JP2004075814A - N−ビニルカルボン酸アミド重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】N−ビニルカルボン酸アミドを主モノマーとして含有するモノマー水溶液を光重合開始剤の存在下光重合し重合体を製造する方法において、少なくとも2種の光重合開始剤を併用し、且つその一種がアシルホスフィンオキサイド系開始剤であることを特徴とする、N−ビニルカルボン酸アミドを主モノマー単位とする重合体の製造方法、該製造方法で得られる重合体を固体粉末化した後、該粉末を水に溶解し、酸またはアルカリの共存下に加水分解することを特徴とするポリビニルアミンの製造方法、。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、N−ビニルカルボン酸アミドの重合体や共重合体(以下、両者をまとめて(共)重合体と表記する)の製造方法に関するものであり、また、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解して得られるポリビニルアミン及びその製造方法に関するものである。詳しくは、本発明は、高分子量ポリビニルアミンの前駆体として用いるのに有用なN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を、工業的に効率よく、かつ高い品質で得るための製造方法に関するものであり、更に、該N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体の加水分解により誘導される高分子量のポリビニルアミン及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
N−ビニルカルボン酸アミドの(共)重合体は、水溶性や親水性を有する有用な物質である。さらに、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解して得られるビニルアミン単位を含有する重合体(以下、単にポリビニルアミンと略称する)は、廃水処理での凝集剤、製紙工業での抄紙薬剤などとして高い性能を有しておりきわめて有用である。
ポリビニルアミンの前駆体でもあるN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体は、一般に、N−ビニルカルボン酸アミドモノマーをラジカル重合開始剤の存在下に重合することによって得られており、ラジカル重合開始剤としては過酸化物系開始剤、レドックス開始剤、アゾ系開始剤等が一般的である。
ポリビニルアミンを凝集剤や抄紙薬剤として使用する場合、その性能向上のためにより高分子量のポリビニルアミンが求められており、その為にN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体も高分子量で、高品質であることが望まれている。
【0003】
しかしながら、従来知られていた製造方法では、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体の分子量をより高くしようとすると、重合時間がきわめて長くなり生産性が低下するという問題点があった。また一定以上の分子量を越える重合体を製造しようとすると、部分的に不溶性の重合体を生じるという問題点があった。溶解性が不十分なN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解して得られるポリビニルアミンは溶解性が悪く、さらに、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体は可溶であっても、加水分解して得られるポリビニルアミンは溶解性が悪い場合があった。溶解性の悪いポリビニルアミンは、凝集剤、製紙薬剤としての機能が低い上に、特に製紙薬剤として使用する場合には、紙に異物として残存して紙質を低下させたり、製紙工程で破断を生じたりするなど生産性低下の原因となり好ましくない。
【0004】
本発明者は、先に、光重合開始剤を用いる方法で得たN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解して得られるポリビニルアミンは、凝集剤、製紙薬剤としての性能に優れていることを見出し、工業的に有用なポリビニルアミンの製造方法を提案した(特願2001−349049)。
光重合によるN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体の製造法は、他の方法に比べて、不純物や溶存酸素による重合阻害を受けにくく安定生産が可能であるという利点があり、さらに、高モノマー濃度の原料を、除熱や照度調節によって反応速度を制御しながら重合できるので、生産効率が高いという利点も有している。
このように光重合で得られる(共)重合体は、他の方法で得られる重合体よりも性能的には優れているが、より高分子量のN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を、工業的に安定して効率よく生産するための光重合法の更なる改良が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、光重合法により高分子量で、残存モノマー等の不純物の少ない高品質のN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体、特にポリビニルアミンの製造に適したN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を、工業的に効率よく生産し得る製造方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、該N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解することよりなるポリビニルアミンの製造方法をも提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記のような問題点に鑑み鋭意検討した結果、高分子量のN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を光重合によって得るに際し、特定の組合せからなる光重合開始剤を用いることにより重合の生産性を飛躍的に高める方法を見出し本発明に到達した。