JP2004074857A - タイヤホイール組立体 - Google Patents
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Abstract
【課題】ランフラットタイヤホイール組立体のランフラット用支持体の環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良する。
【解決手段】タイヤ/リムの内空洞部に、環状金属シェル及びゴム状弾性体によって形成されたランフラット用支持体を有する、ランフラットタイヤホイール組立体において、環状金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良したタイヤホイール組立体。
【選択図】 図2
【解決手段】タイヤ/リムの内空洞部に、環状金属シェル及びゴム状弾性体によって形成されたランフラット用支持体を有する、ランフラットタイヤホイール組立体において、環状金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良したタイヤホイール組立体。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、損傷又は空気抜け状態において、制限された運転ができる空気入りタイヤ(以下、ランフラットタイヤという)に用いるタイヤホイール組立体に関し、更に詳しくはタイヤ/リムの内空洞部に設けられる環状金属シェル及びゴム状弾性体からなるランフラット用支持体の環状金属シェルとゴム状弾性体との接触部分の接着性を改良したタイヤホイール組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤが自動車などの走行中にパンクやバーストなどによって内圧が急激に低下した場合でも、一定距離を走行できる緊急走行可能性を有するランフラットタイヤに対するニーズがあり、かかるニーズに応えて多くの提案がなされている。かかる提案として、例えば特開平10−297226号公報や特表2001−519279号公報には、空気入りタイヤの内空洞部のリム上にランフラット用支持体(中子体)を装着し、それによってパンク等をした空気入りタイヤを支持することによりランフラット走行を可能にする技術が提案されている。
【0003】
前記ランフラット用支持体は、外周側を支持面にした環状部材を有し、その両脚部に弾性リングを取り付け、弾性リングを介して支持体がリム上に支持されるような構造をしている。このランフラット用支持体を用いる技術は、従来の一般的な空気入りタイヤのホイール/リムに特別の改造を加えることなく、ホイール/リムをそのまま使用できるため、従来の空気入りタイヤの製造、加工、取付設備をそのまま利用できるという利点を有している。
【0004】
これに対し、古典的な方法としてサイドウォールを補強してランフラット走行を可能にする技術もあるが、これはタイヤ断面高さの高いタイヤサイズにおいては十分な性能を発揮できないという問題があり、また前述のようなタイヤの内空洞部にランフラット用支持体を設ける技術として、中子をソリッドとしたものがあるが、これは中子に柔軟性がないことから、組みつけにくいという問題があり、更に特殊なリム構造や特別のタイヤ構造を用いる提案もあるが、これにはタイヤにもホイールにも汎用性がないので、ユーザーに過分な負担をしいるという問題がある。
【0005】
一方、前記したランフラット用支持体を用いる技術は、汎用性、組みつけ性において優れるが、弾性リングと環状部材との接触面の接着力がランフラット用支持体の耐久性に大きな影響を及ぼし、その耐久性を大きく左右する。従って、ランフラット用支持体を装着したタイヤホイール組立体におけるランフラット支持体の耐久性を向上させ、かつランフラット走行距離を延長するには、支持体の金属シェル表面とゴム弾性体の接着性及びその耐久性を改良する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明はランフラットタイヤホイール組立体のランフラット用支持体を構成する環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良してランフラット用支持体の耐久性及びランフラット走行性を改良することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、タイヤ/リムの内空洞部に、環状金属シェル及びゴム状弾性体によって形成されたランフラット用支持体を有する、ランフラットタイヤホイール組立体において、環状金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良したタイヤホイール組立体が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、高剛性の金属シェルとゴム状弾性体によって形成されるランフラット用支持体の金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して金属シェルとゴム状弾性体との接着性が改良されたタイヤホイール組立体を得ることができ、更に好ましくは、所定の接着面積を確保することによって、リム組立て時やランフラット走行時の負荷に十分耐える接着力をランフラット用支持体に付与することができる。
