JP2004073052A - 米飯用食味改質剤及び米飯の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】海藻エキスを含有させることで上記課題を解決する。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、米飯用食味改質剤とその食味改質剤を使用した米飯の製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
古来より米飯は日本人にとって主食であり、重要なカロリー源である。米飯の味は淡白であり美味である。そして淡白であるがゆえに飽きがこず、毎日食することができる。近年、外食・中食産業が広まり、家庭での炊飯が減り、弁当・おにぎりなどの業務用炊飯の需要が多くなってきている。米飯製品を大量製造する際には、塩かどをとったり、旨みを付与する為、多量の化学調味料や糖分などが添加される場合が多い。
【0003】
しかし、自然食品、健康志向を重視する現在においては、多量の化学調味料や糖分を含む食品は好ましくなく、このような調味料を添加すると消費者に対して不快感を与える。一方、旨みを付与する食味改質剤の1つに昆布エキスがあるが、従来の昆布エキスは食塩が多量に入っており、健康阻害の原因になる可能性がある。
【0004】
また、食味改質剤として昆布類、魚介類、醤油、ポン酢などの複合調味料、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチンなどの増粘多糖類やグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤、油糧種子由来の水溶性ヘミセルロースなどを有効成分とする食味改質剤が提案されているが、これらの組み合わせだけでは、おいしい米飯を提供することは出来ない。そこで天然由来の原料で構成され、しかも米飯の食感や風味に悪影響を与えず、旨み向上効果を有する食味改質剤の開発が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、米飯の食感、艶などの品質を変えることなく、旨みを増強する米飯用食味改質剤、及びこの食味改質剤を使用した米飯の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、海藻エキスを炊飯時に炊き水に含有させることにより、食感、艶などの品質を変えることなく、効果的に米飯に旨みを与えることができるという効果を発見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、凍結濃縮海藻エキスを含有することを特徴とする米飯用食味改質剤、及びこの食味改質剤を用いることを特徴とする米飯の製造方法である。
【0008】
【発明実施の形態】
本発明における食味とは、米飯の外観、香り、味、食感、硬さを指す。
【0009】
本発明における米飯用食味改質剤の形態は特に限定されるものでなく、海藻エキス単独もしくはデキストリン、糖、粉末調味料などと混合した粉末状態、食用油脂との乳化状態、水や液体調味料等へ分散させた液体状態にて使用することができるが、簡便性の点から液体の状態が好ましい。液体状態で長時間置いておく場合は改質剤の防腐のため、有機酸、アルコール等を適量添加するのが望ましく、好ましくはエタノールが望ましい。添加量については、特に限定されるものではないが、好ましくは海藻の濃縮エキスに対して5.00重量%以下が望ましい。
【0010】
本発明における海藻エキスとは特に限定するものではなく、例えば昆布エキス、ワカメエキス、褐藻エキス等があげられ、好ましくは昆布エキスである。
【0011】
本発明における海藻エキスの原料の起源は特に限定するものではないが、できるだけ風味の良いものが好ましく、風味の良い原料の例として日高コンブ、利尻コンブなどがあげられる。
【0012】
本発明における海藻エキスのアルギン酸の含量は0.30%以下が好ましく、0.25%以下がさらに好ましい。アルギン酸は、食物繊維であり、また弱酸性型陽イオン交換体で2価以上の金属とは不溶性塩を、その他の金属とは水溶性塩を生成し粘稠な溶液になる。アルギン酸が少ないことは遊離の陽イオンが味覚受容体に感知させやすくするばかりか、アミノ酸塩(グルタミン酸Na,アスパラギン酸Na等)としての感知も増大する。また、アルギン酸等の多糖類が1.00%を超えるとエキスの製造工程(例えば凍結濃縮の工程)に悪影響を及ぼすことがあり、好ましくない。ここで、アルギン酸の量の測定方法は特に限定するものではなく、例えばアルギン酸に含まれるウロン酸をナフトレゾルシンで呈色させ、波長566nmにおいて測定する吸光光度法等が挙げられる。
【0013】
本発明における食味改質剤のナトリウムの含量は、高濃度では、凍結濃縮時に生成する氷晶中に海藻類の風味成分が混入する、または氷晶が生成し難い等の問題を生じることがある。また、ナトリウムの多量摂取は体に害を与える可能性があるため、1.00%以下が好ましく、0.50%以下が更に好ましい。ここでナトリウムの測定方法については特に限定するものではないが、例えば原子吸光法等が挙げられる。
