JP2004086714A - 車両用減速制御装置 - Google Patents

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木村 健
Migaku Takahama
高浜 琢
Tatsuya Suzuki
鈴木 達也
Motohira Naitou
内藤 原平
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Abstract

【課題】余裕をもった減速制御を行うことができる車両用減速制御装置を提供する。
【解決手段】自車進路に複数の物体が存在するとき、各物体との車間時間THW、及び各物体との接触時間TTCを夫々算出し(ステップS6)、算出された車間時間THWが最も短い物体、及び接触時間TTCが最も短い物体を夫々選択して(ステップS7、及びステップS11)、選択された物体に対して自車両が必要とする減速量Fcを算出し(ステップS9又はステップS10、及びステップS13又はステップS14)、減速量Fcが大きい方の物体を減速対象物として選択する。
【選択図】 図8

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、減速を要する減速対象物を検出したときに自動的に減速制御を行う車両用走行制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の車両用減速制御装置として、従来、例えば、特開平8−156722号公報に記載されたものが提案されている。
この従来例には、画像データにより認識した自車両進路領域データを入力すると共に、物体検出が必要な最遠距離を算出し、自車両認識領域データと最遠距離データから物体検出領域を自車両前方から最遠距離までの範囲と定め、この領域内の物体のみ距離測定するようにレーザレーダのビーム放射角度に応じて反射ビームの受信ゲート時間を可変制御することにより自車両進路領域にある物体を検出し、そのうち最短距離にあるものを選択してから接近度を判断して、警報を発したり制動装置を作動させたりするように構成された車両用障害物検出装置及び接近警報・回避装置が記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来例にあっては、例えば、見通しのよいカーブ等で、先行車両の更に先の先々行車両をレーザレーダで検出し得るときにも、自車両に最も近い先行車両の挙動に基づいて制動装置が制御されるので、仮にカーブの先が渋滞しており先々行車両が急減速する場合でも、これに続いて先行車両が急減速するまで制動装置が作動せず、余裕をもって減速することができないという未解決の課題がある。
【0004】
そこで、本発明は上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、余裕をもった減速制御を行うことができる車両用減速制御装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用減速制御装置は、
自車進路で複数の物体を検出したときに、減速対象物検出手段が各物体との接触の可能性を判断して、最も大きな減速を要すると判断される物体を減速対象物として選択し、選択された減速対象物に対して速度制御手段が自車両を減速させることを特徴としている。
【0006】
【発明の効果】
請求項1に係る車両用減速制御装置によれば、自車進路で複数の物体を検出したときに、減速対象物検出手段が各物体との接触の可能性を判断して、最も大きな減速を要すると判断される物体を減速対象物として選択し、選択された減速対象物に対して速度制御手段が自車両を減速させるように構成されているので、余裕をもった減速制御を行うことができるという効果を得ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における第1の実施形態の概略構成図である。図中、1は自車両を駆動制御する駆動制御装置であり、2は自車両を制動制御する制動制御装置である。
【0008】
駆動制御装置1には、アクセル操作量検出手段としてのアクセル操作量センサ3で検出されるアクセル操作手段としてのアクセルペダル4の操作量と、後述する減速制御用コントローラ17から出力される駆動量減少分とが入力されている。そして、駆動制御装置1は、図2に示すように、アクセル操作量センサ3で検出されたアクセル操作量に応じて運転者が要求する駆動量を算出する駆動量算出部5と、駆動量算出部5で算出される駆動量、及び減速制御用コントローラ17からの駆動量減少分に基づいて、図示しないエンジンの出力をスロットルバルブやアイドルコントロールバルブの開度を調整して制御する駆動力制御手段としての駆動力制御部6とで構成されている。