【0009】
以下、本発明を図に示す実施形態により具体的に説明する。
図1、図2及び図3は本発明のタイヤホイール組立体(車輪)の代表的な実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【0010】
例えば、図1、図2及び図3に示すように、本発明に係るランフラット用支持体1は空気入りタイヤ2の空洞部3に挿入される環状金属シェル4,5又は6と、ゴム状弾性体7とから形成される。このランフラット用支持体1は、外径が空気入りタイヤ2の空洞部3の内面と一定距離を保つように空洞部3の内径よりも小さな形状をし、かつその内径は空気入りタイヤのビード部の内径と略同一の寸法に形成されている。このランフラット用支持体1は、空気入りタイヤ2の内側に挿入された状態で空気入りタイヤ2と共にホイールのリム8に組み込まれ、タイヤホイール組立体が構成される。このタイヤホイール組立体が自動車などに装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクなどすると、そのパンクして潰れたタイヤ2がランフラット用支持体1の外周面に支持された状態になって、ランフラット走行が可能となる。
【0011】
以上の通り、本発明のタイヤホイール組立体のランフラット用支持体は、環状金属シェルとゴム状弾性体とから構成されており、環状金属シェル4,5又は6は、外側にパンクなどをしたタイヤを支えるため連続した支持面を形成し、内側は左右の側壁を脚部とした形状をしている。外側の支持面は、種々の形状をとることができ、例えば図1に示すような平坦なもの、図2に示すようなその周方向に直交する横断面の形状が外側に凸曲面になるような形状のもの(その凸曲面のタイヤ軸方向に並ぶ数は図2に示すように2つに限らず、又は3以上のもの、更には単一のものでもよい)、更に図3に示すように2以上の凸曲面から構成され、その凹部に断面が円状の弾性リング9を配してランフラット走行時の衝撃緩和能力を付与させたり、そして/又は環状金属シェルをゴム状弾性体で分離させて金属シェルの側壁が直接リムと当接し、安定した係合状態を維持できるようにした形状などとすることができる。このように支持面を形成するような場合にも金属とゴム状弾性体との接着を本発明に従って高めればタイヤのランフラット走行持続距離を伸ばすことができる。
【0012】
ゴム状弾性体は、環状金属シェルの両脚部の端部(図1又は図2参照)又は両脚部中(図3参照)にそれぞれ取り付けられ、そのまま左右のリム上に当接することにより環状金属シェルを支持する。このゴム状弾性体はゴムから構成され、パンクなどをしたタイヤから環状金属シェルが受ける衝撃や振動を緩和すると共に、リムに対する滑り止めの作用をし、環状金属シェルをリム上に安定支持する。
【0013】
図4に示すように、ランフラット用支持体1を構成する環状金属シェル5とゴム状弾性体7とは強固な接着力を有するが、好ましくは所定の接着面積を確保するのが良い。リム作業時やランフラット走行時の負荷はリム径R(インチ)により無次元化され、接着面積をS(cm2 )としたときに、その比S/Rが4.5cm2 /インチ以上、好ましくは8〜20cm2 /インチであると良い。ここで接着面積とは環状金属シェルの片側端部における金属とゴム状弾性体との接着面積、即ちその周方向に直交する横断面における環状金属シェル端部のゴム状弾性体と接している金属シェルの表/裏面及び端面を周方向に一周させた全接着面積をいう。
【0014】
さらに、環状金属シェル5とゴム状弾性体7との接着面は軸方向と、径方向とによって構成されることが良く、両者が略同等であると一層好ましい。かかることによってランフラット走行時に発生する軸方向、径方向の力の双方に耐える構造が形成される。
【0015】
図1,2及び3において、ランフラット用支持体1、空気入りタイヤ2、リム8は、ホイールの回転軸(図示せず)を中心として共軸に環状に形成されている。なお、金属シェルの寸法には特に限定はないが、好ましくは厚さ0.5〜3.0mmであり、幅は左右タイヤビードトウの間隔と略等しくする。
【0016】