【0014】
本発明における海藻エキスの抽出方法は特に限定はなく、例えば抽出は海藻100gに対し、水1000〜1500gを加え、バッチ式、カラム式のいずれの方法でもよく、40〜95℃で、10〜150分抽出するのが望ましい。抽出温度が40℃より低いと風味成分の抽出が十分でなく、また、95℃より高いとアルギン酸等の多糖類が過剰に抽出され、その後の凍結濃縮する工程に悪影響を及ぼすことがあり好ましくない。また、抽出時間が10分よりも短いと抽出が不十分となり、150分を超えると、アルギン酸等の多糖類の溶出が多くなり好ましくない。
【0015】
本発明における海藻エキスとは、抽出工程後、必要により常法通り固液分離して得られた抽出物を、必要により酵素処理、精製ろ過、殺菌などの処理を施した凍結濃縮エキスである。
【0016】
本発明における米飯とは米を主とした調味加工したものまたはそのものを指し、特に限定するものではないが、例えば、寿司、チャーハン、ピラフ、パエリア、炊飯した米などがあげられる。
【0017】
米飯への食味改質剤の添加量は、特に限定されるものではないが、米(乾物換算)に対し、0.05重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%の範囲内で添加するのが好ましい。添加量が0.05重量%未満であると食味改質効果が弱く、逆に10重量%を超えると米飯の食感に影響するため好ましくない。
【0018】
本発明の米飯用食味改質剤を添加する時期については米の浸漬時、炊飯直前、炊飯後など、特に制限はないが、作業の簡便性から炊飯直前に添加するのが良い。
【0019】
また、本発明の米飯用食味改質剤は、従来から米飯ほぐれ効果を狙って使用されている炊飯用油や乳化油脂と併用して使用することもできる。その場合はほぐれ効果が高くなるため、いずれの添加量も減らすことが可能である。例えば、本改質剤1.0%のうちの0.2%を炊飯用油に置きかえて併用すると、風味が良くなり、さらに食感も改善される。さらに、本剤は米飯改質剤として使用されているキサンタンガム、プルラン、グアガム、ローカストビーンガム、タラガム、ペクチンなどの増粘多糖類やグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤やアミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼなどの酵素や還元水飴、ソルビトール、果糖ブドウ糖液糖などの糖類、デキストリン、シクロデキストリン、トレハロース、水溶性ヘミセルロース、ゼラチン等とも併用して使用することができる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの例示によってなんら制限されるものではない。
【0021】
実施例1
(1)幅3.5mm、長さ20〜100mmに切断したマコンブ100kgを抽出カラム(直径600mm、長さ2.7m)に充填し、80℃の熱水を流速1000リットル/時間で通液して昆布成分の抽出を行い、抽出物を即座にプレートクーラーで25℃以下に冷却し、昆布抽出物1450リットル(Bx.3.6)を得た。抽出物は、良好な風味を有するものであった。
【0022】
(2)上記(1)で得られた昆布抽出物1450リットルをろ過し、殺菌したものに還元水飴(PO−40:東和化成工業株式会社製)32kgを添加し、凍結濃縮する前の原液1480リットル(Bx.5.1)を得た。この原液をグレンコ社製凍結濃縮装置で連続的に凍結濃縮(脱水量:240リットル/時間、製品取り出し量:120リットル/時間)を行い凍結濃縮液(本発明の米飯用食味改質剤)531リットル(Bx.13.5)を得た。この濃縮液は、濃縮原液より水が選択的に除かれたものであり濃縮時の風味の劣化のないフレッシュ感のある米飯用食味改質剤であった。なお、アルギン酸含量は、0.21%、ナトリウム含量は0.49%であった。
【0023】
(3)家庭用炊飯器(株式会社東芝製、IH式炊飯器RCK−18DC)を用いて、生米500gに対して水を750g入れ、上記(2)で得られた米飯用食味改質剤を生米換算で0.05重量%を添加して、40分間浸漬後に炊飯し、米飯の外観、香り、味、食感、硬さについて官能評価を行った。さらに容器に入れて蓋をし、恒温器内で20℃にて2時間保存後、炊飯食味計STA1A(株式会社佐竹製作所製)を用いて食味分析を行った。なお試験には、千葉県産コシヒカリを用いた。
【0024】
実施例2
米飯用食味改質剤の米飯への添加量を生米換算で0.1重量%とした以外は実施例1と同様に炊飯し、評価分析を行った。
【0025】
実施例3
米飯用食味改質剤の米飯への添加量を生米換算で0.2重量%とした以外は実施例1と同様に炊飯し、評価分析を行った。
【0026】
実施例4
米飯用食味改質剤の米飯への添加量を生米換算で0.5重量%とした以外は実施例1と同様に炊飯し、評価分析を行った。
【0027】
実施例5
米飯用食味改質剤の米飯への添加量を生米換算で1.0重量%とした以外は実施例1と同様に炊飯し、評価分析を行った。
