JP2004082400A - ガスバリア性フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスバリア性に優れ、また耐屈曲性の高い、しかも経済性においても、有利なガスバリア性フィルムを構成の一部または全部とする乾燥食品用包装材料及び包装体を提供すること。
【解決手段】プラスチック基材の少なくとも一方の面にアルミナからなる薄膜を設け、該薄膜の表面エネルギーが30〜50dyne/cmであり、水蒸気透過率が5g/m・dayことを特徴とするガスバリア性フィルムを構成の全部または一部とする乾燥食品用包装材料。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性に優れ、ポテトチップス、ポップコーンなどスナック食品、せんべい、おかき等の米菓類、即席ラーメンやふりかけ、削り節、海苔などの乾物品、緑茶、コーヒー、紅茶等の嗜好品、小麦粉、米、麦等の穀物類などの保存に適した乾燥食品包装材料および包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガスバリア性の優れた乾燥食品用包装材料および包装体としては、各種プラスチックをラミネートしたものが用いられている。例えばOPP(延伸ポリプロピレン)フィルムとPE(ポリエチレン)フィルム、または、PET(ポリエステル)フィルムとCPP(未延伸ポリプロピレン)フィルムをラミネートしたもの。また、PETフィルム上にアルミ蒸着したもの、あるいは、塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体をコーティングしたものをPEやCPPフィルムとラミネートした包装材料を使い、袋、カップ、トレイといった様々な包装体が製作され使用されている。
【0003】
かかる従来の乾燥食品用包装材料および包装体は、次のような課題を有していた。アルミニウム箔、あるいはアルミニウム蒸着を用いたものは、ガスバリア性には優れているが、不透明であり、包装時の内容物が見えないという欠点があった。またアルミニウムを乾燥食品用包装材料および包装体の構成の一部に含むとプラスチックフィルムの回収再利用(リサイクリング)ができないという問題点もある。
【0004】
塩化ビニリデンや、エチレンビニルアルコール共重合体を、乾燥食品包装材料及び包装体の構成の一部に含む物は、水蒸気、酸素などのガスバリア性が不充分であり、内容物の保存期間が短い。又、塩化ビニリデン系については、容易に熱分解し、リサイクリングが行いにくく、焼却時の塩素ガスの発生など、地球環境への影響も懸念されている。また、エチレンビニルアルコール系は乾燥時のガスバリア性は優れているものの、高湿度下においては酸素バリア性の低下が著しく、保存期間が短くなる。
【0005】
特開平5−214135号には、プラスチックフィルム上に酸化アルミニウム薄膜を設け、高いガスバリア性のフィルムが提案されているが、酸素バリア性についての記述はあるものの、水蒸気透過性の記述がなく、水蒸気に対して高いバリア性を持たないという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ガスバリア性、特に初期の水蒸気バリア性に優れ、また耐屈曲性の高い、しかも経済性においても、有利なガスバリア性フィルムを提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明のガスバリア性フィルムは、プラスチック基材の少なくとも一方の面に厚み50〜200Åの酸化アルミニウムからなるバリア層を設けたフィルムであって、前記無機バリア層の表面エネルギーが30〜50dyne/cmであることを特徴とするものである。
【0008】
これまでも薄膜の表面エネルギーは、薄膜の印刷性や、ラミ強力、濡れ性に大きな影響を与えることは知られていた。高分子フィルムを水蒸気が透過する現象は、フィルム表面に水分子が吸着し、フィルム中を拡散、反対側の表面から脱着により説明できる。すなわち、表面エネルギーを小さくすることにより蒸着直後の水分子の初期の吸着量を低下させることで、蒸着直後の水分子の透過量を減少することができる。本願発明者らは、鋭意検討の結果、薄膜の表面エネルギーを制御することにより、蒸着直後の水蒸気透過率を低下させることができることを見出した。
【0009】
この場合において、前記ガスバリア性フィルムの蒸着直後の水蒸気透過率が5.0g/m・day以下であることが好適である。
【0010】
またこの場合において、前記ガスバリア性フィルムの酸素透過率が50ml/m・day・MPa以下であることが好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明で言うプラスチック基材とは、有機高分子を溶融押出しをして、必要に応じ、長手方向、及び、または、幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムであり、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニール、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイドなどがあげられる。また、これらの(有機重合体)有機高分子は他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。
【0012】
さらに、この有機高分子には、公知の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑材、滑材、着色剤などが添加されてもよく、その透明度は特に限定するものではないが、透明ガスバリア性フィルムとしては使用する場合には、50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは85%以上の透過率を持つ物が好ましい。