さらに驚くべきことに、本発明方法により得られるN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解して得られるポリビニルアミンは、きわめて高い溶解性を有する高品質なものであることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、N−ビニルカルボン酸アミドを主モノマーとして含有するモノマー水溶液を光重合開始剤の存在下光重合し重合体を製造する方法において、少なくとも2種の光重合開始剤を併用し、且つその一種がアシルホスフィンオキサイド系開始剤であることを特徴とする、N−ビニルカルボン酸アミドを主モノマー単位とする重合体の製造方法に存する。本発明の他の要旨は、該製造方法で得られるN−ビニルカルボン酸アミドを主モノマー単位とする重合体を固体粉末化した後、該粉末を水に溶解し、酸またはアルカリの共存下に加水分解することを特徴とするビニルアミン単位を含有する重合体の製造方法、並びに斯くして得られるビニルアミン単位を含有する重合体に存する。
【0007】
また、本発明の好適な様態として、アシルホスフィンオキサイド系開始剤と、それ以外の他種の光重合開始剤との比率(重量比)が、95:5ないし5:95であること;アシルホスフィンオキサイド系開始剤は、前下記一般式(1)で示されるモノアシルホスフィンオキサイド及び一般式(2)で示されるジアシルホスフィンオキサイドから選ばれること;アシルホスフィンオキサイド系開始剤と併用する他種の光重合開始剤が、α−ヒドロキシケトン系開始剤であること、及び光重合を分子量調整剤の共存下で行うことを挙げることが出来る
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
[原料調整工程]
本発明において主モノマーとして用いられるN−ビニルカルボン酸アミドは、一般式CH2=CHNHCOR(式中、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す)で示される。具体的には、N−ビニルホルムアミド(R=H)およびN−ビニルアセトアミド(R=CH3)、その他、N−ビニルプロピオン酸アミド、N−ビニル酪酸アミド等が例示されるが、ポリビニルアミンへの誘導のし易さからN−ビニルホルムアミドが好ましい。
【0009】
N−ビニルカルボン酸アミドは、必要に応じエチレン性不飽和結合を有する任意のモノマーと共重合させることが可能である。共重合させうるモノマーとしては、具体的には(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリルアミドおよびその塩あるいは4級化物、ジアルキルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドおよびその塩あるいは4級化物、アリルアミン及びその塩、N,N−ジアリルジメチルハロゲン化アンモニウム、ジアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル等が例示される。
本発明のモノマー組成物におけるN−ビニルカルボン酸アミドの含有割合は、目的とする(共)重合体にもよるが、通常、N−ビニルカルボン酸アミドは、少なくとも50モル%であり、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
【0010】
上記モノマー組成物は単位重量当たりの発熱量を制御するため適当な溶媒で希釈されることが望ましい。溶媒としては基本的に水が使用されるが、有機溶媒を併用することも可能である。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール(ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(ジ)メチルエーテル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド等が例示される。これらの有機溶媒は、通常水に対し50重量%以下で使用される。
上記の共重合モノマー成分や有機溶媒の添加量は任意に定めうるが、重合工程で光の透過性を確保するため、モノマー水溶液組成物が均一透明であること、および生成する水性ゲルが均一透明であるような範囲で選ぶことが好適である。
【0011】
モノマー組成物溶液中のモノマー濃度は、高分子量のポリマーを得るためには極力高い方が好ましいが、あまりに高すぎるモノマー濃度を選択した場合、除熱が追いつかずに沸騰し、気泡が発生して光透過度が低下するため好ましくない。従って最適なモノマー濃度は重合時の発熱量と装置の除熱効率との兼ね合いで設定すべきであるが、通常は10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは30〜70重量%である。
【0012】
本発明では、光重合によってN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を得るが、その際、光重合開始剤として、少なくとも2種以上の光重合開始剤を併用し、且つその1種がアシルホスフィンオキサイド系開始剤であることを必須とする。
アシルホスフィンオキサイド系開始剤は、通常、下記一般式(1)で示されるモノアシルホスフィンオキサイド及び下記一般式(2)で表されるジアシルホスフィンオキサイドから選ばれ、これらは光重合開始剤の中でも長波長側の吸収が比較的大きいことを特徴とする。
【化3】
【化4】
