JP2004079472A - 二次電池の充電率推定装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】二次電池の電池モデルを(数1)式で定義し、開路電圧V0を(数2)式で近似することで(数1)式を(数3)式とし、(数3)式と等価な(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定するパラメータ推定手段(3と4)と、これらの推定値を(数1)式と等価な(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、開路電圧V0の代用とする開路電圧演算手段5と、予め求めた開路電圧V0と充電率との関係(図5)から充電率を推定する充電率推定手段6とを備え、かつ上記パラメータ推定手段における推定演算において、推定パラメータの初期値を0より大きい所定値とした二次電池の充電率推定装置。推定パラメータが収束する迄の所用時間を短縮でき、パラメータの推定精度を向上できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二次電池の充電率(SOC)を推定する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
二次電池の充電率SOC(充電状態ともいう)は開路電圧V0(通電遮断時の電池端子電圧であり、起電力、開放電圧ともいう)と相関があるので、開路電圧V0を求めれば充電率を推定することが出来る。しかし、二次電池の端子電圧は、通電を遮断(充放電を終了)した後も安定するまでに時間を要するので、正確な開路電圧V0を求めるには、充放電を終了してから所定の時間が必要である。したがって充放電中や充放電直後では、正確な開路電圧V0を求めることが出来ないので、上記の方法で充電率SOCを求めることが出来ない。そのため、従来は、下記のような方法を用いて開路電圧V0を推定している。
二次電池の充電率(SOC)を推定する技術に関する公知例としては、「論文“適応デジタルフィルタを用いた鉛電池の開路電圧と残存容量の推定”四国総研、四国電力、湯浅電池 T.IEEE Japan Vol.112−C,No.4 1992」がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のごとき従来例においては、実際の電池の物理特性とは全く異なる「非回帰型の電池モデル(出力値が入力値の現在値および過去値だけで決るモデル)」に「適応デジタルフィルタ(逐次型のモデルパラメータ同定アルゴリズム)」を用いて開路電圧を算出し、この値から充電率SOCを算出している。そのため、実際の電池特性(入力:電流、出力:電圧)に応用した場合、電池特性によっては推定演算が全く収束しなかったり、真値に収束しないため、正確な充電率SOCを推定することが困難である、という問題があった。
【0004】
本発明は上記のごとき従来技術の問題を解決するためになされたものであり、充電率SOCおよびその他のパラメータを正確に推定することの出来る二次電池の充電率推定装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては特許請求の範囲に記載するように構成している。すなわち、請求項1においては、二次電池の電池モデルを(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を(数2)式で近似することで(数1)式を下記(数3)式とし、(数3)式と等価な(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定するパラメータ推定手段と、これらの推定値を(数1)式と等価な(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする開路電圧演算手段と、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定手段とを備え、かつ、上記パラメータ推定手段における推定演算において、推定パラメータの初期値を0より大きい所定値とするように構成している。
【0006】
【発明の効果】