【0013】
本発明のプラスチック基材は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、薄膜層を積層するに先行して、該フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、その他の表面粗面化処理を施してもよく、また、アンカーコート処理、印刷、装飾が施されてもよい。本発明のプラスチック基材は、その厚さとして5〜200μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは8〜50μm、特に好ましくは10〜30μmの範囲である。
【0014】
本発明における薄膜は、Al、Oを元素として含み、これらの比率は作成条件により異なる。この成分中に、特性が損なわれない範囲で微量(全成分に対して高々3%まで)の他成分を含んでもよい。該薄膜の厚さとしては、特にこれを限定するものではないが、ガスバリア性及び可尭性の点からは、50〜500Åが好ましく、更に好ましくは70〜200Åである。
また、上記薄膜の表面エネルギーの範囲は30〜50dyne/cmが好ましく、更に好ましくは35〜45dyne/cmの範囲である。表面エネルギーが30dyne/cm未満であると水蒸気バリア性改善の効果は得られるが、接着強力や印刷性に問題が生じやすく、50dyne/cm以上であると、蒸着直後の水蒸気バリア性改善の効果が少ない。
表面エネルギーとガスバリア性との関係はあまり議論されておらず、接着性や印刷性に与える影響から、通常は60dyne/cm以上であるものが多く、これまでの酸化アルミニウムからなる非結晶性のバリア層を設けたフィルムにおいても、表面エネルギーを積極的に改善することはなかった。
しかし、本発明者らが鋭意検討した結果、フィルム表面の物性が蒸着直後の水蒸気バリア性に大きく影響することが見出された。
水分子の透過は水分子のフィルム表面への吸着、フィルム中への溶解、拡散、更に反対面での脱着の過程を経るが、蒸着直後のフィルム表面の表面エネルギーを30〜50dyne/cmにすることで、水分子の吸着を防ぐことができるものと推定される。
【0015】
かかる、酸化物薄膜の作成には、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティングなどのPVD法(物理蒸着法)が、適宜用いられる。例えば、真空蒸着法においては、蒸発材料源としてAl、Alなどの混合物などを用いることが材料の取扱や、安全性の点で好ましい。
また、加熱方式としては、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などを用いることができる。どの加熱方法を用いても良いが、蒸着時の堆積速度を20000Å/min以下にすることが圧力の制御を容易にする点で好ましい。
また、反応性ガスとして、酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を用いてもよい。
特に上記薄膜の表面エネルギーの範囲を30〜50dyne/cmにするためには、例えば酸素の分圧を制御するのが好適な方法である。分圧を制御する為に、Alに金属アルミニウムを添加し、蒸着時に、材料から発生する酸素量を減らし、外部から酸素を添加するなどして、酸素分圧を制御するなどの方法が挙げられる。酸素の分圧が高いほど、初期の表面エネルギーが大きくなり、水蒸気透過量が増え、酸素分圧が低いほど初期の表面エネルギーが小さくなり、初期の水蒸気透過量が減少する。
材料の混合比はAlとAlを重量比で90:10〜60:40の範囲が好ましく更に好ましくは、80:20〜70:30である。Alの比率が90よりも大きいとアルミナから発生する酸素量が大きくなりすぎ、酸素の分圧の制御が難しくなり、逆にAlの比率が大きくなりすぎると酸化が間に合わなく、フィルムが着色したりする。
また、各粒子の大きさは、蒸着時の圧力が変化しないように適当な大きさにする必要がある。粒子径が大きすぎると熱を加えられてから、蒸発までに時間がかかり、圧力の変動が大きくなり、小さすぎると突沸を起こし、スプラッシュの原因となる。
粒子径は2〜8mmが好ましく、更に好ましくは、3〜6mmである。3mmよりも粒子径が小さいと、突沸などがおきやすく、スプラッシュの原因となる。逆に8mmよりも大きくなると、加熱から、蒸発までに時間がかかり、圧力の変動が大きくなる。たとえば、アルミナが蒸発していて、Alが蒸発していないと、酸素分圧は大きく増加し、逆に、アルミナが蒸発せず、Alが蒸発すると、酸素分圧は、減少する。したがって、本願特許の重要な点である酸素分圧の制御が難しくなり、結果として、表面エネルギーが制御できなくなる。
エミッション電流は、0.5A〜1.5Aの間が好ましく、更に好ましくは、0.8〜1.2Aの間である。エミッション電流が0.5Aよりも小さいと十分な蒸発速度が得られず、生産性が低くなる。また、エミッション電流が大きくなりすぎると蒸発量が多くなりすぎ、圧力の上昇やアルミナの分解が大きくなり、圧力の制御が難しくなる。
真空度は、0.5〜1.5×10−4Torrの範囲が好ましく、更に好ましくは0.8〜1.2×10−4Torrの範囲である。圧力が低すぎると水蒸気バリア性の高い膜が形成されるが、耐屈曲性などが悪くなり、圧力が高すぎると水蒸気バリア性が低下する。
フィルム温度は、−15〜0℃の範囲が好ましく更に好ましくは−10〜−5℃の範囲である。フィルム温度が低すぎるとフィルム表面に到達した蒸着粒子が急激にエネルギーを失う為、欠陥の多い膜が出来やすく、逆に高すぎるとフィルムが、蒸着粒子の熱エネルギーの影響を受けフィルムの物性に低下を招く。