(上記式(1)及び(2)中、Ar1及びAr2は、互いに独立してアルキル基またはアルコキシ基で置換されていても良いアリール基を表し、R1及びR2は互いに独立してアルキル基、アルコキシ基又はアリール基を表す。)
ここで、具体的には、アルキル基及びアルコキシ基のアルキルとしては、メチル、エチル、ブチル、ペンチル等の炭素数1〜8のアルキルを表し、アリール基としてはフェニル基を表す。又、Ar1及びAr2は、アリール基の一部又は全部が置換されていても良い。
【0013】
アシルホスフィンオキサイド系開始剤として、具体的には、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチル等が例示される。これらの開始剤はいずれも性能的にはほぼ同等であるが、モノアシルホスフィンオキサイドはモノマー組成物に対する溶解性が高いので使いやすく、好ましい。アシルホスフィンオキサイド系開始剤は任意の一種類以上を使用できる。
【0014】
アシルホスフィンオキサイド系開始剤の使用量は、モノマーに対して10〜10,000ppm、好ましくは20〜5,000ppm、さらに好ましくは50〜2,000ppmである。アシルホスフィンオキサイド系開始剤を使用することにより、きわめて短時間で、高分子量の製品を得ることができる。この理由は必ずしも定かではないが、N−ビニルカルボン酸アミドは、比較的長波長側にまで吸収帯域があるため、通常の光重合開始剤では開始効率が低い。これに対して、アシルホスフィンオキサイド系開始剤は、N−ビニルカルボン酸アミドの吸収の影響を受けにくい長波長光で励起することができるため、開始効率が高いものと推定される。
【0015】
本発明では、アシルホスフィンオキサイド系開始剤と共に、これ以外の他種の光重合開始剤を併用することを必須とする。本発明では、このように特定の組合せからなる少なくとも2種の光重合開始剤を併用することにより、効率良く、高分子量で、残存モノマーを大幅に減じた高品質のN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を製造することが出来る。この理由は必ずしも明確ではないが、アシルホスフィンオキサイド系開始剤は活性が大きく、重合初期活性が比較的高いがモノマーを完全に消費する前に消失することがあるため、残存モノマーが多くなる傾向にあるのに対し、アシルホスフィンオキサイド系以外の併用する他種の開始剤は、比較的長時間にわたって活性を保つために、重合の終了付近で残存モノマーを低減させる効果が大きいことによるものと推定される。
【0016】
併用可能な光重合開始剤(以下、併用開始剤と称することもある)としては、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン系;ベンジルジメチルケタール等のベンジルジアルキルケタール系;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ヒドロキシケトン系;2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のα−アミノケトン系;2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩等のアゾ系;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;エチルアントラキノン等のアントラキノン系;2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系;アクリジン系;トリアジン系;カルバゾールフェノン系等の光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイン系、ベンジルジアルキルケタール系、α−ヒドロキシケトン系、α−アミノケトン系、アゾ系の開始剤が好ましく、特に、α−ヒドロキシケトン系開始剤は、残存モノマーの低減効果に優れており好ましい。
これらの併用する光重合開始剤は、任意の一種類以上を使用することができる。併用開始剤の添加量は、モノマーに対して10〜10,000ppm、好ましくは20〜5,000ppm、さらに好ましくは50〜2,000ppmである。
【0017】
アシルホスフィンオキサイド系開始剤と、併用開始剤との使用比率(重量比)は、99:1〜10:90の範囲内であることが好ましい。より好ましくは95:5〜20:80であり、さらに好ましくは90:10〜30:70である。併用開始剤が少なすぎると残存モノマーの低減が難しく、アシルホスフィンオキサイド系開始剤が少なすぎる場合は重合に要する時間が長くなり好ましくない。
また、重合に要する時間を短縮するためには、両開始剤の使用比率は、両開始剤の組成物の波長365nmにおける吸光係数Eが100以上、さらに好ましくは500以上となるように選ぶのがよい。ここで、吸光係数Eは、吸光度をA、濃度をc(g/ml)、光路長をb(cm)とすると、E=A/(cb)で表される値である。
【0018】
本発明における光重合開始剤は、更に適当な増感剤と併用することができる。増感剤としてはアミン類、ハロゲン化物、ヨードニウム塩、チオキサントン類が挙げられ、具体的にはメチルジエタノールアミン、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等が例示される。
【0019】
本発明方法ではさらに、光重合を分子量調整剤の共存下に行うことが好ましい。N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体の製造においては、特に高分子量の重合体を得ようとした場合、部分的に不溶性の重合体を生じることがある。分子量調整剤を用いることで、不溶性の重合体の生成を大幅に抑制することができる。この理由は定かではないが、不溶化しやすい超高分子量体の生成が抑制されるものと考えられる。分子量調整剤としては公知の任意の物質を使用しうるが、具体的には亜リン酸およびその塩、次亜リン酸およびその塩、蟻酸およびその塩、亜硫酸またはその塩、2−メルカプトエタノール、ジチオジエタノール等の硫黄系化合物が挙げられる。これらの中でも亜リン酸およびその塩、次亜リン酸およびその塩、蟻酸およびその塩が好ましく、特に好ましいのは次亜リン酸およびその塩である。これらの塩は、通常、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が用いられる。これらの分子量調整剤は、任意の一種類以上を使用することができる。