本発明のタイヤホイール組立体は、パンクなどをしたタイヤを介して自動車などの重量を支えるようにするため、環状体4,5又は6は金属材料から構成する。そのような金属としては、鉄、ステンレススチール、アルミニウム合金などを例示することができる。
【0017】
ゴム状弾性体は、環状金属シェルを安定支持することができれば、任意のゴムから構成してもよく、例えば、ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴムなどをあげることができる。
【0018】
本発明のゴム状弾性体を構成するゴム組成物には、さらに、通常の加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑化剤、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0019】
本発明においては、環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良するために、その間に有機溶剤系接着剤を塗布する。本発明において使用する有機溶剤系接着剤としてはフェノール樹脂系接着剤、例えばノボラック型フェノール樹脂系接着剤又はレゾール型フェノール樹脂およびエポキシ変性フェノール樹脂を含有するフェノール樹脂系接着剤、さらにこれらに、未加硫NBR等のゴム組成物成分を含有させたフェノール樹脂系接着剤などがあげられる。さらに、エポキシ樹脂およびレゾール型フェノール樹脂を含有する加硫接着用プライマーを金属表面に塗布し、焼付け処理等で表面に付着させ、その後、上記接着剤を塗布し、未加硫のゴム状弾性体と加硫接着させるのが好ましい。また、これらの加硫接着剤、加硫接着用プライマーとして、例えばLORD社などより市販の金属−ゴム用の各種接着剤を用いることができる。
【0020】
有機溶剤系接着剤を環状金属シェルとゴム状弾性体との間に適用する方法には特に限定はなく、一般的な方法で実施することができる。好ましくは有機溶剤系接着剤を、脱脂処理、ブラスト処理などを施した金属表面に塗布し、スプレー塗布、刷毛塗り、浸漬処理、滴下処理等の方法で塗布し、必要に応じて余分な接着剤を除去後、溶剤を適当に乾燥させ、その後、未加硫のゴム状弾性体と張り合わせ、加硫接着させる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0022】
実施例1〜2及び比較例1〜2
表Iに示す配合(重量部)のゴム状弾性体及び有機溶剤系接着剤を用いて本発明の効果を実証する。
【0023】
表Iに示す配合(重量部)のゴム状弾性体試料(寸法:5.5mm厚×2.5cm幅×8cm長)を調製し、次いで表Iの有機溶剤系接着剤を刷毛を用いて、ステンレススチールSUS304製基板(厚さ:0.1mm、幅2.5cm、長さ:8cm)に塗布し、前記ゴム状弾性体と貼り合わせ、160℃、30分、面圧3MPa の条件で加硫接着させた。その後、JIS K6256に準拠し、剥離試験を行った。結果を表Iに示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表I脚注
NIPOL 1042:日本ゼオン(株)製NBR
NR:天然ゴム(RSS#3)
アサヒ#60:旭カーボン(株)製、カーボンブラック(FEFグレード)(N2 SA:41m2 /g,DBP吸油量:121ml/100g)
酸化亜鉛3号:正同化学工業(株)製酸化亜鉛
ステアリン酸:日本油脂(株)製ステアリン酸
FLECTOL TMQ:FLEXSYS製老化防止剤RD
硫黄:(株)軽井沢製錬所製硫黄
ノクセラー CZ−G:大内新興化学工業(株)加硫促進剤
ケムロック205:LORD社製接着剤(有機溶剤系接着剤)
パーカドックス14/40:化薬アクゾ社製パーオキサイド
【0026】
評価物性測定方法
剥離力:JIS K6256加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの接着試験法に準拠して測定を行った。結果は各比較例の値を100として指数表示した。数値が大きいほど接着性が良いことを示す。
ゴム被覆率(%):剥離後の基板表面へのゴム被覆率を示し、ゴム被覆が全くない場合が0%、完全にゴムに覆われている場合を100%とした。
【0027】
表Iに示す通り、有機溶剤系接着剤を用いた基板の方が良好な接着性を示す。
【0028】
実施例3〜4及び比較例3
タイヤサイズを205/55R16 89V、リムサイズを16×6 1/2JJとして本発明のタイヤホイール組立体(実施例3〜4)と、比較例1による従来のタイヤホイール組立体(比較例3)をそれぞれ作製した。
尚、タイヤホイール組立体のランフラット用支持体は図2のものを使用した。