本発明においては、二次電池の電流Iと端子電圧Vの関係を示す(数1)式を、(数4)式のように近似することで開路電圧V0(オフセット項)を含まない。そのため通常の適応デジタルフィルタを連続時間系のまま適用することが可能になるので、未知パラメータを一括推定することができ、推定した未知パラメータを(数5)式に代入することで、開路電圧V0の推定値の代用としてGlp(s)・V0を容易に算出できる。そして開路電圧V0と充電率SOCの関係(図4)は、温度や劣化度に影響されにくく一定の関係があるため、これを予め記憶しておけば開路電圧V0の推定値から充電率SOCを正確かつ容易に推定できる。さらに、本発明においては、推定パラメータの初期値を0より大きい所定値とするように構成しているため、推定パラメータが収束する迄の所用時間を短縮でき、パラメータの推定精度を向上することが出来る、という効果がある。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例を機能ブロックで表した図である。図1において、1は電池の端子電圧を検出する端子電圧V(k)検出手段、2は電池の電流を検出する電流I(k)検出手段、3は前処理フィルタ演算手段、4は推定アルゴリズム演算手段、5は開路電圧演算手段〔V0(k)を演算〕、6は開路電圧から充電率を演算する充電率推定手段、7は電池の温度を検出する電池温度T(k)検出手段、8は推定アルゴリズム演算手段4におけるアルゴリズム推定演算の初期値を電池温度T(k)に応じて設定する初期値設定手段である。
前処理フィルタ演算手段3は後記のローパスフィルタやバンドパスフィルタからなる。なお、請求項に記載のパラメータ推定手段は上記前処理フィルタ演算手段3と推定アルゴリズム演算手段4を合わせた部分に相当する。
【0008】
図2は、実施例の具体的な構成を示すブロック図である。この実施例は、二次電池でモータ等の負荷を駆動したり、モータの回生電力で二次電池を充電するシステムに、二次電池の充電率推定装置を設けた例を示す。
図2において、10は二次電池(単に電池ともいう)、20はモータ等の負荷、30は電池の充電状態を推定する電子制御ユニットで、プログラムを演算するCPUやプログラムを記憶したROMや演算結果を記憶するRAMから成るマイクロコンピュータと電子回路等で構成される。40は電池から充放電される電流を検出する電流計、50は電池の端子電圧を検出する電圧計、60は電池の温度を検出する温度計であり、それぞれ電子制御ユニット30に接続される。上記の電子制御ユニット30は前記図1の前処理フィルタ演算手段3、推定アルゴリズム演算手段4、開路電圧演算手段5、充電率推定手段6および初期値設定手段8の部分に相当する。また、電流計40は電流I(k)検出手段2に、電圧計50は端子電圧V(k)検出手段1に、温度計60は電池温度T(k)検出手段7に、それぞれ相当する。
【0009】
本発明は、通電中の二次電池の端子電圧Vと電流Iの計測データに、適応デジタルフィルタを用いて開路電圧V0を推定し、公知の開路電圧V0と充電率SOCの関係から充電率を推定する装置であり、二次電池の電池モデルを前記請求項に記載の(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を前記(数2)式で近似することで(数1)式を前記(数3)式とし、(数3)式と等価な前記(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定し、これらの推定値を(数1)式と等価な前記(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用として、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定するものである。
【0010】
上記の内容を具体的に説明すると次のようになる。
まず、本実施例で用いる「電池モデル」を説明する。図3は、二次電池の等価回路モデルを示す図であり、二次電池の電池モデルは下記(数13)式で示される。
【0011】
【数13】
(数13)式において、モデル入力は電流I[A](正値は充電、負値は放電)、モデル出力は端子電圧V[V]、R1〔Ω]は電荷移動抵抗、R2[Ω]は純抵抗、C1[F]は電気二重層容量、V0[V]は開路電圧である。なお、sはラプラス演算子である。本モデルは、正極、負極を特に分離していないリダクションモデル(一次)であるが、実際の電池の充放電特性を比較的正確に示すことが可能である。このように本実施例においては、電池モデルの次数を1次にした構成を例として説明する。
【0012】
上記(数13)式の電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出を最初に説明する。
(数13)式を変形すると(数14)式(=数7)になる。
【0013】
【数14】
ただし、T1=C1・R1、 T2=C1・R1・R2/(R1+R2)
K=R1+R2
上記のように、電池パラメータK=R1+R2であって、これは電池モデルの内部抵抗推定値に相当する。