分子量調整剤の添加量は、モノマーに対して1〜10,000ppm、好ましくは2〜5,000ppm、さらに好ましくは5〜2,000ppmである。
【0020】
モノマー組成物中にはまた、重合後の水性ゲルの装置等への付着を緩和するためのゲル質改善剤を共存させうる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、アルキレングリコールアルキルエーテル等のノニオン界面活性剤、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等のカチオン界面活性剤、シリコーンオイルあるいはシリコーンエマルション等のシリコーン類等が例示される。
これらゲル質改善剤は単独または混合物として使用され得る。ゲル質改善剤の添加量はモノマーに対して10重量%以下、好ましくは1重量%以下である。
モノマー組成物はまた、公知のゲル化防止剤を含んでいてもよい。例えば特開平5−86127に示された塩化アンモニウム等が挙げられる。
【0021】
モノマー組成物溶液は、重合に先立って酸素を除くことが好ましい。酸素の除去は工業的には窒素、ヘリウム等の不活性ガスを通気する事により実施される。またモノマー組成物溶液は重合に先立って適切な開始温度に調整される。開始温度は通常−20〜70℃の範囲であり、−10〜50℃が好ましく、さらに好ましくは0〜30℃である。
【0022】
[重合工程]
モノマー組成物溶液は光重合開始剤の活性化に適した光を照射することによって重合される。照射光としては250〜500μmの範囲に主波長を持つ光源が好ましい。具体的には、高圧水銀ランプ、蛍光ケミカルランプ、青色蛍光ランプ等が使用され得る。特に、蛍光ケミカルランプは重合効率が高く好ましい。また、これら光源は併用してもよく、例えば、重合の前半に青色蛍光ランプを使用し、後半に蛍光ランプを使用する等、任意に調整できる。照射強度は光重合開始剤量、重合温度等によって任意に変化させうるが、照射面における主波長付近の強度が、0.1〜100W/m2の範囲となるように行うことが好ましい。照射強度が弱すぎると重合が遅かったり、あるいは重合転化率が充分に上昇せず、残存モノマー量が増えたりする可能性がある。逆に強すぎるとポリマーの分子量が低下したり、副反応による不溶化物の生成等を招いたりする可能性がある。このような問題点を回避するために、重合初期は比較的弱い光強度で照射を行って分子量を上げ、重合後期に比較的強い光強度で照射することによって、残存モノマーを低減することが好ましい。重合前期における好ましい光強度は0.1〜20W/m2の範囲であり、重合後期での好ましい光強度は10〜100W/m2の範囲である。
【0023】
照射時間は原料モノマーの組成、重合温度、光強度等によって最適な時間を定めるが、N−ビニルカルボン酸アミドの転化率が90%以上、好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上となるように選ぶことが必要がある。転化率が低い場合、その後の(共)重合体の加水分解工程で残存したN−ビニルカルボン酸アミドモノマーからアセトアルデヒドが発生し、これがポリビニルアミンと反応して架橋源となる可能性があり好ましくない。
【0024】
重合反応装置は均一に光照射できるものであれば任意の重合方法を採用しうる。特に、モノマー水溶液を薄層に展開し、除熱しながら光照射する方法が好ましい。この方法はアクリルアミド重合法の一例として知られているが、モノマー溶液を薄層に展開することによって層の透過光強度が深度方向に関して均一に保たれ、均一な品質のポリマーを得ることが出来、さらに、表面積を広げることで、重合熱が効率的に除熱できるようになり、系の温度上昇を抑制して、より低温で重合することができる利点を有している。
重合の進行に伴い反応熱で系の温度が上昇する。温度の上昇幅はモノマー濃度、開始剤量、光強度等によって変化し、また層の深度方向に対して温度分布があるため厚みにも依存するが、系が沸騰しないように最高温度で100℃以下に制御することが望ましく、より望ましくは95℃以下であり、さらに望ましくは90℃以下である。系の温度が上昇しすぎると、重合過程でモノマーが加水分解して不純物が増加したり、副反応によってポリマーが不溶化したりする場合があり、好ましくない。
【0025】
薄層の厚みとしては1〜50mmが好ましく、より好ましくは5〜30mmである。厚すぎると層の上下で光強度に差が生じ、品質が不均一になること、ならびに除熱効率が低下することから好ましくない。薄すぎる場合は生産性が悪い、あるいは非常に広い装置面積が必要となり過大な設備が必要となるため好ましくない。
モノマー組成物溶液の薄層への展開方法としては種々の方法が考え得る。具体的にはトレー状の容器を用いる方法や、モノマー組成物溶液をポリエチレン袋のような可撓性の容器に入れた後に平らに整える方法等を取りうる。工業的には連続操業とすることが生産性の面から好ましい。連続的に重合を行う装置としては例えば特公平6−804に示されているような、両端に堰を有するようなエンドレスベルト上に連続的に展開する方法が好ましい。
重合中には薄層の片面および/または両面から冷却することにより、重合熱を除熱することが好ましい。冷却法としては様々な方法が取られうるが、冷却面に水を散布する水冷法や、空気流と接触させる空冷法が簡便である。
【0026】