【0029】
これら各試験タイヤホイール組立体を以下に示す測定方法により、耐久性の評価試験を行った。結果は表IIに示す。
【0030】
耐久性試験
2500cc乗用車に前記試験用タイヤを装着し、前右側のタイヤ内空気圧を0kPa とし、他の3ヶ所のタイヤ内空気圧は200kPa として、90km/hrで故障するまで走行させた。結果は比較例3の値を100として指数表示した。数値が大きいほど耐久性が良いことを示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表 II 脚注
実施例3:実施例1による接着方法
実施例4:実施例2による接着方法
【0033】
表IIの結果から、本発明のタイヤホイール組立体は耐久性が改善されたことがわかる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明した通り、単独でゴムとの接着性に乏しい鉄やステンレスなどの金属とゴム状弾性体との接着は非常に困難であり、仮に接着させることができても強度的に不足したり、経時的耐久性に乏しかったりすることが多かったが、本発明によれば金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布することにより、金属とゴムとの接着性を改良することができ、ランフラット用支持体としての耐久性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤホイール組立体の一実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【図2】本発明のタイヤホイール組立体の他の実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【図3】本発明のタイヤホイール組立体の更に他の実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【図4】本発明のタイヤホイール組立体の環状金属シェルとゴム状弾性体との接着面の一例を示す図面である。
【符号の説明】
1…ランフラット用支持体
2…空気入りタイヤ
3…空洞部
4…環状金属シェル
5…環状金属シェル
6…環状金属シェル
7…ゴム状弾性体
8…リム
9…弾性リング
【発明の属する技術分野】
本発明は、損傷又は空気抜け状態において、制限された運転ができる空気入りタイヤ(以下、ランフラットタイヤという)に用いるタイヤホイール組立体に関し、更に詳しくはタイヤ/リムの内空洞部に設けられる環状金属シェル及びゴム状弾性体からなるランフラット用支持体の環状金属シェルとゴム状弾性体との接触部分の接着性を改良したタイヤホイール組立体に関する。
【0002】
【従来の技術】
空気入りタイヤが自動車などの走行中にパンクやバーストなどによって内圧が急激に低下した場合でも、一定距離を走行できる緊急走行可能性を有するランフラットタイヤに対するニーズがあり、かかるニーズに応えて多くの提案がなされている。かかる提案として、例えば特開平10−297226号公報や特表2001−519279号公報には、空気入りタイヤの内空洞部のリム上にランフラット用支持体(中子体)を装着し、それによってパンク等をした空気入りタイヤを支持することによりランフラット走行を可能にする技術が提案されている。
【0003】
前記ランフラット用支持体は、外周側を支持面にした環状部材を有し、その両脚部に弾性リングを取り付け、弾性リングを介して支持体がリム上に支持されるような構造をしている。このランフラット用支持体を用いる技術は、従来の一般的な空気入りタイヤのホイール/リムに特別の改造を加えることなく、ホイール/リムをそのまま使用できるため、従来の空気入りタイヤの製造、加工、取付設備をそのまま利用できるという利点を有している。
【0004】
これに対し、古典的な方法としてサイドウォールを補強してランフラット走行を可能にする技術もあるが、これはタイヤ断面高さの高いタイヤサイズにおいては十分な性能を発揮できないという問題があり、また前述のようなタイヤの内空洞部にランフラット用支持体を設ける技術として、中子をソリッドとしたものがあるが、これは中子に柔軟性がないことから、組みつけにくいという問題があり、更に特殊なリム構造や特別のタイヤ構造を用いる提案もあるが、これにはタイヤにもホイールにも汎用性がないので、ユーザーに過分な負担をしいるという問題がある。
【0005】
