、音圧周波数特性を図3に、全高調波歪み率(THD)、第2次高調波歪み、第3次高調波歪みの特性を図5に示す。
【0021】
<比較例1>
実施例1と同様の構成からなるが、ショートリングを設けない磁気回路を使用して、口径150mmのダイナミックコーン型のウーファを製作し、このウーファの、アドミタンスカーブ(電気インピーダンス曲線)と、音圧周波数特性を図4に、全高調波歪み率(THD)、第2次高調波歪み、第3次高調波歪みの特性を図6に示す。
【0022】
なお、図3および図4において、実線はアドミタンスカーブ、点線は周波数特性を、図5および図6において、太い実線は全高調波歪み率(THD)を、点線は第2次高調波歪みを、細い実線は第3次高調波歪みをそれぞれ示している。
【0023】
前記実施例1および比較例1において、ショートリングを設けたこの発明のスピーカ用磁気回路を有するスピーカ(ウーファ)は、アドミタンスカーブは、1KHzからカーブの傾きが比較例1のスピーカに比して緩やかで、これは、ショートリングによって逆起電力が発生して打ち消しあってショートし、その結果、抵抗値が下がって1KHz以上の高音域の音圧を維持することができたものと考えられる。
【0024】
また、図5および図6において、ショートリングを設けたこの発明のスピーカ用磁気回路を有するスピーカ(ウーファ)は、ボイスコイルから発生する交流磁界をアルミ製のショートリングが遮断するため、磁気歪みが占める割合が大きい第2次高調波歪みが100Hzから高音域まで低減され、同時に第3次高調波歪みも低減され、その結果、全高調波歪み率(THD)が大幅に低減されていることが明らかである。
【0025】
なお、図1に示すスピーカ1において、ショートリング15は、その高さをトッププレート5の下面とボトムヨーク3の上面部の高さと同じにし、ボイスコイル11が振幅する幅より広い範囲で交流磁界を遮断しているが、ショートリングの長さを、ボイスコイルの振幅幅よりも少し広い範囲をカバーできる長さとすることもできる。
【0026】
また、磁気回路7の空隙Xにショートリング15を固着するに際し、図2に示すように、トッププレート5の下面とボトムヨーク3の上面の、互いに相対する部位に凹状の係合溝16,16をそれぞれ形成し、この係合溝16内に、ショートリング15の上部開口縁部と、下部開口縁部の一部又は全部を嵌め込む際、図示しないがショートリング15の各開口縁部に、所定間隔を存して係合用の突片を形成し、この係合用の突片を前記係合溝に嵌合させて固定してもよい。
【0027】
【発明の効果】
この発明のスピーカ用磁気回路は、ボトムヨーク、マグネットおよびトッププレートとで構成される磁気回路の、トッププレートの内径部側の下面に、導電性のショートリングを、ボイスコイルの振幅に支障のない範囲で近付けた状態で、かつボイスコイルと平行に設しているので、ボイスコイルの振幅に際して生ずる交流磁界を効果的に遮断し、電流歪みを大幅に低減させることができる。
【0028】
特に、この発明においては、ショートリングを配置する部位が、磁気回路を構成するトッププレートの内径部側の下面であるため、ショートリングの設置に際して磁気ギャップがなんら制限を受けることがなく、ボイスコイルの振幅に一切支障が生ずるおそれがなく、その取付けも簡単かつ容易である。
【0029】
また、ショートリングの長さを、磁気回路を構成するボトムヨークとトッププレート間の長さと一致させ、センターポールの大部分の外周部を被うことによって、ボイスコイルが振幅するより広い範囲の高流磁界を遮断し、高域の出力音圧レベルを上昇させ、かつ全高調波歪みを効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のスピーカ用磁気回路を使用したスピーカの概略説明図である。
【図2】この発明のスピーカ用磁気回路の、他の例の要部を示す拡大断面図である。
【図3】実施例1に示すスピーカの周波数の特性曲線図である。
【図4】比較例1に示すスピーカの周波数の特性曲線図である。
【図5】実施例1に示すスピーカの高調波歪みの特性曲線図である。
【図6】比較例1に示すスピーカの高調波歪みの特性曲線図である。
【符号の説明】
1   スピーカ
2   センターポール
3   ボトムヨーク
4   マグネット
5   トッププレート
6   キャンセルマグネット
7   磁気回路
8   ヨークカバー
9   フレーム
10  ダンパー
11  ボイスコイル
12  振動板
13  エッジ
14  ダストキャップ
15  ショートリング
X   空隙

Claims (4)

  1. センターポールを有するボトムヨークと、リング状のマグネットおよびトッププレートからなる磁気回路において、
    前記トッププレートの内径部側の下面に、ボイスコイルに近接させた状態で円筒状のショートリングを、ボイスコイルと平行に設したこと
    を特徴とするスピーカ用磁気回路。
  2. 前記ショートリングは、
    その高さが、少なくとも前記ボイスコイルの振幅幅と同じか、もしくは幅広であること
    を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用磁気回路。
  3. 前記ショートリングは、
    その高さが、前記ボトムヨークの上面部から前記トッププレートの下面部の高さと同一であること
    を特徴とする請求項1に記載のスピーカ用磁気回路。
  4. 前記ショートリングは、
    アルミ製又は銅製であること
    を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスピーカ用磁気回路。
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