薄層は重合発熱の除熱効率を高めるため、片面を金属に接触させることが好ましい。金属接触面からの水性ゲルを剥離し易くさせるため、金属面には界面活性剤のような剥離成分を塗布したり、ライニングを施したり、樹脂シート、樹脂フィルムを敷いてもよい。ライニング、樹脂シート、樹脂フィルムの素材としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン:登録商標)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(アフロン:登録商標)等が挙げられる。
薄層の少なくとも片方の面から、光を照射する必要があるが、解放系では酸素によって重合が阻害される。このため、気相部を不活性ガスでシールするか、あるいは酸素透過性の低い透明な素材で蓋をすることが好ましい。蓋の素材としてはガラス、透明樹脂が挙げられるが、樹脂を使用する場合は特に酸素透過性の低い素材が好ましい。そのような素材としてはポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等のフィルム、シートであって、特にポリビニリデンクロライド(PVDC)コート、シリカ蒸着、アルミ蒸着等の酸素透過酸素透過性を低くするような処理が施されているものが好ましい。
【0027】
[粉砕乾燥工程]
光重合反応後、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体は、水性ゲルとして得られる。得られたN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体のゲルは、その使用目的に応じ、粉砕・乾燥処理等が施される。該(共)重合体を加水分解してポリビニルアミンを製造する場合には、加水分解は重合後のゲルをそのまま、あるいは粉砕等を行った後に、乾燥することなく酸またはアルカリに接触させて行うこともできる。しかしこのような操作はきわめて付着性の強い水性ゲルを取り扱う必要があり、工業的に行うには単位操作が困難である。一方、水性ゲルを水で希釈し、水溶液とした後に加水分解を行う方法も考えられるが、そのような方法では、比表面積が小さいゲルの溶解にきわめて長時間を要し、効率が悪い。これに対し、ゲルを固体粉末化することは、取扱性を格段に改良でき好適であり、また粉末化することで、比表面積が大きくなり、加水分解工程での溶解時間を短くすることができるという利点がある。
【0028】
粉砕は、まず光重合によって得られた水性ゲルを機械的に粉砕する。粉砕方法としては種々の方法がとられうるが、水性ゲルに過大な機械的せん断がかかった場合にはポリマーの分子量低下が起こり好ましくない。このため、いわゆるミートチョッパと呼ばれる、有孔板の内表面に接触して作動する切断刃を備えたスクリュー式押出式粉砕機や、特公平6−74287に示されているような回転刃式粉砕機を用いることが好ましい。
粉砕、乾燥工程で、水性ゲルの機器への付着を防止するため、ゲル質改善剤を用いることができる。ゲル質改善剤は、モノマー組成物溶液に添加するのと同様な物質を用いることができる。ゲル質改善剤の使用方法としては、粉砕前の水性ゲル表面に塗布する方法、粉砕機中に水性ゲルと同時に添加する方法、粉砕後の粒状ゲルと混合する方法等が取られ得る。
【0029】
次いで、粉砕された水性ゲルを乾燥する。乾燥機としては公知の種々の装置を使用しうる。具体的にはバンド乾燥機、振動流動乾燥機、ディスク乾燥機、コニカル乾燥機等が使用されうる。乾燥条件は適宜選択することができるが、温度が低すぎると乾燥効率が悪く、温度が高すぎるとポリマー劣化の原因となるため、50℃〜140℃、好ましくは60℃〜130℃、さらに好ましくは70℃〜120℃で実施される。最終的には揮発分量20重量%以下、好ましくは10重量%以下まで乾燥することが好ましい。揮発分量が多すぎると次工程での粉末の再粉砕が行い難い。
【0030】
乾燥効率を上げる、あるいは粒径を調整する目的で、乾燥の途中あるいは乾燥後に粉末を再粉砕してもよい。最終的な粉末の粒度は任意に定めうるが、大きすぎると溶解に時間がかかり、小さすぎると溶解時にいわゆるママコの発生や微粉による作業環境の悪化があり好ましくない。4メッシュパス〜500メッシュオンであることが好ましく、さらに好ましくは10メッシュパス〜100メッシュオンの範囲に80%以上、より好ましくは90%以上入っていることがよい。このようにして、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体の粉末が得られる。
N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体は高分子量であることが望ましい。分子量は、1規定の食塩水中、25℃における0.1g/dl水溶液の還元粘度(以下ηsp/Cと記載する)の値を指標とした場合、ηsp/Cは3以上が望ましく、好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上が望ましい。
【0031】
[加水分解工程]
本発明方法で得られたN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体はそのままでもさまざまな用途に使用できるが、該(共)重合体のN−ビニルカルボン酸アミドユニット(単位)の一部または全部を加水分解して誘導されるポリビニルアミンは、製紙薬剤や凝集剤用途に好適である。本発明において得られるN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体から誘導されるポリビニルアミンは、分子量が高いにもかかわらず、きわめて優れた溶解性を有している。
この工程では、均一な加水分解を行うため、水溶液として反応を行うことが好適である。また生産性、輸送性を高めるために、なるべくポリマー濃度の高い条件で反応を行うことが望ましい。ポリマー濃度は溶解装置の能力と経済性との兼ね合いで決められるが、通常は0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
【0032】