【0009】
駆動量算出部5は、アクセル操作量と駆動量との関係を示す駆動量算出制御マップを参照して、アクセル操作量から駆動量を算出するように構成されており、この駆動量算出制御マップは、図3に示すように、アクセル操作量が0(零)から増加するときに、これに比例して駆動量も0(零)から増加するように設定されている。
【0010】
また、制動制御装置2には、ブレーキ操作量検出手段としてのブレーキ操作量センサ7で検出されるブレーキ操作手段としてのブレーキペダル8の操作量と、後述する減速制御用コントローラ17で出力される制動量増加分とが入力されている。そして、制動制御装置2は、図4に示すように、ブレーキ操作量センサ7で検出されるブレーキ操作量に基づいて運転者が要求する制動量を算出する制動量算出手段としての制動量算出部9と、制動量算出部9で算出される制動量、及び減速制御用コントローラ17からの制動量増加分に基づいて、図示しないブレーキアクチュエータの制動油圧を制御する制動力制御手段としての制動力制御部とで構成されている。
【0011】
制動量算出部9は、ブレーキ操作量と制動量との関係を示す制動量算出制御マップを参照して、ブレーキ操作量から制動量を算出するように構成されており、この制動量算出制御マップは、図5に示すように、ブレーキ操作量が0(零)から増加するときに、これに比例して制動量も0(零)から増加するように設定されている。
【0012】
ここで、駆動制御装置1、制動制御装置2、アクセル操作量センサ3、及びブレーキ操作量センサ7が車速制御手段に対応している。
そして、車両前方側の例えば車体下部に、レーダ装置11が搭載されており、前方に存在する物体を検出する。このレーダ装置11は、図6に示すように、赤外レーザ光を前方に発する発光部12と、発光部12から発する赤外レーザが物体に反射した反射光を受光する受光部13とを備えており、発光から受光までの時間を測定することで、物体までの距離を測定する。また、発光部12は、スキャニング機構で構成されており、所定角度範囲内で角度を変化させながら赤外レーザを順次発光する。なお、赤外レーザの他に、マイクロ波やミリ波等を使用してもよく、更には、自車両前方を撮像したビデオ画像を処理することにより前方に存在する物体の情報を検出してもよい。
【0013】
また、レーダ装置11は、前方に存在する物体を検出したときに、各検出点との距離とスキャニング角とに基づいて、図7に示すような、自車両と各検出点との相対的な位置関係を示す分布マップを生成し、物体情報処理装置14に供給する。
物体情報処理装置14は、レーダ装置11で生成される検出点の分布マップを、スキャニング周期毎に比較して各検出点の挙動を判断し、各検出点同士の近接状態や挙動の類似性に基づいて、自車両前方に存在する物体を個別に特定すると共に、特定された各物体との前後方向の距離X[m]、左右方向の距離Y[m]、物体幅W[m]、及び自車両との相対速度Vr[m/s]を所定の周期毎に算出する。
【0014】
また、自車両には、図示しない変速機の出力側に配設された出力軸の回転速度を検出することにより、自車速Vを検出する車速検出手段としての車速センサ15と、図示しないステアリングホイールの操舵角δを検出する操舵角センサ16とが設けられている。
そして、アクセル操作量センサ3、物体情報処理装置14、車速センサ15、及び操舵角センサ16の各出力信号が、例えばマイクロコンピュータで構成された減速制御用コントローラ17に入力され、この減速制御用コントローラ17によって自車両の減速が必要な対象物を減速対象部として検出する減速対象物検出処理を実行する。
【0015】
次に、減速制御用コントローラ17で実行する減速対象物検出処理を、図8のフローチャートに従って説明する。
この減速対象物検出処理は、所定のメインプログラムに対する所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で、車速センサ15で検出される自車速V、及び操舵角センサ16で検出される操舵角δを読込み、次いで、ステップS2で、アクセル操作量センサ3で検出されるアクセル操作量を読込み、続くステップS3で、物体情報処理装置14から供給される各物体i(i=1、2、3・・・)との前後方向の距離Xi、左右方向の距離Yi、物体幅Wi、及び自車両との相対速度Vriを夫々読込んでから、ステップS4に移行する。