開路電圧V0は、電流Iに可変な効率dを乗じたものを、ある初期状態から積分したものと考えれば、(数15)式(=数2=数8)で書ける。
【0014】
【数15】
(数15)式を(数14)式に代入すれば(数16)式になり、整理すれば(数17)式(=数9)になる。
【0015】
【数16】
【0016】
【数17】
安定なローパスフィルタGlp(s)を(数17)式の両辺に乗じて、整理すれば(数18)式になる。
【0017】
【数18】
実際に計測可能な電流Iや端子電圧Vに、ローパスフィルタやバンドパスフィルタを処理した値を、下記(数19)式(=数12)のように定義する。
【0018】
【数19】
なお、Glp(s)はローパスフィルタ、s・Glp(s)やs2・Glp(s)はバンドパスフィルタである。
【0019】
上記変数を用いて(数18)式を書き直せば(数20)式になる。
【0020】
【数20】
更に変形すれば(数21)式になる。
【0021】
【数21】
(数21)式は、計測可能な値と未知パラメータの積和式になっているので、一般的な適応デジタルフィルタの標準形(数22)式と一致する。
【0022】
【数22】
ただし、y=V2、 ωT=[V3,I3,I2,I1]
θT=[−T1,K・T2,K,d]
従って、電流Iと端子電圧Vにフィルタ処理した信号を、適応デジタルフィルタ演算に用いることで、未知パラメータベクトルθを推定する。本実施例では、単純な「最小二乗法による適応デジタルフィルタ」の論理的な欠点(一度推定値が収束すると、その後パラメータが変化しても再度正確な推定ができないこと)を改善した「両限トレースゲイン方式」を用いる。
(数22)式を前提に未知パラメータベクトルθを推定するためのパラメータ推定アルゴリズムは下記(数23)式となる。ただし、k時点のパラメータ推定値をθ(k)とする。
【0023】
【数23】
ただし、λ1、λ3(k)、γU、γLは初期設定値で、0<λ1<1、0<λ3(k)<∞とする。P(0)は十分大きな値、θ(0)は後述するように温度に応じて設定した初期値とする。trace{P}は行列Pのトレースを意味する。
或る観測ノイズの環境下で推定精度を良好に保つには、適応デジタルフィルタの推定感度を調節する定数であるλ3(k)(調整ゲイン)には上限がある。そのため、調整ゲインを予め大きく設定しておくのは、上限までのマージンが小さくなるので、観測ノイズの影響を受けて推定精度が悪化するため得策でない。 また、ローパスフィルタGlp(s)の設定に関しては、(数23)式のパラメータ推定アルゴリズムの推定精度を良くするために、観測ノイズを低減するようローパスフィルタの応答性(カットオフ周波数特性)を適切に設定するけれども、電池の応答特性よりは速くする。以上が、電池モデルから適応デジタルフィルタまでの導出である。
【0024】
次に、図5は、電子制御ユニット30のマイコンが行う処理のフローチャートである。この実施例は電池モデルの次数を1次にしたものである。なお、図5のルーチンは一定周期T0毎に実施される。例えば、I(k)は今回の値、I(k−1)は1回前の演算における値を意味する。
まず、ステップS10では、電流I(k)、端子電圧V(k)、電池温度T(k)を計測する。
ステップS20では、二次電池の遮断リレーの判断を行う。電子制御ユニット30は二次電池の遮断リレーの制御も行っており、リレー遮断時(電流I=0)はステップS30へ進む。リレー締結時はステップS50へ進む。
ステップS30では、端子電圧V(k)を端子電圧初期値V_iniとして記憶する。
ステップS40では、推定パラメータベクトルの初期値θ(k)を設定する。この初期値θ(k)は電池温度T(k)検出手段7で求めた電池温度に基づいて設定する。すなわち、θ(k)T=[−T1,k・T2,k,d]の各値は、基本特性を予め実験で精査することにより、温度に応じて概算値を特定することが可能である。したがって予め概算値を温度に応じたマップとしておくことにより、温度T(k)に応じて推定パラメータベクトルの初期値θ(k)を設定することが出来る。
【0025】
ステップS50では、端子電圧差分値△V(k)を算出する。
△V(k)=V(k)−V_ini
すなわち、推定演算開始前は、電流I(k)=0であるにも関わらず、電圧V(k)=V_iniとして値を持っていると、推定パラメータが初期状態から動き始めてしまうので、上記のように△V(k)を算出している。リレー遮断時はステップS30を通るため、I=0かつ△V(k)=0となるので、推定パラメータは初期状態のままである。
ステップS60では、電流I(k)と端子電圧差分値△V(k)に、前記(数19)式に基づき、ローパスフィルタGlp(s)、バンドパスフィルタs・Glp(s)およびs2・Glp(s)のフィルタ処理を施し、下記(数24)式に示すように、I1(k)、I2(k)、I3(k)、V2(k)、V3(k)を算出する。