まずN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体粉末を水に溶解する。溶解に際してはポリマー粉末の合着、いわゆるママコが生成すると多大な溶解時間が必要となり好ましくない。このため、攪拌下にポリマー粉末を媒体中に均一に分散させ、そのまま攪拌を継続して溶解を行うことが好ましい。ポリマー粉末同士の合着を防止するため、表面にポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、シリコン、パラフィン、界面活性剤等をまぶしておいてもよい。溶解操作を高温で行うと溶解と加水分解が同時に進行し、加水分解が不均一になりやすいため、通常50℃以下、好ましくは30℃以下で行われる。
【0033】
加水分解は酸またはアルカリの存在下で行う。酸またはアルカリはN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解しうるものであれば制限はないが、酸を用いる加水分解では装置や容器の腐食対策が必要となるため、アルカリを用いる方が好ましい。酸として具体的には塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等の無機酸が例示され、アルカリとして具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が例示される。これら酸またはアルカリは単独でも混合物として用いてもよい。酸またはアルカリの量は、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体の想定の加水分解率によって異なるが、得るべきビニルアミンユニットに対して1000〜100%当量であり、好ましくは500〜100%当量、さらに好ましくは200〜100%当量である。系中にN−ビニルカルボン酸アミド基よりも加水分解されやすい物質が共存する場合には、当然それを相殺する量を過剰に用いる必要がある。
これら酸またはアルカリは、重合体粉末の溶解後に添加してもよいが、重合体溶液は高粘度であるため混合がしばしば困難となる。そのような場合は酸またはアルカリを、重合体粉末を溶解させる水に予め溶かしておくことが好ましい。
【0034】
本発明では、N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体が特定の組合せの光重合開始剤を用いる光重合で製造されたものであるので、重合時のモノマーの転化率が高く、重合体中の残存モノマーやモノマー分解物が少ない。このため他の重合方法で得られた重合体に比べて加水分解工程でのモノマー分解物に由来するゲル化は起こりにくい。しかし加水分解に際して、公知のゲル化防止剤を併用することは差し支えない。ゲル化防止剤としては、酸によって加水分解する場合にはヒドロキシルアミン塩が、アルカリによって加水分解する場合には亜二チオン酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、二亜硫酸塩、ロンガリット、二酸化チオ尿素、水素化ホウ素ナトリウム等が好ましい。ゲル化防止剤の添加量は、重合体中の残存モノマー量にも依存するが、重合体に対して通常0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.2〜5重量%である。これらゲル化防止剤は、重合体粉末の溶解後に添加してもよく、重合体粉末を溶解させる水に予め添加しておいてもよい。また水性ゲルや重合体粉末に対して添加してもよい。
【0035】
上記のようにして得たN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体溶液はそのままでもゆっくりと加水分解が進行するが、加熱することによって加水分解を促進することができる。加水分解温度は30〜180℃が望ましく、好ましくは50℃〜140℃、さらに好ましくは60℃〜100℃である。加熱時間は所望の加水分解率に応じて定めればよいが、高温で長時間加熱すると劣化を促進するおそれがあるので48時間以内が望ましく、好ましくは24時間以内、さらに好ましくは12時間以内である。
加水分解の条件によっては加水分解に用いた酸またはアルカリが残存している場合がある。これらの残存した酸またはアルカリは必要に応じて中和してもよい。
特に廃水処理での凝集剤、製紙工業での抄紙薬剤などとして用いる場合には、高分子量のポリビニルアミンが有効であるとされている。ポリビニルアミンの分子量は、1規定の食塩水中、25℃における0.1g/dl水溶液(塩酸塩として)の還元粘度(以下ηsp/Cと記載する)の値を指標とした場合、ηsp/Cは3以上が望ましく、好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上が望ましい。
【0036】
本発明によれば、特定の光重合開始剤を用いることにより、高分子量のN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を光重合によって得るに際し、重合の生産性を飛躍的に高めることができる。さらに驚くべきことに、本特許において得られるN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体は、高分子量であると同時に残存モノマー等が少ないので、これを加水分解して得られるポリビニルアミンは、高分子量であり、しかもきわめて高い溶解性を有する高品質なものである。
本発明により得られた高分子量のN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体は、非イオン性水溶性ポリマーとしての用途、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース等の代替として利用可能である。すなわちバインダーとして紙表面加工、糊剤、接着剤、織物加工、蛍光体焼付、建材、フェライト、セラミック、陶磁器、顔料、塗料、セメント混和、金属表面親水化等に、また造膜性を利用してフィルム、成型品、化粧料、整髪料、洗髪料、錠剤コーティング、土壌改良等に、さらに界面活性脳・保護コロイド性を利用して懸濁・乳化重合助剤、油脂溶剤乳化剤、クレー・セラミック等の無機粉体分散剤等といった、幅広い分野に利用することができる。