【0016】
ステップS4では、前記ステップS1で読込まれた車速V、及び操舵角δに基づいて、自車進路を予測する。先ず、車速V、及び操舵角δに基づいて車両の旋回曲率ρ(1/m)を、下記(1)式に基づいて算出する。
ρ={1/L(1+A・V)}/(δ/N)     ・・・・・・(1)
ここで、Lは自車両のホイールベースであり、Aは車両に応じて設定されるスタビリティーファクタと呼ばれる正の定数であり、Nはステアリングギヤ比である。そして、この旋回曲率ρに基づいて、下記(2)式に示すように、旋回半径R[m]を算出することができる。
【0017】
R=1/ρ      ・・・・・・(2)
したがって、図9に示すように、自車両からR[m]離れた位置を中心とした半径Rの円弧が予測進路となり、これに幅TWを加えた領域、即ち半径R−TW/2の円弧と半径R+TW/2の円弧とで囲まれた領域が、図10に示すように、自車両の通過する予測走路となる。なお、幅TWは、車幅や車線幅に応じて設定される。
【0018】
次いで、ステップS5に移行して、前記ステップS3で検出された物体のうち、自車進路上に存在する物体を抽出する。すなわち、図11に示すように、前記ステップS3で物体1〜物体5が検出されているとすると、各物体が予測走路内に位置しているか否かを、自車両に対する夫々の相対位置(Wi、Yi)から個別に判定して、予測走路内に位置する物体だけ抽出する。したがって、ここでは物体3と物体5とを抽出してから、ステップS6に移行する。
【0019】
ステップS6では、前記ステップS5で抽出された物体に対して、自車両が接触する可能性を判断するために、第1の評価指標としての車間時間THWと、第2の評価指標としての接触時間TTCとを、抽出された物体に夫々算出する。車間時間THWは、前記ステップS1及びステップS3で読込んだ自車速V、及び前後方向の距離Xiに基づいて下記(3)式に従って算出し、接触時間TTCは、前記ステップS2で読込んだ相対速度Vri、及び前後方向の距離Xiに基づいて下記(4)式に従って算出する。
【0020】
THWi=Xi/V          ・・・・・・(3)
TTCi=Xi/Vri      ・・・・・・(4)
次いでステップS7に移行して、前記ステップS6で車間時間THWが算出された物体のうち、車間時間THWが最小の物体を選択してから、ステップS8に移行する。
【0021】
ステップS8では、前記ステップS7で選択された物体の車間時間THWが所定値Th1以上であるか否かを判定している。この判定結果がTHW≧Th1であるときは、自車両の減速が不要であると判断してステップS9に移行し、一方、判定結果がTHW<Th1であるときは、自車両の減速を要すると判断してステップS10に移行する。
【0022】
ステップS9では、自車両が要する減速量1を0(零)としてからステップS11に移行する。一方、ステップS10では、自車両が要する減速量Fc1を算出する。この減速量Fc1は、図12(a)に示すように、自車両前方に設けた仮想的な弾性体が物体に接触して圧縮するときの反発力を求めることにより算出する。先ず、仮想的な弾性体の長さL1を、前述した所定値Th1、及び自車速Vから下記(5)式に従って算出する。
【0023】
L1=Th1×V                  ・・・・・・(5)
次に、この弾性体の弾性係数をK1とすると、図12(b)に示すように、例えば、前方の先行車両との車間距離Xが縮まり、弾性体が先行車両に接触するときに発生する反発力Fc1は、下記(6)式に従って算出されるので、この反発力Fc1を減速量とする。
【0024】
Fc1=K1・(L1−Xi)      ・・・・・・(6)
こうして、ステップS9又はステップS10で減速量Fc1を算出してから、続くステップS11で、前記ステップS6で接触時間TTCが算出された物体のうち、接触時間TTCが最小の物体を選択し、ステップS12に移行する。
ステップS12では、前記ステップS11で選択された物体の接触時間TTCが所定値Th2以上であるか否かを判定している。この判定結果がTTC≧Th2であるときは、自車両の減速が不要であると判断してステップS13に移行し、一方、判定結果がTTC<Th2であるときは、自車両の減速を要すると判断してステップS14に移行する。
【0025】