【0026】
【数24】
実際のフィルタ処理演算は、連続時間系で記述された伝達関数をタスティン近似等で離散時間化し、下記(数25)式のような漸化式でフィルタ処理を行う。ただし、係数α0〜β3はGlp(s)を離散時間化した際の定数である。
【0027】
【数25】
ステップS70では、ステップS60で算出したI1(k)、I2(k)、I3(k)、V2(k)、V3(k)を前記(数23)式に代入し、パラメータ推定アルゴリズム(適応フィルタ演算)である(数23)式を実行することにより、パラメータ推定値θ(k)を算出する。
ただし、y=V2
ωT=[V3、I3、I2、I1]
θT=[−T1,k・T2,k,d]
である。
ステップS80では、ステップS70で算出したパラメータ推定値θ(k)の中からT1(k)、k・T2(k)、K(k)を用い、前記(数14)式と等価な下記(数26)式に基づいてGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする。開路電圧V0は変化が緩やかなので、Glp(s)・V0で代用できる。ただし、ここで求まるのは推定演算開始時からの開路電圧推定値の変化分△V0(k)である。
【0028】
【数26】
ステップS90では、ステップS80で算出した△V0(k)はパラメータ推定アルゴリズム開始時からの開路電圧の変化分であるから、開路電圧初期値すなわち端子電圧初期値V_iniを加算して開路電圧推定値V0(k)を下記(数27)式で算出する。
【0029】
【数27】
ステップS100では、図4に示す開路電圧と充電率の相関マップを用いて、ステップS90で算出したV0(k)から充電率SOC(k)を算出する。なお、図4のVLはSOC=0%に、VHはSOC=100%に相当する開路電圧である。
ステップS110では、次回の演算に必要な数値を記憶して、今回の演算を終了する。
【0030】
上記のように本実施例においては、二次電池の温度に応じて推定パラメータの初期値を設定する構成であるため、推定パラメータが収束する迄の所用時間を短縮でき、パラメータの推定精度を良好に改善できるという効果がある。そして温度が影響するパラメータの変化範囲を予めマップにしておき、温度に応じて推定パラメータの初期値をほぼ正確に設定することで、推定パラメータが収束する迄の所用時間を更に短縮できる。また、電池モデルを1次とすることにより、適応デジタルフィルタにおけるパラメータ推定アルゴリズムの演算を容易に行うことが出来、演算負荷を低減することが出来る。
以上が図1および図5に示した実施例の動作説明であり、パラメータ推定演算の初期値を電池温度に応じて設定する場合を説明した。しかし、パラメータ推定演算の初期値は他の方法で設定することも出来る。
第2の実施例は、初期値θ(k)として、推定対象パラメータの変化範囲のうちの代表値に設定する構成である。この場合は、図1において、電池温度T(k)検出手段7を設けず、単に初期値設定手段8で初期値を設定する。つまり、推定パラメータベクトルの初期値θ(k)として、推定対象パラメータの変化範囲のうちの代表値(0以外の所定値で、例えば変化範囲の中間相当値)に設定する。推定対象パラメータの変化範囲は、予め実験で把握しておく。この構成の場合には、図5のステップS10における温度T(k)の計測は不要である。
推定対象とするパラメータは温度や劣化度が影響して変化するため、基本特性を予め実験で精査しておくことで、その変化範囲の概略を把握できる。その変化範囲のうち代表値(例えば中間相当植)を推定パラメータの初期値とすることで、推定パラメータが収束する迄の所用時間を短縮でき、パラメータの推定精度を良好に改善できる。
【0031】
また、第3の実施例としては、前回の推定演算における最後の推定値を、上記推定パラメータの初期値θ(k)とする構成である。この場合においても図1において、電池温度T(k)検出手段7を設けず、また、図5のステップS10における温度T(k)の計測は不要である。なお、推定演算は何時終了するか判らないので、推定パラメータθ(k)を最後の推定値θ(k)は不揮発性メモリに保存しておく。
上記の構成においては、最後の推定値を推定パラメータの初期値とするが、最後の推定値には電池の充電率や劣化度の影響が反映されているので、推定パラメータの初期設定にそれらの影響を反映できるという効果がある。
【0032】
以下、実際の測定例によって本発明の効果を説明する。