一方、前記したランフラット用支持体を用いる技術は、汎用性、組みつけ性において優れるが、弾性リングと環状部材との接触面の接着力がランフラット用支持体の耐久性に大きな影響を及ぼし、その耐久性を大きく左右する。従って、ランフラット用支持体を装着したタイヤホイール組立体におけるランフラット支持体の耐久性を向上させ、かつランフラット走行距離を延長するには、支持体の金属シェル表面とゴム弾性体の接着性及びその耐久性を改良する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明はランフラットタイヤホイール組立体のランフラット用支持体を構成する環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良してランフラット用支持体の耐久性及びランフラット走行性を改良することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に従えば、タイヤ/リムの内空洞部に、環状金属シェル及びゴム状弾性体によって形成されたランフラット用支持体を有する、ランフラットタイヤホイール組立体において、環状金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良したタイヤホイール組立体が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、高剛性の金属シェルとゴム状弾性体によって形成されるランフラット用支持体の金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して金属シェルとゴム状弾性体との接着性が改良されたタイヤホイール組立体を得ることができ、更に好ましくは、所定の接着面積を確保することによって、リム組立て時やランフラット走行時の負荷に十分耐える接着力をランフラット用支持体に付与することができる。
【0009】
以下、本発明を図に示す実施形態により具体的に説明する。
図1、図2及び図3は本発明のタイヤホイール組立体(車輪)の代表的な実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【0010】
例えば、図1、図2及び図3に示すように、本発明に係るランフラット用支持体1は空気入りタイヤ2の空洞部3に挿入される環状金属シェル4,5又は6と、ゴム状弾性体7とから形成される。このランフラット用支持体1は、外径が空気入りタイヤ2の空洞部3の内面と一定距離を保つように空洞部3の内径よりも小さな形状をし、かつその内径は空気入りタイヤのビード部の内径と略同一の寸法に形成されている。このランフラット用支持体1は、空気入りタイヤ2の内側に挿入された状態で空気入りタイヤ2と共にホイールのリム8に組み込まれ、タイヤホイール組立体が構成される。このタイヤホイール組立体が自動車などに装着されて走行中に空気入りタイヤがパンクなどすると、そのパンクして潰れたタイヤ2がランフラット用支持体1の外周面に支持された状態になって、ランフラット走行が可能となる。
【0011】
以上の通り、本発明のタイヤホイール組立体のランフラット用支持体は、環状金属シェルとゴム状弾性体とから構成されており、環状金属シェル4,5又は6は、外側にパンクなどをしたタイヤを支えるため連続した支持面を形成し、内側は左右の側壁を脚部とした形状をしている。外側の支持面は、種々の形状をとることができ、例えば図1に示すような平坦なもの、図2に示すようなその周方向に直交する横断面の形状が外側に凸曲面になるような形状のもの(その凸曲面のタイヤ軸方向に並ぶ数は図2に示すように2つに限らず、又は3以上のもの、更には単一のものでもよい)、更に図3に示すように2以上の凸曲面から構成され、その凹部に断面が円状の弾性リング9を配してランフラット走行時の衝撃緩和能力を付与させたり、そして/又は環状金属シェルをゴム状弾性体で分離させて金属シェルの側壁が直接リムと当接し、安定した係合状態を維持できるようにした形状などとすることができる。このように支持面を形成するような場合にも金属とゴム状弾性体との接着を本発明に従って高めればタイヤのランフラット走行持続距離を伸ばすことができる。
【0012】
ゴム状弾性体は、環状金属シェルの両脚部の端部(図1又は図2参照)又は両脚部中(図3参照)にそれぞれ取り付けられ、そのまま左右のリム上に当接することにより環状金属シェルを支持する。このゴム状弾性体はゴムから構成され、パンクなどをしたタイヤから環状金属シェルが受ける衝撃や振動を緩和すると共に、リムに対する滑り止めの作用をし、環状金属シェルをリム上に安定支持する。
【0013】