ステップS13では、自車両が要する減速量Fc2を0(零)としてからステップS15に移行する。一方、ステップS14では、自車両が要する減速量Fc2を算出する。この減速量Fc2も、減速量Fc1の算出と同様に、自車両前方に設けた仮想的な弾性体が物体に接触して圧縮するときの反発力を求めることにより算出する。したがって、先ず、仮想的な弾性体の長さL2を、所定値Th2、及び相対速度Vrから下記(7)式に従って算出して、この弾性体の弾性係数をK2とし、物体と接触して圧縮するときの反発力を下記(8)式に従って算出して、この反発力Fc2を減速量とする。
【0026】
L2=Th2・Vr                ・・・・・・(7)
Fc2=K2・(L2−Xi)      ・・・・・・(8)
こうして、ステップS13又はステップS14で減速量Fc2を算出してから、続くステップS15で、前記ステップS9又はステップS10で算出された減速量Fc1、及び前記ステップS13又はステップS14で算出された減速量Fc2のうち、減速量Fcが大きい方の物体を減速対象物として選択して、ステップS16に移行する。
【0027】
ステップS16では、前記ステップS15で選択された減速対象物に対する減速量Fcを、駆動制御装置1、及び制動制御装置2に対して配分して出力する減速量配分出力処理のサブルーチンを実行してから、所定のメインプログラムに復帰する。
この減速量配分出力処理のサブルーチンは、図13に示すように、先ず、ステップS21で、前記ステップS2で読込んだアクセル操作量に基づいて、アクセルペダル4が操作状態にあるか否かを判定する。アクセルペダル4が非操作状態であるときには、自車両に駆動力が付与されていないと判断してステップS22に移行し、一方、アクセルペダル4が操作状態にあるときには、自車両に駆動力が付与されていると判断してステップS24に移行する。
【0028】
アクセルペダル4が非操作状態であると判定されて移行するステップS22では、駆動制御装置1に対する駆動量減少分として0(零)を出力し、続くステップS23で、制動制御装置2に対する制動量増加分として、正値のFcを出力してから、図8の減速対象物検出処理に戻る。
一方、アクセルペダル4が操作状態であると判定されて移行するステップS24では、先ず、アクセル操作量に応じた駆動量Fdを算出して、ステップS25に移行する。この駆動量Fdは、前述した駆動制御装置1が有する駆動量算出制御マップと同様の制御マップを参照することにより、アクセル操作量に応じた駆動量Fdを算出する。
【0029】
ステップS25では、前記ステップS24で算出された駆動量Fdが前記ステップS15で選択された減速対象物に対する減速量Fc以上であるか否かを判定している。この判定結果がFd≧Fcであるときは、駆動量Fdの減少で必要な減速量Fcが得られると判断してステップS26に移行し、一方、判定結果がFd<Fcであるときは、駆動力Fdの減少だけでは必要な減速量Fcが得られないと判断してステップS28に移行する。
【0030】
駆動量Fdの減少で必要な減速量Fcが得られると判断されて移行するステップS26では、駆動制御装置1に対する駆動量減少分として負値のFcを出力し、続くステップS27で、制動制御装置2に対する制動量増加分として0(零)を出力してから、図8の減速対象物検出処理に戻る。
一方、駆動力Fdの減少だけでは必要な減速量Fcが得られないと判断されて移行するステップS28では、駆動制御装置1に対する駆動量減少分として、負値のFdを出力し、続くステップS29で、制動制御装置2に対する制動量増加分として、減速量Fcから駆動量Fdを減じた値を出力してから、図8の減速対象物検出処理に戻る。
【0031】
ここで、ステップS1〜ステップS15処理が減速対象物検出手段に対応し、そのうち、ステップS4及びステップS5、並びにレーダ装置11及び物体情報処理装置14が物体検出手段に対応し、ステップS6〜ステップS15の処理が減速対象物選択手段に対応している。また、減速対象物選択手段のうち、ステップS6の処理が評価指標算出手段に対応し、ステップS7及びステップS11の処理が選択手段に対応し、ステップS8〜ステップS11、及びステップS12〜14の処理が減速量算出手段に対応している。さらに、ステップS16のサブルーチンを示す図13の減速量配分処理が配分手段に対応している。
【0032】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、自車両が走行状態にあるとすると、先ず、自車進路を予測して(ステップS4)、レーダ装置11及び物体情報処理装置14で検出される物体のうち、予測進路内に存在する物体だけを抽出する(ステップS5)。このとき、図14に示すように、自車両が見通しのよいカーブを先行車両に追従するように走行しており、先行車両の更に先の先々行車両をもレーダ装置11で検出していたとする。