さらにN−ビニルカルボン酸アミドを加水分解して得られるポリビニルアミンは、水処理分野、特に廃水処理での凝集剤、製紙工業での抄紙薬剤などとして有用である。
【0037】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、重合体の物性は下記の方法により測定した。また、開始剤組成物の吸光係数(E)は、波長365nmにおける値である。
【0038】
[分析方法]
1.重合転化率の測定
重合体粉末をメタノール水で抽出し、液体クロマトグラフィーを用いて分析した。主たる不純物として、N−ビニルカルボン酸アミドと、N−ビニルカルボン酸アミドの水付加体が検出され、これらの合計をN−ビニルカルボン酸アミド換算で求めて残存モノマー量とし、別途求めた揮発分量を補正して転化率を算出した。
2.揮発分量の測定
重合体粉末を、105℃で90分加熱し、減少重量を揮発分量として求めた。
【0039】
3.還元粘度の測定
重合体サンプルを1規定の食塩水中に、純分0.1g/dlの濃度に溶解し、25℃において、オストワルド粘度計を用いて流下時間を測定した。同様に、1規定食塩水の流下時間を測定し、次式によって還元粘度を求めた。
【数1】
還元粘度 ηsp/C = (t−t0)/t0/0.1 [dl/g]
t:サンプル溶液の流下時間(秒)
t0:1規定食塩水の流下時間(秒)
【0040】
4.カチオン当量の測定
重合体サンプルを脱塩水に溶解し、pH=2.5において、トルイジンブルーを指示薬として、1/400規定のPVSK溶液により滴定した。
【0041】
(実施例1)
モノマーとしてN−ビニルホルムアミド333.0g(純度99%)、アシルホスフィンオキサイド系開始剤としてジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド(略号TPO)0.0825g、併用開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(α−ヒドロキシケトン系)0.0825g、塩化アンモニウム5.5g、サニゾールB50(花王(株)製:塩化ベンザルコニウム系界面活性剤、純度50%)0.55g、AF108(東邦化学(株)製界面活性剤)0.055g、脱塩水210.3gを均一に溶解してモノマー溶液を調製し、窒素ガスを通気して溶存酸素を除去した。
なお、アシルホスフィンオキサイド系開始剤と併用開始剤との組成物の吸光係数は、E=772である。
【0042】
底面がステンレス製のトレー状容器(底面235mm×235mm)の底面に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ベースフィルム12μm厚、PVDCコート4μm厚)を敷き、ここに前記モノマー溶液を入れ、上部をポリエチレンテレフタレートフィルムでカバーした。上方より蛍光ケミカルランプを照射面で6.5W/m2の強度になるように照射した。照射期間中は、容器のステンレス面に10℃の冷水を噴霧して重合熱を除熱した。照射前に13℃であった温度は、49分後に最高ピーク温度71℃に達した。照射開始後から70分後、照射強度を60W/m2に上げ、さらに10分間重合を継続した。N−ビニルホルムアミド重合体である無色透明なゲルが得られた。
得られたゲルをミートチョッパで粉砕し、約4〜5mmの粒子とした後、80℃の通風乾燥機で2時間乾燥した。その後、1mmφのスクリーンを有する回転式粉砕器で再粉砕し、N−ビニルホルムアミド重合体の粉末を得た。揮発分量は5.2%、重合転化率は99.9%であった。また還元粘度は10.8dl/gであった。結果を表1に示す。
【0043】
(比較例1)
アシルホスフィンオキサイド系開始剤として、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド0.11gを用い、それ以外のα−ヒドロキシケトン系開始剤を併用しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。照射開始から66分後に最高ピーク温度46℃に達した。照射開始から90分後に照射強度を60W/m2に上げ、さらに10分間重合を継続した。
なお、アシルホスフィンオキサイド系開始剤の吸光係数はE=1470である。
重合終了後の処理は実施例1と同様の操作を行い、N−ビニルホルムアミド重合体の粉末を得た。得られた重合体の物性測定の結果を表1に示す。
【0044】
(比較例2)
アシルホスフィンオキサイド系開始剤は用いず、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(α−ヒドロキシケトン系)0.275gのみを用いた以外は実施例1と同様の操作を行った。照射開始から82分後に最高ピーク温度66℃に達した。照射開始から100分後に、照射強度を60W/m2に上げ、さらに10分間重合を継続した。なお、α−ヒドロキシケトン系開始剤の吸光係数はE=74である。
重合終了後の処理は実施例1と同様の操作を行い、N−ビニルホルムアミド重合体の粉末を得た。得られた重合体の物性測定の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1から明らかなように、アシルホスフィンオキサイド系開始剤とα−ヒドロキシケトン系開始剤を併用することにより、短時間で高分子量の重合体を得ることができる。
一方、アシルホスフィンオキサイド系開始剤のみを用いた場合には、高分子量の重合体を得ることができるが、転化率が十分に向上せず、α−ヒドロキシケトン系開始剤のみを用いた場合には、重合が大幅に遅延し、長時間を要するにも拘わらず、充分に高い分子量が得られない。
【0047】
(実施例2)