図4に示すように、ランフラット用支持体1を構成する環状金属シェル5とゴム状弾性体7とは強固な接着力を有するが、好ましくは所定の接着面積を確保するのが良い。リム作業時やランフラット走行時の負荷はリム径R(インチ)により無次元化され、接着面積をS(cm2 )としたときに、その比S/Rが4.5cm2 /インチ以上、好ましくは8〜20cm2 /インチであると良い。ここで接着面積とは環状金属シェルの片側端部における金属とゴム状弾性体との接着面積、即ちその周方向に直交する横断面における環状金属シェル端部のゴム状弾性体と接している金属シェルの表/裏面及び端面を周方向に一周させた全接着面積をいう。
【0014】
さらに、環状金属シェル5とゴム状弾性体7との接着面は軸方向と、径方向とによって構成されることが良く、両者が略同等であると一層好ましい。かかることによってランフラット走行時に発生する軸方向、径方向の力の双方に耐える構造が形成される。
【0015】
図1,2及び3において、ランフラット用支持体1、空気入りタイヤ2、リム8は、ホイールの回転軸(図示せず)を中心として共軸に環状に形成されている。なお、金属シェルの寸法には特に限定はないが、好ましくは厚さ0.5〜3.0mmであり、幅は左右タイヤビードトウの間隔と略等しくする。
【0016】
本発明のタイヤホイール組立体は、パンクなどをしたタイヤを介して自動車などの重量を支えるようにするため、環状体4,5又は6は金属材料から構成する。そのような金属としては、鉄、ステンレススチール、アルミニウム合金などを例示することができる。
【0017】
ゴム状弾性体は、環状金属シェルを安定支持することができれば、任意のゴムから構成してもよく、例えば、ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴムなどをあげることができる。
【0018】
本発明のゴム状弾性体を構成するゴム組成物には、さらに、通常の加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、充填剤、可塑化剤、その他一般ゴム用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0019】
本発明においては、環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良するために、その間に有機溶剤系接着剤を塗布する。本発明において使用する有機溶剤系接着剤としてはフェノール樹脂系接着剤、例えばノボラック型フェノール樹脂系接着剤又はレゾール型フェノール樹脂およびエポキシ変性フェノール樹脂を含有するフェノール樹脂系接着剤、さらにこれらに、未加硫NBR等のゴム組成物成分を含有させたフェノール樹脂系接着剤などがあげられる。さらに、エポキシ樹脂およびレゾール型フェノール樹脂を含有する加硫接着用プライマーを金属表面に塗布し、焼付け処理等で表面に付着させ、その後、上記接着剤を塗布し、未加硫のゴム状弾性体と加硫接着させるのが好ましい。また、これらの加硫接着剤、加硫接着用プライマーとして、例えばLORD社などより市販の金属−ゴム用の各種接着剤を用いることができる。
【0020】
有機溶剤系接着剤を環状金属シェルとゴム状弾性体との間に適用する方法には特に限定はなく、一般的な方法で実施することができる。好ましくは有機溶剤系接着剤を、脱脂処理、ブラスト処理などを施した金属表面に塗布し、スプレー塗布、刷毛塗り、浸漬処理、滴下処理等の方法で塗布し、必要に応じて余分な接着剤を除去後、溶剤を適当に乾燥させ、その後、未加硫のゴム状弾性体と張り合わせ、加硫接着させる。
【0021】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
【0022】
実施例1〜2及び比較例1〜2
表Iに示す配合(重量部)のゴム状弾性体及び有機溶剤系接着剤を用いて本発明の効果を実証する。
【0023】
表Iに示す配合(重量部)のゴム状弾性体試料(寸法:5.5mm厚×2.5cm幅×8cm長)を調製し、次いで表Iの有機溶剤系接着剤を刷毛を用いて、ステンレススチールSUS304製基板(厚さ:0.1mm、幅2.5cm、長さ:8cm)に塗布し、前記ゴム状弾性体と貼り合わせ、160℃、30分、面圧3MPa の条件で加硫接着させた。その後、JIS K6256に準拠し、剥離試験を行った。結果を表Iに示す。
【0024】
【表1】
【0025】
表I脚注
NIPOL 1042:日本ゼオン(株)製NBR
NR:天然ゴム(RSS#3)
アサヒ#60:旭カーボン(株)製、カーボンブラック(FEFグレード)(N2 SA:41m2 /g,DBP吸油量:121ml/100g)
酸化亜鉛3号:正同化学工業(株)製酸化亜鉛
ステアリン酸:日本油脂(株)製ステアリン酸
FLECTOL TMQ:FLEXSYS製老化防止剤RD
硫黄:(株)軽井沢製錬所製硫黄
ノクセラー CZ−G:大内新興化学工業(株)加硫促進剤
ケムロック205:LORD社製接着剤(有機溶剤系接着剤)
パーカドックス14/40:化薬アクゾ社製パーオキサイド