【0033】
そこで、先ず、先々行車両、及び先行車両に対する接触の可能性を個別に判断するために、先々行車両に対する車間時間THW1、及び接触時間TTC1と、先行車両に対する車間時間THW2、及び接触時間TTC2とを前記(3)式、及び(4)式に基づいて夫々算出する(ステップS6)。
次いで、算出された車間時間THW1、及びTHW2のうち短い方の車間時間THWを選択し(ステップS7)、その車間時間THWが所定値Th1以上であるか否かに基づいて自車両の減速の要否を判定して(ステップS8)、自車両が要する減速量Fc1を算出する(ステップS9、又はステップS10)。さらに、接触時間TTC1、及びTTC2のうち短い方の接触時間TTCを選択し(ステップS11)、その接触時間TTCが所定値Th2以上であるか否かに基づいて自車両の減速の要否を判定して(ステップS12)、自車両が要する減速量Fc2を算出する(ステップS13、及びステップS14)。
【0034】
このとき、自車両が先々行車両、及び先行車両に対してある程度の車間距離を有し、且つ接近状態にない場合は、先々行車両、及び先行車両に対する車間時間THW、及び接触時間TTCが夫々の所定値未満となり(ステップS8、及びステップS12の判定か共に“Yes”)、自車両に必要な減速量が0(零)となるので(ステップS9、及びステップS13)、運転者によるアクセルペダル4、又はブレーキペダル8の操作量に応じて算出される通常どおりの駆動量、又は制動量に基づいて自車速が制御される。
【0035】
この状態から、例えば、カーブの先に渋滞末尾が存在し、先々行車両が急減速して、接触時間TTC2が所定値Th2未満となるときに(ステップS8の判定が“No”)、この先々行車両に対して必要な減速量Fc2が算出される(ステップS10)。また、これに続いて先行車両も減速を開始して、先行車両との車間距離が縮まって、車間時間THW1が所定値Th1未満となるときに(ステップS12の判定が“No”)、この先行車両に対して必要な減速量Fc1が算出される(ステップS14)。
【0036】
そして、減速量Fc1、及び減速量Fc2のうち、減速量Fcが大きい方の車両を減速対象物として選択する(ステップS15)。
このように、自車進路で複数の物体を検出したときには、最も大きな減速を要すると判断される物体に対して自車両を減速させるので、例えば、先々行車両が急減速しており、これに続く先行車両の減速が遅れている場合には、先々行車両を減速対象物として選択し、一方、先々行車両が急減速していても、先行車両の方が大きな減速を要すると判断されれば、この先行車両を減速対象物として選択することができるので、余裕をもった減速制御を行うことができる。
【0037】
そして、選択された減速対象物に対する減速量Fcを駆動制御装置1、及び制動制御装置2に対して配分して出力する(ステップS16)。
このとき、アクセルペダル4が非操作状態であるときは(ステップS21の判定が“No”)、自車両に駆動力が付与されていないため、減速量Fcをそのまま制動量増加分とする。したがって、駆動制御装置1には駆動量減少分として0(零)が、また制動制御装置2には制動量増加分としてFcが夫々出力されるので(ステップS22、及びステップS23)、図15に示すように、ブレーキ操作量に応じた通常の制動量に減速量Fcを加えた分の制動力が発生し、自車両を減速させることができる。このとき、運転者はブレーキ操作以上の制動力が発生することで減速を察知することができ、減速対象物を回避する制動操作やステアリング操作に適宜移行することができる。
【0038】
一方、アクセルペダル4が操作状態であるときは(ステップS21の判定が“Yes”)、自車両に駆動力が付与されているので、この駆動力を減少させることが効率のよい減速制御となる。
そこで、アクセル操作量に応じた駆動量Fdが減速量Fc以上であるときは(ステップS25の判定が“Yes”)、減速量Fcをそのまま駆動量減少分とするだけで必要な減速量を得ることができる。したがって、駆動制御装置1へは駆動量減少分として負値のFcを、また制動制御装置2へは制動量増加分として0(零)が夫々出力されるので(ステップS26、及びステップS27)、図15に示すように、アクセル操作量に応じた駆動量から減速量Fcを減じた分の駆動力しか発生せず、自車両を減速させることができる。こうして、運転者は加速が鈍くなる減速を察知することができ、減速対象物を回避する制動操作やステアリング操作に適宜移行することができる。