【0028】
実施例6
米飯用食味改質剤の米飯への添加量を生米換算で5.0重量%とした以外は実施例1と同様に炊飯し、評価分析を行った。
【0029】
実施例7
米飯用食味改質剤の米飯への添加量を生米換算で10重量%とした以外は実施例1と同様に炊飯し、評価分析を行った。
【0030】
対照区1
家庭用炊飯器(株式会社東芝製、IH式炊飯器RCK−18DC)を用いて、生米500gに対して水を750g入れて40分間浸漬後に炊飯し、米飯の外観、香り、味、食感、硬さについて官能評価を行った。さらに容器に入れて蓋をし、恒温器内で20℃にて2時間保存後、炊飯食味計STA1A(株式会社佐竹製作所製)を用いて食味分析を行った。なお試験には、千葉県産コシヒカリを用いた。
【0031】
比較例1
市販の昆布エキスを生米換算で0.5重量%添加し、それ以外は対照区1と全く同様に炊飯し、評価を行った。なお、市販の昆布エキスのアルギン酸含量及び、ナトリウム含量の測定値は、アルギン酸含量7.0%、ナトリウム含量3.0%であった。
【0032】
比較例2
比較例1において市販の昆布エキスの添加量を1.0重量%とした。
【0033】
比較例3
炊飯用油脂の添加量を1.0重量%を添加し、それ以外は対照区1と同様に炊飯し、評価を行った。
【0034】
官能検査および、炊飯食味計の結果を表1に示す。なお、米飯の外観、香り、味、食感、硬さの評価については10人のパネラーによる評価で、無添加を基準(3点)としてそれぞれを比較した。良いものから順に5点(非常に良い)、4点(良い)、3点(基準)2点(少し悪い)、1点(悪い)で表した。また、食味値の評価は100が満点で、点数が高いほど米飯の食味が良いことを表した。
【0035】
【表1】
【0036】
表1の結果から、市販の昆布エキス(比較例1、2)は香りは良いが、味や硬さに悪影響を及ぼした。炊飯用油脂添加区(比較例3)は外観は良くなるが、油の味が出たり、食感が硬くなる等の悪影響を及ぼした。一方、米飯用食味改質剤を米飯に0.1重量%〜5重量%添加した試験区(実施例3〜7)は、米飯の外観・香り・味・食感・硬さ等に全く悪影響を及ぼすことなく、米飯の食味を改質した。特に味については米飯用食味改質剤の添加量が1.0重量%〜5.0重量%の試験区において、味も香りも良好であった。また、米飯用食味改質剤を添加した試験区は食味値を低下させることがなく、無添加と遜色のない良好な値を示した。
【0037】
実施例9
次に、製造レベルでの効果を確認するために、ガス式連続炊飯システム(株式会社AIHO製 ライスフレンドシステム15)を用いて、生米3000gに対して水を4600gを加えて一時間浸漬後、米飯用食味改質剤を生米換算で1.0重量%添加して、炊飯し、米飯の外観、香り、味、食感、硬さについて官能評価を行った。さらに容器に入れて蓋をし、恒温器内で20℃にて2時間保存後、炊飯食味計STA1A(株式会社佐竹製作所製)を用いて食味分析を行った。なお、試験には福島産コシヒカリを用いた。
【0038】
対照区2
無添加にて実施例9と同条件で炊飯し、評価を行った。
【0039】
官能検査および、食味計分析の結果を表1に示す。なお、米飯の外観、香り、味、食感、硬さの評価については10人のパネラーによる評価で、無添加を基準(3点)としてそれぞれを比較した。良いものから順に5点(非常に良い)、4点(良い)、3点(基準)2点(少し悪い)、1点(悪い)の5段階評価で表し、10人の評価の平均値を表2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
※佐竹製作所「炊飯食味計STA1A」は100が満点で、点数が高いほど米飯の食味が良いことを表す。
表2より、米飯用食味改質剤を米飯に1.0重量%添加した試験区(実施例9)は、米飯の外観・香り・味・食感・硬さ等に全く悪影響を及ぼすことなく、米飯の食味を改質した。また、米飯用食味改質剤を添加した試験区は食味値を下げることがなく、無添加と遜色のない良好な値を示した。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、アルギン酸含量0.30%以下及びナトリウム含量1.00%以下の海藻エキスは米飯の外観・香り・味・食感・硬さ等に全く悪影響を及ぼすことなく、米飯の食味を改質することができた。
Claims (6)
- 海藻エキスを含有することを特徴とする米飯用食味改質剤
- 海藻エキス中のアルギン酸含量が0.3%以下である請求項1記載の米飯用食味改質剤
- 海藻エキス中のナトリウム含量が1.0%以下である請求項1または2記載の米飯用食味改質剤
- 海藻エキスが凍結濃縮されたものである請求項1〜3いずれか記載の米飯用食味改質剤。
- 請求項1〜4いずれか記載の食味改質剤を用いることを特徴とする米飯の製造方法。
- 海藻エキスの添加量が米(乾物換算)に対して0.05〜10重量%である、請求項5記載の米飯の製造方法。
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