【0026】
評価物性測定方法
剥離力:JIS K6256加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの接着試験法に準拠して測定を行った。結果は各比較例の値を100として指数表示した。数値が大きいほど接着性が良いことを示す。
ゴム被覆率(%):剥離後の基板表面へのゴム被覆率を示し、ゴム被覆が全くない場合が0%、完全にゴムに覆われている場合を100%とした。
【0027】
表Iに示す通り、有機溶剤系接着剤を用いた基板の方が良好な接着性を示す。
【0028】
実施例3〜4及び比較例3
タイヤサイズを205/55R16 89V、リムサイズを16×6 1/2JJとして本発明のタイヤホイール組立体(実施例3〜4)と、比較例1による従来のタイヤホイール組立体(比較例3)をそれぞれ作製した。
尚、タイヤホイール組立体のランフラット用支持体は図2のものを使用した。
【0029】
これら各試験タイヤホイール組立体を以下に示す測定方法により、耐久性の評価試験を行った。結果は表IIに示す。
【0030】
耐久性試験
2500cc乗用車に前記試験用タイヤを装着し、前右側のタイヤ内空気圧を0kPa とし、他の3ヶ所のタイヤ内空気圧は200kPa として、90km/hrで故障するまで走行させた。結果は比較例3の値を100として指数表示した。数値が大きいほど耐久性が良いことを示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表 II 脚注
実施例3:実施例1による接着方法
実施例4:実施例2による接着方法
【0033】
表IIの結果から、本発明のタイヤホイール組立体は耐久性が改善されたことがわかる。
【0034】
【発明の効果】
以上説明した通り、単独でゴムとの接着性に乏しい鉄やステンレスなどの金属とゴム状弾性体との接着は非常に困難であり、仮に接着させることができても強度的に不足したり、経時的耐久性に乏しかったりすることが多かったが、本発明によれば金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布することにより、金属とゴムとの接着性を改良することができ、ランフラット用支持体としての耐久性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤホイール組立体の一実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【図2】本発明のタイヤホイール組立体の他の実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【図3】本発明のタイヤホイール組立体の更に他の実施態様の要部を示す子午線断面図である。
【図4】本発明のタイヤホイール組立体の環状金属シェルとゴム状弾性体との接着面の一例を示す図面である。
【符号の説明】
1…ランフラット用支持体
2…空気入りタイヤ
3…空洞部
4…環状金属シェル
5…環状金属シェル
6…環状金属シェル
7…ゴム状弾性体
8…リム
9…弾性リング
Claims (6)
- タイヤ/リムの内空洞部に、環状金属シェル及びゴム状弾性体によって形成されたランフラット用支持体を有する、ランフラットタイヤホイール組立体において、環状金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良したタイヤホイール組立体。
- 前記ランフラット用支持体のゴム状弾性体が環状金属シェルとリムとの間に配置され、環状金属シェルを支持する構造となっている請求項1に記載のタイヤホイール組立体。
- 前記有機溶剤系接着剤がフェノール樹脂系接着剤及びゴム成分含有フェノール樹脂系接着剤からなる群から選ばれた少なくとも一種の接着剤である請求項1又は2に記載のタイヤホイール組立体。
- タイヤの呼び径をR(インチ)、ゴム状弾性体/金属シェルの接着面積をS(cm2 )としたときに、その比S/Rが4.5cm2 /インチ以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤホイール組立体。
- 接着面が略軸方向面と略径方向面とによって構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤホイール組立体。
- 環状金属シェル及びゴム状弾性体によって形成され、環状金属シェルとゴム状弾性体との間に有機溶剤系接着剤を塗布して環状金属シェルとゴム状弾性体との接着性を改良したランフラット用支持体。
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