特に好ましい蒸着方法は、酸素分圧、AlとAlの混合比、AlとAlの粒径、加熱パワー、真空度を上記範囲に設定することである。
【0016】
また、基板にバイアス等を加えたり、本発明の目的を損なわない限りに於いて、作成条件を変更してもよい。
また、本発明品は、そのままで使用されてもよいが、他の有機高分子のフィルム、または、薄層をラミネートまたは、コーティングして使用してもよい。
【0017】
例えば、本発明の蒸着フィルムを用いて、乾燥食品包装に使用する場合は、包装する内容物に要求特性に応じ各種フィルムや、紙を用いてラミネートしてよく、代表的なラミ構成としては、ガスバリア性フィルム(PET上)/PE、ガスバリア性フィルム(PET上)/CPP、NY/ガスバリア性フィルム(PET上)/PE、ガスバリア性フィルム(NY上)/PEなどが考えられる。ラミネート方法としては、特に制限はないが、ドライラミネート、押し出しラミネート法等が望ましい。更に、装飾または、内容物説明の為に印刷を施したり、意匠用フィルムあるいは補強材等と貼り合わせたりしてもよい。
【0018】
本発明における包装体としては、袋、フタ材、カップ、チューブ、スタンディングパック、トレイ等があり、形状、種類に対し、特に制限はなく、例えば、袋物の包装形式としては、ピロータイプ、三方シール、四方シール等を用いることができる。これらの包装材料、包装体の構成の全部あるいは一部としてガスバリア性フィルムを用いる。
【0019】
本願発明は、高度なガスバリア性を有することから、上記のような乾燥食品用包装体に適している。乾燥食品用包装体が適用できる内容物としては、ポテトチップス、ポップコーンなどスナック食品、せんべい、おかき等の米菓類、即席ラーメンやふりかけ、削り節、海苔などの乾物品、緑茶、コーヒー、紅茶等の嗜好品、小麦粉、米、麦等の穀物類などであり、また、これらに制限される物ではない。
【0020】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を説明する。
【0021】
(測定法)
▲1▼酸素透過率の測定方法
作成したガスバリアフィルムの酸素透過率を酸素透過率測定装置(モダンコントロールズ社製 OX−TRAN100)を用いて測定した。
【0022】
▲2▼水蒸気透過率
作成した試料を40℃、100%R.H.の条件で米国、モコン(MOCON)社製の測定機(PARMATRAN−W)を用いて測定した。
【0023】
▲3▼ラミ強度
作成した試料を長さ15cm、1.5cm幅に切りだし剥離面に蒸留水をスポイトで一適落とした後、チャック間距離1cm、100mm/minの条件で測定した。
【0024】
▲4▼表面エネルギー
作成した試料の蒸着面に蒸留水の水滴と、ヨウ化メチレンを落とし接触角を測定し、表面エネルギーを算出した。
【0025】
▲5▼膜厚
蛍光X線分析装置(理学電気製システム3270)を用いて測定を行った。X線の発生はロジウム管球を用い、50kV、50mAで行った。
【0026】
(実施例1)
蒸着源として、3mm〜5mm程度の粒子状のアルミニウム(純度99.5%)と3mm〜5mm程度のAl(純度99.9%)を用いて、電子ビーム蒸着法で、12μm厚のPETフィルム(東洋紡績(株):E5100)上に酸化アルミニウムのガスバリア層の形成を行った。アルミナと、アルミニウムの混合比は、重量比75:25とした。電子ビームの出力は、0.5Aで、フィルムの送り速度は100m/minであった。真空層内には、巻き出し部、コーティング部、巻取り部が入っており、連続でフィルムに蒸着が可能である。蒸着時の圧力を酸素ガスを導入し1.0×10−4Torrになるように調整した。この時の酸素分圧は、0.4×10−4Torrであった。150Å(オングストローム)厚の膜を作った。また、蒸着時のフィルムを冷却する為のロールの温度を−10℃に調整した。
【0027】
(比較例1)
8mm〜10mmの粒子状Alと3mm〜5mm程度の粒子状Alを十分攪拌した。混合して過熱した以外は、実施例と同じ条件で行った。圧力が大きく変動し制御が出来なかった。
【0028】
(比較例2)
蒸着時のエミッション電流を1.0Aとした以外は、実施例1と同じ条件で行った。蒸着時の圧力が、実施例1と比較して高くなった。
【0029】
(比較例3)
Alを全く添加しなかった以外は、実施例と同じ条件で行った。
【0030】
表1に上記実施例、比較例の結果を示す。
【表1】
Figure 2004082400
【発明の効果】
プラスチックフィルム基材上に酸化アルミニウムの非結晶性薄膜が形成されたガスバリア性フィルムにおいて、該薄膜の表面エネルギーが30〜50dyne/cmとすることによって、蒸着直後の水蒸気バリア性、屈曲性が高く、かつ、環境にも優しい実用特性の優れた極めて有用な包装材料が得られる。

Claims (3)

  1. プラスチック基材の少なくとも一方の面に厚み50〜200Åの酸化アルミニウムからなるバリア層を設けたフィルムであって、前記無機バリア層の表面エネルギーが30〜50dyne/cmであることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. 請求項1記載のガスバリア性フィルムであって、水蒸気透過率が5.0g/m・day以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  3. 請求項1あるいは請求項2記載のガスバリア性フィルムであって、酸素透過率が50ml/m・day・MPa以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
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