【0039】
また、アクセル操作量に応じた駆動量Fdが減速量Fc未満であるときは(ステップS25の判定が“No”)、駆動量Fdを取り除くと共に、減速量Fcの不足分を制動量の増加で補う。したがって、駆動制御装置1へは駆動量減少分として負値のFdを、また制動制御装置2へは制動量増加分として正値のFc−Fdを夫々出力するので(ステップS28、及びステップS29)、図15に示すように、アクセル操作量に応じた駆動量は発生せず、更に減速量Fcの不足分が制動力の発生によって補われ、自車両を減速させることができる。これにより運転者は、駆動力の消失と制動力の発生とにより減速を察知することができ、減速対象物を回避する制動操作やステアリング操作に適宜移行することができる。
【0040】
なお、上記第1の実施形態では、予測される旋回半径Rを算出するために、自車速V、及び操舵角δに基づいて旋回曲率ρを算出した場合について説明したが、これに限定されるものではない。したがって、例えば、下記(9)式に従って、自車速Vとヨーレートrとから、或いは下記(10)式に従って、自車速Vと横加速度Ygとから、旋回半径Rを算出してもよい。
【0041】
R=V/r            ・・・・・・(9)
R=V/Yg   ・・・・・・(10)
また、上記第1の実施形態では、減速量の算出に、仮想的な弾性体を設け自車両への走行抵抗を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではない。したがって、例えば、図16に示すように、自車両前方に仮想的な勾配を設けてもよく、この場合は、物体への接近度合に応じて勾配αを決定し、自車重量をmとすると、減速量Fcを下記(11)式に従って、算出すればよい。
【0042】
Fc=m・sin(α)      ・・・・・・(11)
さらに、上記第1の実施形態では、減速量Fcの算出にあたって、前記(6)式、及び(8)式に示すように、仮想的な弾性体の長さLから物体との距離Xを減じ、それに弾性定数Kを乗じて減速量Fcを算出する構成について説明したが、これに限定されるものではない。したがって、例えば、弾性体の長さLから物体との距離Xを減じた値L−Xと減速量Fcとの関係を示した減速量算出制御マップを参照して、L−Xから減速量Fcを算出するように構成し、この減速量算出制御マップを、図17に示すように、L−Xが0(零)から増加するときに、減速量Fcが初めは緩やかで、次第に急峻となる非線形状に増加するように設定してもよい。更に言えば、単に自車速Vや物体との距離Xや相対速度Vrに応じて算出するルックアップテーブルを生成して、減速量Fcを算出するようにしてもよい。
【0043】
さらに、上記第1の実施形態では、自車両の減速の要否を判断するために、車間時間THWに対する所定値Th1、及び接触時間TTCに対する所定値Th2を夫々一定値とした場合について説明したが、これに限定されるものではない。したがって、例えば、自車速Vや物体との距離Xや相対速度Vrに応じて変化させてもよい。
【0044】
以上のように、上記第1の実施形態によれば、自車進路に存在する複数の物体を検出したときに、車速V、並びに各物体との距離X、及び相対速度Vrに基づいて、自車両が必要とする減速量を算出し、最も大きな減速量Fcが算出された物体を減速対象物として選択するように構成されているので、余裕をもった減速制御を行うことができるという効果が得られる。
【0045】
また、上記第1の実施形態によれば、自車進路に存在する物体との距離Xと自車速Vとに基づいて各物体との接触の可能性を判断する第1の評価指標、及び自車進路に存在する物体との距離Xと相対速度Vrとに基づいて各物体との接触の可能性を判断する第2の評価指標を夫々算出し、算出された第1、及び第2の評価指標に基づいて、最も接触の可能性が高いと判断される物体を、第1、及び第2の評価指標ごとに夫々選択して、選択された物体に対して自車両が必要とする減速量Fcを算出するように構成されているので、減速対象物を正確に判断し、選択することができるという効果が得られる。
【0046】
さらに、上記第1の実施形態によれば、第1の評価指標が、物体との距離Xを車速Vで除した車間時間THWで構成され、また第2の評価指標が、物体との距離Xを相対速度Vrで除した接触時間TTCで構成されているので、接触の可能性を正確に判断することができるという効果が得られる。