図6〜図8は、(数7)式の電池モデルのパラメータを、温度25℃相当値に設定した場合に、適応フィルタでパラメータ推定したシミュレーション結果を示す図であり、図6および図7は、本発明の実施例における特性、図8は初期値として微小値を設定した場合の特性を示す。図6〜図8において、横軸は時間(単位は秒)を示す。
まず、図8に示した例は、推定パラメータの初期値を略0の微小値に設定している場合であり、過渡項T1およびK・T2は真値に収束する迄に50秒程度要している(図8中▲1▼および▲2▼)。
【0033】
これに対して、図6は電池パラメータの変化範囲のうち、代表値(中間相当値)を推定パラメータの初期値とした場合である。この場合には推定パラメータ(過渡項T1およびK・T2)が収束する迄の所用時間は30秒程度になり、図8と比べて20秒程度短縮できている(図6中▲1▼および▲2▼)。つまり、予想される変化範囲中の代表値を推定パラメータの初期値とする構成であるため、推定パラメータが収束する迄の所用時間を短縮でき、パラメータの推定精度を良好に改善できるという効果がある。
【0034】
また、図7は電池温度に応じて初期値を設定する場合である。この例では、推定開始前に電池温度を計測できるため、実際の温度(この場合には25℃)相当値に近い値を推定パラメータの初期値とすることが出来るので、推定パラメータ(過渡項T1およびK・T2)が収束する迄の所用時間は20秒程度になり、図6よりもさらに10秒程度短縮できている(図中▲1▼および▲2▼)。つまり、二次電池の温度に応じて推定パラメータの初期値を設定する構成であるため、推定パラメータが収束する迄の所用時間を更に短縮でき、パラメータの推定精度を良好に改善できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を機能ブロックで表した図。
【図2】実施例の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】二次電池の等価回路モデルを示す図。
【図4】開路電圧と充電率の相関マップ。
【図5】実施例における処理のフローチャート。
【図6】本発明の実施例において、電池モデルのパラメータを、温度25℃相当値に設定した場合に、適応フィルタでパラメータ推定したシミュレーション結果を示す図。
【図7】本発明の他の実施例において、電池モデルのパラメータを、温度25℃相当値に設定した場合に、適応フィルタでパラメータ推定したシミュレーション結果を示す図。
【図8】推定パラメータの初期値を微小値に設定している場合において各パラメータを推定した結果を示す図。
【符号の説明】
1…端子電圧V(k)検出手段 2…電流I(k)検出手段
3…前処理フィルタ演算手段 4…推定アルゴリズム演算手段
5…開路電圧演算手段 6…充電率推定手段
7…電池温度T(k)検出手段 8…初期値設定手段
10…二次電池 20…負荷
30…電子制御ユニット 40…電流計
50…電圧計 60…温度計
Claims (5)
- 二次電池の電流Iと端子電圧Vとを計測し、適応デジタルフィルタを用いて、上記電流Iと端子電圧Vの計測値から開路電圧V0を推定し、予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定装置であって、
二次電池の電池モデルを下記(数1)式に示すように定義し、開路電圧V0を下記(数2)式で近似することで(数1)式を下記(数3)式とし、(数3)式と等価な下記(数4)式に対して適応デジタルフィルタ演算を行い、A(s)とB(s)の係数パラメータを一括推定するパラメータ推定手段と、
これらの推定値を(数1)式と等価な下記(数5)式に代入してGlp(s)・V0を算出し、これを開路電圧V0の代用とする開路電圧演算手段と、
予め求めた開路電圧V0と充電率SOCとの関係に基づいて充電率を推定する充電率推定手段と、を備え、
かつ、上記パラメータ推定手段における推定演算において、推定パラメータの初期値を0より大きい所定値とすることを特徴とする二次電池の充電率推定装置。
- 推定対象となるパラメータの変化範囲のうちの中間相当値を、上記推定パラメータの初期値とすることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
- 二次電池の温度を検出する温度検出手段を備え、その温度に応じて上記推定パラメータの初期値を設定することを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
- 前回の推定演算における最後の推定値を記憶しておき、その値を上記推定パラメータの初期値とすることを特徴とする請求項1に記載の二次電池の充電率推定装置。
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