モノマーとしてN−ビニルホルムアミド333.0g(純度99%)、アシルホスフィンオキサイド系開始剤としてジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド0.0413g、併用開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(α−ヒドロキシケトン系)0.0413g、分子量調整剤として次亜燐酸ナトリウム一水和物0.011g、塩化アンモニウム5.5g、サニゾールB50(花王(株)製:塩化ベンザルコニウム系界面活性剤、純度50%)0.55g、AF108(東邦化学(株)製:界面活性剤)0.055g、脱塩水210.8gを均一に溶解してモノマー溶液を調製し、窒素ガスを通気して溶存酸素を除去した。なお、アシルホスフィンオキサイド系開始剤と併用開始剤との組成物の吸光係数は、E=772である。実施例1と同様の重合操作を行った。照射前に13℃であった温度は、78分後に最高ピーク温度48℃に達した。照射開始後から100分後、照射強度を60W/m2に上げ、さらに10分間重合を継続した。
重合終了後の処理は実施例1と同様の操作を行い、N−ビニルホルムアミド重合体の粉末を得た。得られた重合体の物性測定の結果を表2に示す。
【0048】
(比較例3)
次亜燐酸ナトリウム一水和物を用いない以外は実施例2と同様の操作を行った。照射開始から77分後に最高ピーク温度50℃に達した。照射開始から10分後に、照射強度を60W/m2に上げ、さらに10分間重合を継続した。
なお、α−ヒドロキシケトン系開始剤の吸光係数はE=74である。
重合終了後の処理は実施例1と同様の操作を行い、N−ビニルホルムアミド重合体の粉末を得た。得られた重合体の物性測定の結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2から明らかなように、次亜燐酸ナトリウム等の分子量調整剤を併用することで、生産性、溶解性を低下させることなく、高分子量の重合体を得ることができる。一方、分子量調整剤を用いない場合は、部分的に不溶性のゲルを生じる。
【0051】
(実施例3)
攪拌機を有するガラス製セパラブルフラスコに、脱塩水275.5gを入れ、水酸化ナトリウム8.45gを溶解し、ここに実施例2で得られた重合体15.9g(純分として15g)と、ゲル化防止剤として亜二チオン酸ナトリウム0.15gを加えた。室温で3時間攪拌後、80℃に昇温し、80℃で2時間保持して加水分解を行った。粘稠なポリビニルアミン溶液が得られた。塩酸を加えて酸性とした後、アセトンを加えてポリマーを再沈回収し、分析に供した。結果を表3に示す。
【0052】
(比較例4)
開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(α−ヒドロキシケトン系)0.138gのみを用い、また分子量調整剤を使用しない以外は、実施例2と同様の重合操作を行った。照射前に13℃であった温度は、127分後に最高ピーク温度54℃に達した。照射開始後から140分後、照射強度を60W/m2に上げ、さらに10分間重合を継続した。
重合終了後の処理は実施例1と同様の操作を行い、N−ビニルホルムアミド重合体の粉末を得た。この重合体粉末15.6g(純分として15g)を用いて、実施例3と同様の操作を行ってポリビニルアミン溶液を得た。回収したポリマーを分析に供し、その結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3から明らかなように、アシルホスフィンオキサイド系開始剤と、α−ヒドロキシケトン系開始剤を併用し、次亜燐酸ナトリウムの存在下に重合した場合には、きわめて分子量が高く、かつ溶解性に優れたポリビニルアミンへ誘導することができる。一方、α−ヒドロキシケトン系開始剤のみを用いた場合には、重合体は可溶であっても、ポリビニルアミンに誘導した場合に溶解性が低下した。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、高分子量のN−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を、工業的に効率よく製造することができる。さらに、該N−ビニルカルボン酸アミド(共)重合体を加水分解して得られたポリビニルアミンは、溶解性に優れ、水処理分野、特に廃水処理での凝集剤、製紙工業での抄紙薬剤などその他各種分野で広く応用することができるので有用である。
Claims (7)
- N−ビニルカルボン酸アミドを主モノマーとして含有するモノマー水溶液を光重合開始剤の存在下光重合し重合体を製造する方法において、少なくとも2種の光重合開始剤を併用し、且つその一種がアシルホスフィンオキサイド系開始剤であることを特徴とする、N−ビニルカルボン酸アミドを主モノマー単位とする重合体の製造方法。
- アシルホスフィンオキサイド系開始剤と、それ以外の他種の光重合開始剤との比率(重量比)が、95:5ないし5:95であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- アシルホスフィンオキサイド系開始剤と併用する他種の光重合開始剤が、α−ヒドロキシケトン系開始剤であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 光重合を、分子量調整剤の共存下で行うことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法で得られたN−ビニルカルボン酸アミドを主モノマー単位とする重合体の固体粉末を水に溶解し、酸またはアルカリの共存下に加水分解して得られることを特徴とするビニルアミン単位を含有する重合体。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法で得られたN−ビニルカルボン酸アミドを主モノマー単位とする重合体を固体粉末化した後、該粉末を水に溶解し、酸またはアルカリの共存下に加水分解することを特徴とするビニルアミン単位を含有する重合体の製造方法。
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