さらに、上記第1の実施形態によれば、選択された減速対象物に対する自車両の減速量Fcを、駆動量減少分と制動量増加分とに配分すると共に、この駆動量減少分と、アクセル操作量に応じて算出される駆動量とに基づいて自車両の駆動力を制御し、且つ制動量増加分と、ブレーキ操作量に応じて算出される制動量とに基づいて自車両の制動力を制御するように構成されているので、必要に応じて効率よく自車両を減速させることができるという効果が得られる。
【0047】
さらにまた、上記第1の実施形態によれば、自車両が要する減速量Fcを、物体への接近度に応じて自車両に対する走行抵抗を求めることで算出しているので、自車両を効果的に減速させる減速量を算出することができるという効果が得られる。
また、上記第1の実施形態によれば、走行抵抗を、自車両前方に設けた仮想的な弾性体が物体に接触して圧縮するときに発生する反発力として算出し、この反発力を、減速対象物までの距離、及び自車速、又は減速対象物までの距離、及び相対速度に基づいて算出しているので、自車両を効果的に減速させるための走行抵抗を容易に算出することができるという効果が得られる。
【0048】
次に本発明の第2の実施形態を、図18、及び図19に基づいて説明する。
この第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、減速対象物に対して算出された減速量Fcの配分出力を簡略化したものである。
すなわち、第2の実施形態の概略構成図を、図18に示すように、前述した駆動制御装置1、及びアクセル操作量センサ3を省略し、さらに、減速制御用コントローラ17で実行する減速制御対象物検出処理を、図19に示すように、前記ステップS2を省略すると共に、前述した減速量配分出力処理を実行するステップS16のサブルーチンを、選択された減速量Fcを制動制御装置2に対してのみ出力するステップS30に代替したことを除いては、第1の実施形態と同様の構成を有するので、その対応部分には同一符号を付し、詳細説明はこれを省略する。
【0049】
したがって、ステップS15で、減速量Fcが大きい方の物体を減速対象物として選択されてから移行するステップS30では、減速量Fcがそのまま制動量増加分として、制動制御装置2に対して出力されるので、自車両を確実に減速させることができると共に、減速量Fcの配分出力処理を省略して、その出力を簡略化することができる。
【0050】
以上のように、上記第2の実施形態によれば、選択された減速対象物に対する自車両の減速量Fcを制動量増加分として、この制動量増加分と、ブレーキ操作量に応じて算出される制動量とに基づいて自車両の制動力を制御するように構成されているので、減速量の出力を簡略化させつつ、自車両を減速させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】駆動制御装置の構成図である。
【図3】駆動量算出制御マップである。
【図4】制動制御装置の構成図である。
【図5】制動量算出制御マップである。
【図6】レーダ装置の構成図である。
【図7】レーダ装置で検出される検出点の分布マップである。
【図8】第1の実施形態における減速対象物検出処理の一例を示すフローチャートである。
【図9】自車両の予測進路を示す説明図である。
【図10】自車両が通過する予測走路を示す説明図である。
【図11】自車進路に存在する物体の抽出を示す説明図である。
【図12】仮想的な弾性体の反発力から減速量を算出することを示す説明図である。
【図13】減速量配分処理の一例を示すフローチャートである。
【図14】見通しのよいカーブで先々行車両をもレーダ装置で検出し得る状況を示す説明図である。
【図15】減速量が出力されたときの、アクセル操作量に対する駆動力、及びブレーキ操作量に対する制動力の関係を示すグラフである。
【図16】仮想的な勾配を設けて、減速量を算出することを示す説明図である。
【図17】減速量算出制御マップである。
【図18】本発明における第2の実施形態を示す概略構成図である。
【図19】第2の実施形態における減速対象物検出処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 駆動制御装置
2 制動制御装置
3 アクセル操作量センサ
5 駆動量算出部
6 駆動力制御部
7 ブレーキ操作量センサ
9 制動量算出部
10 制動力制御部
11 レーダ装置
14 物体情報処理装置
15 車速センサ
16 操舵角センサ
17 減速制御用コントローラ

Claims (8)

  1. 自車両の減速が必要な対象物を減速対象物として検出する減速対象物検出手段と、該減速対象物検出手段で減速対象物を検出したときに自車両を減速させる速度制御手段とを備えた車両用減速制御装置において、
    前記減速対象物検出手段は、自車進路に複数の物体を検出したときに、各物体との接触の可能性を判断して、最も大きな減速を要すると判断される物体を減速対象物として選択することを特徴とする車両用減速制御装置。
  2. 自車両の減速が必要な対象物を減速対象物として検出する減速対象物検出手段と、該減速対象物検出手段で検出対象物を検出したときに自車両を減速させる速度制御手段とを備えた車両用減速制御装置において、
    自車両の車速を検出する車速検出手段を有し、前記減速対象物検出手段は、自車進路に存在する複数の物体との距離、及び相対速度を検出可能な物体検出手段と、該物体検出手段で自車進路に存在する複数の物体を検出したときに、前記車速検出手段で検出する車速、並びに当該物体検出手段で検出する各物体との距離、及び相対速度に基づいて、自車両が必要とする減速量を算出し、最も大きな減速量が算出された物体を減速対象物として選択する減速対象物選択手段とで構成されることを特徴とする車両用減速制御装置。
  3. 前記減速対象物選択手段は、前記物体検出手段で検出する距離と前記車速検出手段で検出する車速とに基づいて各物体との接触の可能性を判断する第1の評価指標、及び前記物体検出手段で検出する距離と相対速度とに基づいて各物体との接触の可能性を判断する第2の評価指標を夫々算出する評価指標算出手段と、該評価指標算出手段で算出された第1、及び第2の評価指標に基づいて、最も接触の可能性が高いと判断される物体を、第1、及び第2の評価指標ごとに夫々選択する選択手段と、該選択手段により第1、及び第2の評価指標に基づいて選択された物体に対して自車両が必要とする減速量を夫々算出する減速量算出手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の車両用減速制御装置。
  4. 前記第1の評価指標は、前記物体検出手段で検出した距離を前記車速検出手段で検出した車速で除して算出する車間時間で構成され、前記第2の評価指標は、前記物体検出手段で検出した距離を相対速度で除して算出する接触時間で構成されることを特徴とする請求項3記載の車両用減速制御装置。
  5. 前記減速対象物選択手段で選択された減速対象物に対する自車両の減速量を、駆動量減少分と制動量増加分とに配分する配分手段を有し、前記速度制御手段は、アクセル操作手段に応じてアクセル操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、該アクセル操作量検出手段で検出するアクセル操作量に応じた駆動量を算出する駆動量算出手段と、ブレーキ操作手段の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、該ブレーキ操作量検出手段で検出するブレーキ操作量に応じた制動量を算出する制動量算出手段と、前記駆動量算出手段で算出する駆動量、及び前記配分手段で配分される駆動量減少分に基づいて自車両の駆動力を制御する駆動力制御手段と、前記制動量算出手段で算出する制動量、及び前記配分手段で配分される制動量増加分に基づいて自車両の制動力を制御する制動力制御手段とで構成されることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の車両用減速制御装置。
  6. 前記速度制御手段は、ブレーキ操作手段の操作量を検出するブレーキ操作量検出手段と、該ブレーキ操作量検出手段で検出するブレーキ操作量に応じた制動量を算出する制動量算出手段と、前記減速対象物選択手段で選択された減速対象物に対する自車両の減速量を制動量増加分として、当該制動量増加分、及び前記制動量算出手段で算出された制動量に基づいて自車両の制動力を制御する制動力制御手段とで構成されることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載の車両用減速制御装置。
  7. 前記減速量算出手段は、物体への接近度合に応じて自車両に対する走行抵抗を算出し、当該走行抵抗を減速量とすることを特徴とする請求項3乃至6の何れかに記載の車両用減速制御装置。
  8. 前記走行抵抗は、自車両前方に設けた仮想的な弾性体が物体に接触して圧縮するときに発生する反発力として算出され、当該反発力は、減速対象物までの距離及び自車速、又は減速対象物までの距離及び相対速度に基づいて算出されることを特徴とする請求項7記載の車両用減速制御装置。
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